JP4725342B2 - ロータリーエンジンのハウジング構造 - Google Patents

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Description

本発明は、ロータリーエンジンのハウジング構造に関するものである。
従来から、2節3葉トロコイド状の内周面を有するロータハウジング内を略三角形状のロータが遊星回転運動するロータリーエンジンが知られている。特許文献1には、簡単な構造で高出力を得ることができる、いわゆる2ローター式のロータリーエンジンが示されている。
ところで、ロータリーエンジンの高出力化をさらに図るため、ロータとロータハウジングとで区画される作動室からガスが洩れないよう、そのシール性を向上させることが考えられる。そして、ガスを洩らさないためのシールの1つとして、ロータの3頂点部にそれぞれ配設されるアペックスシールがある。
特開2003−247423号公報
ここで、様々なシュミレーションや実験などを行った結果、圧縮上死点近傍の爆発行程では、作動室を区画するロータの1辺(1面)に燃焼圧などが作用し、これにより、エキセントリックシャフトが撓んで、ロータが吸排気側(つまり、点火プラグとは反対側)に変位する、すなわち、ロータがロータハウジングのトロコイド内周面から遠ざかることが分かった。
このように、ロータがトロコイド内周面から遠ざかると、本来、アペックスシールがトロコイド内周面に追従すべくロータのシール溝から径方向外側に飛び出すが、燃焼圧が最も大きくなる圧縮上死点近傍では、アペックスシールがその燃焼圧によってシール溝のトレーリング側の側面に強く押し付けられて動けなくなるものと考えられる。このため、ガスがロータの頂点部から洩れてしまうと思われる。
この問題を解決するため、シール溝に設けられた、アペックスシールを径方向外側に向かって押し出すスプリングのばね荷重を大きくすることが考えられる。この場合、アペックスシールがロータの回転中に亘ってトロコイド内周面に強く押し付けられ、その摺動抵抗が高くなってしまう。
そこで、本発明者たちは、上記問題を解決するため、ロータハウジングの内周面を改良した。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、シール性を向上させるロータリーエンジンのハウジング構造を提供することにある。
第1の発明は、略2節3葉トロコイド状の内周面を有するロータハウジング内を、3頂点部にアペックスシールがそれぞれ配設された略三角形状のロータが遊星回転運動するロータリーエンジンのハウジング構造であって、上記ロータハウジングの内周面は、トロコイド短軸よりも吸気側において、圧縮上死点近傍における作動室を区画するロータの2頂点部のうちトレーリング側の頂点部と対向する部分よりもトレーリング側の部分が、仮想の基準トロコイドよりも外側に膨らんでいる一方、該トレーリング側の頂点部と対向する部分よりもリーディング側の部分が、上記仮想の基準トロコイドよりも内側に窪んでいることを特徴とするものである。
これにより、ロータハウジングの内周面は、トロコイド短軸よりも吸気側において、圧縮上死点近傍における作動室を区画するロータの2頂点部のうちトレーリング側の頂点部と対向する部分よりもリーディング側の部分が、仮想の基準トロコイドよりも内側に窪んでいるので、その窪んだ部分が、これを摺動するアペックスシールに近付く。そのため、その窪んだ部分によって、これを摺動するアペックスシールに径方向内側向きの荷重が作用する。したがって、圧縮上死点近傍において、燃焼圧などによってロータが吸排気側に変位しても、アペックスシールはその窪んだ部分を確実に摺動する。
また、ロータハウジングの内周面は、トロコイド短軸よりも吸気側において、圧縮上死点近傍における作動室を区画するロータの2頂点部のうちトレーリング側の頂点部と対向する部分よりもトレーリング側の部分が、仮想の基準トロコイドよりも外側に膨らんでいるが、その膨らんだ部分を摺動するアペックスシールに作用する遠心力が比較的大きいので、アペックスシールはその膨らんだ部分を確実に摺動する。
以上から、シール性を向上させることができる。
第2の発明は、略2節3葉トロコイド状の内周面を有するロータハウジング内を、3頂点部にアペックスシールがそれぞれ配設された略三角形状のロータが遊星回転運動するロータリーエンジンのハウジング構造であって、上記ロータハウジングの内周面は、トロコイド短軸よりも排気側において、圧縮上死点近傍における作動室を区画するロータの2頂点部のうちリーディング側の頂点部と対向する部分よりもトレーリング側の部分が、仮想の基準トロコイドよりも外側に膨らんでいる一方、該リーディング側の頂点部と対向する部分よりもリーディング側の部分が、上記仮想の基準トロコイドよりも内側に窪んでいることを特徴とするものである。
これにより、ロータハウジングの内周面は、トロコイド短軸よりも排気側において、圧縮上死点近傍における作動室を区画するロータの2頂点部のうちリーディング側の頂点部と対向する部分よりもリーディング側の部分が、仮想の基準トロコイドよりも内側に窪んでいるので、その窪んだ部分が、これを摺動するアペックスシールに近付く。そのため、その窪んだ部分によって、これを摺動するアペックスシールに径方向内側向きの荷重が作用する。したがって、圧縮上死点近傍において、燃焼圧などによってロータが吸排気側に変位しても、アペックスシールはその窪んだ部分を確実に摺動する。
また、ロータハウジングの内周面は、トロコイド短軸よりも排気側において、圧縮上死点近傍における作動室を区画するロータの2頂点部のうちリーディング側の頂点部と対向する部分よりもトレーリング側の部分が、仮想の基準トロコイドよりも外側に膨らんでいるが、その膨らんだ部分を摺動するアペックスシールに作用する遠心力が比較的大きいので、アペックスシールはその膨らんだ部分を確実に摺動する。
以上から、シール性を向上させることができる。
第3の発明は、略2節3葉トロコイド状の内周面を有するロータハウジング内を、3頂点部にアペックスシールがそれぞれ配設された略三角形状のロータが遊星回転運動するロータリーエンジンのハウジング構造であって、上記ロータハウジングの内周面は、トロコイド短軸よりも吸気側において、圧縮上死点近傍における作動室を区画するロータの2頂点部のうちトレーリング側の頂点部と対向する部分よりもトレーリング側の部分が、仮想の基準トロコイドよりも外側に膨らんでいる一方、該トレーリング側の頂点部と対向する部分よりもリーディング側の部分が、上記仮想の基準トロコイドよりも内側に窪んでいて、トロコイド短軸よりも排気側において、圧縮上死点近傍における作動室を区画するロータの2頂点部のうちリーディング側の頂点部と対向する部分よりもトレーリング側の部分が、上記仮想の基準トロコイドよりも外側に膨らんでいる一方、該リーディング側の頂点部と対向する部分よりもリーディング側の部分が、上記仮想の基準トロコイドよりも内側に窪んでいることを特徴とするものである。
これにより、ロータハウジングの内周面は、トロコイド短軸よりも吸気側において、圧縮上死点近傍における作動室を区画するロータの2頂点部のうちトレーリング側の頂点部と対向する部分よりもリーディング側の部分が、仮想の基準トロコイドよりも内側に窪んでいるので、その窪んだ部分が、これを摺動するアペックスシールに近付く。そのため、その窪んだ部分によって、これを摺動するアペックスシールに径方向内側向きの荷重が作用する。したがって、圧縮上死点近傍において、燃焼圧などによってロータが吸排気側に変位しても、アペックスシールはその窪んだ部分を確実に摺動する。
また、ロータハウジングの内周面は、トロコイド短軸よりも吸気側において、圧縮上死点近傍における作動室を区画するロータの2頂点部のうちトレーリング側の頂点部と対向する部分よりもトレーリング側の部分が、仮想の基準トロコイドよりも外側に膨らんでいるが、その膨らんだ部分を摺動するアペックスシールに作用する遠心力が比較的大きいので、アペックスシールはその膨らんだ部分を確実に摺動する。
一方、ロータハウジングの内周面は、トロコイド短軸よりも排気側において、圧縮上死点近傍における作動室を区画するロータの2頂点部のうちリーディング側の頂点部と対向する部分よりもリーディング側の部分が、仮想の基準トロコイドよりも内側に窪んでいるので、その窪んだ部分が、これを摺動するアペックスシールに近付く。そのため、その窪んだ部分によって、これを摺動するアペックスシールに径方向内側向きの荷重が作用する。したがって、圧縮上死点近傍において、燃焼圧などによってロータが吸排気側に変位しても、アペックスシールはその窪んだ部分を確実に摺動する。
また、ロータハウジングの内周面は、トロコイド短軸よりも排気側において、圧縮上死点近傍における作動室を区画するロータの2頂点部のうちリーディング側の頂点部と対向する部分よりもトレーリング側の部分が、仮想の基準トロコイドよりも外側に膨らんでいるが、その膨らんだ部分を摺動するアペックスシールに作用する遠心力が比較的大きいので、アペックスシールはその膨らんだ部分を確実に摺動する。
以上から、シール性を向上させることができる。
本発明によれば、ロータハウジングの内周面は、トロコイド短軸よりも吸気側において、圧縮上死点近傍における作動室を区画するロータの2頂点部のうちトレーリング側の頂点部と対向する部分よりもリーディング側の部分が、仮想の基準トロコイドよりも内側に窪んでいるので、その窪んだ部分が、これを摺動するアペックスシールに近付く。そのため、圧縮上死点近傍において、燃焼圧などによってロータが吸排気側に変位しても、アペックスシールはその窪んだ部分を確実に摺動する。また、ロータハウジングの内周面は、トロコイド短軸よりも吸気側において、圧縮上死点近傍における作動室を区画するロータの2頂点部のうちトレーリング側の頂点部と対向する部分よりもトレーリング側の部分が、仮想の基準トロコイドよりも外側に膨らんでいるが、その膨らんだ部分を摺動するアペックスシールに作用する遠心力が比較的大きいので、アペックスシールはその膨らんだ部分を確実に摺動する。以上から、シール性を向上させることができ、ロータリーエンジンの高出力化を図ることができる。
別の発明によれば、これにより、ロータハウジングの内周面は、トロコイド短軸よりも排気側において、圧縮上死点近傍における作動室を区画するロータの2頂点部のうちリーディング側の頂点部と対向する部分よりもリーディング側の部分が、仮想の基準トロコイドよりも内側に窪んでいるので、その窪んだ部分によって、これを摺動するアペックスシールに径方向内側向きの荷重が作用する。そのため、圧縮上死点近傍において、燃焼圧などによってロータが吸排気側に変位しても、アペックスシールはその窪んだ部分を確実に摺動する。また、ロータハウジングの内周面は、トロコイド短軸よりも排気側において、圧縮上死点近傍における作動室を区画するロータの2頂点部のうちリーディング側の頂点部と対向する部分よりもトレーリング側の部分が、仮想の基準トロコイドよりも外側に膨らんでいるが、その膨らんだ部分を摺動するアペックスシールに作用する遠心力が比較的大きいので、アペックスシールはその膨らんだ部分を確実に摺動する。以上から、シール性を向上させることができ、ロータリーエンジンの高出力化を図ることができる。
さらに別の発明によれば、ロータハウジングの内周面は、トロコイド短軸よりも吸気側において、圧縮上死点近傍における作動室を区画するロータの2頂点部のうちトレーリング側の頂点部と対向する部分よりもリーディング側の部分が、仮想の基準トロコイドよりも内側に窪んでいるので、その窪んだ部分によって、これを摺動するアペックスシールに径方向内側向きの荷重が作用する。そのため、圧縮上死点近傍において、燃焼圧などによってロータが吸排気側に変位しても、アペックスシールはその窪んだ部分を確実に摺動する。また、ロータハウジングの内周面は、トロコイド短軸よりも吸気側において、圧縮上死点近傍における作動室を区画するロータの2頂点部のうちトレーリング側の頂点部と対向する部分よりもトレーリング側の部分が、仮想の基準トロコイドよりも外側に膨らんでいるが、その膨らんだ部分を摺動するアペックスシールに作用する遠心力が比較的大きいので、アペックスシールはその膨らんだ部分を確実に摺動する。一方、ロータハウジングの内周面は、トロコイド短軸よりも排気側において、圧縮上死点近傍における作動室を区画するロータの2頂点部のうちリーディング側の頂点部と対向する部分よりもリーディング側の部分が、仮想の基準トロコイドよりも内側に窪んでいるので、その窪んだ部分によって、これを摺動するアペックスシールに径方向内側向きの荷重が作用する。そのため、圧縮上死点近傍において、燃焼圧などによってロータが吸排気側に変位しても、アペックスシールはその窪んだ部分を確実に摺動する。また、ロータハウジングの内周面は、トロコイド短軸よりも排気側において、圧縮上死点近傍における作動室を区画するロータの2頂点部のうちリーディング側の頂点部と対向する部分よりもトレーリング側の部分が、仮想の基準トロコイドよりも外側に膨らんでいるが、その膨らんだ部分を摺動するアペックスシールに作用する遠心力が比較的大きいので、アペックスシールはその膨らんだ部分を確実に摺動する。以上から、シール性を向上させることができ、ロータリーエンジンの高出力化を図ることができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
(実施形態1)
図1は、ロータリーエンジンの概略側面図であり、図2は、サイドハウジングが取り外された状態のロータリーエンジンの正面図であり、図3は、ロータの頂点部付近の拡大図であり、図4は、ロータハウジングの内周面の概略図である。
本発明の実施形態に係るロータリーエンジン1は、いわゆる2ロータ式のものである。図1及び図2に示すように、ロータリーエンジン1は、フロントロータハウジング10と、リアロータハウジング30と、これらの両ハウジング10,30の間に設けられたインタミディエイトハウジング40と、フロントロータハウジング10の正面側及びリアロータハウジング30の背面側にそれぞれ配設されたサイドハウジング50とを備えている。以下、主にフロントロータハウジング10について説明するが、リアロータハウジング30もフロントロータハウジング10とほぼ同様の構成である。なお、以下の説明では、ロータ12の回転が進む方向(図2では時計回り方向)をリーディング側といい、その反対方向(図2では反時計回り方向)をトレーディング側という。
図2に示すように、ロータハウジング10は、略2節3葉トロコイド状の内周面11を有している(この詳細については後述する)。ロータハウジング10内には、3つの頂点を有する略三角形状のロータ12が収容されている。ロータ12は、ロータハウジング10内を遊星回転運動するようになっている。
ロータ12の周囲には、ロータハウジング10との間に3つの作動室13が形成されている。すなわち、これらの作動室13は、ロータ12の1辺(1面)がそれぞれロータハウジング10との間に作っている空間である。各作動室13は、ロータ12が1回転する間に吸気、圧縮、爆発、排気の4行程を順に行うようになっている。これにより、エキセントリックシャフト(偏心軸)14が、ロータ12が1回転する間に3回転する。各作動室13は、吸気工程中は吸気ポート15に通じ、排気工程中は排気ポート16に通じるようになっている。
ロータハウジング10には、トレーディング側及びリーディング側点火プラグ17,18が配設されている。トレーディング側点火プラグ17は、トロコイド短軸Xよりもトレーディング側に位置し、リーディング側点火プラグ18は、トロコイド短軸Xよりもリーディング側に位置している(図4を参照)。
図2及び図3に示すように、ロータ12の各頂点部には、アペックスシール19が設けられている。各アペックスシール19は、ロータ12の厚み方向に延びていて、その厚さとほぼ同じ長さを持つ細長い部材である。各アペックスシール19は、ロータ12の各頂点部に設けられたシール溝20にスプリング21を介して埋め込まれている。このスプリング21は、アペックスシール19を径方向外側に向かって押し出している。そして、各アペックスシール19は、ロータ12の回転時は、遠心力によってロータハウジング10の内周面11に押し付けられ、その内周面11を摺動する(つまり、接触しながら移動する)ようになっている。これにより、ロータ12の各頂点部とロータハウジング10の内周面11との間が封止される。また、各アペックスシール19は、燃焼圧が最も大きくなる圧縮上死点近傍では、シール溝20のトレーリング側の側面に押し付けられる(図3を参照)。
ここで、図4を参照しながら、ロータハウジング10の内周面について、仮想の基準トロコイドVと比較しながら説明する。この基準トロコイドVは、本実施形態に係るロータハウジング10の内周面とほぼ同じ所定の大きさの、純粋なトロコイドである。ロータハウジング10の内周面11は、トロコイド短軸Xよりも吸気側(吸気ポート15(図2を参照)及びトレーディング側点火プラグ17側。図4では上側)において、圧縮上死点近傍における作動室13(図4では、3つの作動室13のうち最も右側の作動室13)を区画(形成)するロータ12の1辺に含まれる2頂点部12a,12bのうちトレーリング側の頂点部12aと対向(対応)する部分11aよりもトレーリング側(吸気側)の部分11bが、仮想の基準トロコイドVよりも僅かに外側に膨らんでいる一方、そのトレーリング側の頂点部12aと対向する部分11aよりもリーディング側(トレーディング側点火プラグ17側)の部分11cが、仮想の基準トロコイドVよりも僅かに内側に窪んでいる。その膨らんだ部分11bは、そのトレーリング側の頂点部12aと対向する部分11aから、トロコイド長軸Yよりもトレーリング側の部分まで延びている一方、その窪んだ部分11cは、そのトレーリング側の頂点部12aと対向する部分11aからトロコイド短軸Xまで延びている。上記膨らんだ部分11bは、中央部が仮想の基準トロコイドVとの距離が最も大きく、両端部に行くに従って仮想の基準トロコイドVとの距離が小さくなる。上記窪んだ部分11cは、リーディング側に行くに従って基準トロコイドとの距離が大きくなる。
また、ロータハウジング10の内周面11は、トロコイド短軸Xよりも排気側(排気ポート16(図2を参照)及びリーディング側点火プラグ18側。図4では下側)において、圧縮上死点近傍における作動室13を仕切るロータ12の1辺に含まれる2頂点部12a,12bのうちリーディング側の頂点部12bと対向する部分11dよりもトレーリング側(リーディング側点火プラグ18側)の部分11eが、仮想の基準トロコイドVよりも僅かに外側に膨らんでいる一方、そのリーディング側の頂点部12bと対向する部分11dよりもリーディング側(排気側)の部分11fが、仮想の基準トロコイドVよりも僅かに内側に窪んでいる。その膨らんだ部分11eは、そのリーディング側の頂点部12bと対向する部分11dから、トロコイド短軸Xよりも僅かにリーディング側の部分まで延びている一方、その窪んだ部分11fは、そのリーディング側の頂点部12bと対向する部分11dから、トロコイド短軸Xよりもリーディング側の部分まで延びている。上記膨らんだ部分11eは、中央部が仮想の基準トロコイドVとの距離が最も大きく、両端部に行くに従って仮想の基準トロコイドVとの距離が小さくなる。上記窪んだ部分11cは、中央部が仮想の基準トロコイドVとの距離が最も大きく、両端部に行くに従って仮想の基準トロコイドVとの距離が小さくなる。
さらに、ロータハウジング10の内周面11は、トロコイド短軸Xよりも排気側において、上記膨らんだ部分11eよりもトレーリング側の部分11gが、仮想の基準トロコイドVよりも僅かに窪んでいる。その窪んだ部分11gは、リーディング側に行くに従って仮想の基準トロコイドVとの距離が小さくなる。そして、上記窪んだ部分11gは、上記窪んだ部分11cと連続している。
最後に、ロータハウジング10の内周面11の、上述した以外の部分は、仮想の基準トロコイドVとほぼ一致している。
なお、図4では、ロータハウジング10の内周面11の輪郭線(軌跡)が、仮想の基準トロコイドVよりも大きく膨出したり、大きく凹んだりしているように見えるが、これは誇張して描かれたものであり、実際には、その膨らみ量やその窪み量は、最大約0.5mmである(以下、同じ)。
−効果−
以上により、本実施形態によれば、ロータハウジング10の内周面11は、トロコイド短軸Xよりも吸気側において、圧縮上死点近傍における作動室13を区画するロータ12の2頂点部12a,12bのうちトレーリング側の頂点部12aと対向する部分11aよりもリーディング側の部分11cが、仮想の基準トロコイドVよりも内側に窪んでいるので、その窪んだ部分11cが、これを摺動するアペックスシール19に近付く。そのため、その窪んだ部分11cによって、これを摺動するアペックスシール19に径方向内側向きの荷重が作用する。したがって、圧縮上死点近傍において、燃焼圧などによってロータ12が吸排気側に変位しても、アペックスシール19はその窪んだ部分11cを確実に摺動する。
また、ロータハウジング10の内周面11は、トロコイド短軸Xよりも吸気側において、圧縮上死点近傍における作動室13を区画するロータ12の2頂点部12a,12bのうちトレーリング側の頂点部12aと対向する部分よりもトレーリング側の部分11bが、仮想の基準トロコイドVよりも外側に膨らんでいるが、その膨らんだ部分11bを摺動するアペックスシール19に作用する遠心力が比較的大きいので、アペックスシール19はその膨らんだ部分11bを確実に摺動する。
一方、ロータハウジング10の内周面11は、トロコイド短軸Xよりも排気側において、圧縮上死点近傍における作動室13を区画するロータ12の2頂点部12a,12bのうちリーディング側の頂点部12bと対向する部分11dよりもリーディング側の部分11fが、仮想の基準トロコイドVよりも内側に窪んでいるので、その窪んだ部分11fが、これを摺動するアペックスシール19に近付く。そのため、その窪んだ部分11fによって、これを摺動するアペックスシール19に径方向内側向きの荷重が作用する。したがって、圧縮上死点近傍において、燃焼圧などによってロータ12が吸排気側に変位しても、アペックスシール19はその窪んだ部分11fを確実に摺動する。
また、ロータハウジング10の内周面11は、トロコイド短軸Xよりも排気側において、圧縮上死点近傍における作動室13を区画するロータ12の2頂点部12a,12bのうちリーディング側の頂点部12bと対向する部分11dよりもトレーリング側の部分11eが、仮想の基準トロコイドVよりも外側に膨らんでいるが、その膨らんだ部分11eを摺動するアペックスシール19に作用する遠心力が比較的大きいので、アペックスシール19はその膨らんだ部分11eを確実に摺動する。
以上から、シール性を向上させることができ、ロータリーエンジン1の高出力化を図ることができる。
(実施形態2)
図5は、ロータハウジングの内周面の概略図である。
本実施形態は、実施形態1の変形例である。すなわち、図5に示すように、ロータハウジング10の内周面11は、トロコイド短軸Xよりも排気側(図5では下側)でかつトロコイド長軸Yよりも点火プラグ側(図5では右側)の部分11hが、仮想の基準トロコイドVよりも僅かに内側に窪んでいる。その窪んだ部分11hは、リーディング側に行くに従って仮想の基準トロコイドVとの距離が小さくなる。その他の点に関しては、実施形態1とほぼ同様の構成である。
−効果−
以上により、本実施形態によれば、ロータハウジング10の内周面11は、トロコイド短軸Xよりも吸気側において、圧縮上死点近傍における作動室13を区画するロータ12の2頂点部12a,12bのうちトレーリング側の頂点部12aと対向する部分11aよりもリーディング側の部分11cが、仮想の基準トロコイドVよりも内側に窪んでいるので、その窪んだ部分11cが、これを摺動するアペックスシール19に近付く。そのため、その窪んだ部分11cによって、これを摺動するアペックスシール19に径方向内側向きの荷重が作用する。したがって、圧縮上死点近傍において、燃焼圧などによってロータ12が吸排気側に変位しても、アペックスシール19はその窪んだ部分11cを確実に摺動する。
また、ロータハウジング10の内周面11は、トロコイド短軸Xよりも吸気側において、圧縮上死点近傍における作動室13を区画するロータ12の2頂点部12a,12bのうちトレーリング側の頂点部12aと対向する部分よりもトレーリング側の部分11bが、仮想の基準トロコイドVよりも外側に膨らんでいるが、その膨らんだ部分11bを摺動するアペックスシール19に作用する遠心力が比較的大きいので、アペックスシール19はその膨らんだ部分11bを確実に摺動する。
以上から、シール性を向上させることができ、ロータリーエンジン1の高出力化を図ることができる。
(実施形態3)
図6は、ロータハウジングの内周面の概略図である。
本実施形態は、実施形態1の変形例である。すなわち、図6に示すように、ロータハウジング10の内周面11は、トロコイド短軸Xよりも吸気側(図6では上側)でかつトロコイド長軸Yよりも点火プラグ側(図6では右側)の部分11iが、仮想の基準トロコイドVよりも僅かに内側に窪んでいる。その窪んだ部分11iは、リーディング側に行くに従って仮想の基準トロコイドVとの距離が大きくなる。その他の点に関しては、実施形態1とほぼ同様の構成である。
−効果−
以上により、本実施形態によれば、ロータハウジング10の内周面11は、トロコイド短軸Xよりも排気側において、圧縮上死点近傍における作動室13を区画するロータ12の2頂点部12a,12bのうちリーディング側の頂点部12bと対向する部分11dよりもリーディング側の部分11fが、仮想の基準トロコイドVよりも内側に窪んでいるので、その窪んだ部分11fが、これを摺動するアペックスシール19に近付く。そのため、その窪んだ部分11fによって、これを摺動するアペックスシール19に径方向内側向きの荷重が作用する。したがって、圧縮上死点近傍において、燃焼圧などによってロータ12が吸排気側に変位しても、アペックスシール19はその窪んだ部分11fを確実に摺動する。
また、ロータハウジング10の内周面11は、トロコイド短軸Xよりも排気側において、圧縮上死点近傍における作動室13を区画するロータ12の2頂点部12a,12bのうちリーディング側の頂点部12bと対向する部分11dよりもトレーリング側の部分11eが、仮想の基準トロコイドVよりも外側に膨らんでいるが、その膨らんだ部分11eを摺動するアペックスシール19に作用する遠心力が比較的大きいので、アペックスシール19はその膨らんだ部分11eを確実に摺動する。
以上から、シール性を向上させることができ、ロータリーエンジン1の高出力化を図ることができる。
(実施形態4)
図7は、ロータハウジングの内周面の概略図である。
本実施形態は、実施形態1の変形例である。すなわち、図7に示すように、ロータハウジング10の内周面11は、トロコイド短軸Xよりも排気側(図7では下側)でかつトロコイド長軸Yよりも点火プラグ側(図7では右側)において、トロコイド短軸Xよりも僅かにリーディング側の部分からトロコイド長軸Yまでの部分11jが、仮想の基準トロコイドVよりも僅かに外側に膨らんでいる。その膨らんだ部分11jは、中央部が仮想の基準トロコイドVとの距離が最も大きく、両端部に行くに従って仮想の基準トロコイドVとの距離が小さくなる。その他の点に関しては、実施形態1とほぼ同様の構成である。
−効果−
以上により、本実施形態によれば、ロータハウジング10の内周面11は、トロコイド短軸Xよりも吸気側において、圧縮上死点近傍における作動室13を区画するロータ12の2頂点部12a,12bのうちトレーリング側の頂点部12aと対向する部分11aよりもリーディング側の部分11cが、仮想の基準トロコイドVよりも内側に窪んでいるので、その窪んだ部分11cが、これを摺動するアペックスシール19に近付く。そのため、その窪んだ部分11cによって、これを摺動するアペックスシール19に径方向内側向きの荷重が作用する。したがって、圧縮上死点近傍において、燃焼圧などによってロータ12が吸排気側に変位しても、アペックスシール19はその窪んだ部分11cを確実に摺動する。
また、ロータハウジング10の内周面11は、トロコイド短軸Xよりも吸気側において、圧縮上死点近傍における作動室13を区画するロータ12の2頂点部12a,12bのうちトレーリング側の頂点部12aと対向する部分よりもトレーリング側の部分11bが、仮想の基準トロコイドVよりも外側に膨らんでいるが、その膨らんだ部分11bを摺動するアペックスシール19に作用する遠心力が比較的大きいので、アペックスシール19はその膨らんだ部分11bを確実に摺動する。
以上から、シール性を向上させることができ、ロータリーエンジン1の高出力化を図ることができる。
本発明は、実施形態に限定されず、その精神又は主要な特徴から逸脱することなく他の色々な形で実施することができる。
このように、上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には何ら拘束されない。さらに、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
以上説明したように、本発明にかかるロータリーエンジンのハウジング構造は、シール性を向上させる用途等に適用できる。
本発明の実施形態に係るロータリーエンジンの概略側面図である。 サイドハウジングが取り外された状態のロータリーエンジンの正面図である。 ロータの頂点部付近の拡大図である。 ロータハウジングの内周面の概略図である。 ロータハウジングの内周面の概略図である。 ロータハウジングの内周面の概略図である。 ロータハウジングの内周面の概略図である。
符号の説明
1 ロータリーエンジン
10 フロントロータハウジング
11 内周面
12 ロータ
13 作動室
14 エキセントリックシャフト
15 吸気ポート
16 排気ポート
17 トレーディング側点火プラグ
18 リーディング側点火プラグ
19 アペックスシール
20 シール溝
21 スプリング
30 リアロータハウジング
V 仮想の基準トロコイド
X トロコイド短軸
Y トロコイド長軸

Claims (3)

  1. 略2節3葉トロコイド状の内周面を有するロータハウジング内を、3頂点部にアペックスシールがそれぞれ配設された略三角形状のロータが遊星回転運動するロータリーエンジンのハウジング構造であって、
    上記ロータハウジングの内周面は、トロコイド短軸よりも吸気側において、圧縮上死点近傍における作動室を区画するロータの2頂点部のうちトレーリング側の頂点部と対向する部分よりもトレーリング側の部分が、仮想の基準トロコイドよりも外側に膨らんでいる一方、該トレーリング側の頂点部と対向する部分よりもリーディング側の部分が、上記仮想の基準トロコイドよりも内側に窪んでいることを特徴とするロータリーエンジンのハウジング構造。
  2. 略2節3葉トロコイド状の内周面を有するロータハウジング内を、3頂点部にアペックスシールがそれぞれ配設された略三角形状のロータが遊星回転運動するロータリーエンジンのハウジング構造であって、
    上記ロータハウジングの内周面は、トロコイド短軸よりも排気側において、圧縮上死点近傍における作動室を区画するロータの2頂点部のうちリーディング側の頂点部と対向する部分よりもトレーリング側の部分が、仮想の基準トロコイドよりも外側に膨らんでいる一方、該リーディング側の頂点部と対向する部分よりもリーディング側の部分が、上記仮想の基準トロコイドよりも内側に窪んでいることを特徴とするロータリーエンジンのハウジング構造。
  3. 略2節3葉トロコイド状の内周面を有するロータハウジング内を、3頂点部にアペックスシールがそれぞれ配設された略三角形状のロータが遊星回転運動するロータリーエンジンのハウジング構造であって、
    上記ロータハウジングの内周面は、
    トロコイド短軸よりも吸気側において、圧縮上死点近傍における作動室を区画するロータの2頂点部のうちトレーリング側の頂点部と対向する部分よりもトレーリング側の部分が、仮想の基準トロコイドよりも外側に膨らんでいる一方、該トレーリング側の頂点部と対向する部分よりもリーディング側の部分が、上記仮想の基準トロコイドよりも内側に窪んでいて、
    トロコイド短軸よりも排気側において、圧縮上死点近傍における作動室を区画するロータの2頂点部のうちリーディング側の頂点部と対向する部分よりもトレーリング側の部分が、上記仮想の基準トロコイドよりも外側に膨らんでいる一方、該リーディング側の頂点部と対向する部分よりもリーディング側の部分が、上記仮想の基準トロコイドよりも内側に窪んでいることを特徴とするロータリーエンジンのハウジング構造。
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