JP4730497B2 - 触媒コンバータ用保持シール材及びその製造方法 - Google Patents

触媒コンバータ用保持シール材及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、触媒コンバータ用保持シール材及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、車両用、特に自動車の動力源として、ガソリンや軽油を燃料とする内燃機関が百年以上にわたり用いられてきた。しかしながら、排気ガスが健康や環境に害を与えることが次第に問題となってきている。それゆえ、最近では排気ガス中に含まれているCO、NOx、HC等を除去する排気ガス浄化用触媒コンバータや、PM等を除去するDPFが各種提案されるに至っている。通常の排気ガス浄化用触媒コンバータは、触媒担持体と、前記触媒担持体の外周を覆う金属製シェルと、両者間のギャップに配置される保持シール材とを備えている。触媒担持体としてはハニカム状に成形したコージェライト担体が用いられており、それには白金等の触媒が担持されている。
【0003】
また最近では、石油を動力源としない次期のクリーンな動力源の研究が進められており、そのうち特に有望なものとして例えば燃料電池がある。燃料電池とは、水素と酸素とが反応して水ができる際に得られる電気を、動力源として用いるものである。酸素は空気中からじかに取り出される反面、水素についてはメタノール、ガソリン等を改質して用いている。この場合、メタノール等の改質は触媒反応によって行われる。そして、このような燃料電池にも、触媒担持体と、触媒担持体の外周を覆う金属製シェルと、両者間のギャップに配置される保持シール材とを備える燃料電池用触媒コンバータが用いられている。触媒担持体としてはハニカム状に成形したコージェライト担体が用いられており、それには銅系の触媒が担持されている。
【0004】
上記の触媒コンバータを製造する方法の一例をここで簡単に紹介する。
あらかじめ作製された無機塩法用の紡糸原液を遠心ノズルに供給し、その遠心ノズルに働く遠心力により紡糸原液をノズル外部に吹き飛ばすことにより、前駆体繊維を形成する。次に、得られた前駆体繊維を集合させてマット状に集合させてる。このマット状集合体を金型で打ち抜くことによって、帯状の保持シール材を作製する。次に、この保持シール材を触媒担持体の外周面に巻き付けた後、金属製シェル内に前記触媒担持体を収容する。その結果、所望の触媒コンバータが完成する。このような収容状態において保持シール材は厚さ方向に圧縮されるため、保持シール材にはその圧縮力に抗する反発力(面圧)が生じる。そして、この反発力が作用することにより、触媒担持体が金属製シェル内に保持されるようになっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記のような吹き飛ばし法によるセラミック繊維の形成を行った場合、マット状集合体の坪量(単位面積あたりの重さ)の位置依存性が高くなる。即ち、繊維の集積度合いが一定でないため、マット状集合体を打ち抜く位置が異なると、得られる保持シール材の面圧値も異なってしまう。ゆえに、品質安定性に優れた保持シール材を得ることができなかった。
【0006】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、品質安定性に優れた触媒コンバータ用保持シール材を提供することにある。
また、本発明の別の目的は、上記の触媒コンバータ用保持シール材を得るのに好適な製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明では、マット状に集合したアルミナ−シリカ系繊維を構成要素とし、触媒担持体とその触媒担持体の外周を覆う金属製シェルとのギャップに配置される触媒コンバータ用保持シール材であって、前記アルミナ−シリカ系繊維の繊維径のバラツキが±3μm以内であることを特徴とする触媒コンバータ用保持シール材をその要旨とする。
【0008】
請求項2に記載の発明では、マット状に集合したアルミナ−シリカ系繊維を構成要素とし、触媒担持体とその触媒担持体の外周を覆う金属製シェルとのギャップに配置される触媒コンバータ用保持シール材であって、前記アルミナ−シリカ系繊維の繊維長のバラツキが±4mm以内であることを特徴とする触媒コンバータ用保持シール材をその要旨とする。
【0009】
請求項3に記載の発明では、マット状に集合したアルミナ−シリカ系繊維を構成要素とし、触媒担持体とその触媒担持体の外周を覆う金属製シェルとのギャップに配置される触媒コンバータ用保持シール材であって、前記アルミナ−シリカ系繊維の繊維径のバラツキが±3μm以内であり、繊維長のバラツキが±4mm以内であることを特徴とする触媒コンバータ用保持シール材をその要旨とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項において、ショット含有量が3重量%以下であるとした。
請求項5に記載の発明では、マット状に集合したアルミナ−シリカ系繊維を構成要素とし、触媒担持体とその触媒担持体の外周を覆う金属製シェルとのギャップに配置される触媒コンバータ用保持シール材であって、前記アルミナ−シリカ系繊維の平均繊維径が5μm〜15μmかつ繊維径のバラツキが±3μm以内であり、平均繊維長が5mm〜20mmかつ繊維長のバラツキが±4mm以内であり、ショットを含有しないことを特徴とする触媒コンバータ用保持シール材をその要旨とする。
【0011】
請求項6に記載の発明では、請求項1乃至5に記載の触媒コンバータ用保持シール材を製造する方法であって、アルミニウム塩水溶液、シリカゾル及び有機重合体を含む紡糸原液をノズルから連続的に吐出させることにより前駆体繊維の長繊維を得る紡糸工程と、前記長繊維を所定長さにチョップして短繊維を得る切断工程と、前記短繊維を三次元的に集合させてマット状繊維集合体にする成形工程と、前記マット状繊維集合体を加熱して焼結させる焼成工程とを含むことを特徴とする触媒コンバータ用保持シール材の製造方法をその要旨とする。
【0012】
以下、本発明の「作用」について説明する。
請求項1に記載の発明によると、繊維径のバラツキが±3μm以内のアルミナ−シリカ系繊維を用いて構成された保持シール材の場合、繊維が均一に集積しやすくなり、坪量の位置依存性が低くなる。ゆえに、面圧値のバラツキが小さくなり、品質的に安定したものとなる。
【0013】
請求項2に記載の発明によると、繊維長のバラツキが±4mm以内のアルミナ−シリカ系繊維を用いて構成された保持シール材の場合、繊維が均一に集積しやすくなり、坪量の位置依存性が低くなる。ゆえに、面圧値のバラツキが小さくなり、品質的に安定したものとなる。
【0014】
請求項3に記載の発明によると、繊維径バラツキ及び繊維長バラツキの両方を小さくしたことによる相乗効果によって、坪量の位置依存性がさらに低くなり、面圧値のバラツキがよりいっそう小さくなる。
【0015】
請求項4に記載の発明によると、保持シール材におけるショット(非繊維質)の含有量が3重量%以下であることから、坪量の位置依存性がさらに低くなり、面圧値のバラツキがよりいっそう小さくなる。
【0016】
請求項5に記載の発明によると、坪量の位置依存性が極めて低くなり、面圧値のバラツキがよりいっそう小さくなることに加え、面圧及びシール性の向上を図ることができる。
【0017】
平均繊維径が5μm未満であると、繊維自体の強度が低くなり十分な面圧を得ることが困難になるばかりでなく、繊維が呼吸器系に吸い込まれやすくなるという不都合が生じる。平均繊維径が15μmを超える場合、マット状繊維集合体にしたときに通気抵抗が小さくなり、シール性が悪くなる。それに加え、破壊強度の低下につながるおそれがある。これは、繊維表面積の増加に伴う小傷の増加に起因するものと考えられる。
【0018】
平均繊維長が5mm未満であると、繊維が呼吸器系に吸い込まれやすくなるという不都合が生じる。また、もはや繊維としての特徴を実質上示さなくなり、マット状繊維集合体にしたときに繊維同士に好適な絡み合いが起こらず、十分な面圧を得ることが困難になる。平均繊維長が20mmを超える場合、繊維同士の絡み合いが強くなりすぎるため、マット状繊維集合体としたときに繊維が不均一に集積しやすくなる。即ち、坪量の位置依存性が高くなり、面圧値のバラツキの低減を阻害する要因になる。
【0019】
ショットを含有している場合、坪量の位置依存性が高くなり、面圧値のバラツキの低減を阻害する要因になる。
請求項6に記載の発明によると、無機塩法による紡糸を行っているため、吐出部の形状・大きさを適宜設定することにより、繊維径を狭い範囲に制御することができる。よって、繊維径のバラツキを小さくすることができる。また、長繊維をチョップして短繊維を得る方法であるため、吹き飛ばしにより繊維を得る方法とは異なり、繊維長を狭い範囲に制御することができる。よって、繊維長のバラツキを小さくすることができる。これに加えて、ショットの発生も回避することができる。従って、この製造方法によれば、上記の保持シール材を簡単にかつ確実に得ることができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体化した実施形態の自動車排気ガス浄化装置用触媒コンバータを図1〜図3に基づき詳細に説明する。
【0021】
図3に示される本実施形態の触媒コンバータ1は、自動車の車体において、エンジンの排気管の途中に設けられる。エンジンから触媒コンバータ1までの距離は比較的短いため、触媒コンバータ1には約700℃〜900℃の高温の排気ガスが供給されるようになっている。エンジンがリーンバーンエンジンである場合には、触媒コンバータ1には約900℃〜1000℃という、さらに高温の排気ガスが供給されるようになっている。
【0022】
図3に示されるように、本実施形態の触媒コンバータ1は、基本的に、触媒担持体2と、触媒担持体2の外周を覆う金属製シェル3と、両者2,3間のギャップに配置される保持シール材4とによって構成されている。
【0023】
前記触媒担持体2は、コージェライト等に代表されるセラミック材料を用いて作製されている。この触媒担持体2は断面円形状をした柱状部材となっている。また、触媒担持体2は、軸線方向に沿って延びる多数のセル5を有するハニカム構造体であることが好ましい。セル壁には排気ガス成分を浄化しうる白金やロジウム等の貴金属系触媒が担持されている。なお、触媒担持体2として、上記のコージェライト担体のほかにも、例えば炭化珪素、窒化珪素等のハニカム多孔質焼結体等を用いてもよい。
【0024】
前記金属製シェル3としては、例えば組み付けに際して圧入方式を採用する場合には、断面O字状の金属製円筒部材が用いられる。なお、円筒部材を形成するための金属材料としては、耐熱性や耐衝撃性に優れた金属(例えばステンレス等のような鋼材等)が選択されることがよい。圧入方式に代えていわゆるキャニング方式を採用する場合には、前記断面O字状の金属製円筒部材を軸線方向に沿って複数片に分割したもの(即ちクラムシェル)が用いられる。
【0025】
そのほか、組み付けに際して巻き締め方式を採用する場合には、例えば断面C字状ないしU字状の金属製円筒部材、言い換えるといわば軸線方向に沿って延びるスリット(開口部)を1箇所にのみ有する金属製円筒部材が用いられる。この場合、触媒担持体2の組み付けに際し、触媒担持体2に保持シール材4を固定したものを金属製シェル3内に収め、その状態で金属製シェル3を巻き締めた後に開口端が接合(溶接、接着、ボルト締め等)される。溶接、接着、ボルト締め等といった接合作業は、キャニング方式を採用したときにも同様に行われる。
【0026】
図1に示されるように、この保持シール材4は長尺状のマット状物であって、その一端には凹状合わせ部11が設けられ、他端には凸状合わせ部12が設けられている。図2に示されるように、触媒担持体2への巻き付け時には、凸状合わせ部12が凹状合わせ部11にちょうど係合するようになっている。
【0027】
本実施形態の保持シール材4は、マット状に集合したセラミック繊維(即ち繊維集合体)を主要な要素として構成されたものである。前記セラミック繊維として、本実施形態ではアルミナ−シリカ系繊維6が用いられている。この場合、ムライト結晶含有量が0重量%以上かつ10重量%以下のアルミナ−シリカ系繊維6を用いることがより好ましい。このような化学組成であると、非晶質成分が少なくなることから耐熱性に優れたものとなり、かつ圧縮荷重印加時の反発力が高いものとなるからである。従って、ギャップに配置された状態で高温に遭遇したときであっても、発生する面圧の低下が比較的起こりにくくなる。
【0028】
アルミナ−シリカ系繊維6におけるアルミナ含有量の採り得る範囲は50重量%〜100重量%であり、シリカ含有量の採り得る範囲は0重量%〜50重量%である。ただし、アルミナ68重量%〜83重量%かつシリカ32重量%〜17重量%であることがよく、具体的にはAl23:SiO2=72:28であることがなおよい。
【0029】
アルミナが68重量%未満の場合またはシリカが32重量%を超える場合には、耐熱性の向上及び圧縮荷重印加時の反発力の向上を十分に達成できなくなるおそれがある。アルミナが83重量%を超える場合またはシリカが17重量%未満の場合についても同様に、耐熱性の向上及び圧縮荷重印加時の反発力の向上を十分に達成できなくなるおそれがある。
【0030】
アルミナ−シリカ系繊維6の平均繊維径は5μm〜15μmであることがよく、繊維径のバラツキが±3μm以内であることがよい。この場合、平均繊維径が7μm〜12μm、繊維径のバラツキが±2μm以内であることがよりよい。
【0031】
平均繊維径が5μm未満であると、繊維自体の強度が低くなり十分な面圧を得ることが困難になるばかりでなく、繊維が呼吸器系に吸い込まれやすくなるという不都合が生じる。平均繊維径が15μmを超える場合、マット状繊維集合体にしたときに通気抵抗が小さくなり、シール性が悪くなる。それに加え、破壊強度の低下につながるおそれがある。これは、繊維表面積の増加に伴う小傷の増加に起因するものと考えられる。なお、繊維径のバラツキが±3μmを超える場合についても、繊維が不均一に集積しやすくなり、坪量の位置依存性が高くなってしまう。
【0032】
アルミナ−シリカ系繊維6の平均繊維長は5mm〜20mmであることがよく、繊維長のバラツキが±4mm以内であることがよい。この場合、平均繊維長が8mm〜13mm、繊維長のバラツキが±2mm以内であることがよりよい。
【0033】
平均繊維長が5mm未満であると、繊維が呼吸器系に吸い込まれやすくなるという不都合が生じる。また、もはや繊維としての特徴を実質上示さなくなり、マット状繊維集合体にしたときに繊維同士に好適な絡み合いが起こらず、十分な面圧を得ることが困難になる。平均繊維長が20mmを超える場合、繊維同士の絡み合いが強くなりすぎるため、マット状繊維集合体としたときに繊維が不均一に集積しやすくなる。即ち、坪量の位置依存性が高くなり、面圧値のバラツキの低減を阻害する要因になる。なお、繊維長のバラツキが±4mmを超える場合についても、繊維が不均一に集積しやすくなり、坪量の位置依存性が高くなってしまう。
【0034】
保持シール材4におけるショット含有量は3重量%以下であることがよく、特には0重量%であること、即ちショットを全く含有していないことが望ましい。
ショットを含有している場合、坪量の位置依存性が高くなり、面圧値のバラツキの低減を阻害する要因になるからである。
【0035】
また、アルミナ−シリカ系繊維6の繊維自体の引っ張り強度は、0.1GPa以上、特には0.5GPa以上であることがよい。アルミナ−シリカ系繊維6の断面形状は、真円形状でもよいほか、異形断面形状(例えば楕円形状、長円形状、略三角形状等)でも構わない。
【0036】
組み付け前の状態における保持シール材4の厚さは、触媒担持体2と金属製シェル3とがなすギャップの1.1倍〜4.0倍程度、さらには1.5倍〜3.0倍程度であることが望ましい。前記厚さが1.1倍未満であると、高い担持体保持性を得ることができず、触媒担持体2が金属製シェル3に対してズレたりガタついたりするおそれがある。勿論、この場合には高いシール性も得られなくなるため、ギャップ部分からの排気ガスのリークが起こりやすくなり、高度な低公害性を実現できなくなってしまう。また、前記厚さが4.0倍を超えると、特に圧入方式を採用した場合には、触媒担持体2の金属製シェル3への配置が困難になってしまう。よって、組み付け性の向上を達成できなくなるおそれがある。
【0037】
また、組み付け後における保持シール材4のGBD(嵩密度)は、0.10g/cm3〜0.30g/cm3、さらには0.10g/cm3〜0.25g/cm3となるように設定されることが好ましい。GBDの値が極端に小さいと、十分に高い初期面圧を実現することが困難になる場合がある。一方、GBDが大きすぎると、材料として使用すべきアルミナ−シリカ系繊維6の量が増え、コスト高を招きやすくなる。
【0038】
組み付け状態における保持シール材4の初期面圧は50kPa以上、さらには70kPa以上であることが好ましい。初期面圧の値が高ければ、面圧の経時劣化が起こったとしても、触媒担持体2の好適な保持性を維持することができるからである。
【0039】
なお、保持シール材4に対し必要に応じて、ニードルパンチ処理や樹脂含浸処理等を施してもよい。これらの処理を施すことにより、保持シール材4を厚さ方向に圧縮して肉薄化することが可能となるからである。
【0040】
次に、触媒コンバータ1を製造する手順を説明する。
まず、アルミニウム塩水溶液、シリカゾル及び有機重合体を混合し、紡糸原液を作製する。言い換えると、無機塩法により紡糸原液を作製する。アルミナ源であるアルミニウム塩水溶液は、紡糸原液に粘性を付与するための成分でもある。なお、このような水溶液として、塩基性アルミニウム塩の水溶液を選択することがよい。シリカ源であるシリカゾルは、繊維に高い強度を付与するための成分でもある。有機重合体は紡糸原液に曳糸性を付与するための成分である。
【0041】
紡糸原液には消泡剤等が添加されていてもよい。なお、アルミニウム塩及びシリカゾルの比率を変更することにより、アルミナ−シリカ系繊維6の化学組成をある程度コントロールすることができる。
【0042】
次いで、得られた紡糸原液を減圧濃縮することにより、紡糸に適した濃度・温度・粘度等に調製した紡糸原液とする。ここでは、20重量%程度であった紡糸原液を濃縮して30重量%〜40重量%程度にすることがよい。また、粘度を10ポアズ〜2000ポアズに設定することがよい。
【0043】
さらに、調製後の紡糸原液を紡糸装置のノズルから空気中に連続的に噴出するとともに、形成された前駆体繊維を延伸しながら巻き取るようにする。この場合、例えば乾式圧力紡糸法などが採用されることが好ましい。
【0044】
なお、吐出条件、延伸条件、巻き取り条件を固定して、ノズル吐出部の断面形状・大きさを適宜設定することにより、繊維径を狭い範囲に制御することができる。このことは繊維径のバラツキ低減に寄与している。
【0045】
続いて、上記工程を経て得られた前駆体繊維の長繊維を0.5mm〜10mm程度の長さにチョップして短繊維化する。このような短繊維化法のメリットは、繊維長を狭い範囲に制御可能なため繊維長のバラツキを小さくできることと、ショットの発生を未然に回避できることである。つまり、得られる短繊維の長さは、基本的に切断装置の機械的精度に依存し、そのバラツキ幅は非常に小さい。
【0046】
この後、短繊維を集綿、解繊及び積層することにより、あるいは、短繊維を水に分散させて得た繊維分散液を成形型内に流し込んで加圧・乾燥することにより、マット状の繊維集合体を得る。
【0047】
次に、焼成工程を行ってマット状繊維集合体をセラミック化(結晶化)することにより、前駆体繊維を硬化させてアルミナ−シリカ系繊維6とする。
前記焼成工程においては、得られるアルミナ−シリカ系繊維6におけるムライト結晶含有量が10重量%以下となるような焼成条件を設定することが望ましい。例えば、焼成工程における焼成温度は1000℃〜1300℃に設定されることがよい。焼成温度が1000℃未満であると、前駆体繊維を完全に乾燥・焼結させることができず、優れた耐熱性及び高い圧縮荷重印加時の反発力を保持シール材4に確実に付与できなくなるおそれがある。逆に、焼成温度が1300℃を超えると、アルミナ−シリカ系繊維6におけるムライト結晶化が進行しやすくなる。このため、ムライト結晶含有量を10重量%以下に抑えることが困難になり、優れた耐熱性及び高い圧縮荷重印加時の反発力を保持シール材4に確実に付与できなくなるおそれがある。
【0048】
さらに、この繊維集合体を所定形状に打ち抜いて保持シール材4とする。この後、必要に応じて保持シール材4に対する有機バインダの含浸を行った後、さらに保持シール材4を厚さ方向に圧縮成形してもよい。この場合の有機バインダとしては、アクリルゴムやニトリルゴム等のようなラテックス等のほか、ポリビニルアルコール、アクリル樹脂等が挙げられる。
【0049】
そして、前記保持シール材4を触媒担持体2の外周面に巻き付けて有機テープ13を固定する。その後、圧入、キャニングまたは巻き締めを行えば、所望の触媒コンバータ1が完成する。
【0050】
以下、上記実施形態をより具体化した実施例及びその比較例について説明する。
【0051】
【実施例及び比較例】
(実施例)
実施例では、以下のようにして保持シール材4の面圧評価用サンプルを作製した。
【0052】
まず、塩基性塩化アルミニウム水溶液(23.5重量%)、シリカゾル(20重量%、シリカ粒径15nm)、ポリビニルアルコール(10重量%)及び消泡剤(n−オクタノール)を混合し、紡糸原液を作製した。次いで、得られた紡糸原液をエバポレータを用いて50℃で減圧濃縮し、濃度38重量%、粘度1000ポアズ〜2000ポアズの紡糸原液に調製した。
【0053】
調製後の紡糸原液を紡糸装置のノズルから空気中に連続的に噴出するとともに、形成された前駆体繊維を延伸しながら巻き取った。
その際、繊維径を制御することを目的として、次のような条件を設定した。即ち、ノズル吐出部の直径を0.1mm〜0.2mm、長さを0.3mm〜2.0mmに設定するとともに、吐出速度を1.5cm/s〜2.0cm/sに設定して、紡糸原液を吐出させた。紡糸原液に由来する前駆体繊維を前記吐出速度の100倍〜200倍の速度で延伸した後、それを直径約12cmのワインダにより巻き取った。ノズル吐出部とワインダとの間に2m〜4mの筒を設け、その筒内に前駆体繊維を通すようにした。筒内上半分の温度を35℃〜40℃に設定し、筒内下半分の温度を25℃〜30℃に設定した。
【0054】
続いて、ギロチンカッターを用いて、前駆体繊維の長繊維を10mmとなるようにチョップして短繊維化した。その後、この短繊維(約1.0g)を水に分散させ、得られた繊維分散液を成形型枠内に流し込んで加圧・乾燥することにより、縦横25mm角のマット状繊維集合体を得た。
【0055】
さらに、空気雰囲気に保持された電気炉内で、上記マット状繊維集合体に対する250℃かつ30分間の加熱(前処理)を行った後、同じく電気炉内で1250℃かつ10分間の焼成を行った。
【0056】
その結果、ムライト結晶含有量が約8重量%、アルミナ/シリカの重量比が72:28である真円状アルミナ−シリカ系繊維6からなる保持シール材4のサンプルを得た。
【0057】
このようにして得られた実施例のサンプルにおける複数の箇所からアルミナ−シリカ系繊維6を採取し、平均繊維径(μm)及びその最小値・最大値、平均繊維長(mm)及びその最小値・最大値、ショット含有量(%)を求めた。その結果を表1に示す。これによると実施例では、繊維径のバラツキ及び繊維長のバラツキが極めて小さく、上記好適範囲内に入っていることが確認された。また、サンプル中にショットが全く含まれていなかった。
【0058】
次に、大きな1枚のマット状繊維集合体から25mm角のサンプルを複数個打ち抜き、それらの面積と重量とに基づき坪量をそれぞれ求めるとともに、オートグラフにより面圧をそれぞれ測定した。これらの結果も表1に示す。なお、ここでの面圧測定値はGBDを0.30g/cm3に設定した場合のデータとなっている。これによると実施例では、坪量のバラツキ及び面圧のバラツキが小さく、品質的に安定していることが確認された。しかも、平均面圧値自体も高くなることがわかった。
(比較例)
比較例では、実施例と同じ紡糸原液をエバポレータを用いて50℃で減圧濃縮し、濃度38重量%、粘度10ポアズ〜100ポアズの紡糸原液に調製した。
【0059】
紡糸装置としては、0.2mm〜0.8mmの吐出孔が等間隔に16箇所配置された直径50mm〜100mmの円盤状遠心ノズルを用いた。そして、このノズルを1000rpm〜2000rpmの回転数で回転させたときの遠心力により紡糸原液を吐出し、繊維化した。さらに、得られた前駆体繊維を0.5kPa〜1.0kPaかつ30℃のエアでブローし、集綿、積層してマット状繊維集合体とした。これを縦横25mm角に成形した後、前記実施例と同じ条件で前処理及び焼成を行い、セラミック化させた。
【0060】
このような吹き飛ばし法により得られた比較例のサンプルにおける複数の箇所からアルミナ−シリカ系繊維6を採取し、平均繊維径(μm)及びその最小値・最大値、平均繊維長(mm)及びその最小値・最大値、ショット含有量(%)を求めた。その結果を表1に示す。これによると比較例では、繊維径のバラツキ及び繊維長のバラツキが実施例に比べて相当大きくなることが確認された。また、サンプル中には3重量%以上のショットが含まれていた。
【0061】
次に、大きな1枚のマット状繊維集合体から25mm角のサンプルを複数個打ち抜き、それらの面積と重量とに基づき坪量をそれぞれ求めるとともに、オートグラフにより面圧をそれぞれ測定した。これらの結果も表1に示す。なお、ここでの面圧測定値はGBDを0.30g/cm3に設定した場合のデータとなっている。これによると比較例では、坪量のバラツキ及び面圧のバラツキが実施例に比べて大きく、品質的に不安定なものであることが確認された。しかも、実施例に比べて平均面圧値が相当低かった。
【0062】
【表1】
Figure 0004730497
従って、本実施形態によれば以下のような効果を得ることができる。
【0063】
(1)本実施形態の保持シール材4では、アルミナ−シリカ系繊維6の繊維径のバラツキが±3μm以内であり、繊維長のバラツキが±4mm以内であることに加え、ショット含有量が3重量%以下になっている。従って、これらの相乗効果によって、坪量の位置依存性が極めて低くなり、面圧値のバラツキを非常に小さくすることができる。ゆえに、品質的に安定した保持シール材4を実現することができる。
【0064】
(2)本実施形態の保持シール材4によると、面圧値バラツキが小さくなることに加えて、面圧値自体も向上することから、1枚の保持シール材4を作製するのに必要なアルミナ−シリカ系繊維6の量が少なくて済む。よって、保持シール材4の低コスト化を達成することが可能となる。
【0065】
(3)本実施形態の製造方法によると、無機塩法による紡糸を行っているため繊維径を狭い範囲に制御することができ、繊維径のバラツキを小さくすることができる。また、長繊維を機械的にチョップして短繊維を得る方法であるため、吹き飛ばしにより繊維を得る方法とは異なり、繊維長を狭い範囲に制御することができる。よって、繊維長のバラツキを小さくすることができる。これに加えて、ショットの発生も回避することができる。従って、この製造方法によれば、上記の保持シール材4を簡単にかつ確実に得ることができる。
【0066】
以上のことから明らかなように、本実施形態の製造方法は、上記の保持シール材4を得るのに極めて好適な方法であると言うことができる。
なお、本発明の実施形態は以下のように変更してもよい。
【0067】
・ 触媒担持体2としては、実施形態のようなハニカム状に成形したコージェライト担体が用いられるほか、例えば炭化珪素、窒化珪素等のハニカム多孔質焼結体などが用いられてもよい。
【0068】
・ 紡糸原液の組成は実施形態にて例示されたもののみに限定されることはなく、紡糸性や繊維の物性の大幅な低下を来さない限り、任意に変更しても構わない。
【0069】
・ 前駆体繊維の長繊維をチョップして短繊維化した後に焼成を行う実施形態の方法に代えて、長繊維をチョップして短繊維化する前にあらかじめ焼成を行ってもよい。
【0070】
・ ギロチンカッター以外の機械的切断装置を用いて長繊維を切断することとしてもよい。
・ 実施形態では、本発明の保持シール材4を排気ガス浄化装置用触媒コンバータ1に使用した例を示した。勿論、本発明の保持シール材4は、排気ガス浄化装置用触媒コンバータ1以外のもの、例えばディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)や、燃料電池改質器用触媒コンバータ等に使用することも許容される。
【0071】
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した実施形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
(1) アルミニウム塩水溶液、シリカゾル及び有機重合体を含む紡糸原液をノズルから連続的に吐出させることにより前駆体繊維の長繊維を得る紡糸工程と、前記長繊維を所定長さにチョップして短繊維を得る切断工程と、前記短繊維を加熱して焼結させる焼成工程とを含むことを特徴とする、繊維長バラツキ・繊維径バラツキの小さいセラミック短繊維の作製方法。
【0072】
【発明の効果】
以上詳述したように、請求項1〜5に記載の発明によれば、品質安定性に優れた触媒コンバータ用保持シール材を提供することができる。
【0073】
請求項6に記載の発明によれば、上記の触媒コンバータ用保持シール材を得るのに好適な製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を具体化した実施形態の触媒コンバータ用保持シール材の斜視図。
【図2】前記実施形態の触媒コンバータの製造工程を説明するための斜視図。
【図3】前記実施形態の触媒コンバータの部分断面図。
【符号の説明】
1…触媒コンバータ、2…触媒担持体、3…金属製シェル、4…触媒コンバータ用保持シール材、6…アルミナ−シリカ系繊維。

Claims (6)

  1. マット状に集合したアルミナ−シリカ系繊維を構成要素とし、触媒担持体とその触媒担持体の外周を覆う金属製シェルとのギャップに配置される触媒コンバータ用保持シール材であって、前記アルミナ−シリカ系繊維の平均繊維径が7μm〜15μmかつ繊維径のバラツキが±3μm以内であることを特徴とする触媒コンバータ用保持シール材。
  2. マット状に集合したアルミナ−シリカ系繊維を構成要素とし、触媒担持体とその触媒担持体の外周を覆う金属製シェルとのギャップに配置される触媒コンバータ用保持シール材であって、前記アルミナ−シリカ系繊維の平均繊維径が7μm〜15μmであり、繊維長のバラツキが±4mm以内であることを特徴とする触媒コンバータ用保持シール材。
  3. マット状に集合したアルミナ−シリカ系繊維を構成要素とし、触媒担持体とその触媒担持体の外周を覆う金属製シェルとのギャップに配置される触媒コンバータ用保持シール材であって、前記アルミナ−シリカ系繊維の平均繊維径が7μm〜15μmかつ繊維径のバラツキが±3μm以内であり、繊維長のバラツキが±4mm以内であることを特徴とする触媒コンバータ用保持シール材。
  4. ショット含有量が3重量%以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の触媒コンバータ用保持シール材。
  5. マット状に集合したアルミナ−シリカ系繊維を構成要素とし、触媒担持体とその触媒担持体の外周を覆う金属製シェルとのギャップに配置される触媒コンバータ用保持シール材であって、前記アルミナ−シリカ系繊維の平均繊維径がμm〜15μmかつ繊維径のバラツキが±3μm以内であり、平均繊維長が5mm〜20mmかつ繊維長のバラツキが±4mm以内であり、ショットを含有しないことを特徴とする触媒コンバータ用保持シール材。
  6. 請求項1乃至5に記載の触媒コンバータ用保持シール材を製造する方法であって、アルミニウム塩水溶液、シリカゾル及び有機重合体を含む紡糸原液をノズルから連続的に吐出させることにより前駆体繊維の長繊維を無機塩法にて得る紡糸工程と、前記長繊維を所定長さにチョップして短繊維を得る切断工程と、前記短繊維を三次元的に集合させてマット状繊維集合体にする成形工程と、前記マット状繊維集合体を加熱して焼結させる焼成工程とを含むことを特徴とする触媒コンバータ用保持シール材の製造方法。
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