JP4731702B2 - 吹付材料及びそれを用いた吹付工法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、道路、鉄道、及び導水路等のトンネル掘削工事において露出した地山面や地山が露出した法面が崩落するのを防止し、又、コンクリート構造物等を補修するために使用する吹付材料に関する。尚、本発明では、モルタル及びコンクリートを総称してセメントコンクリートといい、水を含有しないセメントコンクリートをドライセメントコンクリート、水を含有するセメントコンクリートをウエットセメントコンクリートという。
【0002】
【従来の技術】
従来、道路や鉄道のトンネル掘削等においては、露出した地山面の崩落を防止するために、急結剤とコンクリートを混合した急結性コンクリートを吹付材料として用いる吹付工法が実施されている。この工法としては、通常、工事現場に設置したコンクリート製造設備で、セメント、骨材、及び水を練混ぜてコンクリートを調製し、アジテータ車で吹付現場まで運搬し、吹付機でコンクリートを空気搬送し、その途中に設けた混合管の一方より空気搬送された急結剤を合流混合し、急結性吹付コンクリートとして吹付けるNATM工法が挙げられる。
【0003】
又、TBM工法による掘削後の後吹きでは、予め水硬性材料と骨材を混合したドライモルタルを連続練混ぜ方式のミキサーポンプにより連続的に水と混合してウエットモルタルを調製、圧送し、液体急結剤と合流混合し、急結性吹付モルタルとして吹付ける工法が実施されている。
【0004】
法面における吹付では、フリーフレーム工法にて吹付けたモルタルのダレを防止するために、水ガラスを主成分とした液体急結剤をコンクリートと合流混合し、急結性吹付コンクリートとして吹付ける工法が実施されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このような従来からの各種吹付工法において、例えば、道路や鉄道のトンネル掘削における吹付工法では一般的に粉体急結剤を使用するため、吹付施工時に発生する粉塵により作業環境が悪化するおそれがある。そこで、粉塵に対する防護を十分にしなければならず、作業性が悪くなるという課題があった。
【0006】
近年、コンクリートの早期劣化が問題となっており、急結性吹付コンクリートに対して凍結融解抵抗性、中性化に対する抵抗性、及び乾燥収縮抵抗性といった耐久性の向上が要求されている。そのため、急結性吹付コンクリートの高品質化を図る必要がある。しかしながら、従来の急結性吹付コンクリートを使用すると、0.1〜3mm程度の比較的大きな空隙の増加により急結性吹付コンクリート中の空隙の割合が急結剤を使用しない吹付コンクリートよりも多くなるので、耐久性が低下するおそれがあるという課題があった。
【0007】
本発明者はこれらの課題を解決するために種々検討した結果、特定の吹付材料を用いることにより課題を解決できる知見を得て本発明を完成するに至った。
【0008】
【課題を解決するための手段】
即ち本発明は、セメント類とブレーン値で2000cm 2 /g以上のカルシウムサルホアルミネート類を含有してなる水硬性材料100質量部、粒径が2.5mm以下の骨材150〜300質量部、濃度が30〜65%である高分子エマルジョン1〜20質量部(固形分換算)、及び水を含有してなるセメントコンクリートを圧送し、圧送途中で、水硬性材料100質量部に対して硫酸アルミニウム0.2〜10質量部(成分換算)を含有してなる液状急結剤を合流混合して急結性セメントコンクリートを調製し、吹付けることを特徴とする吹付工法であり、さらに、微粉を含有してなる該吹付工法であり、さらに、粘性調整剤を含有してなる該吹付工法であり、さらに、繊維を含有してなる該吹付工法であり、微粉の粒度がブレーン値で3000cm2/g以上である該吹付工法であり、セメントコンクリートの水粉体比が30〜70%である該吹付工法であり、水硬性材料が、セメント類100質量部とカルシウムサルホアルミネート類0.5〜8質量部を含有してなることを特徴とする該吹付工法である。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0010】
本発明は、水硬性材料、特定量の骨材、高分子エマルジョン、及び水を練混ぜてセメントコンクリートを調製し、このセメントコンクリートに、急結剤を合流混合することにより急結性セメントコンクリートを調製し、この急結性セメントコンクリートを吹付材料として吹付けるものである。特に高分子エマルジョンにより、流動性、付着性、凍結融解抵抗性、中性化に対する抵抗性、及び乾燥収縮抵抗性が向上し、粉塵、ミスト、及びリバウンドが少なく、初期や長期の強度発現性に優れるという効果を有するものである。
【0011】
本発明で使用する水硬性材料としては、セメント類、セメント類とカルシウムサルホアルミネート類の混合物、並びに、セメント、カルシウムサルホアルミネート類、及びセッコウとの混合物等が挙げられる。これらの中では、初期強度発現性や反応活性に優れる点で、セメント類とカルシウムサルホアルミネート類の混合物が好ましい。
【0012】
セメント類としては、普通、早強、中庸熱、超早強、及び低熱等の各種ポルトランドセメント、これらポルトランドセメントにフライアッシュや高炉スラグ等を混合した各種混合セメント、並びに、微粒子セメント等が挙げられる。
【0013】
本発明で使用するカルシウムサルホアルミネート類としては、遊離石灰と無水石膏を焼結したもの等が挙げられる。カルシウムサルホアルミネート類の代わりにカルシウムアルミネート類を用いてもよい。
【0014】
カルシウムサルホアルミネート類の中では、乾燥収縮抵抗性に優れる点で、C4A3SO3(尚、CはCaOの略、AはAl2O3の略)が好ましい。
【0015】
カルシウムサルホアルミネート類の粒度は、反応性の点で、ブレーン値で2000cm2/g以上が好ましく、3000cm2/g以上がより好ましい。2000cm2/g未満だと反応性が小さく、十分な効果を発揮できないおそれがある。
【0016】
カルシウムサルホアルミネート類の使用量は、セメント類100質量部に対して、0.5〜8質量部が好ましく、2〜7質量部がより好ましい。0.5質量部未満だと初期凝結を促進しにくく、乾燥収縮抵抗性の向上を促しにくいおそれがあり、8質量部を越えるとセメントコンクリートの流動性を阻害するおそれがある。
【0017】
本発明で使用する骨材としては、川砂、山砂、海砂、及び石灰砂等が挙げられる。骨材は吹付現場で水硬性材料や水と練混ぜて使用してもよく、又、乾燥処理を行った骨材を水硬性材料と混合してプレミックスタイプのドライセメントコンクリートとし、このドライセメントコンクリートを現場に輸送してもよい。
【0018】
骨材の粒径は、圧送性等の点で、2.5mm以下が好ましく、1.5mm以下がより好ましい。2.5mmを越えると圧送性が低下し、吹付けた時のリバウンド率が大きくなるおそれがある。
【0019】
骨材の使用量は、水硬性材料100質量部に対して、150〜300質量部であり、180〜270質量部が好ましい。150質量部未満だと乾燥収縮抵抗性が低下するおそれがあり、300質量部を越えると吹付けた時のリバウンド率が大きくなるするおそれがある。
【0020】
本発明で使用する高分子エマルジョンは、高分子化合物が水中に分散安定化した水系エマルジョンであり、通常市販されているものが使用できる。高分子エマルジョンは練り混ぜ時に空気を巻き込んで流動性を大きくし、急結性セメントコンクリート硬化後の保水性を高め、急結性セメントコンクリートの粒子表面を被覆するために、凍結融解抵抗性、中性化に対する抵抗性、及び乾燥収縮抵抗性を向上できる。従って、高分子エマルジョンを添加した急結性セメントコンクリートは耐久性に優れる。
【0021】
高分子エマルジョン中の高分子化合物としては、急結性セメントコンクリート同士の接着性が大きいために耐久性が大きくなる等の点で、スチレン−ブタジエン系共重合体、ポリクロロプレン、ポリウレタン、アクリル酸エステル共重合体、酢酸ビニル系共重合体、及びエチレン−酢酸ビニル系共重合体等が挙げられる。これらの中では、セメント類との混和性が良くなり、セメントコンクリートや急結性セメントコンクリートの各種物性を向上できる点で、スチレン-ブタジエン系共重合体の使用が好ましい。
【0022】
高分子エマルジョンの濃度は、30〜65%が好ましく、40〜55%がより好ましい。30%未満だと流動性や耐久性が向上しないおそれがあり、65%を越えるとエマルジョン自体の安定性が悪く、流動性や耐久性が向上しないおそれがある。
【0023】
高分子エマルジョンの使用量は、水硬性材料100質量部に対して、固形分換算で1〜20質量部が好ましく、3〜15質量部がより好ましい。1質量部未満だと流動性や耐久性が向上しないおそれがあり、20質量部を越えると凝結の開始が遅くなり、長期強度発現性が低下するおそれがある。
【0024】
さらに、本発明では、圧送性と吹付時の付着特性を向上するために、微粉を使用してもよい。
【0025】
微粉の粒度は、圧送性と吹付時の付着特性の向上の点で、ブレーン値で3000cm2/g以上が好ましく、7000cm2/g以上がより好ましい。
【0026】
微粉としては、層状アルミノケイ酸塩類を主成分とするバイデライト、ベントナイト、メタカオリン、カオリナイト、ハロイサイト、モンモリロナイト、パイロフィライト、バーミキュライト、雲母、緑泥石、サポナイト、セピオライト、及び酸性白土等の粘土鉱物、微粉スラグ、微粉フライアッシュ、シリカフューム、及び石灰石粉末等が挙げられる。これらの中では、圧送性、流動性、及び吹付時の付着特性の点で、シリカフューム、石灰石粉末、及び粘土鉱物からなる群から選ばれる1種又は2種以上が好ましく、シリカフュームがより好ましい。
【0027】
微粉の使用量は、水硬性材料100質量部に対して、0.5〜5質量部が好ましく、1〜3質量部がより好ましい。0.5質量部未満だと吹付時の付着特性が向上しないおそれがあり、5質量部を越えると圧送性や流動性が低下するおそれがある。
【0028】
さらに、本発明では、セメントコンクリートに粘性を付与し、吹付時の付着特性を向上する粘性調整剤を使用してもよい。
【0029】
本発明で使用する粘性調整剤としては、親水性を有する高分子化合物が挙げられる。親水性高分子化合物としては、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルエチルセルロース、及びエチルセルロース等のセルロース類、アミロース、寒天、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、プルラン、及びグアガム等の多糖類、これらを骨格とする各種誘導体、ポリビニルアルコール、並びに、ポリエチレンオキサイド等が挙げられる。これらの中では、付着特性に優れ、強度発現性を阻害しにくい点で、セルロース類が好ましく、メチルセルロースがより好ましい。
【0030】
粘性調整剤の使用量は、水硬性材料と必要に応じて使用する微粉の合計100質量部に対して、0.02〜0.3質量部が好ましく、0.08〜0.2質量部がより好ましい。0.02質量部未満だと粘性を付与しにくいおそれがあり、0.3質量部を越えると流動性が低下しすぎて圧送性に支障をきたすおそれがある。
【0031】
さらに、本発明では、吹付により硬化した急結性セメントコンクリートの曲げ特性を向上し、剥離等でモルタルが落下するのを防止するために、繊維を使用してもよい。繊維は主にセメントコンクリート側に予め添加するが、急結剤側に予め添加してもよい。
【0032】
繊維としては、鋼繊維、ガラス繊維、及び高分子繊維等が挙げられる。これらの中では、水硬性材料との分散性が良く、曲げ特性を向上する点で、高分子繊維が好ましい。高分子繊維としては、ビニロン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ポリアクリロニトリル繊維、及びアラミド繊維などが挙げられる。
これらの中では、曲げじん性の点で、ビニロン繊維が好ましい。
【0033】
繊維の繊維長は2〜15mmが好ましく、4〜10mmがより好ましい。2mm未満だと曲げ特性が向上しないおそれがあり、15mmを越えるとセメントコンクリートの圧送性に支障をきたすおそれがある。
【0034】
繊維の使用量は、水硬性材料、骨材、及び必要に応じて使用する微粉と粘性調整剤の合計100質量部に対して0.05〜1質量部が好ましく、0.1〜0.8質量部がより好ましい。0.05質量部未満だと曲げ特性を向上しないおそれがあり、1質量部を越えるとセメントコンクリートの流動性が低下し、圧送性に支障をきたすおそれがある。
【0035】
本発明で使用する急結剤は、硫酸アルミニウムを含有する。急結剤の中では、急結剤中の成分を均一に分散でき、取り扱いが容易な点で、液状急結剤が好ましい。ここで、硫酸アルミニウムを含有する液状急結剤には、水溶液や懸濁液を含む。
【0036】
硫酸アルミニウムとしては、一般に市販されている粉末状の硫酸アルミニウムが挙げられ、無水塩や含水塩いずれも使用できる。
【0037】
液状急結剤中の固形分濃度は、20〜40%が好ましく、25〜35%がより好ましい。20%未満だと初期凝結や初期強度発現性を阻害するおそれがあり、40%を越えると長期強度発現性を阻害し、液状急結剤の粘度が大きくなり、圧送性が低下し、又、液状急結剤中の成分が均一に分散しにくくなり、液状急結剤の取り扱いが難しくなるおそれがある。
【0038】
急結剤の使用量は、水硬性材料100質量部に対して成分換算で、0.2〜10質量部が好ましく、0.5〜8質量部がより好ましい。0.2質量部未満だと初期凝結を促しにくく、強度発現性が小さくなり、吹付時の付着特性が低下し、ダレやリバウンドが多くなるおそれがあり、10質量部を越えると初期凝結が早すぎて配管内に固化物が付着するおそれがあり、長期強度発現性が小さくなるおそれがある。
【0039】
さらに、本発明では、減水剤や凝結遅延剤を併用してもよい。
【0040】
本発明のセメントコンクリートの水粉体比(W/P)は30〜70%が好ましく、35〜65%がより好ましい。30%未満だとセメントコンクリートの粘性が大きく吹付作業性や圧送性が低下するおそれがあり、70%を越えると強度発現性や初期凝結に悪影響を与えるおそれがある。なお、ここでいう水には高分子エマルジョン中の水を考慮するが、液状急結剤中の水を考慮しない。粉体とは、水硬性材料、及び必要に応じて使用する微粉と粘性調整剤の合計をいう。
【0041】
本発明の吹付材料の調製方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。急結剤をプランジャーポンプ等で、内側の壁面に幾つかの孔又は溝を設けた二重管の外側に圧送する。又、二重管の内側にはセメントコンクリートを圧送する。空気と混合してミスト状になった急結剤を、二重管の外側から二重管の孔又は溝を介して二重管の内側に圧送することによりセメントコンクリートと合流混合し、急結性セメントコンクリートとして吹付ける。
【0042】
又、急結剤が液状である場合、その調製方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。まず、粉体急結剤に通常使用している急結剤添加機を用いて空気輸送し、内側の壁面に幾つかの孔又は溝を設けた二重管の内側を通じて、二重管の外側からその孔又は溝を介して水と必要に応じて空気を輸送し、液状急結剤を調製する。調製された液状急結剤は空気と共にミスト状になり、セメントコンクリートと合流混合し、急結性セメントコンクリートとして吹付ける方法が挙げられる。
【0043】
【実施例】
以下、実験例に基づき詳細に説明する。
【0044】
実験例1
表1に示す水硬性材料100質量部と骨材200質量部を混合し、ドライセメントモルタルを調製した。このドライセメントモルタルに、水硬性材料100質量部に対して固形分濃度で表1に示す質量部の高分子エマルジョンと水粉体比45%の水を混合し、ウエットセメントモルタルを調製した。
このウエットセメントモルタルに、硫酸アルミニウムからなり、固形分濃度27%の液状急結剤を水硬性材料100質量部に対して固形分換算で5質量部加え、10秒間練混ぜ、急結性セメントモルタルを調製した。得られた急結剤を含有しないウエットセメントモルタルにつきモルタルフローを、得られた急結性セメントモルタルにつき凝結性状を測定した。結果を表1に示す。
【0045】
(使用材料)
水硬性材料a:普通ポルトランドセメント(比重3.16、市販品)100質量部とカルシウムサルホアルミネート類(主成分C4A3SO3、ブレーン比表面積3500cm2/g)5質量部からなる混合物
水硬性材料b:普通ポルトランドセメント、比重3.16、市販品
水硬性材料c:早強ポルトランドセメント(比重3.14、市販品)100質量部、カルシウムアルミネート類(主成分C12A7、非晶質、ブレーン比表面積5900cm2/g)2質量部、及びセッコウ2質量部からなる混合物
骨材:新潟県青海町産石灰砂、粒径1.5mm以下、比重2.67
高分子エマルジョン:スチレンーブタジエン系共重合体エマルジョン、固形分濃度45%、市販品
硫酸アルミニウム:12水塩、市販品
【0046】
(測定方法)
モルタルフロー:急結剤を含有しないウエットセメントモルタルにつき、JISA 5201に準じて測定した。
凝結性状:20℃の条件下にて、液状急結剤を混合し、10秒間練混ぜて調製した急結性セメントモルタルにつき、素早く型枠に充填してからプロクター貫入抵抗値が3.5N/mm2に達する迄の時間を始発とし、28.0N/mm2に達する迄の時間を終結とした。
【0047】
【表1】
【0048】
実験例2
ドライセメントモルタルに、水硬性材料a100質量部に対して固形分濃度で5質量部の高分子エマルジョン、水硬性材料と骨材の合計100質量部に対して表2に示す質量部の繊維、及び水粉体比45%の水を混合してウエットセメントモルタルを調製し、硫酸アルミニウムからなり、固形分濃度27%の液状急結剤を水硬性材料100質量部に対して固形分換算で5質量部加えて急結性セメントモルタルを調製し、得られた急結剤を含有しないウエットセメントモルタルにつきモルタルフローを、得られた急結性セメントモルタルにつき曲げじん性係数を測定したこと以外は実験例1と同様に行った。結果を表2に示す。
【0049】
(使用材料)
繊維A:ビニロンファイバー、繊維長6mm、市販品
繊維B:ポリプロピレンファイバー、繊維長6mm、市販品
【0050】
(測定方法)
曲げじん性係数:急結性セメントモルタルにつき、JSCE−G 552に準じて測定した。測定材齢は28日である。
【0051】
【表2】
【0052】
実験例3
ドライセメントモルタルに、水硬性材料a100質量部に対して固形分濃度で5質量部の高分子エマルジョンと表3に示す質量部の粘性調整剤、並びに、水硬性材料、骨材、及び粘性調整剤の合計100質量部に対して0.5質量部の繊維A、並びに、水粉体比45%の水を混合してウエットセメントモルタルを調製し、得られた急結剤を含有しないウエットセメントモルタルにつきモルタルフローを測定したこと以外は実験例1と同様に行った。結果を表3に示す。
【0053】
(使用材料)
粘性調整剤:メチルセルロース、市販品
【0054】
【表3】
【0055】
実験例4
ドライセメントモルタルに、水硬性材料a100質量部に対して固形分濃度で5質量部の高分子エマルジョン、表4に示す質量部の微粉、水硬性材料と微粉の合計100質量部に対して0.1質量部の粘性調整剤、並びに、水硬性材料、骨材、粘性調整剤、及び微粉の合計100質量部に対して0.5質量部の繊維A、並びに水粉体比45%の水を混合してウエットセメントモルタルを調製し、得られた急結剤を含有しないウエットセメントモルタルにつきモルタルフローを測定したこと以外は実験例1と同様に行った。結果を表4に示す。
【0056】
(使用材料)
微粉:シリカフューム、比表面積7000cm2/g以上、市販品
【0057】
【表4】
【0058】
実験例5
ドライセメントモルタルに、水硬性材料a100質量部に対して固形分濃度で5質量部の高分子エマルジョン、2質量部の微粉、水硬性材料と微粉の合計100質量部に対して0.1質量部の粘性調整剤、並びに、水硬性材料、骨材、粘性調整剤、及び微粉の合計100質量部に対して0.5質量部の繊維A、並びに水粉体比45%の水を混合してウエットセメントモルタルを調製し、硫酸アルミニウムからなり、固形分濃度27%の液状急結剤を水硬性材料100質量部に対して固形分換算で表5に示す質量部加えて急結性セメントモルタルを調製し、得られた急結性セメントモルタルにつき凝結性状と角柱圧縮強度を測定したこと以外は実験例1と同様に行った。結果を表5に示す。
【0059】
(測定方法)
角柱圧縮強度:予め全ての材料温度を5℃に冷却した後に調製して得られた急結性セメントモルタルを素早く4cm×4cm×16cmの型枠に振動させながら詰め、所定材齢まで20℃で養生した。尚、養生は温度20℃、湿度60%の気中養生を行い、圧縮強度の測定はJIS R 5201に準じた。
【0060】
【表5】
【0061】
実験例6
ドライセメントモルタルに、水硬性材料a100質量部に対して固形分濃度で5質量部の高分子エマルジョン、2質量部の微粉、水硬性材料と微粉の合計100質量部に対して0.1質量部の粘性調整剤、並びに、水硬性材料、骨材、粘性調整剤、及び微粉の合計100質量部に対して0.5質量部の繊維A、並びに水粉体比45%の水を混合してウエットセメントモルタルを調製し、硫酸アルミニウムからなり、表6に示す固形分濃度の液状急結剤を水硬性材料100質量部に対して固形分換算で5質量部加えて急結性セメントモルタルを調製し、得られた急結性セメントモルタルにつき凝結性状と角柱圧縮強度を測定したこと以外は実験例1と同様に行った。結果を表6に示す。
【0062】
【表6】
【0063】
実験例7
水硬性材料a100質量部、骨材200質量部、微粉2質量部、水硬性材料と微粉の合計100質量部に対して0.1質量部の粘性調整剤、並びに、水硬性材料、骨材、粘性調整剤、及び微粉の合計100質量部に対して表7に示す質量部の繊維Aからなるドライセメントモルタルを調製した。このドライセメントモルタルをパン型ミキサーに投入し、水硬性材料a100質量部に対して固形分換算で5質量部の高分子エマルジョンと水粉体比45%の水を混合し、5分間練り混ぜ、ウエットセメントモルタルを調製した。次に、このウエットセメントモルタルをホッパーに落とし、スクイズポンプを用い、内径50mmの配管10mを介して圧送した。このときの吐出能力は1.9m3/hrであった。得られた急結剤を含有しないウエットセメントモルタルにつきモルタル圧送性を測定した。結果を表7に示す。
なお、実験例8以降において、硫酸アルミニウムからなり、固形分濃度27%の液状急結剤を水硬性材料100質量部に対して固形分換算で5質量部、ノズル手前でウエットセメントモルタルと合流混合して急結性セメントモルタルを調製し、ノズルから吹付けるようにした。
【0064】
(測定方法)
モルタル圧送性:急結剤を含有しないウェットセメントモルタルを圧送後、連続的にモルタルがホース先端より吐出する場合を○、吐出はできるが、不連続な吐出が少し認められる場合を△、不連続な吐出が多く、かつ、圧送抵抗がかかりホースが脈動する場合を×とした。
【0065】
【表7】
【0066】
実験例8
水硬性材料a100質量部、骨材200質量部、微粉2質量部、水硬性材料と微粉の合計100質量部に対して表8に示す質量部の粘性調整剤、並びに、水硬性材料、骨材、粘性調整剤、及び微粉の合計100質量部に対して0.5質量部の繊維Aからなるドライセメントモルタルを調製し、水硬性材料a100質量部に対して固形分換算で5質量部の高分子エマルジョンと水粉体比45%の水を混合してウエットセメントモルタルを調製し、硫酸アルミニウムからなり、固形分濃度27%の液状急結剤を水硬性材料100質量部に対して固形分換算で5質量部加えて急結性セメントモルタルを調製し、得られた急結剤を含有しないウエットセメントモルタルにつきモルタル圧送性を、得られた急結性セメントモルタルにつき付着特性を測定したこと以外は、実験例7と同様に行った。結果を表8に示す。
【0067】
(測定方法)
付着特性:ノズルを固定して高さ4m×幅4m×長さ5mの模擬トンネルの側壁に急結性セメントモルタルを15秒間吹付け、吹付面たる側壁から付着した急結性セメントモルタルの頂点までの距離を測定し、付着特性とした。
【0068】
【表8】
【0069】
実験例9
水硬性材料a100質量部、骨材200質量部、表9に示す質量部の微粉、水硬性材料と微粉の合計100質量部に対して0.1質量部の粘性調整剤、並びに、水硬性材料、骨材、粘性調整剤、及び微粉の合計100質量部に対して0.5質量部の繊維Aからなるドライセメントモルタルを調製し、水硬性材料a100質量部に対して固形分換算で5質量部の高分子エマルジョンと水粉体比45%の水を混合してウエットセメントモルタルを調製し、硫酸アルミニウムからなり、固形分濃度27%の液状急結剤を水硬性材料100質量部に対して固形分換算で5質量部加えて急結性セメントモルタルを調製し、得られた急結剤を含有しないウエットセメントモルタルにつきモルタル圧送性を、得られた急結性セメントモルタルにつき付着特性を測定したこと以外は、実験例7と同様に行った。結果を表9に示す。
【0070】
【表9】
【0071】
実験例10
水硬性材料a100質量部、骨材200質量部、微粉2質量部、水硬性材料と微粉の合計100質量部に対して0.1質量部の粘性調整剤、並びに、水硬性材料、骨材、粘性調整剤、及び微粉の合計100質量部に対して0.5質量部の繊維Aからなるドライセメントモルタルを調製し、水硬性材料a100質量部に対して固形分換算で5質量部の高分子エマルジョンと水粉体比45%の水を混合してウエットセメントモルタルを調製し、硫酸アルミニウムからなり、固形分濃度27%の液状急結剤を水硬性材料100質量部に対して固形分換算で表10に示す質量部加えて急結性セメントモルタルを調製し、得られた急結性セメントモルタルにつきダレ、リバウンド率、付着強度、及びノズルの閉塞状況を測定したこと以外は、実験例7と同様に行った。結果を表10に示す。
【0072】
(測定方法)
ダレ:急結性セメントモルタルを2m3/hの圧送速度で2分間、鉄板でアーチ状に製作した高さ3.5m×幅2.5mの模擬トンネルに吹付けた後の状態を観察した。ダレが生じなかったものを○とし、ダレが少し生じたものを△とし、ダレが多く生じたものを×とした。
リバウンド率:急結性セメントモルタルを2m3/hの圧送速度で2分間、鉄板でアーチ状に製作した高さ3.5m×幅2.5mの模擬トンネルに吹付けた。その後、(リバウンド率)=(模擬トンネルに付着せずに落下した急結性セメントモルタルの質量)/(模擬トンネルに吹付けた急結性セメントモルタルの質量)×100(%)で算出した。
付着強度:付着特性を付着強度でも示した。縦30cm×横30cm×厚さ6cmの表面をチッピングしたコンクリート板に厚さ4〜6cmになるように急結性セメントモルタルを吹付け、直ぐにその表面をキャッピングした。その後、温度20℃、湿度60%の条件下で28日間気中養生し、4cm×4cmになるように表面から碁盤目状にコンクリートカッターで切断し、建研式により付着強度を測定した。
ノズルの閉塞状況:急結性セメントモルタルをノズルから4分間吹付けた後、ノズル内部を観察し、内部断面の30%以上が閉塞した場合を×、内部断面の10〜30%が閉塞した場合を△、内部断面の10%未満が閉塞した場合を○とした。
【表10】
【0073】
実験例11
水硬性材料a100質量部、骨材200質量部、微粉2質量部、水硬性材料と微粉の合計100質量部に対して0.1質量部の粘性調整剤、並びに、水硬性材料、骨材、粘性調整剤、及び微粉の合計100質量部に対して0.5質量部の繊維Aからなるドライセメントモルタルを調製し、水硬性材料a100質量部に対して固形分換算で5質量部の高分子エマルジョンと水粉体比45%の水を混合してウエットセメントモルタルを調製し、硫酸アルミニウムからなり、表11に示す固形分濃度の液状急結剤を水硬性材料100質量部に対して固形分換算で5質量部加えて急結性セメントモルタルを調製し、得られた急結性セメントモルタルにつき急結性モルタル圧送性を測定したこと以外は、実験例7と同様に行った。結果を表11に示す。
【0074】
(測定方法)
急結性モルタル混和性:急結性セメントモルタルを2m3/hの圧送速度で2分間、鉄板でアーチ状に製作した高さ3.5m×幅2.5mの模擬トンネルに吹付けた。急結性セメントモルタルの吹付面を指触し、硬化してる部分と硬化していない部分がある場合を×、硬化しているが硬さにばらつきがある場合を△、均一な硬さで硬化している場合を○とした。
【0075】
【表11】
【0076】
実験例12
水硬性材料a100質量部、骨材200質量部、微粉2質量部、水硬性材料と微粉の合計100質量部に対して0.1質量部の粘性調整剤、並びに、水硬性材料、骨材、粘性調整剤、及び微粉の合計100質量部に対して0.5質量部の繊維Aからなるドライセメントモルタルを調製し、水硬性材料a100質量部に対して固形分換算で表12に示す質量部の高分子エマルジョンと水粉体比45%の水を混合してウエットセメントモルタルを調製し、硫酸アルミニウムからなり、固形分濃度27%の液状急結剤を水硬性材料100質量部に対して固形分換算で5質量部加えて急結性セメントモルタルを調製し、得られた急結性セメントモルタルにつきサイクル数、中性化深さ、長さ変化、及び円柱圧縮強度を測定したこと以外は、実験例7と同様に行った。結果を表12に示す。
【0077】
(測定方法)
サイクル数:耐凍結融解抵抗性につき、サイクル数で評価した。得られた急結性セメントモルタルを縦50cm×横50cm×厚さ20cmの箱型枠に吹付けた後、縦40cm×横10cm×厚さ10cmの角柱を切断して取り出し、供試体とした。この供試体を用いて凍結融解試験をJSCE−G 501に準じて測定した。相対動弾性係数を15サイクル毎に評価し、相対動弾性係数が60%以下を示したサイクル数を測定した。
中性化深さ:中性化に対する抵抗性につき、中性化深さで評価した。得られた急結性セメントモルタルを縦50cm×横50cm×厚さ20cmの箱型枠に吹付けた後、直径5cm×高さ10cmの円柱を切断して取り出し、供試体とした。この供試体を用いて促進中性化試験を行った。供試体を、温度20℃、湿度60%の条件下で、28日間気中養生後、供試体の上面と下面をエポキシ樹脂でシールし、温度30℃、湿度60%、二酸化炭素濃度5%の条件下の促進中性化装置に貯蔵し、所定材齢における中性化深さを測定した。
長さ変化:乾燥収縮抵抗性につき、長さ変化で評価した。得られた急結性セメントモルタルを縦4cm×横4cm×厚さ16cmの三連型枠に吹付け、脱型したものを供試体とした。この供試体を用いて長さ変化試験を行った。供試体を、温度20℃、湿度60%の条件下で気中養生し、JIS A 1129、ダイヤルゲージ方法に準じて、所定材齢における長さ変化を測定した。
円柱圧縮強度:得られた急結性セメントモルタルを縦50cm×横50cm×厚さ20cmの箱型枠に吹付けた後、直径5cm×高さ10cmの円柱を切断して取り出し、供試体とした。この供試体を用い、圧縮強度試験ををJIS A 1108に準じて測定した。
【0078】
【表12】
【0079】
実験例13
水硬性材料a100質量部、表13に示す質量部の骨材、微粉2質量部、水硬性材料と微粉の合計100質量部に対して0.1質量部の粘性調整剤、並びに、水硬性材料、骨材、粘性調整剤、及び微粉の合計100質量部に対して0.5質量部の繊維Aからなるドライセメントモルタルを調製し、水硬性材料a100質量部に対して固形分換算で5質量部の高分子エマルジョンと水粉体比45%の水を混合してウエットセメントモルタルを調製し、硫酸アルミニウムからなり、固形分濃度27%の液状急結剤を水硬性材料100質量部に対して固形分換算で5質量部加えて急結性セメントモルタルを調製し、得られた急結性セメントモルタルにつき長さ変化とリバウンド率を測定したこと以外は、実験例7と同様に行った。結果を表13に示す。
【0080】
【表13】
【0081】
【発明の効果】
本発明の吹付材料を用いることにより、耐久性に優れた吹付構造物が得られる。特に、液状急結剤を使用すると粉塵、ミスト、及びリバウンドも少なく、長期強度も向上できる。
又、劣化が進行した表面部を削りとった後、本発明のセメントモルタルを吹付けてコンクリート構造物の補修した場合、補修箇所に10cm以上の厚吹きができる。従って、鉄筋の裏側までセメントコンクリートを深くはつり取る場合の補修にも使用できる。
Claims (7)
- セメント類とブレーン値で2000cm 2 /g以上のカルシウムサルホアルミネート類を含有してなる水硬性材料100質量部、粒径が2.5mm以下の骨材150〜300質量部、濃度が30〜65%である高分子エマルジョン1〜20質量部(固形分換算)、及び水を含有してなるセメントコンクリートを圧送し、圧送途中で、水硬性材料100質量部に対して硫酸アルミニウム0.2〜10質量部(成分換算)を含有してなる液状急結剤を合流混合して急結性セメントコンクリートを調製し、吹付けることを特徴とする吹付工法。
- さらに、微粉を含有してなる請求項1記載の吹付工法。
- さらに、粘性調整剤を含有してなる請求項1又は2記載の吹付工法。
- さらに、繊維を含有してなる請求項1〜3のうちの1項記載の吹付工法。
- 微粉の粒度がブレーン値で3000cm2/g以上である請求項2記載の吹付工法。
- セメントコンクリートの水粉体比が30〜70%である請求項1〜5のうちの1項記載の吹付工法。
- 水硬性材料が、セメント類100質量部とカルシウムサルホアルミネート類0.5〜8質量部を含有してなることを特徴とする請求項1〜6のうちの1項記載の吹付工法。
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