以下、本発明の弾性表面波装置を添付の図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は本発明の弾性表面波装置の実施の形態の一例を模式的に示す外観斜視図であり、図2は図1に示す弾性表面波装置の模式的な縦断面図であり、図3は図1に示す弾性表面波装置を構成する弾性表面波素子の下面を模式的に示す平面図であり、図4は図1に示す弾性表面波装置を構成する実装用基体の上面を模式的に示す平面図であり、図5は図2のA―A’位置における模式的な水平断面図である。
本例の弾性表面波装置1は、四角形状の圧電基板11の下面にIDT電極21と、IDT電極21に接続されたパッド電極22と、IDT電極21およびパッド電極22を囲繞する環状電極23とが形成された弾性表面波素子30を、上面にパッド電極22に対応する基体側パッド電極42と、環状電極23に対応する基体側環状電極43とが形成された実装用基体51に、圧電基板11の下面を実装用基体51の上面に対面させて搭載し、パッド電極22を基体側パッド電極42に、および環状電極23を基体側環状電極43にそれぞれ半田70を用いて接合した弾性表面波装置であって、圧電基板11の四隅の環状電極23の外側に、それぞれ圧電基板11の下面と実装用基体51の上面とに接合された支持部材61が配置されているものである。
なお、説明を容易にするために、以下ではパッド電極22と基体側パッド電極42とを接合する半田70を接続半田72とし、環状電極23と基体側環状電極43とを接合する半田70を環状半田73とする。
また、IDT電極21の弾性表面波の伝搬方向における両側には一対の反射器電極24が形成されており、圧電基板11とIDT電極21と一対の反射器電極24とによって特定の周波数で共振する一端子対の弾性表面波共振器が構成されている。
さらに、実装用基体51の下面には外部との機械的および電気的接続に供される端子電極44が形成されており、基体側パッド電極42と端子電極44とは内部配線81によって接続されている。
そして、環状半田73が環状電極23と基体側環状電極43とを接続することにより、圧電基板11の下面と実装用基体51の上面と環状半田73とによって囲まれた封止空間91が形成され、IDT電極21,パッド電極22,反射器電極24,基体側パッド電極42および接続半田72が封止空間91内に封入されている。
本発明の弾性表面波装置1によれば、弾性表面波装置1の平面形状を弾性表面波素子30の平面形状と実質的に同一にすることができるので、非常に小型化された弾性表面波装置1を得ることができる。
また、本発明の弾性表面波装置1によれば、弾性表面波素子30が圧電基板11の四隅に配された支持部材61によって実装用基体51に固定されているので、弾性表面波装置1を実装基板に搭載するためのリフロー処理を施した際に半田70が再溶融しても、弾性表面波素子30が実装用基体51に対してずれてしまうという不具合の発生を抑制することができる。
なお、リフロー処理を施した際に半田70が再溶融して弾性表面波素子30が実装用基体51に対してずれてしまうという不具合を解決するためには、半田70として高融点の半田を使用する方法も考えられる。しかし、高融点の半田は一般的に硬いため、熱膨張係数が異なる弾性表面波素子30と実装用基体51とを広範囲に渡って接合する環状半田73に高融点の半田を使用した場合には、環状半田73と環状電極23および基体側環状電極43との接合面にクラックが生じやすいという問題点がある。また、AuZn合金等の高融点の半田は非常に高価であるという問題点もあり、実際に半田70として高融点の半田を使用するのは困難である。本発明の弾性表面波装置1によれば、半田70としてこのような問題点のない低融点の半田を使用したままで、リフロー処理した際に弾性表面波素子30が実装用基体51に対してずれてしまうという不具合の発生が抑制されるので、実用上非常に有効である。
さらに、本発明の弾性表面波装置1によれば、環状電極23と基体側環状電極43とを接合して封止空間91を形成する環状半田73の外周が、四隅の支持部材61が配置された部分を除いて外部に露出した状態となっているので、リフロー処理時に再溶融して膨張した環状半田73は、封止空間91内に存在する気体の熱膨張時の圧力によって外側へ膨らむことになる。よって、環状半田73が封止空間91内部へ流入してIDT電極21などに付着して電気的短絡などの不具合を引き起こすという問題の発生を抑制することができる。
またさらに、本例の弾性表面波装置1によれば、環状半田73の外周が四隅の支持部材61が配置された部分を除いて外部に露出した状態となっているので、仮に環状半田73とその四隅の外側に配置されている支持部材61との間に水分が侵入したとしても、その水分はリフロー処理時の熱によって気化した際に支持部材61の横の部分から放出されることとなるので、環状半田73を支持部材61が配置された部分で内側に圧迫して封止空間91に流入させるようなことはない。よって、環状半田73が封止空間91の内部に流入してIDT電極21などに付着して電気的短絡などの不具合を引き起こすという問題の発生を抑制することができる。
故に、本発明の弾性表面波装置1によれば、リフロー処理における問題の発生が抑制された信頼性に優れた弾性表面波装置1を得ることができる。
本発明の弾性表面波装置において、圧電基板11は、例えば、水晶,タンタル酸リチウム単結晶,ニオブ酸リチウム単結晶,四ホウ酸リチウム単結晶等の圧電性の単結晶、あるいはチタン酸鉛,ジルコン酸鉛等の圧電セラミックスから成り、IDT電極21等の各種電極を支持する支持体として機能するとともに、IDT電極21を介して圧電基板11に電気信号が印加されると、所定の弾性表面波を発生させる作用を為す。なお、圧電基板11の厚みは0.1〜0.5mm程度がよく、0.1mm未満では機械的強度が不足して脆くなり、0.5mmを超えると弾性表面波装置1の薄型化の障害となり材料コストも大きくなるので好ましくない。
圧電基板11が圧電単結晶から成る場合は、圧電単結晶材料のインゴット(母材)を所定の結晶方向となるように切断および研磨し、タンタル酸リチウム単結晶およびニオブ酸リチウム単結晶などの強誘電体単結晶の場合は電界下徐冷法などによって単一分域化処理することにより、所望の圧電特性を有した圧電基板11を得ることができる。
圧電基板11が圧電セラミックスから成る場合は、原料粉末にバインダを加えてプレスする方法、あるいは原料粉末を水や分散剤と共にボールミルを用いて混合した後に乾燥し、バインダ,溶剤,可塑剤等を加えてドクターブレード法により成型する方法などによってシート状と成し、それを必要に応じて積層しプレスした後に、800℃〜1400℃のピーク温度で0.5〜8時間焼成し、例えば、厚み方向に80〜200℃の温度にて3〜6kV/mmの電圧をかけて分極処理を施すことによって所望の圧電特性を有した圧電基板11を得ることができる。
IDT電極21は、弾性表面波の伝搬方向に沿って配設した複数の電極指の一端がバスバー電極で接続されて成る一対の櫛歯状電極が、それぞれの櫛歯状電極の電極指が弾性表面波の伝搬方向に交互に配置されるようにかみ合わせた状態で対向配置されて構成されている。そして、所定の電気信号が印加されると圧電基板11の表面に電極指の配列ピッチに対応した弾性表面波を発生させる作用を為す。
反射器電極24は、弾性表面波の伝搬方向に沿ってIDT電極21の電極指とほぼ同じピッチで等間隔に配設した複数の反射電極の両端を、共通電極で接続して構成されている。そして、IDT電極21の形成領域で発生する弾性表面波を反射して、一対の反射器電極24の間に閉じ込める作用を為す。このような一対の反射器電極24とその間に配置されたIDT電極21とによって、一端子対の弾性表面波共振器が構成されている。
パッド電極22は、弾性表面波素子30と実装用基体51とを電気的に接続する接続半田72が接合される部分でありIDT電極21と接続されている。そして、IDT電極21と実装用半田72とを電気的に接続する作用を為す。
環状電極23は、IDT電極21とパッド電極22と反射器電極24とを囲繞するようにリング状に形成されており、環状半田73によって基体側環状電極43と接続されることにより圧電基板11の下面と実装用基体51の上面との間に封止空間91を形成する作用を為す。
なお、上記IDT電極21,パッド電極22,環状電極23および反射器電極24等の素子側電極20は、例えば、AlやAlを主成分とする合金等の金属材料から成り、例えば、蒸着やスパッタリングによって圧電基板11の表面に形成した電極膜上にレジストをスピンコートし、ステッパー装置などを用いて露光・現像した後に、RIE(Reactive Ion Etching)装置などを用いてエッチングすることによって形成される。耐電力性の向上を目的としてAl合金等とCr等の金属とを交互に積層した構造とする場合もある。IDT電極21および反射器電極22の厚みは0.1〜1μm程度であり、使用する圧電基板や所望する周波数特性および温度特性に応じて決定される。パッド電極22および環状電極23については、半田との接合性を向上させるために上面をCr,Ni,Au等で被覆するとよく、厚みも他の電極よりも厚い方が望ましい。また、IDT電極21に金属性異物などが付着して電気的短絡が発生することを防止するために、実装用基体51との接続に供されるパッド電極22および環状電極23を除いてSiO2等の絶縁性もしくは半導電性の膜によって被覆するとよい。
実装用基体51は、例えば、ガラスーセラミックスやアルミナ等のセラミック材料やエポキシ樹脂等の樹脂材料から成る単層あるいは多層の基板であり、圧電基板11および環状半田73と共に封止空間91を形成する機能に加えて圧電基板11を保護する機能を有する。なお、実装用基体51の厚みは0.1〜0.5mm程度がよく、0.1mm未満では機械的強度が不足して圧電基板11を保護する機能が低下し、0.5mmを超えると弾性表面波装置1の薄型化の障害となり材料コストも大きくなるので好ましくない。なお、弾性表面波装置1の平面形状を圧電基板11の平面形状と実質的に同一として非常に小型化された弾性表面波装置1を得るために、実装用基体51の平面形状を圧電基板11と同じ四角形状と成し、圧電基板11の4つの側面と実装用基体51の4つの側面とがそれぞれ同一面を成すようにすることが望ましい。
実装用基体51がセラミック材料から成る場合は、例えば、原料粉末にバインダを加えてプレスする方法、あるいは原料粉末を水や分散剤と共にボールミルを用いて混合した後に乾燥し、バインダ,溶剤,可塑剤等を加えてドクターブレード法により成型する方法などによってシート状と成し、それを必要に応じて積層しプレスした後に、800℃〜1400℃のピーク温度で0.5〜8時間焼成することによって形成できる。また、実装用基体51の上面には基体側パッド電極42および基体側環状電極43が、下面には端子電極44がそれぞれ形成されており、基体側パッド電極42と端子電極44とは内部配線81によって接続されている。
基体側パッド電極42は、弾性表面波素子30と実装用基体51とを電気的に接続する接続半田72が接合される部分であり、内部配線81によって端子電極44と接続されている。
基体側環状電極43は、基体側パッド電極42を囲繞するようにリング状に形成されており、環状半田73によって環状電極23と接合されることにより圧電基板11の下面と実装用基体51の上面との間に封止空間91を形成する作用を為す。
端子電極44は、実装用基体51の下面に複数個形成されており、弾性表面波装置1を実装基板等に機械的に接合し電気的に接続する作用を為す。また、内部配線81によって基体側パッド電極42と接続されている。
なお、上記の基体側パッド電極42,基体側環状電極43および端子電極44等の基体側電極40は、Ag,Cu等の良導電性の金属膜から成り、例えば、Ag,Cu等から成る導電ペーストを従来周知のスクリーン印刷法やローラー転写などを用いて塗布し500〜900℃程度で焼成することにより形成できる。また、基体側電極40の表面にNi,Sn,Auなど半田との接合性の高い金属膜をメッキ等によって形成すると、基体側電極40と半田との接合性を良好なものとすることができる。
内部配線81は実装用基体51の上面に形成された基体側パッド電極42と実装用基体51の下面に形成された端子電極44とを電気的に接続する作用を為し、例えば、実装用基体51にドリルやレーザー等によって形成した孔にAg,Cu等の導電性ペーストを充填して500〜900℃程度で焼成することにより形成される。
半田70は弾性表面波素子30を実装用基体51に接続および固定する機能を有し、接続半田72はパッド電極22と基体側パッド電極42とを電気的に接続する作用を為し、環状半田73は環状電極23と基体側環状電極43とを接合して圧電基板11の下面と実装用基体51の上面との間に封止空間91を形成する作用を為す。本発明の弾性表面波装置においては、弾性表面波装置1を実装基板等に実装するためにリフロー処理を行う際に半田70が再溶融しても問題が発生しないため、高融点の半田ではなく通常の半田を半田70として使用できる。
支持部材61は、圧電基板11の下面と実装用基体51の上面とに接合されることによって弾性表面波素子30を実装用基体51に固定し、弾性表面波装置1を実装基板等に実装するためのリフロー処理時に半田70の再溶融によって弾性表面波素子30と実装用基体51との間にずれが生じるのを防止する作用を為す。このため支持部材61はリフロー処理時に軟化しないことが必要であり、熱硬化性樹脂などの耐熱性を有する樹脂等が使用される。例えば、エポキシ樹脂やポリイミド樹脂などが好適に使用できる。
支持部材61の厚みは環状電極23,環状半田73および基体側環状電極43の厚みを足し合わせたものとなり、例えば、およそ10〜100μm程度とされる。支持部材61の平面形状は、三角形や四角形等の多角形や円形および楕円形など任意の形状としてよいが、弾性表面波装置1の小型化の観点から環状半田73の外周と圧電基板11の外周との間に収まる形状が望ましい。この場合、図1および図5に示すように、支持部材61の外側の側面が圧電基板11の側面と同一面を成し、且つ支持部材61の環状半田73側の側面が環状半田73と接するようにすることにより、弾性表面波装置1の大型化を防止しつつ支持部材61の水平断面積を最大限に確保して支持部材61の機械的強度を高めることができる。
このような支持部材61は、例えば熱硬化性樹脂を用いる場合であれば、接続半田72および環状半田73によって弾性表面波素子30と実装用基体51とを接合した後に、環状半田73の外側の圧電基板11と実装用基体51との間の間隙に充填されるように液状の熱硬化性樹脂を真空印刷機などを用いて塗布し、高温槽などに投入して加熱し硬化させることにより形成することができる。この場合、熱硬化性樹脂の硬化温度が半田70の溶融温度より高いと熱硬化性樹脂の硬化時に半田70が再溶融してしまうので、熱硬化性樹脂の硬化温度が半田70の溶融温度より低いことが望ましい。また、硬化した熱硬化性樹脂の圧電基板11の外周からはみ出た部分をダイシングソー等を用いて切断して取り除くことにより、支持部材61の2つの側面が圧電基板11の2つの側面とそれぞれ同一面を成すようにすることができる。
次に、本発明の弾性表面波装置の具体例について図6を用いて説明する。図6(a)〜(e)は本発明の弾性表面波装置の実施の形態の一例の製造方法を説明するための工程毎の模式的な断面図である。
まず、分割されて圧電基板11となる圧電母基板としてタンタル酸リチウム(LiTaO3)を用い、その主面上に厚みが6nmのTi薄膜を形成し、その上に厚みが130nmのAl−Cu薄膜を形成し、これを交互に各3層ずつ積層し、合計6層のTi/Al−Cu積層膜を形成した。
次に、レジスト塗布装置を用いてフォトレジストを約0.5μmの厚みに塗布した。
次に、縮小投影露光装置(ステッパー)を用いてフォトレジストを露光し、現像装置を用いて不要部分のフォトレジストをアルカリ現像液で溶解させて図3に示す弾性表面波素子30における各種素子側電極20と同形状のレジストパターンを形成した。
次に、RIE装置を用いてレジスト非形成部のTi/Al−Cu積層膜をエッチングすることによって、図3に示す弾性表面波素子30における各種素子側電極20となるように電極パターンを形成し、その後電極パターン上のレジストを除去した。
次に、CVD(Chemical Vapor Deposition)装置を用いて電極パターンおよび圧電母基板の主面上に保護膜となるSiO2膜を約0.02μmの厚みに形成した。
次に、SiO2膜上にフォトレジストを塗布し、露光および現像してパッド電極22および環状電極23上が開口するようなレジストパターンを形成し、RIE装置を用いてパッド電極22および環状電極23上に位置するSiO2膜をエッチングして除去した。
次に、スパッタリング装置を使用して全面にCr,Ni,Auよりなる導体膜を成膜した。このときの電極膜厚は約1μmとした。
次に、レジストおよびレジスト上に形成されたCr,Ni,Auよりなる導体膜をリフトオフ法により同時に除去し、パッド電極22および環状電極23を完成させた。
次に、ダイシングソーを用いて圧電母基板にダイシング加工を施し、各弾性表面波素子のチップごとに分割して複数の弾性表面波素子30を得た。
次に、分割されて実装用基体51となる、上下面に各種基体側電極40および内部に内部配線81がそれぞれ形成されたセラミック基板53を用意した。セラミック基板53はガラスセラミックから成る低温焼成基板とした(図6(a)を参照のこと。)。
次に、セラミック基板53上面の基体側パッド電極42および基体側環状電極43上に半田をスクリーン印刷法にて塗布した後に加熱溶融してハンダバンプ75を形成した。なお、半田にはSn−Pb半田を使用した(図6(b)を参照のこと。)。
次に、フリップチップ実装装置を用いて上記工程にて作製した複数の弾性表面波素子30を素子側電極20の形成面を下にしてセラミック基板53上に載置し、半田バンプ75が溶融しない程度に加熱した上で各弾性表面波素子30に上から圧力と超音波振動を与えて環状電極23と半田バンプ75とを超音波融着して仮固定した。
次に、複数の弾性表面波素子30が仮固定されたセラミック基板53をチャンバー内に投入し、N2雰囲気中で加熱して半田バンプ75を溶融することにより、複数の弾性表面波素子30とセラミック基板53とを接合した。これによりパッド電極22と基体側パッド電極42とが接続半田72によって電気的に接続されると共に、環状電極23と基体側環状電極43とが環状半田73によって接合されて弾性表面波素子30とセラミック基板53との間に封止空間91が形成された(図6(c)を参照のこと。)。
次に、真空印刷機を用いて複数の弾性表面波素子30が上面に接合されたセラミック基板53に上からエポキシ樹脂ペーストを塗布し、高温槽に投入して加熱し硬化させた。このとき、真空印刷機を使用することにより、弾性表面波素子30とセラミック基板53との間の僅かな間隙にもエポキシ樹脂63を充填することができる(図6(d)を参照のこと。)。
次に、複数の弾性表面波素子30が接合され、それらの間にはエポキシ樹脂63が充填されたセラミック基板53にダイシングソーを用いてダイシング加工を施し、個片に分割して複数の弾性表面波装置1を得た。このとき、環状半田73の外周の一部および弾性表面波素子30の外周をある程度削り取るようにダイシング加工を施すことによって、弾性表面波装置1の四隅における弾性波素子30と実装用基体51との間にエポキシ樹脂63からなる支持部材61が形成された本発明の弾性表面波素子1を得ることができる(図6(e)を参照のこと。)。
以上によって作成した本発明の弾性表面波素子1にリフロー処理を施し、半田70を再溶融させて問題の発生の有無を確認したが、弾性表面波素子30の実装用基体51に対するずれの発生はなく、また、環状半田73の封止空間91内への流入も全く見られなかった。これによって、本発明の有効性を確認できた。
なお、本発明は上述した実施の形態の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更および改良が可能である。
例えば、上述した実施の形態の例においては、支持部材61の内側が環状半田73に接するようにされていたが、図7に示すように、実装用基体51の四隅の環状半田73の外側に支持部材61を環状半田73から間隔をあけて配置するようにしても構わない。図7は本発明の弾性表面波装置の実施の形態の他の例における半田70および支持部材61の部分の模式的な水平断面図である。この場合、支持部材61の平面形状は、三角形や四角形等の多角形や円形および楕円形など任意の形状としてもよいが、弾性表面波装置1の小型化の観点からは環状半田73の外周と実装用基体51の外周との間に収まる形状が望ましい。図7に示すように支持部材61を環状半田73から間隔をあけて配置することにより、環状半田73の外周が全て外部に露出した状態となるので、前述したリフロー処理時に再溶融した環状半田73が封止空間91内に流入するという問題をより確実に抑制することができる。
なお、支持部材61を図7に示すような形状に形成するためには、例えば、図6(b)に示す工程の後に、ガラス繊維やアラミド繊維などからなる布にポリイミド樹脂やエポキシ樹脂を含浸させた一般的にプリプレグと称される樹脂シート材を図7に示すような形状に切断加工してセラミック基板53の上面の基体側環状電極43の四隅に位置するように貼り付け、半田バンプ75および樹脂シート材の上に弾性表面波素子30を載置した後に加圧および加熱し、半田バンプ75を溶融させて弾性表面波素子30とセラミック基板53とを接合した後に温度を180℃〜200℃程度まで下げて40分〜90分程度保持して樹脂シート材を硬化させ、その後ダイシングソーなどを用いて各弾性表面波装置1に分割すればよい。この場合、必ずしもプリプレグを用いる必要はなく、リフロー処理時の温度において軟化することのない金属材料やプラスチック材料などを図7に示す支持部材61のような形状に加工したものを、エポキシ系接着剤等で接着しても構わない。
また、上述した実施の形態の例においては、平面形状において支持部材61が圧電基板11の外周から突出しないように配置したが、圧電基板11の平面形状を実装用基体51の平面形状よりも小さくした場合は、支持部材61が圧電基板11の外周から突出しても実装用基体51の外周から突出しない限り弾性表面波装置の大型化を招くことはない。この場合は支持部材61が圧電基板11の四隅において圧電基板11の下面から側面に渡って付着していても構わない。この場合、支持部材61と弾性表面波素子30との接触面積が増加するため、支持部材61と弾性表面波素子30とをより強固に接合することが可能となる。
さらに、上述した実施の形態の例においては、圧電基板11の四隅にそれぞれ一つの支持部材61が配置されていたが、これにとらわれる必要はなく、例えば、圧電基板11の四隅にそれぞれ複数の支持部材が配置されるようにしても構わない。
またさらに、上述した実施の形態の例においては、支持部材61を樹脂から成るものとしたが、例えば、支持部材61を高融点の半田から成るものとすることも可能である。この場合は、圧電基板11の下面の四隅の環状電極23の外側および実装用基体51の上面の四隅の基体側環状電極43の外側に、環状電極23および基体側環状電極43から充分に離間して、環状電極23および基体側環状電極43と同様の材料および方法を用いて高融点半田接合用導体パターンをそれぞれ形成し、環状電極23の外側に形成した高融点半田接合用導体パターンと基体側環状電極43の外側に形成した高融点半田接合用導体パターンとを高融点の半田で接続するようにすればよい。弾性表面波装置の実装基板への搭載に使用する半田をリフロー処理する際にも高融点の半田は再溶融することがないので、高融点の半田を支持部材61に用いることができる。
さらにまた、上述した実施の形態の例においては、圧電基板11の上面が露出している状態となっていたが、圧電基板11の上面を樹脂やレジストで被覆し、これらにマーキングを施すようにしても構わない。これによって、マーキングの視認性を向上させることが可能になると共に、圧電基板11を保護する効果も得ることができる。
またさらに、上述した実施の形態の例においては、基体側環状電極43が電気的に浮いた状態となっていたが、内部配線81や実装用基体51の側面に形成したキャスタレーション等を介してアース電位に接続される端子電極44に接続するようにしてもよい。これにより、基体側環状電極43,環状半田73および環状電極23がアース電位に接続されることとなり、これらに電磁的シールド効果を持たせることが可能になると共に、電気的配線として使用することも可能となる。
さらにまた、上述した実施の形態の例においては、IDT電極21と一対の反射器電極24とによって一端子対の弾性表面波共振器を構成した例を示したが、弾性表面波遅延線や弾性表面波フィルタあるいはデュプレクサなど、他の弾性表面波部品を構成してもよいことは言うまでもない。