JP4739938B2 - 燃料電池システム - Google Patents
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Description
一方、燃料電池は、その暖機が完了していたり、総発電時間が短い(燃料電池が新しい)と、図2において、IV曲線(IV特性)が高くなる傾向を有している。そして、このようにIV曲線が高くなると、燃料電池は高い出力でも発電できる安定発電状態にある。そうすると、燃料電池スタックでは、燃料電池(単セル)が均等に発電し、その出力電圧(セル電圧)が揃いやすくなり、その結果、燃料電池スタックのIV曲線も高くなり、燃料電池スタックは安定発電状態となる。
一方、「回復運転モード」とは、暖機が完了していない等により、複数の燃料電池(単セル)の出力電圧がばらついており、IV曲線(IV特性)が低く、不安定発電状態にある燃料電池スタックを、高い出力でも発電可能な安定発電状態への回復を図る運転モードを意味する。なお、後記する第1実施形態では、回復運転モードとして、コンプレッサの回転速度を高め、多量かつ高圧で空気をカソードに供給する場合を例示する。
一方、「不安定発電領域」とは、複数の燃料電池(単セル)の出力電圧がばらつき、その結果、燃料電池スタックのIV曲線が低くなり、不安定発電状態となる可能性の高い、つまり、燃料電池スタックが安定して発電する可能性の低い発電領域である。
なお、後記する第1実施形態では、安定発電領域としてシステム温度が0℃以上である常温領域を、不安定発電領域としてシステム温度が0℃より低い低温領域を、それぞれ例示する。
一方、「反応ガスを多量及び高圧の少なくとも一方で供給するモード」とは、複数の燃料電池(単セル)の出力電圧がばらついており、不安定発電状態にある燃料電池スタックに対して、その発電状態を回復を図るための反応ガスの供給モードを意味する。
第1実施形態に係る燃料電池システムについて、図1から図5を参照して説明する。
図1に示す第1実施形態に係る燃料電池システム1Aは、燃料電池自動車に搭載されている。燃料電池システム1Aは、燃料電池スタック2の出力端子(図示しない)に接続された走行モータ41を備えている。そして、燃料電池自動車は、燃料電池スタック2の発電電力で駆動する走行モータ41によって、走行するようになっている。
燃料電池スタック2は、単セル(燃料電池)が複数積層されることによって構成された固体高分子型燃料電池である。単セルは、電解質膜(固体高分子膜)の両面をアノード(燃料極)及びカソード(空気極)で挟んでなるMEAと、MEAを挟む一対のセパレータと、を備えて構成されている。各セパレータには、各単セルを構成するMEAの全面に水素又は酸素を供給するための溝や、全単セルに水素、酸素を導くための貫通孔等が形成されており、これら溝等がアノード流路3、カソード流路4として機能している。すなわち、アノード流路3には水素が流通し、各アノードに水素が供給されるようになっている。一方、カソード流路4には酸素を含む空気が流通し、各カソードに空気が供給されるようになっている。
一方、単セル(燃料電池)は、例えば、その暖機が完了していたり、総発電時間が短い(燃料電池が新しい)と、図2において、IV曲線(IV特性)が高くなり、高い出力でも発電できる安定発電状態にある。そうすると、燃料電池スタック2では、これを構成する単セルのセル電圧(出力電圧)が揃いやすくなり、その結果、燃料電池スタック2のIV曲線も高くなり、燃料電池スタック2は高い出力でも発電可能な安定発電状態となる。
図1に戻って説明を続ける。
セル電圧モニタ11(電圧検出手段)は、前記したように、燃料電池スタック2を構成する単セル(燃料電池)のセル電圧(出力電圧)を検出する機器であり、単セル毎に設けられている。そして、セル電圧モニタ11は、ECU60の換算部62と接続されており、換算部62は各単セルのセル電圧を監視するようになっている。
アノード系20は、水素が貯蔵された水素タンク21と、遮断弁22(遮断手段)と、エゼクタ23と、パージ弁24(排出手段)と、温度センサ25(発電領域検出手段)と、を主に備えている。
水素タンク21は、配管21aを介して遮断弁22に接続されており、遮断弁22は、配管22aを介してエゼクタ23に接続されている。エゼクタ23は、配管23aを介してアノード流路3に接続されている。配管22aには、減圧弁(図示しない)が設けられている。そして、ECU60の制御部61によって遮断弁22が開かれると、水素が前記減圧弁で減圧された後、アノード流路3に供給されるようになっている。
なお、パージ弁24は、循環する水素に同伴する水等の不純物を排出するために開かれ、例えば、定期的に、または、燃料電池スタック2を構成する単セルのセル電圧が低下したときに行われる。
カソード系30は、コンプレッサ31(スーパーチャージャ、酸化剤ガス供給手段)と、背圧弁32と、温度センサ33(発電領域検出手段)と、を主に備えている。
コンプレッサ31は、外気を取り込んで圧縮し、酸化剤ガスとして燃料電池スタック2のカソードに向けて送る機器である。そして、コンプレッサ31は、配管31aを介して、カソード流路4に接続されている。また、コンプレッサ31は、制御部61と接続されており、適宜に制御されるようになっている。さらに、加湿器(図示しない)が、配管31aに設けられており、カソードに送られる空気が適宜に加湿されるようになっている。
電力消費系40は、燃料電池スタック2の出力端子(図示しない)に接続されており、燃料電池スタック2で発生した電力を消費する系である。電力消費系40は、走行モータ41(外部負荷)と、VCU42(Voltage Control Unit)と、蓄電装置43と、出力検出器44(発電領域検出手段)と、を主に備えている。この他、コンプレッサ31のモータも、電力消費系40に含まれる。
ECU60は、燃料電池システム1Aを電子制御する装置である。このようなECU60は、CPU、ROM、RAM、各種インタフェイス、電子回路などを含んで構成され、制御部61(制御手段)と、換算部62(換算手段)と、発電領域判定部63(発電領域判定手段)と、閾値変更指示部64(閾値変更指示手段)と、制御データ記憶部65(制御データ記憶手段)と、を主に備えている。
制御部61は、カソード系30のコンプレッサ31と電気的に接続されており、コンプレッサ31の作動(回転速度等)を適宜に制御する機能を備えている。そして、制御部61には、単セルのセル電圧が揃っており安定発電状態にある燃料電池スタック2(燃料電池システム1A)を通常に運転する「通常運転モード」と、セル電圧がばらついて不安定発電状態にある燃料電池スタック2の安定発電状態への回復を図る「回復運転モード」と、が設定されている。そして、制御部61は、これら運転モードを適宜に切り替えるようになっている。
また、制御部61は、燃料電池スタック2(燃料電池システム1A)が後記する低温領域にある場合で回復運転モードを選択するとき、システム温度に基づいて、回復運転モード時のコンプレッサ31の増加回転速度を可変するように設定されている。
制御部61は、換算部62から送られる後記する発電パラメータと発電領域に対応した第1閾値又は第2閾値とを比較してモード判定を行い、通常運転モード又は回復運転モードを選択する機能を備えている。なお、初期状態において、制御部61は第1閾値を基準として判定するようになっている。
また、制御部61は、回復運転モードに入った後、発電パラメータと第3閾値とを比較して、セル電圧のばらつきが抑えられ、その後、通常運転モードに切り替えても、燃料電池スタック2が安定出力の確保される状態に回復したか否かを判定する機能を備えている。
その他、制御部61は、温度センサ25及び温度センサ33と接続されており、各センサで検出された温度を監視している。また、制御部61は、アノード系20の遮断弁22と、電力消費系40のVCU42と接続されており、これらを適宜に制御するようになっている。さらに、制御部61は、出力検出器44と接続されており、燃料電池スタック2のスタック電流及びスタック電圧を監視し、起動時にOCV(Open Circuit voltage)チェックをするようになっている。さらにまた、制御部61は、IG51と接続されており、IG51のON/OFF信号を検知して、各種処理を実行するようになっている。
換算部62は、複数の単セルのセル電圧を、燃料電池スタック2の発電状態に対応した発電パラメータに換算する機能を備えている。ここで、第1実施形態では、発電パラメータが、平均セル電圧と最低セル電圧との差である場合を例示する。なお、発電パラメータが小さい場合は、複数の単セルのセル電圧が揃っており、燃料電池スタック2の出力(スタック電流、スタック電圧)が良好であると推定される。一方、発電パラメータが大きい場合は、複数の単セルのセル電圧がばらついており、燃料電池スタック2の出力が低下していると推定される。
そして、換算部62は、このようにして求めた発電パラメータを、制御部61に送るようになっている。
発電領域判定部63は、起動直後において、現在の燃料電池スタック2(燃料電池システム1A)の発電領域を判定する機能を備えている。ここで、第1実施形態では、発電領域として、常温領域(安定発電領域)と、低温領域(不安定発電領域)を例示する。
常温領域とは、システム温度が0℃以上であり、単セルのIV曲線(IV特性)が高く、セル電圧がばらつかず、その結果、燃料電池スタック2が安定発電状態となり、つまり、燃料電池スタック2が安定して発電し、その出力が良好となる可能性の高い発電領域である。一方、低温領域とは、システム温度が0℃よりも低く、単セルのIV曲線が低く、セル電圧がばらつき、その結果、燃料電池スタック2が不安定発電状態となり、その出力が低くなる可能性の高い発電領域である
また、温度センサ25及び温度センサ33が検出するシステム温度については、例えば、各センサの検出温度を平均して採用してもよいし、低い方の検出温度を採用してもよい。
閾値変更指示部64は、起動直後の燃料電池スタック2(燃料電池システム1A)の発電領域に対応して、制御部61に判定閾値を指示する機能を備えている。具体的には、閾値変更指示部64は、燃料電池スタック2が常温領域で発電している場合、判定閾値として第1閾値を採用(判定閾値に第1閾値を代入)するように、制御部61に指示する設定となっている。一方、燃料電池スタック2が低温領域で発電している場合、第1閾値を第2閾値に変更(判定閾値に第2閾値を代入)するように、制御部61に指示する設定となっている。
制御データ記憶部65には、図3に示す発電領域マップと、図4に示す回復運転モードマップとが記憶されている。
図3に示す発電領域マップは、発電領域判定部63が、システム温度に基づいて、燃料電池スタック2(燃料電池システム1A)の発電領域を判定するために参照するマップであり、システム温度に対応して2つの発電領域が割り振られている。具体的に、発電領域マップには、システム温度が0℃以上である場合の常温(通常)領域と、システム温度が0℃未満である場合の低温領域と、が割り振られている。
すなわち、第1実施形態において、発電パラメータが、常温領域では第1閾値、低温領域では第2閾値よりも大きいと、セル電圧がばらついているため、燃料電池スタック2が不安定発電状態にあると推定される。一方、発電パラメータが各閾値以下であると、各単セルは均等に発電し、セル電圧がばらついておらず、燃料電池スタック2が安定発電状態にあると推定される。
図4に示す回復運転モードマップは、常温領域又は低温領域において、回復運転モードが選択された場合において、システム温度と、回復運転モード時のコンプレッサ31の増加回転速度との関係を示すマップである。さらに説明すると、常温領域における回復運転モード時のコンプレッサ31の増加回転速度は一定に設定されている。
なお、このような回復運転モードマップは、事前試験や各種シミュレーションによって求められる。
次に、燃料電池システム1Aの起動時の動作と共に、第1実施形態に係る燃料電池システム1Aの起動方法について、図1、図3及び図4に加えて、図5に示すフローチャートを参照して説明する。第1実施形態に係る燃料電池システム1Aの起動方法は、起動時に、燃料電池スタック2(燃料電池システム1A)が常温領域でない場合、つまり、低温領域である場合、第1閾値を低温領域に対応した第2閾値に変更することを特徴とする。
ステップS102において、制御部61は、実際のOCVが、その内部に記憶された所定値(所定OCV)以上であるか否かに基づいて、アノード流路3が水素で置換されているか否かを判定する。そして、実際のOCVが所定値以上である場合(S102・Yes)、ステップS103に進む。一方、実際のOCVが所定値以上でない場合(S102・No)、ステップS101に戻る。
ステップS103において、制御部61は、VCU42を制御して、燃料電池スタック2から適宜な電流を取り出し、燃料電池スタック2の発電を開始させる。
ステップS104において、発電領域判定部63は、現在の燃料電池スタック2(燃料電池システム1A)が運転している発電領域を判定する。具体的には、発電領域判定部63は、温度センサ25、33が検出するシステム温度(例えば、平均検出温度、低い方の検出温度)と、制御データ記憶部65に記憶された発電領域マップ(図3参照)の判定基準温度である0℃とを比較し、システム温度が0℃よりも低い場合(S104・Yes)、燃料電池スタック2が低温領域で運転していると判定し、発電領域判定部63はこの判定結果を閾値変更指示部64に送り、ステップS105に進む。
一方、システム温度が0℃未満でない、つまり、システム温度が0℃以上である場合(S104・No)、燃料電池スタック2が常温領域で運転していると判定し、発電領域判定部63はこの判定結果を閾値変更指示部64に送り、ステップS106に進む。
ステップS105において、燃料電池スタック2が低温領域で運転していることを受けた閾値変更指示部64は、制御部61に判定閾値に第2閾値を代入するように指示を送る。そして、制御部61は、制御データ記憶部65から第2閾値を読み出して、判定閾値に代入する。
ステップS107において、制御部61は、判定閾値と、換算部62から送られる発電パラメータとを比較して、回復運転モードと通常運転モードとのいずれかを選択するかについて、モード判定を行う(図3参照)。
まず、ステップS105を経由しており、判定閾値に第2閾値が代入されている場合について説明する。制御部61は、換算部62から送られる発電パラメータ(平均セル電圧と最低セル電圧との差)と、判定閾値(第2閾値)とを比較する。
そして、発電パラメータが判定閾値(第2閾値)より大きい場合(S107・Yes)、判定閾値に第3閾値を代入して(S108)、ステップS109に進む。この場合は、燃料電池スタック2が低温領域で運転されており、セル電圧がばらついて発電パラメータが判定閾値(第2閾値)より大きく、燃料電池スタック2が不安定発電状態(IV曲線が低い)にあり、その結果、燃料電池スタック2の出力が低下しており、回復運転モードが選択される。
次に、ステップS106を経由しており、判定閾値に第1閾値が代入されている場合について説明する。
発電パラメータが判定閾値(第1閾値)より大きい場合(S107・Yes)、判定閾値に第3閾値を代入して(S108)、ステップS109に進む。この場合は、燃料電池スタック2が常温領域で運転されており、セル電圧がばらついて発電パラメータが判定閾値(第1閾値)より大きく、燃料電池スタック2が不安定発電状態(IV曲線が低い)にあり、その結果、燃料電池スタック2の出力が低下しており、回復運転モードが選択される。
ステップS109において、制御部61は、回復運転モードマップ(図4参照)を参照して、コンプレッサ31を回復運転モードで作動させ、多流量かつ高圧力で空気(回復用反応ガス)を供給する。具体的には、燃料電池スタック2が常温領域にある場合、制御部61は、コンプレッサ31の増加回転速度を一定とする。これに対し、燃料電池スタック2が低温領域にある場合、制御部61は、システム温度と回復運転モードマップとに基づいて、コンプレッサ31の増加回転速度を可変、より詳しくは、システム温度が低いほど、増加回転速度を大きくする。
また、燃料電池スタック2が低温領域で運転している場合、システム温度に対応して増加回転速度を可変するため、より速やかに燃料電池スタック2の発電安定状態への移行が図られる。
ステップS110において、制御部61は、発電パラメータと、判定閾値(第3閾値)とを比較して、回復運転モードから通常運転モードに切り替えても、燃料電池スタック2(単セル)の安定発電状態が維持される発電状態に回復したか否かを判定する。そして、発電パラメータが判定閾値(第3閾値)よりも小さい場合(S110・Yes)、単セルの出力電圧のばらつきが解消され、安定発電状態が維持されると判定して、ステップS111に進む。
一方、発電パラメータが判定閾値(第3閾値)よりも小さくない場合、つまり、発電パラメータが判定閾値(第3閾値)以上である場合(S110・No)、ステップS110の判定を繰り返す。この場合、回復運転モードが継続される。
ステップS111において、制御部61は、コンプレッサ31を通常運転モードで作動し、通常流量かつ通常圧力で空気(通常用反応ガス)を供給する。これにより、燃料電池スタック2は通常に発電する。そして、制御部61は、判定閾値に第1閾値を代入した後(S112)、ステップS114に進む。
なお、このようにステップS112において、常温領域に対応した第1閾値が代入される理由は、起動直後に低温領域であった燃料電池スタック2も、回復運転モードによる運転によって暖機が進み、常温領域に移行したと推定されるからである。そして、この後、発電を継続すると判定された場合(S114・No)に戻るステップS107では、発電パラメータと第1閾値(判定閾値)とを比較してモード判定が行われる。
ステップS113において、制御部61は、ステップS111と同様に、コンプレッサ31を通常運転モードで作動し、通常流量かつ通常圧力で空気(通常用反応ガス)を供給する。
ステップS114において、制御部61は、IG51がOFFであるか否かに基づいて、燃料電池システム1Aの発電(運転)を継続するか否かを判定する。IG51がOFFであると判定した場合(S114・Yes)、エンドに進み、燃料電池システム1Aの起動時の制御は終了、つまり、発電は停止され、所定の停止時の制御を行う。一方、IG51がOFFでない、つまり、IG51がONであると判定した場合(S114・No)、ステップS107に戻り、燃料電池システム1Aの発電は継続される。
(1)起動直後、燃料電池スタック2(燃料電池システム1A)が低温領域で運転している場合(S104・Yes)、判定閾値を低温領域用の第2閾値とすることにより(S105)、不安定発電状態となりやすい低温領域に関わらず、セル電圧がばらついておらず、燃料電池スタック2が安定発電状態であり、その出力が良好であるときに(S107・No)、回復運転モードを選択せずに通常運転モードを選択することにより(S113)、コンプレッサ31の回転速度が不必要に高められず、その消費電力を抑えることができる。
また、燃料電池システム1Aでは、回復運転モード時に、多量かつ高圧で空気(酸素)が供給され、燃料電池スタック2が高発電するようにVCU42が制御されると水素が消費される構成であるため、このように通常運転モードを選択しコンプレッサ31の不必要な作動を抑えると共に、水素の消費量を減らすことができる。その結果として、燃料電池自動車の燃費を高めることができる。
次に、第2実施形態に係る燃料電池システム1Bについて、図6から図8を参照して説明する。なお、燃料電池システム1Bについては、第1実施形態に係る燃料電池システム1Aに対して異なる部分を説明する。
なお、燃料電池スタック2は、その総発電時間が短い(燃料電池スタック2が新しい)場合、反応ガス供給後のOCVの立ち上がり速度が速く(高い)、セル電圧がばらつきにくいという特性を有している。したがって、OCVの立ち上がり速度が速い燃料電池スタック2では、例えば、燃料電池スタック2が低温領域で運転されていても、その出力が良好となる可能性が高くなる。
制御データ記憶部65には、第1実施形態に係るシステム温度に基づく発電領域マップ(図3参照)に代えて、図7に示すOCV用発電領域マップが記憶されている。
OCV用発電領域マップは、発電領域判定部63が、起動直後(IG51のON後、発電開始前)のOCVの立ち上がり速度に基づいて、燃料電池スタック2の発電領域を判定するために参照するマップである。具体的に、OCV用発電領域マップには、OCVの立ち上がり速度に対応した2つの発電領域、具体的は、第1領域と第2領域とが割り振られている。第1領域は、OCVの立ち上がり速度が所定値(所定立ち上がり速度)以上の領域であり、セル電圧がばらつきにくく燃料電池スタック2が安定発電状態となる可能性の高い安定発電領域である。第2領域は、OCVの立ち上がり速度が所定値未満であり、セル電圧がばらつきやすく燃料電池スタック2が不安定発電状態となる可能性の高い不安定発電領域である。
また、第1実施形態と同様に、第1及び第2領域において、回復判定の基準となる第3閾値が設定されている。
次に、燃料電池システム1Bの動作について、図8を参照して、第1実施形態と異なる部分を説明する。図8に示すように、ステップS103で発電を開始した後、ステップS201に進む。
ステップS201において、発電領域判定部63は、現在の燃料電池スタック2(燃料電池システム1B)の発電領域判定をする。具体的には、発電領域判定部63は、OCVの立ち上がり速度と、OCV用発電領域マップの所定値(図7参照)とを比較し、OCV立ち上がり速度が所定値よりも小さい場合(S201・Yes)、燃料電池スタック2が第2領域で運転していると判定し、発電領域判定部63はこの判定結果を閾値変更指示部64に送り、ステップS202に進む。
ステップS202において、燃料電池スタック2が第2領域で運転していることを受けた閾値変更指示部64は、制御部61に判定閾値に第2閾値を代入するように指示を送り、制御部61は第2閾値を読み出して判定閾値に代入する。その後、ステップS107に進む。
一方、ステップS203において、燃料電池スタック2が第1領域で運転していることを受けた閾値変更指示部64は、制御部61に判定閾値に第1閾値を代入するように指示を送り、制御部61は第1閾値を読み出して判定閾値に代入する。その後、ステップS107に進む。
この後、ステップS107において、制御部61は、第1実施形態と同様に、発電パラメータと判定閾値(第1閾値又は第2閾値)とを比較して、モード判定を行う。
次に、第3実施形態に係る燃料電池システムについて、図9を主に参照して説明する。
図9に示すように、第3実施形態に係る燃料電池システムでは、ステップS108において回復運転モードでコンプレッサ31を作動させた後、ステップS301に進む。
この他に、システム温度と外気温とに対応して、回復に要する時間が割り振られたテーブルを制御データ記憶部65に記憶しておき、実際のシステム温度及び外気温と、このテーブルとに基づいて所定時間を決定する構成としてもよい。この場合、システム温度及び外気温が高くなると、セル電圧がばらつきにくい安定発電状態に速やかに移行しやすくなるので、回復に要する時間が短くなる関係となる。
一方、所定時間が経過していないと判定した場合、ステップS301の判定を繰り返す。
また、システム温度を検出する温度センサは、図1に示す温度センサ25、33に限定されず、その他に例えば、燃料電池スタック2の筺体に取り付けられた温度センサや、燃料電池スタック2を適宜に冷却する冷却系に設けられた温度センサ、つまり、燃料電池スタック2から排出された冷却水の温度を検出する温度センサであってもよい。
また、(2)アノード系20のパージ弁24を開く間隔を短くし、アノードに供給される水素の濃度が高くなるように設定してもよい。この場合、アノードに多量の水素が供給される。
さらに、(3)カソード系30の背圧弁32をその背圧が高まるように制御し、燃料電池スタック2のカソードに高圧の空気が供給されるように設定してもよい。
さらにまた、(4)燃料電池スタック2を構成する単セルを保護するためのセル電圧保護閾値を高めるよう設定してもよい。
また、これらを複合的に制御する設定としてもよい。
また、前記したように発電パラメータして最低セル電圧を採用する場合、例えば、最低セル電圧を出力する可能性の高い単セルのみにセル電圧モニタ11を設ける構成としてもよい。
2 燃料電池スタック
11 セル電圧モニタ(電圧検出手段)
25 温度センサ(発電領域検出手段)
33 温度センサ(発電領域検出手段)
44 出力検出器(発電領域検出手段)
60 ECU
61 制御部(制御手段)
62 換算部(換算手段)
63 発電領域判定部(発電領域判定手段)
64 閾値変更指示部(閾値変更指示手段)
65 制御データ記憶部(制御データ記憶手段)
Claims (3)
- 反応ガスの反応により発電する複数の燃料電池を積層した燃料電池スタックと、
少なくとも2つの前記燃料電池の実際の出力電圧を検出する電圧検出手段と、
前記電圧検出手段の検出した前記少なくとも2つの出力電圧に基づいて、平均セル電圧と最低セル電圧との電圧差を算出する換算手段と、
前記電圧差と第1閾値又は第2閾値である判定閾値とに基づいて、前記電圧差が前記判定閾値よりも大きくない場合に前記燃料電池スタックを通常に運転する通常運転モードを選択し、前記電圧差が前記判定閾値よりも大きい場合に前記燃料電池スタックの発電状態を回復させる回復運転モードを選択するモード選択手段と、
前記燃料電池スタックを、前記モード選択手段の選択したモードで運転する制御手段と、
前記燃料電池スタックの発電は安定すると予測される安定発電領域、前記燃料電池スタックの発電は不安定になると予測される不安定発電領域、のいずれであるかを判定する発電領域判定手段と、
前記燃料電池スタックの起動時に、前記モード選択手段に閾値を指示する閾値指示手段と、
を備え、
前記第2閾値は、前記第1閾値よりも小さく、
前記閾値指示手段は、
前記発電領域判定手段が前記安定発電領域であると判定した場合、前記判定閾値として前記第1閾値を採用するように指示し、
前記発電領域判定手段が前記不安定発電領域であると判定した場合、前記判定閾値として前記第2閾値を採用するように指示し、
前記発電領域判定手段は、
(a)システム温度が所定温度以上であり常温領域である場合、前記安定発電領域であると判定し、システム温度が所定温度未満であり低温領域である場合、前記不安定発電領域であると判定する方法
(b)前記燃料電池スタックの起動時におけるOCVの立ち上がり速度が所定立ち上がり速度以上である場合、前記安定発電領域であると判定し、前記燃料電池スタックの起動時におけるOCVの立ち上がり速度が所定立ち上がり速度未満である場合、前記不安定発電領域であると判定する方法
のいずれかの方法で判定する
ことを特徴とする燃料電池システム。 - 前記通常運転モードは、前記反応ガスを通常に供給するモードであり、
前記回復運転モードは、前記通常運転モードに対して、前記反応ガスを多量及び高圧の少なくとも一方で供給するモードである
ことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。 - 前記制御手段は、前記不安定発電領域である場合において前記回復運転モードで前記燃料電池スタックを運転するとき、システム温度が低くなるにつれて、前記燃料電池スタックを通流する反応ガスの流量及び/又は圧力を増加させる
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の燃料電池システム。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2005364282A JP4739938B2 (ja) | 2005-12-19 | 2005-12-19 | 燃料電池システム |
Applications Claiming Priority (1)
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