JP4721214B2 - ピリジルメチルカルバミン酸エステル化合物及びピリジルメチルアミン化合物の製造方法 - Google Patents

ピリジルメチルカルバミン酸エステル化合物及びピリジルメチルアミン化合物の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、農薬・医薬の製造中間体等として有用な、ピリジルメチルカルバミン酸エステル化合物及びピリジルメチルアミン化合物を、簡便にかつ収率よく製造する方法に関する。
2−クロロ−5−ピリジルメチルカルバミン酸エステル等のピリジルメチルカルバミン酸エステル化合物は、2−クロロ−5−ピリジルメチルアミン等のピリジルメチルアミン化合物の製造中間体として有用である(特許文献1、2)。このピリジルメチルアミン化合物は、農薬・医薬の製造中間体である。
従来、ピリジルメチルカルバミン酸エステル化合物の製造方法としては、例えば、特許文献1,2に記載された、3−ピリジルメチルアミンを酸ハライド又は酸無水物と反応させる方法が知られている。しかし、この反応は比較的高価な3−ピリジルメチルアミンを出発原料に用いるものであり、製造コストの面から必ずしも有利な方法とはいえない。
また、特許文献3、4には、3−(クロロメチル)ピリジンを、水素化ナトリウム及びヨウ化カリウム又はヨウ化ナトリウム存在下で、カルバミン酸エステルと反応させる製造方法が記載されている。しかしながら、この方法は目的とする3−ピリジルメチルカルバミン酸エステル化合物の収率が極めて低いものであった。
特開平9−132565号公報 特開平9−194461号公報 EP0609625A1号公報 WO02/083143号公報
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたものであり、ピリジルメチルカルバミン酸エステル化合物及びピリジルメチルアミン化合物を、簡便にかつ収率よく製造する方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、ピリジルメチルカルバミン酸エステル化合物を、簡便にかつ収率よく製造することができれば、結果としてピリジルメチルアミン化合物を簡便にかつ収率よく製造することができると考え、前記特許文献3、4に記載された反応について鋭意研究した。その結果、下記式(I)で示されるピリジン化合物と、下記式(II)で示されるカルバミン酸エステル化合物とを、塩基及び相間移動触媒の存在下に反応させることにより、下記式(III)で示されるピリジルメチルカルバミン酸エステル化合物が収率よく得られることを見出し、本発明を完成するに到った。
かくして、本発明の第1によれば、式(I)
Figure 0004721214
(式中、Xは水素原子又はハロゲン原子を表し、Lはハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキルスルホニルオキシ基、炭素数1〜20のハロアルキルスルホニルオキシ基又は置換基を有していてもよいフェニルスルホニルオキシ基を表す。)で示されるピリジン化合物と、式(II)
Figure 0004721214
(式中、Rは、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、又は置換基を有していてもよいアラルキル基を表す。)で示されるカルバミン酸エステル化合物とを、塩基及び相間移動触媒の存在下に反応させることを特徴とする、式(III)
Figure 0004721214
(式中、R及びXは前記と同じ意味を表す。)で示されるピリジルメチルカルバミン酸エステル化合物の製造方法が提供される。
本発明のピリジルメチルカルバミン酸エステル化合物の製造方法においては、前記塩基として炭酸塩を用いることが好ましく、前記相間移動触媒として4級アンモニウム塩を用いることが好ましい。
本発明のピリジルメチルカルバミン酸エステル化合物の製造方法においては、前記式(I)で示されるピリジン化合物と前記式(II)で示されるカルバミン酸エステル化合物とを、非極性溶媒中で反応させることが好ましい。
本発明の第2によれば、式(I)
Figure 0004721214
(式中、Xは水素原子又はハロゲン原子を表し、Lはハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキルスルホニルオキシ基、炭素数1〜20のハロアルキルスルホニルオキシ基又は置換基を有していてもよいフェニルスルホニルオキシ基を表す。)で示されるピリジン化合物と、式(II)
Figure 0004721214
(式中、Rは、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、又は置換基を有していてもよいアラルキル基を表す。)で示されるカルバミン酸エステル化合物とを、塩基及び相間移動触媒の存在下に反応させることにより、式(III)
Figure 0004721214
(式中、X及びRは前記と同じ意味を表す。)で示されるピリジルメチルカルバミン酸エステル化合物を得る工程と、前記式(III)で示されるピリジルメチルカルバミン酸エステル化合物を加水分解する工程とを有する、式(IV)
Figure 0004721214
(式中、Xは前記と同じ意味を表す。)で示されるピリジルメチルアミン化合物の製造方法が提供される。
本発明のピリジルメチルアミン化合物の製造方法においては、前記塩基として炭酸塩を用いることが好ましく、前記相間移動触媒として4級アンモニウム塩を用いることが好ましい。
本発明のピリジルメチルアミン化合物の製造方法においては、前記式(I)で示されるピリジン化合物と前記式(II)で示されるカルバミン酸エステル化合物とを、非極性溶媒中で反応させることが好ましく、前記式(III)で示されるピリジルメチルカルバミン酸エステル化合物を、酸性水溶液中で加水分解することが好ましい。
本発明の製造方法によれば、前記式(III)で示されるピリジルメチルカルバミン酸エステル化合物及び前記式(IV)で示されるピリジルメチルアミン化合物を、簡便にかつ収率よく、すなわち、工業的に有利に製造することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
1)ピリジルメチルカルバミン酸エステル化合物の製造方法
本発明の前記式(III)で示されるピリジルメチルカルバミン酸エステル化合物(以下、「エステル化合物(III)」ということがある。)の製造方法は、前記式(I)で示されるピリジン化合物(以下、ピリジン化合物(I)ということがある。)と、前記式(II)で示されるカルバミン酸エステル化合物(以下、「エステル化合物(II)」ということがある。)とを、塩基及び相間移動触媒の存在下に反応させることを特徴とする。
(1)ピリジン化合物(I)
本発明の製造方法は、出発原料として前記式(I)で示されるピリジン化合物を用いる。
前記式(I)中、Xは水素原子;又はフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;を表す。なかでも、ハロゲン原子が好ましく、塩素原子が特に好ましい。
Lは、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキルスルホニルオキシ基、炭素数1〜20のハロアルキルスルホニルオキシ基、置換基を有していてもよいフェニルスルホニルオキシ基を表す。
前記Lのハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。
前記炭素数1〜20のアルキルスルホニルオキシ基としては、例えば、メチルスルホニルオキシ基、エチルスルホニルオキシ基、n−プロピルスルホニルオキシ基等が挙げられる。
炭素数1〜20のハロアルキルスルホニルオキシ基としては、例えば、トリフルオロメチルスルホニルオキシ基等が挙げられる。
前記置換基を有していてもよいフェニルスルホニルオキシ基の置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;トリフルオロメチル基等のハロアルキル基;ニトロ基;等が挙げられる。また、フェニルスルホニルオキシ基は、同一又は相異なる2個以上の置換基をベンゼン環の任意の位置に有していてもよい。
前記置換基を有していてもよいフェニルスルホニルオキシ基の具体例としては、フェニルスルホニルオキシ基、4−メチルフェニルスルホニルオキシ基等が挙げられる。
ピリジン化合物(I)は、例えば、2−ハロゲノ−5−メチルピリジンをハロゲン化する方法(特開平5−230024号公報)や、2−ハロゲノ−5−ヒドロキシメチルピリジンとアルキルスルホニルハライド化合物又はアリールスルホニルハライド化合物とを、塩基の存在下に反応させる方法等により製造することができる。
ピリジン化合物(I)の具体例としては、3−(フルオロメチル)ピリジン、3−(クロロメチル)ピリジン、3−(ブロモメチル)ピリジン、[(ピリジン−3−イル)メチル]メチルスルホネート、[(ピリジン−3−イル)メチル]エチルスルホネート、[(ピリジン−3−イル)メチル]n−プロピルスルホネート、[(ピリジン−3−イル)メチル]フェニルスルホネート、2−フルオロ−5−(フルオロメチル)ピリジン、5−クロロメチル−2−フルオロピリジン、5−ブロモメチル−2−フルオロピリジン、[(2−フルオロピリジン−5−イル)メチル]メチルスルホネート、[(2−フルオロピリジン−5−イル)メチル]エチルスルホネート、(2−フルオロピリジン−5−イル)n−プロピルスルホネート、[(2−フルオロピリジン−5−イル)メチル]フェニルスルホネート、2−クロロ−5−(フルオロメチル)ピリジン、2−クロロ−5−(クロロメチル)ピリジン、5−ブロモメチル−2−クロロピリジン、[(2−クロロピリジン−5−イル)メチル]メチルスルホネート、[(2−クロロピリジン−5−イル)メチル]エチルスルホネート、[(2−クロロピリジン−5−イル)メチル]n−プロピルスルホネート、[(2−クロロピリジン−5−イル)メチル]フェニルスルホネート、2−ブロモ−5−(フルオロメチル)ピリジン、2−ブロモ−5−(クロロメチル)ピリジン、2−ブロモ−5−(ブロモメチル)ピリジン、[(2−ブロモピリジン−5−イル)メチル]メチルスルホネート、[(2−ブロモピリジン−5−イル)メチル]エチルスルホネート、[(2−ブロモピリジン−5−イル)メチル]n−プロピルスルホネート、[(2−ブロモピリジン−5−イル)メチル]フェニルスルホネート等が挙げられる。
これらの中でも、ピリジン化合物(I)としては、Lがハロゲン原子である化合物が好ましく、Lが塩素原子である化合物がより好ましく、2−クロロ−5−(クロロメチル)ピリジンが特に好ましい。
(2)エステル化合物(II)
本発明の製造方法は、前記ピリジン化合物(I)と前記式(II)で示されるカルバミン酸エステル化合物とを反応させるものである。
前記式(II)中、Rは、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基又は置換基を有していてもよいアラルキル基を表す。
前記置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。
前記置換基を有していてもよいアリール基のアリール基としては、例えば、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等が挙げられる。
前記置換基を有していてもよいアラルキル基のアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、2−フェニルエチル基、3−フェニルプロピル基等が挙げられる。
前記置換基を有していてもよい(炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アラルキル基)の置換基としては、ニトロ基;シアノ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基等のアルコキシ基;メチルチオ基、エチルチオ基等のアルキルチオ基;メチルスルホニル基、エチルスルホニル基等のアルキルスルホニル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;フェニル基、4−クロロフェニル基、2−メチルフェニル基等の置換基を有していてもよいフェニル基;等が挙げられる。これらの置換基の置換位置は特に制限されず、また、同一若しくは相異なる2個以上の置換基が結合していてもよい。
エステル化合物(II)の具体例としては、カルバミン酸メチル、カルバミン酸エチル、カルバミン酸プロピル、カルバミン酸イソプロピル、カルバミン酸ブチル、カルバミン酸tert−ブチル、カルバミン酸ペンチル、カルバミン酸ヘキシル、カルバミン酸フルオロメチル、カルバミン酸メトキシメチル、カルバミン酸メチルチオメチル、カルバミン酸メトキシカルボニルメチル、カルバミン酸フェニル、カルバミン酸2−フルオロフェニル、カルバミン酸4−メチルフェニル、カルバミン酸ベンジル、カルバミン酸4−メチルベンジル等が挙げられる。
これらの中でも、入手容易性、反応収率及び生産コスト等の観点から、前記式(II)中、Rが炭素数1〜20のアルキル基であるカルバミン酸エステル化合物が好ましく、Rが1〜10のアルキル基であるカルバミン酸エステル化合物がより好ましく、Rが1〜6のアルキル基であるカルバミン酸エステル化合物がさらに好ましく、カルバミン酸メチル、カルバミン酸エチル、カルバミン酸プロピル、カルバミン酸イソプロピル、カルバミン酸ブチル又はカルバミン酸tert−ブチルが特に好ましい。
エステル化合物(II)は、市販されているものをそのまま用いることができるが、例えば、炭酸エステル又はクロロギ酸エステルとアンモニアとを反応させる方法や、アルコールと尿素とを加圧下に加熱して反応させる方法等により製造したものを用いることもできる。
エステル化合物(II)の使用量は、ピリジン化合物(I)1モルに対して、通常0.1〜20モル、好ましくは1〜3モルである。
(3)塩基
本発明の製造方法は、前記ピリジン化合物(I)とエステル化合物(II)とを、塩基の存在下に反応させるものである。
用いる塩基としては特に制限はなく、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等の炭酸塩;水素化ナトリウム、水素化カルシウム等の水素化物;ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、マグネシウムメトキシド等の金属アルコキシド;トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン等の有機塩基;等が挙げられる。
これらの中でも、収率よく目的とするエステル化合物(III)が得られることから、炭酸塩の使用が好ましく、炭酸ナトリウムの使用が特に好ましい。
塩基の使用量は、エステル化合物(II)1モルに対して、通常0.1〜10モル、好ましくは、0.5〜2モルである。
(4)相間移動触媒
本発明の製造方法は、前記ピリジン化合物(I)とエステル化合物(II)とを、塩基及び相間移動触媒の存在下に反応させることを特徴とする。相間移動触媒の存在下に、ピリジン化合物(I)とエステル化合物(II)とを反応させることにより、これらの化合物の反応性が著しく高められ、収率よく目的とするエステル化合物(III)を得ることができる。
本発明に用いる相間移動触媒としては特に制限されず、例えば、4級アンモニウム塩;テトラブチルホスホニウムクロライド、テトラブチルホスホニウムブロマイド、ベンジルトリメチルホスホニウムクロライド、ベンジルトリメチルホスホニウムブロマイド等のホスホニウム塩等の4級ホスホニウム塩;12−クラウン−4,18−クラウン−6、ベンゾ−18−クラウン−6等の大環状ポリエーテル類;等が挙げられる。これらの中でも、より収率よく目的とするエステル化合物(III)を得ることができることから、4級アンモニウム塩の使用が好ましい。
4級アンモニウム塩の具体例としては、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラn−プロピルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリプロピルアンモニウムクロライド等の塩化物;テトラメチルアンモニウムブロマイド、テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラn−プロピルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリエチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリプロピルアンモニウムブロマイド等の臭化物;テトラメチルアンモニウムアイオダイド、テトラエチルアンモニウムアイオダイド、テトラn−プロピルアンモニウムアイオダイド、ベンジルトリメチルアンモニウムアイオダイド、ベンジルトリエチルアンモニウムアイオダイド、ベンジルトリプロピルアンモニウムアイオダイド等のヨウ化物;等が挙げられる。
相間移動触媒の使用量は、ピリジン化合物(I)1モルに対して、通常0.005モル〜0.5モル、好ましくは0.01〜0.25モルである。この範囲で相間移動触媒を用いることにより、収率よく目的物を得ることができる。
(5)ピリジン化合物(I)とエステル化合物(II)との反応
ピリジン化合物(I)とエステル化合物(II)との反応は、通常有機溶媒中で行われる。用いる有機溶媒としては、反応に不活性なものであれば特に制限されず、脂肪族炭化水素系溶媒、脂環式炭化水素系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒等の非極性溶媒;ケトン系溶媒、エーテル系溶媒等の極性溶媒;のいずれも使用することができる。
脂肪族炭化水素系溶媒としては、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン等を、脂環式炭化水素系溶媒としては、シクロペンタン、シクロヘキサン等を、芳香族炭化水素系溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン等を、ケトン系溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等を、エーテル系溶媒としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン等を、それぞれ例示することができる。これらの溶媒は1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、収率よく目的物が得られることや取り扱い性に優れることなどの理由から、非極性溶媒の使用が好ましく、芳香族炭化水素系溶媒の使用がより好ましい。
反応温度は、通常、室温から用いる溶媒の沸点までの温度範囲、好ましくは100〜120℃である。反応時間は、通常数分から数日間、好ましくは1〜24時間である。反応の終了は、例えば、反応液をサンプリングして、薄層クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー等の公知の分析手段によって確認することができる。
反応終了後、通常の後処理操作により、目的とするエステル化合物(III)を単離することができる。
得られるエステル化合物(III)の構造は、H−NMR、13C−NMR、IRスペクトル、マススペクトル、元素分析等の公知の分析手段により確認することができる。
エステル化合物(III)の具体例としては、N−[(2−クロロピリジン−5−イル)メチル]カルバミン酸メチル、N−[(2−クロロピリジン−5−イル)メチル]カルバミン酸エチル、N−[(2−クロロピリジン−5−イル)メチル]カルバミン酸プロピル、N−[(2−クロロピリジン−5−イル)メチル]カルバミン酸イソプロピル、N−[(2−クロロピリジン−5−イル)メチル]カルバミン酸フェニル、N−[(2−クロロピリジン−5−イル)メチル]カルバミン酸ベンジル等が挙げられる。
以上のようにして得られるエステル化合物(III)は、前記式(IV)で示されるピリジルメチルアミン化合物の製造中間体として有用である。
2)ピリジルメチルアミン化合物の製造方法
本発明の前記式(IV)で示されるピリジルメチルアミン化合物(以下、「アミン化合物(IV)」ということがある。)の製造方法は、ピリジン化合物(I)と、エステル化合物(II)とを、塩基及び相間移動触媒の存在下に反応させることにより、エステル化合物(III)を得る工程(以下、工程(1)という。)と、得られたエステル化合物(III)を加水分解する工程(以下、工程(2)という。)とを有する。
工程(1)
工程(1)は、ピリジン化合物(I)とエステル化合物(II)とを、塩基及び相間移動触媒の存在下に反応させることにより、エステル化合物(III)を得る工程である。この工程(1)は、前記エステル化合物(III)の製造方法と同様にして行うことができる。
本発明においては、工程(1)の反応終了後、反応溶液からエステル化合物(III)を単離し、単離したエステル化合物(III)を次の工程(2)に用いることができるが、工程(1)で得られた反応液からエステル化合物(III)を単離することなく、溶液の状態で次の工程(2)の反応に供することもできる。
すなわち、エステル化合物(III)は極性物質であり、酸性の水に溶解する性質を有する。従って、例えば、ピリジン化合物(I)とエステル化合物(II)との反応を、トルエン等の水と混和しない有機溶媒(非極性溶媒)中で行い、得られる反応液から有機層を分取し、分取した有機層から、酸性水溶液を用いて抽出することにより、目的とするエステル化合物(III)の塩の水溶液を得ることができる。この水溶液は、そのまま次の工程(2)に供することができる。
工程(2)
工程(2)は、エステル化合物(III)を加水分解する工程である。
エステル化合物(III)の加水分解は、通常、酸性又は塩基性の水溶液中で行うことができるが、収率よく目的物が得られる点から、酸性水溶液中で行うのが好ましい。
用いる酸は特に制限されず、例えば、硫酸、塩酸、燐酸等の無機酸;酢酸、トリフルオロ酢酸等のカルボン酸;p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等のスルホン酸;等が挙げられる。
酸の使用量は、エステル化合物(III)1モルに対して、通常1〜100モルである。この範囲に酸の使用量を設定することにより、目的とするアミン化合物(IV)を収率よく得ることができる。
加水分解する温度は、通常、0〜100℃、好ましくは40〜100℃である。反応時間は、通常数分から30時間である。反応の終了は、例えば、反応液をサンプリングして、薄層クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー等の公知の分析手段によって確認することができる。
反応終了後は通常の後処理操作を行い、蒸留法、カラムクロマトグラフィー等の公知の精製手段により、目的とするアミン化合物(IV)を単離することができる。
得られるアミン化合物(IV)の構造は、H−NMR、13C−NMR、IRスペクトル、マススペクトル、元素分析等の公知の分析手段により確認することができる。
本発明によれば、アミン化合物(IV)を、簡便にかつ収率よく製造することができる。
本発明の製造方法により得られるアミン化合物(IV)は、農薬・医薬の製造中間体、例えば、イミダクロプリド、ニテンピラム、アセタミプリド等のクロロニコチル系農園芸用殺虫剤の活性成分の製造中間体として有用である。
次に、実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
なお、反応生成物の分析は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC、LC−10A型、(株)島津製作所製)を用いて行った。
(実施例1)N−[(2−クロロピリジン−5−イル)メチル]カルバミン酸メチル(III−1)の製造
Figure 0004721214
カルバミン酸メチル(II−1)0.75g(10mmol)のトルエン溶液(10ml)に、炭酸ナトリウム0.53g(5mmol)、テトラエチルアンモニウムクロライド(50mg)、及び2−クロロ−5−(クロロメチル)ピリジン(I−1)0.81g(5mmol)を順次添加した後、全容を6時間加熱還流した。反応液を室温に戻した後、水を加えたところ不溶物が析出した。この不溶物をろ別し、ろ液から、N−[(2−クロロピリジン−5−イル)メチル]カルバミン酸メチル(III−1)を含むトルエン層を分取した。このトルエン層を濃縮することにより、純度75%(HPLC面積百分率法)のN−[(2−クロロピリジン−5−イル)メチル]カルバミン酸メチル(III−1)0.87g(収率65%)を得た。
得られたN−[(2−クロロピリジン−5−イル)メチル]カルバミン酸メチル(III−1)のH−NMRデータを下記に示す。
H−NMR(CDCl,δppm);3.78(s,3H),4.36(bs,2H),5.37(bs,1H),7.30(d,1H),7.64(d,1H),8.31(s,1H)
(実施例2)N−[(2−クロロピリジン−5−イル)メチル]カルバミン酸エチル(III−2)の製造
Figure 0004721214
カルバミン酸エチル(II−2)0.89g(10mmol)のトルエン溶液(10ml)に、炭酸ナトリウム0.53g(5mmol)、テトラエチルアンモニウムクロライド50mg、及び2−クロロ−5−(クロロメチル)ピリジン(I−1)0.81g(5mmol)を順次添加した後、全容を6時間加熱還流した。反応液を室温に戻した後、水を加えたところ不溶物が析出した。この不溶物をろ別し、ろ液から、N−[(2−クロロピリジン−5−イル)メチル]カルバミン酸エチル(III−2)のトルエン溶液を分取した。このトルエン溶液を濃縮することにより、純度75%(HPLC面積百分率法)のN−[(2−クロロ−5−ピリジル)メチル]カルバミン酸エチル(III−2)1.08g(収率81%)を得た。
得られたN−[(2−クロロピリジン−5−イル)メチル]カルバミン酸エチル(III−2)のH−NMRデータを下記に示す。
H−NMR(CDCl,δppm);1.26(t,3H),4.12(q,2H),4.35(bs,2H),5.32(bs,1H),7.29(d,1H),7.64(d,1H),8.31(s,1H)
(実施例3)N−[(2−クロロピリジン−5−イル)メチル]カルバミン酸イソプロピル(III−3)の製造(1)
Figure 0004721214
カルバミン酸イソプロピル(II−3)4.12g(40mmol)のトルエン溶液(30ml)に、炭酸ナトリウム2.12g(20mmol)、テトラエチルアンモニウムクロライド0.2g及び2−クロロ−5−(クロロメチル)ピリジン(I−1)3.24g(20mmol)を順次添加した後、全容を14時間加熱還流した。反応液を室温に戻した後、水を加えたところ不溶物が析出した。この不溶物をろ別し、ろ液から、N−[(2−クロロピリジン−5−イル)メチル]カルバミン酸イソプロピル(III−3)のトルエン溶液を分取した。このトルエン溶液を濃縮することにより、純度75%(HPLC面積百分率法)のN−[(2−クロロピリジン−5−イル)メチル]カルバミン酸イソプロピル(III−3)3.79g(収率83%)を得た。
得られたN−[(2−クロロピリジン−5−イル)メチル]カルバミン酸イソプロピル(III−3)のH−NMRデータを下記に示す。
H−NMR(CDCl,:δppm);1.23(d,6H),4.34(bs,2H),4.93(m,1H),5.26(bs,1H),7.30(d,1H),7.63(d,1H),8.31(s,1H)
(比較例1)N−[(2−クロロピリジン−5−イル)メチル]カルバミン酸イソプロピルの製造(2)
カルバミン酸イソプロピル1.03g(10mmol)のトルエン溶液(5ml)に、炭酸ナトリウム0.53g(5mmol)及び2−クロロ−5−(クロロメチル)ピリジン3.24g(5mmol)を添加した後、全容を3時間加熱還流した。HPLCの分析の結果、目的物であるN−[(2−クロロピリジン−5−イル)メチル]カルバミン酸イソプロピルを示すピークは何ら確認できなかった。
(比較例2)N−[(2−クロロピリジン−5−イル)メチル]カルバミン酸イソプロピルの製造(3)
カルバミン酸イソプロピル1.03g(10mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド(20ml)溶液に、炭酸カリウム3.04g(22mmol)及び2−クロロ−5−(クロロメチル)ピリジン3.22g(20mmol)を添加した後、全容を100℃にて2時間加熱した。HPLCの分析の結果、目的物であるN−[(2−クロロピリジン−5−イル)メチル]カルバミン酸イソプロピルを示すピークがHPLC面積百分率法で54%確認できたものの、その他の化合物のピークが多く認められた。
(実施例4)(2−クロロピリジン−5−イル)メチルアミン(IV−1)の製造
Figure 0004721214
カルバミン酸イソプロピル(II−3)3.10g(30mmol)のトルエン溶液(30ml)に、炭酸ナトリウム2.12g(20mmol)及びテトラエチルアンモニウムクロライド0.2gを順次加えた。この溶液に、2−クロロ−5−(クロロメチル)ピリジン(I−1)の49%トルエン溶液6.67g(20mmol)を加熱還流下、1時間30分をかけて滴下し、滴下終了後さらに7時間30分加熱還流した。反応液を室温に戻した後、反応液に水を加え、トルエン層を分取した。トルエン層に濃塩酸12.5mlを加えて抽出し、N−[(2−クロロピリジン−5−イル)メチル]カルバミン酸イソプロピル(III−3)の塩酸塩を含む水層を分取した。
分取した水層を95℃にて3時間処理し、目的とする(2−クロロピリジン−5−イル)メチルアミン(IV−1)の塩酸塩を含む水溶液を得た。この水溶液に28%水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを1.5に調整し、水不溶物をトルエンにて抽出除去した。このようにして得られた水溶液に28%水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH13とし、クロロホルムにて抽出し、クロロホルム層を分取した。分取したクロロホルム層を濃縮することにより、(2−クロロピリジン−5−イル)メチルアミン(IV−1)1.99g(収率70%、2工程)を得た。
得られた(2−クロロピリジン−5−イル)メチルアミン(IV−1)のH−NMRデータを下記に示す。
H−NMR(CDCl,δppm);1.46(bs,2H),3.94(s,2H),7.30(d,1H),7.68(d,1H),8.34(s,1H)

Claims (5)

  1. 式(I)
    Figure 0004721214
    (式中、Xは水素原子又はハロゲン原子を表し、Lはハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキルスルホニルオキシ基、炭素数1〜20のハロアルキルスルホニルオキシ基、又は、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロアルキル基及びニトロ基から選ばれる置換基を有していてもよいフェニルスルホニルオキシ基を表す。)で示されるピリジン化合物と、式(II)
    Figure 0004721214
    (式中、Rは、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アルコキシカルボニル基、フェニル基、4−クロロフェニル基及び2−メチルフェニル基から選ばれる置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、
    ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アルコキシカルボニル基、フェニル基、4−クロロフェニル基及び2−メチルフェニル基から選ばれる置換基を有していてもよいアリール基、又は、
    ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アルコキシカルボニル基、フェニル基、4−クロロフェニル基及び2−メチルフェニル基から選ばれる置換基を有していてもよいアラルキル基
    を表す。)で示されるカルバミン酸エステル化合物とを、炭酸塩及び4級アンモニウム塩の存在下、芳香族炭化水素系溶媒中で反応させることを特徴とする、式(III)
    Figure 0004721214
    (式中、R及びXは前記と同じ意味を表す。)で示されるピリジルメチルカルバミン酸エステル化合物の製造方法。
  2. 式(II)で示されるカルバミン酸エステル化合物の使用量が、式(I)で示されるピリジン化合物1モルに対して、1〜3モルの範囲である請求項1に記載のピリジルメチルカルバミン酸エステル化合物の製造方法。
  3. 式(I)
    Figure 0004721214
    (式中、Xは水素原子又はハロゲン原子を表し、Lはハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキルスルホニルオキシ基、炭素数1〜20のハロアルキルスルホニルオキシ基、又は、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロアルキル基及びニトロ基から選ばれる置換基を有していてもよいフェニルスルホニルオキシ基を表す。)で示されるピリジン化合物と、式(II)
    Figure 0004721214
    (式中、Rは、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アルコキシカルボニル基、フェニル基、4−クロロフェニル基及び2−メチルフェニル基から選ばれる置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、
    ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アルコキシカルボニル基、フェニル基、4−クロロフェニル基及び2−メチルフェニル基から選ばれる置換基を有していてもよいアリール基、又は、
    ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アルコキシカルボニル基、フェニル基、4−クロロフェニル基及び2−メチルフェニル基から選ばれる置換基を有していてもよいアラルキル基
    を表す。)で示されるカルバミン酸エステル化合物とを、炭酸塩及び4級アンモニウム塩の存在下、芳香族炭化水素系溶媒中で反応させることにより、式(III)
    Figure 0004721214
    (式中、X及びRは前記と同じ意味を表す。)で示されるピリジルメチルカルバミン酸エステル化合物を得る工程と、前記式(III)で示されるピリジルメチルカルバミン酸エステル化合物を加水分解する工程とを有する、式(IV)
    Figure 0004721214
    (式中、Xは前記と同じ意味を表す。)で示されるピリジルメチルアミン化合物の製造方法。
  4. 前記式(III)で示されるピリジルメチルカルバミン酸エステル化合物を、酸性水溶液中で加水分解することを特徴とする請求項3に記載のピリジルメチルアミン化合物の製造方法。
  5. 式(II)で示されるカルバミン酸エステル化合物の使用量が、式(I)で示されるピリジン化合物1モルに対して、1〜3モルの範囲である請求項3または4に記載のピリジルメチルアミン化合物の製造方法。
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