JP4728785B2 - Il−18の生物活性を有する新規ポリペプチドの生産方法、および当該ポリペプチドの産生を阻害する物質のスクリーニング方法 - Google Patents

Il−18の生物活性を有する新規ポリペプチドの生産方法、および当該ポリペプチドの産生を阻害する物質のスクリーニング方法 Download PDF

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Description

本発明は、IL−18の生物活性を有する新規ポリペプチドおよびその利用に関し、特にIL−18前駆体からキマーゼにより産生されるIL−18の生物活性を有する新規なポリペプチド断片およびその利用に関するものである。
IL−18(インターロイキン18)はOkamuraらにより劇症肝炎組織より見いだされ、インターフェロンγ(IFN−γ)産生を誘導するTh1型サイトカイン(インターフェロン-γ誘導因子:interferon gamma inducing factor)として同定された(非特許文献1参照)。
IL−18はIL−12の共存下でTh1やNK細胞に作用してIFN−γの産生を強力に誘導する。また、これらの細胞上にFasリガンドの発現を誘導する。そのため、生体内でIL−12とIL−18が過剰に産生されると、腸や肝臓で重篤な臓器障害が引き起こされる。いわゆる、Th1病の原因となる(非特許文献2および3参照)。ところが、IL−18がIL−12ではなくIL−2の共存下でT細胞に作用すると、CD40リガンドの発現とIL−4とIL−13の産生が誘導される。そのため、IL−18で刺激されたT細胞と出会ったB細胞は活性化されてIgE抗体を産生する(非特許文献4参照)。さらに、IL−18は好塩基球や肥満細胞を直接刺激して、IgE非依存性にこれらの細胞からのヒスタミンやIL−4、IL−13などの産生を誘導する(非特許文献5参照)。そのため、皮膚ケラチノサイト特異的カスパーゼ1トランスジェニックマウスでは、高IL−18血症、高IgE血症、さらに顕著なアトピー性皮膚炎症状が認められる(非特許文献4、5、6参照)。すなわち、IL−12の産生を伴わないIL−18の過剰産生はTh2病の原因となる。
以上のように、IL−18は肝炎や炎症性腸疾患のようなTh1病の発症に関与するばかりか、アトピー性皮膚炎や喘息のようなTh2病の原因因子でもあることが、本発明者らにより明らかにされている。
ここで、IL−18はシグナルペプチドを持たない不活性な前駆体(proIL−18)として細胞内で産生され貯蔵される。その活性化と細胞外への放出には特異的転換酵素によるプロセスが必要とされる。活性化にはN末端を切断することが必要であるが、この酵素として従来知られているものはシステイン分解酵素であるカスパーゼ1(IL−1β転換酵素、interleukin1β converting enzyme:ICE)のみである。細胞内で産生、貯蔵された24kDaのproIL−18が、カスパーゼ1の作用を受けてAsp35−Tyr37の間で切断され18kDaの活性型IL−18を形成し、細胞外に分泌される(非特許文献7、8参照)。しかしながら、カスパーゼ1ノックアウトマウスにおいてもIL−18活性が見いだされており、proIL−18を活性化する別経路の存在が推測されている(非特許文献2参照)。
Okamura. H., . Tsutsui. H., Komatsu.T., Tanimoto, T., Nukata, Y., Tanabe, F., Akita, K., Torigoe, K., Okura, T., Fukuda, S. and Kurimoto, M.:Cloning of a new cytokine that induces IFN-γ production by T cells.;Nature. 378:88-91.,1995. Tsutsui, H., Kayagaki, N., Kuida, K., Nakano, H., Hayashi, N., Takeda, K., Matsui, K., Kashiwamura, S-I., Hada, T., Akira, S., Yagita, H., Okamura, H. and Nakanishi, K. Caspase-1-independetnt, Fas/Fas ligand-mediated IL-18 secretion from macrophages causes acute liver injury in mice. Immunity., 11:359-367, 1999. Tsutsui, H., Matsui, K., Okamura, H. and Nakanishi, K. Pathophysiological roles of interleukin-18 in inflammatory liver diseases. Immunol. Rev., 174:192-209. 2000. Yoshimoto, T., Mizutani, H., Tsutsui, H., Noben-Trauth, N., Yamanaka, K-I., Tanaka, M., Izumi, S., Okamura, H., Paul, W.E. and Nakanishi, K. IL-18 induction of IgE: dependence on CD4+T cells, IL-4 and STAT6. Nat. Immunol. 1:132-137, 2000. Konishi, H, Tsutsui H, Murakami T, Yumikura-Futatsugi S, Yamanaka K, Tanaka M, Iwakura Y, Suzuki N, Takeda K, Akira S, Nakanishi K, Mizutani H. IL-18 contributes to the spontaneous development of atopic dermatitis-like inflammatory skin lesion independently of IgE/stat6 under specific pathogen-free conditions. Proc Natl Acad Sci U S A, 99: 11340-5, 2002. Nakano, H, Tsutsui H, Terada M, Yasuda K, Matsui K, Yumikura-Futatsugi S, Yamanaka K, Mizutani H, Yamamura T, Nakanishi K. Persistent secretion of IL-18 in the skin contributes to IgE response in mice. Int Immunol, 15: 611-21, 2003. Yoshimoto, T., Tsutsui, H., Tominaga, K., Hoshino, K., Okamura, H., Akira, S., William, E. Paul. and Nakanishi, K. IL-18, although antiallergic when administered with IL-12, stimulates IL-4 and histamine release by basophils. Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 96: 13962-13966, 1999. Gu, Y., Kuida, K., Tsutsui, H., Ku G., Hsiao, K., Fleming, M. A., Hayashi, N., Higashino,K., Okamura, H., Nakanishi , K., et al., Activation of Interferon-γ inducing factor mediated by Interleukin -1b converting enzyme. Science, 275:206-209, 1997.
上述のように、IL−18はTh1病およびTh2病の発症に強く関与していることが示されている。したがって、IL−18を阻害またはproIL−18から活性型IL−18への転換を阻害すれば、有効にIL−18が関与する疾患の予防または治療できるものと考えられる。
しかし、IL−18を不活性な前駆体から活性体に特異的に転換する酵素として知られているのは単球由来のカスパーゼ1のみであり、カスパーゼ1を標的とした阻害剤により、実用上有効なアトピー性皮膚炎抑制の報告はない。
それゆえ、存在が示唆されているカスパーゼ1以外の経路によるproIL−18の活性化を研究することは、IL−18が関与する疾患の予防または治療に有効な薬剤の開発に繋がることが期待され、非常に意義のあることである。
本発明の目的は、proIL−18を活性化する機能を有するカスパーゼ以外の酵素を見出し、カスパーゼ1により形成される活性型IL−18とは異なる新規な活性型IL−18断片を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討し、肥満細胞の顆粒内酵素の1つであるキマーゼがIL−18前駆体を切断し、生物活性を有する活性型のIL−18に転換することを見出し、また、キマーゼにより産生される活性型IL−18は、従来のカスパーゼ1により産生される活性型IL−18と異なる新規のIL−18断片であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明に係るポリペプチドは、IL−18の生物活性を有するポリペプチドであって、
(a)配列番号1に示されるアミノ酸配列;または
(b)配列番号1に示されるアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列
からなることを特徴としている。
本発明に係るポリヌクレオチドは、上記本発明に係るポリペプチドをコードすることを特徴としている。
本発明に係る発現ベクターは、上記本発明に係るポリヌクレオチドを含むことを特徴としている。
本発明に係る形質転換体は、上記本発明に係る発現ベクターが導入されていることを特徴としている。
本発明に係る抗体は、上記本発明にかかるポリペプチドに特異的に結合することを特徴としている。
本発明に係る生産方法は、上記本発明に係るポリペプチドの生産方法であって、IL−18前駆体をキマーゼを用いて切断することを特徴としている。
本発明に係るスクリーニング方法は、上記本発明に係るポリペプチドが有するIL−18の生物活性を阻害する物質のスクリーニング方法であって、被検物質と請求項1に記載のポリペプチドとを接触させる工程;およびIL−18の生物活性レベルを測定する工程
を包含することを特徴としている。
また、本発明に係るスクリーニング方法は、上記本発明に係るポリペプチドの産生を阻害する物質のスクリーニング方法であって、被検物質とキマーゼとIL−18前駆体とを接触させる工程;および請求項1に記載のポリペプチドの産生レベルを測定する工程
を包含することを特徴としている。
本発明に係る薬学的組成物は、IL−18が病因または増悪因子となる疾患を予防または治療するための薬学的組成物であって、上記本発明に係るスクリーニング方法のいずれかにより得られる物質を有効成分とすることを特徴としている。
上記IL−18が病因または増悪因子となる疾患としては、アトピー性皮膚炎、湿疹皮膚炎、喘息、アレルギー性鼻炎、肝炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患、ベーチェット病、サルコイドーシス、リウマチ性関節炎、スチル病、動脈硬化症、2型糖尿病、多発性硬化症、甲状腺炎および乾癬から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
本発明に係るポリペプチドは、従来の活性型IL−18と異なる新規な活性型IL−18断片である。それゆえ、IL−18が関与する疾患の予防または治療における新しい標的分子になるという効果を奏する。
また、本発明に係るスクリーニング方法を用いれば、本発明に係るポリペプチドが有するIL−18の生物活性を阻害する物質、または本発明に係るポリペプチドの産生を阻害する物質を容易に得ることができるという効果を奏する。
さらに、本発明に係るスクリーニング方法により得られる物質は、IL−18が誘発因子となる疾患の予防剤または治療剤の有効成分として使用できるという効果を奏する。
本発明の実施の一形態について説明すれば、以下の通りである。なお、本発明はこれに限定されるものではない。
本発明者らは、肥満細胞の顆粒内酵素の1つであるキマーゼが不活性なproIL−18を生物活性のあるIL−18に転換することを見出した。すなわち、キマーゼの新規な機能としてIL−18活性化機能を見出した。従来、不活性なproIL−18を活性型IL−18に転換できる酵素はカスパーゼ1が知られているのみであったことから、この知見は非常に意義のあるものである。
さらに、キマーゼにより産生される活性型IL−18は、従来カスパーゼ1により産生される活性型IL−18(「成熟体IL−18(matIL−18)」とも称される)と異なる部位で切断された新規のIL−18断片であることが確認された。すなわち、カスパーゼ1により産生される活性型IL−18は、proIL−18のアミノ酸配列(配列番号3)の第35位のアスパラギン酸(Asp35)と第36位のチロシン(Tyr36)との間で切断されるC末端側の断片であり、分子量は約18kDaである。一方、本発明者らが見出したキマーゼにより産生される活性型IL−18は、proIL−18のアミノ酸配列の第56位のフェニルアラニン(Phe56)と第57位のイソロイシン(Ile57)との間で切断されるC末端側の断片であり、分子量は約16kDaである。
ここで、キマーゼは肥満細胞の顆粒内酵素の1つで、中性のセリンプロテアーゼであるがキモトリプシン様の活性を持つ。キマーゼは組織内においてアンジオテンシンIをアンジオテンシンIIに変換する酵素であることが知られており(H Urata, et al. J. Biol. Chem., Dec 1990; 265: 22348 - 22357)、アンジオテンシンIIに起因する心臓、循環器系疾患の発症に関わっているとされる。また、キマーゼはコラゲナーゼから活性型コラゲナーゼへの活性化や細胞外マトリックス、トロンビン、IgGの限定分解、肥満細胞からヒスタミンの遊離を促進する等の作用も明らかになっていることから、キマーゼはアレルギーまたは炎症性疾患などにも関与していると考えられている。しかし、キマーゼの生理学的、病理学的機能の詳細は明らかになっていない。
以下、本発明について詳細に説明する。
(1)ポリペプチド
本発明に係るポリペプチドは、上述のように、キマーゼによりproIL−18のアミノ酸配列の第56位のフェニルアラニン(Phe56)と第57位のイソロイシン(Ile57)との間で切断されるC末端側の断片であり、分子量は約16kDaで、IL−18の生物活性を有している。
「IL−18の生物活性」とは従来公知のカスパーゼ1により産生される分子量約18kDaの活性型IL−18(以下「成熟体IL−18」と記す。)が有する生物活性が意図される。具体的には、IFN−γ産生誘導活性、IL−13産生誘導活性、GM−CSF産生誘導活性、IL−8産生誘導活性など(H Hata, et. Al. Int. Immunol. Dec 2004;16: 1733-1739)が挙げられるほか、好中球のoxidative burstの誘導、好酸球からのIL−8産生促進、表皮細胞のIP−10、MHC ClassII発現増強、IL−32の産生誘導が挙げられる。本発明に係るポリペプチドはこれらIL−18の生物活性のうち、少なくとも1つを有するものであればよい。
本発明に係るポリペプチドは、IL−18阻害薬開発のための標的分子として非常に有用である。また、特異的抗体作製のための抗原としても有用である。さらに、免疫研究用の試薬としても利用価値が高い。
本明細書中で使用される場合、用語「ポリペプチド」は、「ペプチド」または「タンパク質」と交換可能に使用される。本発明に係るポリペプチドはまた、天然供給源より単離されても、組換え的に生成されてもよい。
用語「単離された」ポリペプチドまたはタンパク質は、その天然の環境から取り出されたポリペプチドまたはタンパク質が意図される。例えば、宿主細胞中で発現された組換え産生されたポリペプチドおよびタンパク質は、任意の適切な技術によって実質的に精製されている天然または組換えのポリペプチドおよびタンパク質と同様に、単離されていると考えられる。
本発明に係るポリペプチドは、天然の精製産物、原核生物宿主および真核生物宿主(例えば、E.coli細胞、酵母細胞、高等植物細胞、昆虫細胞、および哺乳動物細胞を含む)から組換え技術によって産生された産物を含む。組換え産生手順において用いられる宿主に依存して、本発明に係るポリペプチドは、グリコシル化され得る。さらに、本発明に係るポリペプチドはまた、いくつかの場合、宿主媒介プロセスの結果として、開始の改変メチオニン残基を含み得る。
一実施形態において、本発明に係るポリペプチドは、配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドが好ましい。別の実施形態において、本発明に係るポリペプチドは、配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドの変異体でありかつIL−18の生物活性を有するポリペプチドが好ましい。
このような変異体としては、欠失、挿入、逆転、反復、およびタイプ置換(例えば、親水性残基の別の残基への置換、しかし通常は強く親水性の残基を強く疎水性の残基には置換しない)を含む変異体が挙げられる。特に、ポリペプチドにおける「中性」アミノ酸置換は、一般的にそのポリペプチドの活性にほとんど影響しない。
ポリペプチドのアミノ酸配列中におけるいくつかのアミノ酸が、このポリペプチドの構造または機能に有意に影響することなく容易に改変され得ることは、当該分野において周知である。さらに、人為的に改変させるだけではく、天然のタンパク質において、当該タンパク質の構造または機能を有意に変化させない変異体が存在することもまた周知である。
好ましい変異体は、保存性もしくは非保存性のアミノ酸置換、欠失、または付加を有する。好ましくは、サイレント置換、付加、および欠失であり、特に好ましくは、保存性置換である。これらは、本発明に係るポリペプチドのIL−18の生物活性を変化させない。
代表的に保存性置換と見られるのは、脂肪族アミノ酸Ala、Val、Leu、およびIleの中の1つのアミノ酸から別のアミノ酸への置換;ヒドロキシル残基SerおよびThrの交換、酸性残基AspおよびGluの交換、アミド残基AsnおよびGlnの間の置換、塩基性残基LysおよびArgの交換、ならびに芳香族残基Phe、Tyrの間の置換である。
上記に詳細に示されるように、どのアミノ酸の変化が表現型的にサイレントでありそうか(すなわち、機能に対して有意に有害な効果を有しそうにないか)に関するさらなるガイダンスは、Bowie, J.U.ら「Deciphering the Message in Protein Sequences: Tolerance to Amino Acid Substitutions」,Science 247:1306−1310 (1990)(本明細書中に参考として援用される)に見出され得る。
当業者は、周知技術を使用してポリペプチドのアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸を容易に変異させることができる。例えば、公知の点変異導入法(変異誘発法)に従えば、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの任意の塩基を変異させることができる。また、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの任意の部位に対応するプライマーを設計して欠失変異体または付加変異体を作製することができる。さらに、本明細書中に記載される方法を用いれば、作製した変異体がIL−18の生物活性を有するか否かを容易に決定し得る。
1つの局面において、本実施形態に係るポリペプチドは、IL−18の生物活性を有するポリペプチドであって、
(a)配列番号1に示されるアミノ酸配列;または
(b)配列番号1に示されるアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、挿入、置換もしくは付加されたアミノ酸配列
からなるポリペプチドであることが好ましい。
上記「1もしくは数個のアミノ酸が欠失、挿入、置換もしくは付加された」とは、部位特異的突然変異誘発法等の公知の変異ポリペプチド作製法により欠失、挿入、置換もしくは付加できる程度の数(好ましくは10個以下、より好ましくは7個以下、最も好ましくは5個以下)のアミノ酸が置換、欠失、挿入もしくは付加されていることが意図される。このような変異ポリペプチドは、上述したように、公知の変異ポリペプチド作製法により人為的に導入された変異を有するポリペプチドに限定されるものではなく、天然に存在するポリペプチドを単離精製したものであってもよい。
本発明に係るポリペプチドは、アミノ酸がペプチド結合しているポリペプチドであればよいが、これに限定されるものではなく、ポリペプチド以外の構造を含む複合ポリペプチドであってもよい。本明細書中で使用される場合、「ポリペプチド以外の構造」としては、糖鎖およびイソプレノイド基等を挙げることができるが、特に限定されない。
また、本発明に係るポリペプチドは、付加的なポリペプチドを含むものであってもよい。付加的なポリペプチドとしては、例えば、His、Myc、Flag等のエピトープ標識ポリペプチドが挙げられる。
また、本発明に係るポリペプチドは、本発明に係るポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを宿主細胞に導入して、そのポリペプチドを細胞内発現させた状態であってもよいし、細胞、組織などから単離精製されてもよい。
他の実施形態において、本発明に係るポリペプチドは、融合タンパク質のような改変された形態で組換え発現され得る。例えば、本発明に係るポリペプチドの付加的なアミノ酸、特に荷電性アミノ酸の領域が、宿主細胞内での、精製の間または引き続く操作および保存の間の安定性および持続性を改善するために、ポリペプチドのN末端またはC末端に付加され得る。
本実施形態に係るポリペプチドは、例えば、融合されたポリペプチドの精製を容易にするペプチドをコードする配列であるタグ標識(タグ配列またはマーカー配列)にN末端またはC末端へ付加され得る。このような配列は、ポリペプチドの最終調製の前に除去され得る。本発明のこの局面の特定の好ましい実施態様において、タグアミノ酸配列は、ヘキサ−ヒスチジンペプチド(例えば、pQEベクター(Qiagen,Inc.)において提供されるタグ)であり、他の中では、それらの多くは公的および/または商業的に入手可能である。例えば、Gentzら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:821−824(1989)(本明細書中に参考として援用される)において記載されるように、ヘキサヒスチジンは、融合タンパク質の簡便な精製を提供する。「HA」タグは、インフルエンザ赤血球凝集素(HA)タンパク質由来のエピトープに対応する精製のために有用な別のペプチドであり、それは、Wilsonら、Cell 37:767(1984)(本明細書中に参考として援用される)によって記載されている。他のそのような融合タンパク質は、NまたはC末端にてFcに融合される本実施形態に係るポリペプチドまたはそのフラグメントを含む。
別の実施形態において、本発明に係るポリペプチドは、下記で詳述されるように組換え生成されてもよい。
組換え生成は、当該分野において周知の方法を使用して行うことができ、例えば、以下に詳述されるようなベクターおよび細胞を用いて行うことができる。
(2)ポリヌクレオチド
本発明は、上記本発明に係るポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供する。すなわち、本発明に係るポリヌクレオチドは、
(a)配列番号1に示されるアミノ酸配列;または
(b)配列番号1に示されるアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列
からなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドであればよい。
本発明に係るポリヌクレオチドは、後述するように発現ベクターに挿入され、宿主細胞に導入されることにより、本発明に係るポリペプチドの生産に利用することができる。
本明細書中で使用される場合、用語「ポリヌクレオチド」は、「遺伝子」、「核酸」または「核酸分子」と交換可能に使用され、ヌクレオチドの重合体が意図される。本明細書中で使用される場合、用語「塩基配列」は、「核酸配列」または「ヌクレオチド配列」と交換可能に使用され、デオキシリボヌクレオチド(A、G、CおよびTと省略される)の配列として示される。
本発明に係るポリヌクレオチドは、RNA(例えば、mRNA)の形態、またはDNAの形態(例えば、cDNAまたはゲノムDNA)で存在し得る。DNAは、二本鎖または一本鎖であり得る。一本鎖DNAまたはRNAは、コード鎖(センス鎖としても知られる)であり得るか、または、非コード鎖(アンチセンス鎖としても知られる)であり得る。
また本発明に係るポリヌクレオチドは、その5’側または3’側で上述のタグ標識(タグ配列またはマーカー配列)をコードするポリヌクレオチドに融合され得る。
また、本発明に係るポリヌクレオチドとしては、配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの変異体であって、IL−18の生物活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが好ましい。変異体は、天然の対立遺伝子変異体のように、天然に生じ得る。「対立遺伝子変異体」によって、生物の染色体上の所定の遺伝子座を占める遺伝子のいくつかの交換可能な形態の1つが意図される。天然に存在しない変異体は、例えば当該分野で周知の変異誘発技術を用いて生成され得る。
このような変異体としては、配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの塩基配列において1個または数個の塩基が欠失、置換、または付加した変異体が挙げられる。変異体は、コードもしくは非コード領域、またはその両方において変異され得る。コード領域における変異は、保存的もしくは非保存的なアミノ酸欠失、置換、または付加を生成し得る。
一実施形態において、本発明に係るポリヌクレオチドは、以下の(a)または(b)に記載のポリヌクレオチドであることが好ましい。
(a)配列番号2に示される塩基配列からなるポリヌクレオチド
(b)配列番号2に示される塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドであって、IL−18の生物活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド
なお、配列番号2に示される塩基配列はヒトIL−18cDNAの塩基配列(ACCESSION:NM_001562、配列番号4)の第392位〜第802位(第800位〜第802位はストップコドン)に該当する。
ハイブリダイゼーションは、Sambrookら、Molecular Cloning,A Laboratory Manual,3rd Ed.,Cold Spring Harbor Laboratory(2001)に記載されている方法のような周知の方法で行うことができる。通常、温度が高いほど、塩濃度が低いほどストリンジェンシーは高くなり(ハイブリダイズし難くなる)、より相同なポリヌクレオチドを取得することができる。適切なハイブリダイゼーション温度は、塩基配列やその塩基配列の長さによって異なり、例えば、アミノ酸6個をコードする18塩基からなるDNAフラグメントをプローブとして用いる場合、50℃以下の温度が好ましい。
本明細書中で使用される場合、用語「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」は、ハイブリダイゼーション溶液(50%ホルムアミド、5×SSC(150mMのNaCl、15mMのクエン酸三ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハート液、10%硫酸デキストラン、および20μg/mlの変性剪断サケ精子DNAを含む)中にて42℃で一晩インキュベーションした後、約65℃にて0.1×SSC中でフィルターを洗浄することが意図される。
また、本発明に係るポリヌクレオチドとしては、配列番号2に示される塩基配列と相補的な塩基配列と少なくとも80%同一、より好ましくは少なくとも85%、90%、92%、95%、96%、97%、98%または99%同一である塩基配列からなるポリヌクレオチドであって、IL−18の生物活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが好ましい。
例えば、「本発明に係るポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの参照(QUERY)塩基配列に少なくとも95%同一の塩基配列からなるポリヌクレオチド」によって、対象塩基配列が、本発明に係るポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの参照塩基配列の100ヌクレオチチド(塩基)あたり5つまでの不一致(mismatch)を含み得ることを除いて、参照配列に同一である、ということが意図される。
任意の特定の核酸分子が、例えば、配列番号2に示される塩基配列に対して、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるか否かは、公知のコンピュータープログラム(例えば、Bestfit program(Wisconsin Sequence Analysis Package,Version 8 for Unix(登録商標),Genetics Computer Group,University Research Park,575 Science Drive,Madison,WI 53711)を使用して決定され得る。
本発明に係るポリヌクレオチドは、2本鎖DNAのみならず、それを構成するセンス鎖およびアンチセンス鎖といった1本鎖のDNAまたはRNAを包含する。また、本発明に係るポリヌクレオチドは、非翻訳領域(UTR)の配列やベクター配列(発現ベクター配列を含む)などの配列を含むものであってもよい。
本発明に係るポリヌクレオチドを取得する方法として、PCR等の増幅手段を用いる方法を挙げることができる。例えば、配列番号2に示される塩基配列の5’側および3’側の配列(またはその相補配列)に基づいてそれぞれプライマーを設計し、これらプライマーを用いてゲノムDNAまたはcDNA等を鋳型にしてPCR等を行い、両プライマー間に挟まれるDNA領域を増幅することで、本発明に係るポリヌクレオチドを含むDNA断片を大量に取得できる。
本発明のポリヌクレオチドを取得するための供給源は、特に限定されるものではないが、IL−18を発現するヒト細胞などが好ましい。
(3)発現ベクター
本発明は、本発明に係るポリペプチドを産生するために使用される発現ベクターを提供する。本発明に係る発現ベクターは、上述した本発明に係るポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むものであれば、特に限定されないが、RNAポリメラーゼの認識配列を有するプラスミドベクター(pSP64、pBluescriptなど)が好ましい。組換え発現ベクターの作製方法としては、プラスミド、ファージ、またはコスミドなどを用いる方法が挙げられるが特に限定されない。
ベクターの具体的な種類は特に限定されず、宿主細胞中で発現可能なベクターが適宜選択され得る。すなわち、宿主細胞の種類に応じて、確実に本発明に係るポリヌクレオチドを発現させるために適宜プロモーター配列を選択し、これと本発明に係るポリヌクレオチドを各種プラスミド等に組み込んだベクターを発現ベクターとして用いればよい。
本発明に係る発現ベクターは、導入されるべき宿主の種類に依存して、発現制御領域(例えば、プロモーター、ターミネーター、および/または複製起点等)を含有する。細菌用発現ベクターのプロモーターとしては、慣用的なプロモーター(例えば、trcプロモーター、tacプロモーター、lacプロモーター等)が使用され、酵母用プロモーターとしては、例えば、グリセルアルデヒド3リン酸デヒドロゲナーゼプロモーター、PH05プロモーター等が挙げられ、糸状菌用プロモーターとしては、例えば、アミラーゼ、trpC等が挙げられる。また動物細胞宿主用プロモーターとしては、ウイルス性プロモーター(例えば、SV40初期プロモーター、SV40後期プロモーター等)が挙げられる。発現ベクターの作製は、制限酵素および/またはリガーゼ等を用いる慣用的な手法に従って行うことができる。発現ベクターによる宿主の形質転換もまた、慣用的な手法に従って行うことができる。
上記発現ベクターを用いて形質転換された宿主を、培養、栽培または飼育した後、培養物などから慣用的な手法(例えば、濾過、遠心分離、細胞の破砕、ゲル濾過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィーなど)に従って、目的タンパク質を回収、精製することができる。
発現ベクターは、少なくとも1つの選択マーカーを含むことが好ましい。このようなマーカーとしては、真核生物細胞培養についてはジヒドロ葉酸レダクターゼまたはネオマイシン耐性遺伝子、およびE.coliおよび他の細菌における培養についてはテトラサイクリン耐性遺伝子またはアンピシリン耐性遺伝子が挙げられる。
上記選択マーカーを用いれば、本発明に係るポリヌクレオチドが宿主細胞に導入されたか否か、さらには宿主細胞中で確実に発現しているか否かを確認することができる。あるいは、本発明に係るポリペプチドを融合ポリペプチドとして発現させてもよく、例えば、オワンクラゲ由来の緑色蛍光ポリペプチドGFP(Green Fluorescent Protein)をマーカーとして用い、本発明に係るポリペプチドをGFP融合ポリペプチドとして発現させてもよい。
上記の宿主細胞は、特に限定されるものではなく、従来公知の各種細胞を好適に用いることができる。具体的には、例えば、例えば、大腸菌(Escherichia coli)等の細菌、酵母(出芽酵母Saccharomyces cerevisiae、分裂酵母Schizosaccharomyces pombe)、線虫(Caenorhabditis elegans)、アフリカツメガエル(Xenopus laevis)の卵母細胞、動物細胞(例えば、CHO細胞、COS細胞、およびBowes黒色腫細胞)などが挙げられる。
上記発現ベクターを宿主細胞に導入する方法、すなわち形質転換法も特に限定されるものではなく、電気穿孔法、リン酸カルシウム法、リポソーム法、DEAEデキストラン法等の従来公知の方法を好適に用いることができる。また、例えば、本発明に係るポリペプチドを昆虫で発現させる場合には、バキュロウイルスを用いた発現系を用いればよい。
本発明に係る発現ベクターを使用して、上記本発明に係るポリヌクレオチドを生物または細胞に導入すれば、当該生物または細胞中に本発明に係るポリペプチドを発現させることができる。
(4)形質転換体
本発明は、上記本発明に係るポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが導入された形質転換体を提供する。本明細書中で使用される場合、用語「形質転換体」は、細胞、組織または器官だけでなく、生物個体をも含むことが意図される。また、形質転換の対象となる生物も特に限定されるものではなく、上記宿主細胞で例示した各種微生物、植物または動物が挙げられる。
本発明に係る形質転換体は、上記本発明に係るポリペプチドが発現されていることを特徴とする。本発明に係る形質転換体は、上記本発明に係るポリペプチドが安定的に発現することが好ましいが、一過性に発現してもよい。
本発明に係る形質転換体は、本発明に係る発現ベクターを、ポリペプチドが発現され得るように生物中に導入することによって取得される。
(5)抗体
本発明は、本発明に係るポリペプチドに特異的に結合する抗体を提供する。
本発明に係る抗体は、本発明に係るポリペプチドとカスパーゼ1により産生される成熟体IL−18とを区別できるものであることが好ましい。例えば、本発明に係るポリペプチドに結合するが成熟体IL−18には結合しない抗体であることが好ましい。
さらに、本発明に係る抗体は、本発明に係るポリペプチドが有するIL−18の生物活性を阻害する抗体(中和抗体)であることが好ましい。
本発明に係る抗体は、本発明に係るポリペプチドを検出や精製に使用することができる。また、中和抗体は本発明に係るポリペプチドが関与する疾患の予防や治療に使用することができる。
本明細書において「抗体」は、免疫グロブリン(IgA、IgD、IgE、IgG、IgMおよびこれらのフラグメント(Fabフラグメント、F(ab’)フラグメント、Fcフラグメントなど))を意味し、例としては、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、単鎖抗体などが挙げられるがこれらに限定されない。
抗体は、種々の公知の方法(例えば、HarLowら、「Antibodies:a laboratory manual, Cold Spring Harbor Laboratory, New York(1988)」、岩崎ら、「単クローン抗体 ハイブリドーマとELISA、講談社(1991)」)に従えば作製することができる。また、ペプチド抗体は、当該分野に周知の方法によって作製される(例えば、Chow,M.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:910−914;およびBittle,F.J.ら、J.Gen.Virol.66:2347−2354(1985)を参照のこと)。
作製した抗体が中和活性を有するか否かは、例えば後述するIL−18活性阻害物質のスクリーニング方法に従えば確認することができる。
また、中和抗体をヒトに適用する場合は、ヒト抗体またはヒト化抗体であることが好ましい。ヒト抗体やヒト化抗体は公知の方法(例えば、Riechman, Nature 332, 323-327 (1988)、Queen, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86, 10029-10033(1989)、国際特許出願公開番号WO92-03918、WO93-2227、WO94-02602、WO94-25585、WO96-33735、WO96-34101など)により取得することができる。
(6)ポリペプチドの生産方法
本発明は、本発明に係るポリペプチドを生産する方法を提供する。
一実施形態において、本発明に係るポリペプチドの生産方法は、IL−18前駆体をキマーゼを用いて切断する工程を包含するものであればよい。キマーゼがIL−18前駆体(proIL−18)をPhe56とIle57との間で切断し、本発明に係るポリペプチドを産生する活性を有することを本発明者らは実証している。
キマーゼは、例えば組み換えタンパク質として取得することができる。具体的には、例えばヒト肥満細胞キマーゼのcDNA(ACCESSION:BC069370)を適当な発現ベクターに挿入し、適当な宿主細胞に導入して発現させ、精製すればよい。また、市販品(例えば、シグマアルドリッチ社製(http://www.sigmaaldrich.com/Area_of_Interest/Biochemicals/Enzyme_Explorer/Cell_Signaling_Enzymes/Chymase.html))を購入することも可能である。
proIL−18は、例えば組み換えタンパク質として取得することができる。具体的には、例えば後述の実施例に記載の方法でproIL−18を発現させ、精製することができる。また、天然にproIL−18を発現している細胞からproIL−18を精製して使用することも可能である。
proIL−18とキマーゼとの反応は、生理的条件に近い緩衝液中で行うことが好ましい。用いる緩衝液は特に限定されないが、例えば発明者らは20mM HEPES、pH 7.4、10% glycerol、0.15M NaClを用いている。また、キマーゼとproIL−18の比率も特に限定されないが、発明者らは酵素/基質比1:100(重量比)で行っている。
生成した本発明に係るポリペプチドの単離、精製は公知の方法を適宜選択して用いればよい。例えば、単離にはHPLC、電気泳動ゲル、転写膜などを好適に用いることができ、精製方法としてはゲル濾過カラムを用いる方法、アフィニティーカラム(抗体カラム)を用いる方法などを好適に用いることができる。
他の実施形態において、本発明に係るポリペプチドは上述の本発明に係る発現ベクターが導入された形質転換体を用いることにより生産することができる。すなわち、本発明に係るポリヌクレオチドを組換え発現ベクターに組み込んだ後、公知の方法により発現可能に宿主に導入し、宿主内で翻訳されて得られる上記ポリペプチドを精製するという方法などを採用することができる。
(7)スクリーニング方法
(A)本発明に係るポリペプチドが有するIL−18の生物活性を阻害する物質のスクリーニング方法
本発明に係るポリペプチドが有するIL−18の生物活性を阻害する物質(以下「IL−18阻害物質」と記す。)のスクリーニング方法は、被検物質と本発明に係るポリペプチドとを接触させる工程;およびIL−18の生物活性(以下「IL−18活性」と記す。)レベルを測定する工程を包含するものであればよい。なお、上記以外の工程が設けられていてもよく、上記以外の工程の内容は限定されない。
被検物質と本発明に係るポリペプチドとを接触させる工程では、例えば本発明に係るポリペプチドを含有する溶液中に被検物質を添加し、インキュベートすればよい。この際、被検物質を添加しない対照を設けることが好ましい。
IL−18活性レベルを測定する工程では、例えば上記本発明に係るポリペプチドおよび被検物質を含有する溶液(被検サンプル)のIL−18活性レベルを適当な方法を用いて測定すればよい。具体的には、例えば、IL−18活性の1つであるIFN−γ産生誘導活性を測定する場合は、IFN−γ産生能を有する細胞(骨髄単球系細胞株など)を培養し、その培地に被検サンプルを添加して、一定時間後の培養上清中のIFN−γ量を測定すればよい。IFN−γの測定には、市販のELISAキットなどを好適に用いることができる。測定結果を対照サンプルと比較することで、被検物質のIL−18阻害の強さを確認することができる。
また、例えばIL−13誘導活性を測定する場合は、IL−13産生能を有する細胞(Th1細胞株など)を培養し、その培地に被検サンプルを添加して、一定時間後の培養上清中のIL−13量を測定すればよい。IL−13の測定には、市販のELISAキットなどを好適に用いることができる。測定結果を対照サンプルと比較することで、被検物質のIL−18阻害の強さを確認することができる。ただし、IL−18活性の測定方法はこれらに限定されるものではない。
IL−18阻害物質としては、IFN−γ産生誘導活性を指標とした場合、本発明に係るポリペプチドが産生誘導するIFN−γ量を50%抑制する物質であることが好ましく、より好ましくは70%、さらに好ましくは90%、特に好ましくは100%抑制する物質である
(B)本発明に係るポリペプチド産生を阻害する物質のスクリーニング方法
本発明に係るポリペプチド産生を阻害する物質(以下「産生阻害物質」と記す。)のスクリーニング方法は、被検物質とキマーゼとIL−18前駆体(proIL−18)とを接触させる工程;および本発明に係るポリペプチドの産生レベルを測定する工程を包含するものであればよい。なお、上記以外の工程が設けられていてもよく、上記以外の工程の内容は限定されない。
被検物質とキマーゼとIL−18前駆体とを接触させる工程では、例えば被検物質とキマーゼとIL−18前駆体とを同一の溶液中で混和し、インキュベートすればよい。この際、被検物質を添加しない対照を設けることが好ましい。
本発明に係るポリペプチドの産生レベルを測定する工程では、上記混和溶液(被検サンプル)中に存在する本発明に係るポリペプチドの量を適当な方法で測定すればよい。具体的には、例えば、被検サンプルをSDS‐PAGEに供し、電気泳動後ゲルを染色して約16kDaのバンドの有無、または対照サンプルにおける約16kDaのバンドと被検サンプルの同じ分子量のバンドの濃度を比較すればよい。ただし、本発明に係るポリペプチドの産生レベルを測定する方法はこれに限定されるものではない。
本発明に係るポリペプチドの産生阻害物質としては、産生を100%阻害する物質であることが好ましい。
(8)薬学的組成物
本発明は、IL−18が病因または増悪因子となる疾患を予防または治療するための薬学的組成物を提供する。
本発明に係る薬学的組成物は、上記本発明に係るスクリーニング方法により得られる物質を有効成分とするものであればよい。このような物質は本発明に係るポリペプチドのIL−18活性を有効に阻害し、あるいは本発明に係るポリペプチドの産生を有効に阻害するものであるため、IL−18が病因または増悪因子となる疾患を予防または治療に好適に用いることができる。
IL−18が病因または増悪因子となる疾患としては、アトピー性皮膚炎、湿疹皮膚炎、喘息、アレルギー性鼻炎、肝炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患、ベーチェット病、サルコイドーシス、リウマチ性関節炎、スチル病、乾癬などを挙げることができる。
本発明の薬学的組成物は、経口、非経口、または局所のいずれかの経路で哺乳動物に投与することができる。有効成分の含有量は、治療対象の体重および状態、治療される疾病の状態、および選択される特定の投与経路に応じて、適宜選択すればよい。
本発明に係るスクリーニング方法により得られる物質は、上記投与経路のいずれかにより、単独で、あるいは、薬剤学的に許容することのできる担体または希釈剤との組み合わせで、投与することができ、投与は、単回または複数回投与で実施することができる。より具体的には、本発明に係る薬学的組成物は、幅広い種々の剤形で投与することができる。すなわち、錠剤、カプセル剤、ロゼンジ剤、トローチ剤、ハードキャンディー剤、散剤、スプレー剤、クリーム剤、塗剤、坐剤、ゼリー剤、ゲル剤、ペースト剤、ローション剤、軟膏剤、水性懸濁液、注射溶液、エリキシル剤、シロップ剤などの形で、種々の薬剤学的に許容されることのできる不活性担体と組み合わせることができる。担体には、固体希釈剤もしくは充填剤、滅菌水性媒体、種々の非毒性有機溶媒などが含まれる。更に、経口医薬組成物には、適当な甘味および/または香気を付与することができる。通常、有効成分は、上記剤形中に、5重量%〜70重量%(好ましくは10重量%〜50重量%)の範囲の濃度レベルで存在する。
経口投与用では、種々の賦形剤(例えば、微結晶セルロース、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、リン酸二カリウム、およびグリシン)を含有する錠剤を、種々の崩壊剤(例えば、デンプン(好ましくはコーン、ポテト、またはタピオカスターチ)、アルギン酸、およびケイ酸複合体)と一緒に、あるいは顆粒化結合剤(例えば、ポリビニルピロリドン、スクロース、ゼラチン、およびアラビアゴム)と一緒に用いることができる。加えて、滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、およびタルク)が、多くの場合、錠剤形成用に非常に有用である。また、同型の固体組成物をゼラチンカプセルにおける充填剤として用いることができる。これに関連する好適材料には、ラクトース(乳糖)および高分子量ポリエチレングリコールが含まれる。経口投与用に水性懸濁液および/またはエリキシル剤が望まれる場合には、活性成分を、種々の甘味量もしくは香料、着色剤、または色素と組み合わせることができ、所望により、さらに乳化剤および/または懸濁剤と、上記希釈剤(例えば、水、エタノール、プロピレングリコール、グリセリン、およびそれらの種々の組み合わせ)と一緒に組み合わせることができる。
非経口投与用では、ゴマもしくはピーナッツオイルまたは水性プロピレングリコールのいずれかを溶媒として用いることができる。所望に応じて、上記水溶液を適当に緩衝化(好ましくはpH>8)すべきであり、液体希釈剤を最初に等張性にするべきである。これらの水溶液は、静脈注射用に適している。油性溶液は、関節内、筋内、および皮下注射用に適している。滅菌条件下におけるこれらの全ての溶液の調製は、当業者に周知の標準的薬剤学的技術により、容易に達成される。加えて、また、皮膚の炎症症状を治療する場合に、本発明の化合物を局所投与することができる。この場合、好ましくは、標準的薬剤学的手法に従って、クリーム剤、ゼリー剤、ゲル剤、ペースト剤、および軟膏剤により行うことができる。
なお、発明を実施するための最良の形態の項においてなした具体的な実施態様および以下の実施例は、あくまでも、本発明の技術内容を明らかにするものであって、そのような具体例にのみ限定して狭義に解釈されるべきものではなく、当業者は、本発明の精神および添付の特許請求の範囲内で変更して実施することができる。
また、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。
〔肥満細胞キマーゼのIL−18活性化酵素活性の確認〕
(1)実験材料
リコンビナントヒト肥満細胞キマーゼは帝人(株)より提供された。培養液のRPMI1640は日研医学研究所から購入し、10mM L-グルタミン、24mM炭酸二水素ナトリウム、100units/ml ペニシリン、100μg/ml ストレプトマイシンを加えた。ウシ胎仔血清(FBS)はSIGMAから購入した。KG-1細胞株はATCCより購入した。制限酵素とTaq DNA polymeraseはニッポンジーンから購入した。Ni-NTAカラムはQIAGENから購入し、生産者指示の方法で使用した。
ウエスタンブロット解析において用いたヤギ抗ヒトIL-18 polyclonal antibody (pAb)はSanta Cruzから、マウス抗ヒトIL-18 monoclonal antibody (mAb)はMBLから購入した。二次抗体の抗ヤギAP接合pAb、抗マウスAP接合pAbはPromegaから購入した。発色にはウエスタンブルー安定化基質を用いた。
ヒトIL-18 ELISA キットはMBLから、ヒトIFN-γ ELISAキットはBiosourseから購入した。
(2)実験方法
2−1 リコンビナントproIL-18発現ベクターの構築
proIL-18は193のアミノ酸からなる24.2kDaのタンパク質である(配列番号3参照)。proIL-18の全翻訳配列を含む579bpのcDNA(配列番号4の第221位〜第799位)をPCRの鋳型として用い、下記のプライマー(Primer1および2)を用いてPCRにより目的のDNA断片を増幅した。なお、Primer1および2は、pQE-30ベクターに組み込むため、5’末端にBamHIを認識する配列が付加されている。
Primer 1 : CGGGATCCATGGCTGCTGAACCAGTAGAAGA(配列番号5)
Primer 2 : CGGGATCCCTAGTCTTCGTTTTGAACAGTGAAC(配列番号6)
DNA断片のサブクローニングにおいては、まず、pQE-30ベクターをBamHIで消化し、バクテリアアルカリホスファターゼ(BAP)処理し、自己結合を防止した。BAP処理は、10倍APバッファー:3μl、BAP(2U/ml):5μl、DNA断片: 20μlおよび水:2μl(全反応液30μl)を混和し、37℃で30分間行った。pQE-30ベクター断片はGeneClean Kitを用いて精製した。次に精製した上記PCR断片とpQE-30ベクター断片とを結合させ、双方向から塩基配列を読み取り、既知の塩基配列との同一性を確認した。
2−3 リコンビナントproIL-18の発現
大腸菌株M-15(QIAGEN)に(2)で作製したヒトproIL-18発現ベクターを会社の推奨方法で形質転換した。リコンビナントproIL-18発現は以下の方法で行った。
形質転換した大腸菌株を100μg/mlのampicilinを加えた50ml LB培地(1L当たり10g tryptone、5g yeast extract、3g NaCl、0.5g sucroseを含む)で一晩培養した。その培養液に950mlの新しい同じ培養液(LB培地)を加え、37℃で600nmの吸光度(OD600)が0.5になるまで震盪した。タンパク質合成を促進するため、最終濃度1mMのIPTGを加えた。IPTGを加える前に、それぞれ1mlの培養液を滅菌チューブに移し、次のステップまで別に培養した。8時間のタンパク質誘導の後、それぞれ20μlの上清をSDS-PAGEを用いた発現分析に用いた。
2−4 リコンビナントproIL-18の精製
形質転換大腸菌を遠心分離(5000×g、20分、4℃)して回収した。大腸菌沈殿物は20mlの溶解バッファー(1×PBS、pH 7.4、100mM imidazole)にて完全に再懸濁した。懸濁液を氷上に移し、50秒の間隔をあけて10秒間の超音波処理を10回行って融解した後、20,000×g、4℃、30分の遠心分離を行った。抽出液(上清)を0.22μmフィルター(Millipore)にて濾過し、濾過液をNi-NTAカラム(体積1mL、Quagen)に加えた。カラムを5mlの溶解バッファーにて洗浄した。5mlの溶出バッファー(1×PBS、pH 7.4、300mM imidasol)をNi-NTAカラムに通し、ゆっくり溶出した。回収した溶出分画のタンパク量を測定した。
2−5 電気泳動およびウエスタンブロット
サンプルをSDSサンプルバッファーに溶かし、95℃5分間熱処理した。SDS-PAGEはLeammliの方法に従い、0.1% SDSを含む15%ポリアクリルアミドスタブゲルを用いて行った。タンパク質をニトロセルロース膜(BioScience)にセミドライ転写システム(BioRad)を用いて転写した。転写膜は1%脱脂粉乳入りの1×PBS/0.05% Tween(Blotto/Tween)にて5分間処理後、マウス抗ヒトIL-18mAb 1μg/ml (MBL)あるいはヤギ抗ヒトIL-18pAbをBlotto/Tweenにて1/1000に希釈したものを37℃で反応させた。転写膜は1×Blotto/Tweenにて4回洗浄し、一次抗体にマウス抗ヒトIL-18mAbを用いた場合はヤギ抗マウスIgG抗体(Promega)をBlotto/Tweenにて500倍希釈したものと、一次抗体にヤギ抗ヒトIL-18pAbを用いた場合はAP接合ラット抗ヤギIgG抗体(Santa Cruz)をBlotto/Tweenにて1000倍希釈したものと、それぞれ1時間反応させた。洗浄後、ウエスタンブルー基質を用いて発色させた。
2−6 ProIL-18分解反応
精製したヒトproIL-18の分解反応は20mM HEPES、pH 7.4、10% glycerol、0.15M NaCl内で酵素/基質比1:100(重量比)にて行った。反応温度は37℃とした。反応は阻害剤の添加、迅速な冷凍、あるいは加熱処理で停止させた。サンプルに2-メルカプトエタノールを含む、もしくは含まない2×SDSバッファーを添加して熱処理し、SDS-PAGE分析に供した。
2−7 アミノ酸配列解析
IL-18分解産物のN末端アミノ酸配列解析には、自動タンパク解析システムProcise cLC (Applied Biosystems)を用いた。調べたいタンパク質を15% SDS-PAGEゲルに電気泳動に供し、泳動後イモビロンP(Millipore)上に転写した。タンパク質をクマシーブリリアントブルー(CBB)染色にて可視化し、直接N末端解析用に切り出したものをアミノ酸配列解析用のサンプルとした。
2−8 生物活性の測定
ヒトIL-18の生物活性は骨髄単球系細胞株KG-1細胞によるIFN-γ誘導活性を指標に測定した。3×106/mlのKG-1細胞を10% FBSを含有したRPMI1640にて再懸濁し、96穴マイクロプレートに播いた。サンプルを各ウエルに加え、24時間培養し、上清のIFN-γ活性をELISA法を用いて測定した。
(3)結果
3−1 発現タンパク質の確認
精製した発現タンパク質およびそのカスパーゼ1処理サンプルをSDS-PAGE後、CBB染色した画像を図1(a)に示した。また、それぞれのAntiIL-18 mAbによるウエスタンブロット画像を図1(b)に示した。図1(a)および(b)とも、レーン1が発現タンパク質であり、レーン2がそのカスパーゼ1処理サンプルである。(b)のレーン3は成熟体IL-18である。
図1(a)および(b)ともレーン1は約24kDaの単一のバンドが検出された。また、図1(a)および(b)ともレーン2は、発現タンパク質がカスパーゼ1処理により、18kDaのバンドに切断されていることが確認された。
以上の結果より、発現タンパク質はproIL-18であり、カスパーゼ1処理により成熟体IL-18が生じていることが推定された。
3−2 キマーゼによるproIL-18の分解
リコンビナントproIL-18(以下、単に「proIL-18」と記す。)を上記2−6に記載のとおりキマーゼと反応させた。反応後のサンプルをSDS-PAGE後、CBB染色した画像を図2に示した。レーン1はproIL-18のみ、レーン2はproIL-18とキマーゼとを5分間反応したサンプル、レーン3はproIL-18とキマーゼとを5分間反応した後アンチトリプシンを加えて30分間反応を続けたサンプル、レーン4はproIL-18とキマーゼとを30分間反応したサンプル、レーン5はproIL-18とキマーゼとを30分間反応した後アンチトリプシンを加えて30分間反応を続けたサンプル、レーン6はproIL-18とカスパーゼ1とを反応させたサンプル、レーン7はキマーゼのみ、レーン8はアンチトリプシンのみ、レーン9はカスパーゼ1のみ、レーン10は成熟体IL-18のみを電気泳動した結果を示している。
ProIL-18はキマーゼ処理により異なる分子量の2分子に分解された(レーン2参照)。すなわち、約20kDaのタンパク質(p20)と成熟体(18kDa)よりやや小さな16kDa(p16)のタンパク質である。約20kDaのタンパク質は反応後5分で迅速に産生されるが,30分後では減少傾向を示した。一方,16kDaの分子は熟体IL-18より若干分子量が小さく、時間経過とともに増加した(レーン2および4参照)。
キマーゼによるproIL-18の分解は、アンチトリプシンを添加することにより阻害された(レーン3および5参照)。なお、図2に示していないが、成熟体IL-18はキマーゼにより分解されなかった。
3−3 キマーゼによるproIL-18の経時的分解
精製リコンビナントproIL-18(1μg)にヒト肥満細胞キマーゼ(1.0ng)をHEPESバッファー最終濃度20μlで反応させた。37℃各分での反応後、サンプルにSDSローディングバッファーを加え、15%SDSポリアクリルアミドゲルにて電気泳動し、2−5に記載の方法でウエスタンブロットを行った。成熟体IL-18はタンパク分解酵素を加える事なく、コントロールとして独立して扱った。
結果を図3に示した。レーン1〜7は、proIL-18とキマーゼとを反応後それぞれ0、5、10、30、60、120および180分後のサンプル、レーン8は成熟体IL-18のみ、レーン9はproIL-18、キマーゼおよびアンチトリプシンを60分間反応させたサンプル、レーン10はproIL-18、キマーゼおよびアンチキモトリプシンを60分間反応させたサンプルの結果を示している。
図3から明らかなように、P16は経時的にproIL-18より切断され3時間まで安定に産生された。P20は一時的に産生されるが、分解が進み、3時間後には消失した。また、キマーゼのproIL-18分解活性はアンチトリプシあるいはアンチキモトリプシンの添加により完全に阻害された。
3−4 キマーゼにより分解されたproIL-18断片のN末端アミノ酸配列解析
上記2−7に記載の方法に従い、P16およびP20のN末端アミノ酸を決定した。p20のN末端アミノ酸残基は1-Metであった。したがって、p20はC末端側で切断されていることが明らかとなった。詳細な切断片の解析から、p20は151-Pheの直後で切断されることが判明した。
p16のN末端アミノ酸は57-Ileであった。これは既知のcaspase-1の切断部位(36-Aspと37-Tyrとの間)およびcaspase-3(カスパーゼ3)の切断部位(71-Aspと72-Serとの間および76-Aspと77-Asnとの間)、あるいは推測されるproteinase-3による切断部位(46-Valと47-Ileとの間)と異なり新規のIL-18分子であることが判明した。
3−5 キマーゼ切断産物(P16)の生物活性
泳動ゲルより回収したp16の生物活性を、2−8に記載の方法に従いKG-1細胞からのIFN-γ産生誘導能を指標にして測定した。MBL社製ヒトリコンビナントヒトIL-18を標品としてIFN-γ産生活性比を算定した。
結果を表1に示した。表1から明らかなように、p16は活性比20%のIFN-γ産生を示し生物活性を有することが確認された。キマーゼ自体に生物活性はなく、成熟体IL-18への影響もみられなかった。proIL-18には生物活性を認めず、カスパーゼ1反応物(matIL-18:p18)は100%の生物活性を示した。
以上の結果から、キマーゼによる新規IL-18活性体の産生が生理的条件下で生じており、キマーゼはIL-18前駆体を活性型IL-18に転換する数少ない酵素の1つであることが明らかとなった。したがって、キマーゼのIL-18転換酵素機能の阻害を指標に薬剤をスクリーニングすることにより、IL-18が深く関与する疾病の治療薬を効率良く取得することが可能となる。
本発明に係るポリペプチドは、IL−18が誘発因子となる疾患治療の新しい標的分子として非常に有用なものである。したがって、本発明は、医療業、製薬産業などに広く利用可能である。
(a)はヒトproIL−18発現ベクターで形質転換した大腸菌の発現タンパク質および当該タンパク質をカスパーゼ1で処理したサンプルをSDS−PAGEに供し、ゲルを染色した画像であり、(b)はそのウエスタンブロット画像である。 proIL−18をキマーゼと反応させたサンプルをSDS−PAGEに供し、ゲルを染色した画像である。 proIL−18をキマーゼと反応させ、経時的な分解経過を示すウエスタンブロット画像である。

Claims (2)

  1. IL−18の生物活性を有する下記ポリペプチドの生産方法であって、IL−18前駆体をキマーゼを用いて切断することを特徴とする生産方法:
    (a)配列番号1に示されるアミノ酸配列;または
    (b)配列番号1に示されるアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列
    からなることを特徴とするポリペプチド。
  2. 下記ポリペプチドの産生を阻害する物質のスクリーニング方法であって、
    被検物質とキマーゼとIL−18前駆体とを接触させる工程;および
    下記のポリペプチドの産生レベルを測定する工程
    を包含することを特徴とするスクリーニング方法:
    (a)配列番号1に示されるアミノ酸配列;または
    (b)配列番号1に示されるアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、IL−18の生物活性を有するポリペプチド
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