しかしながら、前述した従来の特開平9−113906号公報等に開示された技術によれば、放熱機能を備えた透明ガラス板を別途用意して、液晶パネルの透明基板の両方又は一方の外面に接着したり、所定の空隙を隔てて接合する必要があるため、当該透明ガラス板を含めた液晶パネル全体の装置構成が複雑化し、製造コストが上昇するという問題点がある。
また、前述した対向基板に遮光膜を作り込む技術によれば、遮光膜を作り込む面積を広げる程、投射光を遮って画像を暗くすることになる。このため、明るい画像表示を行うべく強力な光源光を用いる際の抜本的な対策とはなり得ない。
他方、前述した実装ケースにおける温度上昇を抑制する技術によれば、実装ケースには、電気光学装置で発生した熱が伝わる。このため、実装ケースの表面に入射する投射光を反射するだけでは、実装ケース及びこれに収容された電気光学装置における温度上昇を十分に防ぐことは技術的に非常に困難である。
本発明は上述の問題点に鑑みなされたものであり、比較的強力な投射光が入射される電気光学装置における温度上昇を効率的に抑制可能とする、実装ケース入り電気光学装置、及びこのような実装ケース入り電気光学装置を備えてなる投射型表示装置を提供することを課題とする。
本件の参考発明に係る第1の実装ケース入り電気光学装置入り電気光学装置は上記課題を解決するために、画像表示領域に光源から投射光が入射される電気光学装置と、前記電気光学装置における前記画像表示領域の周辺に位置する周辺領域の少なくとも一部を保持する実装ケースと、前記実装ケースと前記周辺領域の少なくとも一部との間隙に介在し且つ遠赤外線放射体材料を含んでなる介在層とを備える。
本件の参考発明に係る第1の実装ケース入り電気光学装置によれば、画像表示領域に光源から投射光が入射される電気光学装置が、実装ケース内に収容或いは実装される。
このような電気光学装置としては、例えば投射型表示装置におけるライトバルブとして実装される液晶装置或いは液晶パネルが挙げられる。そして、実装ケースは、電気光学装置の周辺領域の少なくとも一部を保持する。このような本発明に係る「実装ケース」とは、電気光学装置を少なくとも部分的に収容する或いは周囲から少なくとも部分的に保持するケース状部材を意味し、一般に「実装ケース」又は単に「ケース」若しくは「実装フレーム」又は単に「フレーム」と呼ばれる部材や、電気光学装置をこのようなケース状部材に固定するための金属製フック等を含む広い概念である。尚、このような実装ケースには、電気光学装置の周辺領域を少なくとも部分的に覆うことにより、当該周辺領域における光抜けを防止したり或いは周辺領域から画像表示領域内に迷光が進入するのを防止する遮光機能を持たせてもよい。
電気光学装置の動作時には、光源から画像表示領域に投射光が照射されると、投射光の入射によって電気光学装置の温度が上昇する。この結果、仮に何らの対策をしないのでは、電気光学装置における温度が上昇して、従来の技術と同様の各種弊害を招く。しかるに本発明によれば、実装ケースと電気光学装置における周辺領域との間隙に介在する介在層は、遠赤外線放射体材料を含んでなる。このため、投射光の入射により電気光学装置で発生する熱は、介在層に伝導された後、介在層において遠赤外線に変換され、遠赤外線のエネルギーとして当該介在層から実装ケース側に放出される。そして、実装ケースから外界(例えば、電気光学装置が組み込まれた投射型表示装置の内部空間)への放熱作用によって実装ケースが冷却される。この結果、電気光学装置も、介在層を介して効率的に冷却されることになる。
本発明で用いられる「遠赤外線放射体材料」とは、一般に加熱、暖房、乾燥用や医療用の遠赤外線を発生するための遠赤外線発生装置に用いられており、例えばコイルや抵抗体への通電による温度上昇に伴って遠赤外線を発生するジルコニア(ZrO2)、アルミナ(Al2O3)等である。尚、「遠赤外線」とは、一般に3.0〜1,000μm程度の波長の電磁波をいう。そして、本願発明者の研究によれば、従来から遠赤外線を放射するために用いられていた遠赤外線放射体材料では、遠赤外線放射に伴ってその温度が低下することが判明している。このように温度が低下する現象は、遠赤外線放射体材料における、熱から遠赤外線への変換効率の高さに起因するものと考察される。即ち、本発明は、遠赤外線の放射に伴って、遠赤外線放射体材料からなる部位や、これに連結若しくは直接又は間接に接触している部材から熱が奪われるという事実に着目してなされたものである。
以上のように本件の参考発明に係る第1の実装ケース入り電気光学装置によれば、例えば強力な投射光が照射される投射型表示装置のライトバルブとして用いられる電気光学装置における温度上昇を効率的に抑制可能となる。
本件の参考発明に係る第1の実装ケース入り電気光学装置の一態様では、前記介在層は、前記周辺領域の少なくとも一部の表面に塗布されている。
この態様によれば、周辺領域における電気光学装置の表面に、塗料を塗布することで、上述の如き本発明特有の効果が比較的簡単に得られる。特に、実装ケースについて言えば、従来通りのものを用いて従来通りに電気光学装置を入れれば足りるので、実践上有利である。
本件の参考発明に係る第1の実装ケース入り電気光学装置の他の態様では、前記介在層は、前記周辺領域の少なくとも一部に対向する領域における前記実装ケースの表面に塗布されている。
この態様によれば、周辺領域に対向する領域における実装ケースの表面(即ち、電気光学装置に対向する側の内表面)に、塗料を塗布することで、上述の如き本発明特有の効果が比較的簡単に得られる。この場合特に、仮に遠赤外線放射体材料の熱膨張係数が高くても、これとは別材料からなる実装ケースにおける熱膨張係数を低く抑えることが可能となる。よって、高い放熱性を実現しながら、実装ケースにおける熱膨張或いは熱変形を低減可能となり、実用上大変有利である。因みに、既存の実装ケースの材料によっては、例えば、数ミクロン単位の膨張・ずれが確認される。
但し、このような実装ケースにおける電気光学装置に介在層を介して接触する部分で、当該熱膨張或いは熱変形を吸収するように構成してもよい。例えば、係る接触する部分を高弾性のスプリング等から構成したり、ゲル材、モールド材等から構成して応力を緩衝しつつ保持するように構成してもよい。これにより、実装ケース本体の材料は、熱膨張係数については任意となり、介在層については、任意の熱膨張係数を有する遠赤外線放射体材料から形成してもよい。即ち、実装ケースにおける熱膨張や熱変形による弊害を低減しつつ温度上昇を抑えることが可能となる。
加えて、この塗料に係る態様によれば、塗料の下地となる実装ケース部分を、例えばガラス、金属、樹脂等の安価な材料から構成することも可能となり、設計の自由度或いは材料選択の自由度を高める上でも大変有利である。
本件の参考発明に係る第1の実装ケース入り電気光学装置の他の態様では、前記介在層は、前記電気光学装置を前記実装ケースに固定する接着剤を兼ねる。
この態様によれば、電気光学装置を実装ケース内に固定する接着剤に、遠赤外線放射体材料を混ぜることで、上述の如き本発明特有の効果が比較的簡単に得られる。この場合、電気光学装置を実装ケースに対して接着剤で固定できるので、例えば金属製フック等による固定機構を用いないで済む。
本件の参考発明に係る第1の実装ケース入り電気光学装置の他の態様では、前記介在層は、前記電気光学装置と前記実装ケースとの隙間を埋めるモールド材を兼ねる。
この態様によれば、電気光学装置と実装ケースとの隙間を埋めるモールド材に、遠赤外線放射体材料を混ぜることで、上述の如き本発明特有の効果が比較的簡単に得られる。
本件の参考発明に係る第1の実装ケース入り電気光学装置の他の態様では、前記実装ケースは、前記介在層と比べて熱伝導率が高い材料から形成されている。
この態様によれば、電気光学装置で発生した熱は、介在層で遠赤外線のエネルギーに変換された後、実装ケースで吸収され、更に実装ケースの内部を効率的に伝わる。そして、実装ケースから外界への放熱作用によって実装ケースが冷却される。この結果、電気光学装置における温度上昇を一層効率的に抑制できる。
尚、電気光学装置と実装ケースとの間における熱伝導を高める目的で、介在層に加えて、両者間に熱伝導率の高いモールド材を挿入してもよい。若しくは、介在層と電気光学装置との間にこのようなモールド材を挿入してもよいし、又は介在層と実装ケースとの間にこのようなモールド材を挿入してもよい。
本件の参考発明に係る第1の実装ケース入り電気光学装置の他の態様では、前記実装ケースにおける前記光源側の表面は、前記介在層よりも光反射率が高い材料からなる。
この態様によれば、実装ケースにおける光源側の表面は、例えばアルミニウム等の光反射率が高い材料によって、投射光を反射できる。これにより、投射光の照射による実装ケースにおける熱の発生を抑制できる。即ち、実装ケースにおける温度上昇を抑制でき、更に実装ケースに介在層を介して接続された電気光学装置における温度上昇を抑制できる。例えば、実装ケースにおける光源側の表面を光反射率の高いアルミニウム、チタン、ニッケル等の金属材料から構成してもよい。
本件の参考発明に係る第1の実装ケース入り電気光学装置の他の態様では、前記介在層の表面には、凹凸が設けられている。
この態様によれば、遠赤外線放射体材料を含んでなる介在層の表面には、凹凸が設けられている。このため、遠赤外線を放射する表面積が実質的に増加する。
この結果、介在層において、熱を遠赤外線に変換する際の効率が一層上昇し、電気光学装置における温度上昇を一層効率的に抑制可能となる。
本件の参考発明に係る第2の実装ケース入り電気光学装置は上記課題を解決するために、画像表示領域に光源から投射光が入射される電気光学装置と、前記電気光学装置における前記画像表示領域の周辺に位置する周辺領域の少なくとも一部を保持する実装ケースとを備えており、前記周辺領域の少なくとも一部は、遠赤外線放射体材料から形成されている。
本件の参考発明に係る第2の実装ケース入り電気光学装置によれば、画像表示領域に光源から投射光が入射される電気光学装置が、実装ケース内に収容或いは実装される。
そして、実装ケースは、電気光学装置の周辺領域の少なくとも一部を保持する。
電気光学装置の動作時には、光源から画像表示領域に投射光が照射されると、投射光の入射によって電気光学装置の温度が上昇する。しかるに、電気光学装置における周辺領域の少なくとも一部は、遠赤外線放射体材料から形成されている。このため、投射光の入射により電気光学装置で発生する熱は、その周辺領域に伝導された後、遠赤外線に変換され、遠赤外線のエネルギーとして当該周辺領域から実装ケース側に放出される。そして、実装ケースから外界への放熱作用によって実装ケースが冷却される。この結果、電気光学装置も、周辺領域を介して効率的に冷却されることになる。
以上のように本件の参考発明に係る第2の実装ケース入り電気光学装置によれば、例えば強力な投射光が照射される投射型表示装置のライトバルブとして用いられる電気光学装置における温度上昇を効率的に抑制可能となる。
本件の参考発明に係る第2の実装ケース入り電気光学装置の一態様では、前記周辺領域の少なくとも一部の表面には、凹凸が設けられている。
この態様によれば、遠赤外線放射体材料を含んでなる周辺領域の表面には、凹凸が設けられている。このため、遠赤外線を放射する表面積が実質的に増加する。この結果、周辺領域において、熱を遠赤外線に変換する際の効率が一層上昇し、電気光学装置における温度上昇を一層効率的に抑制可能となる。
本件の参考発明に係る第3の実装ケース入り電気光学装置は上記課題を解決するために、画像表示領域に光源から投射光が入射される電気光学装置と、前記電気光学装置における前記画像表示領域の周辺に位置する周辺領域の少なくとも一部を保持する実装ケースとを備えており、前記周辺領域の少なくとも一部に対向する領域における前記実装ケースは、遠赤外線放射体材料から形成されている。
本件の参考発明に係る第3の実装ケース入り電気光学装置によれば、画像表示領域に光源から投射光が入射される電気光学装置が、実装ケース内に収容或いは実装される。
そして、実装ケースは、電気光学装置の周辺領域の少なくとも一部を保持する。
電気光学装置の動作時には、光源から画像表示領域に投射光が照射されると、投射光の入射によって電気光学装置の温度が上昇する。しかるに、電気光学装置における周辺領域の少なくとも一部に対向する領域における実装ケースは、遠赤外線放射体材料から形成されている。このため、投射光の入射により電気光学装置で発生する熱は、その周辺領域に伝導された後、遠赤外線に変換される。そして、実装ケースから外界への放熱作用によって実装ケースが冷却される。この結果、電気光学装置も、周辺領域を介して効率的に冷却されることになる。
以上のように本件の参考発明に係る第3の実装ケース入り電気光学装置によれば、例えば強力な投射光が照射される投射型表示装置のライトバルブとして用いられる電気光学装置における温度上昇を効率的に抑制可能となる。
本件の参考発明に係る第3の実装ケース入り電気光学装置の一態様では、前記周辺領域の少なくとも一部に対向する領域における前記実装ケースの表面には、凹凸が設けられている。
この態様によれば、遠赤外線放射体材料を含んでなる実装ケースの表面には、凹凸が設けられている。このため、遠赤外線を放射する表面積が実質的に増加する。この結果、周辺領域において、熱を遠赤外線に変換する際の効率が一層上昇し、電気光学装置における温度上昇を一層効率的に抑制可能となる。
本件の参考発明に係る第4の実装ケース入り電気光学装置は上記課題を解決するために、画像表示領域に光源から投射光が入射される電気光学装置と、前記電気光学装置における前記画像表示領域の周辺に位置する周辺領域の少なくとも一部を保持する実装ケースとを備えており、前記実装ケースにおける前記光源側の表面は、遠赤外線放射体材料を含んでなる。
本件の参考発明に係る第4の実装ケース入り電気光学装置によれば、画像表示領域に光源から投射光が入射される電気光学装置が、実装ケース内に収容或いは実装される。
そして、実装ケースは、電気光学装置の周辺領域の少なくとも一部を保持する。
電気光学装置の動作時には、光源から画像表示領域に投射光が照射されると、投射光の入射によって電気光学装置の温度が上昇する。しかるに、実装ケースにおける光源側の表面は、遠赤外線放射体材料を含んでなる。このため、投射光の入射により電気光学装置で発生する熱は、実装ケースに伝達された後、実装ケースにおける光源側の表面で遠赤外線に変換され、外界(例えば、電気光学装置が組み込まれた投射型表示装置の内部空間)へ放出される。加えて、実装ケースに照射される投射光により実装ケース自体で発生する熱についても、実装ケースにおける光源側の表面で遠赤外線に変換され、外界へ放出される。これらの結果、電気光学装置も、周辺領域を介して効率的に冷却されることになる。
以上のように本件の参考発明に係る第4の実装ケース入り電気光学装置によれば、例えば強力な投射光が照射される投射型表示装置のライトバルブとして用いられる電気光学装置における温度上昇を効率的に抑制可能となる。
本件の参考発明に係る第4の実装ケース入り電気光学装置の一態様では、前記光源側の表面には、前記遠赤外線放射体材料を含んでなる塗料が塗布されており、前記実装ケースは、前記塗料と比べて熱伝導率が高い材料から形成されている。
この態様によれば、実装ケースにおける光源側の表面に、塗料を塗布することで、上述の如き本発明特有の効果が比較的簡単に得られる。更に、実装ケースは、塗料と比べて熱伝導率が高い材料から形成されているので、電気光学装置から実装ケースにおける光源側の表面に至る熱伝導を高めることができ、効率的に電気光学装置を冷却できる。
本件の参考発明に係る第1から第4の実装ケースの他の態様では、前記遠赤外線放射体材料は、ジルコニア(ZrO2)、アルミナ(Al2O3)、チタニア(TiO2)、ジルコン(ZrO2・SiO2)及び珪石(SiO2)焼結体のうち少なくとも一つを含む。
この態様によれば、ジルコニア等の遠赤外線放射体材料によって、熱を遠赤外線に高効率で変換可能となり、電気光学装置における温度上昇を効率的に抑制できる。尚、これらの材料は、高効率で遠赤外線を放射する材料として優れているが、これら以外であっても、例えば各種セラミックス材料等からなる遠赤外線放射体材料を用いれば、その熱を遠赤外線に変換する効率の大小に応じて、本発明における上述した温度上昇を抑制する効果が相応に得られる。
本件の参考発明に係る第1から第4の実装ケースの他の態様では、前記遠赤外線放射体材料に代えて又は加えて、高効率赤外線放射体材料が用いられる。
この態様によれば、遠赤外線放射体材料に代えて又は加えて、高効率赤外線放射体材料が用いられる。高効率赤外線放射体材料を含んでなる各部において赤外線に高効率に変換され、赤外線のエネルギーとして当該各部から放出される。この結果、実装ケースに収容或いは実装された電気光学装置の温度は低下することになる。
本発明で用いられる「高効率赤外線放射体材料」とは、一般に加熱、暖房、乾燥用や医療用の遠赤外線を発生するための遠赤外線発生装置に用いられており、例えばコイルや抵抗体への通電による温度上昇に伴って赤外線を発生する二酸化マンガン(MnO2)、酸化クロム(Cr2O3)等である。そして、本願発明者の研究によれば、従来から赤外線を放射するために専ら用いられていた高効率赤外線放射体材料では、赤外線放射に伴ってその温度が低下することが判明している。このように温度が低下する現象は、高効率赤外線放射体材料における、熱から赤外線への変換効率の高さに起因するものと考察される。即ち、本発明は、赤外線の放射に伴って、高効率赤外線放射体材料からなる部位や、これに連結若しくは直接又は間接に接触している部材から熱が奪われるという事実に着目してなされたものである。
この態様では、前記高効率赤外線放射体材料は、二酸化マンガン(MnO2)、酸化クロム(Cr2O3)、酸化鉄(Fe2O3)、酸化コバルト(CoO)、酸化銅(CuO)等の遷移元素の酸化物であるように構成してもよい。
このように構成すれば、二酸化マンガン等の高効率赤外線放射体材料によって、実装ケースや電気光学装置における温度上昇を効率的に抑制できる。尚、これらの材料は、高効率で赤外線を放射する材料として優れているが、これら以外であっても、例えば各種セラミックス材料等からなる高効率赤外線放射体材料を用いれば、その熱を赤外線に変換する効率の大小に応じて、本発明における上述した温度上昇を抑制する効果が相応に得られる。
本件の参考発明に係る第1から第4の実装ケースの他の態様では、前記遠赤外線放射体材料に代えて又は加えて、波長0.83〜3.0μm程度の近赤外線を発生する材料が用いられる。
この態様によれば、近赤外を発生する材料によって、熱を近赤外線に高効率で変換可能となり、電気光学装置における温度上昇を効率的に抑制できる。
本発明の第5の実装ケース入り電気光学装置は上記課題を解決するために、画像表示領域に光源から投射光が入射される電気光学装置と、前記電気光学装置を保持する実装ケースと、を備えており、前記実装ケースは、前記電気光学装置の前記光源側に配置された第1の保持部材と、前記電気光学装置の前記光源とは反対側に配置された第2の保持部材とを有し、前記第1の保持部材は、前記光源側の面が光反射性を有し、前記第2の保持部材は、前記光源とは反対側の面が黒色である。
また、前記第1の保持部材は、前記電気光学装置の側方において、前記第2の保持部材と係合されており、前記第2の保持部材と係合する部分の外面が黒色である、
また、前記第1及び第2の保持部材は、それぞれ金属材料からなる。
本発明の第5の実装ケース入り電気光学装置によれば、画像表示領域に光源から投射光が入射される電気光学装置が、実装ケース内に収容或いは実装される。
そして、実装ケースは、電気光学装置の周辺領域の少なくとも一部を保持する。
電気光学装置の動作時には、光源から画像表示領域に投射光が照射されると、投射光の入射によって電気光学装置の温度が上昇する。しかるに、実装ケースにおける光源と反対側の表面及び周辺領域に対向する表面は、少なくとも部分的に黒色材料を含んでなる。このため、投射光の入射により電気光学装置で発生する熱は、その周辺領域に伝導された後、実装ケースにおける周辺領域に対向する表面において、遠赤外線、赤外線、近赤外線等に変換される。そして、実装ケースから外界への放熱作用によって実装ケースが冷却される。或いは、実装ケースにおける光源と反対側の表面において、電気光学装置から実装ケースに伝わった熱や実装ケース自体で発生した熱が、遠赤外線、赤外線、近赤外線等に変換された後、実装ケースから外界への放射される。
本発明で用いられる「黒色材料」とは、金属、合金、有機物、無機物等の種別を問わずに、視覚的に黒色を呈する材料を意味し、特に、その黒色の度合いは、白色材料における白色との対比において定義される。即ち、黒色中に多少の白色或いは有彩色が混ざっていても、上述の如き温度の低下をもたらす遠赤外線、近赤外線、赤外線等の放出の効果を奏するに十分な黒味を帯びている限りにおいて、本発明にいう黒色材料であることに代わりは無い。そして、本願発明者の研究によれば、白色の表面は、光を反射することにより、温度上昇を抑制する効果がある他方で、遠赤外線、近赤外線、赤外線等の放射能力については、黒色の表面と比べて著しく劣ることが判明している。このように温度が低下する現象は、黒色材料における、熱から遠赤外線、近赤外線、赤外線等への変換効率の高さに起因するものと考察される。即ち、本発明は、遠赤外線、近赤外線、赤外線等の放射に伴って、黒色材料からなる部位や、これに連結若しくは直接又は間接に接触している部材から熱が奪われるという事実に着目してなされたものである。
以上のように本発明の第5の実装ケースによれば、電気光学装置の温度上昇を効率的に抑制可能となる。
本発明の第5の実装ケースの一態様では、前記実装ケースにおける前記光源と反対側の表面及び前記周辺領域に対向する表面には、前記黒色材料を含んでなる塗料が塗布されている。
この態様によれば、実装ケースに塗料を塗布することで、上述の如き本発明特有の効果が比較的簡単に得られる。この場合特に、仮に黒色材料の熱膨張係数が高くても、これとは別材料からなる実装ケースにおける熱膨張係数を低く抑えることが可能となる。よって、高い放熱性を実現しながら、実装ケースにおける熱膨張或いは熱変形を低減可能となり、実用上大変有利である。
本発明の第5の実装ケースの他の態様では、前記実装ケースは、前記塗料と比べて熱伝導率が高い材料から形成されている。
この態様によれば、電気光学装置で発生した熱は、実装ケースに伝えられた後、更に金属等の熱伝導率が高い材料から形成された実装ケースの内部を効率的に伝わる。そして、実装ケースから外界への放熱作用によって実装ケースが冷却される。この結果、電気光学装置における温度上昇を一層効率的に抑制できる。
本発明の第5の実装ケースの他の態様では、前記実装ケースにおける前記光源側の表面は、前記黒色材料よりも光反射率が高い材料からなる。
この態様によれば、投射光が照射される側では、これを実装ケースの表面をなす、例えばアルミニウム等の光反射率が高い材料によって、或いは白色材料によって、投射光を反射できる。これにより、投射光の照射による実装ケース自体における熱の発生を抑制できる。即ち、実装ケースにおける温度上昇を抑制でき、更にこれに保持された電気光学装置における温度上昇を抑制できる。これに対して、投射光が照射されない側の実装ケースの表面は、黒色材料を含んでなり、ここからの遠赤外線、赤外線、近赤外線等の放射によって、当該実装ケースにおける温度上昇を抑制でき、更にこれに保持された電気光学装置における温度上昇を抑制できる。例えば、実装ケースを光反射率の高いアルミニウム、チタン、ニッケル等の金属材料から構成し、光源と反対側の表面や電気光学装置の周辺領域に対向する表面に、黒色材料を含んでなる塗料を塗布すれば、この態様の如き構成は比較的容易に得られる。或いは、実装ケースを黒色材料から構成し、その光源側の表面にのみ、光反射率が高い材料を塗布してもよい。
本発明の投射型表示装置は上記課題を解決するために、上述した本発明の第1から第5の実装ケース(但し、その各種態様を含む)入り電気光学装置のうちいずれか一つと、前記光源と、前記投射光を前記電気光学装置に導く光学系と、前記電気光学装置から出射される投射光を投射する投射光学系とを備える。
本発明の投射型表示装置によれば、上述した本発明の第1から第5の実装ケース入り電気光学装置のうちいずれか一つを備えるので、遠赤外線、赤外線、近赤外線等の放射によって、電気光学装置から実装ケースへの放熱や、実装ケースから外界(例えば、投射型表示装置の内部空間)への放熱を効率的に行うことができ、ライトバルブとして用いられる電気光学装置における温度上昇を効率的に抑制できる。よって、液晶等の電気光学物質の熱による劣化を低減すると共に、電気光学物質における全体的或いは部分的な温度上昇に起因した表示画像の劣化を効果的に防止でき、最終的には、高品位の画像表示が可能となる。
本発明の投射型表示装置の一態様では、前記電気光学装置の周辺空間に流体を流す冷却手段を更に備える。
この態様によれば、例えば投射型表示装置の内部空間に、空気を流す送風ファン、冷却媒体を流す循環装置等からなる冷却手段を備えるので、実装ケースからの放熱を効率的に行うことができる。よって、実装ケース及びこれに収容或いは実装された電気光学装置の温度上昇を効率的に防止できる。
本発明のこのような作用及び他の利得は次に説明する実施の形態から明らかにされる。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
(投射型液晶装置の実施形態)
先ず図1を参照して、本発明による投射型液晶装置の実施形態について、その光学ユニットに組み込まれている光学系を中心に説明する。本実施形態の投射型表示装置は、実装ケース入りの電気光学装置の一例たる液晶ライトバルブが3枚用いられてなる複板式カラープロジェクタとして構築されている。
図1において、本実施形態における複板式カラープロジェクタの一例たる、液晶プロジェクタ1100は、駆動回路がTFTアレイ基板上に搭載された電気光学装置を含む液晶ライトバルブを3個用意し、夫々RGB用のライトバルブ100R、100G及び100Bとして用いたプロジェクタとして構成されている。
液晶プロジェクタ1100では、メタルハライドランプ等の白色光源のランプユニット1102から投射光が発せられると、3枚のミラー1106及び2枚のダイクロイックミラー1108によって、RGBの3原色に対応する光成分R、G、Bに分けられ、各色に対応するライトバルブ100R、100G及び100Bに夫々導かれる。この際、特にB光は、長い光路による光損失を防ぐために、入射レンズ1122、リレーレンズ1123及び出射レンズ1124からなるリレーレンズ系1121を介して導かれる。そして、ライトバルブ100R、100G及び100Bにより夫々変調された3原色に対応する光成分は、ダイクロイックプリズム1112により再度合成された後、投射レンズ1114を介してスクリーン1120にカラー画像として投射される。
本実施形態のライトバルブ100R、100G、100Bとしては、例えば、後述の如きTFTをスイッチング素子として用いたアクティブマトリクス駆動方式の液晶装置が使用される。
以上説明した構成においては、強力な光源たるランプユニット1102からの投射光により各ライトバルブ100R、100G、100Bで温度が上昇する。
この際、過度に温度が上昇してしまうと、各ライトバルブ100R、100G、100Bを構成する液晶が劣化したり、光源光のむらによる部分的な液晶パネルの加熱によるホットスポットの出現により透過率にムラが生じたりする。そこで、本実施形態では特に、各ライトバルブ100R、100G、100Bは、後述の如き本発明の実装ケースに実装されて、投射型液晶装置1100のハウジング内に取り付けられている。このため、後述の如く各ライトバルブ100R、100G、100Bの温度上昇は効率的に抑制されている。
尚、本実施形態では好ましくは、投射型液晶装置1100のハウジング内には、各ライトバルブ100R、100G、100Bの周辺空間に、空気を流す送風ファン、冷却媒体を流す循環装置等からなる冷却手段を備える。これにより、後述の如き放熱作用を持つ実装ケース入りの電気光学装置からの放熱を一層効率的に行うことができる。
(電気光学装置の実施形態)
次に本発明の電気光学装置に係る実施形態の全体構成について、図2及び図3を参照して説明する。ここでは、電気光学装置の一例である駆動回路内蔵型のTFTアクティブマトリクス駆動方式の液晶装置を例にとる。本実施形態に係る電気光学装置は、上述した液晶プロジェクタ1100における液晶ライトバルブ100R、100G、100Bとして使用されるものである。ここに、図2は、TFTアレイ基板をその上に形成された各構成要素と共に対向基板の側から見た電気光学装置の平面図であり、図2は、図1のH−H’断面図である。
図2及び図3において、本実施形態に係る電気光学装置では、TFTアレイ基板10と対向基板20とが対向配置されている。TFTアレイ基板10と対向基板20との間に液晶層50が封入されており、TFTアレイ基板10と対向基板20とは、画像表示領域10aの周囲に位置するシール領域に設けられたシール材52により相互に接着されている。
シール材52は、両基板を貼り合わせるための、例えば紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂等からなり、製造プロセスにおいてTFTアレイ基板10上に塗布された後、紫外線照射、加熱等により硬化させられたものである。また、シール材52中には、TFTアレイ基板10と対向基板20との間隔(基板間ギャップ)を所定値とするためのグラスファイバ或いはガラスビーズ等のギャップ材が散布されている。即ち、本実施形態の電気光学装置は、プロジェクタのライトバルブ用として小型で拡大表示を行うのに適している。
シール材52が配置されたシール領域の内側に並行して、画像表示領域10aの額縁領域を規定する遮光性の額縁遮光膜53が、対向基板20側に設けられている。但し、このような額縁遮光膜の一部又は全部は、TFTアレイ基板10側に内蔵遮光膜として設けられてもよい。
画像表示領域の周辺に広がる領域のうち、シール材52が配置されたシール領域の外側に位置する周辺領域には、データ線駆動回路101及び外部回路接続端子102がTFTアレイ基板10の一辺に沿って設けられており、走査線駆動回路104が、この一辺に隣接する2辺に沿って設けられている。更にTFTアレイ基板10の残る一辺には、画像表示領域10aの両側に設けられた走査線駆動回路104間をつなぐための複数の配線105が設けられている。また図2に示すように、対向基板20の4つのコーナー部には、両基板間の上下導通端子として機能する上下導通材106が配置されている。他方、TFTアレイ基板10にはこれらのコーナーに対向する領域において上下導通端子が設けられている。これらにより、TFTアレイ基板10と対向基板20との間で電気的な導通をとることができる。
図3において、TFTアレイ基板10上には、画素スイッチング用のTFTや走査線、データ線等の配線が形成された後の画素電極9a上に、配向膜が形成されている。他方、対向基板20上には、対向電極21の他、最上層部分に配向膜が形成されている。また、液晶層50は、例えば一種又は数種類のネマティック液晶を混合した液晶からなり、これら一対の配向膜間で、所定の配向状態をとる。
尚、図2及び図3に示したTFTアレイ基板10上には、これらのデータ線駆動回路101、走査線駆動回路104等に加えて、画像信号線上の画像信号をサンプリングしてデータ線に供給するサンプリング回路、複数のデータ線に所定電圧レベルのプリチャージ信号を画像信号に先行して各々供給するプリチャージ回路、製造途中や出荷時の当該電気光学装置の品質、欠陥等を検査するための検査回路等を形成してもよい。
このように構成された電気光学装置の場合、その動作時には、図3の上側から強力な投射光が照射される。すると、対向基板20、液晶層50、TFTアレイ基板10等における光吸収による発熱によって、当該電気光学装置の温度が上昇する。このような温度上昇は、液晶層50等の劣化を早めると共に、表示画像の品位を劣化させる。
そこで、本実施形態では特に、以下に説明する実装ケースにより電気光学装置を実装することで、このような温度上昇を効率的に抑制している。
(実装ケース入り電気光学装置の第1実施形態)
次に図4から図9を参照して、本発明に係る実装ケース入り電気光学装置の第1実施形態について説明する。
ここでは先ず、図4から図8を参照して、本実施形態に係る実装ケースの基本構成について説明する。ここに、図4は、実装ケースの正面図であり、図5は、その側面図であり、図6は、その裏面図であり、図7は、その上面図であり、図8は、図4のD−D’断面図である。尚、図4から図8は、電気光学パネルを内部に収容した状態における実装ケースを夫々示している。
図4から図8に示すように、実装ケース601は、フレーム部分610とフック部分620とを備える。実装ケース601に収容される電気光学パネル500は、図2及び図3に示した電気光学装置と、その表面に重ねられた反射防止板、防塵ガラス、デフォーカスガラス等の他の光学要素とを備えてなり、更にその外部回路接続端子にフレキシブルコネクタ501が接続されてなる。尚、偏光板や位相差板は、投射型表示装置の光学系に備えるようにしても良いし、電気光学パネル500の表面に重ねてもよい。
フレーム部分610は、電気光学パネルの周辺領域における光抜けを防止すると共に周辺領域から迷光が画像表示領域内に進入するのを防ぐように、好ましくは遮光性の樹脂、金属製等からなる。フレーム部分610は、電気光学パネル500を収容する内部空間を規定する本体を有し、更に電気光学パネル500の画像表示領域を露出させるように本体に開けられた窓部718を有する。フレーム部分610は、当該実装ケース入り電気光学装置を、図1に示した如き投射型表示装置内に取り付け可能なように取付穴719をその四隅に備える。
フック部分620は、フレーム部分610の内部空間に入れられた電気光学パネル500の周辺領域を、裏側から固定するために、この周辺領域に対向する平面形状を持つ板状の本体を有する。フック部分620は、電気光学パネル500の画像表示領域を露出させるように窓部728を有し、更にフック部分620の本体を実装ケース610に固定するための小窓を有する係合部725を正面両側に有する。
実装ケース610は、この係合部725が有する小窓に係合する突起部715を正面両側に有する。尚、突起部715と係合部725との係合を可能ならしめるべく、フック部分620は、好ましくは、弾性の高い金属、樹脂等から構成される。
以上のように、電気光学パネル500は、フレーム部分610の内部空間に収容され、係合部715及び突起部725の係合により、フック部分620がフレーム部分610に固定されることで、実装ケース601に実装されている。
尚、図4から図8に示した実装ケース入り電気光学装置の場合、投射光が入射する側は、図4に示した「正面側」即ちフレーム部分610側でもよい。或いは図6に示した「裏側」即ちフック部分620側でもよい。
次に、以上のように構成された実装ケース入り電気光学装置の第1実施形態における、放熱作用に関する構造について図9を参照して説明する。ここに、図9は、図4のE−E’断面において、遠赤外線放射体材料を含んでなる層を目視可能なように太線で示した図式的断面図である。
図9に示すように、第1実施形態では、電気光学パネル500の周辺領域のうち少なくとも実装ケース601に接触する領域の表面には、遠赤外線放射塗料701が塗布されている。このような遠赤外線放射体材料としては、例えば、ジルコニア、アルミナ、チタニア、ジルコン及び珪石焼結体、或いは、各種セラミックス材料等が挙げられる。
従って、本実施形態によれば、電気光学装置の動作時には、投射光L1の入射により電気光学パネル500で発生する熱等は、TFTアレイ基板、対向基板等を介して、その表面に塗布された遠赤外線放射塗料701に伝導された後、遠赤外線放射塗料701において遠赤外線に変換され、遠赤外線のエネルギーとして当該遠赤外線放射塗料701から実装ケース601側に放出される。そして、実装ケース601から外界(例えば、投射型表示装置の内部空間)への放熱作用によって実装ケース601が冷却される。この結果、電気光学パネル500も、効率的に冷却されることになる。
第1実施形態では特に、遠赤外線放射体材料を塗料として用いるので、フレーム部分610或いはフック部分620の材料は、例えばガラス、鉄板、ステンレス等の安価な材料でよい。特に、熱膨張或いは熱変形し難い材料を選択すれば、遠赤外線放射体材料の熱膨張係数が高くても、実装ケース601全体としては、殆ど熱膨張或いは熱変形しないで済む。
加えて、フレーム部分610或いはフック部分620を、遠赤外線放射体材料と比べて熱伝導率が高い材料から形成すれば、電気光学装置で発生した熱を、フレーム部分610或いはフック部分620の表面に効率良く伝えることができ、該表面からの放熱を一層効率良く行える。
温度上昇を防ぐ目的からすれば、遠赤外線放射体材料は、熱を遠赤外線に変換する効率の高い材料が好ましいが、実際には、製造コスト、熱膨張或いは変形、機械的強度、化学的強度、重量、加工のし易さ等を総合的に勘案して、電気光学装置における実際の仕様に応じて適当な材料を選定すればよい。
尚、第1実施形態の変形形態として、遠赤外線放射塗料701が電気光学パネル500の表面に塗布されるのではなく、実装ケース601側の内表面に塗布されてもよい。或いは、遠赤外線放射塗料701が塗料としてではなく、独立した介在層として、電気光学パネル500と実装ケース601との間隙に形成されてもよい。更に、電気光学パネル500及び実装ケース601のうち少なくとも一方における表面付近が遠赤外線放射体材料から形成されていてもよい。加えて、実装ケース601についてはフレーム部分610の全体或いはフック部分620の全体が遠赤外線放射体材料から形成されていてもよい。又は、フレーム部分610或いはフック部分620の全表面に遠赤外線放射塗料が塗布されてもよい。
いずれの変形形態によっても、上述した第1実施形態の場合と類似の放熱作用が得られる。
(実装ケース入り電気光学装置の第2実施形態)
次に実装ケース入り電気光学装置の第2実施形態について図10を参照して説明する。ここに、図10は、図4のE−E’断面と同一個所における遠赤外線放射体材料を含んでなる層を太線で示した第2実施形態の図式的断面図である。
第2実施形態は、電気光学パネル500には防塵ガラスが無く、出射側に設けられたフック部分622が、図10中下側から電気光学パネル500に直接接触するタイプである。第2実施形態では、遠赤外線放射塗料702は、実装ケース602側の内表面に塗布されており、特に、電気光学パネル500が直接接触する表面のみならず、フレーム部分612とフック部分622とが接触する表面にも塗布されている。この際、フレーム部分612とフック部分622とが接触する表面における塗布は、フレーム部分612に施されてもよいし、フック部分622に施されてもよいし、両者に施されてもよい。その他の構成については、第1実施形態の場合と同様である。
従って、本実施形態によれば、電気光学装置の動作時には、投射光L1の入射により電気光学パネル500で発生する熱等は、遠赤外線放射塗料702に伝導された後、遠赤外線に変換され、遠赤外線のエネルギーとして放出される。この結果、電気光学パネル500も、効率的に冷却されることになる。
尚、第2実施形態の変形形態として、遠赤外線放射塗料702が部分的に電気光学パネル500の表面に塗布されてもよい。或いは、遠赤外線放射塗料702が塗料としてではなく、独立した介在層として形成されてもよい。更に、電気光学パネル500及び実装ケース602のうち少なくとも一方における表面付近が遠赤外線放射体材料から形成されていてもよい。加えて、実装ケース602についてはフレーム部分612の全体或いはフック部分622の全体が遠赤外線放射体材料から形成されていてもよい。又は、フレーム部分613或いはフック部分623の全表面に遠赤外線放射塗料が塗布されてもよい。いずれの変形形態によっても、上述した第2実施形態の場合と類似の放熱作用が得られる。
(実装ケース入り電気光学装置の第3実施形態)
次に実装ケース入り電気光学装置の第3実施形態について図11を参照して説明する。ここに、図11は、図4のE−E’断面と同一個所における遠赤外線放射体材料を含んでなる層を太線で示した第3実施形態の図式的断面図である。
第3実施形態は、電気光学パネル500には防塵ガラスが無く、出射側及び入射側に夫々設けられたフック部分623が、図11中上下両側から電気光学パネル500に直接接触するタイプである。第3実施形態では、遠赤外線放射塗料703は、実装ケース603側の内表面に塗布されており、特に、電気光学パネル500が直接接触する表面のみならず、フレーム部分613とフック部分623とが接触する表面にも塗布されている。この際、フレーム部分613とフック部分623とが接触する表面における塗布は、フレーム部分613に施されてもよいし、フック部分623に施されてもよいし、両者に施されてもよい。その他の構成については、第1実施形態の場合と同様である。
従って、本実施形態によれば、電気光学装置の動作時には、投射光L1の入射により電気光学パネル500で発生する熱等は、遠赤外線放射塗料703に伝導された後、遠赤外線に変換され、遠赤外線のエネルギーとして放出される。この結果、電気光学パネル500も、効率的に冷却されることになる。
尚、第3実施形態の変形形態として、遠赤外線放射塗料703が部分的に電気光学パネル500の表面に塗布されてもよい。或いは、遠赤外線放射塗料703が塗料としてではなく、独立した介在層として形成されてもよい。更に、電気光学パネル500及び実装ケース603のうち少なくとも一方における表面付近が遠赤外線放射体材料から形成されていてもよい。加えて、実装ケース603についてはフレーム部分613の全体或いはフック部分623の全体が遠赤外線放射体材料から形成されていてもよい。又は、フレーム部分613或いはフック部分623の全表面に遠赤外線放射塗料が塗布されてもよい。いずれの変形形態によっても、上述した第3実施形態の場合と類似の放熱作用が得られる。
(実装ケース入り電気光学装置の第4実施形態)
次に実装ケース入り電気光学装置の第4実施形態について図12を参照して説明する。ここに、図12は、図4のE−E’断面と同一個所における遠赤外線放射体材料を含んでなる層を太線で示した第4実施形態の図式的断面図である。
第4実施形態は、電気光学パネル500には防塵ガラスが無く、入射側に設けられたフック部分624が、図12中上側から電気光学パネル500を非接触に押さえるタイプである。第4実施形態では、遠赤外線放射塗料704は、実装ケース604側の内表面に塗布されており、特に、電気光学パネル500が直接接触する表面のみならず、微小な空隙を隔てて対向するフック部分624の表面624a、及びフレーム部分614とフック部分624とが接触する表面にも塗布されている。この際、フレーム部分614とフック部分624とが接触する表面における塗布は、フレーム部分614に施されてもよいし、フック部分624に施されてもよいし、両者に施されてもよい。その他の構成については、第1実施形態の場合と同様である。
従って、本実施形態によれば、電気光学装置の動作時には、投射光L1の入射により電気光学パネル500で発生する熱等は、遠赤外線放射塗料704に伝導された後、遠赤外線に変換され、遠赤外線のエネルギーとして放出される。この結果、電気光学パネル500も、効率的に冷却されることになる。
尚、第4実施形態の変形形態として、遠赤外線放射塗料704が部分的に電気光学パネル500の表面に塗布されてもよい。或いは、遠赤外線放射塗料704が塗料としてではなく、独立した介在層として形成されてもよい。更に、電気光学パネル500及び実装ケース604のうち少なくとも一方における表面付近が遠赤外線放射体材料から形成されていてもよい。加えて、実装ケース604についてはフレーム部分614の全体或いはフック部分624の全体が遠赤外線放射体材料から形成されていてもよい。又は、フレーム部分614或いはフック部分624の全表面に遠赤外線放射塗料が塗布されてもよい。いずれの変形形態によっても、上述した第4実施形態の場合と類似の放熱作用が得られる。
(実装ケース入り電気光学装置の第5実施形態)
次に実装ケース入り電気光学装置の第5実施形態について図13を参照して説明する。ここに、図13は、図4のE−E’断面と同一個所における遠赤外線放射体材料を含んでなる層を太線で示した第5実施形態の図式的断面図である。
第5実施形態は、電気光学パネル500’の上側に防塵ガラス502aが設けられ且つ下側に防塵ガラス502bが設けられている。そして、出射側に設けられたフック部分625が、図13中下側から防塵ガラス502bに直接接触するタイプである。第5実施形態では、遠赤外線放射塗料705は、実装ケース605側の内表面に塗布されており、特に、電気光学パネル500’が直接接触する表面のみならず、フレーム部分615とフック部分625とが接触する表面にも塗布されている。その他の構成については、図10に示した第2実施形態の場合と同様である。従って、第2実施形態とほぼ同様の放熱作用が得られる。また第2実施形態と同様の変形形態が可能である。
(実装ケース入り電気光学装置の第6実施形態)
次に実装ケース入り電気光学装置の第6実施形態について図14を参照して説明する。ここに、図14は、図4のE−E’断面と同一個所における遠赤外線放射体材料を含んでなる層を太線で示した第6実施形態の図式的断面図である。
第6実施形態は、電気光学パネル500’の上側に防塵ガラス502aが設けられ且つ下側に防塵ガラス502bが設けられている。そして、上下両側に設けられたフック部分626が、防塵ガラス502a及び502bに直接接触するタイプである。第6実施形態では、遠赤外線放射塗料706は、実装ケース605側の内表面に塗布されており、特に、電気光学パネル500’が直接接触する表面のみならず、フレーム部分616とフック部分626とが接触する表面にも塗布されている。その他の構成については、図11に示した第3実施形態の場合と同様である。従って、第3実施形態とほぼ同様の放熱作用が得られる。また第3実施形態と同様の変形形態が可能である。
(実装ケース入り電気光学装置の第7実施形態)
次に実装ケース入り電気光学装置の第7実施形態について図15を参照して説明する。ここに、図15は、図4のE−E’断面と同一個所における遠赤外線放射体材料を含んでなる層を太線で示した第7実施形態の図式的断面図である。
第7実施形態は、電気光学パネル500”の上側に防塵ガラス502aが設けられ且つ下側に防塵ガラス502bが設けられている。これらのガラス板は、電気光学パネル500”に含まれる電気光学装置を構成するTFTアレイ基板及び対向基板より一回り小さい。このため、これらのガラス板の周囲に若干の隙間が設けられている。そして、上側に設けられたフック部分627が、電気光学パネル500”を非接触に押さえるタイプである。第7実施形態では、遠赤外線放射塗料707は、実装ケース607側の内表面に塗布されており、特に、電気光学パネル500”が直接接触する表面のみならず、フレーム部分617とフック部分627とが接触する表面にも塗布されている。その他の構成については、図12に示した第4実施形態の場合と同様である。従って、第4実施形態とほぼ同様の放熱作用が得られる。また第4実施形態と同様の変形形態が可能である。
(実装ケース入り電気光学装置の第8実施形態)
次に実装ケース入り電気光学装置の第8実施形態について図16を参照して説明する。ここに、図16は、図4のE−E’断面と同一個所における遠赤外線放射体材料を含んでなる層を太線で示した第8実施形態の図式的断面図である。
第8実施形態は、出射側に設けられたフック部分628が、図16中下側から電気光学パネル500に直接接触するタイプである。第8実施形態では、遠赤外線放射塗料708は、実装ケース608のフレーム部分618の表面であって、投射光L3が入射する側に塗布されている。そして、好ましくは、フレーム部分618は、遠赤外線放射塗料708と比べて熱伝導率が高い材料から形成されている。その他の構成については、図10に示した第2実施形態の場合と同様である。
従って、第8実施形態では特に、投射光L1により電気光学パネル500で生じて実装ケース608に伝導する熱及び実装ケース608自体で生じる熱を、フレーム部分618の表面に塗布された遠赤外線放射塗料708により、遠赤外線L3等として外部(即ち、投射型表示装置の内部)に放出できる。
このような遠赤外線放射による放熱は、従来の空気を伝達媒体としての放熱、即ち所謂「空冷」とは異なる原理によるものである。よって、空気ファン等の能力が低くて足りる或いは空気ファン等が不要となるなど、実用上大きな利点も得られる。これにより、動作時における騒音の低減や消費電力の低減を図れる。但し、当該電気光学装置に対する放熱のために、空気ファン等の他の放熱手段を併用してよいことは言うまでもない。
尚、第8実施形態の如き構成を、第2又は第5実施形態の構成に組み合わせることも可能である。
加えて、第8実施形態において、遠赤外線放射塗料708を、投射光L1の入射側に代えて又は加えて、投射光L1の出射側に塗布してもよい。これによっても、遠赤外線放射塗料からの遠赤外線等の放射による放熱作用が期待できる。例えば、入射側については、実装ケース表面に光反射膜を形成して、実装ケースに照射される投射光L1による実装ケースで生じる熱を低減しつつ、出射側については、実装ケース表面に遠赤外線塗料708を塗布して、電気光学装置から伝導する熱や実装ケースで生じる熱を遠赤外線等の放射により、放熱するように構成してもよい。
(実装ケース入り電気光学装置の第9実施形態)
次に実装ケース入り電気光学装置の第9実施形態について図17を参照して説明する。ここに、図17は、図4のE−E’断面と同一個所における第9実施形態の図式的断面図である。
第9実施形態は、出射側に設けられたフック部分629が、図17中下側から電気光学パネル500に直接接触するタイプである。第9実施形態では、黒色材料の一例たる黒色塗料629aが、実装ケース609のフック部分629における、投射光L1が照射される側と反対側に塗布されている。他方、光反射材料の一例たる白色塗料619aが、実装ケース609のフレーム部分619における、投射光L1が照射される側に塗布されている。その他の構成については、図10に示した第2実施形態の場合と同様である。
従って、第9実施形態では特に、投射光L1により実装ケース608自体で生じる熱を、フレーム部分619の表面に塗布された白色塗料619aにより反射光Leとして反射することで低減できる。他方、投射光L1により電気光学パネル500で生じて実装ケース609に伝導する熱及び実装ケース609自体で生じる熱を、フック部分629の表面に塗布された黒色塗料629aにより、遠赤外線L3等として外部(即ち、投射型表示装置の内部)に放出できる。
本実施形態では、黒色塗料629aをフック部分629に塗布するのに代えて、黒色材料からフック部分629を形成してもよい。他方、白色塗料619aをフレーム部分619に塗布するのに代えて、白色材料からフレーム部分619を形成してもよい。
尚、白色塗料619aに代えて、アルミニウム、ニッケル、クロム等の光反射性材料から反射膜を形成してもよい。
また、第9実施形態の如き構成を、第2又は第5実施形態の構成に組み合わせることも可能である。
(その他の変形形態)
以上説明した各実施形態では、実装ケースは、フレーム部分とフック部分とからなるが、電気光学パネルをフレーム部分に対して、接着剤で固定することにより、フック部分を省略してもよい。この際、遠赤外線放射塗料を塗布するのに代えて又は加えて、このような接着剤中に、遠赤外線放射体材料を混ぜてもよい。
また、遠赤外線放射塗料を塗布するのに代えて又は加えて、フレーム部分とフック部分との間の間隙を埋めるモールド材中に遠赤外線放射体材料を混ぜることによっても、各実施形態と類似の効果が得られる。
更に、遠赤外線放射体塗料を塗布する表面或いは遠赤外線放射体材料からなる部分の表面に、凹凸を設けてもよい。このように構成すれば、遠赤外線等を放射する表面積が実質的に増加するので、熱を遠赤外線に変換する際の効率が一層上昇し、電気光学装置における温度上昇を一層効率的に抑制可能となる。
更にまた、上述の各実施形態における遠赤外線放射体材料に代えて又は加えて、例えば、二酸化マンガン、酸化クロム、酸化鉄、酸化コバルト、酸化銅等の遷移元素の酸化物、或いは各種セラミックス材料などの高効率赤外線放射体材料を用いてもよい。このように構成すると、上述の各実施形態における遠赤外線放射によるのと同程度の放熱効果を得るのは概ね困難であるが、高効率赤外線放射体材料の表面で熱を赤外線に変換することで、類似の放熱効果が相応に得られる。
尚、上記各実施形態では、実装ケースにおける遠赤外線或いは赤外線の放射による放熱作用について説明したが、このような放射に伴って、近赤外線が放射されてもよい。更に、近赤外線の放射が、遠赤外線及び赤外線よりも支配的であるような材料を採用することも可能である。いずれの場合にも、遠赤外線、近赤外線或いは赤外線を放射することによる放熱作用によって、上述した各種実施形態と類似の効果が当該放射の程度に応じて相応に得られるものである。
以上詳細に説明したように、本発明の各実施形態によれば、遠赤外線放射体材料、高効率赤外線放射体材料及び黒色材料のうち少なくとも一つを用いて実装ケースの少なくとも一部を形成し、又は実装ケースの少なくとも一部を塗装して、該一部からの遠赤外線或いは赤外線の放射によって、実装ケースにおける放熱効果を高め、よって実装ケースに実装或いは収容された電気光学装置の温度上昇を効率的に防止できる。
各実施形態では、特に電気光学装置の周辺領域或いは実装ケースに対して工夫を施すので、放熱ガラス板を電気光学装置における画像表示領域に対向する位置に設ける場合と比較して、表示画像を暗くすることが無く、また光路に界面を挿入することによる反射光が発生する恐れも無いので、有利である。また、電気光学装置自体には何らの変更を施さないでも放熱効果を高められるので、製造コスト的にも有利である。
尚、以上図1から図17を参照して説明した各実施形態では、データ線駆動回路101や走査線駆動回路104をTFTアレイ基板10の上に設ける代わりに、例えばTAB(Tape Automated bonding)基板上に実装された駆動用LSIに、TFTアレイ基板10の周辺部に設けられた異方性導電フィルムを介して電気的及び機械的に接続するようにしてもよい。また、対向基板20の投射光が入射する側及びTFTアレイ基板10の出射光が出射する側には各々、例えば、TN(Twisted Nematic)モード、VA(Vertically Aligned)モード、PDLC(Polymer Dispersed Liquid Crystal)モード等の動作モードや、ノーマリーホワイトモード/ノーマリーブラックモードの別に応じて、偏光フィルム、位相差フィルム、偏光板などが所定の方向で配置される。
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴なう実装ケース、これ及びこれに実装された電気光学装置を含む投射型表示装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
10…TFTアレイ基板、20…対向基板、50…液晶層、100R,100G,100B…ライトバルブ、601〜609…実装ケース、610,612〜619…フレーム部分、620,621〜629…フック部分、701〜708…遠赤外線放射塗料、1100…液晶プロジェクタ、1102…ランプユニット。