JP4088095B2 - 熱硬化性粉体塗料組成物 - Google Patents

熱硬化性粉体塗料組成物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱硬化性粉体塗料組成物及びそれを用いた塗膜形成方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
粉体塗料は、大気中に放出される有機溶剤を含まないことから、環境に対してやさしい塗料として注目を浴びている。その中でも、塗膜性能及び塗膜物性の観点から、熱硬化性粉体塗料が用いられている。特に近年、自動車車体の塗装に適用できるような、塗膜外観が非常に良好である熱硬化性粉体塗料が求められている。
【0003】
酸/エポキシ硬化系の熱硬化性粉体塗料においては、例えば、エポキシ基を含有する樹脂に、硬化剤として室温で固体状のジカルボン酸が配合され、粉体塗料が調製されている。被塗装物に対して粉体塗料を付着させた後、粉体塗料を加熱し、粉体塗料を溶融させることにより塗膜を形成させるとともに、硬化剤を溶融して硬化反応を進行させて塗膜を硬化している。
【0004】
しかしながら、このような熱硬化性粉体塗料においては、樹脂中での硬化剤の分散が良くないため、塗膜の平滑性が得られず、塗膜外観が悪いという問題があった。また、硬化剤が樹脂中に均一に分散しにくいため、塗膜中において均一な硬化が得られず、架橋密度が低いという問題があった。
【0005】
本発明の目的は、塗膜外観が良好で、かつ架橋密度を向上させることができる熱可塑性粉体塗料組成物及びこれを用いた塗膜形成方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の熱硬化性粉体塗料組成物は、数平均分子量1000〜5000、ガラス転移温度(Tg)20〜100℃である、エポキシ基を有するアクリル樹脂からなる主樹脂(A)と、炭素数4〜20のアルキル基及び/またはアルキレンユニットを有する多価カルボン酸からなる固体硬化剤(B)と、炭素数4〜20のアルキル基及び/またはアルキレンユニットを側鎖に含み、かつ1分子中に2以上のカルボキシル基を含み、数平均分子量が1000〜10000であり、かつ酸価が10〜150であるアクリル樹脂からなる添加樹脂(C)とを含む熱硬化性粉体塗料組成物であって、添加樹脂(C)が、塗料固形分中0.3〜20重量%含まれており、側鎖にエポキシ基及び水酸基を有するアクリル樹脂(C1)のエポキシ基と、炭素数4〜20のアルキル基及び/またはアルキレンユニットを有する多価カルボン酸からなる化合物(C2)のカルボキシル基とを反応させて得られ、多価カルボン酸のうちの1つのカルボキシル基がエポキシ基と反応し、他のカルボキシル基は未反応の状態で残存しており、さらにアクリル樹脂(C1)の水酸基に酸無水物を反応させることにより、カルボキシル基が導入されており、アルキル基及び/またはアルキレンユニットが2〜50重量%含まれている樹脂であり、主樹脂(A)が、エポキシ基含有アクリル樹脂(A1)とエポキシ基含有アクリル樹脂(A2)とを含み、樹脂(A1)及び樹脂(A2)が、(1)(樹脂A1のSP値)−(樹脂A2のSP値)が0.2〜1.5、(2)(樹脂A1のTg)−(樹脂A2のTg)が10℃以上、(3)樹脂A1のTgが40〜100℃で、かつ樹脂A2のTgが20〜50℃、(4)樹脂A1/樹脂A2の固形分重量比が5/95〜50/50であり、熱硬化性粉体塗料組成物が、塗料成分を含んだ有機溶剤溶液を水中に分散し、分散相中の有機溶剤を留去することにより分散相を固化して得られるものであることを特徴としている。
【0007】
本発明の熱硬化性粉体塗料組成物においては、添加樹脂(C)が固体硬化剤(B)に対して分散剤として作用し、固体硬化剤(B)を主樹脂(A)中に均一に分散することが可能となる。このため、得られる塗膜の外観が向上する。
【0008】
固体硬化剤(B)は、室温(例えば25℃)で固体状であり、一般に長鎖のアルキル基及び/またはアルキレンユニットを有している。添加樹脂(C)は、炭素数4〜20のアルキル基及び/またはアルキレンユニットを側鎖に有しており、この部分が固体硬化剤(B)に対して親和性を示すものと思われる。また、添加樹脂(C)はアクリル樹脂の骨格構造を有しているため、主樹脂(A)に対しても親和性を有している。このため、上述のように、添加樹脂(C)は、固体硬化剤(B)に対して分散剤として作用し、主樹脂(A)中における固体硬化剤(B)の分散性を高める働きを有する。
【0009】
また、添加樹脂(C)は、1分子中に2以上のカルボキシル基を含んでいるので、硬化剤としても機能し、塗膜の架橋密度を向上させる。
以下、添加樹脂(C)、主樹脂(A)、及び固体硬化剤(C)について詳細に説明する。
【0010】
<添加樹脂(C)>
添加樹脂(C)の側鎖に含まれるアルキル基及び/またはアルキレンユニットは、直鎖状、分岐状または環状のいずれであってもよい。炭素数が3以下であると、硬化剤を分散させる効果が十分に得られない。また、炭素数21以上のものは一般に工業的に製造するのが困難である。
【0011】
添加樹脂(C)の数平均分子量は1000〜10000であり、好ましくは2000〜8000である。数平均分子量が小さすぎると、硬化剤分散の効果が十分に得られない場合がある。また数平均分子量が大きすぎると、塗膜外観に悪影響を生じる場合がある。
【0012】
添加樹脂(C)の塗料中の含有量は、塗料固形分中0.3〜20重量%であることが好ましく、さらに好ましくは1〜20重量%であり、さらに好ましくは5〜15重量%である。添加樹脂(C)の含有量が少なすぎると、本発明の効果が十分に得られない場合がある。また、含有量が多すぎると、塗膜外観及び塗膜の架橋性に問題を生じる場合がある。
【0013】
添加樹脂(C)の酸価は、10〜150mgKOH/gであることが好ましく、さらに好ましくは10〜90mgKOH/gである。酸価が低すぎると、塗膜の架橋密度が十分に向上しない場合があり、酸価が高すぎると、硬化性が低下したり、膜性能が低下する等の問題が生じる。
【0014】
添加樹脂(C)は、アルキル基及び/またはアルキレンユニットを添加樹脂(C)中に2〜50重量%含んでいることが好ましい。このような範囲内とすることにより、硬化剤を分散する効果がより高く得られる。
【0015】
添加樹脂(C)のTgは、特に限定されるものではないが、例えば−30〜100℃であることが好ましく、さらに好ましくは−20〜70℃である。Tgが低すぎると、粉体塗料を製造する際に問題を生じる場合があり、Tgが高すぎると、塗膜外観に問題が生じる場合がある。
【0016】
本発明におけるTgは、示差走査型熱量計(DSC)などの当業者によってよく知られた測定器を用いて求めることができる。また、共重合体を構成する既知のTgを有するモノマーの配合比から求めることも可能である。
【0017】
添加樹脂(C)のSP値は、特に限定されるものではないが、一般に9〜12の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは9〜11の範囲である。SP値が低すぎると、主樹脂との相溶性が低下し、塗料製造時に問題が発生する。また、SP値が高すぎても、主樹脂との相溶性の低下、製造時の問題、及び膜物性の低下が生じる可能性がある。
【0018】
本発明におけるSP値は、濁度法などの当業者によってよく知られた方法によって求めることができる。
添加樹脂(C)が側鎖にアルキレンユニットを有する場合には、アルキレンユニットの末端にカルボキシル基が結合されていることが好ましい。
【0019】
本発明における添加樹脂(C)は、例えば、側鎖に第1の官能基を有するアクリル樹脂(C1)と、炭素数4〜20のアルキル基及び/またはアルキレンユニットを有し、かつ第1の官能基と反応する第2の官能基を有する化合物(C2)とを反応させて得ることができる。
【0020】
第1の官能基と第2の官能基の組み合わせとしては、エポキシ基とカルボキシル基または酸無水物基、ヒドロキシル基とカルボキシル基または酸無水物基、及びヒドロキシル基とイソシアネート基などの組み合わせを挙げることができる。これらの中でも、エポキシ基とカルボキシル基または酸無水物基との組み合わせが、反応の容易性及びカルボキシル基の導入の観点から好ましく用いられる。特に、第1の官能基がエポキシ基であり、第2の官能基がカルボキシル基または酸無水物基であることが好ましい。
【0021】
化合物(C2)が第2の官能基としてカルボキシル基または酸無水物基を有する化合物である場合、化合物(C2)は、多価カルボン酸またはその無水物であることが好ましい。特に、室温で固体の多価カルボン酸であることが好ましい。このような多価カルボン酸としては、固体硬化剤(B)に用いることができる多価カルボン酸のうち、炭素数4〜20のアルキレンユニットを有する多価カルボン酸が好ましく用いられる。具体的には、デカンジカルボン酸、アジピン酸、ジメチルコハク酸、セバチン酸、アゼライン酸、ピメリン酸、スベリン酸、1,11−ウンデカン酸、ドデカンジカルボン酸、ブラシル酸、ヘキサデカンカルボン酸、3−iso−オクチルヘキサンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ブタントリカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸、トリカルバリン酸等などが挙げられる。
【0022】
また、多価アルコールと酸無水物との反応によって得られる多価カルボン酸化合物を用いてもよい。このようなものとして、例えば、ブタンジオールとコハク酸無水物から得られるブタンジオールスクシネート、ヘキサンジオールとコハク酸無水物から得られるヘキサンジオールスクシネート、ノナンジオールとコハク酸無水物から得られるノナンジオールスクシネート、及びネオペンチルグリコールとトリメリット酸無水物とコハク酸無水物との1対1対1付加物などが挙げられる。
【0023】
化合物(C2)が、室温で固体の多価カルボン酸である場合、塗料中に含有させる固体硬化剤(B)と同じ化合物であることが好ましい。
化合物(C2)が多価カルボン酸である場合、多価カルボン酸のうちの1つのカルボキシル基が、アクリル樹脂(C1)のエポキシ基と反応し、他のカルボキシル基は未反応の状態で残存していることが好ましい。これにより、アルキレンユニットの末端にカルボキシル基が結合した添加樹脂(C)とすることができる。
【0024】
アクリル樹脂(C1)としては、第1の官能基を有するモノマーと、他のモノマーとを共重合させたアクリル樹脂が挙げられる。第1の官能基がエポキシ基である場合、アクリル樹脂(C1)は、エポキシ基含有アクリル樹脂となる。このようなエポキシ基含有アクリル樹脂は、エポキシ基含有モノマーと他のモノマーを共重合させたアクリル樹脂である。エポキシ基含有モノマーとしては、例えば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、2−メチルグリシジルメタクリレート等を例示することができる。また、他のモノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとポリカプロラクトンとの付加物(ダイセル化学工業社製、商品名:プラクセルFMシリーズ)、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどの水酸基含有モノマー;並びに、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸iso−ブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、スチレン、ビニルトルエン、p−クロロスチレン等の中性モノマーを例示することができる。エポキシ基含有モノマー及び他のモノマーは、それぞれ2種以上用いてもよい。
【0025】
上述のように、2−ヒドロキシエチルメタクリレートなどのような水酸基含有モノマーを共重合することにより、アクリル樹脂(C1)の側鎖に水酸基を導入することができる。このような水酸基に酸無水物を反応させることにより、カルボキシル基を導入することができる。添加樹脂(C)のカルボキシル基の数を増やすことが必要な場合には、このような手法が有用である。
【0026】
<主樹脂(A)>
本発明における主樹脂(A)は、数平均分子量1000〜5000、ガラス転移温度20〜100℃である、エポキシ基を有するアクリル樹脂からなる。
【0027】
数平均分子量が1000未満であると、耐ブロッキング性が低下するおそれがあり、5000より大きいと、得られる塗膜の平滑性が低下するおそれがある。ガラス転移温度が20℃未満であると、耐ブロッキング性が低下するおそれがあり、100℃より高いと、得られる塗膜の平滑性が低下するおそれがある。
【0028】
エポキシ基を有するアクリル樹脂は、上記のアクリル樹脂(C1)と同様に、エポキシ基含有モノマーと他のモノマーを共重合することにより得ることができる。エポキシ基含有モノマー及び他のモノマーとしては、上記と同様のものを用いることができる。
SP値は、特に限定されるものではないが、通常9.0〜12.0であり、好ましくは9.0〜11.0である。
【0029】
<固体硬化剤(B)>
本発明における固体硬化剤(B)としては、例えば、脂肪族多価カルボン酸、芳香族多価カルボン酸、及び酸無水物を用いることができる。
【0030】
脂肪族多価カルボン酸としては、例えば、デカンジカルボン酸、アジピン酸、マレイン酸、マロン酸、エチルマロン酸、ブチルマロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、メチルコハク酸、ジメチルコハク酸、グルタル酸、メチルグルタル酸、ジメチルグルタル酸、セバチン酸、アゼライン酸、ピメリン酸、スベリン酸、1,11−ウンデカン酸、ドデカンジカルボン酸、ブラシル酸、ヘキサデカンカルボン酸、3−iso−オクチルヘキサンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ブタントリカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸、クエン酸、トリカルバリン酸等を例示することができる。
【0031】
また、芳香族多価カルボン酸としては、例えば、フタル酸等を例示することができる。また、酸無水物としては、例えば、コハク酸無水物、テトラヒドロ無水フタル酸、フタル酸無水物等を挙げることができる。
【0032】
また、化合物(C2)において説明した、多価アルコールと酸無水物との反応によって得られる多価カルボン酸化合物を用いることもできる。
固体硬化剤(B)としては、上記の硬化剤を2種類以上組み合わせて用いてもよい。
【0033】
<主樹脂(A)及び固体硬化剤(B)の配合割合>
主樹脂(A)及び固体硬化剤(B)の配合割合は、熱硬化性粉体塗料組成物に含まれるカルボン酸基の総量/エポキシ基の総量のモル比が、5/10〜11/10となるように配合されることが好ましく、さらに好ましくは7/10〜10/10であることが好ましい。なお、カルボン酸基の総量には、添加樹脂(C)中のカルボキシル基も含まれる。配合割合がこれらの範囲外であると、得られた塗膜の硬化性が悪くなる場合がある。
【0034】
<その他の添加剤>
本発明の熱硬化性粉体塗料組成物には、着色成分を含ませることができる。なお、本発明の熱硬化性粉体塗料組成物を、クリヤ塗料として用いる場合、着色成分を含まなくてもよいし、透明性が低下しない程度に着色成分を含んでいてもよい。着色成分としては、着色顔料の他、染料等が挙げられる。具体的には、二酸化チタン、ベンガラ、黄色酸化鉄、カーボンブラック、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、アゾ系顔料などの着色顔料及び染料などが挙げられる。
【0035】
また、本発明の熱硬化性粉体塗料組成物には、必要に応じて、粉体塗料の分野において通常用いられている各種添加剤を添加することができる。これらの添加剤としては、例えば、タルク、シリカ、炭酸カルシウム、沈降性硫酸バリウムなどの体質顔料、流動性付与剤、ジメチルシリコーンなどの表面調整剤、ベンゾインなどの発泡防止剤、硬化促進剤、可塑剤、帯電制御剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、顔料分散剤、難燃剤などが挙げられる。
【0036】
<粒子径>
本発明の熱硬化性粉体塗料組成物の体積平均粒子径は、特に限定されるものではないが、得られる塗膜の平滑性及び外観等の観点からは、5〜40μmであることが好ましく、さらに好ましくは5〜30μm、さらに好ましくは5〜20μmである。
【0037】
<乾式法及び湿式法>
本発明の熱硬化性粉体塗料組成物は、乾式法及び湿式法のいずれの方法で製造されてもよい。乾式法は、従来より粉体塗料を製造する方法として一般に知られている方法であり、本発明では、主樹脂(A)、固体硬化剤(B)、添加樹脂(C)、及びその他の添加剤からなる原料を混合した後、樹脂の硬化反応が進行しない温度でこの混合物を加熱して溶融混練し、得られた樹脂組成物を粉砕・分級して本発明の粉体塗料を製造することができる。
【0038】
湿式法は、塗料成分を含んだ有機溶剤溶液を調製し、この有機溶剤溶液を水中に分散し、分散相中の有機溶剤を留去することにより分散相を硬化して粉体を製造する方法である。具体的には、特開2001−64574号公報に開示された湿式法を用いることができる。
【0039】
湿式法を用いる場合、主樹脂(A)は、以下の条件を満足するエポキシ基含有アクリル樹脂(A1)とエポキシ基含有アクリル樹脂(A2)とを含むことが好ましい。
【0040】
(1)(樹脂A1のSP値)−(樹脂A2のSP値)が0.2〜1.5、
(2)(樹脂A1のTg)−(樹脂A2のTg)が10℃以上、
(3)樹脂A1のTgが40〜100℃で、かつ樹脂A2のTgが20〜50℃、
(4)樹脂A1/樹脂A2の固形分重量比が5/95〜50/50であること。
【0041】
上記の樹脂A1及び樹脂A2を用いることにより、相対的にSP値及びTgが小さい樹脂A2の周りを、相対的にSP値及びTgが大きい樹脂A1が取り囲んだコアシェル構造の樹脂粉末とすることができる。このようなコアシェル構造とすることにより、耐ブロッキング性が良好で、かつ塗膜の平滑性が優れた粉体塗料とすることができる。
【0042】
<塗膜形成方法>
本発明の塗膜形成方法は、下塗りまたは下塗り及び中塗りが施された被塗装物の上に、水性ベース塗料を塗布する工程と、水性ベース塗料が塗布された被塗装の上に、上記本発明の熱硬化性粉体塗料組成物を塗布する工程と、水性ベース塗料及び熱硬化性粉体塗料組成物が塗布された被塗装物を加熱することにより、水性ベース塗料と熱硬化性粉体塗料組成物とを同時に硬化させる工程とを備えることを特徴としている。
【0043】
被塗装物としては、プラスチック、鉄板、鋼板、アルミニウム板等を挙げることができる。下塗り塗料及び中塗り塗料としては、電着塗料やチッピングプライマーなど公知のものを用いることができる。水性ベース塗料としては、自動車車体の塗装等において一般に用いられている水性ベース塗料を用いることができる。水性ベース塗料は、例えば、静電塗装機等により塗装され、10〜20μmの厚みで塗装される。
【0044】
水性ベース塗料と本発明の熱硬化性粉体塗料組成物は、同時に加熱して硬化させることが好ましい。これにより、塗膜形成の工程を簡略化することができる。加熱温度は、例えば90〜250℃が好ましく、より好ましくは100〜200℃、さらに好ましくは120〜180℃である。加熱時間は、加熱温度等により適宜調整される。
【0045】
本発明の塗膜は、上記本発明の塗膜形成方法により得られることを特徴としている。下塗り塗膜または下塗り塗膜及び中塗り塗膜の上に、水性ベース塗膜が形成され、その上に本発明の熱硬化性粉体塗料組成物からなる塗膜が形成されている。
【0046】
本発明の塗装物は、上記本発明の塗膜が形成されていることを特徴としている。
【0047】
【発明の実施の形態】
本発明の熱硬化性粉体塗料組成物は、主樹脂(A)と、固体硬化剤(B)と、添加樹脂(C)とを含む。本発明に従う好ましい実施形態の1つにおいては、上述のように、添加樹脂(C)は、アクリル樹脂(C1)に、化合物(C2)を反応させて得ることができる。以下、このようにして得られる添加樹脂(C)について説明する。
【0048】
(化1)には、アクリル樹脂(C1)として、グリシジルメタクリレートと2−ヒドロキシエチルアクリレートとその他のモノマーを共重合させたアクリル樹脂を示している。また、化合物(C2)として、デカンジカルボン酸を示している。従って、アクリル樹脂(C1)は、側鎖にエポキシ基と水酸基を有している。また、化合物(C2)は、炭素数8のアルキレンユニットを含み、その両端にカルボキシル基を有している。
【0049】
【化1】
Figure 0004088095
【0050】
(化1)において、アクリル樹脂の側鎖のエポキシ基に、デカンジカルボン酸の一方のカルボキシル基を反応させることにより、以下の(化2)に示すアクリル樹脂が得られる。
【0051】
【化2】
Figure 0004088095
【0052】
(化2)に示すように、エポキシ基とジカルボン酸の一方のカルボキシル基が反応することにより、アクリル樹脂の側鎖に炭素数8のアルキレンユニットが導入され、このアルキレンユニットの末端にカルボキシル基が結合している。アルキレンユニットの末端のカルボキシル基が他のエポキシ基と反応しないように、アクリル樹脂とジカルボン酸のそれぞれの量が調整される。(化2)に示すアクリル樹脂は、炭素数8のアルキレンユニットを側鎖に有しており、アルキレンユニットの末端にカルボキシル基を有しているので、本発明における添加樹脂(C)として用いることができる。
【0053】
(化2)に示すように、アクリル樹脂には、2−ヒドロキシエチルアクリレートを共重合させたことにより、その側鎖に水酸基が導入されている。この水酸基に酸無水物を反応させることにより、アクリル樹脂にカルボキシル基を導入することができる。例えば、(化3)に示す無水コハク酸を反応させることにより、(化4)に示すアクリル樹脂が得られる。
【0054】
【化3】
Figure 0004088095
【0055】
【化4】
Figure 0004088095
【0056】
(化4)に示すアクリル樹脂も、本発明における添加樹脂(C)として用いることができるものである。アクリル樹脂のカルボキシル基の数を増やしたい場合に、上記反応を用いることができる。
【0057】
(化2)及び(化4)に示す添加樹脂は、炭素数8のアルキレンユニットを有している。このアルキレンユニットが、固体硬化剤(B)と親和性を示す。ジカルボン酸として、固体硬化剤と同じ化合物を用いれば、特に良好な親和性が得られる。また、主鎖の骨格は、アクリル樹脂であるので、この部分は主樹脂(A)と親和性を示す。従って、本発明における添加樹脂(C)は、固体硬化剤(B)の分散剤として働き、固体硬化剤(B)を主樹脂(A)中に良好に分散させることができる。
【0058】
また、(化2)及び(化4)に示すように、添加樹脂にカルボキシル基が含まれているので、添加樹脂自身も硬化剤として働く。従って、塗膜の架橋性を低減させることなく、固体硬化剤(B)を主樹脂(A)中に分散させることができる。
【0059】
【実施例】
以下、本発明を具体的な実施例により説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0060】
〔製造例1〕添加樹脂A−1の作製
(添加樹脂前駆体の作製)
撹拌装置、温度調節器、及び還流管を備えた反応容器に、キシレン63重量部を仕込み、これを130℃に加熱し、窒素雰囲気下で3時間かけて、以下のモノマー混合物を滴下した。
【0061】
グリシジルメタクリレート 36重量部
スチレン 25重量部
メチルメタクリレート 6重量部
イソブチルメタクリレート 33重量部
tブチルパーオクトエート 14重量部
滴下後3時間保温した後、室温まで冷却し、樹脂溶液(固形分60重量%)を得た。得られた樹脂溶液の一部を減圧下で加熱してキシレンを留去し、固体の樹脂を得た。この樹脂のガラス転移温度(Tg)を示差走査型熱量計(DSC)で測定したところ、50℃であった。また、濁度法で測定したSP値は10.0であった。また、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)で測定した数平均分子量は2000であった。
【0062】
(添加樹脂の作製)
撹拌装置、温度調節器、及び還流管を備えた反応容器に、キシレン100重量部と1,10−デカンジカルボン酸126重量部を仕込み、120℃に加熱してデカンジカルボン酸を溶解させた。この中に、上記の樹脂溶液167重量部(固形分100重量部に相当)を、窒素雰囲気下で1時間かけて滴下した。その後2時間撹拌した後冷却し、過剰のデカンジカルボン酸を固化させて濾過により除去した。次に、溶剤を留去することにより、添加樹脂A−1を得た。
【0063】
得られた樹脂A−1のTgは−10℃、SP値は10.6、数平均分子量は4000であった。また、酸価は89.8mgKOH/gであった。添加樹脂A−1において、デカンジカルボン酸と反応させたことにより導入されたアルキレンユニットの含有量は、22.4重量%であった。
【0064】
〔製造例4〕添加樹脂A−4の作製
(添加樹脂前駆体の作製)
撹拌装置、温度調節器、及び還流管を備えた反応容器に、キシレン63重量部を仕込み、これを130℃に加熱し、窒素雰囲気下で3時間かけて、以下のモノマー混合物を滴下した。
【0065】
グリシジルメタクリレート 7重量部
スチレン 25重量部
メチルメタクリレート 27重量部
イソボルニルメタクリレート 31重量部
ヒドロキシエチルメタクリレート 10重量部
tブチルパーオクトエート 7重量部
滴下後3時間保温した後、室温まで冷却し、樹脂溶液(固形分60重量%)を得た。
【0066】
上記樹脂溶液の一部を減圧下で加熱することにより、キシレンを留去し、固体の樹脂を得た。この樹脂のTgは77℃であり、SP値は9.9であり、数平均分子量は3900であった。
【0067】
(添加樹脂の作製)
撹拌装置、温度調節器、及び還流器を備えた反応容器に、キシレン100重量部とデカンジカルボン酸35重量部を仕込み、窒素雰囲気下120℃に加熱溶解した。次に、上記樹脂溶液167重量部(固形分100重量部に相当)を窒素雰囲気下で滴下した。3時間撹拌した後、エポキシ当量を測定し、反応率97%以上であることを確認した。次に、無水コハク酸6重量部を添加し、さらに4時間反応させた。赤外吸収スペクトルにより、コハク酸がほぼ0であることを確認した後冷却し、過剰のデカンジカルボン酸を濾過により除去し、さらに溶剤を留去することにより、添加樹脂A−4を得た。
【0068】
添加樹脂A−4のTgは28℃であり、SP値は10.4であり、数平均分子量は6000であった。また、酸価は60.3mgKOH/gであった。添加樹脂A−4におけるアルキレンユニット含有量は、5.9重量%であった。
【0069】
〔製造例2〜3及び5〜11〕添加樹脂A−2、A−3、及びA−5〜A−11の作製
(添加樹脂前駆体の作製)
モノマー混合物を、表1に示すモノマーの種類及びモノマー配合割合とする以外は、製造例1と同様にして、樹脂溶液(固形分60重量%)を得た。得られた樹脂の数平均分子量、Tg、及びSP値は、表1に示すとおりである。なお、表1には製造例1及び4も示している。
【0070】
【表1】
Figure 0004088095
【0071】
(添加樹脂の作製)
製造例2、3、8及び9については、得られた樹脂溶液を用い、製造例1と同様にして、表2に示すジカルボン酸を反応させ、添加樹脂A−2、A−3、A−8、及びA−9を得た。なお、表2において示す「SB20」は、長鎖脂肪族ジカルボン酸(岡村製油社製、平均分子量330)である。
【0072】
製造例5〜7及び10〜11については、製造例4と同様にして、表2に示すジカルボン酸を用いて反応させた後、表2に示す量の無水コハク酸を反応させて、添加樹脂A−5〜A−7及びA−10〜A−11を得た。
【0073】
得られたそれぞれの添加樹脂の数平均分子量、Tg、SP値、酸価、及びアルキレンユニット含有量、及び添加したジカルボン酸の消費割合は表2に示すとおりである。なお、表2には製造例1及び4も示している。
【0074】
【表2】
Figure 0004088095
【0075】
〔製造例12〕比較用添加樹脂B−1の作製
撹拌装置、温度調節器、及び還流管を備えた反応容器に、キシレン63重量部を仕込み、これを130℃に加熱し、窒素雰囲気下で3時間かけて、以下のモノマー混合物を滴下した。
【0076】
メタクリル酸 17重量部
スチレン 25重量部
メチルメタクリレート 40重量部
nブチルアクリレート 18重量部
tブチルパーオクトエート 7重量部
滴下後3時間保温した後、室温まで冷却し、樹脂溶液(固形分60重量%)を得た。
得られた樹脂のTgは30℃であり、SP値は11.5であり、数平均分子量は4000であり、酸価は107.1mgKOH/gであった。
【0077】
〔製造例13〕比較用添加樹脂B−2の作製
製造例3において、添加樹脂の前駆体に対し、デカンジカルボン酸209重量部の代わりに、コハク酸74重量部を反応させる以外は、製造例3と同様にして樹脂を作製した。
得られた樹脂のTgは12℃であり、SP値は10.8であり、数平均分子量は3000であり、酸価は113.5mgKOH/gであった。
【0078】
〔製造例14〕主樹脂C−1の作製
撹拌装置、温度調節器、及び還流管を備えた反応容器に、キシレン63重量部を仕込み、これを130℃に加熱し、窒素雰囲気下で3時間かけて、以下のモノマー混合物を滴下した。
【0079】
グリシジルメタクリレート 40重量部
スチレン 6重量部
メチルメタクリレート 52重量部
イソブチルメタクリレート 2重量部
tブチルパーオクトエート 7重量部
滴下後3時間保温して、樹脂溶液(固形分60重量%)を得た。
得られた樹脂のTgは50℃であり、SP値は10.8であり、数平均分子量は3500であった。
【0080】
〔製造例15〕主樹脂D−1の作製
撹拌装置、温度調節器、及び還流管を備えた反応容器に、キシレン63重量部を仕込み、これを130℃に加熱し、窒素雰囲気下で3時間かけて、以下のモノマー混合物を滴下した。
【0081】
グリシジルメタクリレート 45重量部
スチレン 4重量部
メチルメタクリレート 17重量部
イソブチルメタクリレート 34重量部
tブチルパーオクトエート 7重量部
滴下後3時間保温して、樹脂溶液(固形分60重量%)を得た。
得られた樹脂のTgは32℃であり、SP値は10.4であり、数平均分子量は3500であった。
【0082】
参考例1〕湿式法による熱硬化性粉体クリヤー塗料の作製
主樹脂C−1(固形分60重量%) 9.2重量部
主樹脂D−1(固形分60重量%) 103重量部
添加樹脂A−1 10重量部
1,10−デカンジカルボン酸 17.25重量部
セバチン酸 5.25重量部
シリコン系表面調整剤 0.1重量部
ベンゾイン 0.75重量部
紫外線吸収剤 1.2重量部
酸化防止剤 1.0重量部
上記の成分を上記の割合でサンドグラインドミルを用いて混合し、熱硬化性樹脂溶液を調製した。
【0083】
ポリビニルアルコール(日本合成化学社製、商品名「ゴーセノールGH−20」、ケン化度88%)15.5重量部をイオン交換水192重量部に溶解し、高分子水溶液を調製し、この高分子水溶液に上記の熱硬化性樹脂溶液を添加した。これをホモジナイザーにより混合することにより、懸濁液を調製した。この懸濁液にイオン交換水270重量部を加えて希釈し、これを反応容器に移した。懸濁液を30Torrまで減圧した後、35℃まで加熱した。その後さらに140Torrまで減圧した後、60℃まで加熱し、分散相中の溶剤を完全に留去した。この懸濁液を冷却した後、得られた粒子を吸引濾過し、次に真空乾燥機を用いて30℃で乾燥して、熱硬化性粉体クリヤー塗料を得た。
得られた粉体塗料の粒子径を測定したところ、体積平均粒子径が10.3μmであり、個数平均粒子径4.5μmであった。
【0084】
〔実施例6〜9及び12〜13、参考例1〜5及び10〜11、並びに比較例1〜3〕
参考例1において、主樹脂及び添加樹脂の種類及び配合割合を、表3に示す配合とする以外は、参考例1と同様にして、熱硬化性粉体クリヤー塗料を作製した。得られた粉体塗料の粒子径及び塗料固形分中の添加樹脂含有量を表3に示す。
【0085】
【表3】
Figure 0004088095
【0086】
参考例14〕乾式法による熱硬化性粉体クリヤー塗料の作製
主樹脂C−1(固形分100重量%) 113重量部
添加樹脂A−1 10重量部
1,10−デカンジカルボン酸 17.25重量部
セバチン酸 5.35重量部
シリコン系表面調整剤 0.1重量部
ベンゾイン 0.75重量部
紫外線吸収剤 1.2重量部
酸化防止剤 1.0重量部
上記成分を上記の割合で、ヘンシェルミキサーを用いて混合した。なお、主樹脂C−1は減圧下で加熱することにより溶剤を留去し、固体樹脂として用いた。
【0087】
得られた混合物をブスコニーダーを用いて溶融混練した後、ヘンシェルミキサーで粉砕し、さらにジェットミルを用いて微粉砕して、熱硬化性粉体クリヤー塗料を得た。
得られた粉体塗料の体積平均粒子径は13μmであり、個数平均粒子径は2.8μmであった。
【0088】
参考例15〜19〕
参考例14において、主樹脂及び添加樹脂の種類及び配合割合を、表4に示す配合とする以外は、参考例14と同様にして、熱硬化性粉体クリヤー塗料を作製した。得られた粉体塗料の粒子径及び塗料固形分中の添加樹脂含有量を表4に示す。
【0089】
【表4】
Figure 0004088095
【0090】
〔塗膜の作製及び評価〕
各実施例、各参考例及び各比較例で得られた熱硬化性粉体クリヤー塗料を用いて、塗膜を作製した。
【0091】
中塗りを施した基板上に、水性メタリックベース塗料(日本ペイント社製、商品名「スーパーラックM260シルバー」を乾燥膜厚が10〜20μmとなるように静電塗装し、80℃の熱風乾燥炉で10分間予備乾燥した。基板を室温まで冷却した後、各実施例、各参考例及び各比較例の粉体塗料を静電塗装し、140℃で25分間加熱して、水性メタリックベース塗料とともに、粉体塗料を硬化させた。これにより、膜厚40μmの粉体塗料の塗膜が形成された。
【0092】
得られた塗膜について、ウェーブスキャン(BYKカードナー社製)を用いて、G値及びF値を測定することにより塗膜外観を評価した。G値は小さい値であることが好ましく、10以下が合格である。F値は大きい値であることが好ましく、4.5以上が合格である。
【0093】
なお、中塗りを施した基板としては、リン酸亜鉛処理したダル鋼板に、自動車用電着塗料(日本ペイント社製、商品名「パワートップV−6」)を乾燥膜厚が約25μmとなるように電着塗装し、160℃で25分間焼き付けた後、中塗り塗料(日本ペイント社製、商品名「オルガP−2」)を乾燥膜厚が約40μmとなるように静電塗装し、140℃で25分間焼き付けて作製したものを用いた。
【0094】
各塗膜のG値及びF値を表5及び表6に示す。
【0095】
【表5】
Figure 0004088095
【0096】
【表6】
Figure 0004088095
【0097】
表5及び表6から明らかなように、本発明に従う実施例の粉体塗料を用いて作製した塗膜においては、G値が比較例に比べ小さくなっており、F値が比較例に比べ高くなっている。従って、本発明に従う実施例の粉体塗料を用いた場合には、表面が平滑な塗膜が得られており、塗膜外観が良好であることがわかる。
【0098】
〔塗膜の架橋密度の測定〕
各実施例、各参考例及び各比較例の粉体塗料をブリキ板上に静電塗装で塗布した後、140℃で25分間加熱して、膜厚40〜70μmの塗膜を形成した。この塗膜について、試料に微小振動を与えながら粘弾性を測定する動的粘弾性測定により架橋密度を測定した。測定結果を表7及び表8に示す。
【0099】
【表7】
Figure 0004088095
【0100】
【表8】
Figure 0004088095
【0101】
表7及び表8に示す結果から明らかなように、本発明に従う実施例の粉体塗料を用いた場合には、添加樹脂を添加していない比較例1の粉体塗料を用いた場合に比べ、いずれも塗膜における架橋密度が向上していることがわかる。
【0102】
以上のように、本発明に従う熱硬化性粉体塗料を用いることにより、外観が良好で、かつ架橋密度の高い塗膜を形成することができる。
【0103】
【発明の効果】
本発明によれば、塗膜外観が良好で、かつ架橋密度を向上させることができる熱硬化性粉体塗料組成物とすることができる。

Claims (6)

  1. (A)数平均分子量1000〜5000、ガラス転移温度(Tg)20〜100℃である、エポキシ基を有するアクリル樹脂からなる主樹脂と、
    (B)炭素数4〜20のアルキル基及び/またはアルキレンユニットを有する多価カルボン酸からなる固体硬化剤と、
    (C)炭素数4〜20のアルキル基及び/またはアルキレンユニットを側鎖に含み、かつ1分子中に2以上のカルボキシル基を含み、数平均分子量が1000〜10000であり、かつ酸価が10〜150であるアクリル樹脂からなる添加樹脂とを含む熱硬化性粉体塗料組成物であって、
    前記添加樹脂(C)が、塗料固形分中0.3〜20重量%含まれており、側鎖にエポキシ基及び水酸基を有するアクリル樹脂(C1)のエポキシ基と、炭素数4〜20のアルキル基及び/またはアルキレンユニットを有する多価カルボン酸からなる化合物(C2)のカルボキシル基とを反応させて得られ、多価カルボン酸のうちの1つのカルボキシル基が前記エポキシ基と反応し、他のカルボキシル基は未反応の状態で残存しており、さらに前記アクリル樹脂(C1)の水酸基に酸無水物を反応させることにより、カルボキシル基が導入されており、前記アルキル基及び/またはアルキレンユニットが2〜50重量%含まれている樹脂であり、
    前記主樹脂(A)が、エポキシ基含有アクリル樹脂(A1)とエポキシ基含有アクリル樹脂(A2)とを含み、前記樹脂(A1)及び前記樹脂(A2)が、
    (1)(樹脂A1のSP値)−(樹脂A2のSP値)が0.2〜1.5、
    (2)(樹脂A1のTg)−(樹脂A2のTg)が10℃以上、
    (3)樹脂A1のTgが40〜100℃で、かつ樹脂A2のTgが20〜50℃、
    (4)樹脂A1/樹脂A2の固形分重量比が5/95〜50/50であり、
    前記熱硬化性粉体塗料組成物が、塗料成分を含んだ有機溶剤溶液を水中に分散し、分散相中の有機溶剤を留去することにより分散相を固化して得られるものであることを特徴とする熱硬化性粉体塗料組成物。
  2. 前記化合物(C2)が、室温で固体の多価カルボン酸であることを特徴とする請求項1に記載の熱硬化性粉体塗料組成物。
  3. 前記化合物(C2)が、前記固体硬化剤(B)と同じ化合物を含むことを特徴とする請求項2に記載の熱硬化性粉体塗料組成物。
  4. 下塗りまたは下塗り及び中塗りが施された被塗装物の上に、水性ベース塗料を塗布する工程と、
    前記水性ベース塗料が塗布された被塗物の上に、請求項1〜のいずれか1項に記載の熱硬化性粉体塗料組成物を塗布する工程と、
    前記水性ベース塗料及び前記熱硬化性粉体塗料組成物が塗布された被塗装物を加熱することにより、前記水性ベース塗料と前記熱硬化性粉体塗料組成物とを同時に硬化させる工程とを備える塗膜形成方法。
  5. 請求項に記載の塗膜形成方法により得られることを特徴とする塗膜。
  6. 請求項に記載の塗膜が形成されていることを特徴とする塗装物。
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