以下、本発明の一実施の形態について説明する。
まず、第1の実施の形態の光ディスクについて説明する。
本実施の形態の光ディスク4は、図2、図27のように、中心から一定の間隔でスパイラル状に形成された溝270、272等と、溝と溝との間のランド269、271、273等をそれぞれトラックとして用いるランド・グルーブトラック構造である。図2に示すように、トラック270等の一周は、整数個のブロック11に分割され、各ブロック11には、同期領域12、データ領域16、CRC領域17が設けられる。なお、ブロック11の設け方は、一般的によく知られた方式で設けることができる。例えば、光ディスク4の最内周のトラックから最外周のトラックまで、1周のトラックあたりのブロック11の数を一定にするCAV(Constant Angular Velosity)方式や、半径方向について光ディスク4をいくつかのゾーンにわけ、同じゾーン内では1周のトラックあたりのブロック11の数を一定にし、外側のゾーンでは内側のゾーンよりも1周のトラックあたりのブロック11の数を多くするM−CAV(Modefied CAV)方式を用いることができる。
データ領域16のデータは、図27のように、トラック270等に沿って形成された情報マーク274によって記録される。トラック270等のアドレス情報13は、データ領域16のトラック270等の境界を揺動させることによって記録される。よって、データ領域16には、情報マーク274によるデータと、トラック270等の境界の揺動によるアドレス情報13とが同じ領域に同時に記録される。
なお、本実施の形態の光ディスク4の情報マーク274は、後述するように、光ディスク4の表面にレーザ光を絞り込んで、光ディスク4の記録膜11を加熱することによって形成され、光の反射率が周囲とは異なるマークである。ただし、本発明の光ディスク4は、情報マーク274が、熱によって形成される反射率が異なるマークとして形成されるものに限定されるものではない。偏光方向が周囲とは異なるマーク等の他の種類のマークや、他の形成方法によって形成されるマークを情報マーク274として用いる光ディスクを光ディスク4として用いることも可能である。
同期領域12は、アドレス情報13やデータ領域16のデータを読み出す際に用いる参照信号やクロック信号を作成するために用いられる。同期領域12の構成については、後述する。CRC領域17は、ユーザデータが正しく読み出されているかどうかをチェックするための情報が記録されている。この情報は、従来のフォーマット(図25)で用いられているCRC部と同じ情報である。CRC領域17の情報は、情報マーク274で記録されている。なお、本実施の形態では、CRC領域17においても、同期領域12と同じく、トラック270等の境界14、15を揺動させてアドレス情報13を記録している。
データ領域16およびCRC領域17のトラック270等の境界の揺動によるアドレス情報13の表示方法について説明する。
本実施の形態では、データ領域16およびCRC領域17のトラック270等の境界14、15を図27のようにそれぞれ異なる揺動波形で揺動させ、この揺動波形により、アドレス情報13を記録する。アドレス情報13は、それぞれの境界14、15が、光ディスク4上のどこに位置するかを示す情報である。したがって、1つの溝トラック270であっても、溝トラック270の内周側の境界14の揺動波形と、外周側の境界15の揺動波形とは異なる。
具体的には、図3のように、トラック270等の境界14、15を区切り、一区切りを1ビットとして、揺動波形でデータ”0”またはデータ”1”を表す。なお、各ブロック11に含まれるビット数は、内周側のトラックであっても、外周側のトラックであっても一定となるようにする。各ビット内には、予め定めた数の波(図3では、5周期の波)が含まれるように、揺動波形の周期を定める。そして、あるビットにおいて、データ”0”の揺動波形は、データ”1”の揺動波形に対して、振動周期は等しいが、逆相(位相差180度)の関係になるように、揺動波形の位相を定める。ただし、溝トラック270、272の内周側の境界14上の揺動波形は、必ず、向かい合う外周側の境界15上の揺動波形に対して、位相が90度進むか遅れるかの関係、すなわち直交関係になるようにする。このように位相を定めると、ランドトラック271等からみた場合にも、内周側の境界15上の揺動波形は、向かい合う外周側の境界14上の揺動波形に対して、位相が90度進むか遅れるかの関係、すなわち直交関係になる。なお、このように各ビットごとに揺動波形の位相を定めるため、隣り合うビットとビットとが異なるデータを表す場合、すなわち、隣り合うビットで”1””0”または”0””1”を表す場合には、両ビットの境界において、揺動波形が不連続になる。
図3に、実際のアドレス情報13を示すトラック270等の境界14、15の揺動波形を示す。ただし、図3においては、便宜上各トラック270、271、272等を直線状に描いているが、実際の光ディスク4上では、同心円状になる。図3のように、溝トラック270では、内周側の境界14には”011”のデータが揺動波形により表現され、外周側の境界15には”101”が表現されている。溝トラック272の内周側の境界には”110”のデータが揺動により表現され、外側には”111”が表現されている。
このように、各境界14、15ごとに、その境界の光ディスク4上での位置を示す異なるアドレス情報13を記録しておくことにより、情報マーク274の再生時にトラックの両側の境界14、15のアドレス情報13を読み出すことができる。例えば、溝トラック270に沿って再生スポット1を移動させて、溝トラック270上の情報を読み出す際には、情報マーク274で表されているデータと同時に、内周側の境界14から”011”が外周側の境界15から”101”がアドレス情報13として読み出される。よって、”011”と”101”の組み合わせにより、再生スポット1が照射されているトラックが溝トラック270であることが確認できる。また、万一、トラッキングサーボがはずれ、再生スポット1が照射されているトラックがどのトラックかわからなくなってしまった場合であっても、検出されているアドレス情報13が例えば、”101”と”110”の組み合わせであれば、再生スポット1がランドトラック271側にずれていることを知ることができる。よって、隣接する溝トラック270等とランドトラック271等のどちら側に再生スポット1が照射されているのかを容易に判別することができる。
なお、揺動波形は、光ディスク4の製造時に溝トラック270、272等の溝を形成する際に、溝の境界が揺動波形を描くように溝を形成することによって描く。これについては後述する。また、図3では、1ビットに5周期の揺動波形が含まれるようにしているが、本発明は、5周期に限られるものではなく、何周期であっても構わない。
同期領域12の具体的な構成としては、図7(a)、図7(b)、図7(c)の構成のいずれかを用いることができる。図7(a)は、光学的に識別可能なマーク51、52、53、54が配置されている構造である。この場合、同期領域12では、トラック270、272等の溝は設けられておらず、ランドトラック271等と同一平面である。マーク51等は、この平面上に形成された凹部であり、光ディスク4の製造時に、溝トラック270、272の溝を形成する工程で同時に形成される。これらのマーク51、52、53、54は、各トラック270等の境界14、15付近に配置され、隣接するトラック間で共有される。例えば、溝トラック270の同期領域12は、マーク51と52とを有し、ランドトラック271の同期領域12は、マーク52と53とを有し、溝トラック272の同期領域12は、マーク53と54とを有するのである。同期領域12の2つのマーク51等のトラック270等の長手方向の間隔は、そのトラック270等のアドレス信号の揺動波形と同期するように形成されている。よって、同期領域12のマーク51等の間隔から得た信号を分周することにより、揺動波形に同期した参照信号を作成することができる。また、2つのマーク51等を、トラック270の中心ではなく境界14、15付近に配置して、トラック270の中心から左右に振れるようにしているため、サンプルサーボでよく知られた手法により、例えば、マーク51と52のレベル差を見ることにより再生スポット1のトラック中心からのずれを知ることができる。これにより、同期領域12の信号から、アドレス情報13のトラックずれの補正が行うことができる。
図7(b)、(c)の構成の同期領域12は、同期領域12にも溝トラック270、272を形成し、トラック270等の境界14、15の揺動波形で同期信号を表したものである。図7(b)の同期領域12の揺動波形は、溝トラック270等の内周側の境界14の揺動波形と外周側の境界15の揺動波形とを同一の周期および位相にしている。また、同期領域12の揺動波形は、この揺動波形を検出しやすくために、アドレス情報13の揺動波形よりも振幅を大きくしている。この構成では、再生スポット1が溝トラック270、272等、ランドトラック271等、その中間のいずれに照射されていも、同期領域の揺動波形に一致した領域を検出することにより同期領域12が検出できる。また、図7(b)の構成は、同期領域12の長さを他の領域の1ビットの長さと同じ5周期分としているが、図7(c)の構成では、同期領域12の長さを短くしてブロック11内のデータ領域13の割合を高めるために、同期領域12の揺動波形を一周期として、その代わりに、図7(b)よりもさらに大振幅の波を用いたものである。
つぎに、上述の本実施の形態の光ディスク4から、揺動波形で表されているアドレス情報13の検出する方法の原理について図4を用いて説明する。本発明のアドレス情報検出方法の原理を分かりやすく説明するために、まず信号波形を模式的に表した図4の波形を用いて説明する。図5(a)のように、1本のトラック、例えばランドトラック271に沿って再生スポット1を移動させ、その反射光束を、受光面が2分割された分割検出器33によって検出すると、分割検出器33の検出信号、すなわち左右の受光面の出力差信号は、ランドトラック271の内周側の境界15の揺動波形を示す信号415または416と、トラック271の外周側の境界14の揺動波形を示す信号417または418とが足し合わされた混合波形となる。ここで、信号415と信号416はそれぞれ、内周側の境界15の”0”、”1”を表す揺動波形に対応している。そのため、信号415と信号416とは位相差が180度、すなわち逆相になっている。同様に、信号417と信号418はそれぞれ、外周側の境界14の”0”、”1”を表す揺動波形に対応しているため、信号417と信号418とは逆相になっている。また、内周側の境界15の揺動波形は、外周側の境界14の揺動波形に対して、位相が90度ずれるように、すなわち直交するように形成されているため、信号415、416に対して信号417、418は直交している。
そこで、本発明では、トラックの内周側の境界の揺動波形の信号415、416の検出に用いる参照信号420、外周側の境界の揺動波形の信号417、418の検出に用いる参照信号421を発生させ、これを用いて同期検波を行う。参照信号420と参照信号421は、互いに直交している。これにより、内周側の信号415、416に対して外周側の信号417、418が直交していることを利用して、混合波形となっている検出信号から、内周側の境界の揺動波形の信号415、416と外周側の境界の揺動波形の信号417、418を分離して検出する。なお、参照信号420、421は、光ディスク4上の同期領域12からの信号を用いて後述する方法により作成される。
まず、検出信号と2つの参照信号420、421をそれぞれ掛け合わせ、時間積分をとる。まず、検出信号と内周側用の参照信号420とを掛け合わせ、時間積分をとる。ここでは、わかりやすくするために、内周側からの信号415、416と外周側からの信号417、418とに、それぞれ参照信号420を掛け合わせ、時間積分を取る。まず、参照信号420に、外周側の信号417、418を掛け合わせると、これらは直交関係にあることから、掛け合わせた結果は信号424、425の様になり、これらを時間積分するとゼロとなる。即ち、トラックの外周側の揺動波形の信号は、この処理により0となり、表れなくなる。一方、この参照信号420に、内周側の信号415、416を掛け合わせると、これらは同期しているため、掛け合わせた結果は信号422、423となり、これらを積分すると、ビット”0”がマイナスレベルの信号、ビット”1”がプラスのレベルの信号となり、境界14の揺動波形の位相を振幅レベルに変換することができる。このように、検出信号を参照信号420により同期検波すると、トラックの内周側の境界の揺動波形によるアドレス情報13のみを振幅レベルとして検出できる。
同様に、検出信号と外周側用の参照信号421とを掛け合わせ、時間積分をとる。まず、参照信号421に、内周側境界の信号415、416を掛け合わせると、これらは直交関係にあることから、掛け合わせた結果は信号426、427の様になり、これらを時間積分するとゼロとなる。即ち、トラックの内周側境界の揺動波形の信号は、この処理により0となり、表れなくなる。一方、この参照信号421に、外周側の信号417、418を掛け合わせると、これらは同期しているため、掛け合わせた結果は信号428、429となり、これらを積分すると、ビット”0”がマイナスレベルの信号、ビット”1”がプラスのレベルの信号となり、境界の揺動波形の位相を振幅レベルに変換することができる。このように、検出信号を参照信号421により同期検波すると、トラックの外周側の揺動波形によるアドレス情報13のみを振幅レベルとして検出できる。
これらの処理により、トラックの内周側、外周側の境界にそれぞれ記録されたアドレス情報13を分離して、検出することができる。よって、それぞれのアドレス情報を比較する事により、再生スポットが溝トラック270、272にあるのかランドトラック271にあるのか、また、どの溝トラック270、272またはランドトラック271にあるのかなどを正確に知ることが出来る。
つぎに、上述の原理によってアドレス情報の読み出しを行う記録再生装置の全体の構成について、図5(a),(b)、図28、図29を用いて説明する。
本実施の形態の記録再生装置は、図29のように、光ディスク4と、光ヘッド1292と、電気回路系と、駆動系とを有する。光ヘッド1292は、光ディスク4からデータを記録/再生するための光学系を搭載している(図28)。駆動系は、光ヘッド1292を回転駆動するスピンドルモータ1290と、レーザ光31をトラック幅方向に駆動するためのトラッキングアクチュエータ1291aと、レーザ光31を光軸方向に駆動するためのフォーカスアクチュエータ1291bとを有する。電気回路系は、光ディスク4に記録すべき信号を、光ヘッド1292に受け渡すとともに、光ヘッド1292が光ディスク4から読み出した信号を処理する信号処理系と、駆動系の制御を行うための制御系とを有する。
光ディスク4は、本実施の形態では、直径120mmで、表裏2枚の基板が張り合わされている。2枚の基板の間には、記録膜11が挟まれている。光ヘッド1292からの光が照射される側の基板10は、厚さ0.6mmのプラスチックである。情報の記録再生は、プラスチックの基板10を通してレーザ光31を絞り込むことによって行われる。基板10の記録膜11側の面には、上述したように溝トラック270、272等が形成され、溝トラック270、272等の間がランドトラック271等となる。トラックピッチ280は、溝トラック270等の間隔で表され、本実施の形態では、トラックピッチ280は1.2μmである。記録膜11は、Geを主体とする厚さ約300オングストロームの膜であり、蒸着法により基板10上に成膜されている。情報マーク274は、基板10を通して、光ヘッド1292から記録膜11にレーザ光31を絞り込み、記録膜11を熱によって変化させることによって形成された反射率の異なる領域である。
光ヘッド1292は、図28に示すように、レーザ光31を出射する半導体レーザ281と、半導体レーザ281の出射したレーザ光31の光路上に順に配置された、コリメートレンズ282、ガルバノミラー283と、対物レンズ34とを有する。また、コリメートレンズ282とガルバノミラー283との間には、光ディスク4からのレーザ光31の反射光を、レーザ光31から分離する光束分離素子32が配置されている。光束分離素子32により分離された反射光は、光束分離素子284によって2光束に分割される。一方の光束の光路上には、検光子286と集光レンズ287と光検出器288とが配置されている。これらは、情報マーク274を検出する情報マーク検出光学系を構成する。他方の光束は、集光レンズ289で集光された後、光束分離素子285でさらに2光束に分離され、一方の光束の光路上には、円筒レンズ290と、4分割検出器291が配置されている。これらは、光ディスク4が対物レンズ34の焦点からどれだけずれているかを示すフォーカスエラー信号を検出するフォーカスエラー信号検出光学系を構成する。また、光束分離素子285によって分離された他方の光束上には、2分割光検出器33が配置されている。2分割光検出器33の検出信号は、トラック270等の境界14等の揺動によって表されるアドレス情報13の検出と、トラックずれ信号の検出とに用いられる。
半導体レーザ281の出力強度は、光ディスク4へ情報マーク274を記録する時には約35〜40mW、光ディスク4の情報マーク274およびアドレス情報13の再生時には、3〜5mW程度である。
ここで、光ディスク4の情報を再生する際の各部の動作について説明する。
半導体レーザ271から出射されたレーザ光31は、コリメートレンズ282によりコリメートされた後、光束分離素子32により偏向され、ガルバノミラー283によってさらに偏向され、対物レンズ34で集光され、光ディスク4上に再生スポット1を形成する(図5(a)、図28)。なお、図5(a)は、光ディスク4を、基板10側から見た記録膜11の形状を示した図であるため、トラック270等の溝とランドの形状とが逆転している。
光ディスク4からのレーザ光31の反射光は、対物レンズ34を再び通過し、ガルバノミラー283で反射され、光束分離素子32を通過し、光束分離素子284で2光束に分離される。一方の光束は、検光子286、集光レンズ287で集光され、光検出器288で検出される。そして、光検出器288の出力は、後述する電気回路で処理されることにより、情報マーク274の信号が検出される。また、光束分離素子289で分離された他方の光束は、集光レンズ289で集光された後、光束分離素子285で分離され、一方の光束は、円筒レンズ290で集光され4分割の光検出器33で検出される。光検出器33の出力をよく知られた非点収差法により処理することにより、フォーカスエラー信号が得られる。
また、光束分離素子285で分離された他方の光束は、2分割の光検出器33の左右の受光面でそれぞれ検出される。光検出器33の分割面は、トラック270等の長手方向に平行である。分割光検出器33の左右それぞれの受光面の信号は、差動検出器38と加算器40とに入力される。差動検出器38の出力は、図21の信号521のように、トラックずれ信号に、トラック270等の境界14、15の揺動による信号が重畳されたものになっている。よって、帯域フィルタ39により、トラック270等の境界14、15の揺動の信号の振動周波数のみを通過させ、同期検波器42、43に入力する。一方、加算器40の出力を同期信号発生器41に入力し、図4の参照信号420、421を作成する。
具体的には、同期信号発生器41は、図5(b)の回路を用いて、光ディスク4の同期領域12からの信号をもとに参照信号421、422を作成する。例えば、同期領域12が、図7(a)のマーク列51、52等のプリピットマークである場合には、同期信号発生器41のプリピットマーク検出回路46(図5(b))が、加算器40の出力からマーク列51、52等に対応した信号を検出する。この同期領域12は、すでに述べたように、トラック270等上に一定間隔に設けられていることから、この信号によりフェーズド、ロックド、ループ(PLL)47を起動することにより、この信号の繰り返し周波数の所定数倍の周波数をもつクロックを発生させる。また、同期領域12は、トラック270等の境界14、15の揺動周波数とも同期していることから、PLL47の発生したクロックのタイミングにより、分周器48の分周を起動することにより、トラック270等の境界14、15の揺動周波数に等しく、かつ、内周側の境界14の揺動の位相および外周側の境界15の揺動の位相に等しい参照信号420、421を発生する。
例えば、図23に示すような揺動波形で溝トラック272等の境界14、15が揺動している光ディスク4において、溝トラック272の点線で囲った領域230を再生スポット1が走査したときの、帯域フィルタ39の出力信号(以下、検出信号231と称す)を図24(c)に示す。帯域フィルタ39の出力する検出信号231は、溝トラック272の内周側境界14の揺動波形(図24(a))と、溝トラック272の外周側境界15の揺動波形(図24(b))とを加算した波形(図24(c))となる。この検出信号231に、同期信号発生器41の出力する参照信号420を同期検波器42により掛けると(図24(d))と、図24(e)のような波形が得られる。図24(e)の波形は、参照信号420の同相成分(これは溝2の内側の揺動波形に対応する)と、参照信号420に直交する成分(溝トラック272の外周側の境界15の揺動波形に対応する)とに分けることができる(図24(f))。したがって、図24(e)の波形を同期検波器42により積分すると、直交成分はゼロとなり、同相成分のみが現れ、図24(f)の場合、出力レベルはプラスになり、ビット”1”の信号であることが検出できる。よって、同期検波器42の出力レベルを、比較器44により予め定めたレベルと比較し、マイナスレベルかプラスレベルかを判定することにより、溝トラック272の内周側境界14の揺動データが”0”であるか”1”であるかを検出することができ、アドレス情報13を復調できる。
同様に、参照信号420とは、位相が90度ずれた参照信号421を用いて、同期検波器43により検出信号231を同期検波すると、図24(g)のような波形になり、これを分解すると、図24(h)のような波形となるため、図24(h)の波形を同期検波器43により積分すると、直交成分はゼロとなり、同相成分のみが現れる。図24(h)場合、出力レベルはプラスになり、ビット”1”の信号であることが検出できる。よって、同期検波器43の出力レベルを、比較器45により予め定めたレベルと比較し、マイナスレベルかプラスレベルかを判定することにより、溝トラック272の外周側境界15の揺動データが”0”であるか”1”であるかを検出することができ、アドレス情報13を復調できる。復調されたアドレス情報は、記録再生装置の電気回路系のフォーマッタ1292(図29)に受け渡され、SCSIインタフェース1293を介して、記録再生装置に接続されているCPU(不図示)に受け渡される。
また、光検出器288の出力は、図29のプリアンプ1294で増幅され、波形成形回路1295を通過した後、再生クロック生成器1296、1297に入力され、再生クロックが生成される。これらの再生クロックと、波形生成回路1295の出力とにより、再生合成回路1298によりデータ弁別が行われ、情報マーク274が示すデータが復調回路1299により復調される。復調された情報マーク274のデータは、記録再生装置の電気回路系のフォーマッタ1292(図29)に受け渡され、SCSIインタフェース1293を介して、記録再生装置に接続されているCPU(不図示)に受け渡される。
また、光ディスク4に情報を記録する場合には、ホストからSCSIインタフェース1293を介して、フォーマッタ1292が記録すべきデータを受けとり、変調回路1311により変調信号に変換され、ライトパルス生成回路1312に入力される。ライトパルス生成回路1312は、周波数シンセサイザ1313から発生される記録クロックを用いて、光ディスク4上の記録すべきトラック位置に対応した記録パルスを発生し、レーザドライバ1314に送出する。また、ライトパワー切り替え回路1315は、記録時のレーザパワーをレーザドライバ1314に設定する。レーザドライバ1314は、設定されたレーザパワーおよび記録パルスによって半導体レーザ281を駆動するパルス波形を作成する。高周波重畳回路1316は、このパルス波形に高周波を重畳した波形を半導体レーザ281に出力し、半導体レーザ281を動作させる。半導体レーザ281の出力は、オートパワーコントローラ1317でモニタされ、レーザドライバ1314にフィードバックされる。これにより、所望のトラックに、高エネルギーのレーザ光31が照射され、記録膜11が加熱され、情報マーク274が形成される。
また、このように光ディスク4へデータの再生または記録が行われている際の駆動系の制御について説明する。
差動検出器38の出力は、プッシュプル法等のよく知られた方法により、レーザ光31のスポットのトラックずれ信号を検出するための回路(不図示)に入力され、トラックずれ信号が検出される。また、4分割検出器291の出力は、非点収差法等のよく知られた方法により、レーザ光31のスポットのフォーカスエラー信号を検出するための回路(不図示)に入力され、フォーカスエラ信号が検出される。
トラックずれ信号は、トラッキング制御回路1300に入力され、トラッキングアクチュエータ1291aを駆動するための制御信号が作成される。この信号により、トラッキングアクチュエータ1291aがガルバノミラー283を変動させ、レーザ光31のスポットを所望のトラック270等に沿って位置決めする。フォーカスエラー信号は、フォーカス制御回路1301に入力され、フォーカスアクチュエータ1291bを駆動するための制御信号が作成される。この信号により、フォーカスアクチュエータ1291bが、対物レンズ34を光軸方向に駆動し、光ディスク4の面上に対物レンズ34の焦点を維持するフォーカスサーボが行われる。
レーザ光31のスポットの光ディスク4上へのアクセスは、微小な範囲はファインアクチュエータ1309で行われ、大きな範囲にわたるときにはコースアクチュエータ1310を用いて光ヘッド全体を移動させる。また、トラッキング時にも、ファインアクチュエータ1309とコースアクチュエータ1310とが連動して動く。これにより、光ディスク4の中心が、光ディスク4を回転駆動するスピンドルモータ1290の中心からずれている場合にも、レーザ光31のスポットをトラック270等に安定に追従させることができる。
また、レーザ光31のスポットを大きな範囲にわたってアクセスする場合には、目標とするトラック付近まで、光ヘッド1292全体をコースアクチュエータ1310を用いて大きく移動させる。その後、ファインアクチュエータ1309とコースアクチュエータ1310とを連動させて光スポットを動かし、目標とするトラックに位置づける。これら一連の動作は、メカコントローラ1303とトラッキング制御回路1300、コース制御回路1302との間で情報がやりとりされ、メカコントローラ1303によって、各アクチュエータ1309、1310等を制御されることによって行われる。スピンドルモータ1290は、スピンドルモータ制御回路1307によって駆動され、所定の回転数により光ディスク4を安定に回転させる。
なお、駆動系全体の制御を行うのは、ドライブ制御MPU1304であり、オートローディング機構1308、メカコントローラ1303、コントローラ制御MPU1306等との間で信号のやりとりが行われる。ドライブ制御MPU1304は、オートローディング機構1308を制御して光ディスク4をスピンドルに着脱させる。さらに、メカコントローラ1303を制御して記録再生のための光スポットの位置決めを行い、コントローラ制御MPU1306を制御して記録再生の信号処理を行い、パネル制御部を制御して保守のための情報を得る。
なお、フォーマッタ1292とSCSIインタフェース1293との間には、ホストに受け渡す再生データや、ホストから受け取った記録すべきデータを一時保存するバッファメモリ1318と、バッファメモリ1318を制御するバッファコントローラ1319が配置されている。また、コントローラ制御MPU1306等には、エラーデータを訂正するためECC回路1320も接続されている。
なお、本実施の形態では、再生クロックを同期領域12の信号から作成し、記録クロックは、周波数シンセサイザ1313から出力された固定周波数のクロックを用いているが、記録クロックを、同期領域12の信号から作成したクロックを用いることももちろん可能である。光ディスク4の回転数の変動や、光ディスク4の中心のスピンドルモータの回転中心からの偏心によって生じる記録時の光スポットのトラック上での相対線速度の変動が生じるが、このような変動が生じた場合、同期領域12の信号から作成した記録クロックもこの変動に対応して変動するため、この記録クロックを用いることにより、トラック上に一定の周波数で情報マーク274を記録できる。
つぎに、本発明の第2の実施の形態として、上述の第1の実施の形態の光ディスク4を製造する方法について説明する。
まず、光ディスク4のトラック270等の形状と、同期領域12のマーク列51、52等の形状とを、図22のように円盤状のガラス製基板の表面に精密に形成し、これにより原盤68を作成する。原盤68は、平坦なガラス基板68b上にフォトレジスト膜68aを形成し(図6)、このフォトレジスト膜68aをトラック270等の形状に露光して、フォトレジスト膜68aを現像することによって形成される。この原盤68の表面の形状を、ニッケル等の金属に写し取ることにより、金属製の型を作製する。この型を用いて、射出成形等の手法により、プラスチック基板10を作製すると、表面にトラック270等の形状と同期領域12のマーク列51、52等の形状とが刻まれたプラスチック基板10を作製できる(図10)。この後、プラスチック基板10の上に、記録膜11を蒸着等により形成し、もう一枚の基板を基板10と貼り合わせ、光ディスク4を完成させる。
このとき、第1の実施の形態の光ディスク4は、トラック270等の境界14、15の揺動でアドレス情報13を示す構成であるため、境界14、15を所望の位相で揺動させたトラック270等の形状を原盤68の表面に精密に形成する必要がある。そこで、本実施の形態では、フォトレジスト膜68aが形成された円盤状のガラス基板68b上で、光スポット69を、円盤の半径方向に微少に揺動させながら走査させることにより、図22の斜線で示す領域を露光するようにする。露光された領域は、現像処理により取り除かれ、溝トラック270、272等となる。また、隣接し合う溝トラック270、271の間の部分は、現像によっても取り除かれずに残り、ランドトラック271等となる。これにより原盤68(図22)が形成される。
以下、原盤68への露光方法と、その露光に用いる露光装置について、図6及び図8を用いて説明する。図8に、原盤68の露光に用いる露光装置を示す。図6は、原盤68上に、溝トラック270等を形成するときの光スポット69の走査を示す図面である。なお、ここでは同期領域12は、図7(a)のマーク列51、52等で記録されている場合について説明する。
図8のように、光源61からの光64は、強度変調器62のより強度が調節された後、光偏向器63を通過し、ミラー66により原盤68側に折り返され、対物レンズ67により、原盤68上に集光される。これにより、フォトレジスト膜68aが表面に形成されたガラス基板68b上に、微小な光スポット69が照射される。光偏光器63は、偏光器駆動回路76の駆動によって、光64の光軸を微小に振動させる。これにより原盤68上での光スポット69は、原盤68の半径方向に微小に振動する。振動の振幅は、溝トラック270等の幅である。この振動の幅を溝トラック270等の境界14、15の揺動波形に合わせて変化させると、境界14、15が揺動した溝トラック270の形状に露光を行うことができる。このように、光スポット69を振動させながら、スピンドル70に結合されている回転モータ71をモータ回転駆動回路72によって駆動し、原盤68を回転させる。また、同時に、折り返しミラー66と対物レンズ67が搭載されている移動台65を、移動台駆動回路74により原盤68の半径方向に徐々に移動さる。移動台65の移動量としては、原盤68が一回転するごとに、光スポット69の中心がトラックピッチ280(図28)ずつずれる量に設定する。これらの動作により、溝トラック270等は、原盤68上でトラックピッチ280でスパイラルを描くように形成され、かつ、溝トラック270等の境界14、15を所定の位相で揺動させることができる。移動台駆動回路74およびモータ駆動回路72は、アドレス記録制御回路73がフィードバック制御する。また、偏光器駆動回路76には、アドレス記録制御回路73が偏向信号104を受け渡す。変調器駆動回路75には、アドレス記録制御回路73が強度変調信号を受け渡す。
ここで、図9(a)、(b)を用いて、アドレス記録制御回路73の構成を詳細に説明する。
アドレス記録制御回路73は、図9(a)のように、アドレス信号発生部92と、基準クロックを出力する基準クロック回路95とを備える。さらに、アドレス記録制御回路73には、変調器駆動回路75へ強度信号105を出力する強度信号発生部90と、偏向信号104を作成する偏向信号発生部91と、移動台駆動回路74に駆動量を指示する信号を出力するヘッド位置制御回路93と、モータ駆動回路72に駆動量を指示する信号を出力する回転制御回路94を備えている。
アドレス信号発生部92は、回転モータ71より現在の回転数を示す回転情報79を受け取るとともに、移動台65から現在位置を示す移動情報78を受け取って、溝トラック270等をスパイラル状にするための移動台65の駆動量を示すヘッド指令信号を作成する。ヘッド位置制御回路93は、ヘッド指令信号と移動情報78と比較しながら移動台65を制御するための信号を移動台駆動回路74に出力する。また、アドレス信号発生部92は、回転情報79を用い、トラック270等の位置に応じた回転数を求め、これを回転指令信号として回転制御回路94に出力する。回転制御回路94は、回転情報79と回転指令信号とを比較しながら、モータの回転数をヘッドの位置に対応した所定の回転数となるように回転モータを制御する。
また、アドレス信号発生部92は、回転情報78と移動情報79をもとに、各溝トラック270等のアドレスを示すアドレス信号を作成し、偏向信号発生部91に出力する。さらに、アドレス信号発生部92は、基準クロック回路95が出力した基準クロックを分周してクロック103(図10)を作成し、偏向信号発生部91に出力する。偏向信号発生部91は、これらの信号を基に、後述する回路によって、偏向信号104(図10)を作成する。また、アドレス信号発生部92は、強度指令信号を発生する。強度信号発生部90は、この強度指令信号に基づいて、同期領域12におけるマーク51、52等を作成するために光64の強度を変調させる強度変調信号105(図10)を発生させる。また、同期領域12のマーク51、52をトラック中心の左右にウオブルさせて形成するために、アドレス信号発生部92は、同期領域指令信号を発生し、偏向信号発生部91に出力する。
次に、偏向信号発生部91の構成と、偏向信号104の発生方法とについて図9(b)を用いて説明する。アドレス信号は、アドレス変調器96に入力され、溝トラック270の内周側の境界14のアドレス、例えば”110”の信号と、外周側境界15のアドレス、例えば”110”等の信号がそれぞれ作成される。それぞれのアドレスは、位相変調回路97により、図3に示したように位相によって”1”と”0”とを示す揺動に変換され、これにより内周側境界14のアドレスに対応した振幅信号100と外周側の境界15のアドレスに対応した振幅信号101(図10)が作成される。これらは、偏向信号作成回路98に入力される。クロック103は、スキャン信号発生器99に入力され、スキャン信号発生器99は、光スポット69を原盤68の半径方向に走査させるためのスキャン信号102を作成し、偏向信号作成回路98に出力する。偏向信号作成回路98は、光スポット69が内周側境界14と外周側境界15との間を光スポット69を走査するように、振幅信号100と振幅信号101とを用いてスキャン信号102の振幅を変調させて偏向信号104(図10)を作成する。また、同期領域指令信号は、偏向信号作成回路98に入力される。偏向信号作成回路98は、同期領域12では、スキャン信号102に同期させて、光スポット69が、溝トラック270等の左右に、トラックピッチ280の4分の1程度ずれる様に偏向させる信号104を発生する。
以上にように作成された偏向信号104を用いて、図8の露光装置で原盤68を露光することにより、境界14、15の揺動でアドレス情報を示す溝トラック270等の形状と、図7(a)で示す同期領域12のマーク列51、52等の形状とを露光することができる。よって、この原盤68を現像することで、本実施の形態の光ディスク4の原盤68を作成することができる。
なお、上の説明では、同期領域12として図7(a)の例の場合の露光方法について説明したが、図7(b)、(c)の同期領域12の場合も同様に露光できる。ただし、図7(b)、(c)の場合は、同期領域12も溝であるため、同期領域12においても溝形状に露光するように偏向信号104を作製する。
次に、本発明の第3の実施の形態である、アドレス情報の再生方法および再生回路について説明する。この検出方法は、同期領域12を使用しないで、光ディスク4のアドレス情報13を再生する方法である。
図7(a),(b),(c)のような同期領域12をもつ光ディスクでは、同期領域12の部分には、情報マーク274が記録できず、同期領域12がトラックを占有する。そこでトラック270等の境界の揺動波形から、参照信号420、421や再生クロックが検出できれば、同期領域12を設けなくて良いため、データ記録効率を向上させることができる。
そこで、第3の実施の形態では、同期領域12の代わりに、トラックの内周側境界14の揺動と外周側境界15の揺動との位相を同一にした同期部(SYNC部)を設ける。SYNC部は、図7(b)の同期領域12と似ているが、図7(b)では同期領域12の揺動振幅を、アドレス情報13の揺動振幅よりも大きくしているため、同期領域12には情報マーク274が記録できないが、SYNC部は、揺動振幅をアドレス情報13と同じにする。これにより、他の部分と同様に、情報マーク274が記録できる。
まず、同期領域12を用いない本実施の形態の光ディスク4から、参照信号420、421を生成する方法について図11を用いて述べる。上述してきたとおり、アドレス情報13では、トラック270等の境界14、15の揺動波形は、同一周波数で、位相が異なっている。しかも、その位相差は、0度、90度、180度、270度の4つの状態しか取り得ないことから、溝の揺動を検出したときの検出信号231(図5、図24)の波形のゼロクロスのタイミングは、揺動の周波数の4t(tは自然数)倍の周波数のゼロクロスのタイミングのいずれかに相当する。そこで、図5(a)、(b)の回路構成を図11(a)、(b)のように変更し、検出信号231のゼロクロスのタイミングを、ゼロクロス検出器125で検出して、これに同期させてPLL(フェーズロックドループ)126を起動する。すると、揺動周波数の4倍の周波数を持つ信号を生成できる。しかも、スピンドルモータ1290(図29)の回転数の微小な変動や、光ディスク4とスピンドルモータ1290の回転中心との偏心等により、再生記録用光スポット1とトラック270との相対線速度が変化すると、この生成した信号の周波数も、これらの変化に伴って変化する。従って、この信号は、記録された揺動波形に同期したものとなり、これを分周器127により分周することにより揺動波形と同一の周波数をもつ揺動波形の同期信号を作成できる。
しかし、分周した揺動波形の同期信号は、周波数は揺動波形と同期しているが、位相が同期しているかどうかわからない。参照信号420、421を生成するには、位相が揺動波形と同期した同期信号が必要であるため、位相を決めることが必要となる。このために、分周器127からPLL126の出力を基に4つの位相、0度、90度、180度、270度の信号をそれぞれ発生させる。この位相のいずれかがは、揺動波形の位相と同期している。この4つの位相のなかから、同期している位相を選択するために、上述したSYNC部を用いる。
まず、検出信号231のうち、通常のアドレス情報13からの検出信号231と、SYNC部からの検出信号231とを、図11のsync検出回路133を用いて分離する。具体的には、通常のアドレス情報13の検出信号231は、検出信号231の位相がどのようになっていても、同期検波器42、43の両方から、プラスまたはマイナスのレベルが発生する。しかし、SYNC部では、同期検波器42、43の片一方しかプラスまたはマイナスの変化が生じず、もう一方の出力はゼロとなる。そこで、同期検波器42、43の出力の一方が0になる領域をレベル判定回路123、124で識別することにより、SYNC部を検出できる。レベル判定回路123、124の詳細を、図12に示す。レベル判定回路123、124において同期検波器42の出力をコンパレータ226、227、228、229により、正のレベルv1および負のレベルv2と比較し、同期検波器42の出力がv1より大きいと、参照信号420に同期したレベル”1”が、フリップフロップ200の出信号206に現れる。同期検波器42の出力が、v1とv2の間にある時、すなわち同期検波器42の出力がゼロ付近にある場合には、参照信号420に同期したレベル”1”がフリップフロップ202、203および論理積回路203により、信号205に現れる。同様に、同期検波器42の出力が、v2より小さいとレベル”1”が、フリップフロップ204により信号207に現れる。
以上はレベル判定回路123の詳細動作であるが、レベル判定回路124においても同様にして、同期検波器43の出力が、v1より大きい時に信号218に参照信号421に同期したレベル”1”が現れる。また、同期検波器43の出力が、v1とv2の間にある時、参照信号421に同期したレベル”1”が信号219に現れる。さらに、同期検波器43の出力が、v2より小さいとレベル”1”が信号220に現れる。
そして、v1以上、v2以下を示す信号206と207、または信号218と220のそれぞれの論理和を論理和回路208、216でとる。この結果と、それぞれ別の判定回路123、124のゼロを示す信号205と219とを、論理積回路209、217により論理積をとる。これらの結果の論理和を論理和回路210によりとると、その結果、検出信号231がSYNC部からの信号であることを示すsync信号121が得られる。
このようにSYNC部を検出すると、SYNC部からの検出信号231を用いて、前述の4つの位相の信号から、参照信号420、421用の信号を選択することができる。
まず、4つの位相の信号から、参照信号420、421用の信号を選択することができる原理について説明する。参照信号421は、参照信号420に対して位相が90度ずれた信号であるため、参照信号420の位相さえ決定できれば参照信号421の位相も決定できる。まず、参照信号420として、上述の分周器127で発生させた0度、90度、180度、270度の4種類の位相の信号のうちの一つ、例えば0度の位相の信号を参照信号420として同期信号発生器41から同期検波器42に入力させる。また、同期検波器43には、参照信号420と位相が90度ずれた信号、すなわち90度の位相の信号を参照信号421として入力させる。すると、SYNC部は、内周側境界14の揺動波形と外周側境界15の揺動波形との位相が等しく形成されているため、SYNC部の図5(a)の同期検波器42、43の出力の内どちらかがゼロとなり、もう片方がプラスまたはマイナスとなる。このとき、どちらの出力がゼロであるか、プラスになるか、マイナスになるかを決定する要因は二つあり、一つは、SYNC部の揺動波形の位相であり、もう一つは、再生スポット1が位置決めされているのが溝トラック270等およびランドトラック271等のいずれであるかである。
よって、SYNC部の揺動波形は予めわかっているので、溝トラック270等またはランドトラック271等を選択し、トラッキング制御回路1300の一部のトラッキング制御系132およびトラッキング極性切り替え回路130により、選択したトラックに位置決めし、同期検波器42、43の出力が0のどちらが0かを知ることにより、入力させた参照信号420と、本来入力させるべき参照信号420の位相との関係が0度または180度の関係にあるのか、もしくは、90度または270度の関係にあるのか判定できる。
例えば、上記判定で0度または180度の関係にあるとわかった場合、さらに、同期検波器42、43の出力のうちのゼロにならなかった出力が、プラスであるかマイナスであるかを見ることにより、0度なのか180度なのかをさらに判定できる。同様に、上記判定で90度または270度の関係にあるとわかった場合、90度なのか270度なのかをさらに判定できる。
以上の判定は例えば、図12のような回路ブロックにより可能となる。なお、図12において、切り替え指令回路131は、メカコントローラ1303の一部であり、溝トラック270等またはランドトラック271等の選択の切り替えを行う回路である。まず、切り替え指令回路131からの選択されたトラック270等が溝であるかランドであるかを極性で示す信号225と各レベル判定回路123と124からのv1以上、v2以下を示す206、207、218、220の論理積をそれぞれ論理積回路212、213、214、215でとる。但し、参照信号420として、上述の分周器127で発生させた0度、90度、180度、270度の4種類の位相の信号のうちの一つ、例えば0度の位相の信号を参照信号420として同期信号発生器41から同期検波器42に入力させている。また、参照信号421へは、参照信号420と90度ずれた信号を入力させている。
図12の回路では、現在入力している参照信号420の位相が、本来、参照信号420として入力させるべき信号の位相に対して、0度ずれている(すなわち、同期している)ときには、信号221のレベルが”1”となり、90度ずれていると信号222のレベルが”1”となり、同様に180度では信号223が、270度ずれていると信号224がレベル”1”となる。これにより、信号221〜224からなる位相指令信号120において、どの信号がレベル”1”かをみることにより現在入力させている参照信号420の位相が、本来入力させるべき参照信号420に対してどのようにずれているかを判定できる。
そこで、位相指令信号120をセレクタ128に入力し、セレクタ128によって、分周器127から発生する位相のことなる4つの信号のいずれかを選択させることにより、正しい参照信号420を選択できる。例えば、位相指令信号120において90度の位相ずれを示す222のレベルが”1”のときには、セレクタ128は、現在参照信号420として入力させている信号に270度足した位相の信号を選択し、これを参照信号420として同期検波器42に出力させる。一方、参照信号421としては、参照信号420に90度加えた信号を出力させる。
これにより、境界14、15の揺動波形検出信号231から参照信号420、421を作成できる。この参照信号420、421は、現状の光ディスク4の回転数の変動や、光ディスク4の偏心等による再生スポット1のトラック270等上での線速度の変動に対応して変動する。よって、この参照信号420、421を用いることにより、情報マーク274およびアドレス情報13を正確に復調することができる。
さらにトラック270等の境界14、15の揺動波形からデータを記録および再生する際にそれぞれ用いられる記録クロックおよび再生クロックを作成する方法について説明する。これは、図11においてPLL126の発振周波数は、上述のように揺動周波数の4t倍であったことをを利用する。具体的には、PLL126の発振周波数を所定数倍する。例えば、境界14、15の揺動周波数を37.5kHz程度とし、記録クロックおよび再生クロックの周波数を7.5MHzとすると、PLL126の発振周波数は、揺動周波数の4t倍となり、150KHzとなる。これをさらに所定数(例えば50)倍すれば記録および再生クロックを発生することができる。この記録再生クロックを使用すると、光ディスク4の回転数の微小な変動、光ディスク4の偏心等により、記録再生光スポット1のトラック270状における線速度の変動があっても、情報マーク274の記録再生が可能となる。
さらに、本発明の第4の実施の形態の、アドレス情報13を再生するための再生方法およびその再生に用いる回路構成について説明する。
上述の同期領域12を設けない第3の実施の形態では、アドレス情報13の検出に用いる参照信号420、421の位相を決める必要があったが、本実施の形態では、位相を決めずに、アドレス情報を検出する。
本実施の形態では、各トラック270等の内周側境界14の揺動波形と外周側境界15の揺動波形の合成波形を各ビットごとに検出するようにする。そして、アドレス情報13を記録する際、すなわち、原盤68にトラック形状を露光する際に、先行するビットの合成波形に対して、次のビットの合成波形の位相が、予め定めたルールにしたがった量だけずれるようにし、この合成波形の位相差によってアドレス情報13を記録する。実際の境界14、15の揺動波形は、この合成波形を分解した波形となるようにする。アドレス情報13を再生する際には、差動検出器38および帯域フィルタ39により、各ビットの合成波形の位相を検出し、先行するビットの位相との差を求める。そして、求めた差を上記ルールに照らし合わせることにより、アドレス情報を再生する。
これをさらに説明する。各トラック270等の境界14、15の示すデータ”1”または”0”を、各ビットごとに、内周側境界と外周側境界とで組にすると、あるビットのデータは、内周側境界が”0”で外周側境界が”0”の場合、内周側境界が”0”で外周側境界が”1”の場合、内周側境界が”1”で外周側境界のデータが”0”の場合、内周側境界が”1”で外周側境界が”1”の場合の4通りの組み合わせうちのいずれかである。内周側の揺動波形と外周側揺動波形との合成波形の位相は、上の4通りの組み合わせで全て異なる。本実施の形態では、これを利用し、先行するビットの合成波形の位相に対して、次のビットの合成波形の位相をどれだけずらすかルールとして予めさだめておく。
例えば、図14(a)のようなルールを定めておく。すなわち、あるビットの内周側境界に”0”外周側境界に”0”のデータを記録する場合には、このビットの合成波形の位相を先行ビットの合成波形の位相と同じにする。また、内周側境界に”0”外周側境界に”1”のデータを記録する場合には、このビットの合成波形の位相がこのビットの先行ビットの合成波形の位相に対してπ/2rad進むようにする。また、内周側境界に”1”外周側境界に”0”のデータを記録する場合には、このビットの合成波形の位相をこのビットの先行ビットの合成波形の位相に対してπrad進むようにする。内周側境界に”1”外周側境界に”1”のデータを記録する場合には、このビットの合成波形の位相をこのビットの先行ビットの合成波形の位相に対して3π/2rad進むようにする。
原盤68を作成する際には、このルールにしたがってアドレス情報のデータを示す合成波形の位相を求め、この合成波形を分解して各境界14、15の揺動波形を定める。また、図24の(a),(b),(c)ですでに説明したように、図5(a)の帯域フィルタ39から出力される検出信号231(図24(c))は、トラックの内周側境界の揺動波形と外周側境界の揺動波形とを合成した波形になるため、検出信号231の位相が先行ビットに対してどれだけずれているかを検出することにより、位相差のみから内周側境界のデータと外周側境界のデータとを組で再生することができるのである。
ただし、各境界のデータは、溝トラック270等とランドトラック271等とで共有されているため、溝トラック270側で内周側境界14と外周側境界15とを組にして、上記ルールに沿ってデータを記録すると、ランドトラック271等側では、同じビットについて上記ルールに沿ってデータを記録することはできない。そこで、図14(b)に破線で示したように、1ビットおきに溝トラック27等とランドトラック271等側とで内外の境界を組1402にする。また、一定の間隔で、上述の実施の形態のSYNC部と同じように、内周側境界の揺動波形と外周側境界の揺動波形との位相を一致させた同期部1401を設けておく。そして、組1402の合成波形を再生するときには、この同期部1401を検出し、これを基にクロックをカウントダウンしてビット部を示す信号を作成し、このビットを示す信号を用いて、溝トラック270等上の組1402とランドトラック271等上の組1402とを分離して検出するようにする。
具体的な、例を用いてさらに説明する。例えば、図19のように各トラックの境界にアドレス情報13のデータ”0”もしくは”1”を記録したいとする。例えば、溝トラック270の内周側境界14のデータをA、外周側境界15のデータをBとすると、最初のビットは、(A、B)が(0、0)であり、次のビットに(1,0)を記録したいとする。このときには、(1、0)のビットの合成波形を、図14(a)のルールにしたがって、先行ビットの合成波形の位相に対して位相がπずれるような合成波形を記録すればよい。よって、先行ビット(0、0)の合成波形の位相が0であるとすると、つぎの(1,0)のビットの合成波形の位相をπとなり、これにより各境界の揺動波形の位相は、図19に示すようになる。次に、(1,0)の次に(0,1)を記録するとき、図14の関係に従って、先行ビットの合成波形の位相に対して位相がπ/2ずれるような合成波形を記録すればよいので、(0,1)のビットの合成波形および各境界の揺動波形の位相は、図19に示すようになる。以後、同様に合成波形の位相を決めることで、各境界の揺動波形の位相を決めることができる。
なお、再生時には、前述の実施の形態と同様に、トラックの境界14、15の揺動周波数の4倍の周波数のクロックを発生させ、これを分周することにより同期検波の参照信号420、421をつくる。位相は4つの状態を取り得るが、どの位相を用いてもよい。というのは、合成波形の位相差のみからデータを再生できるため、とりあえず最初のビットの合成波形の位相がわかればよく、後はその位相との差により、データを再生できるためである。この場合、参照信号420、421の位相が正しく選択されていないと、最初のビットのデータは、正しいデータが読み出せないが、つぎのビット以降は、正しくデータを再生できる。アドレス情報13は、一つのトラック270等の境界に繰り返し記録できるため、最初のビットのデータが正しく読み出せなくても問題ない。また、再生したアドレス情報13のデータをもとに参照信号420、421の位相を変化させ、同期検波をおこなうことにより、前のデータの位相を基準にした正しい位相の参照信号420、421を発生させることも可能である。
このようなアドレス情報の再生方法を用いるアドレスデータを復調するための回路ブロックを図15と図16に示す。同期部検出回路333は、前述の実施の形態のsync検出回路133のsync信号検出と同じ動作により、同期部1401を検出し、同期部信号121’(図13)を出力する。また、同期部検出回路333は、同期部1401を検出した信号から、溝/ランド変調部信号326(図13)を作成する。溝/ランド変調部信号326は、ビットの組1402が溝トラック270等上の組か、ランドトラック271等上の組かを示す変調信号である。この2つの信号をアドレス復調回路422aに入力し、データを復調するタイミングに使用する。アドレス復調器422aには、同期検波器42と43からの出力を比較器44、45により2値化した信号が入力され、同期部信号121’と溝/ランド変調部信号326によってタイミングを制御されて、溝トラック270等の組1402とランドトラック271等の組1402とのアドレス情報を分離し、上記ルールにしたがってデータを再生(復調)する。
同期部検出回路333のさらに詳細な回路構成およびその動作について説明する。前述のように、sync検出回路133と同じ回路構成および動作により図16に示した同期部信号121’を作成する。この同期部信号121’とクロック信号400とを用いてデータタイミング発生器325のカウンタ340においてクロック信号を分周して、ビット周期に対応した信号350(図13)を発生し、これをさらに2分周し、同期部信号121’と同期をとることにより、溝/ランド変調部信号326を作成する。同期検波器42、43の出力を2値化した信号205、206、207、218、219、220を用いて、これらを組み合わせて回路208、209、210、216、217、312、313、314、315の論理処理を行うことにより、各ビットの合成波形の位相を検出するための信号を作成する。位相を表す論理積回路312、313、314、315の出力を、それぞれ、組1402のデータの4通りの組み合わせに対応させて、メモリ327、328、329、330に入力する。メモリ327、328、329、330では、溝トラック270等上の組1402の位相と、ランドトラック271等上の組1402の位相をそれぞれ記憶し、同一トラック上の次の組のデータを復調する時に前の位相を読み出す様にする。
メモリ327〜330の詳細なブロックをメモリ327を例に述べる。メモリ327は、溝/ランド変調部信号326の立ち上がりと、該信号の反転信号の立ち上がりで、論理積回路312の出力をそれぞれフリップフロップ回路341と343に取り込み、この出力をセレクタ342により溝/ランド変調部信号326の極性に応じて選択して出力する。これらのメモリ327、328、329、330の出力を位相指令信号320として図15に示す様にセレクタ428を制御し、位相を選択することにより正しい位相の参照信号420と421を作成する。
本発明の第5の実施の形態の、アドレス情報13を再生するための再生方法およびその再生に用いる回路構成について説明する。
前述の実施の形態では、各トラック270等の両側境界14、15のデータをビットごとに組1402にしてデータを記録し、再生させていた。本実施の形態では、トラック270等の両側の境界14、15のデータをそれぞれ独立に変調させデータを記録する。即ち、トラック270等の内周側境界14のビットのデータを、先行ビットのデータの揺動波形との位相差によって記録する。データによる位相差は、予めルールとして定めておく。ルールは、例えば図17(a)の様に定めておく。図17(a)のルールは、ある境界14、15において先行ビットのデータが”0”であっても”1”であっても、次のビットのデータが”0”である場合には、先行ビットの揺動波形と同じ位相の揺動波形にし、次のビットのデータが”1”である場合には、先行ビットの揺動波形からπ進んだ位相の揺動波形にするというものである。このように各境界14ごとに、揺動波形の位相差でデータを表すようにすると、同期検波器42、43の出力のどちらが、トラック270等の内周側境界のデータで、どちらが外周側境界のデータであるのかさえ明らかにすれば、参照信号420、421の位相が180度ずれてもそれぞれの同期検波器42、43に対応するデータを検出できる。
なお、内周側境界と外周側境界の揺動波形を同一にしたSYNC部は、本実施の形態の場合も一定の周期で設けておく。
同期検波器42、43のうち、どちらがトラックの内周側のデータを出力し、どちらが外側データに対応するかを決めるためには、図11、図12で説明したsync部検出と参照信号位相決定方法を用いればよい。即ち、SYNC部の揺動波形の位相は予め決められていることから、光スポット1が位置決めされている場所が溝トラックかランドトラックかにより、参照信号420、421の位相がゼロの時の同期検波器42、43の出力の極性は決まっている。従って、前記同期検波器42、43の出力レベルの極性を見ることにより参照信号420、421の位相を正確に決めることが出来る。
図17の実施の形態では、上述のSYNC部や同期部1401の代わりに、同期を取るためのデータを一定周期で、それぞれの境界14、15に記録しておくこと構成にすることもできる。例えば、図18(a)のように、一定の周期で2ビットの同期ビット1811を確保し、この2ビットの同期ビット1811に、この2ビットが同期を取るためのビットであることを示すデータ、例えば”01”の情報を記録しておく。この様にすると、前述の図17の実施の形態と同じ検出原理により、位相がどの様になっても同期ビット1811を検出することができる。この同期ビット1811の検出のタイミングを分周することにより、再生クロックや記録クロックを作成することができる。また、この同期ビット1811における出力がゼロになった同期検波器42または43を見ることにより参照信号420、421の位相の不確定さを半分に減らすことができる。即ち、同期検波器42、43が、それぞれトラックの内周側、外周側のいずれに対応しているのかがわかる。さらにまた、図17の実施の形態においても、図18(b)のように、前述の同期部1401と同様に、揺動波形が、予め定められた位相のビット1812をデータ内に一定間隔に挿入することにより、このビット1812の信号から、再生クロックや記録クロックを作成することができる。また、参照信号420、421の位相を正確に決めるタイミングが増加することから、同期はずれに対してすぐに回復でき、信頼性を増加することができる。
また、本発明の第6の別の実施の形態について述べる。
本実施の形態では、オフセットのないトラックずれ信号を検出する方法について説明する。
再生スポット1がトラックを横切ると、図5(a)と同様の回路構成の図20の差動検出器38の出力は、図21の信号521のようになり、トラックずれ信号(実線)に揺動周波数成分(点線)が重畳されたものとなる。このとき、図5(a)の分割検出器33上で光束の中心が、分割検出器33の分割中心からずれると、トラックずれ信号には、図21の信号512のようにオフセットが生じ、トラックずれ信号のゼロ点位置が各トラック270等の中心からずれてしまう。そこで、信号521から揺動周波数成分のみを帯域フィルタ39により抜き出し、同期検波器42、43の出力を見ると、信号522と523が得られる。すなわち、溝トラック270等の内周側境界14の位相に対応した揺動周波数成分は、溝トラック270等の内周側で絶対振幅が大きくなり、その出力の絶対値は溝トラックの内周側境界14において最大となり、外周側境界15において最小となる。同様に、溝トラック270等の外周側境界の位相に対応した揺動周波数成分は、溝トラック270等の外周側で絶対振幅が大きくなり、その出力の絶対値は溝トラック270等の外周側境界15で最大となり、内周側境界14で最小となる。
従って、図20の絶対値検出器401、402により、これらの絶対値を検出すると、信号524、525がスポットの移動に従って検出される。これらを差動回路403により差分をとると、オフセットのないトラックずれ信号526が検出できる。この信号を用いてトラッキング制御を行うことにより、精度良くトラッキング制御を行うことができる。
また、この信号を用いて前述のオフセットを持ったトラックずれ信号を補正することができる。信号521から抽出した揺動周波数成分を差動回路407により取り去り、オフセットのみを含むトラックずれ信号を作成する。その後、信号526の利得を利得補正回路404により補正し、極性を合わせて加算器405により信号を加算し、オフセット成分を補正する。このほかにオフセットの補正方法としては従来よく知られた方法が適用できる。補正後の信号はランドトラック、溝トラックの極性切り替え指令によりトラックずれ信号の極性をトラッキング極性切り替え回路130により切り替え、トラッキング制御系132に送る。
上述してきたように、上述の各実施の形態の光ディスク4は、各トラック270の内周側境界および外周側境界14、15をそれぞれ異なる位相で揺動させて、内周側境界および外周側境界14、15にそれぞれ異なるアドレス情報13を記録することができる。したがって、再生時の光スポット1のスポット径が、トラック幅よりも大きく、読みだそうとしているトラックの両側のトラックにまたがるような場合であっても、読み出させたアドレス情報から、トラックを正確に特定することができる。したがって、トラックの幅が、光スポット1の径の半分程度になっても、正確にトラックを特定して情報を読み出すことができるという効果が得られる。同様に、記録時にも正確にトラックを特定して情報マーク274を記録することができる。
また、本実施の形態の光ディスク4は、トラック270等の境界14、15の揺動によってアドレス情報13を記録し、トラック270の境界14、15が揺動している領域にも、情報マーク274でユーザデータ等を記録することができる。よって、アドレス情報13を記録するための領域が光ディスク4上を占有することがない。また、アドレス情報13を読み出すためのVFO部等が不要であることから、従来のプリフォーマットのアドレス情報と比較すると、ユーザデータの記録効率を向上させることができる。
さらに、図11等の第3の実施の形態では、トラック270等の揺動波形から、クロック信号を作成することができるができるため、同期領域12が不要であり、さらにユーザデータの記録効率を向上させることができる。
本実施の形態の光ディスク4のユーザデータの記録効率について従来と比較して説明する。本実施の形態では、トラックの両側の境界にそれぞれ異なるアドレス情報13を記録するため、図25の従来のISOフォーマットのように、アドレス情報部(ID)259をプリフォーマットする領域をトラック上に確保する必要がない。このように、アドレス情報部(ID)259が不要になることから、アドレス情報部259を読み出すために配置されていたVFO部259、アドレスマーク部258やPA部263も不要になる。また、セクタマーク部(SM)256は、本実施の形態では同期領域12やSYNC部や同期部1401が同じ機能を果たすことができるので、これも不要になる。さらに、本実施の形態では、同期領域12やトラックの揺動波形から、再生クロックを作成することができるため、図25のVFO部252、RESYNC部268も不要になる。また、この同期領域12から作成したクロックを記録クロックとして用いることにより、光ディスクを回転させるモータの回転速度に変動が生じた場合等にも、一定の周波数で情報マークを記録できるため、バッファ部255も不要となる。
したがって、本実施の形態の光ディスク4は、図25の従来のフォーマットのうち、プリフォーマット部250の63バイト、VFO部257、252の69バイト、バッファ部255の23バイト、RESYNC部268の78バイトも不要となる。したがって、ユーザデータのデータ記録効率は、1014/1219バイトとなり、84%のデータ効率となる。なお、従来の図25のISOフォーマットでは、ユーザデータのデータ記録効率は、1024/1410であるから72.6%である。
さらに、図11の第3の実施の形態の場合には、揺動波形から再生クロックを作成するため、同期領域12も不要であり、さらにデータ記録効率を高めることができる。
従って、本発明によれば、光ディスク4のユーザデータ記録効率をすくなくとも80%以上にできるため、データ記録効率を極めて高効率にすることができる。
1・・・再生スポット、2・・・ランド部、3・・・グルーブ部、4・・・光ディスク、11・・・ブロック、12・・・同期領域、13・・・アドレス情報、16・・・データ領域、17・・・CRC領域、270、272・・・溝トラック、269、271・・・ランドトラック、420、421・・・参照信号。