JP4734073B2 - 溶融亜鉛めっき用鋼材の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は,優れた耐パウダリング性を維持するとともに,圧延時のめっき割れも防止することが可能な溶融亜鉛めっき用鋼材の製造方法および該製造方法により得られる溶融亜鉛めっき用鋼材に関する。
Cが0.003質量%以下で,更にTiあるいはNbを添加してCとNを固定した鋼はIF鋼(Interstitial free鋼)と呼ばれ,自動車用鋼板等として広く用いられている。IF鋼は,冷間圧延後に溶融亜鉛めっきを施すことが多い。Tiを用いてCとNを固定したIF鋼は,溶融亜鉛めっきに際して,めっき層と下地となるIF鋼との界面に,加工性に有害なΓ相が生成し易く,このために,溶融亜鉛めっき後の成形加工に際して,溶融亜鉛めっき層が粉状または塊状となって剥離する,いわゆるパウダリング現象が発生し易い。この現象が生じると,剥離部分の耐食性が劣化したり,剥離しためっき片により該鋼板自体に疵が生じたりするといった問題がある。
このパウダリング現象は,CとNの固定のためにTiとNbを併用することにより解消するが,Nbを用いないでTiのみを使用して,パウダリングを低減防止することができると,2種の元素を使用しなくても1種の元素で足りるために,品質管理上または工程管理上極めて好ましい。
このようにTiのみを使用してパウダリング現象を防止する方法としては,溶鋼中にPを含有させることにより,表面近傍(表面から10mmまで)はPが高濃度(0.020質量%以上)でかつ表面近傍よりも内部はPが低濃度であるIF鋼板を製造する方法がある(例えば,特許文献1を参照)。この方法では,連続鋳造時の潤滑剤中にリンを混入させ,潤滑剤の溶鋼顕熱による溶融の際に,リンが鋼中に移動し鋳型内の溶鋼のプール内のリン濃度が上昇する。したがって,鋳型内におけるリンの拡散を抑制できればプール上部の溶鋼のみリン濃度が高い状態となり,上部の溶鋼が固まってできる鋳片表層のみリン濃度を高くすることができる。
また,Pを添加する別の方法として,鋳型内のパウダー層にP成分を添加し,鋳片の表層部のP含有量を高める方法がある(例えば,特許文献2を参照)。この方法では,P成分を添加する事により,Pの含有量が高いフラックスを凝固シェルと鋳型壁との間の隙間に流入させる。このPの高いフラックス中のPは凝固シェル中に拡散し,表面から4〜6mmの鋳片の表層部にPの含有量が0.02〜0.05質量%のPの濃化層を形成する。
また,本発明者らは,これらの従来の方法を改良するために,鋳片の表層を,誘導加熱,プラズマ加熱のいずれか一方または双方により溶融させ,溶融した鋼鋳片の表層部分に,添加元素もしくはその合金を添加する溶融改質方法を提案している(特許文献3を参照)。
特開2000−273581号公報 特開昭61−266163号公報 特開2004−195512号公報
しかしながら,特許文献1に記載された方法では,溶鋼中でのリンの拡散速度が速いこと,潤滑剤から溶鋼へのリンの移動を制御することが難しいこと(特に,鋳造条件が変わると凝固速度も変化し,溶鋼流動も変化するので拡散速度も変化する)から,鋳片のリンの富化層の厚みが鋳片周方向にも鋳造方向にも安定しがたいという問題があった。このため,不要でかつ材料の局所的な機械的性質を変化させてしまう内部のリン濃度が上昇するという問題があった。
また,特許文献2に開示しているような,潤滑剤内に元素を混入させる方法では,潤滑剤を通じて添加するために元素成分の付加範囲が安定しないことや,熱源の不足により量が限られる等の問題があった。より詳細には,連続鋳造時には,水冷した鋳型に溶鋼を注入し凝固させていくために,溶鋼は凝固を開始する温度(液相線温度)より5℃程度わずかに高い温度となっている。すなわち,新たに添加した元素を鋼の液相線温度まで高め,さらに溶融潜熱に相当する熱量を供給する余裕がない。
また,リン自身は鋼材そのものの性質に対しては必ずしも必要なものではない。したがって,熱間圧延までに酸化スケールとして除去される4mm未満程度の薄い極表層に存在していれば十分機能を発揮し問題ないものであるが,上記方法では原理上その厚みは4〜6mm程度となる。そのため,酸化スケールとして除去することができず,Pの添加により表面の硬い鋼材となるため加工性が悪化すること,加熱時や圧延時に割れが生じること等,鋼材の性質(例えば,伸び,降伏応力,強度,靭性,溶接性など)に害を与えるおそれがある,という問題もあった。
さらに,特許文献3の方法は,確かに上記特許文献1,2の問題点を解決しているが,上記特許文献1〜3に開示されている技術は,性質の異なる新たな複合鋼材の製造を目的としたものであり,本発明が対象とする表面処理鋼材の欠点を解消するような,界面状態を変化させることを目的としていない。より詳細には,特許文献3の方法は,プラズマ溶融処理の際に種々の元素を添加する技術に関するものであるが,上記方法におけるリンの添加効果は,リン添加による鋼の機械的強度の向上,すなわち,表面のみ機械的強度が高い鋼材の製造を目的としたものである。
そこで,本発明は,このような問題に鑑みてなされたもので,その目的は,圧延後の溶融亜鉛めっき処理の際に発生する界面問題を抑制することにより,優れた耐パウダリング性を維持できるとともに,加熱・圧延時の割れも防止することが可能な,新規かつ改良された溶融亜鉛めっき用鋼材の製造方法および該製造方法により得られる溶融亜鉛めっき用鋼材を提供することにある。
本発明者らは,上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果,誘導加熱またはプラズマ加熱のいずれか一方または双方を用いて鋼の鋳片表層の一部にリンまたはリン合金を溶着させることにより,優れた耐パウダリング性を維持したまま,加熱・圧延工程時の割れ(母材金属の表面割れ)も防止することができ,さらに,Nbを添加せずに安価に溶融亜鉛めっき用鋼材を製造できることを見出し,この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち,本発明によれば,鋼の連続鋳造鋳片の表面から4mm未満までを誘導加熱またはプラズマ加熱のいずれか一方または双方を用いて溶融する加熱工程と,上記加熱工程により溶融した溶融部に該溶融部におけるリン濃度が0.02質量%以上となるようにリンまたはリン合金を添加して,鋳片の表層部にリンの濃化領域を形成する表面改質工程と,を含み,前記鋳片の表面から4mm未満の厚みを有する前記リンを添加して部分的に改質処理を行う溶融部の領域を,熱間圧延までに酸化スケールとして除去する溶融亜鉛めっき用鋼材の製造方法が提供される。
ここで,リンを添加する溶融部の厚みを鋳片の表面から4mm未満としているのは,パウダリング現象を防止するためのリンは,酸化スケールとして除去される程度の厚みを有する極表層に含まれていれば十分その機能を発揮することができ,その厚みは通常,4mm未満であるからである。また,溶融部が表面から4mm以上の厚みを有する場合には,母材となる鋼特性にとって有害となる。具体的には,加熱時や圧延時に割れが生じたり,リンを添加すると鋼の強度が上がることで逆に鋼材の加工性が低下したりするため,好ましくない。このような観点から,リンの濃化領域の厚みは,好ましくは,表面から3.5mm以内であり,さらに好ましくは,表面から3mm以内である。
また,溶融部におけるリン濃度を0.02質量%以上としているのは,0.02質量%未満では,パウダリングを低減するという効果が少ないことが,サンプル評価の結果判明しているからである。なお,溶融部におけるリン濃度は,0.06%以下であることが好ましい。リン濃度が0.02質量%以上0.06質量%以下であれば,パウダリングを低減させるという効果は十分であり,0.06%を超えても格別な利益はないことがサンプル評価の結果判明しているからである。
このように,本発明に係る溶融亜鉛めっき用鋼材の製造方法によれば,耐パウダリング性を維持したまま,加熱・圧延工程時の割れも防止することが可能な溶融亜鉛めっき用鋼材を製造することができる。また,上記製造方法によれば,Nbを使用する必要がないので,安価に溶融亜鉛めっき用鋼材を製造することができる。
また,上記課題を解決するために,本発明によれば,表層部にリンの濃化領域を有する溶融亜鉛めっき用鋼材であって,上記リンの濃化領域の厚みは,鋼材表面から4mm未満であり,上記リンの濃化領域におけるリン濃度は,0.02質量%以上であることを特徴とする,溶融亜鉛めっき用鋼材が提供される。
このように,リンの濃化領域の厚みを鋼材の表面から4mm未満に抑えることにより,めっき層と鋼材との界面における粒成長を抑制して,加熱・圧延工程時の割れを防止することができる。また,リンの濃化領域におけるリン濃度が0.02質量%以上であることにより,耐パウダリングにも優れる。
本発明によれば,鋼の連続鋳造鋳片の表層4mm未満を選択的に溶融改質処理することにより,優れた耐パウダリング性を維持するとともに,加熱・圧延工程時の割れを防止して,成形加工性に優れた溶融亜鉛めっき用鋼材を製造することが可能な,溶融亜鉛めっき用鋼材の製造方法および該製造方法により得られる溶融亜鉛めっき用鋼材を提供することができる。
以下に添付図面を参照しながら,本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお,本明細書及び図面において,実質的に同一の機能構成を有する構成要素については,同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
(本発明の一実施形態に係る溶融亜鉛めっき用鋼材の製造方法)
図1および図2に基づいて,本発明の一実施形態に係る溶融亜鉛めっき用鋼材1の製造方法について詳細に説明する。なお,図1は,本実施形態に係る表層部にリンの濃化領域3を有する溶融亜鉛めっき用鋼材1の例を示す斜視図であり,図2は,本実施形態に係る表層部にリンの濃化領域3を有する溶融亜鉛めっき用鋼材1の製造方法を説明するための模式的な断面図である。
本実施形態に係る溶融亜鉛めっき用鋼材の製造方法は,誘導加熱またはプラズマ加熱のいずれか一方または双方を用いて,鋼の連続鋳造鋳片の表面から4mm未満までを選択的に溶融する加熱工程と,加熱工程により溶融した溶融部に該溶融部におけるリン濃度が0.02質量%以上となるようにリンまたはリン合金を添加することにより鋳片の表層部にリンの濃化領域を形成する表面改質工程と,を含むことを特徴とする。
本発明においては,鋳片の一部を部分的に改質してリンの濃化領域を形成する位置は,鋳片等における任意の位置であって,本発明に係る溶融亜鉛めっき用鋼材が最終的に加工される加工製品に合わせて選択されるものである。例えば,本実施形態においては,図1に示すように,鋳片2の両面の一定の厚みを有する表層部全体をリンまたはリン合金の添加部,すなわち,リンの濃化領域3としている。リンの濃化領域を形成する位置は,これ以外にも,例えば,鋳片中央部の両面における一定幅及び一定厚みの領域をリンまたはリン合金の添加部としたものや,鋳片の四隅部の一定範囲及び一定厚みの領域をリンまたはリン合金の添加部としたもの等が考えられる。
また,本実施形態において,リンを添加して部分的に改質処理を行う溶融部を鋳片の表面から4mm未満の厚みを有する領域としているのは,パウダリング現象を防止するためのリンは,酸化スケールとして除去される程度の厚みを有する極表層に含まれていれば十分その機能を発揮することができ,その厚みは通常,4mm未満であるからである。また,リンの濃化領域(すなわち,リン含有量の多い領域)が,表面から4mm以上の厚みを有する場合には,目的とする複合鋼材(本実施形態では,一部にリンの濃化領域を有する鋼材)の製造において,母材となる鋼特性にとって有害となる。具体的には,加熱時や圧延時にめっき割れが生じたり,リンを添加すると鋼の強度が上がることで逆に鋼材の加工性が低下したりするため,好ましくない。このような観点から,リンの濃化領域の厚みは,好ましくは,表面から3.5mm以内であり,さらに好ましくは,表面から3mm以内である。ただし,上記厚みが表面から1mm未満の場合には,通常の加熱および圧延工程で表面が酸化して失われてしまうため,通常は1mm以上である。
また,本実施形態の方法は,鋳片2の表層の一部にリンまたはリン合金を溶着させることで,溶融亜鉛めっき用鋼材1を製造するためのものであるが,鋳片2の表層の一部を溶融させる方法について,以下に説明する。
鋼鋳片2の表層の一部,本実施形態の場合には,図1に示したリンの濃化領域3に相当する表面から4mm未満の厚みを有する領域を溶融させる方法としては,誘導加熱単独,プラズマ加熱単独,誘導加熱とプラズマ加熱の併用のいずれを用いても良い。
誘導加熱単独で行う場合は,リンまたはリン合金を,粒子またはワイヤーやシート状の形態で鋳片表層の溶融部に添加できる。具体的には,連続鋳造機で得られた鋳片は,切断後,溶融処理場に輸送される。鋳片は,輸送後,予め定められた溶融対象となる鋳片の一部,すなわち,リンの濃化領域を形成するための溶融部およびその周辺の加熱部を加熱可能なように配置された電磁誘導コイルにより加熱溶融される(電磁誘導コイルは,例えば,数〜数十kHzの周波数の高周波を発生させている)。次いで,溶融された溶融部に,粒子またはワイヤーやシート状の形態のリンまたはリン合金を添加して溶融合金化処理する。
電磁誘導コイルは,鋳片の溶融部で電磁力により溶融部分を内面に向かって電磁力によって押さえつけることにより安定した溶融部表面を作り,その後再度冷却され凝固する。このように溶融対象部位が鋳片のエッジ部を含む領域であっても,安定した溶融部が得られる。この溶融部は鋳片の移動によって徐々に凝固し安定したリンの濃化領域を形成する。
この方法によれば,鋳片の一部の溶融部の温度を液相線温度(鋳片は鉄以外に他の成分を含むため,融点のように1つの温度では溶融状態が決まらず,凝固が始まる温度を固相線温度,全て液体となる温度を液相線温度と呼ぶ。以下同じ)よりもわずかに高い温度に保持し,添加後に急速に冷却凝固させることにより,凝固組織を小さくでき,結晶粒のサイズを小さくすることができる。これにより,リン元素の溶融処理部内での均一性が増し,また圧延時にも,結晶粒が細かくなることにより圧延時の応力が分散されて割れなどの欠陥を生じにくくなるという利点がある。
また,鋳片の一部の溶融部にリンまたはリン合金を添加して溶着させる場合,鋳片の酸化を防止することが好ましいため,誘導コイルは,雰囲気ガス容器内で不活性なガス雰囲気(例えばアルゴン,窒素等)で溶融改質するのが好ましく,さらにより確実に酸化を防止するためには,不活性なガス雰囲気中に約2モル%程度の水素を含んで溶融改質することが好ましい。
また,上記方法を用いた場合,誘導コイルが発生させる磁場と,導体である鋳片に誘導した電流との相互作用により,溶融部には電磁力が作用する。この電磁力はピンチ力と呼ばれ,溶融部を圧縮する作用があり,溶融部表面の安定化に寄与する。
また,上記方法は,連続鋳造機端,すなわち連続鋳造後の鋳片が水平に移動している際に,あるいは連続鋳造機内,すなわち鋳片が垂直に移動している際にも,適用することができる。
また,プラズマ加熱単独で行う場合は,プラズマ内にリンまたはリン合金を供給し,鋼の溶融した部分に供給することで鋳片表層の一部の溶融部に添加できる。プラズマは,一般に軸対称な形をしているため,連続的に鋳片の表面を処理するには,プラズマトーチを鋳片の幅方向にスキャンさせる方法か,あるいは,特開昭54−142154号公報に記載されたようなプラズマを鋳片の幅方向に電磁力を使って扁平な往復運動させる方法等を用いることができる。また,場合によっては,鋳片の幅方向全体にわたって複数本のプラズマトーチを配置しておき,予め定められている鋳片の溶融対象箇所に対応するトーチのみを稼動させるようにすることもできる。
連続鋳造機で得られた鋳片は,切断後,溶融処理場に輸送され,リンまたはリン合金をプラズマに供給することで,プラズマで鋳片の表層の一部を溶融しながら,リンまたはリン合金を鋳片の溶融部に供給することで溶着される。その後,再度冷却され凝固する。
この方法でも,鋳片の一部の溶融部の温度を液相線温度よりもわずかに高い温度に保持し,添加後に急速に冷却凝固させることにより,凝固組織を小さくでき,結晶粒のサイズを小さくすることができる。これにより,リン元素の溶融処理部内での均一性が増し,また,圧延時にも結晶粒が細かいことにより圧延時の応力の集中が避けられ,割れなどの欠陥を生じにくくなるという利点がある。
また,鋳片の一部の溶融部にリンまたはリン合金を添加して溶着させる場合,鋳片の酸化を防止することが好ましいため,チャンバー内のガス雰囲気は上記と同様に,不活性なガス雰囲気であることが好ましい。
次に,図2に基づいて,誘導加熱とプラズマ加熱を併用して行う場合について説明する。
連続鋳造機で連続鋳造を完了した鋳片は,切断後,溶融処理場に輸送される。鋳片は,図2に示すように,溶融処理の対象部位である鋳片2の一部を選択的に加熱溶融するように配置された電磁誘導コイル11により加熱される。さらに,リンまたはリン合金をプラズマトーチ12からのプラズマ13に供給することで,鋳片2の一部の溶融部5にリンまたはリン合金を添加して溶着させる。リンまたはリン合金は,プラズマ13に供給する以外に,粒子またはワイヤーやシート状の形態で供給する等,通常の供給方法で添加してもよい。
上記方法を用いた場合,電磁誘導コイル11が発生させる磁場14と,導体である鋳片2に誘導した電流との相互作用により,溶融部5には電磁力が作用する。この電磁力はピンチ力と呼ばれ,溶融部5を圧縮する作用があり,電磁力により溶融部5を内面に向かって電磁力によって押さえつけることにより溶融部5表面の安定化に寄与する。その後,再度冷却されることにより凝固し,安定したリン濃化領域3を形成することができる。
このように,誘導加熱とプラズマ加熱を併用した場合でも,得られる部分的に改質した鋳片2の溶融部5の温度を液相線温度よりもわずかに高い温度に保持し,添加後に急速に冷却凝固させることにより,凝固組織を小さくでき,結晶粒のサイズを小さくすることができる。これにより,リン元素の溶融処理部内での均一性が増し,また,圧延時にも割れなどの欠陥を生じにくくなるという利点がある。
また,鋳片2の表層の溶融部5にリンまたはリン合金を添加して溶着させる場合,鋳片2の酸化を防止することが好ましいため,雰囲気ガス容器15内のガス雰囲気は,上記と同様に不活性なガス雰囲気16とすることが好ましい。さらに,電磁誘導コイル11による電磁力は上述した通りに作用する。
また,リン合金については,リン元素の複数成分の合金であれば特に規定するものではないが,通常は,フェロリンその他合金鉄等が用いられる。
また,誘導加熱とプラズマ加熱の双方を併用する場合の別の形態として,誘導加熱により鋳片の表層と併せて,粒子またはワイヤーやシートの形で鋳片の表層部に添加したリンまたはリン合金を予熱し,その後,添加したリンまたはリン合金をプラズマ加熱により溶融合金化させる方法を用いても良い。
この方法では,誘導加熱は単に予熱機能として使用し,その後のプラズマ加熱でリンまたはリン合金を溶融合金化させるものであり,プラズマで一般に加熱溶融するには添加元素またはその合金の形状がパウダー状であり,プラズマ内に吹き込むのが一般的であるのに対し,この方法の場合には添加元素もしくはその合金の形状にかかわらず実施できるという利点がある。
以上説明したように,本実施形態に係る溶融亜鉛めっき用鋼材の製造方法によれば,耐パウダリング性を維持したまま,加熱・圧延工程時の割れも防止することが可能な溶融亜鉛めっき用鋼材を製造することができる。また,上記製造方法によれば,Nbを使用する必要がないので,安価に溶融亜鉛めっき用鋼材を製造することができる。また,このようにして製造された溶融亜鉛めっき用鋼材は,自動車や家庭用電気製品向けの鋼材など種々の用途に活用することができる。
以下,上記方法により製造された溶融亜鉛めっき用鋼材1について説明する。
本実施形態に係る溶融亜鉛めっき用鋼材1は,表層部にリンの濃化領域3を有し,リンの濃化領域3の厚みは,鋼材1の表面から4mm未満であり,リンの濃化領域3におけるリン濃度は,0.02質量%以上であることを特徴としている。
このように,リンの濃化領域3の厚みを鋼材1の表面から4mm未満に抑えることにより,めっき層と鋼材1との界面における粒成長を抑制して,加熱・圧延工程時の割れを防止することができる。また,リンの濃化領域3におけるリン濃度が0.02質量%以上であることにより,耐パウダリングにも優れる。
ここで,溶融部におけるリン濃度を0.02質量%以上としているのは,0.02質量%未満では,パウダリングを低減するという効果が少ないことが,サンプル評価の結果判明しているからである(特許文献1を参照)。
また,溶融部におけるリン濃度は,0.06%以下であることが好ましい。リン濃度が0.02質量%以上0.06質量%以下であれば,パウダリングを低減させるという効果は十分であり,0.06%を超えても格別な利益はないことがサンプル評価の結果判明しているからである(特許文献1を参照)。
次に,実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが,本発明が下記実施例に限定されるものではない。
板幅,1150mm,板厚,250mmの鋳片を連続鋳造後,図2に示す装置を用いて誘導加熱及びプラズマ溶融処理により表層3mmの溶融深さで0.05質量%のリンを添加した。この際,誘導加熱は,出力を20kHz,鋳片温度を1200℃,ガス雰囲気をアルゴンとして行った。また,プラズマ溶融処理は,出力を30kW/本,ガス雰囲気をアルゴンとして,送り速度1m/minで行った。この鋳片は,通常用いられる方法により板厚4mmの熱延鋼板に熱間圧延し,その後0.8mmに冷間圧延した。冷間圧延で得られた各板には更に連続溶融亜鉛めっきラインで45g/mの溶融亜鉛めっき層を形成することにより,溶融亜鉛めっき鋼板を得た。
また,得られた溶融亜鉛めっき鋼板に対し,耐パウダリング性の評価を行った。耐パウダリング性は,溶融亜鉛めっき鋼板についての90°V曲げ−曲げ戻し試験後の剥離テープを,蛍光X線を用いて剥離亜鉛強度を測定することにより評価した。その結果,得られた製品は,剥離幅が2mm以下で良好であった。
以上,添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが,本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば,特許請求の範囲に記載された範疇内において,各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり,それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
本発明は,優れた耐パウダリング性を維持するとともに,圧延時のめっき割れも防止することが可能な溶融亜鉛めっき鋼材の製造方法および該製造方法により得られる溶融亜鉛めっき鋼材に適用可能である。
本発明の一実施形態に係る表層部にリンの濃化領域を有する溶融亜鉛めっき用鋼材の例を示す斜視図である。 本発明の一実施形態に係る表層部にリンの濃化領域を有する溶融亜鉛めっき用鋼材の製造方法を説明するための模式的な断面図である。
符号の説明
1 溶融亜鉛めっき用鋼材
2 鋳片
3 リン濃化領域
4 加熱部
5 溶融部
11 電磁誘導コイル
12 プラズマトーチ
13 プラズマ
14 磁場
15 雰囲気ガス容器
16 不活性なガス雰囲気
F 移動方向

Claims (1)

  1. 鋼の連続鋳造鋳片の表面から4mm未満までを,誘導加熱またはプラズマ加熱のいずれか一方または双方を用いて溶融する加熱工程と,
    前記加熱工程により溶融した溶融部に該溶融部におけるリン濃度が0.02質量%以上となるようにリンまたはリン合金を添加して,前記鋳片の表層部にリンの濃化領域を形成する表面改質工程と,
    を含み,
    前記鋳片の表面から4mm未満の厚みを有する前記リンを添加して部分的に改質処理を行う溶融部の領域を,熱間圧延までに酸化スケールとして除去することを特徴とする,溶融亜鉛めっき用鋼材の製造方法。
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