JP4730992B2 - 熱硬化性被覆用樹脂組成物 - Google Patents

熱硬化性被覆用樹脂組成物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、貯蔵安定性が良好で、しかも低温硬化性、耐酸性、耐スリキズ性などにすぐれた塗膜を形成しうる熱硬化性被覆用樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術とその課題】
自動車車体の上塗り塗料として、水酸基含有樹脂とメラミン樹脂とを含有する塗料が広く使用されているが、該塗料を用いて形成される塗膜は耐酸性が十分でないという欠点を有している。そこで、メラミン樹脂を使用せずに、カルボキシル基とエポキシ基との間の架橋反応を利用した「酸−エポキシ型塗料」が提案されており、この型の塗料を用いて形成される塗膜は耐酸性は向上するが、しかしながら洗車時に塗面にスリキズが発生しやすいという欠点があり、これらの欠点を改良することが強く要望されている。
【0003】
【課題を解決するための手段】
本発明の主たる目的は、耐酸性及び耐スリキズ性に優れた塗膜を形成することができ、しかも貯蔵安定性や塗膜の低温硬化性などにもすぐれた、新規な「酸−エポキシ型塗料」として有用な熱硬化性被覆用樹脂組成物を提供することである。本発明者らは、今回、基体樹脂中へのカルボキシル基の導入を、水酸基含有重合性不飽和単量体と酸無水物基含有化合物とを特定の比率でハーフエステル化反応してなる重合性単量体を用いて行うことにより、上記の目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0004】
かくして、本発明によれば、
(i)(a)水酸基含有重合性不飽和単量体と酸無水物基含有化合物とを水酸基1モルあたり酸無水物基1〜1.5モルの比率でハーフエステル化反応させることにより得られる重合性不飽和ハーフエステル化物、
(b)酸無水物基含有重合性不飽和単量体、及び
(c)その他の重合性不飽和単量体
を共重合することにより得られる酸無水物基含有重合体(A)の酸無水物基に、
(d)一価アルコール
をハーフエステル化させてなる重合体(B)と、
(ii)1分子中に水酸基及びエポキシ基の両方を有する重合体(C)と
を含有することを特徴とする熱硬化性被覆用樹脂組成物が提供される。
【0005】
以下、本発明の熱硬化性被覆用樹脂組成物(以下、本組成物という)についてさらに詳細に説明をする。
【0006】
【発明の実施の形態】
重合体(A)
本発明において使用される重合体(A)は、水酸基含有重合性不飽和単量体と酸無水物基含有化合物とを水酸基1モルあたり酸無水物基1〜1.5モルの比率でハーフエステル化反応させることにより得られる重合性不飽和ハーフエステル化物(a)、酸無水基含有重合性不飽和単量体(b)及びその他の重合性不飽和単量体(c)を共重合することにより得られる酸無水物基含有重合体である。
【0007】
上記重合性不飽和ハーフエステル化物(a)を調製するために使用される水酸基含有重合性不飽和単量体は、1分子中に水酸基及び重合性不飽和炭素−炭素二重結合をそれぞれ1個づつ有する化合物であり、例えば、アクリル酸又はメタクリル酸のような重合性不飽和カルボン酸と炭素数2〜24の二価アルコール(ジオール)とのモノエステル化物(例えば、ヒドロキシアルキルエステル)があげられ、特に、形成される塗膜の耐スリキズ性を向上させるためには、炭素数3〜10の二価アルコールとのモノエステル化物が好ましい。また、水酸基含有重合性不飽和単量体として、アクリル酸又はメタクリル酸のような重合性不飽和脂肪族カルボン酸にε−カプロラクトンのような環内エステル基含有化合物(ラクトン)を付加させたものも好適に使用することができる。
【0008】
しかして、そのような水酸基含有重合性不飽和単量体の具体例としては、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸ヒドロキシブチル、メタクリル酸ヒドロキシブチル、アクリル酸ヒドロキシヘキシル、メタクリル酸ヒドロキシヘキシル、プラクセルFM又はFAシリーズ(ダイセル化学工業(株)商品名;アクリル酸又はメタクリル酸とε−カプロラクトンとの開環エステル化物)などがあげられる。
【0009】
酸無水物基含有化合物は、酸無水物基
【0010】
【化1】
Figure 0004730992
【0011】
を有し、上記の水酸基含有重合性不飽和単量体中の水酸基と容易にハーフエステル化反応して、酸無水物基1モルあたりカルボキシル基及びエステル基をそれぞれ1モルづつ生成するような線状もしくは環状の重合性不飽和結合を含まない化合物であり、例えば、無水コハク酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水ハイミック酸、無水トリメリット酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸無水物、無水ピロメリット酸などが包含される。特に、無水コハク酸はそのハーフエステル化によって生成するカルボキシル基の反応性が高いので好ましい。
【0012】
重合性不飽和ハーフエステル化物(a)は、上記の水酸基含有重合性不飽和単量体と酸無水物基含有化合物とを、前者の不飽和単量体中の水酸基1モルあたり後者の化合物中の酸無水物基を1〜1.5モル、好ましくは1.02〜1.3モル、特に好ましくは1.05〜1.25モルの比率でハーフエステル化反応させることによって得られる。ここで、水酸基1モルあたりの酸無水物基の比率が1モルより少なくなると未反応の水酸基含有重合性不飽和単量体が残存し、本組成物の貯蔵安定性が低下する傾向があり、一方、1.5モルより多くなると、本組成物から形成される硬化塗膜の耐水性が劣化することがある。
【0013】
重合性不飽和ハーフエステル化物(a)の調製において、水酸基含有重合性不飽和単量体と酸無水物基含有化合物とを上記の範囲内の比率で反応させることにより、未反応の水酸基含有重合性不飽和単量体が残存することは殆ど又は全くないので貯蔵安定性の低下がなくなり、一方、未反応の酸無水物基含有化合物が残存することはあるが、これは次工程で一価アルコールと反応してハーフエステル化され、そのものが重合体(C)との架橋反応に関与するので、塗膜性能を劣化させる要因にはならない。
【0014】
水酸基含有重合性不飽和単量体と酸無水物基含有化合物とのハーフエステル化反応は、通常の方法、例えば、適宜反応に不活性な有機溶媒中で、室温乃至約150℃の温度で行うことができる。
【0015】
また、酸無水物基含有重合性不飽和単量体(b)は、1分子中に一価アルコールと容易にハーフエステル化反応しうる酸無水物基及び重合性不飽和炭素−炭素結合の両方をそれぞれ1個有する化合物であり、具体的には、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸などがあげられる。
【0016】
さらに、その他の重合性不飽和単量体(c)は、1分子中に少なくとも1個の重合性不飽和結合を有する、上記のハーフエステル化物(a)及び不飽和単量体(b)と共重合可能な化合物であり、具体的には、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸−tブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどのアクリル酸もしくはメタクリル酸のC1〜C24アルキルエステル;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなどのビニル芳香族化合物;エチレン、プロピレンなどのオレフィン類;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどの不飽和ニトリル類;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミドなどの不飽和アミド類;酢酸ビニル、塩化ビニル、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジンなどのビニル化合物などがあげられる。
【0017】
重合体(A)は、以上に述べた重合性不飽和ハーフエステル化物(a)、酸無水物基含有重合性不飽和単量体(b)及びその他の重合性不飽和単量体(c)を共重合することにより得られる酸無水物基含有重合体であって、これらの各成分の共重合比率は臨界的ではなく、本組成物の使用目的等に応じて任意に選択することができるが、一般には、これら3成分の合計量を基準にして、成分(a)は5〜85重量%、特に10〜65重量%、さらに特に15〜40重量%;成分(b)は5〜45重量%、特に10〜35重量%、さらに特に15〜25重量%;成分(c)は0〜90重量%、特に10〜80重量%、さらに特に30〜60重量%の範囲内が適している。また、重合体(A)の数平均分子量は一般に1000〜50000、特に3000〜30000の範囲内にあることが好ましい。さらに、重合体(A)は一般に200〜1000、好ましくは300〜800、より好ましくは350〜650の範囲内の酸無水物基当量を有することができる。
【0018】
重合体(B)
本組成物の一部を構成する重合体(B)は、重合体(A)を構成する単量体(b)単位に由来する酸無水物基に一価アルコールを反応させてハーフエステル化することにより調製することができる。
【0019】
重合体(A)と反応せしめられる一価アルコールとしては、1分子中に1個水酸基を有する有機化合物であり、具体的には、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルカノール類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブなどのアルキレングリコールのモノアルキルエーテル類;ジメチルアミノエタノールなどのジアルキルアミノアルカノール類などがあげられる。中でも、炭素数1〜5のアルカノールが好適である。これらの一価アルコールは重合体(A)の酸無水物基に反応してハーフエステル化して、その結果、1個の酸無水物基からカルボキシル基及びカルボン酸エステル基がそれぞれ1個づつが生成する。一価アルコールの使用割合は、通常、重合体(A)の酸無水物基1モルあたり1〜3モル、特に1.5〜2.5モル、さらに特に1.5〜2モルの範囲内が適している。このハーフエステル化反応は、適宜反応に不活性な有機溶媒中で、通常の条件下、例えば、室温〜150℃の温度で行うことができる。
【0020】
かくして得られる重合体(B)は、カルボキシル基及びカルボン酸エステル基を有しており、その酸価は一般に15〜350mgKOH/g、特に30〜300mgKOH/g、さらに特に50〜200mgKOH/gの範囲内にあることが好ましい。
【0021】
重合体(C)
本組成物の他の一部を構成する重合体(c)は、1分子中に水酸基及びエポキシ基の両方を有する重合体である。
【0022】
重合体(C)は、例えば、水酸基含有重合性不飽和単量体(α)、エポキシ基含有重合性不飽和単量体(β)及びその他の重合性不飽和単量体(γ)を共重合することによって得ることができる。上記水酸基含有重合性不飽和単量体(α)は、1分子中に水酸基及び重合性不飽和炭素−炭素二重結合をそれぞれ1個づつ有する化合物であり、具体的には、重合体(A)における重合性不飽和ハーフエステル化物(a)の調製に際して使用しうるものとして前記で説明したものと同様のものが好適に使用できる。
【0023】
重合体(C)を調製するために使用されるエポキシ基含有重合性不飽和単量体(β)は、1分子中にエポキシ基及び重合性不飽和炭素−炭素二重結合をそれぞれ1個づつ有する化合物であり、具体的には、例えば、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、脂環式骨格にエポキシ基が結合してなる重合性不飽和単量体、例えば、
【0024】
【化2】
Figure 0004730992
【0025】
などが挙げられる。
【0026】
さらに、上記の水酸基含有重合性不飽和単量体(α)及びエポキシ基含有重合性不飽和単量体(β)と共重合可能な他の重合性不飽和単量体(γ)としては、重合体(A)の製造に際して使用しうるものとして前述した他の重合性不飽和単量体(C)の例示の中から適宜選択して使用することができる。
【0027】
重合体(C)を製造する際の水酸基含有重合性不飽和単量体(α)、エポキシ基含有重合性不飽和単量体(β)及び他の重合性不飽和単量体(γ)の共重合比率は、厳密に制限されるものではなく、本組成物の使用目的等に応じて任意に選択することができるが、一般には、これら3成分の合計重量を基準にして、成分(α)は5〜50%、特に10〜45%、さらに特に15〜30%;成分(β)は5〜50%、特に10〜45%、さらに特に20〜40%;成分(γ)は0〜90%、特に0〜80%、さらに特に30〜60%の範囲内が適している。
【0028】
これらの単量体(α)、(β)及び(γ)の共重合は、例えば、通常の溶液重合によって行うことができ、得られる重合体(C)は、水酸基価が15〜250mgKOH/g、特に30〜150mgKOH/g、さらに特に50〜125mgKOH/gの範囲内;エポキシ当量が60〜1000、特に100〜600、、さらに特に350〜550の範囲内;そして数平均分子量が1000〜100000、特に3000〜35000の範囲内にあるのが適している。
【0029】
熱硬化性被覆用樹脂組成物:
本発明により提供される熱硬化性被覆用樹脂組成物(本組成物)は、以上に述べたカルボキシル基及びカルボン酸エステル基を有する重合体(B)と、水酸基及びエポキシ基を有する重合体(C)を含んでなるものである。
【0030】
本組成物は、重合体(B)と重合体(C)を、適当な有機溶剤中に配合し、混合することによって調製することができる。その際の両重合体の配合比率は、重合体(B)中のカルボキシル基と重合体(C)中のエポキシ基との相対的モル比が、カルボキシル基/エポキシ基として、一般に1/0.5〜1/2、特に1/0.8〜1/1.5、さらに特に1/0.9〜1/1.3の範囲内となるようにするのが好適である。また、重合体(B)中のカルボン酸エステル基と重合体(C)の水酸基のモル比は、カルボン酸エステル基/水酸基として、一般に1/0.5〜1/2、特に1/0.8〜1/1.5、さらに特に1/0.9〜1/1.2の範囲内にあるのが好適である。さらにこれら両成分の固形分重量比は、両者の合計重量に基づき、重合体(B)は20〜80%、特に35〜70%、さらに特に40〜60%、そして重合体(C)は80〜20%、特に65〜30%、さらに特に60〜40%の範囲内にあるのが適している。
【0031】
本組成物を用いて形成される塗膜は、約120〜約160℃の温度で10〜40分間程度加熱することにより容易に架橋硬化させることができる。この硬化機構は十分に解明されていないが、加熱により、重合体(B)中のカルボキシル基とカルボン酸エステル基とが反応して酸無水物基が再生すると同時に、遊離の一価アルコールが遊離する。このアルコールは加熱中に蒸発して除去される。再生した酸無水基は、重合体(C)に含まれる水酸基と反応して架橋し、再度カルボキシル基が生成し、このカルボキシル基と重合体(B)中のカルボキシル基が重合体(C)に含まれるエポキシ基と反応して架橋するものと推定される。
【0032】
本組成物には、上記した重合体(B)及び重合体(C)に加え、さらに着色顔料、メタリック顔料、光干渉顔料、体質顔料、硬化触媒、硬化剤、紫外線吸収剤、光安定剤、流動調整剤などの通常の塗料用添加剤を配合することができる。
【0033】
本組成物により形成される硬化塗膜は、硬化性、耐酸性、耐スリキズ性などの性能にすぐれているので、本組成物は、金属製又はプラスチック製の自動車車体や電気製品などの被塗物の外板部の上塗り塗料用として有利に使用することができる。具体的には、例えば、これらの被塗物に、直接、またはカチオン電着塗料などの下塗り塗料及びさらに場合により中塗り塗料を塗装し硬化させた後、1)本組成物を含んでなるソリッドカラー上塗塗料を塗装するか、2)通常のソリッドカラー又はメタリックの上塗塗料を塗装し、次いでこれらの塗面に本組成物を含んでなるクリヤー上塗塗料を塗装することができる。
【0034】
本組成物の塗装は、例えば、塗装時の固形分含有率を20〜75重量%に調整した後、エアレススプレー、エアスプレー、静電塗装などによって行うことができ、その膜厚は硬化塗膜で10〜100μmの範囲内が適しており、塗膜は約120〜約160℃の温度で10〜40分間程度加熱することによって架橋硬化せしめることができる。
【0035】
【発明の効果】
以上述べたとおり、本組成物は、貯蔵安定性が良好で、しかも低温硬化性、耐酸性、耐スリキズ性などすぐれた塗膜を形成しうる熱硬化性塗料組成物であり、自動車車体の上塗り塗料用として特に有効に使用することができる。
【0036】
【実施例】
以下、本発明を実施例及び比較例によりさらに具体的に説明する。部及び%はいずれも重量に基づくものであり、また塗膜の膜厚は硬化塗膜についてのものである。
【0037】
1.試料の調製
1)重合性不飽和ハーフエステル化物(a)
(a1):窒素雰囲気下で、有機溶剤(酢酸ブチル)28部にアクリル酸2−ヒドロキシプロピル130部(1モル)、無水コハク酸120部(1.2モル)及び重合禁止剤としてのヒドロキノンモノメチルエーテル0.5部を混合し、150℃に加熱して20分間反応せしめて重合性不飽和ハーフエステル化物(a1)を得た。
【0038】
(a2):窒素雰囲気下で、有機溶剤(酢酸ブチル)23部にアクリル酸2−ヒドロキシプロピル130部(1モル)、無水コハク酸80部(0.8モル)及び重合禁止剤としてのヒドロキノンモノメチルエーテル0.5部を混合し、150℃に加熱して20分間反応せしめて重合性不飽和ハーフエステル化物(a2)を得た(比較例用)。
【0039】
2)重合体(A)
(A1):窒素雰囲気下で、反応容器に有機溶剤(キシレン)80部を仕込み、140℃に加熱してから、重合性不飽和ハーフエステル化物(a1)30部、無水マレイン酸20部、アクリル酸ブチルエステル30部、メタクリル酸ラウリル10部、スチレン10部、有機溶剤(酢酸ブチル)及び重合触媒(t−ブチルパーオキシオクタノエート)4部を3時間かけて滴下し、さらに同温度で2時間撹拌を行って、固形分含有率50%、数平均分子量6500の重合体(A1)溶液を得た。
【0040】
(A2):窒素雰囲気下で、反応容器に有機溶剤(キシレン)80部を仕込み、140℃に加熱してから、重合性不飽和ハーフエステル化物(a2)25部、無水マレイン酸20部、アクリル酸ブチルエステル30部、メタクリル酸ラウリル15部、スチレン10部、有機溶剤(酢酸ブチル)20部及び重合触媒(t−ブチルパーオキシオクタノエート)4部を3時間かけて滴下し、さらに同温度で2時間撹拌を行って、固形分含有率50%、数平均分子量6500の重合体(A2)溶液を得た(比較例用)。
【0041】
3)重合体(B)
(B1):重合体(A1)溶液100部(固形分として)にメタノール10部を加え、90℃で8時間ハーフエステル化反応させて得た。得られた重合体(B1)の酸価は188mgKOH/gであった。
【0042】
(B2):重合体(A2)溶液100部(固形分として)にメタノール10部を加え、90℃で8時間ハーフエステル化反応させて得た。得られた重合体(B2)の酸価は180mgKOH/gであった(比較例用)。
【0043】
4)重合体(C)
(C1):窒素雰囲気下で、反応容器に有機溶剤(キシレン/n−ブタノール=80/20重量比)100部を仕込み、130℃に加熱し、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル20部、メタクリル酸グリシジル35部、アクリル酸ブチル25部、スチレン20部及びアゾビスイソブチロニトリル5部を3時間を要して滴下し、さらに同温度で1時間維持して、固形分含有率50%、水酸基価86mgKOH/g、エポキシ当量406、数平均分子量7000の重合体(C1)溶液を得た。
【0044】
2.実施例及び比較例
上記の重合体(B)及び重合体(C)を表1に記載した固形分重量比率で混合して、クリヤ塗料を得た。有機溶剤(キシレン)で固形分含有率45%、粘度30秒/フォードカップ#4/20℃に調整した。
【0045】
カチオン電着塗料(「エレクロン#9800」関西ペイント社製、商品名)及び中塗塗料(「アミラックTP±37」関西ペイント社製、商品名)を塗装し加熱硬化してなる鋼板に、メタリック塗料(「マジクロンTB−510(A)」関西ペイント社製、商品名)を膜厚15μmに塗装し、室温で5分間放置してから、ついで上記のクリヤ塗料を膜厚40μmとなるように塗装し、室温で5分間放置してから、140℃で30分間加熱して、メタリック塗料及びクリヤ塗料の両塗膜を同時に硬化せしめた。前記で得られたクリヤ塗料の貯蔵安定性及び低温硬化性並びにかくして得られた試験用塗板のクリヤ塗料の硬化塗膜の性能試験(耐酸性及び耐スリキズ性)を行った。その結果を表1に併記する。
【0046】
表1における試験方法は下記のとおりである。
【0047】
貯蔵安定性:粘度30秒/フォードカップ#4/20℃に調整したクリヤ塗料を容器に入れ密閉し、室温で1か月間放置した後の粘度上昇を調べた。○:粘度上昇が10秒以内である、△:粘度上昇が10〜20秒である、×:粘度上昇が20秒以上であることをそれぞれ示す。
【0048】
低温硬化性:ガラス板にクリヤ塗料を膜厚40μmとなるように塗装し室温で5分間放置した後120℃で30分間加熱して硬化せしめた塗膜の鉛筆硬度(20℃)を調べた。
【0049】
耐酸性:塗面に40%硫酸水溶液を0.2cc滴下し、80℃で30分間加熱した後のクリヤ塗面の状態を目視観察した。○:異常が全く認められない、△:ヘコミが少し認められる、×:ヘコミやフクレが多く認められることをそれぞれ示す。
【0050】
耐スリキズ性:自動車の外側のルーフ面に試験用塗板を貼り付け、自動車洗車機で15回洗車した後のクリヤ塗膜面を目視観察した。○:若干スリキズの発生は認められるが軽微である、△:スリキズの発生が目立ち外観が低下した、×:スリキズの発生が著しいことをそれぞれ示す。
【0051】
【表1】
Figure 0004730992

Claims (27)

  1. 下記の成分
    (i)(a)水酸基含有重合性不飽和単量体と酸無水物基含有化合物とを水酸基1モルあたり酸無水物基1〜1.5モルの比率でハーフエステル化反応させることにより得られる重合性不飽和ハーフエステル化物、
    (b)酸無水物基含有重合性不飽和単量体、及び
    (c)その他の重合性不飽和単量体
    を共重合することにより得られる酸無水物基含有重合体(A)の酸無水物基に、
    (d)一価アルコール
    をハーフエステル化させてなる重合体(B)と、
    (ii)1分子中に水酸基及びエポキシ基の両方を有する重合体(C)と
    を含有することを特徴とする熱硬化性被覆用樹脂組成物。
  2. 重合性不飽和ハーフエステル化物(a)を得るために使用される水酸基含有重合性不飽和単量体がアクリル酸又はメタクリル酸のC2〜C24ヒドロキシアルキルエステルである請求項1に記載の組成物。
  3. 重合性不飽和ハーフエステル化物(a)を得るために使用される酸無水物基含有化合物が無水コハク酸である請求項1に記載の組成物。
  4. 重合性不飽和ハーフエステル化物(a)が水酸基含有重合性不飽和単量体と酸無水物基含有化合物とを水酸基1モルあたり酸無水物基1.02〜1.3モルの比率でハーフエステル化反応させることにより得られるものである請求項1に記載の組成物。
  5. 酸無水物基含有重合性不飽和単量体(b)が無水マレイン酸、無水イタコン酸及び無水シトラコン酸よりなる群から選ばれる請求項1に記載の組成物。
  6. 重合体(A)が、
    重合性不飽和ハーフエステル化物(a) 5〜85重量%
    酸無水物基含有重合性不飽和単量体(b) 5〜45重量% 及び
    その他の重合性不飽和単量体(c) 0〜90重量%
    を共重合することにより得られるものである請求項1に記載の組成物。
  7. 重合体(A)が、
    重合性不飽和ハーフエステル化物(a) 10〜65重量%
    酸無水物基含有重合性不飽和単量体(b) 10〜35重量% 及び
    その他の重合性不飽和単量体(c) 10〜80重量%
    を共重合することにより得られるものである請求項1に記載の組成物。
  8. 重合体(A)が1000〜50000の範囲内の数平均分子量を有するものである請求項1に記載の組成物。
  9. 重合体(A)が200〜1000の範囲内の酸無水物基当量を有するものである請求項1に記載の組成物。
  10. 一価アルコール(d)がアルカノール類、アルキレングリコールのモノアルキルエーテル類及びジアルキルアミノアルカノール類よりなる群から選ばれる請求項1に記載の組成物。
  11. 一価アルコール(d)が炭素数1〜5のアルカノールである請求項1に記載の組成物。
  12. 重合体(B)が、重合体(A)の酸無水物基1モルあたり一価アルコール1〜3モルの範囲内の割合でハーフエステル化することにより得られるものである請求項1に記載の組成物。
  13. 重合体(B)が15〜350mgKOH/gの範囲内の酸価を有するものである請求項1に記載の組成物。
  14. 重合体(B)が30〜300mgKOH/gの範囲内の酸価を有するものである請求項1に記載の組成物。
  15. 重合体(C)が、水酸基含有重合性不飽和単量体(α)、エポキシ基含有重合性不飽和単量体(β)及びその他の重合性不飽和単量体(γ)の共重合体である請求項1に記載の組成物。
  16. 重合体(C)が、単量体(α)5〜50重量%、単量体(β)5〜50重量%及び単量体(γ)0〜90重量%を共重合させることにより得られるものである請求項15に記載の組成物。
  17. 重合体(C)が15〜250mgKOH/gの範囲内の水酸基価を有するものである請求項1に記載の組成物。
  18. 重合体(C)が30〜150mgKOH/gの範囲内の水酸基価を有するものである請求項1に記載の組成物。
  19. 重合体(C)が60〜1000の範囲内のエポキシ当量を有するものである請求項1に記載の組成物。
  20. 重合体(C)が100〜500の範囲内のエポキシ当量を有するものである請求項1に記載の組成物。
  21. 重合体(B)中のカルボキシル基対重合体(C)中のエポキシ基のモル比が1/0.5〜1/2の範囲内にある請求項1に記載の組成物。
  22. 重合体(B)中のカルボキシル基対重合体(C)中のエポキシ基のモル比が1/0.8〜1/1.5の範囲内にある請求項1に記載の組成物。
  23. 重合体(B)と重合体(C)の合計固形分重量を基準にして、重合体(B)を20〜80%及び重合体(C)を80〜20%含有する請求項1に記載の組成物。
  24. 重合体(B)と重合体(C)の合計固形分重量を基準にして、重合体(B)を35〜70%及び重合体(C)を65〜30%含有する請求項1に記載の組成物。
  25. 請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物を含んでなる上塗り塗料。
  26. 自動車車体用である請求項25に記載の上塗り塗料。
  27. 請求項1に記載の組成物を用いて被覆された物品。
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