JP4733861B2 - 酵素粒子 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、酵素活性の経時低下が少なく、粉塵の発生が抑制された酵素粒子に関する。
【0002】
【従来の技術】
酵素は、繰り返し接触することにより皮膚や粘膜組織に影響しアレルギー反応を引き起こす場合がある。酵素製剤の取扱い作業において、粉塵が発生すると、その粉塵に長期間暴露された作業員の健康が損なわれる可能性が高く、作業環境の安全性を確保するために、粉塵の発生を抑制することが重要である。
【0003】
この様な理由により、従来より粉塵の発生を抑制する方法が検討されてきた。その基本的手法は、酵素粉末を造粒して粒状に加工することであり、かなりの程度まで粉塵の発生を抑制することができる。しかしながら、従来の造粒操作を行っただけでは、外力が加えられた場合に粒子が破砕され粉塵が発生し易い。
【0004】
かかる課題を解決すべく、特公昭58−36955号公報には粒子中に5〜15重量%の水を含有させ、柔軟性があり機械的な外力が加えられても破砕されず実質的に粉塵が発生しない酵素粒子の製造法が開示されている。
【0005】
しかしながら、水は、一般に酵素活性を失活させるため、粒子に存在させることは好ましくない。特に、漂白剤が存在する系ではこの傾向が著しく、安定化剤を配合しても活性を保持するのは困難である。従って、酵素粒子中の含水量は可能な限り低減するべきであるが、その場合、柔軟性を保つことができない。
また、特開平11−302688号公報には、酵素含有組成物中に可塑剤を6〜20重量%含有させ、酵素活性の低下が少なく粉塵の発生が抑制され、且つ機械力が加えられた場合でも破壊され難い酵素粒子の製造法が提案されている。しかしながら、高温・高湿条件下では、可塑剤の種類、含有量によっては、酵素含有組成物の吸湿性が高まることで酵素活性を安定に保つことが困難であった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、酵素活性が経時的に安定して保持され、粉塵の発生が抑制された酵素粒子を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、酵素を結合剤と特定の可塑剤とにより乾式造粒した酵素粒子が酵素活性が経時的に安定に保持され、粉塵の発生が抑制される等の効果を有することを見出した。
【0008】
本発明は、酵素を結合剤及びプロピレングリコールとで結合した酵素粒子であって、該プロピレングリコールを酵素粒子中に0.05〜5重量%含有し、乾式造粒法により造粒され、次いで被覆された酵素粒子を提供するものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明で使用する酵素としては、例えば、ハイドロラーゼ類、オキシドレダクターゼ類、リアーゼ類、トランスフェラーゼ類及びイソメラーゼ類等が挙げられ、特に好ましいのはセルラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ、アミラーゼ、プルラナーゼ、エステラーゼ、ヘミセルラーゼ、パーオキシダーゼ、フェノールオキシダーゼ、プロトペクチナーゼ及びペクチナーゼ等が挙げられる。これらの酵素は、2種以上を併用してもよい。
通常、微生物により生産された酵素を含有する培養物を濾過し、更に乾燥して得られるものが用いられる。又、培養条件、分離条件等により安定化剤、糖類、硫酸ナトリウム等無機塩類、ポリエチレングリコール、不純物、少量の水等が含まれていても良い。
【0010】
本発明の酵素粒子は、酵素を90重量%(以下単に%と記載する)以下含有するのが好ましく、より好ましくは3〜80%、特に10〜50%含有するのが好ましい。
【0011】
本発明で使用する結合剤は、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、澱粉分解物、糖類、セルロース誘導体等が挙げられ、ポリエチレングリコール、糖類が好ましい。
結合剤は2種以上を併用してもよい。
本発明の酵素粒子は、粒子の結合性、塊状化防止の点で、結合剤を1〜50%含有するのが好ましく、特に5〜40%含有するのが好ましい。
【0012】
本発明で使用するプロピレングリコールは、酵素粒子中に0.05〜5%含有するが、安定性の点で特に0.1〜2%であるのが好ましい。
【0013】
本発明の酵素粒子には、増量剤、分散剤等として、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、塩化ナトリウム等の無機塩類、ゼオライト、タルク、クレー、シリカ、アルミナ、カオリン等の水不溶性微粉末、麦類、とうもろこし、米、芋類、豆類等の穀物粉や澱粉等の粉体を適宜含有させることができる。これらは2種以上を併用してもよく、酵素粒子中に80%以下、特に20〜70%含有するのが好ましい。
【0014】
本発明の酵素粒子は、先ず酵素と結合剤及び酵素粒子中の0.05〜5%量に相当するプロピレングリコール、更には適宜用いられる粉体等の成分を混合し、これを乾式造粒法で造粒して、次いで被覆剤で被覆して製造される。
【0015】
乾式造粒法としては、造粒工程において水を使用しないもので、乾式押出造粒・乾式攪拌転動造粒等の造粒法が挙げられる。
押出造粒を行う場合には、ペレッターダブル、ツインドームグラン(不二パウダル(株)製)、バスケット式造粒機((株)菊水製作所)、グラニュライザ(ホソカワミクロン(株)製)等の押出造粒装置が挙げられる。また、攪拌転動造粒を行う場合には、例えば、CFグラニュレーター(フロイント産業(株))、ヘンシェルミキサー(三井三池化工機(株))、ハイスピードミキサー(深江工業(株))、レディゲミキサー(レディゲ社)、プロシェアミキサー(大平洋機工(株))等及びそれらの改良型である攪拌転動造粒装置が挙げられる。
【0016】
押出造粒を行う場合、工程は以下の工程で構成される。
1)原料粉体(酵素粉末、添加剤)と結合剤及びプロピレングリコールを混合して混合物を得る混合工程。
2)該混合物を押出成形して成形物を得る押出工程。
3)該成形物を球形化して造粒物を得る球形化工程。
上記混合工程は、用いる全ての成分が均一に混合されれば良い。
【0017】
混合工程に用いられる混合装置は、例えば、前述した攪拌転動造粒装置や、ニーダー(不二パウダル(株)製)、ナウタミキサー(ホソカワミクロン(株)製)、V型ブレンダ((株)ダルトン製)等が挙げられる。
又、球形化工程に用いられる球形化装置は、例えば、マルメライザー(不二パウダル(株)製)、TMミキサー(三井鉱山(株)製)等が挙げられる。
【0018】
混合工程から球形化工程における操作温度は、使用する結合剤の融点もしくは軟化点以上の温度である。
【0019】
攪拌転動造粒法の操作は、原料粉体(酵素粉末、添加剤)と結合剤及びプロピレングリコールを、攪拌転動させ造粒するものであり、例えば以下の形態で行うことができる。
1)原料粉体を造粒機に仕込み攪拌して粉体を均一に分散させた後、攪拌下において結合剤とプロピレングリコールを添加して造粒する。
2)核となる粒子と原料粉体を造粒機内に仕込み、結合剤とプロピレングリコールを添加して原料粉体を核粒子の表面に付着させて造粒する(有核造粒法と称す)。
3)有核造粒法において、結合剤及びプロピレングリコールの添加と原料粉体の添加を交互に多段階で行い造粒する。
4)有核造粒法において、結合剤とプロピレングリコール及び原料粉体を連続的に供給し造粒する。
上記の形態の内、有核造粒法は、粒度分布のシャープな造粒物を得ることが可能であり、生産性が高いので好ましい形態である。
【0020】
有核造粒法において使用される核粒子は、例えば、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、グラニュー糖、原料粉体で作成された粒子等が使用できる。また、有核造粒法においては、数種の原料粉体を均一に混合したものを核粒子に徐々に付着させても、原料粉体を1種以上の混合物として供給し、多層化しても良い。
【0021】
上記の操作を乾式で行う場合は、造粒温度を結合剤の融点又は軟化点以上にして、結合剤の粘着性を発現させて、原料粉体を付着造粒させる。
【0022】
乾式造粒法で製造された酵素造粒物は、次いで、その表面を被覆剤で被覆する。
【0023】
被覆剤としては、例えば水溶性高分子、非イオン界面活性剤、無機粉体等が挙げられる。水溶性高分子としてはポリエチレングリコール及びその誘導体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、セルロース誘導体(メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等)が挙げられる。非イオン界面活性剤としてはポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンフェノールエーテル等が挙げられる。また、無機粉体としては、タルク、二酸化チタン(ルチル型又はアナターゼ型)、シリカ、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸バリウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、酸化アンチモン、カオリン、炭酸カルシウム、雲母、白鉛(塩基性炭酸鉛)等が挙げられる。これらの被覆剤は二種以上使用してもよい。
【0024】
酵素造粒物の被覆は、被覆剤としてタルク、二酸化チタン及びポリエチレングリコールの3種を併用するのが最も好ましい。酵素造粒物100重量部に対し、この3種の合計が10〜70重量部、特に20〜60重量部であるのが好ましく、タルク/二酸化チタンの重量比が100/10〜100、特に100/10〜50、(タルク+二酸化チタン)/ポリエチレングリコールの重量比が100/5〜100、特に100/8〜30であるのが好ましい。ここで、タルクは平均粒径2〜80μm、特に2〜60μm、二酸化チタンは0.1〜0.8μm、特に0.1〜0.6μmであるのが好ましい。なお、この無機粉体の平均粒径は、レーザ回折/散乱法で測定した値をいう。
【0025】
被覆剤による被覆は、乾式造粒法で製造した酵素造粒物を、攪拌転動被覆装置に仕込み、ジャケットの温度を調整して粒子の温度を被覆剤の融点以上に昇温し、次いで溶融状態にある被覆剤を噴霧して被覆を行う。その後、被覆粒子を冷却する。冷却により、被覆粒子の粘着性が下がり、粒子強度が上がるため、製品同士の合一、輸送中の変形を防ぐことができる。
冷却工程で使用できる装置としては振動コンベア、流動層等が挙げられるが、造粒又は被覆に使用した装置に、冷却機能が付加されていれば、それを使用することもできる。冷却条件としては、酵素が熱劣化を生じない温度以下まで冷却することが好ましい。
【0026】
このようにして製造された酵素粒子中には、原材料からの水分が混入しているが、その水分量は酵素粒子中に、2%以下、より好ましくは0.5〜2%、特に0.5〜1%であるのがよい。
また、酵素粒子の平均粒径は、水への溶解性、洗浄剤中における分級防止、飛散抑制等の点で振動篩法で測定した場合、100〜2000μm、特に200〜1000μm、更に250〜1000μmであるのが好ましい。
【0027】
【実施例】
粉塵量の測定
粉塵量はエルトリエーション法により測定した。すなわち、図1に示す測定管1に酵素粒子60gを仕込み、下部より空気を0.8m/sの流速で供給して粒子を流動化させ、40分間にフィルター2に捕収された粉塵量を定量した。
アルカリアミラーゼ活性の測定
適時希釈した酵素粒子水溶液をスターチ(SIGMA,S−2630)の終濃度1%水溶液及び終濃度0.1Mグリシン−水酸化ナトリウム緩衝液(pH10)の組成で50℃、15分間作用させた後、遊離する還元糖をDNS法で測定した。なお、DNS法とは3,5−ジニトロサリチル酸がアルカリ性において煮沸条件で糖類の還元基と反応して発する色を比色する方法である。
【0028】
実施例1
下記組成物2.3kgをハイスピードミキサー(深江工業(株)、FS−5J型)に投入し、ジャッケットに70℃温水を流しながら、アジテーター330r/min、チョッパー1700r/minで攪拌混合し、混合組成物の温度を65℃まで上昇させた。組成物投入後15分間の造粒後、造粒物100重量部に対しプロピレングリコールχ重量部(表1)を投入し、更に攪拌を1分間行って酵素造粒物を得た。
Figure 0004733861
*1 バチルス(Bacillus)属に属する菌(微工研菌寄第10886号、WO94/26881号公報)を培養し採取されたアルカリアミラーゼの水溶液に硫酸ナトリウム10水塩を添加し、並流式噴霧乾燥機で乾燥して得た平均粒径50μmの粉末(乾燥品 酵素含量30%)を用いた。
【0029】
次いで、酵素造粒物2.3kgに対し下記被覆剤1.1kgを投入し、更に攪拌を10分間行って被覆剤で被覆した酵素粒子を得た。
組成:
ポリエチレングリコール(分子量6000) 9 %
二酸化チタン(平均粒径0.27μm) 12
タルク(平均粒径36μm) 79
【0030】
表1に酵素粒子の粉塵量を測定した結果を示す。本発明1〜5はいずれも比較例1に比してわずかな粉塵であった。
【0031】
【表1】
Figure 0004733861
【0032】
本発明2及び比較例1の酵素粒子の経時安定性を検討した結果を表2に示す。
経時保存条件:酵素粒子1gを100mLガラス容器に入れ開栓状態で、40℃、相対湿度80%に7日間静置させた。
【0033】
【表2】
Figure 0004733861
【0034】
本発明2は比較例1と同様に安定であった。
【0035】
実施例2
実施例1のアルカリセルラーゼをバチルス属に属する菌(FERM P−16067)の産生するアルカリセルラーゼを用いた同様な酵素粉末を用いた他は、同組成・同工程で製造した酵素粒子及び被覆酵素粒子の粉塵量の測定結果を表3に示す。
【0036】
【表3】
Figure 0004733861
【0037】
本発明6〜9は、いずれも比較例2に比して粉塵が極めて少量であった。
【0038】
【発明の効果】
本発明の酵素粒子は、酵素活性の経時低下が少なく、粉塵の発生が抑制されたものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例において粉塵量測定に使用した装置の概略図である。

Claims (1)

  1. 酵素を結合剤及びプロピレングリコールとで結合した酵素粒子を被覆した被覆酵素粒子であって、該プロピレングリコールを酵素粒子中に0.5〜1.5重量%含有し、酵素と結合剤を結合剤の融点又は軟化点以上の温度で造粒し、次いでプロピレングリコールを添加、攪拌を行う乾式造粒法により造粒され、次いで被覆された被覆酵素粒子。
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