JP4010606B2 - ポリペプチドの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は生理活性ポリペプチドの製造方法に関するものであり、詳細には、免疫担当細胞においてインターフェロン−γ(以下、「IFN−γ」と略記する。)の産生を誘導するポリペプチドの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
本発明者らは、免疫担当細胞においてIFN−γの産生を誘導する新規なポリペプチドの単離と、そのポリペプチドをコードするcDNAのクローニングに成功し、特開平8−27189号公報及び特開平8−193098号公報に開示した。このポリペプチドは有用な生理活性蛋白質であるIFN−γの産生を誘導する性質と、キラー細胞による細胞障害性を増強したり、キラー細胞の生成を誘導する性質を兼備しているので、抗ウイルス剤、抗菌剤、抗腫瘍剤、抗免疫疾患剤などとして広範な用途が期待されている。
【0003】
ところで、ヒト細胞においては、遺伝子の発現により生成したポリペプチドは細胞内酵素によるプロセッシングを受け、ポリペプチドの一部が切断されたり、糖鎖が付加したりすると言われている。医薬品に配合するポリペプチドとしては、ヒト細胞におけると同様のプロセッシングを受けたものが望ましいところ、特願平8−269105号明細書(特開平9−289896号公報)に記載されているように、ヒト細胞は一般に当該ポリペプチドの産生量が少ないという問題がある。本発明者がその原因について鋭意研究したところ、ヒト細胞において、当該ポリペプチドは、通常、生理活性を有しない、分子量約24,000ダルトンの前駆体として存在していることが判明した。当該ポリペプチドにかぎらず、多くのサイトカインは、通常、まず、生理活性を有しない前駆体として産生され、その後、細胞内酵素によるプロセッシングを受けて活性型のポリペプチドに変換されることが知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
斯かる状況に鑑み、この発明の課題は、免疫担当細胞においてIFN−γの産生を誘導するポリペプチドの前駆体から活性型のポリペプチドを製造する方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者が上記課題を解決すべく鋭意研究したところ、インターロイキン−1β変換酵素(以下、「ICE」と略記する。)が当該ポリペプチドの前駆体に作用し、免疫担当細胞においてIFN−γの産生を誘導する活性型のポリペプチドを生成することが判明した。
【0006】
すなわち、この発明は、免疫担当細胞においてIFN−γの産生を誘導するポリペプチドの前駆体にICEを作用させることを特徴とする免疫担当細胞においてIFN−γの産生を誘導する活性型のポリペプチドの製造方法を要旨とするものである。
【0007】
ICEは、例えば、ナンシー・エー・ソーンベリーらが『ネイチャー』、第356巻、768乃至774頁(1992年)に報告しているように、分子量約20,000ダルトンのサブユニットと分子量約10,000ダルトンのサブユニットからなるヘテロダイマー構造を有するシステイン・プロテアーゼの一種であり、通常、このヘテロダイマー同士が会合した状態で活性を発現する。ICEは公知の酵素であり、インターロイキン−1βの前駆体における第116番目のアスパラギン酸と第117番目のアラニンの間のペプチド結合、さらには、第27番目のアスパラギン酸と第28番目のグリシンの間のペプチド結合をそれぞれ切断することが知られている。しかしながら、ICEが免疫担当細胞においてIFN−γの産生を誘導するポリペプチドの前駆体に作用し、そのアミノ酸配列における特定の部位、とりわけ、配列表の配列番号1に示すアミノ酸配列における第36番目のアスパラギン酸と第37番目のチロシンの間のペプチド結合を切断し、免疫担当細胞においてIFN−γの産生を誘導する活性型のポリペプチドを生成することは知られていない。ICEのこの新規な作用を利用する当該ポリペプチドの製造方法は、この発明をもって嚆矢とするものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
前述のとおり、この発明は、ICEが免疫担当細胞においてIFN−γの産生を誘導するポリペプチドの前駆体から活性型のポリペプチドを生成するという独自の知見に基づくものである。この発明でいう前駆体は、通常、還元剤存在下のSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動において分子量約24,000ダルトンを示し、例えば、当該ポリペプチドを本来的に産生する細胞内、あるいは、当該ポリペプチドをコードする領域を含むDNA(例えば、配列表における配列番号5に示す塩基配列のDNA)を導入することによって形質転換した哺乳類由来の宿主細胞内に存在する。斯かる前駆体は、通常、N末端には配列表における配列番号1に示すアミノ酸配列の一部又は全部を、また、全体としては、配列表における配列番号2に示すアミノ酸配列の全部、又はそのN末端の一部が欠失したアミノ酸配列を有し、そのままでは免疫担当細胞においてIFN−γの産生を誘導しない。
【0009】
しかしながら、斯かる前駆体はこの発明にしたがってICEを作用させると、前駆体の配列番号1に示すアミノ酸配列における第36番目のアスパラギン酸と第37番目のチロシンの間のペプチド結合が切断され、N末端に配列表における配列番号3に示すアミノ酸配列を有する活性型のポリペプチドに変換され、この活性型のポリペプチドは、単独又は適宜補因子の存在下、免疫担当細胞においてIFN−γの産生を誘導する。なお、活性型のポリペプチドは、通常、N末端に配列表における配列番号3に示すアミノ酸配列を、また、全体としては、配列表における配列番号4に示すアミノ酸配列を有し、還元剤存在下のSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動において分子量18,000乃至19,500ダルトンを示す。
【0010】
ICEとしては、それが当該ポリペプチドの前駆体に作用し、免疫担当細胞においてIFN−γの産生を誘導する活性型のポリペプチドを生成するかぎり、天然のものであっても人工的に創成したものであってもよく、その構造や出所・由来は問わない。また、エマド・エス・アルネムリらが『ザ・ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー』、第270巻、第9号、4,312乃至4,317頁(1995年)に報告しているように、同一給源に由来するICEであっても、給源によっては、いくつかのアイソフォームの含まれることが知られている。これらのアイソフォームは生理作用において若干違いがあると言われているけれども、それらが当該ポリペプチドの前駆体に作用し、活性型のポリペプチドを生成するかぎり、この発明において使用可能である。
【0011】
ICEは、通常、ICEを本来的に産生する細胞、あるいは、組換えDNA技術を適用することによってICEの産生能を有するに至った形質転換体から得ることができる。ICEを本来的に産生する細胞としては、ヒトを含む哺乳類由来の、例えば、上皮細胞、内皮細胞、間質細胞、軟骨細胞、単球、顆粒球、リンパ球、神経細胞及びそれらを培養株化して得られる細胞株が挙げられる。また、形質転換体としては、ICEをコードするDNAを微生物又は動物由来の適宜宿主に導入することによって得られる形質転換微生物及び形質転換細胞が挙げられる。これらの細胞又は形質転換体を斯界において慣用される培養培地を用いて培養し、得られる培養物から増殖した形質転換体を一旦分離するか培養上清とともに超音波を印加するか、低張媒体中に浸漬するなどして破砕し、得られる破砕物又は破砕物と培養上清との混合物に、例えば、塩析、透析、濾過、濃縮、分別沈澱、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィー、等電点クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ゲル電気泳動、等電点電気泳動などの酵素を精製するための斯界における慣用の方法を適宜組合せて適用してICEを採取する。なお、ICEをコードするDNA及びICEの産生能を有する形質転換体は、例えば、ナンシー・エー・ソーンベリーら『ネイチャー』、第356巻、768乃至774頁(1992年)やエマド・エス・アルネムリら『ザ・ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー』、第270巻、第9号、4,312乃至4,317頁(1995年)などにも記載されている。
【0012】
当該ポリペプチドの前駆体にICEを作用させるこの発明の実施態様としては、例えば、当該ポリペプチドの前駆体に上記の方法により調製したICEを接触させるか、あるいは、ICEをコードするDNAと当該ポリペプチドの前駆体をコードするDNAとを哺乳類由来の適宜宿主細胞に導入し、そこで両DNAを共発現させればよい。前者の場合には、当該ポリペプチドの前駆体の産生能を有する細胞、もしくは、形質転換によって当該ポリペプチドの前駆体の産生能を有するに至った細胞を培養する。その培養物に上記の方法により調製したICEを共存せしめるか、あるいは、培養物から細胞を分離するか分離することなく、必要に応じて細胞を破砕した後、培養物又は細胞破砕物にICEを添加すればよい。共存又は添加せしめるICEの量としては、通常、前駆体と等モル以下で事足り、また、温度及びpHとしては、ICEが作用し得るレベル、通常、温度約4乃至40℃、pH約6乃至9で原料の前駆体から活性型のポリペプチドが所望量生成するまで反応させればよく、斯くして、活性型のポリペプチドを含む反応物を得る。なお、後述するTHP−1細胞やA−253細胞などのように、同一の細胞が当該ポリペプチドの前駆体とICEをそれぞれ産生する場合には、当然のことながら、必ずしもICEを添加する必要はなく、必要に応じて細胞を破砕した後、上記と同様、ICEが前駆体に作用して活性型のポリペプチドを生成し得る温度及びpHで細胞又は細胞破砕物を含む培養物をインキュベートすれば良い。このような場合には、より効率的な生成反応を得るため、例えば、2−メルカプトエタノール、ジチオトレイトール、還元型グルタチオンを始めとする還元剤の適量を加えるのが望ましい。
【0013】
後者の場合には、ICEをコードするDNAと当該ポリペプチドの前駆体をコードするDNAとを哺乳類由来の適宜宿主細胞にそれぞれ導入して形質転換すればよい。この場合には、DNAの発現により生成したICEが、同じ形質転換体内で、DNAの発現により生成した当該ポリペプチドの前駆体に作用し、活性型のポリペプチドを生成する。宿主細胞としては、例えば、3T3細胞、C127細胞、CHO細胞、CV−1細胞、COS細胞、HeLa細胞、MOP細胞及びそれらの変異株を始めとする、斯界において宿主として慣用されるヒト、サル、マウス及びハムスター由来の上皮系細胞株、間質系細胞株、神経芽細胞株及び造血系細胞が用いられる。斯かる宿主細胞にICEをコードするDNAと当該ポリペプチドの前駆体をコードするDNAを導入するには、例えば、公知のDEAE−デキストラン法、燐酸カルシウム法、エレクトロポレーション法、リポフェクション法、マイクロインジェクション法、さらに、レトロウイルス、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルスなどによるウイルス感染法などを用いればよい。その際、必要に応じて、適宜のプロモーター、エンハンサー、複製起点、転写終結部位、スプライシング配列、ポリアデニル化配列及び/又は選択マーカーを含む、例えば、pCD、pcDL−SRα、pKY4、pCDM8、pCEV4、pME18S、pSV2−gptなどのベクターを用いてもよい。形質転換細胞から目的とするクローンを選別するには、コロニーハイブリダイゼーション法を適用するか、形質転換細胞を培養培地で培養し、活性型ポリペプチドの産生が観察されたクローンを選別すればよい。このクローンを形質転換細胞を培養するための斯界における慣用の培養培地を用いて培養すれば、活性型のポリペプチドを含む培養物が得られる。当該ポリペプチドの前駆体を本来的に産生する細胞を用いる場合も、形質転換により当該ポリペプチドの産生能を有するに至った細胞を用いる場合も、細胞や培養条件によっては、当該ポリペプチドの前駆体とともに、活性型ポリペプチドを分解して不活性化する、例えば、CPP32やMch−3などの分解酵素が生成することがある。このような場合、培養培地又は細胞若しくは細胞破砕物を含む培養物に斯かる分解酵素の活性を阻害する、例えば、アセチル−L−アスパラチル−L−グルタミル−L−バリル−L−アスパルト−1−アールなどの物質を適量共存させると、活性型ポリペプチドの分解が抑制され、収量が増加する。なお、哺乳類由来の宿主細胞を用いる組換えDNA技術については、例えば、黒木登志夫、谷口克、押村光雄編集、『実験医学別冊細胞工学ハンドブック』、1992年、羊土社発行や横田崇、新井賢一編集、『実験医学別冊バイオマニュアルシリーズ3 遺伝子クローニング実験法』、1993年、羊土社発行などにも詳述されている。
【0014】
なお、この発明において、ICEの活性は、ダグラス・ケー・ミラーらが『ザ・ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー』、第268巻、第24号、18,062乃至18,069頁(1993年)に報告している方法にしたがって測定し、活性値(単位)で表示している。すなわち、10%(w/v)スクロース、0.1%(w/v)3−[(3−コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−1−プロパンスルホネート(以下、「CHAPS」と略記する。)及び2mMジチオトレイトールをそれぞれ含む25mMヘペス緩衝液(pH7.5)を395μlとり、これにN−(N−アセチル−チロシニル)−バリニル−アラニル−アスパラギン酸−7−アミノ−4−メチルクマリンアミドの10mMジチルスルホキシド溶液5μlと被検ICE溶液100μlをそれぞれ加え、30℃で1時間反応させる。反応中、反応の進行に伴って遊離する7−アミノ−4−メチルクマリンの量を、蛍光光度計により、波長380nmで励起して放出される波長460nmの蛍光の強度に基づき経時的にモニターする。ICEの1単位とは、斯かる条件で反応させたときに、1分間に7−アミノ−4−メチルクマリンを1ピコモル遊離する酵素の量と定義する。
【0015】
斯くして得られた活性型のポリペプチドを含む反応物及び培養物は、IFN−γ誘導剤としてそのまま用いられることもあるが、通常は使用に先立ち、必要に応じて、超音波、細胞溶解酵素及び/又は界面活性剤により細胞を破砕した後、濾過、遠心分離などにより当該ポリペプチドを細胞又は細胞破砕物から分離し、精製する。精製には細胞又は細胞破砕物を除去した培養物に、例えば、塩析、透析、濾過、濃縮、分別沈澱、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィー、等電点クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ゲル電気泳動、等電点電気泳動などの生理活性ポリペプチドを精製するための斯界における慣用の方法が用いられ、必要に応じて、これらは適宜組合せて適用される。そして、最終使用形態に応じて、精製ポリペプチドを濃縮・凍結乾燥して液状又は固状にすればよい。なお、同じ特許出願人による特開平8−231598号公報に開示されたモノクローナル抗体は当該ポリペプチドの精製に極めて有用であり、このモノクローナル抗体を用いるイムノアフィニティークロマトグラフィーによるときには、高純度の当該ポリペプチドを最小のコストと労力で得ることができる。
【0016】
前述のとおり、この発明の方法により得られる活性型のポリペプチドは、有用な生理活性蛋白質であるIFN−γの産生を誘導する性質と、キラー細胞の細胞障害性を増強したり、キラー細胞の生成を誘導する性質を兼備するので、IFN−γ及び/又はキラー細胞に感受性を有する各種疾患の治療・予防に著効を発揮する。さらに、この発明の方法により得られる活性型のポリペプチドは強力なIFN−γ誘導能を有することから、一般に少量で所期のIFN−γを産生でき、また、毒性が極めて低いことから、多量投与しても重篤な副作用を惹起することがない。したがって、この発明の方法により得られる活性型のポリペプチドは、使用に際して用量を厳密に管理しなくても、所望のIFN−γ産生を迅速に誘導できる利点がある。なお、当該ポリペプチドの感受性疾患剤としての用途は、同じ特許出願人による特願平8−28722号明細書(特開平9−157180号公報)に詳述されている。
【0017】
以下、実施例に基づきこの発明を説明する。
【0018】
【実施例1】
〈前駆体の調製〉
0.5ml容反応管に10×PCR緩衝液を10μl、2.5mM dNTP混液を8μl、5単位/μl Taq DNAポリメラーゼを0.5μl、そして、同じ特許出願人が特開平8−193098号公報に開示した組換えDNA『pHIGIF』を1ngとり、センスプライマー及びアンチセンスプライマーとして、配列表における配列番号5に示した当該ポリペプチドの前駆体をコードするcDNAの塩基配列に基づき化学合成した5´−AAGGCCAGTGTGCTGGGCCTGGACAGTCAGCAAGG−3´及び5´−ACAGCCAGTGTGATGGCTAGTCTTCGTTTTGAACAG−3´で表される塩基配列のオリゴヌクレオチドをそれぞれ20ピコモル加え、滅菌蒸留水で100μlとした。常法により、この混液を94℃で1分間、60℃で1分間、72℃で1分間反応させるサイクルを30回繰返してPCR反応させた。なお、PCR反応試薬としては、宝酒造製『タカラPCRアンプリフィケーションキット』を用いた。
【0019】
得られた反応物を常法にしたがって制限酵素Bst XIにより切断し、得られた約800塩基対のDNA断片を0.1μgとり、これを適量の滅菌蒸留水に溶解し、あらかじめ制限酵素Bst XIにより切断しておいたインビトロジェン製プラスミドベクター『pRc/CMV』を10ngと適量の10×ライゲーション緩衝液及びT4 DNAリガーゼをそれぞれ加え、さらに10mM ATPを最終濃度1mMまで加えた後、16℃で18時間反応させてDNA断片をプラスミドベクターpRc/CMVに挿入した。得られた組換えDNAをコンピテントセル法により大腸菌JM109株に導入して形質転換体とし、これをアンピシリンを50μg/ml含むL−ブロス培地(pH7.2)に接種し、37℃で18時間培養した後、培養物から菌体を採取し、アルカリ−SDS法により組換えDNAを抽出した。この組換えDNAを『pRCHuGF』と命名する一方、その塩基配列をジデオキシ法により調べたところ、図1に示す構造を有していた。図1に見られるように、組換えDNA『pRCHuGF』においては、当該ポリペプチドの前駆体をコードする約800塩基対からなるcDNA『HuIGIF』が、サイトメガロウイルスプロモーター『PCMV』の下流に連結されていた。
【0020】
別途、常法にしたがって、チャイニーズハムスター卵巣由来のCHO−K1細胞(ATCC CCL61)を10%(v/v)ウシ胎児血清を補足したHam’s F12培地(pH7.2)に接種し、増殖させた。増殖細胞を採取し、燐酸緩衝生理食塩水(以下、「PBS」と略記する。)により洗浄した後、細胞密度1×107 個/mlになるようにPBSに浮遊させ、その浮遊液の0.8mlを組換えDNA『pRCHuGF』10μgとともにキュベットにとり、10分間氷冷し、バイオラッド製エレクトロポレーション装置『ジーンパルサー』に装着し、放電パルスを1回印加した後、直ちにキュベットを取外し、10分間氷冷した。次いで、細胞浮遊液をキュベットから取出し、10%(v/v)ウシ胎児血清を補足したHam’s F12培地(pH7.2)に接種し、5%CO2 インキュベーター中、37℃で3日間培養した後、培養培地にG418を最終濃度400μg/mlになるように加え、同じ条件でさらに3日間培養した。斯くして得られた100個余りのコロニーから48個を選別し、その一部をG418を400μg/ml含み、10%(v/v)ウシ胎児血清を補足したHam’s F12培地(pH7.2)を分注した培養プレートに接種し、上記と同様にして1週間培養した。その後、培養プレートの各ウェルに5.1mM塩化マグネシウム、0.5%(w/v)デオキシコール酸ナトリウム、1%(w/v)ノニデットP−40、10μg/mlアプロチニン及び0.1%(w/v)SDSをそれぞれ含む10mMトリス−塩酸緩衝液(pH8.5)を適量加えて細胞を溶解した。
【0021】
細胞溶解物をそれぞれ50μlとり、グリセロール50μlとジチオトレイトールを最終濃度2%(w/v)になるようにそれぞれ加え、37℃で1時間静置した後、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法により、細胞溶解物中のポリペプチドを分離した。次いで、常法にしたがって、ゲル内で分離されたポリペプチドをニトロセルロース膜に移し取り、別途調製しておいた、同じ特許出願人が特開平8−231598号公報に開示した当該ポリペプチドに特異的なモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマH−1株の培養上清に1時間浸漬した後、0.05%(v/v)ツイーン20を含む20mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.5)で洗浄して過剰のモノクローナル抗体を除去した。その後、ニトロセルロース膜を西洋ワサビ由来のパーオキシダーゼで標識したウサギ由来の抗マウスイムノグロブリン抗体を含むPBSに1時間浸漬し、0.05%(v/v)ツイーン20を含む50mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.5)により洗浄し、0.005%(v/v)過酸化水素及び0.3mg/mlジアミノベンジジンをそれぞれ含む50mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.5)に浸漬して発色させた。その発色度に基づき、当該ポリペプチドの前駆体の産生能が高い形質転換体のクローンを選別し、これを『RCHuGF』と命名した。
【0022】
この形質転換体『RCHuGF』を、400μg/ml G418を含み、10%(v/v)ウシ胎児血清を補足したHam’s F12培地(pH7.2)を分注した角形培養瓶に接種し、培養培地を適宜新鮮なものと取換えながら、5%CO2 インキュベーター中、37℃で1週間培養した。その後、培養瓶にギブコ製トリプシン剤『トリプシン−EDTA』を適量加えて培養瓶内壁に付着した細胞を剥離し、PBSで洗浄した後、さらに10mM塩化カリウム、1.5mM塩化マグネシウム及び0.1mMエチレンジアミン四酢酸二ナトリウムをそれぞれ含む氷冷した20mMヘペス緩衝液(pH7.4)により洗浄し、3倍容の新鮮な同一緩衝液中、氷冷下で20分間静置した。その後、常法にしたがって細胞を破砕し、10,000×gで30分間遠心分離し、当該ポリペプチドの前駆体を含む上清部を採取した。この前駆体は、還元剤存在下のSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動において分子量約24,000ダルトンを示し、N末端に配列表における配列番号1に示すアミノ酸配列を有している。
【0023】
【実施例2】
〈ICEの調製〉
0.5ml容反応管に10×PCR緩衝液を1μl、25mM塩化マグネシウムを4μl、10mM dATP、10mM dGTP、10mM dCTP及び10mM dTTPを各1μl、50μMランダムヘキサヌクレオチドを1μl、20単位/μlリボヌクレアーゼインヒビターを1μl、50単位/μl逆転写酵素を1μl、そして、常法にしたがってヒト急性単球性白血病由来の単球細胞株であるTHP−1細胞(ATCC TIB202)から別途調製した全RNA抽出液を1μgそれぞれとり、滅菌蒸留水で全量を20μlとした。この混液を42℃で30分間インキュベートして逆転写反応させた後、99℃で5分間加熱して反応を停止させた。
【0024】
この反応物に10×PCR緩衝液を8μl、25mM塩化マグネシウムを4μl、5単位/μl Taq DNAポリメラーゼを0.5μl、ヒトのICEをコードする塩基配列に基づき化学合成した5´−CTGCTCGAGACCATGGCCGACAAGGTCCTG−3´及び5´−GAGGCGGCCGCTTAATGTCCTGGGAAGAG−3´で表される塩基配列のオリゴヌクレオチドをセンスプライマー及びアンチセンスプライマーとしてそれぞれ20ピコモル加え、滅菌蒸留水で全量を100μlとした後、94℃で1分間、55℃で1分間、72℃で1分間反応させるサイクルを40回繰返してPCR反応させた。なお、逆転写反応及びPCR反応用の試薬としては、パーキン・エルマー製『ジーンアンプRNA PCRキット』を用いた。
【0025】
この新たに得られた反応物を常法にしたがって制限酵素Xho I及びNotIにより切断し、得られたICEをコードする領域を含む約1,200塩基対のDNA断片に、あらかじめ制限酵素Xho I及びNot Iにより切断しておいたインビトロジェン製プラスミドベクター『pCDM8』10ngとともに、10×ライゲーション緩衝液及びT4 DNAリガーゼのそれぞれ適量を加え、さらに、10mM ATPを最終濃度1mMになるように加えた後、16℃で18時間反応させて上記DNA断片をプラスミドベクターpCDM8に挿入した。得られた組換えDNAをコンピテントセル法により大腸菌MC1061/P3株(ATCC47035)に導入して形質転換体とし、これを20μg/mlアンピシリンと10μg/mlテトラサイクリンをそれぞれ含むL−ブロス培地(pH7.2)に接種し、37℃で18時間培養した。培養物から菌体を採取し、この菌体にアルカリ−SDS法を適用して組換えDNA『pCDHICE』を得た。ジデオキシ法により組換えDNA『pCDHICE』の塩基配列を調べたところ、図2に示すように、サイトメガロウイルスプロモーター『PCMV』の下流にICEをコードする領域を含む約1,200塩基対からなるcDNA『HuICE』が連結されていた。
【0026】
次に、常法にしたがって、アフリカミドリザル腎臓由来のCOS−1細胞(ATCC CRL1650)を10%(v/v)ウシ胎児血清を補足したDMEM培地(pH7.4)に接種し、増殖させた。増殖細胞を採取し、新鮮な同一培地で洗浄し、細胞密度2×107 個/mlになるように浮遊させ、キュベットにその浮遊液の0.25mlとともに上記で調製した組換えDNA『pCDHICE』を10μgとり、10分間室温下で静置した後、キュベットをバイオラッド製エレクトロポレーション装置『ジーンパルサー』に装着し、放電パルスを1回印加した。キュベットを取外し、室温下で10分間静置した後、細胞を取出し、10%(v/v)ウシ胎児血清を補足したDMEM培地(pH7.4)に接種し、5%CO2 インキュベーター中、37℃で2日間培養した。
【0027】
培養物から上清を吸引除去し、シャーレ底部に付着した細胞をPBSで洗浄し、5mMエチレンジアミン四酢酸二ナトリウムを含むPBSを適量加え、室温下で10分間静置した後、シャーレから剥離した細胞を採取した。この細胞をPBSで洗浄し、10mM塩化カリウム、1.5mM塩化マグネシウム、0.1mMエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム及び1mM(4−アミジノ−フェニル)−メタン−スルホニルフルオライドをそれぞれ含む20mMヘペス緩衝液(pH7.4)を適量加え、ホモゲナイザーを用いて氷冷下で細胞を破砕した。細胞破砕物を1,500×gで5分間遠心分離して上清を採取し、これをさらに22,500×gで60分間遠心分離してICEを230単位/ml含む上清を得た。
【0028】
【実施例3】
〈ポリペプチドの製造〉
10%(v/v)グリセロール、0.1%(w/v)CHAPS及び2mMジチオトレイトールをそれぞれ含む100mMヘペス緩衝液(pH7.4)に実施例1の方法により得た当該ポリペプチドの前駆体を500nMになるように溶解して基質溶液とした。この基質溶液に実施例2の方法により得たICEを500単位/mlになるように加え、37℃でインキュベートした。インキュベート開始から0分後、10分後、30分後、1時間後、3時間後、6時間後及び18時間後に反応物の一部をそれぞれ採取し、ヨードアセトアミドを最終濃度200μg/mlになるように加えて反応を停止させた。この採取した反応物に同じ特許出願人が特開平8−231598号公報に開示したモノクローナル抗体を用いるウェスタン・ブロッティング法を適用し、当該ポリペプチドの前駆体から活性型のポリペプチドが生成する経時変化を調べた。結果を図3に示す。
【0029】
同時に、ヒト急性骨髄性白血病由来の骨髄単球系細胞株の一種であるKG−1細胞(ATCC CCL246)を免疫担当細胞として用いるバイオアッセイ法により、経時的に採取した反応物における活性型のポリペプチドの含有量を推定した。すなわち、KG−1細胞を10%(v/v)ウシ胎児血清を補足したRPMI−1640培地(pH7.4)に細胞密度1.5×106 個/mlになるように浮遊させ、96ウェルマイクロプレートに0.1ml/ウェルずつ分注した。上記において経時的に採取したそれぞれの反応物を10%(v/v)ウシ胎児血清を補足したRPMI−1640培地(pH7.4)により適宜希釈した後、これを上記マイクロプレートに0.1ml/ウェルずつ分注し、5%CO2 インキュベーター中、37℃で24時間培養した。培養後、各ウェルから培養上清を0.1mlずつ採取し、通常の酵素免疫測定法によりIFN−γ含量を測定した。同時に、反応物を省略した系を設け、上記と同様に処置して対照とした。結果を表1に示す。なお、表1に示すIFN−γ含量は、米国国立衛生研究所(NIH)から入手したIFN−γ標準品(Gg23−901−530)に基づき国際単位(IU)に換算している。
【0030】
【表1】
【0031】
図3のウェスタン・ブロッティングに見られるように、本例の反応条件下においては、前駆体に相当する分子量約24,000ダルトンのバンドが反応開始から3時間までに漸次消滅し、それに伴って、活性型のポリペプチドに相当する分子量18,200ダルトンのバンドが出現した。表1のIFN−γ含量もこの結果とよく符合しており、分子量18,200ダルトンのバンドの出現に伴って反応物のIFN−γ誘導能が漸次上昇した。これらの結果は、ICEが当該ポリペプチドの前駆体に作用し、免疫担当細胞においてIFN−γの産生を誘導する活性型のポリペプチドを生成したことを示している。
【0032】
【実施例4】
〈ポリペプチドの精製と理化学的性質〉
【0033】
【実施例4−1】
〈ポリペプチドの精製〉
実施例3の方法により18時間反応させて得た反応物を10mM燐酸緩衝液(pH6.8)に対して透析した後、10mM燐酸緩衝液(pH6.8)で平衡化しておいた東ソー製イオン交換クロマトグラフィー用ゲル『DEAE 5PW』のカラムに負荷し、0Mから0.5Mまで直線的に上昇する塩化ナトリウムの濃度勾配下、カラムに10mM燐酸緩衝液(pH6.8)を通液し、塩化ナトリウム濃度が0.2乃至0.3M付近で溶出した画分を採取した。
【0034】
この新たに得られた画分を合一し、PBSに対して透析する一方、同じ特許出願人による特開平8−231598号公報に記載された方法にしたがってモノクローナル抗体を用いるイムノアフィニティークロマトグラフィー用ゲルを調製し、これをプラスチック製円筒管内部にカラム状に充填し、PBSで洗浄した後、上記透析内液をカラムに負荷した。カラムに100mMグリシン−塩酸緩衝液(pH2.5)を通液し、得られる溶出画分から免疫担当細胞においてIFN−γの産生を誘導する活性型のポリペプチドを含む画分を採取し、滅菌蒸留水に対して透析し、膜濾過により濃縮した後、凍結乾燥して精製ポリペプチドの固状物を得た。収量は、原料として用いた前駆体に基づく理論収量の約60%であった。
【0035】
【実施例4−2】
〈ポリペプチドの分子量〉
実施例4−1の方法により得た精製ポリペプチドをユー・ケー・レムリが『ネイチャー』、第227巻、680乃至685頁(1970年)に報告している方法に準じ、還元剤としての2%(w/v)ジチオトレイトール存在下でSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動したところ、分子量約18,000乃至19,500ダルトンに相当する位置にIFN−γ誘導能あるポリペプチドの主バンドが観察された。このことは、ICEが分子量約24,000ダルトンの当該ポリペプチドの前駆体に作用し、より低分子量の活性型のポリペプチドを生成したことを示している。なお、このときの分子量マーカーは、ウシ血清アルブミン(67,000ダルトン)、オボアルブミン(45,000ダルトン)、カーボニックアンヒドロラーゼ(30,000ダルトン)、大豆トリプシンインヒビター(20,100ダルトン)及びα−ラクトアルブミン(14,400ダルトン)であった。
【0036】
【実施例4−3】
〈ポリペプチドのN末端アミノ酸配列〉
パーキン・エルマー製プロテイン・シーケンサー『473A型』を使用し、常法にしたがって分析したところ、実施例4−1の方法により得た精製ポリペプチドは、N末端に配列表における配列番号3に示すアミノ酸配列を有していた。このことは、ICEが当該ポリペプチドの前駆体に作用し、そのN末端アミノ酸配列である配列表の配列番号1に示すアミノ酸配列における第36番目のアスパラギン酸と第37番目のチロシンの間のペプチド結合を切断したことを示している。
【0037】
【実施例5】
〈ポリペプチドの製造〉
常法にしたがって、アフリカミドリザル腎臓由来のCOS−1細胞(ATCCCRL1650)を10%(v/v)ウシ胎児血清を補足したDMEM培地(pH7.4)に接種し、増殖させた。増殖細胞を採取し、新鮮な同一培地で洗浄し、細胞密度2×107 個/mlになるように浮遊させ、キュベットにその浮遊液の0.25mlとともに実施例1の方法により得た組換えDNA『pRCHuGF』及び実施例2の方法により得た組換えDNA『pCDHICE』をそれぞれ10μgずつ加え、10分間室温下で静置した後、キュベットをバイオラッド製エレクトロポレーション装置『ジーンパルサー』に装着し、放電パルスを1回印加した。キュベットを取外し、室温下で10分間静置した後、細胞を取出し、10%(v/v)ウシ胎児血清を補足したDMEM培地(pH7.4)に接種し、5%CO2 インキュベーター中、37℃で3日間培養した。
【0038】
培養物から上清を吸引除去し、シャーレ底部に付着した細胞をPBSで洗浄し、5mMエチレンジアミン四酢酸二ナトリウムを含むPBSを適量加え、室温下で10分間静置した後、シャーレから剥離した細胞を採取した。この細胞をPBSで洗浄した後、低張液として、10mM塩化カリウム、1.5mM塩化マグネシウム及び0.1mMエチレンジアミン四酢酸二ナトリウムをそれぞれ含む20mMヘペス緩衝液(pH7.4)を適量加え、ホモゲナイザーを用いて氷冷下で細胞を破砕した。細胞破砕物を1,000×gで5分間遠心分離して上清を採取し、これに当該ポリペプチドに特異的なモノクローナル抗体を用いる酵素免疫測定法を適用して上清に含まれる当該ポリペプチドの量を決定した。
【0039】
同時に、組換えDNA『pRCHuGF』及び『pCDHICE』の両方又はいずれか一方を省略する系をそれぞれ設け、これらを上記と同様に処置して対照とした。結果を表2に示す。
【0040】
【表2】
【0041】
表2の結果は、COS−1細胞において、当該ポリペプチドの前駆体をコードするDNAとICEをコードするDNAがそれぞれ良好に発現し、前者の前駆体に後者のICEが効率的に作用して、免疫担当細胞においてIFN−γの産生を誘導する活性型のポリペプチドが生成したことを示している。なお、表2に見られるように、当該ポリペプチドの前駆体をコードするDNAとICEをコードするDNAの両方又はいずれか一方を省略した対照系においても免疫担当細胞においてIFN−γの産生を誘導する活性型のポリペプチドが生成していたが、その量は僅少であった。この事実も、COS−1細胞において、当該ポリペプチドの前駆体をコードするDNAとICEをコードするDNAがそれぞれ良好に発現したことを裏付けている。
【0042】
その後、両DNAを導入したCOS−1細胞の培養上清に実施例4−1で述べた精製方法を適用して活性型のポリペプチドを精製し、得られた精製ポリペプチドに実施例4−2の方法を適用して分子量を測定したところ、約18,000乃至19,500ダルトンに相当する位置にIFN−γ誘導能あるポリペプチドの主バンドが観察された。さらに、実施例4−3の方法を適用したところ、その精製ポリペプチドは、N末端に配列表における配列番号3に示すアミノ酸配列を有していた。
【0043】
【実施例6】
〈ポリペプチドの製造〉
常法により、生後間もないハムスターの新生児にウサギ由来の抗胸腺抗血清を注射して免疫反応を減弱させた後、ハムスターの背部皮下にヒト顎下腺類表皮癌由来の上皮様細胞株の一種であるA−253細胞(ATCC HTB41)を約1×104 個/匹移植し、通常一般の方法で32日間飼育した。そして、皮下に生じた腫瘍塊(約5g/匹)を摘出し、細切し、低張液としての10mM塩化カリウム、1.5mM塩化マグネシウム及び0.1mMエチレンジアミン四酢酸二ナトリウムをそれぞれ含む20mMヘペス緩衝液(pH7.4)で洗浄した後、−20℃で凍結した。
【0044】
次に、腫瘍塊を解凍し、腫瘍塊の湿重量1gに対して10mM 2−メルカプトエタノールを含む新鮮な上記と同一の低張液を1ml加え、常法にしたがってポリトロン処理して細胞を破砕した後、2,500rpmで10分間遠心分離し、上清を採取した。なお、この上清はICEを約500単位/ml含んでいた。その後、この上清を4℃又は37℃でインキュベートしつつ、反応物を経時的にサンプリングし、これに当該ポリペプチドに特異的なモノクローナル抗体を用いる酵素免疫測定法を適用して活性型ポリペプチドの量を決定した。結果を図4に示す。
【0045】
図4の結果に見られるように、A−253細胞の抽出液は、インキュベートすると、当該ポリペプチドの含量が顕著に高まるが、このことは、ICEと当該ポリペプチドの前駆体をそれぞれ含むA−253細胞の抽出液において、前者が後者に効果的に作用して活性型の当該ポリペプチドを生成したことを物語っている。インキュベートする温度は低温が望ましく、4℃でインキュベートしたときの当該ポリペプチドの生成量は37℃でインキュベートする場合より有意に高かった。ちなみに、4℃及び37℃でインキュベートしたときの当該ポリペプチドの収量は、腫瘍塊の湿重量1g当り、それぞれ5.0μg及び2.5μgに達した。
【0046】
斯くして得られた活性型ポリペプチドを含む反応物を実施例4−1の方法により精製し、凍結乾燥した後、実施例4−2の方法を適用して分子量を測定したところ、約18,000乃至19,500ダルトンに相当する位置にIFN−γ誘導能あるポリペプチドの主バンドが観察された。また、実施例4−3の方法を適用したところ、その精製ポリペプチドは、N末端に配列表における配列番号3に示すアミノ酸配列を有していた。さらに、2−メルカプトエタノールに代えてジチオトレイトール又は還元型グルタチオンを用いて上記と同様に反応させたところ、2−メルカプトエタノールを含むすべての還元剤が濃度1mMで当該ポリペプチドの生成を顕著に促進した。
【0047】
【発明の効果】
以上説明したごとく、この発明は、ICEが免疫担当細胞においてIFN−γの産生を誘導するポリペプチドの前駆体に作用し、活性型のポリペプチドを生成するという独自の知見に基づくものである。この発明はICEのこの作用を利用するものであり、この発明にしたがって、ICEを当該ポリペプチドを本来産生する細胞や当該ポリペプチドをコードする領域を含むDNAにより形質転換した哺乳類由来の宿主細胞が産生する当該ポリペプチドの前駆体に作用させるか、ICEをコードするDNAを当該ポリペプチドをコードする領域を含むDNAとともに哺乳類由来の宿主細胞に導入し、同細胞において両DNAを共発現させることにより、ヒト細胞におけると同様のプロセッシングを受け、医薬品として有用なポリペプチドを所望量製造し得ることとなる。
【0048】
この発明は斯くも顕著な作用効果を奏する発明であり、斯界に貢献すること誠に多大な、意義のある発明であると言える。
【0049】
【配列表】
配列番号:1
配列の長さ:41
配列の型:アミノ酸
トポロジー:直鎖状
配列の種類:ペプチド
フラグメント型:N末端フラグメント
配列
【0050】
配列番号:2
配列の長さ:193
配列の型:アミノ酸
トポロジー:直鎖状
配列の種類:ポリペプチド
配列
【0051】
配列番号:3
配列の長さ:5
配列の型:アミノ酸
トポロジー:直鎖状
配列の種類:ペプチド
フラグメント型:N末端フラグメント
配列
【0052】
配列番号:4
配列の長さ:157
配列の型:アミノ酸
トポロジー:直鎖状
配列の種類:ポリペプチド
配列
【0053】
配列番号:5
配列の長さ:579
配列の型:核酸
トポロジー:直鎖状
配列の種類:cDNA to mRNA
配列の特徴
特徴を表す記号:leader peptide
存在位置:1..108
特徴を決定した方法:S
特徴を表す記号:mat peptide
存在位置:109..579
特徴を決定した方法:S
配列
【図面の簡単な説明】
【図1】当該ポリペプチドの前駆体をコードするcDNAを含む組換えDNA『pRCHuGF』の構造を示す図である。
【図2】ICEをコードするcDNAを含む組換えDNA『pCDHICE』の構造を示す図である。
【図3】ウェスタン・ブロッティング法により可視化した、当該ポリペプチドの前駆体から活性型の当該ポリペプチドが生成する継時変化を示すゲル電気泳動のディスプレー状に表示した中間調画像である。
【図4】A−253細胞の抽出液を、温度を変えてインキュベートしたときの当該ポリペプチドの生成状況を示す図である。
【符合の説明】
PCMV サイトメガロウイルスプロモーター
HuIGIF 当該ポリペプチドの前駆体をコードするcDNA
HuICE ICEをコードするcDNA
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