JP4738641B2 - リーダライタ及びそれを用いた通信システム - Google Patents

リーダライタ及びそれを用いた通信システム Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、一般には、情報及び電力の伝達システムに係り、特に、データを記録可能なICモジュールを内蔵した非接触情報媒体と通信可能なリーダライタおよびそれを使用した通信システムに関する。「ICモジュールを内蔵した非接触情報媒体」とは、ICチップを含むICモジュールを情報記録媒体として備え、リーダライタを介し外部装置と非接触に交信する媒体であって、非接触であれば、電波の波長を問わず、また、通信距離の長さも問わない。
【0002】
ICチップ又はICモジュールを内蔵した非接触情報媒体の典型的なものは、例えば、マイクロ波を利用してリーダライタと交信する非接触ICタグである。なお、本明細書においては、「ICタグ」は、ICカードと同様の機能を有するが、切手サイズやそれ以下の超小型やコイン等の形状を有する全ての情報記録媒体を含むものである。なお、本出願においては、「ICカード」は、スマートカード、インテリジェントカード、チップインカード、マイクロサーキット(マイコン)カード、メモリーカード、スーパーカード、多機能カード、コンビネーションカードなどを総括している。
【0003】
但し、リーダライタの交信相手は必ずしもICを備えた非接触情報媒体に限定されず、少なくともリーダライタと交信可能なアンテナを備えていればよい。
【0004】
【従来の技術】
リーダライタは、ICタグやICカードなどの非接触情報媒体との通信方法に従って接触型と非接触型に分類することができる。このうち、非接触型は、ICタグとの接点がないので接触不良がなく、ICタグがリーダライタから数cm乃至数十cm離れた移動使用を可能にし、汚れ、雨、静電気に強いなどの特徴があり、今後ますますその需要は高まるものと予想されている。
【0005】
非接触型のリーダライタは、一般的に、アンテナ(例えば、アンテナコイル)を介しキャリアである電磁波(電波)を送信することで非接触ICタグとの通信を行っている。より詳細には、リーダライタは一定振幅の高周波信号のキャリアを与えられたデータで変調し、変調されたデータを送信している。例えば、ASK100%変調においては、リーダライタはキャリアをON/OFFさせることでデータを送信している。このとき、非接触ICタグは、リーダライタのアンテナから受信した電波から電磁誘導によって動作電力を得ると共に、電波を利用してリーダライタからデータを受信している。一方、受信時には、リーダライタはキャリアを連続的に送信することで、非接触ICタグに動作電力を供給している。これにより、非接触ICタグは、データを送信するために搬送波を送信データに応じて変化させてアンテナコイルに送信し、これによりリーダライタにデータを送信している。なお、このような通信システムにおいて、典型的に、リーダライタは通信システムにおける主導権を有しており、かかる動作を繰り返すことで複数の非接触ICタグとリーダライタとの通信を行っている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のリーダライタでは、アンテナコイルによって発生する減衰振動により非接触ICタグが誤作動を起こしてしまい良好な通信状態を確保することができないという問題を有していた。図8を参照するに、上述したようにリーダライタはコマンドに応じてキャリアをON/OFFすることでデータを送信するが(例えば、ASK100%変調)、キャリアをOFFとしたときアンテナコイルはその性質上減衰振動を発生してしまう。これは、アンテナコイルを理想コイルに近づければ近づけるほど顕著となる現象であり、また、アンテナの小さなリーダライタにおいて良好な通信状態を得るべく動作電圧を高くとった場合に避けられない問題であった。ここで、図8の(a)は減衰振動が発生した場合のキャリアを示す波形図であり、(b)は非接触ICタグによって検出され波形整形された波形図である。なお、図8の(a)に示す点線は、非接触ICタグによって検出されるスレッシュホールドレベル(閾値)を示している。
【0007】
図9に示す理想波形、即ち、本来リーダライタが送信すべき波形と比較すると、かかる減衰振動によって生じた余分な波形により検出される波形にはΔtだけ時間差が生じていることが理解される。ここで、図9の(a)は理想的なキャリアを示す波形図であり、(b)は非接触ICタグによって検出され波形整形された波形図である。よって、かかる時間差は非接触ICタグを構成する回路に遅延時間を発生させるため、非接触ICタグの誤作動の引き金になっていた。それはすなわち、リーダライタと非接触ICタグの通信状態の不良を意味する。
【0008】
【課題を解決するための手段】
そこで、このような課題を解決する新規かつ有用なリーダライタ及びそれを用いた通信システムを提供することを本発明の概括的目的とする。
【0009】
より特定的には、本発明は、アンテナコイルの減衰振動を抑制し、良好な通信状態を得ること可能とするリーダライタ及びそれを用いた通信システムを提供することを本発明の例示的目的とする。
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の一側面としてのリーダライタは、ICモジュールを有する非接触情報媒体と電磁波からなるキャリアを用いて非接触で通信可能なリーダライタであって、前記非接触情報媒体との間で情報の通信を行うアンテナ部と、所定の周波数のキャリアを与えられた情報に従って変調し、所定のON/OFFよりなる波形を有するキャリア信号を生成する変調回路と、前記キャリア信号を受けて前記アンテナ部を駆動する駆動回路と、前記変調回路に接続され、前記所定のOFFタイミングに同期して所定のパルス信号を生成するロジック回路と、前記ロジック回路に接続され、前記駆動回路にワイヤードORで接続されたトランジスタを有し、前記アンテナ部で生じる減衰振動を抑制する減衰振動キャンセル部と、前記ロジック回路と前記減衰振動キャンセル部の間に接続された微分回路と、を有する。かかるリーダライタによれば、アンテナコイルの減衰振動を抑制することができると共に、ロジック回路と減衰振動キャンセル部の間に微分回路を配置する構成により、減衰振動に関するアンテナコイルの内部抵抗の違いによる対応も容易に行うことができる
【0011】
記微分回路は、前記アンテナ部の構造に応じて前記減衰振動を抑制するように所定の定数が調整可能であり、減衰振動を効果的に抑制することができる。
【0012】
また、本発明の別の側面としての通信システムは、ICモジュールを有する非接触情報媒体と、非接触情報媒体と電磁波からなるキャリアを用いて非接触で通信可能なリーダライタとを有する通信システムであって、前記リーダライタは、前記非接触情報媒体との間で情報の通信を行うアンテナ部と、所定の周波数のキャリアを与えられた情報に従って変調し、所定のON/OFFよりなる波形を有するキャリア信号を生成する変調回路と、前記キャリア信号を受けて前記アンテナ部を駆動する駆動回路と、前記変調回路に接続され、前記所定のOFFタイミングに同期して所定のパルス信号を生成するロジック回路と、前記ロジック回路に接続され、前記駆動回路にワイヤードORで接続されたトランジスタを有し、前記アンテナ部で生じる減衰振動を抑制する減衰振動キャンセル部と、前記ロジック回路と前記減衰振動キャンセル部の間に接続された微分回路と、を有する。かかる通信システムによれば、上述したリーダライタより構成され、同様の作用を奏する。即ち、リーダライタと通信する非接触情報媒体の誤作動を防止することができるので、かかる通信システムの通信状態は良好なものとすることができる。
【0013】
本発明の更なる目的又はその他の特徴は添付図面を参照して説明される好ましい実施例において明らかにされるであろう。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して、本発明のリーダライタ100及びそれを用いた通信システム1について説明する。図1を参照するに、通信システム1は、リーダライタ100と、非接触情報媒体200とを有している。なお、添付図面の各図において、同一の参照番号を付した部材は同一部材を表すものとし、重複説明は省略する。図1は、本発明の通信システム1の構成を示すブロック図である。図2は、図1に示すリーダライタの概略ブロック図である。図3は、図2に示すリーダライタ100の構成を概略的に示す回路図である。
【0015】
リーダライタ100はキャリア周波数fを有する電波W(以下、単にキャリアと表現する場合もある。)を非接触情報媒体200へ送信及びから受信し、無線通信を利用して非接触情報媒体200と交信する。電波Wは任意の周波数帯のキャリア周波数fc(例えば、13.56MHz)を使用することができる。図1に良く示されるように、リーダライタ100は本体105と、本体105上面に位置するアンテナ部110と、本体105内部に格納される制御インターフェース部120と、電源回路170とを有している。アンテナ部110と制御インターフェース部120は後述するケーブル180によって電気的に接続されている。また、リーダライタ100は、制御インターフェース部120を介して更なる図示しない外部ホスト装置(処理装置、制御装置、パーソナルコンピュータ、ディスプレイなど)に接続されている。
【0016】
また、リードライタ100は、例えば、家庭用コンセントのAC100V又は電池等の外部電源を取り込み可能な図示しないACアダプタ(及び、それに接続するコード及びプラグ等)又は電池収納部を備え、かかるACアダプタ又は電池収納部は電源回路170に接続されている。また、通信システム1において、リーダライタ100は図示しない外部装置に接続可能な図示しないUSBケーブル又はUARTケーブルを備えているが、リーダライタ100が上記外部装置を含む総合的な装置として構成されてもよい。なお、本実施例のリーダライタ100が外部装置にUSBを介して接続される場合、上述したACアダプタ又は電池収納部は外部装置の電源を共有することで省略されても良い。
【0017】
リーダライタ本体105は、図1において筐体として図示されているが、かかる形態は例示的であって、これに限定されるものではない。例えば、リーダライタ105は用途に合わせた任意の形状(例えば、球体、筐体を含む多角形体など)を有することができ、所要のプラスチック材料を成形したものである。但し、本体105の材料についても、金属材料や、ガラス、セラミック、木材、紙などのプラスチック以外の材質であっても良く、また、これらのグループより選択される複合材料であっても良い。更に、リーダライタ105は、後述するアンテナ部110に非接触情報媒体200を係合するための係合部材、アンテナ部110を可視的に表示するための表示手段(例えば、アンテナ部110を画定するように配置されたLED等)、非接触情報媒体200との通信状態を示すための表示手段、及び、その他いかなる構成を備えてもよく、その形態は使用に応じていかようにも変形可能である。
【0018】
アンテナ部110は非接触情報媒体200との間で情報の通信を行う機能を有し、図1に示されるように、アンテナ部110は通信装置100の上面に位置し、所定の通信領域(図中、点線で示す領域)を有している。アンテナ部110は、ループアンテナ112と整合回路114により構成される。
【0019】
ループアンテナ112は、通信状態を妨げない程度の材料より整形された基体111(例えば、円状の基体111)の周囲に沿って延在される巻線部分である。なお、基体111はかかる形状に限定されず、所望の形状として実現することができる。しかしながら、ループアンテナ112は、必ずしも基体111に設けられることを必要とせず、例えば、リーダライタ本体105の一部に形成されても、巻線部分が外部に露出されてもよく、所望の形態に応じて選択可能である。
【0020】
ループアンテナ112は、フィルムにラミネートされた配線材を接着したり、金属配線、ワイヤの貼り合わせや、エッチング、蒸着、プレーティングその他の加工技術によって形成されたものである。配線材料としては、例えば、アルミニュームや銅などの比較的に電気導電率の高い材料が用いられるが、これに限定されるものではない。ループアンテナ112の大きさや形状はアンテナの駆動電力や所望とする通信領域(即ち、広さ)より決定されることが望ましく、これに関し限定を有するものではない。なお、本実施形態のリーダライタ100は、ループアンテナ112が小さい場合であっても、ループアンテナ112によって発生する減衰振動を抑制可能であり、良好な通信状態を得ることができる。
【0021】
整合回路114は本実施形態において容量であって、ループアンテナ112に対して並列に接続されている。
【0022】
制御インターフェース部120は、送信部130と、減衰振動キャンセル部140(以下、単にキャンセル部140と称する)と、受信部150と、コントローラ160とを内蔵している。
【0023】
送信部130は、図示しない外部装置より送信されたデータを変調し、ループアンテナ112に送信する。送信部130は発振回路132と、変調回路134と、駆動回路136とを有する。発振回路132は所定の周波数のキァリアを発生するための回路であり、水晶振動子又はセラミック振動子等を使用することにより構成可能である。変調回路134はキャリアを与えられた情報に従って変調する回路であり、例えば、通常のCMOS ANDゲート回路等で構成することができる。この場合、変調方式としては、振幅変調方式の一種であるASK(Amplitude Shift Keying)100%方式であるが、他の変調方式例えばPSK(Phase Shift Keying)方式,FSK(Frequency Shift Key ing)方式であってもよい。最後に、駆動回路136は変調されたキャリアを受けて電力増幅し、アンテナ部110を駆動する。駆動回路136は、本実施形態において、抵抗とトランジスタにより構成される。なお、本明細書に記載された送信部130は例示的であって、これと同様の作用を奏する構成を適用することを排除するものでない。
【0024】
キャンセル部140は、キャリアのON/OFFに伴いアンテナ部110のループアンテナ112によって発生する減衰振動を抑制する機能を有する。キャンセル部140はロジック回路142と、キャンセル回路146とを有し、キャンセル回路146の後述するトランジスタ147と上述した駆動回路136のトランジスタがワイヤードORとなるように接続されている。
【0025】
ロジック回路142は上述した変調回路134に接続され、キャリアのOFFタイミングに同期して数クロックのパルス信号を作成する。ロジック回路142は図示しないクロックに接続されており、かかるクロックを使用して当該数クロックのパルス信号を作成可能としている。なお、ロジック回路142は、後述するコントローラ160のクロックを使用しても良く、かかる構成においては上述した図示しないクロックは省略可能である。
【0026】
図4を参照するに、ロジック回路142が生成するパルス信号について説明する。ここで、図4は、ループアンテナ112に送信される信号と同一な時間軸で示した、ロジック回路142によって生成されるパルス信号を示した図である。図4に良く示されるように、ロジック回路142はキャリアのOFFタイミングに同期して所定幅のパルス信号を出力している。所定の幅は、一般的に、キャリアのON/OFFに長さに対応して決定される値であるが、かかるパルス信号によってキャリアの減衰振動が最も小さくなるような値をシミュレーション等によって決定することが望ましい。
【0027】
キャンセル回路146はトランジスタ147と抵抗148から構成される回路である。上述したように、トランジスタ147は駆動回路136のトランジスタとワイヤードORとなるように接続されている。
【0028】
かかる構成のキャンセル部140は、所定のタイミングパルス信号を作成し、上記トランジスタ147を駆動回路136のトランジスタとワイヤードORで接続することにより、ループアンテナ112の減衰振動を抑制する。図5を参照するに、(a)に示すループアンテナ112より出力されるキャリアに対し、(b)に示すキャンセル部140によって生成されるタイミングパルスを生成することで、実際にループアンテナ112より出力されるキャリアは(c)に示すような波形を示す。なお、(b)に示すパルス信号は、図3に示すように、キャリアのOFFタイミングに同期して出力されているものである。ここで、図5の(a)は減衰振動を有するキャリアを示す波形図であり、(b)は減衰振動キャンセル部146により作成されるパルス信号であり、(c)は減衰振動キャンセル部146を設けることによって得られるループアンテナ112より出力されるキャリアを示した波形図である。以上より、(c)に示す波形は理想波形、即ち、図3に示すループアンテナに送信される信号と同一であり、減衰振動が抑制されている。
【0029】
なお、図3に示すように、キャンセル部140はロジック回路142とキャンセル回路146の間に微分回路144を配置する構成であっても良い。微分回路144は、上述した減衰振動に関するループアンテナ112の内部抵抗の違いによる対応も、微分回路144の所定の定数を調整することで容易に調節可能となる。微分回路144は、図3に示すように、容量と抵抗よりなる回路であるが、OPアンプを使用して構成しても良い。しかしながら、かかる微分回路144は、容量と抵抗よりなる簡素な構成であって、安価に作成できるという長所を有する。
【0030】
本実施形態において、キャンセル部140はロジック回路142を変調回路134に接続することで、キャリアのOFFタイミングに同期したパルス信号を生成している。しかし、かかるロジック回路142は、後述するコントローラ160に代替される、又はコントローラ160の一部として構成されてもよい。かかる構成において、後述するコントローラ160はトランジスタ147(又は、微分回路144)に接続され、送信部130の変調回路134をモニタリングし、OFFタイミングに同期したパルス信号を生成するであろう。
【0031】
受信部150は、図示しない検波手段(電流検出手段)と、復調回路とを有すし、非接触情報媒体200が送信した信号を復元する。本実施形態において、検波手段はループアンテナ112に流れる電流の変化を検出する手段であって、例えば、当該周知の電流検出手段より構成することができる。なお、検波手段は、本実施形態において電流検出手段として実現されるが、非接触情報媒体200が送信した信号を検出可能ないかなる構成であってよい。また、復調回路は電流検出手段で検出された変化分を復調する回路であって、これもまた当該周知のいかなる技術の適用を排除するものでない。
【0032】
コントローラ160は、復調した信号から情報を取り出して外部装置に転送する。コントローラ160は、例えば、CPUより構成されても良いし、これと異なる制御及び/又は処理回路であってもよい。
【0033】
電源回路170は外部より電力の供給を受けて適宜電圧変換を行い、各回路に対し必要電力を供給するものであるが、場合によっては内蔵電池を電力源としてもよい。電源回路170は、本実施形態において、アンテナ部110を15V電源で駆動する。なお、電源回路170は当業界周知のいかなる技術をも適用可能であり、ここでの詳細な説明は省略する。
【0034】
再び、図1を参照するに、上述のリーダライト100と交信可能な非接触情報媒体200について説明する。
【0035】
非接触情報媒体200は、リーダライタ100と電磁波(電波)を使用して交信する。本実施形態において、非接触情報媒体200は、用途に合わせた任意の形状(例えば、ペンダント形状、コイン形状、キー形状、カード形状、タグ形状など)を有することができ、非接触ICタグとして実現されている(以下、非接触ICタグ200と交換可能に使用する)。但し、非接触情報媒体200は、クレジットカードと同一寸法を有する、所謂ISO(国際標準化機構:Internatioal Organization for Standardization)サイズ(縦54mm、横85.6mm、厚さ0.76mm)のICカードとして実現されてもよい。また、かかるICカードにおいて、クレジットカードやキャッシュカードなどの磁気ストライプを有するカード媒体に適用されることを妨げるのもではない。更に、非接触情報媒体200は、選択的に、エンボス、サインパネル、ホログラム、刻印、ホットスタンプ、画像プリント、写真などが形成されてもよい。
【0036】
図6及び図7を参照するに、非接触ICタグ200は、基板205と、アンテナ部210と、ICモジュール220とを有する。ここで、図6は非接触ICタグ200の構成を示す回路図である。図7は、非接触ICタグ200を示す概略平面図である。図7によく示されるように、非接触ICタグ200は、基板205上に取り付けられたICモジュール220の表面に形成された後述するコイルパターン212がパッド部230を介してICモジュール220と電気的に接続されている。本実施例の非接触ICタグ200は、ICモジュール220の回路パターン上にアンテナコイルが形成されたオンコイルICモジュール220として実現されている。しかし、本発明の非接触情報媒体200はアンテナコイルがICモジュールに内蔵されていない非接触情報媒体200にも適用できることはいうまでもない。
【0037】
なお、非接触ICタグ200は、バッテリを内蔵してもよいが、内臓バッテリの劣化に伴うトラブルを回避すると共に、チップを小型化するためにバッテリレスとすることが好ましい。従って、非接触ICタグ200は、リーダライタ100から受信した電波から電磁誘導によって動作電力を得ると共に、電波を利用してリーダライタ100とデータを交換することができるものとする。
【0038】
基板205は、ICモジュール220を直接あるいは間接的に張り合わして固定する基板である。基板205は、上述したように所要の形状を有し、所要のプラスチック材料を成形したものである。しかし、基板205の材料についても、交信を妨げない範囲で金属材料や、ガラス、セラミック、木材、紙などのプラスチック以外の材質であっても良く、これらとプラスチックとの複合材料であっても良い。
【0039】
アンテナ部210はリーダライタ100と交信するためのアンテナであって、コイルパターン212と、コイルパターン212に対して並列に接続された容量214とを有する。コイルパターン212は、例えば、略正方形状のICモジュール220の周辺部に沿って延在される巻線パターンを有し、その巻数は当該ICモジュール220の通信電波のキャリア周波数に応じて設定される。オンチップコイルはその配線の両端において、一対のパッド部230を介しICモジュール220の内部回路と電気的に接続されており、信号の送受信が可能である。図において、容量214はパッド部230を介しオンチップ回路212に対して並列に接続されるが、容量214がコイルパターン212と並列となるようなその他の接続方法を排除するものではない。かかる構成において、アンテナ部210を構成する合成回路の共振周波数は、非接触ICタグ200が交信する信号のキャリア周波数となっている。
【0040】
なお、非接触ICタグ200がICモジュールを内蔵していない非接触情報媒体として実現されるのであれば、コイルパターンはアンテナ部の形状や寸法、その他の条件に応じて所望の寸法、形状、自己インダクタンス、相互インダクタンスを有するように形成されるに足りるものである。例えば、上から見た場合にコイルパターンの形状は円形、四角形、楕円形など所望の形状を有することができる。また、コイルの代わりにダイポールアンテナその他のアンテナを使用してもよい。
【0041】
ICモジュール220は、例えば、その内部にEEPROMなどの不揮発性半導体メモリを内蔵したICチップや、マイコンなどの半導体チップ、或いは他の信号処理回路を内蔵した集積回路装置である。ICモジュール220は、電源回路222と、送受信回路224と、メモリ226と、ロジック制御回路228と、図示しないクロックとを内蔵している。
【0042】
非接触ICタグ200はバッテリを内蔵しておらず、電源回路222はアンテナ部210が受信した電波から電磁誘導によってその動作電力を得る。
【0043】
送受信回路224は受信回路と送信回路を有している。受信回路は、受信した電波を検波してそれからデータを得るために基底帯域信号を復元する。また、送信路は、データを送信するために搬送波を送信データに応じて変化させてコイルパターン212に送信する。変調方式は負荷変調を使用することもできる。負荷変調とは、媒体電力(負荷)を送信でータに従って変調する方式をいう。なお、本明細書に記載された送受信回路224は例示的であって、これと同様の作用を奏するいかなる構成の送受信回路を適用することを排除するものでない。
【0044】
メモリ226はデータを保存するROM、RAM、EEPROM及び/又はFRAM等から構成される。メモリ226は、例えば、ID情報や所定額の電子マネーなどの価値や取引記録その他を格納することができ、
送受信回路224はロジック制御回路228によって制御されて、クロックに同期して動作する。ロジック制御回路228はCPUを使用して実現してもよいしCPUを用いずに実現してもよい。非接触ICタグ200はリーダライタ100のアンテナ部110とかかるデータに基づいて交信するときに、ロジック制御回路228は所定の処理を行うことができる。例えば、ロジック制御回路228は所定の取引(例えば、切符の購入や電子マネーの入金など)によりかかる価値をメモリ226から増減等することができる。なお、これらの構成要素の構成や動作は当業者には容易に理解できるため詳しい説明は省略する。
【0045】
次に、本発明の通信システム1の動作について説明する。リーダライタ100から非接触ICタグ200にデータが送られる場合には、図示しない外部装置からのデータは、リーダライタ100において、コントローラ160で処理されて送信部130に送られる。この送信部130では、発振回路132から一定振幅の高周波信号がキャリアとして供給されており、このキャリアがデータで変調されて変調高周波信号が出力される。この場合、変調方式としては、振幅変調、周波数変調、位相変調などいずれであってもよい。変調回路134から出力される変調高周波信号は駆動回路136を介してアンテナ部110に供給される。
【0046】
本発明では、これと同時に、減衰振動キャンセル部140が、かかる変調高周波信号のOFFタイミングに同期して、所定のパルス信号を生成し、ループアンテナ112における減衰振動の抑制に寄与する。よって、かかるリードライタ100は非接触情報媒体200と良好な通信状態を得ることができる。
【0047】
このときには、リーダライタ100に非接触ICタグ200が近接されており、リーダライタ100のループアンテナ112と非接触ICタグ200のコイル212とが電磁結合されている。
【0048】
そこで、非接触ICタグ200においては、アンテナ部210のコイル212を介して変調高周波信号が送受信回路224の図示しない受信回路に供給される。また、この変調高周波信号は電源回路222に供給されて非接触ICタグ200の各部に必要な所定の電源電圧(例えば、3.3V)が生成される。また、送受信回路224の図示しない受信回路から出力されたデータは、復調されてロジック制御回路228に供給される。ロジック制御回路228は図示しないクロックの出力に基づいて動作し、供給されるデータを処理して所定のものをメモリ226に書き込む。
【0049】
非接触ICタグ200からリーダライタ100にデータが送られる場合は、リーダライタ100において、変調回路134からは無変調で一定振幅の高周波信号が出力され、駆動回路136、アンテナ部110のループアンテナ112を介して非接触ICタグ200に送られる。非接触ICタグ200においては、上記と同様、この高周波信号が電源回路222に供給され、上記の所定電源電圧が生成される。
【0050】
一方、非接触ICタグ200においては、メモリ226から読み出されたデータがロジック制御回路228で処理されて送受信回路224に供給される。送受信回路224の図示しない送信回路は例えば負荷抵抗とスイッチとからなり、データの“1”、“0”ビットに応じてこのスイッチがON/OFFする。
【0051】
リーダライタ100においては、上記のように送受信回路224の図示しない送信回路のスイッチがON/OFFすると、アンテナ部110のループアンテナ112の両端子からループアンテナ112側をみた負荷が変動し、このため、ループアンテナ112に流れる高周波電流の振幅が変動する。即ち、この高周波電流は非接触ICタグ200のロジック制御回路228から送受信回路224の図示しない送信回路に供給されるデータによって振幅変調されたものである。この高周波電流は受信部150の図示しない電流検出手段で検出され、これもまた図示しない受信回路で復調されてデータが得られる。このデータはコントローラ160で処理され、図示しない外部装置などに送られる。
【0052】
本発明の通信システム1は、非接触ICカードやICタグと同様に様々な多目的用途が見込まれている。これらの分野には、金融(キャッシュカード、クレジットカード、電子マネー管理、ファームバンキング、ホームバンキングなど)流通(ショッピングカード、商品券など)、医療(診察券、健康保険証、健康手帳など)、交通(ストアードフェア(SF)カード、回数券、免許証、定期券、パスポートなど)、保険(保険証券など)、証券(証券など)、教育(学生証、成績証など)、企業(IDカードなど)、行政(印鑑証明、住民票など)などが含まれる。例えば、非接触ICタグ200がID情報をそのメモリに格納している場合には、通信システム1は、会社、研究所、大学などの入出力管理媒体として使用することができる。
【0053】
以上、本発明の好ましい実施例を説明したが、本発明はその要旨の範囲内で様々な変形や変更が可能である。
【0054】
【発明の効果】
本発明のリーダライタ及びそれを用いた通信システムは、かかるリーダライタによれば、減衰振動キャンセル部によりキャリアのOFFタイミングに同期して所定のパルス信号を生成することで、減衰振動を抑制することができる。即ち、リーダライタと通信する非接触情報媒体の誤作動を防止することができるので、かかる通信システムの通信状態を良好なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の通信システムの構成を示すブロック図である。
【図2】 図1に示すリーダライタの概略ブロック図である。
【図3】 図2に示すリーダライタの構成を概略的に示す回路図である。
【図4】 ループアンテナに送信される信号と同一な時間軸で示した、ロジック回路によって生成されるパルス信号を示した図である。
【図5】 (a)は減衰振動を有するキャリアを示す波形図であり、(b)は減衰振動キャンセル部により作成されるパルス信号であり、(c)は減衰振動キャンセル部を設けることによって得られるループアンテナより出力されるキャリアを示した波形図である。
【図6】 非接触ICタグの構成を示す回路図である。
【図7】 非接触ICタグを示す概略平面図である。
【図8】 (a)は減衰振動が発生した場合のキャリアを示す波形図であり、(b)は非接触ICタグによって検出され波形整形された波形図である。
【図9】 (a)は理想的なキャリアを示す波形図であり、(b)は非接触ICタグによって検出される波形整形された波形図である。
【符号の説明】
1 通信システム
100 リーダライタ
110 アンテナ部
120 制御インターフェース部
130 送信部
140 減衰振動キャンセル回路
142 ロジック回路
144 微分回路
146 駆動回路
150 受信部
160 コントローラ
200 非接触ICタグ
205 基板
210 アンテナ部
220 ICモジュール

Claims (3)

  1. ICモジュールを有する非接触情報媒体と電磁波からなるキャリアを用いて非接触で通信可能なリーダライタであって、
    前記非接触情報媒体との間で情報の通信を行うアンテナ部と、
    所定の周波数のキャリアを与えられた情報に従って変調し、所定のON/OFFよりなる波形を有するキャリア信号を生成する変調回路と、
    前記キャリア信号を受けて前記アンテナ部を駆動する駆動回路と、
    前記変調回路に接続され、前記所定のOFFタイミングに同期して所定のパルス信号を生成するロジック回路と、
    前記ロジック回路に接続され、前記駆動回路にワイヤードORで接続されたトランジスタを有し、前記アンテナ部で生じる減衰振動を抑制する減衰振動キャンセル部と
    前記ロジック回路と前記減衰振動キャンセル部の間に接続された微分回路と、を有するリーダライタ。
  2. 前記微分回路は、前記アンテナ部の構造に応じて前記減衰振動を抑制するように所定の定数が調整可能である請求項記載のリーダライタ。
  3. ICモジュールを有する非接触情報媒体と、
    非接触情報媒体と電磁波からなるキャリアを用いて非接触で通信可能なリーダライタとを有する通信システムであって、
    前記リーダライタは、
    前記非接触情報媒体との間で情報の通信を行うアンテナ部と、
    所定の周波数のキャリアを与えられた情報に従って変調し、所定のON/OFFよりなる波形を有するキャリア信号を生成する変調回路と、
    前記キャリア信号を受けて前記アンテナ部を駆動する駆動回路と、
    前記変調回路に接続され、前記所定のOFFタイミングに同期して所定のパルス信号を生成するロジック回路と、
    前記ロジック回路に接続され、前記駆動回路にワイヤードORで接続されたトランジスタを有し、前記アンテナ部で生じる減衰振動を抑制する減衰振動キャンセル部と
    前記ロジック回路と前記減衰振動キャンセル部の間に接続された微分回路と、を有する通信システム。
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