JP4738007B2 - 骨粗鬆症治療用外用剤 - Google Patents

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本発明は、窒素原子を有するビスホスホネートを有効成分として含み、皮膚刺激性が低減された骨粗鬆症治療用外用剤に関する。
従来より、骨粗鬆症治療薬として、ビスホスホネート系治療薬が知られている。
ビスホスホネートは、作用機序によって2種類に大別され、窒素原子を有するものと有しないものがある。
窒素原子を有するビスホスホネートは、FPP(ファルネシルジホスフェート)シンセターゼを阻害し、それにより、FPP及びその誘導体であるGGPP(ゲラニルゲラニルジホスフェート)の形成を抑制する。これらのイソプレノイド化合物はsmallGTPase蛋白のプレニル化に必要なものであり、破骨細胞等の機能を低下させ、主作用と考えられるアポトーシスの早発を起こすと考えられている。一方、窒素原子を有しないビスホスホネートは、ATP類似体に代謝され、破骨細胞の機能を抑制すると考えられている。
また、窒素原子を有する前者ビスホスホネートのFPPシンセターゼ阻害作用はメバロン酸合成経路の阻害をもたらすが、メバロン酸合成経路の構成成分を加えることによって、逆に該ビスホスホネートの破骨細胞に対する効果が抑制されることも知られている。
窒素原子を有するビスホスホネート化合物は、骨粗鬆症治療薬として強い効力を示すことが知られており、具体的には、リセドロネート、エチドロネート、パミドロネート、アレンドロメート、インカドロネート、ピリドロネート、ゾレンドロネート等がある。これらの中でも、リセドロネート、エチドロネート、アレンドロネートは、錠剤として広く使用されているが、胃腸障害などの副作用が多く報告されており、長期にわたって投与されることが多い骨粗鬆症の治療剤としては課題となっている。
そのため、特許文献1〜4には、窒素原子を有するビスホスネート含有の骨粗鬆症治療用経皮投与製剤が提案されている。しかしながら、本願発明者らの研究によると、これらの文献に記載の製剤は強い皮膚刺激性を有するという問題を有することが判明している。
特表2003−535889公報 特開平11−60489号公報 特開2004−250330公報 特開2004−250423公報
なお、特許文献5には、ゲラニオール等のイソプレノイド化合物を含有するビスホスホネート組成物が開示されており、イソプレノイド化合物が胃腸上皮細胞に対するビスホスホネートの潜在的な副作用を軽減することが記載されている。しかし、特許文献5には、経口組成物において起こり得る胃腸への副作用をイソプレノイド化合物が軽減することだけが述べられており、経皮吸収製剤や皮膚刺激の低減作用に関しては何ら記載がない。
また、特許文献6及び7には、ゲラニオール等のテルペン類が吸収促進作用を有し、経皮製剤に利用され得ることが記載されている。しかし、ゲラニオール等のテルペン類が他の物質により生じた皮膚刺激を抑制する作用を有する点については何ら記載がない。
特表2002−519305公報 特開平10−158194号公報 特開平8−310946号公報
一方、特許文献8及び9には、グリチルリチン酸を含有する外用剤が開示されており、グリチルリチン酸を日焼け等に起因する皮膚組織の炎症軽減のために利用することが記載されている。しかし、グリチルリチン酸が他の何らかの化合物により生じる皮膚刺激を抑制する作用を有する点については何ら記載がない。
特開2004−131383公報 特開2002−336294公報
なお、Reszkaらは、窒素原子を有するビスホスホネートによる食道の刺激について研究を行い、ヒトケラチノサイト細胞において、アレンドロネート及びリセドロネートがアポトーシスを誘導しないが、細胞周期S期(DNA合成期)を増大させることを明らかにした。また、彼らはゲラニルゲラニオールやファルネソール等を加えることによってS期の増大が抑制されることを明らかにした(非特許文献1)。
Reszka et al. Mol Pharmacol 59:193-202,2001
発明者らは、このReszkaの研究にヒントを得て、窒素原子を有するビスホスホネートが皮膚に対して与える刺激を抑制するために、ゲラニルゲラニオールやファルネソールを加えると、何らかの刺激抑制または増大効果が得られることを予想して研究を重ねた結果、ゲラニオール及び/またはグリチルリチン酸もしくはその塩が皮膚刺激を顕著に抑制することを見出し、本発明を完成するに至った。
したがって、本発明は、ビスホスホネートの中でも骨粗鬆症治療における効力の強い窒素原子を有するビスホスホネートを有効成分として含み、同物質に起因する皮膚刺激が低減された外用剤を提供することを課題とする。
すなわち、本発明は、窒素原子を有するビスホスホネートと、ゲラニオール及び/グリチルリチン酸もしくはその塩とを含有することを特徴とする骨粗鬆症治療用外用剤である。
本発明はまた、窒素原子を有するビスホスホネートがリセドロネートである前記骨粗鬆治療用外用剤である。
以下、本発明について詳しく説明する。
本発明において有効成分として使用される窒素原子を有するビスホスホネートは特に限定されないが、例えば、パミドロネート、アレンドロメート、リセドロネート、インカドロネート、ピリドロネート、ゾレンドロネート等が挙げられ、リセドロネートは特に好ましい。
本発明において、ゲラニオールとグリチルリチン酸またはその塩とは、それぞれ単独で配合しても、両者を組み合わせて配合してもよい。
グリチルリチン酸の塩としては特に限定されず、無機塩でも有機塩でもよいが、グリチルリチン酸二カリウム、グリチルリチン酸二ナトリウム、グリチルリチン酸三ナトリウム、グリチルリチン酸モノアンモニウム、グリチルリチン酸二アンモニウム等が好ましい例として挙げられる。
また、外用剤の剤形は、特に限定されないが、例えば、液剤、貼付剤、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤等として調製することができる。
なお、本発明の骨粗鬆症治療用外用剤における窒素原子を有するビスホスホネートとグリチルリチン酸及び/またはゲラニオールの配合量は、剤形によっても異なるが、窒素原子を有するビスホスホネートは0.1〜10重量%とすることが好ましい。窒素原子を有するビスホスホネートの配合量が0.1重量%未満となると、骨粗鬆症治療効果が得られにくくなり、10重量%を超えると皮膚刺激が強くなりすぎるので好ましくない。窒素原子を有するビスホスホネートの配合量が0.5〜5重量であると、薬効の面でも好ましく、皮膚刺激性もそれほど強くなく、ゲラニオール及び/またはグリチルリチン酸もしくはその塩の皮膚刺激低減効果が好適に得られるため、特に好ましい。
また、本発明の骨粗鬆症治療用外用剤に含まれるゲラニオールの配合量は、0.001〜5重量%とすることが好ましく、0.01〜3重量%とすることが特に好ましい。0.001重量%未満となると、皮膚刺激抑制効果が得られにくく、5重量%を超えるとゲラニオール自体の皮膚刺激が発現し、臭いの点でも好ましくない。
なお、工業用アルコールの変性剤として、ゲラニオールは0.1重量%前後使用されるので、ゲラニオールとしてゲラニオール変性アルコールを配合してもよい。
また、本発明の骨粗鬆症治療用外用剤に含まれるグリチルリチン酸またはその塩の配合量は、0.1〜5重量%とすることが好ましく、0.5〜3重量%とすることが特に好ましい。グリチルリチン酸またはその塩の配合量が0.1重量%未満となると皮膚刺激抑制効果が得られにくく、5重量%を超えて配合しても皮膚刺激抑制作用が特に高まることもない。
なお、本発明の骨粗鬆症治療用外用剤は、それぞれの剤形に応じて、他の慣用成分及びそれらの配合量を用い、慣用の製造方法により製造することができる。
たとえば、液剤は、窒素原子を有するビスホスホネートと、ゲラニオール及び/またはグリチルリチン酸もしくはその塩を、液剤の基剤中に配合することによって調製することができる。液剤の基剤としては、例えば、水、アルコール類(エタノール、イソプロピルアルコール、グリセリン、プロピレングリコール、ブチレングリコール等)の他、油成分(流動パラフィン、シリコンオイル、脂肪酸エステル等)、界面活性剤(脂肪酸の多価アルコールエステル、脂肪族アルコールの多価アルコールエーテル等)等を加えることができ、さらに、吸収促進剤、安定化剤(抗酸化剤、防腐剤等)、充填剤(有機、無機)、pH調整剤、溶解剤、増粘剤等を使用することができる。
また、本発明の骨粗鬆症治療用外用剤が貼付剤である場合は、貼付剤は、窒素原子を有するビスホスホネートと、ゲラニオール及び/またはグリチルリチン酸もしくはその塩と、粘着基剤またはハイドロゲル基剤とを常法により配合し、支持体上にこれらを展延し、剥離ライナーを被覆することによって調製することができる。
粘着基剤の成分としては、例えば、ゴム成分(スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、天然ゴム等)、粘着性アクリル酸エステル(共)重合体、ポリジメチルシロキサン、ポリイソブチレン等の他、軟化剤(パラフィンオイル、油脂類等)、粘着付与剤(水素添加ロジングリセリンエステル、脂環族飽和炭化水素樹脂等)、吸収促進剤、安定化剤、充填剤(有機、無機)、溶解剤等を使用することができる。
ハイドロゲル基剤は、例えば、水溶性高分子(ポリアクリル酸、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール等)、架橋剤(アルミニウム化合物等)、多価アルコール(グリセリン、プロピレングリコール等)、水、安定化剤、充填剤(有機、無機)、溶解剤等を使用することができる。
支持体としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリオレフィン等からなる織布、不織布、フィルム等を使用することができる。さらに、剥離ライナーとしては、表面をシリコン処理したポリエチレンテレフタレート、ポリオレフィン、セルロース等からなるフィルム等を使用することができる。
本発明の外用剤が軟膏剤である場合は、窒素原子を有するビスホスホネートと、ゲラニオール及び/またはグリチルリチン酸もしくはその塩と、軟膏基剤とを常法により配合することによって調製することができる。
軟膏基剤の成分としては、例えば、ロウ類、炭化水素類(パラフィン、ワセリン等)の他、高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル類、脂肪族アルコール類、界面活性剤(脂肪酸の多価アルコールエステル、脂肪族アルコールの多価アルコールエーテル等)、シリコーン油、保湿剤、吸収促進剤、安定化剤、充填剤(有機、無機)、溶解剤等を使用することができる。
本発明の外用剤がクリーム剤である場合は、窒素原子を有するビスホスホネートと、ゲラニオール及び/またはグリチルリチン酸もしくはその塩と、クリーム基剤とを常法により配合することによって調製することができる。
クリーム基剤の成分としては、例えば、水、界面活性剤(脂肪酸の多価アルコールエステル、脂肪族アルコールの多価アルコールエーテル等)、多価アルコール(グリセリン、プロピレングリコール等)、高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル類、脂肪族アルコール類、ロウ類、シリコーン油、炭化水素類(流動パラフィン、スクワラン等)、吸収促進剤、安定化剤、充填剤(有機、無機)、ゲル化剤(セルロース誘導体等)、pH調整剤、溶解剤等を使用することができる。
本発明の外用剤がゲル剤である場合は、窒素原子を有するビスホスホネートと、ゲラニオール及び/またはグリチルリチン酸もしくはその塩と、ゲル基剤とを常法により配合することによって調製することができる。
ゲル基剤としては、例えば、水、ゲル化剤(セルロース誘導体、カルボキシビニルポリマー等)、低級アルコール、界面活性剤(脂肪酸の多価アルコールエステル、脂肪族アルコールの多価アルコールエーテル等)、多価アルコール(グリセリン、プロピレングリコール等)、吸収促進剤、安定化剤、充填剤(有機、無機)、pH調整剤、溶解剤等を使用することができる。
本発明によれば、窒素原子を有するビスホスホネートを有効成分として含み、同化合物による皮膚刺激が著しく低減された骨粗鬆症治療用外用剤が提供される。
以下、実施例を示しながら本発明を具体的に説明する。なお、実施例及び比較例において、「%」は重量%を意味するものとする。
(実施例1及び2)
有効成分としてのリセドロネート(RIS)と、グリチルリチン酸(GA)を含有する液剤を常法により製造し、皮膚刺激低減効果を調べた。
すなわち、モルモットの背部を除毛し、生理食塩水にて溶解した下記の各種被験溶液を皮内投与(100μL/site)した。
実施例1として、RIS0.03重量%及びGA0.1重量%を配合した液剤、
実施例2として、RIS0.03重量%及びGA1重量%を配合した液剤を使用した。
また、ネガティブ対照として、生理食塩水のみからなる液剤、
ポジティブ対照としてRISを0.03重量%配合した液剤を用いた。これらを投与24、48、72時間後の皮膚反応を、Draize法に従い評価し、一次刺激性評点(P.I.I.)を算出した。P.I.I.の評価基準は下記の通りである。結果を下記に示す。
Figure 0004738007
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表4及び5に示されるように、グリチルリチン酸を配合した場合、窒素原子を有するビスホスホネートを有効成分とする骨粗鬆症治療用液剤の皮膚刺激性は著しく低減した。
(実施例3〜5)
有効成分としてのリセドロネート(RIS)と、ゲラニオール(GOH)を含有する液剤を常法により製造し、皮膚刺激低減効果を調べた。
すなわち、モルモットの背部を除毛し、エタノール1%(w/v)を含有する生理食塩水にて溶解した各種被験溶液を皮内投与(100μL/site)した。
実施例3として、RIS0.03重量%及びGOH0.001重量%を配合した液剤、
実施例4として、RIS0.03重量%及びGOH0.01重量%を配合した液剤、
実施例5として、RIS0.03重量%及びGOH0.05重量%を配合した液剤を使用した。
また、ネガティブ対照として、生理食塩水にエタノール1%を添加した液剤、
ポジティブ対照としてRISを0.03重量%配合した液剤を用いた。これらを投与24、48、72時間後の皮膚反応をDraize法に従い評価し、一次刺激性評点(P.I.I.)を算出した。P.I.I.の評価基準は上記の通りである。結果を下記に示す。
なお、エタノールを加えたのは、ゲラニオールが水に溶けないためである。
Figure 0004738007
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表8〜10に示されるように、ゲラニオールを配合した場合、窒素原子を有するビスホスホネートを有効成分とする骨粗鬆症治療用液剤の皮膚刺激性は著しく低減した。
(比較例1及び2)
有効成分としてのリセドロネート(RIS)と、アラントインを含有する液剤を常法により製造し、皮膚刺激低減効果を調べた。
すなわち、モルモットの背部を除毛し、生理食塩水にて溶解した各種被験溶液を皮内投与(100μL/site)した。
比較例1として、RIS0.05重量%とアラントイン0.01重量%を含む液剤、
比較例2として、RIS0.05重量%とアラントイン0.1重量%を含む液剤、
ネガティブ対照として、生理食塩水のみからなる液剤、
ポジテイブ対照としてRISを0.05重量%配合した液剤を用いた。これらを投与24、48、72時間後の皮膚反応をDraize法に従い評価し、一次刺激性評点(P.I.I.)を算出した。結果を下記に示す。
Figure 0004738007
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表12及び13に示されるように、アラントインを添加しても、窒素原子を有するビスホスホネートを有効成分とする骨粗鬆症治療用液剤の皮膚刺激性はほとんど軽減しないことが明らかとなった。
(比較例3)
有効成分としてのリセドロネート(RIS)と、ゲラニルゲラニオール(GGOH)を含有する液剤を常法により製造し、皮膚刺激低減効果を調べた。
すなわち、モルモットの背部を除毛し、エタノール1%(w/v)を添加した生理食塩水にて溶解した各種被験溶液を皮内投与(100μL/site)した。
比較例3として、RIS0.03重量%とゲラニルゲラニオール0.05重量%を含む液剤、
ネガティブ対照として、生理食塩水のみからなる液剤、
ポジテイブ対照としてRISを0.03重量%配合した液剤を用いた。これらを投与24、48、72時間後の皮膚反応をDraize法に従い評価し、一次刺激性評点(P.I.I.)を算出した。結果を下記に示す。なお、エタノールを加えたのは、ゲラニルゲラニオールが水に溶けないためである。
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表16及び17に示されているように、ゲラニルゲラニオールを配合しても、皮膚刺激性はほとんど低下しなかった。
本発明の外用剤は、皮膚刺激性が著しく低減されたビスホスホネート含有骨粗鬆症治療用外用剤として利用可能である。

Claims (1)

  1. 有効成分としてのリセドロネートと、ゲラニオールを含有することを特徴とする骨粗鬆症治療用外用剤。
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