本発明の芳香族ポリアミン誘導体は前記式(1)で表される。式(1)中、環Zにおける芳香環には、単環または多環の芳香族炭化水素環及び芳香族複素環が含まれる。単環の芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環が挙げられる。多環の芳香族炭化水素環としては、例えば、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、フェナレン環などの2つ以上の芳香環がそれぞれ2個以上の原子を共有した縮合環構造をもつもの;ビフェニル環、ビフェニレン環、フルオレン環などの2つ以上の芳香環が単結合等の連結基や脂環式環を介して結合した構造のものなどが挙げられる。芳香族複素環としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子などのヘテロ原子を1または複数含む単環または多環の芳香族複素環が挙げられる。芳香族複素環の具体例としては、フラン環、チオフェン環、ピリジン環、ピコリン環などの単環;キノリン環、イソキノリン環、アクリジン環、フェナジン環などの多環などが挙げられる。前記芳香環は置換基を有していてもよい。このような置換基としては、反応を損なわないものであれば特に限定されない。前記置換基の代表的な例として、例えばハロゲン原子(臭素、塩素、フッ素原子など)、脂肪族炭化水素基(メチル、エチル、プロピル、ブチル、t−ブチルなどの炭素数1〜4のアルキル基など)、脂環式炭化水素基(シクロヘキシル基などの3〜15員程度のシクロアルキル基など)、芳香族炭化水素基(フェニル、ベンジル、ナフチル、トルイル基などの炭素数6〜20(好ましくは6〜14)程度の芳香族炭化水素基)などが挙げられる。
式(1)中、Ra、Rbにおけるアミノ基の保護基には、例えば、アシル基(ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、ピバロイル基などのC1-6脂肪族アシル基;ベンゾイル、ナフトイル基などの炭素数6〜20程度の芳香族アシル基など)、アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニルなどのC1-4アルコキシ−カルボニル基など)、アラルキルオキシ−カルボニル基(ベンジルオキシカルボニル基、p−メトキシベンジルオキシカルボニル基などのC7-20アラルキルオキシカルボニル基)、アルキリデン基(メチリデン、エチリデン、プロピリデン、イソプロピリデン、ブチリデン、イソブチリデン、ペンチリデン、シクロペンチリデン、ヘキシリデン、シクロヘキシリデン、シクロヘキサノメチリデン基などの脂肪族アルキリデン基;ベンジリデン、メチルフェニルメチリデンなどの芳香族アルキリデン基など)などが含まれる。
また、保護基で保護されたアミノ基には、ポリベンズアゾール化の反応を阻害しない範囲で、モノ置換アミノ基も含まれる。モノ置換アミノ基の例としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、ブチルアミノ基、t−ブチルアミノ基などのアルキルアミノ基;シクロヘキシルアミノ基などのシクロアルキルアミノ基;フェニルアミノ基などのアリールアミノ基;ベンジルアミノ基などのアラルキルアミノ基などが挙げられる。アミノ基の保護基としては、これらに限定されず、有機合成の分野で慣用のものを使用できる。
Rc〜Rdにおけるアミノ基の保護基は、前記Ra、Rbにおけるアミノ基の保護基として例示のものを使用できる。また、アミノ基の保護基としては、複数のアミノ基を同時に保護しうる保護基(多官能保護基)を使用することもできる。このような保護基には、例えば、カルボニル基、オキサリル基、ブタン−2,3−ジイリデン基などが含まれる。このような保護基を使用した場合には、RaとRb(RcとRd、RaとRc、RbとRd)が同時に一つの多官能保護基に保護されることにより、環Zに隣接した環が形成される。水酸基の保護基には、例えば、アルキル基(メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル基などのC1-6アルキル基など)、シクロアルキル基(シクロペンチル基、シクロヘキシル基などの3〜15員のシクロアルキル基)、アラルキル基(ベンジル基などのC7-20アラルキル基など)、置換メチル基(メトキシメチル、ベンジルオキシメチル、t−ブトキシメチル、2−メトキシエトキシメチル基などの総炭素数2〜10程度の置換メチル基)、置換エチル基(1−エトキシエチル、1−メチル−1−メトキシエチル基など)、アシル基(ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、ピバロイル基などのC1-10の脂肪族アシル基;シクロヘキシルカルボニル基などのC4-20脂環式アシル基;ベンゾイル、ナフトイル基などのC7-20芳香族アシル基など)、アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニルなどのC1-4アルコキシ−カルボニル基など)、アラルキルオキシカルボニル基(ベンジルオキシカルボニル基、p−メトキシベンジルオキシカルボニル基などのC7-20アラルキルオキシ−カルボニル基)などが含まれる。メルカプト基の保護基には、前記水酸基の保護基として例示のものを使用できる。
式(1)中、環ZにおけるRc、Rdの位置は、例えば、環Zにおける保護基で保護されていてもよいアミノ基であるRa、Rbを有する炭素原子に対して、それぞれα位またはβ位に位置するのが好ましい。
例えば、式(1)の環ZにおけるRa(Rb)を有する炭素原子のα位にRc(Rd)を有する芳香族ポリアミン誘導体とアダマンタンポリカルボン酸又はその誘導体が反応することにより、通常、アミノ基及び/又はカルボキシル基の保護基が外れて、5員のアゾール環が形成される。具体的には、例えば、Rcが保護基で保護されていてもよいアミノ基の場合にはイミダゾール環、Rcが保護基で保護されていてもよい水酸基の場合にはオキサゾール環、Rcが保護基で保護されていてもよいメルカプト基の場合にはチアゾール環がそれぞれ形成される。
また、式(1)の環ZにおけるRa(Rb)を有する炭素原子のβ位にRc(Rd)を有する芳香族ポリアミン誘導体とアダマンタンポリカルボン酸又はその誘導体が反応することにより、通常、アミノ基及び/又はカルボキシル基の保護基が外れて、6員の含窒素環が形成される。具体的には、例えば、Rcがアミノ基又はモノ置換アミノ基の場合にはヒドロジアジン環、Rcが水酸基の場合にはオキサジン環、Rcがメルカプト基の場合にはチアジン環がそれぞれ形成される。
式(1)中、環ZにおけるRa、Rbの位置としては、これらの基とアダマンタンポリカルボン酸におけるカルボキシル基とが結合して、隣接する炭素原子とともに例えば5員又は6員の環を形成しうる位置であれば特に限定されないが、好ましくは、RaとRb[2つの−NH2]が隣接しない位置である。
本発明の芳香族ポリアミン誘導体は、式(1)におけるRa、Rb、Rc、Rdの少なくとも一つがアルキリデン基で保護されたアミノ基である化合物(すなわちイミン誘導体)である。
本発明の芳香族ポリアミン誘導体の代表的な例として、芳香環Zをベンゼン環及びビフェニル環に限り、また、保護基の数も4置換体又は2置換体に限定した化合物を以下に示す。なお、本発明の芳香族ポリアミン誘導体はこれらに限定されない。
本発明の芳香族ポリアミン誘導体には、例えば、式(1)におけるZがベンゼン環であり、Ra、Rbが共にアルキリデン基で保護されたアミノ基であって、N,N″−ジイソプロピリデン−1,2,4,5−ベンゼンテトラアミン、N,N′′′−ジイソプロピリデン−1,2,4,5−ベンゼンテトラアミン、N,N″−ジシクロヘキシリデン−1,2,4,5−ベンゼンテトラアミン、N,N′′′−ジシクロヘキシリデン−1,2,4,5−ベンゼンテトラアミン、N,N″−ジベンジリデン−1,2,4,5−ベンゼンテトラアミン、N,N′′′−ジベンジリデン−1,2,4,5−ベンゼンテトラアミンなどのRc、Rdが共にアミノ基であるイミン誘導体;N,N′,N″,N′′′−テトライソプロピリデン−1,2,4,5−ベンゼンテトラアミン、N,N′,N″,N′′′−テトラシクロヘキシリデン−1,2,4,5−ベンゼンテトラアミン、N,N′,N″,N′′′−テトラベンジリデン−1,2,4,5−ベンゼンテトラアミンなどのRc、Rdが共にアルキリデン基で保護されたアミノ基であるイミン誘導体などが含まれる。
さらに、本発明の芳香族ポリアミン誘導体には、例えば、式(1)におけるZがベンゼン環であり、Ra、Rbが共にアルキリデン基で保護されたアミノ基であって、N,N″−ジイソプロピリデン−N′,N′′′−ジメチル−1,2,4,5−ベンゼンテトラアミン、N,N′′′−ジイソプロピリデン−N′,N″−ジメチル−1,2,4,5−ベンゼンテトラアミン、N,N″−ジシクロヘキシリデン−N′,N′′′−ジメチル−1,2,4,5−ベンゼンテトラアミン、N,N′′′−ジシクロヘキシリデン−N′,N′′′−ジメチル−1,2,4,5−ベンゼンテトラアミン、N,N″−ジベンジリデン−N′,N′′′−ジメチル−1,2,4,5−ベンゼンテトラアミン、N,N′′′−ジベンジリデン−N′,N′′′−ジメチル−1,2,4,5−ベンゼンテトラアミン、N,N″−ジイソプロピリデン−N′,N′′′−ジフェニル−1,2,4,5−ベンゼンテトラアミン、N,N′′′−ジイソプロピリデン−N′,N″−ジフェニル−1,2,4,5−ベンゼンテトラアミン、N,N″−ジシクロヘキシリデン−N′,N′′′−ジフェニル−1,2,4,5−ベンゼンテトラアミン、N,N′′′−ジシクロヘキシリデン−N′,N′′′−ジフェニル−1,2,4,5−ベンゼンテトラアミン、N,N″−ジベンジリデン−N′,N′′′−ジフェニル−1,2,4,5−ベンゼンテトラアミン、N,N′′′−ジベンジリデン−N′,N′′′−ジフェニル−1,2,4,5−ベンゼンテトラアミンなどのRc、Rdが共にモノ置換アミノ基であるイミン誘導体が含まれる。
本発明の芳香族ポリアミン誘導体には、上記の他に、N,N′−ジイソプロピリデン−2,5−ジヒドロキシ−1,4−ベンゼンジアミン、N,N′−ジイソプロピリデン−2,4−ジヒドロキシ−1,5−ベンゼンジアミン、N,N′−ジシクロヘキシリデン−2,5−ジヒドロキシ−1,4−ベンゼンジアミン、N,N′−ジシクロヘキシリデン−2,4−ジヒドロキシ−1,5−ベンゼンジアミン、N,N′−ジベンジリデン−2,5−ジヒドロキシ−1,4−ベンゼンジアミン、N,N′−ジベンジリデン−2,4−ジヒドロキシ−1,5−ベンゼンジアミンなどのRc、Rdが共に水酸基であるイミン誘導体;N,N′−ジイソプロピリデン−2,5−ジメルカプト−1,4−ベンゼンジアミン、N,N′−ジイソプロピリデン−2,4−ジメルカプト−1,5−ベンゼンジアミン、N,N′−ジシクロヘキシリデン−2,5−ジメルカプト−1,4−ベンゼンジアミン、N,N′−ジシクロヘキシリデン−2,4−ジメルカプト−1,5−ベンゼンジアミン、N,N′−ジベンジリデン−2,5−ジメルカプト−1,4−ベンゼンジアミン、N,N′−ジベンジリデン−2,4−ジメルカプト−1,5−ベンゼンジアミンなどのRc、Rdが共にメルカプト基であるイミン誘導体が含まれる。
また、本発明の芳香族ポリアミン誘導体には、例えば、式(1)におけるZがビフェニル環であり、Ra、Rbが共にアルキリデン基で保護されたアミノ基であって、N,N″−ジイソプロピリデン−3,4,3′,4′−ビフェニルテトラアミン、N,N′′′−ジイソプロピリデン−3,4,3′,4′−ビフェニルテトラアミン、N,N″−ジイソブチリデン−3,4,3′,4′−ビフェニルテトラアミン、N,N′′′−ジイソブチリデン−3,4,3′,4′−ビフェニルテトラアミン、N,N″−ジシクロヘキシリデン−3,4,3′,4′−ビフェニルテトラアミン、N,N′′′−ジシクロヘキシリデン−3,4,3′,4′−ビフェニルテトラアミン、N,N″−ジシクロヘキサノメチリデン−3,4,3′,4′−ビフェニルテトラアミン、N,N′′′−ジシクロヘキサノメチリデン−3,4,3′,4′−ビフェニルテトラアミン、N,N″−ジベンジリデン−3,4,3′,4′−ビフェニルテトラアミン、N,N′′′−ジベンジリデン−3,4,3′,4′−ビフェニルテトラアミンなどのRc、Rdが共にアミノ基であるイミン誘導体;N,N′,N″,N′′′−テトライソプロピリデン−3,4,3′,4′−ビフェニルテトラアミン、N,N′,N″,N′′′−テトライソブチリデン−3,4,3′,4′−ビフェニルテトラアミン、N,N′,N″,N′′′−テトラシクロヘキシリデン−3,4,3′,4′−ビフェニルテトラアミン、N,N′,N″,N′′′−テトラシクロヘキサノメチリデン−3,4,3′,4′−ビフェニルテトラアミン、N,N′,N″,N′′′−テトラベンジリデン−3,4,3′,4′−ビフェニルテトラアミンなどのRc、Rdが共にアルキリデン基で保護されたアミノ基であるイミン誘導体などが含まれる。
さらに、本発明の芳香族ポリアミン誘導体には、例えば、式(1)におけるZがビフェニル環であり、Ra、Rbが共にアルキリデン基で保護されたアミノ基であって、N,N″−ジイソプロピリデン−N′,N′′′−ジメチル−3,4,3′,4′−ビフェニルテトラアミン、N,N′′′−ジイソプロピリデン−N′,N″−ジメチル−3,4,3′,4′−ビフェニルテトラアミン、N,N″−ジイソブチリデン−N′,N′′′−ジメチル−3,4,3′,4′−ビフェニルテトラアミン、N,N′′′−ジイソブチリデン−N′,N″−ジメチル−3,4,3′,4′−ビフェニルテトラアミン、N,N″−ジシクロヘキシリデン−N′,N′′′−ジメチル−3,4,3′,4′−ビフェニルテトラアミン、N,N′′′−ジシクロヘキシリデン−N′,N′′′−ジメチル−3,4,3′,4′−ビフェニルテトラアミン、N,N″−ジシクロヘキサノメチリデン−N′,N′′′−ジメチル−3,4,3′,4′−ビフェニルテトラアミン、N,N′′′−ジシクロヘキサノメチリデン−N′,N′′′−ジメチル−3,4,3′,4′−ビフェニルテトラアミン、N,N″−ジベンジリデン−N′,N′′′−ジメチル−3,4,3′,4′−ビフェニルテトラアミン、N,N′′′−ジベンジリデン−N′,N′′′−ジメチル−3,4,3′,4′−ビフェニルテトラアミン、N,N″−ジイソプロピリデン−N′,N′′′−ジフェニル−3,4,3′,4′−ビフェニルテトラアミン、N,N′′′−ジイソプロピリデン−N′,N″−ジフェニル−3,4,3′,4′−ビフェニルテトラアミン、N,N″−ジシクロヘキシリデン−N′,N′′′−ジフェニル−3,4,3′,4′−ビフェニルテトラアミン、N,N′′′−ジシクロヘキシリデン−N′,N′′′−ジフェニル−3,4,3′,4′−ビフェニルテトラアミン、N,N″−ジベンジリデン−N′,N′′′−ジフェニル−3,4,3′,4′−ビフェニルテトラアミン、N,N′′′−ジベンジリデン−N′,N′′′−ジフェニル−3,4,3′,4′−ビフェニルテトラアミンなどのRc、Rdが共にモノ置換アミノ基であるイミン誘導体が含まれる。
本発明の芳香族ポリアミン誘導体には、上記の他に、N,N′−ジイソプロピリデン−3,3′−ジヒドロキシ−4,4′−ビフェニルジアミン、N,N′−ジイソプロピリデン−3,4′−ジヒドロキシ−4,3′−ビフェニルジアミン、N,N′−ジイソブチリデン−3,3′−ジヒドロキシ−4,4′−ビフェニルジアミン、N,N′−ジイソブチリデン−3,4′−ジヒドロキシ−4,3′−ビフェニルジアミン、N,N′−ジシクロヘキシリデン−3,3′−ジヒドロキシ−4,4′−ビフェニルジアミン、N,N′−ジシクロヘキシリデン−3,4′−ジヒドロキシ−4,3′−ビフェニルジアミン、N,N′−ジシクロヘキサノメチリデン−3,3′−ジヒドロキシ−4,4′−ビフェニルジアミン、N,N′−ジシクロヘキサノメチリデン−3,4′−ジヒドロキシ−4,3′−ビフェニルジアミン、N,N′−ジベンジリデン−3,3′−ジヒドロキシ−4,4′−ビフェニルジアミン、N,N′−ジベンジリデン−3,4′−ジヒドロキシ−4,3′−ビフェニルジアミンなどのRc、Rdが共に水酸基であるイミン誘導体;N,N′−ジイソプロピリデン−3,3′−ジメルカプト−4,4′−ビフェニルジアミン、N,N′−ジイソプロピリデン−3,4′−ジメルカプト−4,3′−ビフェニルジアミン、N,N′−ジイソブチリデン−3,3′−ジメルカプト−4,4′−ビフェニルジアミン、N,N′−ジイソブチリデン−3,4′−ジメルカプト−4,3′−ビフェニルジアミン、N,N′−ジシクロヘキシリデン−3,3′−ジメルカプト−4,4′−ビフェニルジアミン、N,N′−ジシクロヘキシリデン−3,4′−ジメルカプト−4,3′−ビフェニルジアミン、N,N′−ジシクロヘキサノメチリデン−3,3′−ジメルカプト−4,4′−ビフェニルジアミン、N,N′−ジシクロヘキサノメチリデン−3,4′−ジメルカプト−4,3′−ビフェニルジアミン、N,N′−ジベンジリデン−3,3′−ジメルカプト−4,4′−ビフェニルジアミン、N,N′−ジベンジリデン−3,4′−ジメルカプト−4,3′−ビフェニルジアミンなどのRc、Rdが共にメルカプト基であるイミン誘導体が含まれる。
本発明の芳香族ポリアミン誘導体には、上記の他に、Ra〜Rdのうち少なくとも2つが互いに結合して環を形成した化合物が含まれる。このような芳香族ポリアミン誘導体としては、例えば、分子内のアミノ基が前記複数のアミノ基を同時に保護しうる保護基(多官能保護基)で保護された化合物などが挙げられる。このような化合物の代表的な例としては、1,2,4,5−テトラアミノベンゼンの分子内の2つのアミノ基が1つのオキサリル基で保護された化合物[式(1)において、環Zがベンゼン環又はビフェニル環であって、RaとRc、RbとRdがそれぞれオキサリル基で保護されたアミノ基である化合物]、1,2,4,5−テトラアミノベンゼンが2つのブタン−2,3−ジイリデン基で保護された化合物[式(1)において、環Zがベンゼン環又はビフェニル環であって、RaとRc、RbとRdがそれぞれブタン−2,3−ジイリデン基で保護されたアミノ基である化合物]などが挙げられる。
前記式(1)で表される芳香族ポリアミン誘導体は、例えば、式(1)において、Ra、Rb、Rc、Rdの少なくとも一つがアミノ基である芳香族アミン化合物と、アミノ基を保護する保護基に対応するケトンまたはアルデヒドを室温または加熱下で脱水縮合することにより調製できる。
反応には酸触媒を用いてもよい。酸触媒としては硫酸、塩酸などの無機酸;酢酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸などの有機酸;フッ化ホウ素―エーテル錯体などのルイス酸、酸性イオン交換樹脂などの樹脂などを使用できる。酸触媒の使用量は、酸の種類に応じて適宜選択でき、芳香族ポリアミンに対して、例えば0〜70モル%、好ましくは0〜60モル%程度である。
脱水方法としては、例えば、トルエンなどの共沸溶媒を用い、共沸した水と溶媒とをDean−stark水分離器により分離して溶媒のみを還流させる方法、ソックスレー抽出器に無水硫酸マグネシウムやモレキュラーシーブなどの乾燥剤を入れて溶媒を還流させて脱水する方法などが挙げられ、また、反応系中にジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)などの脱水剤を共存させて脱水する方法を用いることもできる。
反応は、溶媒の存在下又は非存在下で行うことができる。溶媒としては、反応を阻害しないものであれば特に限定されず、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素、塩化メチレンなどのハロゲン化炭化水素、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどの非プロトン性極性溶媒などが挙げられる。ケトン又はアルデヒドの使用量は、原料の芳香族アミン化合物の保護するアミノ基1モルに対して、通常1モル以上であり、大過剰量用いることもできる。反応温度は、反応原料の種類などに応じて、例えば、10〜150℃、好ましくは15〜120℃程度の範囲から選択できる。反応圧力は、常圧、加圧下、減圧下の何れであってもよい。反応は、窒素雰囲気下で行ってもよく、回分式、半回分式、連続式などの慣用の方法により行うことができる。
上記反応により、原料の芳香族アミン化合物に対応する式(1)で表される芳香族ポリアミン誘導体が生成する。例えば、1,2,4,5−ベンゼンテトラアミンとアセトンからはN,N′,N″,N′′′−テトライソプロピリデン−1,2,4,5−ベンゼンテトラアミン等が生成し、3,4,3′,4′−ビフェニルテトラアミンとメチルエチルケトンからはN,N′,N″,N′′′−テトライソブチリデン−3,4,3′,4′−ビフェニルテトラアミン等が生成する。なお、原料の芳香族アミン化合物がアミノ基を複数個有する場合は、ケトン又はアルデヒドの量や反応温度、反応時間等を調整することにより、アルキリデン基による保護されたアミノ基の個数をコントロールできる。
反応終了後、反応生成物は、例えば、濾過、濃縮、蒸留、抽出、晶析、再結晶、吸着、クロマトグラフィーなどの分離手段やこれらを組み合わせた分離手段により分離精製できる。例えば、減圧下で未反応ケトン又はアルデヒドを除去し、酸触媒を用いた場合にはアルカリ等により残存する酸成分を除去する工程を経て、蒸留や再結晶、又はカラムクロマトグラフィーなどにより目的化合物を精製することができる。
本発明の芳香族ポリアミン誘導体は、半導体部品などに有用な高耐熱性且つ低誘電率のポリベンズアゾール類からなる絶縁膜を形成するための材料として有用である。
ポリベンズアゾール類からなる絶縁膜は、上記芳香族ポリアミン誘導体とアダマンタンポリカルボン酸又はその誘導体とを有機溶媒に溶解して得られる重合性組成物からなる絶縁膜形成材料を、基材上に塗布した後、加熱して重合反応させることにより形成される。この際、芳香族ポリアミン誘導体は、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
アダマンタンポリカルボン酸又はその誘導体としては、下記式(2)又は(2a)で表される化合物を使用できる。
(式中、Xは水素原子、炭化水素基、又はR
4を示し、R
1、R
2、R
3、R
4は、同一又は異なって、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基、又はハロゲン化カルボニル基を示し、Y
1、Y
2、Y
3、Y
4は、同一又は異なって、単結合又は2価の芳香族環式基を示す。但し、Xが水素原子又は炭化水素基である場合には、R
1、R
2、R
3のうち少なくとも一つは、保護基で保護されたカルボキシル基又はハロゲン化カルボニル基(ハロホルミル基)を示し、XがR
4である場合には、R
1、R
2、R
3、R
4のうち少なくとも一つは、保護基で保護されたカルボキシル基又はハロゲン化カルボニル基を示す)
(式中、X
aは水素原子、カルボキシル基、又は炭化水素基を示し、Y
1、Y
2、Y
3、Y
4は、同一又は異なって、単結合又は2価の芳香族環式基を示す)
式中、Xにおける炭化水素基には、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、及びこれらの結合した基などが含まれる。脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、デシル、ドデシル基などの炭素数1〜20(好ましくは1〜10、さらに好ましくは1〜6)程度の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基;ビニル、アリル、1−ブテニル、3−メチル−4−ペンテニル基などの炭素数2〜20(好ましくは2〜10、さらに好ましくは2〜5)程度の直鎖状又は分岐鎖状アルケニル基;エチニル、プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル基などの炭素数2〜20(好ましくは2〜10、さらに好ましくは2〜5)程度の直鎖状又は分岐鎖状アルキニル基などが挙げられる。
脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチル基などの3〜20員(好ましくは3〜15員、さらに好ましくは3〜12員)程度のシクロアルキル基、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル基などの3〜20員(好ましくは3〜15員、さらに好ましくは3〜10員)程度のシクロアルケニル基などの単環の脂環式炭化水素基;アダマンタン環、パーヒドロインデン環、デカリン環、パーヒドロフルオレン環、パーヒドロアントラセン環、パーヒドロフェナントレン環、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン環、パーヒドロアセナフテン環、パーヒドロフェナレン環、ノルボルナン環、ノルボルネン環など2〜4環程度の橋かけ環式炭素環などを有する橋かけ環炭化水素基などが挙げられる。芳香族炭化水素基としては、フェニル、ナフチル基などの炭素数6〜20(好ましくは6〜14)程度の芳香族炭化水素基が挙げられる。
脂肪族炭化水素基と脂環式炭化水素基とが結合した炭化水素基には、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、2−シクロヘキシルエチル基などのシクロアルキル−アルキル基(例えば、C3-20シクロアルキル−C1-4アルキル基など)が含まれる。また、脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基とが結合した炭化水素基には、アラルキル基(例えば、C7-18アラルキル基など)、アルキル置換アリール基(例えば、1〜4個程度のC1-4アルキル基が置換したフェニル基又はナフチル基など)などが含まれる。
前記脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、及びこれらの結合した基は、置換基を有していてもよい。置換基としては反応を損なわないものであれば特に限定されない。このような置換基として、例えば、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、置換オキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ基などのアルコキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、シリルオキシ基など)、置換オキシカルボニル基(例えば、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基など)、アシル基(例えば、アセチル基などの脂肪族アシル基、アセトアセチル基、脂環式アシル基、芳香族アシル基)、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、複素環基などが挙げられる。
前記式(2)又は(2a)で表されるアダマンタンポリカルボン酸及びその誘導体において、Xが水素原子又は炭化水素基である場合は、アダマンタン骨格の1,3,5位にそれぞれ官能基(カルボキシル基又はその等価基)を有する3官能アダマンタン化合物を示し、XがR4、すなわち、Xが保護基で保護されていてもよいカルボキシル基又はハロゲン化カルボニル基である場合は、アダマンタン骨格の1,3,5,7位にそれぞれ官能基(カルボキシル基又はその等価基)を有する4官能アダマンタン化合物を示している。
本発明では、Xは、水素原子、C1-6アルキル基、C6-14芳香族炭化水素基、又はR4であるのが好ましい。また、Xとして、特にR4を用いた場合には、4官能基アダマンタン化合物となるため、より高い架橋性を得ることができる点で好ましい。
式(2)中、R1〜R4におけるカルボキシル基の保護基には、例えばアルコキシ基(メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、s−ブトキシ、t−ブトキシ、ヘキシルオキシなどのC1-10アルコキシ基;メトキシメチルオキシ、メトキシエトキシメチルオキシ基などの(C1-4アルコキシ)1-2C1-4アルコキシ基など)、シクロアルキルオキシ基(シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシなどのC3-20シクロアルキルオキシ基など)、テトラヒドロフラニルオキシ基、テトラヒドロピラニルオキシ基、アリールオキシ基(フェノキシ、メチルフェノキシ基などのC6-20アリールオキシ基)、アラルキルオキシ基(ベンジルオキシ、ジフェニルメチルオキシ基などのC7-18アラルキルオキシ基)、トリアルキルシリルオキシ基(トリメチルシリルオキシ、トリエチルシリルオキシ基などのトリC1-4アルキルシリルオキシ基)、置換基を有してもよいアミノ基(アミノ基;メチルアミノ、ジメチルアミノ、エチルアミノ、ジエチルアミノなどのモノまたはジ置換C1-6アルキルアミノ基;ピロリジノ、ピペリジノ基などの環状アミノ基)、置換基を有してもよいヒドラジノ基[ヒドラジノ基、N−フェニルヒドラジノ基、アルコキシカルボニルヒドラジノ基(t−ブトキシカルボニルヒドラジノ基などのC1-10アルコキシカルボニルヒドラジノ基など)、アラルキルオキシカルボニルヒドラジノ基(ベンジルオキシカルボニルヒドラジノ基などのC7-18アラルキルオキシカルボニルヒドラジノ基)など]、アシルオキシ基(アセトキシ、プロピオニルオキシ基などのC1-10アシルオキシ基など)などが含まれる。カルボキシル基の保護基は、これらに限定されず、有機合成の分野で用いられる他の保護基も使用できる。
ハロゲン化カルボニル基としては、塩化カルボニル基、臭化カルボニル基、フッ化カルボニル基、ヨウ化カルボニル基が挙げられる。
式(2)で表される化合物は、R1〜R4がアルコキシカルボニル基やアリールオキシカルボニル基等の場合はアダマンタンポリカルボン酸エステルであり、R1〜R4が置換基を有してもよいカルバモイル基の場合は、アダマンタンポリカルボン酸アミドであり、R1〜R4がハロゲン化カルボニル基の場合はアダマンタンポリカルボン酸ハライドである。
好ましいR1〜R4には、カルボキシル基、C1-6アルコキシ−カルボニル基、(C1-4アルコキシ)1-2−C1-4アルコキシ−カルボニル基、N−置換カルバモイル基、テトラヒドロピラニルオキシカルボニル基、テトラヒドロフラニルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、トリアルキルシリルオキシカルボニル基、ハロゲン化カルボニル基が含まれる。
Y1〜Y4における2価の芳香族環式基に対応する芳香環には、単環または多環の芳香族炭化水素環及び芳香族複素環が含まれる。単環の芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環が挙げられる。多環の芳香族炭化水素環としては、例えば、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、フェナレン環などの2つ以上の芳香環がそれぞれ2個以上の原子を共有した縮合環構造をもつもの;ビフェニル環、ビフェニレン環、フルオレン環などの2つ以上の芳香環が単結合等の連結基や脂環式環を介して結合した構造のものなどが挙げられる。芳香族複素環としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子などのヘテロ原子を1または複数含む単環または多環の芳香族複素環が挙げられる。芳香族複素環の具体例としては、フラン環、チオフェン環、ピリジン環、ピコリン環などの単環;キノリン環、イソキノリン環、アクリジン環、フェナジン環などの多環などが挙げられる。これらの芳香環は置換基を有していてもよい。前記置換基としては、Xにおける炭化水素基が有していてもよい置換基として例示のものが挙げられる。
本発明におけるアダマンタンポリカルボン酸及びその誘導体のうち3官能アダマンタン化合物(アダマンタントリカルボン酸及びその誘導体)には、3官能基全てがカルボキシル基である化合物、1つの官能基が保護基で保護されたカルボキシル基又はハロゲン化カルボニル基である化合物、2つの官能基が保護基で保護されたカルボキシル基又はハロゲン化カルボニル基である化合物、3官能基全てが保護基で保護されたカルボキシル基又はハロゲン化カルボニル基である化合物などが含まれる。
3官能基全てがカルボキシル基である3官能アダマンタン化合物の代表的な例としては、1,3,5−アダマンタントリカルボン酸、7−メチル−1,3,5−アダマンタントリカルボン酸、7−フェニル−1,3,5−アダマンタントリカルボン酸、1,3,5−トリス(4−カルボキシフェニル)アダマンタン、1,3,5−トリス(4−カルボキシフェニル)−7−メチルアダマンタン、1,3,5−トリス(4−カルボキシフェニル)−7−フェニルアダマンタンなどが挙げられる。
1つの官能基が保護基で保護されたカルボキシル基又はハロゲン化カルボニル基である3官能アダマンタン化合物の代表的な例としては、1−メトキシカルボニル−3,5−アダマンタンジカルボン酸、1−(t−ブトキシカルボニル)−3,5−アダマンタンジカルボン酸、1−テトラヒドロピラニル(THP)オキシカルボニル−3,5−アダマンタンジカルボン酸、1−フェノキシカルボニル−3,5−アダマンタンジカルボン酸、1−メトキシメチル(MEM)オキシカルボニル−3,5−アダマンタンジカルボン酸、1−トリメチルシリル(TMS)オキシカルボニル−3,5−アダマンタンジカルボン酸、1,3−ジカルボキシ−5−アダマンタンカルボン酸クロリド、1−ジエチルカルバモイル−3,5−アダマンタンジカルボン酸、1−ピロリジニルカルボニル−3,5−アダマンタンジカルボン酸、1,3−ビス(4−カルボキシフェニル)−5−(4−メトキシカルボニルフェニル)アダマンタンなどが挙げられる。
2つの官能基が保護基で保護されたカルボキシル基又はハロゲン化カルボニル基である3官能アダマンタン化合物の代表的な例としては、1,3−ビス(メトキシカルボニル)−5−アダマンタンモノカルボン酸、1,3−ビス(t−ブトキシカルボニル)−5−アダマンタンモノカルボン酸、1,3−ビス(テトラヒドロピラニル(THP)オキシカルボニル)−5−アダマンタンモノカルボン酸、1,3−ビス(フェノキシカルボニル)−5−アダマンタンモノカルボン酸、1,3−ビス(メトキシメチル(MEM)オキシカルボニル)−5−アダマンタンモノカルボン酸、1,3−ビス(トリメチルシリル(TMS)オキシカルボニル)−5−アダマンタンモノカルボン酸、1−カルボキシ−3,5−アダマンタンジカルボン酸ジクロリド、1,3−ビス(ジエチルカルバモイル)−5−アダマンタンモノカルボン酸、1,3−ビス(1−ピロリジニルカルボニル)−5−アダマンタンモノカルボン酸、1−(4−カルボキシフェニル)−3,5−ビス(4−メトキシカルボニルフェニル)−アダマンタンなどが挙げられる。
3官能基全てが保護基で保護されたカルボキシル基又はハロゲン化カルボニル基である3官能アダマンタン化合物の代表的な例としては、例えば、1,3,5−トリス(メトキシカルボニル)アダマンタン、1,3,5−トリス(t−ブトキシカルボニル)アダマンタン、1,3,5−トリス(テトラヒドロピラニル(THP)オキシカルボニル)アダマンタン、1,3,5−トリス(フェノキシカルボニル)アダマンタン、1,3,5−トリス(メトキシメチル(MEM)オキシカルボニル)アダマンタン、1,3,5−トリス(トリメチルシリル(TMS)オキシカルボニル)アダマンタン、1,3,5−アダマンタントリカルボン酸トリクロリド、1,3,5−トリス(ジエチルカルバモイル)アダマンタン、1,3,5−トリス(1−ピロリジニルカルボニル)アダマンタン、1,3,5−トリス(4−メトキシカルボニルフェニル)アダマンタンなどが含まれる。
本発明におけるアダマンタンポリカルボン酸及びその誘導体のうち4官能アダマンタン化合物(アダマンタンテトラカルボン酸及びその誘導体)には、4官能基全てがカルボキシル基である化合物、1つの官能基が保護基で保護されたカルボキシル基又はハロゲン化カルボニル基である化合物、2つの官能基が保護基で保護されたカルボキシル基又はハロゲン化カルボニル基である化合物、3つの官能基が保護基で保護されたカルボキシル基又はハロゲン化カルボニル基である化合物、4官能基全てが保護基で保護されたカルボキシル基又はハロゲン化カルボニル基である化合物などが含まれる。
4官能基全てがカルボキシル基である4官能アダマンタン化合物の代表的な例としては、1,3,5,7−アダマンタンテトラカルボン酸、1,3,5,7−テトラキス(4−カルボキシフェニル)アダマンタンなどが挙げられる。
1つの官能基が保護基で保護されたカルボキシル基又はハロゲン化カルボニル基である4官能アダマンタン化合物の代表的な例としては、1−メトキシカルボニル−3,5,7−アダマンタントリカルボン酸、1−(t−ブトキシカルボニル)−3,5,7−アダマンタントリカルボン酸、1−テトラヒドロピラニル(THP)オキシカルボニル−3,5,7−アダマンタントリカルボン酸、1−フェノキシカルボニル−3,5,7−アダマンタントリカルボン酸、1−メトキシメチル(MEM)オキシカルボニル−3,5,7−アダマンタントリカルボン酸、1−トリメチルシリル(TMS)オキシカルボニル−3,5,7−アダマンタントリカルボン酸、1,3,5−トリカルボキシ−7−アダマンタンカルボン酸クロリド、1−ジエチルカルバモイル−3,5,7−アダマンタントリカルボン酸、1−(1−ピロリジニルカルボニル)−3,5,7−アダマンタントリカルボン酸、1,3,5−トリス(4−カルボキシフェニル)−7−(4−メトキシカルボニルフェニル)アダマンタンなどが挙げられる。
2つの官能基が保護基で保護されたカルボキシル基又はハロゲン化カルボニル基である4官能アダマンタン化合物の代表的な例としては、1,3−ビス(メトキシカルボニル)−5,7−アダマンタンジカルボン酸、1,3−ビス(t−ブトキシカルボニル)−5,7−アダマンタンジカルボン酸、1,3−ビス(テトラヒドロピラニル(THP)オキシカルボニル)−5,7−アダマンタンジカルボン酸、1,3−ビス(フェノキシカルボニル)−5,7−アダマンタンジカルボン酸、1,3−ビス(メトキシメチル(MEM)オキシカルボニル)−5,7−アダマンタンジカルボン酸、1,3−ビス(トリメチルシリル(TMS)オキシカルボニル)−5,7−アダマンタンジカルボン酸、1,3−ジカルボキシ−5,7−アダマンタンジカルボン酸ジクロリド、1,3−ビス(ジエチルカルバモイル)−5,7−アダマンタンジカルボン酸、1,3−ビス(1−ピロリジニルカルボニル)−5,7−アダマンタンジカルボン酸、1,3−ビス(4−カルボキシフェニル)−5,7−ビス(4−メトキシカルボニルフェニル)アダマンタンなどが挙げられる。
3つの官能基が保護基で保護されたカルボキシル基又はハロゲン化カルボニル基である4官能アダマンタン化合物の代表的な例としては、1,3,5−トリス(メトキシカルボニル)−7−アダマンタンモノカルボン酸、1,3,5−トリス(t−ブトキシカルボニル)−7−アダマンタンモノカルボン酸、1,3,5−トリス(テトラヒドロピラニル(THP)オキシカルボニル)−7−アダマンタンモノカルボン酸、1,3,5−トリス(フェノキシカルボニル)−7−アダマンタンモノカルボン酸、1,3,5−トリス(メトキシメチル(MEM)オキシカルボニル)−7−アダマンタンモノカルボン酸、1,3,5−トリス(トリメチルシリル(TMS)オキシカルボニル)−7−アダマンタンモノカルボン酸、1−カルボキシ−3,5,7−アダマンタントリカルボン酸トリクロリド、1,3,5−トリス(ジエチルカルバモイル)−7−アダマンタンモノカルボン酸、1,3,5−トリス(1−ピロリジニルカルボニル)−7−アダマンタンモノカルボン酸、1−(4−カルボキシフェニル)−3,5,7−トリス(4−メトキシカルボニルフェニル)アダマンタンなどが挙げられる。
4官能基全てが保護基で保護されたカルボキシル基又はハロゲン化カルボニル基である4官能アダマンタン化合物の代表的な例としては、1,3,5,7−テトラキス(メトキシカルボニル)アダマンタン、1,3,5,7−テトラキス(t−ブトキシカルボニル)アダマンタン、1,3,5,7−テトラキス(テトラヒドロピラニル(THP)オキシカルボニル)アダマンタン、1,3,5,7−テトラキス(フェノキシカルボニル)アダマンタン、1,3,5,7−テトラキス(メトキシメチル(MEM)オキシカルボニル)アダマンタン、1,3,5,7−テトラキス(トリメチルシリル(TMS)オキシカルボニル)アダマンタン、1,3,5,7−アダマンタンテトラカルボン酸テトラクロリド、1,3,5,7−テトラキス(ジエチルカルバモイル)アダマンタン、1,3,5,7−テトラキス(1−ピロリジニルカルボニル)アダマンタン、1,3,5,7−テトラキス(4−メトキシカルボニルフェニル)アダマンタンなどが挙げられる。
これらのアダマンタンポリカルボン酸、アダマンタンカルボン酸誘導体は、それぞれ、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
前記式(2)又は(2a)で表されるアダマンタンポリカルボン酸は、公知乃至慣用の方法により、又は公知の有機合成反応を利用することにより調製することができる。
絶縁膜形成材料には、上記以外の他の成分を含んでいてもよく、例えば、重合反応を促進するための触媒(硫酸などの酸触媒等)、溶液の粘性を高めるための増粘剤(エチレングリコール等)、重合後の分子量を調整するためのモノカルボン酸類(アダマンタンカルボン酸等)、重合後の架橋度を調整するためのジカルボン酸類(アダマンタンジカルボン酸等)、形成される絶縁被膜の基板密着性を高めるための密着促進剤(トリメトキシビニルシラン等)などを少量添加してもよい。
溶媒としては、アダマンタンポリカルボン酸類と芳香族ポリアミン誘導体との環形成反応を阻害するものでなければ特に限定されない。このような溶媒としては、例えば、脂肪族炭化水素(ヘキサン、ヘプタン、オクタンなど)、脂環式炭化水素(シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなど)、芳香族炭化水素(ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メシチレンなど)、ハロゲン化炭化水素(ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素など)、アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコールなど)、エーテル類[ジオキサン、テトラヒロドフラン、ジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)など]、エステル類[ギ酸エステル、酢酸エステル、プロピオン酸エステル、安息香酸エステル、γ―ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)など]、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなど)、カルボン酸類(ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸など)、非プロトン性極性溶媒(アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル類;ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、アセトアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドンなどのアミド類;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類)などが挙げられる。これらの溶媒は単独で若しくは2種類以上を混合して使用してもよい。
絶縁膜形成材料を構成する重合性組成物の調製法は、前記アダマンタンポリカルボン酸類と芳香族ポリアミン誘導体(モノマー成分)とを溶媒に完全に溶解しうる方法であれば特に限定されず、例えば、モノマー成分、溶媒、その他の成分からなる混合物を撹拌又は静置することにより行われる。アダマンタンポリカルボン酸類と芳香族ポリアミン誘導体の混合比は、形成する絶縁膜の機能に影響しない限り、使用する溶媒に対する溶解度に応じて任意の比率で使用できる。好ましい混合比は、アダマンタンポリカルボン酸類/芳香族ポリアミン誘導体(モル比)=10/90〜60/40、より好ましくは20/80〜50/50程度である。
アダマンタンポリカルボン酸類と芳香族ポリアミン誘導体とを合計した量(モノマー総量)の溶媒に対する濃度は、使用する溶媒に対する溶解度に応じて任意に選択され、全モノマー濃度として、例えば5〜70重量%、好ましくは10〜60重量%程度である。前記芳香族ポリアミン誘導体を含む絶縁膜形成材料によれば、溶媒への溶解度の向上により高濃度のモノマー成分を溶解することができる。高濃度のモノマー成分を溶解した絶縁膜形成材料により形成される絶縁膜は、膜厚を大きくすることができるため優れた電気的特性を示し、種々の半導体製造プロセスに対応した膜厚を有する絶縁膜を形成することができる。
溶解は、芳香族ポリアミン誘導体が酸化されない限度において、例えば空気雰囲気下で行われ、好ましくは窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で行われる。溶解させる温度は、特に限定されず、モノマーの溶解性や溶媒の沸点に応じて加熱してもよく、例えば0〜200℃、好ましくは10〜150℃程度である。
なお、絶縁膜形成材料としては、高い架橋度により高耐熱性を発揮しうる絶縁膜が得られるため、アダマンタンポリカルボン酸類と芳香族ポリアミン誘導体との重縮合生成物(ポリベンズアゾール)を利用することが考えられる。しかし、このようなポリベンズアゾールは、高い架橋性を有するため溶媒への溶解性が低く、塗布により薄膜を形成するための絶縁膜形成材料に用いることは困難であった。これに対し、前記芳香族ポリアミン誘導体を含む絶縁膜形成材料は、上記溶媒にモノマー成分が完全に溶解されているため、そのまま塗布液として基材上に塗布した後に重合させて、高架橋型ポリベンズアゾールからなる絶縁膜を容易に形成することができる。
絶縁膜形成材料と塗布する基材としては、例えば、シリコンウェハー、金属基板、セラミック基板などが挙げられる。塗布方法としては、特に限定されず、スピンコート法、ディップコート法、スプレー法などの慣用の方法を用いることができる。
加熱温度は、用いる重合性成分が重合する温度であれば特に制限されないが、例えば100〜500℃、好ましくは150〜450℃程度であり、一定温度又は段階的温度勾配が付されてもよい。加熱は、形成される薄膜の性能に影響がない限り、例えば空気雰囲気下で行われてもよく、好ましくは不活性ガス(窒素、アルゴンなど)雰囲気下、又は真空雰囲気下で行われる。
加熱により、絶縁膜形成材料に含まれるアダマンタンポリカルボン酸類と芳香族ポリアミン誘導体とが、通常、カルボキシル基の保護基及び/又はアミノ基の保護基の脱離を伴って重縮合し、重合生成物としてアダマンタン骨格含有ポリベンズアゾール類(イミダゾール、オキサゾール、チアゾール類)等が形成される。
加熱により形成された絶縁膜は、絶縁膜形成材料から形成された重合体に含まれるアダマンタン環、芳香環、及びアゾール環又は6員の含窒素環(重縮合部分に形成される環)を主な構成単位として含んでいる。上記の絶縁膜は、例えば、3つの官能基を有するアダマンタンポリカルボン酸を用いることにより、3次元構造を有するアダマンタン化合物と2次元構造を有する芳香族ポリアミンとが結合して、アダマンタン骨格を頂点(架橋点)として3方向に架橋した構造(3つの6角形が互いに2頂点又は2辺を共有してなるユニット)を有する高架橋型高分子膜が形成される。また、4つの官能基を有するアダマンタンポリカルボン酸を用いることにより、アダマンタン骨格を頂点(架橋点)として4方向に架橋した構造(3つの6角形が互いに2辺を共有してなるユニット)を有する網目状の高分子膜を形成することができる。このような絶縁膜は、内部に多数の分子レベルの空孔を均一に分散して有するため優れた比誘電率を有することができる。
加熱により形成された絶縁膜の膜厚は、例えば50nm以上(50〜2000nm程度)、好ましくは100nm以上(100〜2000nm程度)、より好ましくは300nm以上(300〜2000nm程度)である。上記の絶縁形成材料によれば、モノマー濃度の高い塗布液を得ることができるため、ポリベンズアゾール類からなる絶縁膜であっても上記のような膜厚を実現することができる。50nm未満では、リーク電流が発生するなどの電気的特性に悪影響を及ぼしたり、半導体製造工程における化学的機械研磨(CMP)による膜の平坦化が困難となるなどの問題が生じやすいため、特に層間絶縁膜用途としては適さない。
上記の絶縁膜は、低誘電率且つ高耐熱性の絶縁膜を形成することができる。絶縁膜は、例えば、半導体装置等の電子材料部品における絶縁被膜として使用することができ、特に層間絶縁膜として有用である。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、赤外線吸収スペクトルデータにおける「s」、「m」、「w」は、各記号の前に記された波長の吸収強度を示し、それぞれ「強い」、「中程度」、「弱い」吸収があったことを意味している。高分子膜の膜厚は、エリプソメーターを用いて測定した。なお、実施例1〜5、実施例8〜10、実施例13〜18は参考例として記載するものである。
合成例1
1,3,5−アダマンタントリカルボン酸トリメチルエステルの合成
撹拌機、冷却管、温度計を備えた200mlフラスコに、1,3,5−アダマンタントリカルボン酸26.8g(100mmol)、メタノール100ml、硫酸0.49g(5mmol)を加え、窒素雰囲気下にて3時間加熱還流させた。これを室温まで冷却させた後、減圧下メタノールを除去し、反応混合物を酢酸エチルに溶解して得られた溶液を、10%炭酸ナトリウム水溶液、水で洗浄し、残存の酸成分を除去した。得られた酢酸エチル溶液から、減圧下酢酸エチルを除去して、1,3,5−アダマンタントリカルボン酸トリメチルエステル27.3g(88mmol)を得た(収率88%)。
[NMRスペクトルデータ]
1H−NMR(CDCl
3) δ(ppm):1.84(m,6H),2.01(m,6H),2.30(m,1H),3.65(m,9H)
13C−NMR(CDCl
3) δ(ppm):27.86,37.06,39.11,41.28,51.91,176.40
実施例1
3,3′−ジアミノベンジジンテトライソプロパノイミン[N,N′,N″,N′′′−テトライソプロピリデン−3,4,3′,4′−ビフェニルテトラアミン]の合成
脱水剤としてモレキュラシーブス4Aを加えたソックスレー抽出器、撹拌機、冷却管、温度計を備えた200mlフラスコに、3,3′−ジアミノベンジジン21.4g(100mmol)とアセトン100ml、p−トルエンスルホン酸・1水和物0.95g(5mmol)を加え、窒素雰囲気下にて3時間加熱還流させた。これを室温まで冷却させた後、減圧下アセトンを除去したものに酢酸エチルを加え、水、10%炭酸ナトリウム水溶液にて洗浄することで残存の酸成分を除去した。この溶液から、減圧下酢酸エチルを除去した後、シリカゲルクロマトグラフィーにて精製することで、目的の3,3′−ジアミノベンジジンテトライソプロパノイミン[N,N′,N″,N′′′−テトライソプロピリデン−3,4,3′,4′−ビフェニルテトラアミン]28.5g(76mmol)を得た(収率76%)。
赤外線吸収スペクトルデータ(cm
-1):1627(C=N)
MS:375(M+H),359,333,324
実施例2
3,3′−ジアミノベンジジンモノイソプロパノイミン[N′−イソプロピリデン−3,4,3′,4′−ビフェニルテトラアミン]及び3,3′−ジアミノベンジジンジイソプロパノイミン[N′,N′′′−ジイソプロピリデン−3,4,3′,4′−ビフェニルテトラアミン]の合成
脱水剤としてモレキュラシーブス4Aを加えたソックスレー抽出器、撹拌機、冷却管、温度計を備えた200mlフラスコに、3,3′−ジアミノベンジジン21.4g(100mmol)とアセトン100ml、酢酸3.0g(50mmol)を加え、窒素雰囲気下にて3時間加熱還流させた。これを室温まで冷却させた後、減圧下アセトンを除去したものを、シリカゲルクロマトグラフィーにて精製することで、目的の3,3′−ジアミノベンジジンモノイソプロパノイミン[N′−イソプロピリデン−3,4,3′,4′−ビフェニルテトラアミン]16.5g(65mmol)と、3,3′−ジアミノベンジジンジイソプロパノイミン[N′,N′′′−ジイソプロピリデン−3,4,3′,4′−ビフェニルテトラアミン]4.7g(16mmol)を得た。
[3,3′−ジアミノベンジジンモノイソプロパノイミンのスペクトルデータ]
赤外線吸収スペクトルデータ(cm
-1):1628(C=N)
MS:255(M+H),238,198
[3,3′−ジアミノベンジジンジイソプロパノイミンのスペクトルデータ]
赤外線吸収スペクトルデータ(cm
-1):1627(C=N)
MS:295(M+H),278,238
実施例3
3,3′−ジアミノベンジジンジイソブチルイミン[N,N′,N″,N′′′−テトライソブチリデン−3,4,3′,4′−ビフェニルテトラアミン]の合成
脱水剤としてモレキュラシーブス4Aを加えたソックスレー抽出器、撹拌機、冷却管、温度計を備えた200mlフラスコに、3,3′−ジアミノベンジジン21.4g(100mmol)とメチルエチルケトン100ml、p−トルエンスルホン酸・1水和物0.95g(5mmol)を加え、窒素雰囲気下にて60℃で5時間撹拌させた。これを室温まで冷却させた後、減圧下メチルエチルケトンを除去したものに酢酸エチルを加え、水、10%炭酸ナトリウム水溶液にて洗浄することで残存の酸成分を除去した。この溶液から、減圧下酢酸エチルを除去した後、シリカゲルクロマトグラフィーにて精製することで、目的の3,3′−ジアミノベンジジンテトライソブチルイミン[N,N′,N″,N′′′−テトライソブチリデン−3,4,3′,4′−ビフェニルテトラアミン]30.1g(70mmol)を得た。
赤外線吸収スペクトルデータ(cm
-1):1630(C=N)
MS:431(M+H),375
実施例4
3,3′−ジアミノベンジジンテトラシクロヘキサノメチルイミン[N,N′,N″,N′′′−テトラシクロヘキサノメチリデン−3,4,3′,4′−ビフェニルテトラアミン]の合成
Dean−stark装置、撹拌機、冷却管、温度計を備えた200mlフラスコに、3,3′−ジアミノベンジジン21.4g(100mmol)とトルエン100ml、シクロヘキサンカルボキシアルデヒド67.3g(600mmol)、p−トルエンスルホン酸・1水和物0.95g(5mmol)を加え、窒素雰囲気下にて8時間加熱還流させた。これを室温まで冷却させた後、減圧下トルエンを除去したものに酢酸エチルを加え、水、10%炭酸ナトリウム水溶液にて洗浄することで残存の酸成分を除去した。この溶液から、減圧下酢酸エチルを除去した後、シリカゲルクロマトグラフィーにて精製することで、目的の3,3′−ジアミノベンジジンテトラシクロヘキサノメチルイミン[N,N′,N″,N′′′−テトラシクロヘキサノメチリデン−3,4,3′,4′−ビフェニルテトラアミン]42.5g(72mmol)を得た。
赤外線吸収スペクトルデータ(cm
-1):1629(C=N)
MS:591(M+H),495
実施例5
3,3′−ジアミノベンジジンテトラシクロヘキサノイミン[N,N′,N″,N′′′−テトラシクロヘキシリデン−3,4,3′,4′−ビフェニルテトラアミン]の合成
撹拌機、冷却管、温度計を備えた200mlフラスコに、3,3′−ジアミノベンジジン21.4g(100mmol)とシクロヘキサノン100mlを加え、窒素雰囲気下60℃にて2時間還流させた。これを室温まで冷却させた後、減圧下シクロヘキサノンを除去したものを、シリカゲルクロマトグラフィーにて精製することで、目的の3,3′−ジアミノベンジジンテトラシクロヘキサノイミン[N,N′,N″,N′′′−テトラシクロヘキシリデン−3,4,3′,4′−ビフェニルテトラアミン]48.1g(90mmol)を得た。
赤外線吸収スペクトルデータ(cm
-1):1636(C=N)
MS:535(M+H),491,453
実施例6
3,3′−ジヒドロキシベンジジンジイソプロパノイミン[N,N′−ジイソプロピリデン−3,3′−ジヒドロキシベンジジン]の合成
脱水剤としてモレキュラシーブス4Aを加えたソックスレー抽出器、撹拌機、冷却管、温度計を備えた300mlフラスコに、3,3′−ジヒドロキシベンジジン21.6g(100mmol)とアセトン100ml、ジメチルアセトアミド100ml、p−トルエンスルホン酸・1水和物0.95g(5mmol)を加え、窒素雰囲気下60℃にて8時間撹拌させた。これを室温まで冷却させた後、減圧下アセトンとジメチルアセトアミドを除去したものを、シリカゲルクロマトグラフィーにて精製することで、目的の3,3′−ジヒドロキシベンジジンジイソプロパノイミン[N,N′−ジイソプロピリデン−3,3′−ジヒドロキシベンジジン]21.3g(72mmol)を得た。
赤外線吸収スペクトルデータ(cm
-1):1628(C=N)
MS:297(M+H),279,240
実施例7
3,3′−ジヒドロキシベンジジンジシクロヘキサノイミン[N,N′−ジシクロヘキシリデン−3,3′−ジヒドロキシベンジジン]の合成
脱水剤としてモレキュラシーブス4Aを加えたソックスレー抽出器、撹拌機、冷却管、温度計を備えた300mlフラスコに、3,3′−ジヒドロキシベンジジン21.6g(100mmol)とシクロヘキサノン100ml、ジメチルアセトアミド100ml、p−トルエンスルホン酸・1水和物0.95g(5mmol)を加え、窒素雰囲気下60℃にて8時間撹拌させた。これを室温まで冷却させた後、減圧下シクロヘキサノンとジメチルアセトアミドを除去したものを、シリカゲルクロマトグラフィーにて精製することで、目的の3,3′−ジヒドロキシベンジジンジシクロヘキサノイミン[N,N′−ジシクロヘキシリデン−3,3′−ジヒドロキシベンジジン]32.0g(85mmol)を得た。
赤外線吸収スペクトルデータ(cm
-1):1637(C=N)
MS:377(M+H),295
実施例8
1,2,4,5−ベンゼンテトラアミンテトライソプロパノイミン[N,N′,N″,N′′′−テトライソプロピリデン−1,2,4,5−ベンゼンテトラアミン]の合成
脱水剤としてモレキュラシーブス4Aを加えたソックスレー抽出器、撹拌機、冷却管、温度計を備えた200mlフラスコに、1,2,4,5−ベンゼンテトラアミン13.8g(100mmol)とアセトン100ml、p−トルエンスルホン酸・1水和物0.95g(5mmol)を加え、窒素雰囲気下にて5時間加熱還流させた。これを室温まで冷却させた後、減圧下アセトンを除去したものに酢酸エチルを加え、水、10%炭酸ナトリウム水溶液にて洗浄することで残存の酸成分を除去した。この溶液から、減圧下酢酸エチルを除去した後、シリカゲルクロマトグラフィーにて精製することで、目的の1,2,4,5−ベンゼンテトラアミンテトライソプロパノイミン[N,N′,N″,N′′′−テトライソプロピリデン−1,2,4,5−ベンゼンテトラアミン]20.9g(70mmol)を得た。
赤外線吸収スペクトルデータ(cm
-1):1628(C=N)
MS:299(M+H),257
実施例9
1,2,4,5−ベンゼンテトラアミンモノイソプロパノイミン[N−イソプロピリデン−1,2,4,5−ベンゼンテトラアミン]及び、1,2,4,5−ベンゼンテトラアミンジイソプロパノイミン[N,N″−ジイソプロピリデン−1,2,4,5−ベンゼンテトラアミン]の合成
脱水剤としてモレキュラシーブス4Aを加えたソックスレー抽出器、撹拌機、冷却管、温度計を備えた200mlフラスコに、1,2,4,5−ベンゼンテトラアミン13.8g(100mmol)とアセトン100ml、酢酸3.0g(50mmol)を加え、窒素雰囲気下にて3時間加熱還流させた。これを室温まで冷却させた後、減圧下アセトンを除去したものを、シリカゲルクロマトグラフィーにて精製することで、目的の1,2,4,5−ベンゼンテトラアミンモノイソプロパノイミン[N−イソプロピリデン−1,2,4,5−ベンゼンテトラアミン]7.5g(42mmol)と、1,2,4,5−ベンゼンテトラアミンジイソプロパノイミン[N,N″−ジイソプロピリデン−1,2,4,5−ベンゼンテトラアミン]3.9g(18mmol)を得た。
[1,2,4,5−ベンゼンテトラアミンモノイソプロパノイミンのスペクトルデータ]
赤外線吸収スペクトルデータ(cm
-1):1628(C=N)
MS:179(M+H),137
[1,2,4,5−ベンゼンテトラアミンジイソプロパノイミンのスペクトルデータ]
赤外線吸収スペクトルデータ(cm
-1):1627(C=N)
MS:219(M+H),177
実施例10
1,2,4,5−ベンゼンテトラアミンテトラシクロヘキサノイミン[N,N′,N″,N′′′−テトラシクロプロピリデン−1,2,4,5−ベンゼンテトラアミン]の合成
撹拌機、冷却管、温度計を備えた200mlフラスコに、1,2,4,5−ベンゼンテトラアミン13.8g(100mmol)とシクロヘキサノン100mlを加え、窒素雰囲気下60℃にて4時間撹拌させた。これを室温まで冷却させた後、減圧下シクロヘキサノンを除去したものを、シリカゲルクロマトグラフィーにて精製することで、目的の1,2,4,5−ベンゼンテトラアミンテトラシクロヘキサノイミン[N,N′,N″,N′′′−テトラシクロプロピリデン−1,2,4,5−ベンゼンテトラアミン]39.4g(86mmol)を得た。
赤外線吸収スペクトルデータ(cm
-1):1636(C=N)
MS:459(M+H),377
実施例11
4,6−ジアミノレゾルシノールジイソプロパノイミン[N,N′−ジイソプロピリデン−2,4−ジヒドロキシ−1,5−ベンゼンジアミン]の合成
脱水剤としてモレキュラシーブス4Aを加えたソックスレー抽出器、撹拌機、冷却管、温度計を備えた300mlフラスコに、4,6−ジアミノレゾルシノール14.0g(100mmol)とアセトン100ml、ジメチルアセトアミド100ml、p−トルエンスルホン酸・1水和物0.95g(5mmol)を加え、窒素雰囲気下60℃にて6時間撹拌させた。これを室温まで冷却させた後、減圧下アセトンとジメチルアセトアミドを除去したものを、シリカゲルクロマトグラフィーにて精製することで、目的の4,6−ジアミノレゾルシノールジイソプロパノイミン[N,N′−ジイソプロピリデン−2,4−ジヒドロキシ−1,5−ベンゼンジアミン]16.5g(75mmol)を得た。
赤外線吸収スペクトルデータ(cm
-1):1628(C=N)
MS:221(M+H),179
実施例12
4,6−ジアミノレゾルシノールジシクロヘキサノイミン[N,N′−ジシクロヘキシリデン−2,4−ジヒドロキシ−1,5−ベンゼンジアミン]の合成
脱水剤としてモレキュラシーブス4Aを加えたソックスレー抽出器、撹拌機、冷却管、温度計を備えた300mlフラスコに、4,6−ジアミノレゾルシノール14.0g(100mmol)とシクロヘキサノン100ml、ジメチルアセトアミド100ml、p−トルエンスルホン酸・1水和物0.95g(5mmol)を加え、窒素雰囲気下60℃にて6時間撹拌させた。これを室温まで冷却させた後、減圧下シクロヘキサノンとジメチルアセトアミドを除去したものを、シリカゲルクロマトグラフィーにて精製することで、目的の4,6−ジアミノレゾルシノールジシクロヘキサノイミン[N,N′−ジシクロヘキシリデン−2,4−ジヒドロキシ−1,5−ベンゼンジアミン]23.4g(78mmol)を得た。
赤外線吸収スペクトルデータ(cm
-1):1638(C=N)
MS:301(M+H),219
実施例13
1,3−ジアニリノ−4,6−ジアミノベンゼンジイソプロパノイミン[N,N′′′−ジイソプロピリデン−N′,N″−ジフェニル−1,2,4,5−ベンゼンテトラアミン]の合成
脱水剤としてモレキュラシーブス4Aを加えたソックスレー抽出器、撹拌機、冷却管、温度計を備えた300mlフラスコに、1,3−ジアニリノ−4,6−ジアミノベンゼン29.0g(100mmol)とアセトン100ml、ジメチルアセトアミド100ml、p−トルエンスルホン酸・1水和物0.95g(5mmol)を加え、窒素雰囲気下60℃にて8時間撹拌させた。これを室温まで冷却させた後、減圧下アセトンとジメチルアセトアミドを除去したものを、シリカゲルクロマトグラフィーにて精製することで、目的の1,3−ジアニリノ−4,6−ジアミノベンゼンジイソプロパノイミン[N,N′′′−ジイソプロピリデン−N′,N″−ジフェニル−1,2,4,5−ベンゼンテトラアミン]27.0g(73mmol)を得た。
赤外線吸収スペクトルデータ(cm
-1):1630(C=N)
MS:371(M+H),329
実施例14
1,3−ジアニリノ−4,6−ジアミノベンゼンジシクロヘキサノイミン[N,N′′′−ジシクロヘキシリデン−N′,N″−ジフェニル−1,2,4,5−ベンゼンテトラアミン]の合成
脱水剤としてモレキュラシーブス4Aを加えたソックスレー抽出器、撹拌機、冷却管、温度計を備えた300mlフラスコに、1,3−ジアニリノ−4,6−ジアミノベンゼン29.0g(100mmol)とシクロヘキサノン100ml、ジメチルアセトアミド100ml、p−トルエンスルホン酸・1水和物0.95g(5mmol)を加え、窒素雰囲気下60℃にて8時間撹拌させた。これを室温まで冷却させた後、減圧下シクロヘキサノンとジメチルアセトアミドを除去したものを、シリカゲルクロマトグラフィーにて精製することで、目的の1,3−ジアニリノ−4,6−ジアミノベンゼンジシクロヘキサノイミン[N,N′′′−ジシクロヘキシリデン−N′,N″−ジフェニル−1,2,4,5−ベンゼンテトラアミン]31.5g(70mmol)を得た。
赤外線吸収スペクトルデータ(cm
-1):1639(C=N)
MS:451(M+H),369
実施例15
合成例1で得られた1,3,5−アダマンタントリカルボン酸トリメチルエステル2.48g(8mmol)と実施例5で得られた3,3′−ジアミノベンジジンテトラシクロヘキサノイミン[N,N′,N″,N′′′−テトラシクロヘキシリデン−3,4,3′,4′−ビフェニルテトラアミン]6.42g(12mmol)を、窒素雰囲気下、室温にてメシチレン100gに溶解させて、モノマー濃度8.2重量%の塗布液を調製した。この塗布液を細孔径0.1ミクロンのフィルターを通した後、8インチのシリコンウェハ上にスピンコートした。これを窒素雰囲気下、300℃で30分間加熱した後、さらに400℃で30分間加熱して膜を形成した。こうして得られた高分子膜の赤外線吸収スペクトルを測定したところ、図1に示される赤外線吸収スペクトルデータにより、目的の架橋ポリベンズイミダゾール膜が形成されていることを確認した。得られた膜の膜厚は300nmであった。
赤外線吸収スペクトルデータ(cm-1):
805(m),1280(m),1403(m),1450(s),1522(w),1625(w),2857(s),2928(s),3419(w)
比較例1
実施例15において、1,3,5−アダマンタントリカルボン酸トリメチルエステルの代わりに1,3,5−アダマンタントリカルボン酸を、N,N′,N″,N′′′−テトラシクロヘキシリデン−3,4,3′,4′−ビフェニルテトラアミンの代わりに3,3′−ジアミノベンジジンを、それぞれ実施例15と同量使用したところ、溶媒(メシチレン)への溶解度が低かった。そのため、1,3,5−アダマンタントリカルボン酸を0.54g(2mmol)用い、3,3′−ジアミノベンジジンを0.64g(3mmol)用いた以外は、実施例15と同様の操作を行い、モノマー濃度1.2重量%の塗布液を調製した。この塗布液を用い、実施例5と同様の操作を行って得られた高分子膜の赤外線吸収スペクトルを測定したところ、目的の架橋ポリベンズイミダゾール膜が形成されていることを確認した。得られた膜の膜厚は20nm未満であった。
実施例16
1,3,5,7−アダマンタンテトラカルボン酸テトラメチルエステル4.42g(12mmol)と実施例5で得られた3,3′−ジアミノベンジジンテトラシクロヘキサノイミン[N,N′,N″,N′′′−テトラシクロヘキシリデン−3,4,3′,4′−ビフェニルテトラアミン]12.83g(24mmol)を、窒素雰囲気下、室温にてメチルイソブチルケトン(MIBK)100gに溶解させて、モノマー濃度14.7重量%の塗布液を調製した。この塗布液を細孔径0.1ミクロンのフィルターを通した後、8インチのシリコンウェハ上にスピンコートした。これを窒素雰囲気下、300℃で30分間加熱した後、さらに400℃で30分間加熱して膜を形成した。こうして得られた高分子膜の赤外線吸収スペクトルを測定したところ、目的の架橋ポリベンズイミダゾール膜が形成されていることを確認した。得られた膜の膜厚は400nmであった。
比較例2
実施例16において、1,3,5,7−アダマンタンテトラカルボン酸テトラメチルエステルの代わりに1,3,5,7−アダマンタンテトラカルボン酸を、N,N′,N″,N′′′−テトラシクロヘキシリデン−3,4,3′,4′−ビフェニルテトラアミンの代わりに3,3′−ジアミノベンジジンを、それぞれ実施例16と同量使用したところ、溶媒(メチルイソブチルケトン:MIBK)への溶解度が低かった。そのため、1,3,5,7−アダマンタンテトラカルボン酸を0.62g(2mmol)用い、3,3′−ジアミノベンジジンを0.86g(4mmol)用いた以外は、実施例16と同様の操作を行い、モノマー濃度1.5重量%の塗布液を調製した。この塗布液を用い、実施例16と同様の操作を行って得られた高分子膜の赤外線吸収スペクトルを測定したところ、目的の架橋ポリベンズイミダゾール膜が形成されていることを確認した。得られた膜の膜厚は20nm未満であった。
実施例17
1,3,5−アダマンタントリカルボン酸4.29g(16mmol)と実施例1で得られた3,3′−ジアミノベンジジンテトライソプロパノイミン[N,N′,N″,N′′′−テトライソプロピリデン−3,4,3′,4′−ビフェニルテトラアミン]8.99g(24mmol)を、窒素雰囲気下、室温にてジオキサン100gに溶解させて、モノマー濃度11.7重量%の塗布液を調製した。この塗布液を細孔径0.1ミクロンのフィルターを通した後、8インチのシリコンウェハ上にスピンコートした。これを窒素雰囲気下、300℃で30分間加熱した後、さらに400℃で30分間加熱して膜を形成した。こうして得られた高分子膜の赤外線吸収スペクトルを測定したところ、目的の架橋ポリベンズイミダゾール膜が形成されていることを確認した。得られた膜の膜厚は360nmであった。
実施例18
実施例17において、芳香族ポリアミン誘導体として、N,N′,N″,N′′′−テトライソプロピリデン−3,4,3′,4′−ビフェニルテトラアミンの代わりに実施例2で得られた3,3′−ジアミノベンジジンモノイソプロパノイミン[N′−イソプロピリデン−3,4,3′,4′−ビフェニルテトラアミン]4.88g(19.2mmol)及び3,3′−ジアミノベンジジンジイソプロパノイミン[N′,N′′′−ジイソプロピリデン−3,4,3′,4′−ビフェニルテトラアミン]1.41g(4.8mmol)を用いた以外は、実施例17と同様の操作を行い、モノマー濃度9.6重量%の塗布液を調製した。この塗布液を用い、実施例17と同様の操作を行って得られた高分子膜の赤外線吸収スペクトルを測定したところ、目的の架橋ポリベンズイミダゾール膜が形成されていることを確認した。得られた膜の膜厚は300nmであった。
比較例3
実施例17において、1,3,5−アダマンタントリカルボン酸、及びN,N′,N″,N′′′−テトライソプロピリデン−3,4,3′,4′−ビフェニルテトラアミンの代わりに3,3′−ジアミノベンジジンを、それぞれ実施例17と同量使用したところ、溶媒(ジオキサン)への溶解度が低かった。そのため、1,3,5−アダマンタントリカルボン酸を1.07g(4mmol)用い、3,3′−ジアミノベンジジンを1.29g(6mmol)用いた以外は、実施例17と同様の操作を行い、モノマー濃度2.3重量%の塗布液を調製した。この塗布液を用い、実施例17と同様の操作を行って得られた高分子膜の赤外線吸収スペクトルを測定したところ、目的の架橋ポリベンズイミダゾール膜が形成されていることを確認した。得られた膜の膜厚は20nm未満であった。
実施例19
1,3,5−アダマンタントリカルボン酸3.76g(14mmol)と実施例6で得られた3,3′−ジヒドロキシベンジジンジイソプロパノイミン[N,N′−ジイソプロピリデン−3,3′−ジヒドロキシベンジジン]6.22g(21mmol)を、窒素雰囲気下、室温にてプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)100gに溶解させて、モノマー濃度9.1重量%の塗布液を調製した。この塗布液を細孔径0.1ミクロンのフィルターを通した後、8インチのシリコンウェハ上にスピンコートした。これを窒素雰囲気下、300℃で30分間加熱した後、さらに400℃で30分間加熱して膜を形成した。こうして得られた高分子膜の赤外線吸収スペクトルを測定したところ、目的の架橋ポリベンズオキサゾール膜が形成されていることを確認した。得られた膜の膜厚は300nmであった。
比較例4
実施例19において、1,3,5−アダマンタントリカルボン酸、及び3,3′−ジアセトキシベンジジンジアセチルアミドの代わりに3,3′−ジヒドロキシベンジジン1.30g(6mmol)を、それぞれ実施例19と同量使用したところ、溶媒(プロピレングリコールモノメチルエーテル:PGME)への溶解度が低かった。そのため、1,3,5−アダマンタントリカルボン酸を1.07g(4mmol)用い、3,3′−ジヒドロキシベンジジンを1.30g(6mmol)用いた以外は、実施例19と同様の操作を行い、モノマー濃度2.3重量%の塗布液を調製した。この塗布液を用い、実施例9と同様の操作を行って得られた高分子膜の赤外線吸収スペクトルを測定したところ、目的の架橋ポリベンズオキサゾール膜が形成されていることを確認した。得られた膜の膜厚は20nm未満であった。
比較例5
撹拌機、冷却管を備えたフラスコに、1,3,5−アダマンタントリカルボン酸5.37g(20mmol)、3,3′−ジアミノベンジジン6.43g(30mmol)、ポリリン酸100gを加え、窒素雰囲気下、200℃で12時間加熱し、撹拌した。冷却後、反応液に水を加え析出した固体を濾過により取り出し、炭酸水素ナトリウム水溶液、水、メタノールを用いて洗浄することにより、ポリベンズイミダゾールを固体として得た。得られたポリベンズイミダゾールの固体を、N−メチルピロリドン(NMP:溶媒)に溶解させてようと試みたが、溶解せず、スピンコート法による薄膜化が不可能であり、目的の薄膜は得られなかった。