JP4737234B2 - 偏光子を用いた光学機器 - Google Patents
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具体的には、本発明の光学機器は、光源から出射された光束を画像情報に応じて変調する電気光学素子と、前記電気光学素子の光入射側および/または光射出側に配置された偏光子と、を備え、前記電気光学素子は、一対の基板と、前記一対の基板間に挟持された電気光学材料とを有し、前記偏光子は、光線透過率が97%以上の材料からなる偏光子用基板と、この偏光子用基板の表面に微細な金属製の凸条部をストライプ状に配列して構成される複屈折部とを有してなる光学機器であって、前記複屈折部は、前記偏光子用基板の2つの表面のうち、光射出側に設けられ、前記複屈折部には、該複屈折部を覆う保護基板が設けられ、前記保護基板は、前記複屈折部に対して一定距離離間した状態で配置され、前記保護基板は、前記偏光子用基板と外周端部で弾性接着剤により接着され、前記複屈折部が該保護基板および弾性接着剤で封止されていることを特徴とする。
ここで、97%以上の光線透過率を有する偏光子用基板材料としてはサファイア、LBC3N(HOYAオプティクス製)、ネオセラム(日本電気ガラス製)等がある。
と好ましい。ここで、光弾性定数は、偏光子用基板に作用した応力と、その応力が作用した状態で偏光子用基板を透過した光の複屈折による光路差との関係を与える比例定数であり、具体的には、複屈折による光路差をδ(nm)、光の進行方向に直角な成分の基板の内部応力をPs(×105Pa)、偏光子用基板の厚さをd(mm)とすると、[数1]のような関係が成立する。
δ=B・Ps・d/10
前述の光弾性定数を有する偏光子用基板材料としては、例えば、低光弾性ガラスであるHOYAオプティクス製LBC3N等を採用することができる。このような本発明によれば、偏光子用基板材料が光弾性定数の低い材料から構成されることにより、[数1]から判るように、複屈折部で吸収された熱が偏光子用基板に作用して熱歪により内部応力Psが生じても、光弾性定数Bが小さいため結果として光路差δを小さく抑えることができ、光抜け現象等の発生を防止することができる。
このように反射防止処理が施されることにより、反射する光を低減して入射光束の利用率を向上させることができるため、偏光子を透過する光の損失を少なくすることができる。
B×E×α/ρ×d≦9.8×10-5(m2/W)
このように保護基板の光入出射面にも反射防止処理が施されることにより、前記と同様に光の利用率を向上することができるうえ、透過面での不要な反射光を防ぐことができるため、信号のS/Nを向上させることができる。
シリコーンは接着面の耐紫外線性が良好であるため、紫外線により劣化するおそれがない。また、耐熱性も良好であるため、複屈折部で吸収された熱により影響をうけ、変形等が起こるおそれがない。
一方、スペーサがシリコーン系粘着剤のみからなる場合には、保護基板と偏光子用基板との熱による挙動の違いを吸収することができ、基板に形成された複屈折部と保護基板との適切な距離を保つことができる。また、シリコーン系粘着剤のみからなるので、スペーサの厚さが薄くなり、偏光子の薄型化を図ることができる。
図1には、本発明の実施形態に係る光学機器となるプロジェクタ1の光学系の構造を表す模式図が示されている。このプロジェクタ1は、インテグレータ照明光学系10、色分離光学系20、リレー光学系30、電気光学装置40、色合成光学系であるクロスダイクロイックプリズム50、および投写光学系である投写レンズ60を備えている。
前記インテグレータ照明光学系10は、光源装置11および均一照明光学系15を備え、光源装置11は、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ等の光源ランプ12、および、光源ランプ12から出射された光束の出射方向を揃えて平行化する放物面リフレクタ13から構成されている。
均一照明光学系15は、光源装置11から出射された光束を複数の部分光束に分割するとともに、各部分光束の偏光方向を、P偏光光束またはS偏光光束に揃える機能を具備し、第1レンズアレイ16、第2レンズアレイ17、PBSアレイ18、およびコンデンサレンズ19を含んで構成されている。
第2レンズアレイ17は、前述の第1レンズアレイ16により分割された部分光束を集光する光学素子であり、第1レンズアレイ16と同様に照明光軸Aに直交する面内にマトリクス状に配列される複数のレンズを備えている。各レンズの配列は、第1レンズアレイ16を構成するレンズと対応しているが、その大きさは、第1レンズアレイ16のように液晶パネル41R、41G、41Bの画像形成領域の縦横比と対応する必要はない。
コンデンサレンズ19は、第1レンズアレイ16、第2レンズアレイ17、およびPBSアレイ18を経た複数の部分光束を集光して、液晶パネル41R、41G、41Bの画像形成領域上に重畳させる機能を有するレンズである。
前記リレー光学系30は、入射側レンズ31、リレーレンズ33、反射ミラー35、37、および出射側レンズ39を備え、色分離光学系20で分離された色光、例えば、本例では青色光Bを液晶パネル41Bまで導く機能を有している。
液晶パネル41R、41G、41Bは、一対の透明なガラス基板間に電気光学物質である液晶を密閉封入したものであり、例えば、ポリシリコンTFTをスイッチング素子として、与えられた画像信号に従って、偏光板42から出射された偏光光の偏光方向を変調する。
投写レンズ60は、複数の組レンズからなるレンズユニットから構成され、クロスダイクロイックプリズム50で合成されたカラー画像をスクリーン上に拡大投写する機能を有する。
基板421は、線膨張係数が4.8×10-7/K、熱伝導率が1.35W/(m・K)の石英ガラスから構成され、その光出射面には、複屈折部422が形成されているとともに、図示を略したが、その光入射面には、反射防止膜が形成されている。
基板421の材質として石英ガラスを採用することにより、光の内部吸収を0.1%以下に抑えることができ、反射防止膜を形成することにより、界面反射を0.5%以下に抑えることができ、基板421の光線透過率は、98.9%(100%−0.1%−0.5%×2)以上とされている。
また、シリコーン系接着剤424は、未反応オイル成分抑制タイプのものであり、基板421および保護基板423が加熱等により異なる動きをした場合、その変形はこのシリコーン系接着剤424の部分で吸収する。
さらに、基板421および保護基板423の間には、スペーサ425が介在していて、複屈折部422に対して一定距離離間した状態で保護基板423が配置される。このスペーサ425は、紫外線硬化型接着剤が硬化したものである。
まず、保護基板423の周縁部分に点状に紫外線硬化型接着剤を塗布しておき、塗布面を基板421の複屈折部422の形成面と対向させて、基板421に紫外線硬化型接着剤を付着させる。
次に、両基板421、423を設計上の距離まで離間させた後、接着面に紫外線を照射して硬化させて両基板421、423の間隔を維持する。
最後に、シリコーン系接着剤424を両基板421、423の周縁部分に塗布してシリコーン系接着剤424を硬化させる。
すなわち、基板421が入射側に配置されることとなるため、偏光光の選択後の光束が基板421の熱歪等の影響を受けて偏光軸が回転することもなく、適切な偏光光の選択を行うことができる。また、基板材料として線膨張係数の低い石英ガラスを採用することにより、複屈折部422で吸収された熱が基板材料に作用しても歪が生じにくくなるため、偏光板42の光抜け現象等の発生を防止することができる。さらに、複屈折部422が金属から構成されているため、十分な耐久性を確保することができる。
さらに、基板421の光入射面および保護基板423の光入出射面に反射防止膜が形成されることにより、光の利用率を向上することができるうえ、透過面での不要な反射光を防ぐことができ、信号のS/Nを向上させることができる。
また、未反応オイル成分抑制タイプのシリコーン系接着剤424としているため、接着後、溶剤がリブ422Aの間に染み出してくることを防止できる。
さらに、保護基板423を基板421と略同一の形状とすることにより、偏光板42の大きさを偏光変換に必要な最小限の大きさとすることができるため、偏光板42の小型化を図ることができる。
また、保護基板423は偏光子の出射側に配置されるため、偏光子により偏光選択された光束が通過するので、基板421に比べて偏光選択後の光束に対する熱応力による影響が大きくなる。そこで、保護基板423の厚さdを前記[数2]を満たすようにすることで、保護基板の熱応力による光学歪を最小限に抑えられる。特に、石英ガラスやネオセラムを用いた場合には、[数2]の条件で設定することにより厚みを1mm程度まで厚くでき、光学歪の影響を殆ど発生させずに強度的にも十分な保護基板とすることができ、大変有利である。また、他の材料についても[数2]を満たすように基板厚みを選定すればよい。
前記第1実施形態に係る偏光板42は、保護基板423が基板421と略同一の形状とされ、シリコーン系接着剤424による接着は、両基板421、423の端面部分で行われていた。
基板521および保護基板523の接着は、基板521の端面と、保護基板523の表面部分でシリコーン系接着剤424によって行われ、シリコーン系接着剤424の量は、保護基板523への塗布量を増やすことによって任意に設定できる。
これに対して、第2実施形態に係る偏光板52は、基板521および保護基板523の材質をサファイアとしている点が相違する。尚、図示を略したが、基板521の光入射面および保護基板523の光入出射面には、反射防止膜が形成されていて、97%以上の光線透過率が確保される。
このような偏光板52をプロジェクタ1の光路上に配置する場合、金属板等の保持枠に偏光板52を取り付け、放熱用の経路を形成しておき、複屈折部422で吸収された熱を基板521または保護基板523を介して保持枠から放熱するのが好ましい。
すなわち、基板521、保護基板523の材質として熱伝導率の高いサファイアを採用することにより、複屈折部422で吸収された熱が基板521、保護基板523に作用しても、保持枠等を介して直ちに放熱することができるため、基板521、保護基板523に熱歪が生じにくくなり、偏光板52の光抜け現象の発生を防止できる。
さらに、保護基板523の外形を用いて偏光板52を精度よく位置決めできる。
図8及び図9に示されるように、第3実施形態の偏光板62は、基板621よりも保護基板623の方が大きく設定されており、各基板の材質がサファイアである点で第2実施形態の偏光板52と共通するが、基板621と保護基板623との間に介在するスペーサ625が両面テープである点で偏光板52と異なっている。
図示しないが、両面テープであるスペーサ625は、保護基板623と当接する第1面及び基板621と当接する第2面がシリコーン系粘着剤で形成されており、第1面及び第2面(表裏面)は弾性粘着面となっている。また、第1面と第2面との間には、ガラスクロスの支持体が設けられている。この両面テープの厚さは約0.15mm、粘着力は11.77N/20mm、剪断接着力は196.1N/4cm2となっている。
なお、両面テープはこの構成に限らず、第1面及び第2面がアクリル系樹脂からなり、支持体が不織布からなるものでもよい。さらに、支持体がないものを使用してもよい。支持体がないものを使用すれば、スペーサの厚さを薄くすることができるので、偏光板の薄型化を図ることができる。スペーサとして使用可能な両面テープを表1に例示する。
まず、基板621の複屈折部422の周囲に両面テープを貼り付ける。この際、両面テープの端部を複屈折部422の保護基板623側の面上に載せる。
次に、両面テープの第1面に保護基板623を貼り付ける。
さらに、基板621の端面と、保護基板623表面部分とをシリコーン系接着剤424により接着する。
すなわち、スペーサ625を両面テープとしたため、両面テープを貼り付けるだけでスペーサ625を設置することができるので、スペーサ625の取り付け作業性が良好となる。
また、両面テープを複屈折部422の全周に貼り付けたため、保護基板623及び基板621を接着したシリコーン系接着剤424から未反応オイル成分が染み出したとしても両面テープにより堰き止められ、未反応オイル成分により複屈折部422が汚れてしまうことがない。
スペーサ625の第1面及び第2面はシリコーン系粘着剤であり、シリコーンは接着面の耐紫外線性が良好であるため、紫外線により劣化するおそれがない。
また、耐熱性も良好であるため、複屈折部422で吸収された熱により影響をうけ、変形等が起こるおそれがない。
さらに、このスペーサ625の第1面と第2面との間にはガラスクロスの支持体が設けられており、スペーサ625に適度な剛性が生じるため、スペーサ625を取り付ける際の作業性が良好となる。
前記実施形態では、液晶パネル41R、41G、41Bの入射側に配置される偏光板として、構造複屈折型の偏光板42を採用していたが、これに限らず、出射側の偏光板43にも構造複屈折型の偏光板を採用してもよい。この場合、複屈折部422を構成するリブ422Aを、透過しない偏光光束を反射するアルミ製のものではなく、黒色等の光を吸収するリブとすることにより、出射側に配置される偏光板として用いることができる。
このような光弾性定数の低い材料を採用することにより、複屈折部で吸収された熱が基板に作用しても、透過光の光路差を小さくできるため、光抜け現象等の発生を防止できる。
その他、本発明の実施の際の具体的な構造および材質等は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造等としてもよい。
41R、41G、41B 液晶パネル(電気光学素子)
42、52、62 偏光板(偏光子)
421、521、621 基板
422 複屈折部
422A リブ(凸条部)
423、523、623 保護基板
424 シリコーン系接着剤(弾性接着剤)
425、625 スペーサ
Claims (25)
- 光源から出射された光束を画像情報に応じて変調する電気光学素子と、前記電気光学素子の光入射側および/または光射出側に配置された偏光子と、を備え、
前記電気光学素子は、一対の基板と、前記一対の基板間に挟持された電気光学材料とを有し、
前記偏光子は、光線透過率が97%以上の材料からなる偏光子用基板と、前記偏光子用基板の表面に微細な金属製の凸条部をストライプ状に配列して構成される複屈折部とを有してなる光学機器であって、
前記複屈折部は、前記偏光子用基板の2つの表面のうち、光射出側に設けられ、
前記複屈折部には、該複屈折部を覆う保護基板が設けられ、
前記保護基板は、前記複屈折部に対して一定距離離間した状態で配置され、
前記保護基板は、前記偏光子用基板と外周端部で弾性接着剤により接着され、前記複屈折部が該保護基板および弾性接着剤で封止されていることを特徴とする光学機器。 - 請求項1に記載の光学機器において、
前記偏光子用基板は線膨張係数が4.8×10-7/K以下の材料からなることを特徴とする光学機器。 - 請求項2に記載の光学機器において、
前記偏光子用基板は結晶化ガラスからなることを特徴とする光学機器。 - 請求項3に記載の光学機器において、
前記偏光子用基板は石英ガラスからなることを特徴とする光学機器。 - 請求項1に記載の光学機器において、
前記偏光子用基板は、熱伝導率が6.21W/(m・K)以上の材料からなることを特徴とする光学機器。 - 請求項5に記載の光学機器において、
前記偏光子用基板は、サファイアからなることを特徴とする光学機器。 - 請求項5に記載の光学機器において、
前記偏光子用基板は、水晶からなることを特徴とする光学機器。 - 請求項1に記載の光学機器において、
前記偏光子用基板は、光弾性定数が0.43×10-12/Pa以下の材料からなることを特徴とする光学機器。 - 請求項1〜請求項8のいずれかに記載の光学機器において、
前記偏光子用基板の光入射面には、反射防止処理が施されていることを特徴とする光学機器。 - 請求項1〜請求項9のいずれかに記載の光学機器において、
前記保護基板は、光線透過率97%以上の材料から構成されていることを特徴とする光学機器。 - 請求項1〜請求項10のいずれかに記載の光学機器において、
前記保護基板は、線膨張係数が4.8×10-7/K以下の材料からなることを特徴とする光学機器。 - 請求項1〜請求項10のいずれかに記載の光学機器において、
前記保護基板は、熱伝導率が6.21W/(m・K)以上の材料からなることを特徴とする光学機器。 - 請求項1〜請求項10のいずれかに記載の光学機器において、
前記保護基板は、光弾性定数が0.43×10-12/Pa以下の材料からなることを特徴とする光学機器。 - 請求項1〜請求項10のいずれかに記載の光学機器において、
前記保護基板の厚さをd(mm)、光弾性定数をB(10-12/Pa)、ヤング率をE(Pa)、線膨張係数をα(1/K)、熱伝導率をρ(W/(m・K))とした時、次式 B×E×α/ρ×d≦9.8×10-5(m2/W)で表されることを特徴とする光学機器。 - 請求項1〜請求項14のいずれかに記載の光学機器において、
前記保護基板の光入出射面に反射防止処理が施されていることを特徴とする光学機器。 - 請求項1〜請求項15のいずれかに記載の光学機器において、
前記弾性接着剤は、シリコーン系接着剤であることを特徴とする光学機器。 - 請求項16に記載の光学機器において、
前記弾性接着剤は、未反応オイル成分抑制タイプのシリコーン系接着剤であることを特徴とする光学機器。 - 請求項1〜請求項17のいずれかに記載の光学機器において、
前記保護基板は、前記偏光子用基板と略同一の形状を有することを特徴とする光学機器。 - 請求項1〜請求項17のいずれかに記載の光学機器において、
前記保護基板は、前記偏光子用基板よりも大きな形状を有することを特徴とする光学機器。 - 請求項1〜請求項19のいずれかに記載の光学機器において、
前記偏光子用基板と前記保護基板との間には、スペーサが介在していることを特徴とする光学機器。 - 請求項20に記載の光学機器において、
前記スペーサは、光硬化型接着剤からなることを特徴とする光学機器。 - 請求項20に記載の光学機器において、
前記スペーサは、表裏面が弾性粘着面とされる両面テープであることを特徴とする光学機器。 - 請求項22に記載の光学機器において、
前記スペーサの粘着面はシリコーン系粘着剤から構成されていることを特徴とする光学機器。 - 請求項23に記載の光学機器において、
前記スペーサは、織布又は不織布からなる支持体を有しており、前記支持体の表裏面には、シリコーン系粘着剤が塗布された粘着面が設けられていることを特徴とする光学機器。 - 請求項23に記載の光学機器において、
前記スペーサはシリコーン系粘着剤のみからなることを特徴とする光学機器。
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