JP4726092B2 - 電流測定装置、及び、電流測定方法 - Google Patents
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Description
本発明は、前記の電流に対する磁気センサの周波数特性が低下する原因を明らかにして、磁気センサと幅広の被測定導体を近接して配置する場合において、電流に対する磁気センサの周波数特性を向上させることのできる電流測定装置及び電流測定方法を提供することを目的とする。
本発明の請求項1による電流測定装置は、扁平な形状の被測定導体を流れる電流により発生する磁界を検出するために前記被測定導体の幅方向に並んだ一対のセンサ素子を有する磁気センサを含み、前記磁気センサによって検出した磁界に基づいて前記電流を測定する電流測定装置であって、前記センサ素子は、ホール素子であり、前記磁気センサは、前記一対のセンサ素子間の中心が、前記被測定導体の前記電流の流れに対して垂直な幅方向の中央位置から該幅方向に所定距離だけ離れた位置に位置するように設けられ、前記磁界は、前記幅方向の磁界であることを特徴とする。
このように、磁気センサを被測定導体の幅方向に対して中央の位置ではなく、中央の位置より導体端に寄せて配置することにより、磁気センサを被測定導体の幅方向の中央の位置に配置したときに比べて、電流に対する磁気センサの周波数特性の帯域を広げ、調整することができ、電流に対する磁気センサの周波数特性を向上させることができる。
本発明の請求項4による電流測定装置は、請求項1乃至3のいずれか1項において、前記磁気センサは、前記幅方向の磁界を収束する磁気収束板と、前記収束した磁界を検知する前記センサ素子としてのホール素子とを含むことを特徴とする。磁気収束板により磁界を収束しやすくなり、かつ、収束した磁界をホール素子で検知することで電流を測定することができる。
本発明の請求項6による電流測定装置は、請求項1乃至5のいずれか1項において、前記所定距離は、前記被測定導体の幅Wに対して、(W/2)×(1/16)から(W/2)×(16/16)までのいずれかの距離であることを特徴とする。被測定導体の幅に対し、この範囲の距離を中央から遠ざけた位置に磁気センサを設けることにより、磁気センサを被測定導体の幅方向の中央の位置に配置したときに比べて、電流に対する磁気センサの周波数特性の帯域を広げ、調整することができ、電流に対する磁気センサの周波数特性を向上させることができる。
このように、被測定導体の幅方向に対して中央ではなく、中央より導体端に寄せて配置することにより、磁気センサを被測定導体の幅方向の中央の位置に配置したときに比べて、電流に対する磁気センサの周波数特性の帯域を広げ、調整することができ、電流に対する磁気センサの周波数特性を向上させることができる。
本発明の請求項12による電流測定方法は、請求項9乃至11のいずれか1項において、 前記磁気センサは、前記幅方向の磁界を収束する磁気収束板と、前記収束した磁界を検知する前記センサ素子としてのホール素子とを含むことを特徴とする。磁気収束板により磁界を収束しやすくなり、かつ、収束した磁界をホール素子で検知することで電流を測定することができる。
本発明の請求項14による電流測定方法は、請求項9乃至13のいずれか1項において、前記所定距離は、前記被測定導体の幅Wに対して、(W/2)×(1/16)から(W/2)×(16/16)までのいずれかの距離であることを特徴とする。被測定導体の幅に対し、この範囲の距離を中央から遠ざけた位置に磁気センサを設けることにより、磁気センサを被測定導体の幅方向の中央の位置に配置したときに比べて、電流に対する磁気センサの周波数特性の帯域を広げ、調整することができ、電流に対する磁気センサの周波数特性を向上させることができる。
はじめに、近接する磁気センサを被測定導体の幅方向に対して中央となる位置に配置したとき、電流に対する磁気センサの周波数特性が、磁気センサの本来もつ磁気に対する周波数特性よりも低下する原因について説明する。
図1は、プリント基板11aに形成された厚みが35[μm]で、幅が16[mm]の銅箔導体1の上に、被測定導体1の幅方向に生じる磁界20を検出することのできる磁気センサ10を近接するような形で配置した一例である。被測定導体1の幅とは、通電方向に対して垂直な面でありかつ扁平な面における辺の長いところをいう。また、辺の短いところが被測定導体1の厚みである。例えば、被測定導体1はプリント配線である。
図2は、図1の被測定導体1の上面側よりみた図である。図2ではプリント基板11bの図示は省略してある。ここで、磁気センサ10は、表面実装の可能なTSSOP(Thin Shrink Small Outline Package)で形成されたものを用いた。
以上の結果より、本発明者は、電流の周波数が高いとき、被測定導体の中央で電流感度が下がり、端の部分で電流感度が高くなる実験的な証拠から、被測定導体内で表皮効果と呼ばれる現象が生じることを明らかにした。表皮効果とは、被測定導体中を流れる電流の周波数が高くなると、電磁誘導により電流が被測定導体の端部に集中する現象のことをいう。電流の周波数が高いとき、被測定導体の中央では電流密度が小さくなるため、導体の中央に配置した磁気センサの電流感度が下がり、一方で被測定導体の端付近では電流密度が大きくなるため、導体の端に配置した磁気センサの電流感度が上がったと考える。
さらに、本発明者は、電流の周波数が高いとき、同じ被測定導体内で磁気センサの出力波形に時間的な差が生じる実験的な証拠から、被測定導体内に渦電流が存在することを明らかにした。図6は、電流の周波数が高いときの被測定導体1内の電流30と渦電流31との様子を模式的に示した図である。
同図において、被測定導体1に流れる電流30と渦電流31との位相関係は、電磁誘導により渦電流31が図示の向きに電流30より90[°]進んで流れる。したがって、被測定導体1の端部に流れる電流は、電流30と90[°]進んだ渦電流31とが合成されるため、図5に示されている結果にみられるように、磁気センサ10を被測定導体1の端部に配置したときの磁気センサ10の出力波形が、中央位置2に配置したときよりも位相が進んで出力されたと考える。
以上のように、電流に対する磁気センサの周波数特性が、磁気センサの本来もつ磁気に対する周波数特性よりも低下する原因は、電流の周波数が高くなると、被測定導体内で電磁誘導が生じて、表皮効果や渦電流が現れるためである。
図1及び図2のように、磁気センサ10を被測定導体1の幅方向に対して中央位置2ではなく、中央位置2より被測定導体1端までの間に配置すると、図4に示されている結果のように、電流に対する磁気センサ10の周波数特性が変化して、帯域を広げ、周波数特性を調整することが可能となる。この範囲において、磁気センサ10の中央3が被測定導体1の中央位置2から6[mm]に磁気センサ10を配置したとき、電流に対する磁気センサ10の周波数特性は、磁気センサ10の本来もつ磁気に対する周波数特性とほぼ同等の特性となり、被測定導体1の中央位置2に磁気センサを配置したときに比べて、広い周波数帯域まで電流感度が安定となり、周波数特性を向上させることができる。
以上のように、本発明における実施形態を示したが、本発明は、図7に示されているように、プリント基板11aの被測定導体1が実装されている面の裏面に磁気センサ10を実装する場合においても、図1の実施形態の場合と同様な効果が得られる。また、本発明は、図8に示されているように、プリント基板から独立して設けられている扁平な形状の薄いバスバー51を被測定導体とした場合においても、図1の実施形態の場合と同様な効果が得られる。
これら図7から図10を参照して説明したように、磁気センサ10を被測定導体1の幅方向に対して中央位置ではなく、中央位置から導体端までの間の位置に設けることが本発明の効果を引き出す本質であり、磁気センサ10のパッケージの種類やパッケージの有無、ICチップ43と被測定導体1の直接或いは間接貼り付けなどは本質的事項ではない。
図11には、被測定導体1に所定の大きさの電流を流して、被測定導体1の周辺に生じる被測定導体1の幅方向成分の磁束密度強度分布を、電磁誘導の効果を加味した数値磁界解析にて求めた結果が示されている。ここで、被測定導体1の材料は銅とし、被測定導体1の幅Wを9[mm]、厚みtを35[μm]とした。同図は、被測定導体1の断面形状の模式図を、磁束密度強度分布と重ねて図示したものである。
被測定導体1に流れる電流の周波数が100[KHz]のとき、図11中の被測定導体1の周辺に生じる磁束密度強度分布62を参照すると、被測定導体1の幅方向に対して中央位置2付近の磁束密度強度が弱まり、磁束密度強度の強い領域が幅方向に対して端の方向に広がっていく様子が分かる。
図11の解析結果から、電流の周波数が高くなると、電磁誘導の効果により、被測定導体1の周辺に生じる幅方向成分の磁束密度強度は、被測定導体1の中央では次第に弱まり、被測定導体1の端では強くなることが視覚的に分かる。ここで、被測定導体1の幅方向に対して中央位置2に磁気センサ10を配置した場合、電流に対する磁気センサ10の周波数特性は、電流の周波数が高いとき被測定導体1の中央での磁束密度強度が弱まるため、低下することを示している。
この範囲は、先に述べた図4の結果で、磁気センサの中央が被測定導体1の中央位置から6[mm](=(W/2)×(12/16):W=16)に磁気センサを配置したとき、電流に対する磁気センサの周波数特性が、磁気センサの本来持つ磁気に対する周波数特性とほぼ同等な特性となる結果に一致しており、妥当な範囲であることが分かる。
発明者は、アルミニウム(Al)や銅(Cu)でできた、数ミリメートルの厚みのある導体(以下、バスバーと呼ぶ)について、その導体を流れる電流の流れに対して垂直な幅方向の中央位置からその幅方向に所定距離だけ離れた位置に磁気センサを設けて電流を測定した。このとき、所定距離を、本願請求項6に記載のように被測定導体の幅Wに対して(W/2)×(1/16)から(W/2)×(16/16)までのいずれかの距離にした場合と、本願請求項7に記載のように同じく(W/2)×(10/16)から(W/2)×(14/16)までのいずれかの距離にした場合と、について電流測定性能を確認した。その結果、バスバーの幅方向の中央位置(L=0[mm])に配置した時に比して電流感度の周波数特性は大きく改善されることを確認できた。
ところで、電流によって生じる磁界の方向は、バスバー1aの表面に沿って変化するので、その方向に応じて磁気収束板の向きを調整しても良い。調整の方法は、例えば、プリント基板に対してモールドパッケージを斜めに実装したり、モールドパッケージ内部の磁気収束板を予め傾けておく、などの方法がある。このように磁気収束板の向きを調整すれば、電流感度が高まり、周波数特性の改善が期待できる。
以上説明した電流測定装置によれば、以下の電流測定方法が実現されている。すなわち、扁平な形状の被測定導体を流れる電流により発生する磁界を検出する磁気センサによって検出した磁界に基づいて上記電流を測定する電流測定方法であり、上記被測定導体の上記電流の流れに対して垂直な幅方向の中央位置から該幅方向に所定距離だけ離れた位置に、上記磁気センサを設けた電流測定方法が実現されている。このように、被測定導体の幅方向に対して中央ではなく、中央より導体端に寄せて配置することにより、磁気センサを被測定導体の幅方向の中央の位置に配置したときに比べて、電流に対する磁気センサの周波数特性の帯域を広げ、調整することができ、電流に対する磁気センサの周波数特性を向上させることができる。
また、上記被測定導体を流れる電流により発生する上記幅方向の磁界を、上記磁気センサによって検出する。幅方向の磁界を検出することにより、被測定導体を流れる電流を測定することができる。
1a バスバー
2 中央位置
3 中央
10,52 磁気センサ
11a,11b プリント基板
20,46 磁界
30 電流
31 渦電流
41 モールドパッケージ
42a リードフレーム
42b リードピン
43 ICチップ
44 ホール素子
45 磁気収束板
51 バスバー
61,62,63 磁束密度強度分布
Claims (16)
- 扁平な形状の被測定導体を流れる電流により発生する磁界を検出するために前記被測定導体の幅方向に並んだ一対のセンサ素子を有する磁気センサを含み、前記磁気センサによって検出した磁界に基づいて前記電流を測定する電流測定装置であって、
前記センサ素子は、ホール素子であり、
前記磁気センサは、前記一対のセンサ素子間の中心が、前記被測定導体の前記電流の流れに対して垂直な幅方向の中央位置から該幅方向に所定距離だけ離れた位置に位置するように設けられ、前記磁界は、前記幅方向の磁界であることを特徴とする電流測定装置。 - 扁平な形状の被測定導体を流れる電流により発生する磁界を検出するための一つのセンサ素子のみからなる磁気センサ、或いは一つのセンサ素子と増幅回路とからなる磁気センサを含み、前記磁気センサによって検出した磁界に基づいて前記電流を測定する電流測定装置であって、
前記センサ素子は、ホール素子であり、
前記磁気センサは、前記センサ素子の表面のうち感磁面が前記被測定導体の幅方向に対して垂直となり、且つ、当該磁気センサの全体が、前記被測定導体の前記電流の流れに対して垂直な幅方向の中央位置から該幅方向に所定距離だけ離れた位置に位置するように設けられ、前記磁界は、前記幅方向の磁界であることを特徴とする電流測定装置。 - 請求項1又は2に記載の電流測定装置であって、
前記磁気センサは、前記被測定導体に近接するように配置されていることを特徴とする電流測定装置。 - 請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電流測定装置であって、
前記磁気センサは、前記幅方向の磁界を収束する磁気収束板と、前記収束した磁界を検知する前記センサ素子としてのホール素子とを含むことを特徴とする電流測定装置。 - 請求項4に記載の電流測定装置であって、
前記被測定導体の幅は前記磁気収束板の幅よりも広いことを特徴とする電流測定装置。 - 請求項1乃至5のいずれか1項に記載の電流測定装置であって、
前記所定距離は、前記被測定導体の幅Wに対して、(W/2)×(1/16)から(W/2)×(16/16)までのいずれかの距離であることを特徴とする電流測定装置。 - 請求項1乃至5のいずれか1項に記載の電流測定装置であって、
前記所定距離は、前記被測定導体の幅Wに対して、(W/2)×(10/16)から(W/2)×(14/16)までのいずれかの距離であることを特徴とする電流測定装置。 - 請求項1乃至5のいずれか1項に記載の電流測定装置であって、
前記所定距離は、前記被測定導体の幅Wに対して、(W/2)×(20/15)から(W/2)×(24/15)までのいずれかの距離であることを特徴とする電流測定装置。 - 扁平な形状の被測定導体を流れる電流により発生する磁界を検出するために前記被測定導体の幅方向に並んだ一対のセンサ素子を有する磁気センサによって検出した磁界に基づいて前記電流を測定する電流測定方法であって、
前記センサ素子は、ホール素子であり、
前記一対のセンサ素子間の中心が、前記被測定導体の前記電流の流れに対して垂直な幅方向の中央位置から該幅方向に所定距離だけ離れた位置に位置するように、前記磁気センサを設け、前記磁界は、前記幅方向の磁界であることを特徴とする電流測定方法。 - 扁平な形状の被測定導体を流れる電流により発生する磁界を検出するための一つのセンサ素子のみからなる磁気センサ、或いは一つのセンサ素子と増幅回路とからなる磁気センサによって検出した磁界に基づいて前記電流を測定する電流測定方法であって、
前記センサ素子は、ホール素子であり、
前記センサ素子の表面のうち感磁面が前記被測定導体の幅方向に対して垂直となり、且つ、当該磁気センサの全体が、前記被測定導体の前記電流の流れに対して垂直な幅方向の中央位置から該幅方向に所定距離だけ離れた位置に位置するように、前記磁気センサを設け、前記磁界は、前記幅方向の磁界であることを特徴とする電流測定方法。 - 請求項9又は10に記載の電流測定方法であって、
前記磁気センサを、前記被測定導体に近接するように配置したことを特徴とする電流測定方法。 - 請求項9乃至11のいずれか1項に記載の電流測定方法であって、
前記磁気センサは、前記幅方向の磁界を収束する磁気収束板と、前記収束した磁界を検知する前記センサ素子としてのホール素子とを含むことを特徴とする電流測定方法。 - 請求項12に記載の電流測定方法であって、
前記被測定導体の幅を、前記磁気収束板の幅よりも広くしたことを特徴とする電流測定方法。 - 請求項9乃至13のいずれか1項に記載の電流測定方法であって、
前記所定距離は、前記被測定導体の幅Wに対して、(W/2)×(1/16)から(W/2)×(16/16)までのいずれかの距離であることを特徴とする電流測定方法。 - 請求項9乃至13のいずれか1項に記載の電流測定方法であって、
前記所定距離は、前記被測定導体の幅Wに対して、(W/2)×(10/16)から(W/2)×(14/16)までのいずれかの距離であることを特徴とする電流測定方法。 - 請求項9乃至13のいずれか1項に記載の電流測定方法であって、
前記所定距離は、前記被測定導体の幅Wに対して、(W/2)×(20/15)から(W/2)×(24/15)までのいずれかの距離であることを特徴とする電流測定方法。
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