JP4720043B2 - エアインパクトドライバの安全装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、誤操作によるエアインパクトドライバの起動を防止する安全装置に関するものであり、特に、空気圧回路にて構成したエアインパクトドライバの安全装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
石膏ボード等の建築材のネジ止め用に提供されているエアインパクトドライバは、釘打ち機と同じくコンタクトアームによる機械式安全装置を装備している。コンタクトアームは、エアインパクトドライバのノーズ及びシリンダハウジングの外形に沿わせてクランク形に成形されたアームであり、ノーズと平行にスライド自在であって、その先端はノーズよりも先方へ突出し、他端はエアインパクトドライバ本体のトリガレバーの前面に達している。
【0003】
トリガレバーには揺動自在なフリーアームが取付けられていて、コンタクトアームをエアインパクトドライバ本体側へ押込むと、トリガレバーに取付けられているフリーアームの先端部がコンタクトアームに押されてトリガ弁のステムに接近する。この状態でトリガレバーを引くとトリガレバーとともにフリーアームが先端部を支点としてトリガ弁の方向へ回動し、トリガ弁のステムがフリーアームに押されてエアインパクトドライバが起動する。また、先にトリガレバーを引いてからコンタクトアームをネジ締め対象面に押し付けても、前述した動作と同様にフリーアームがトリガ弁のステムを押してエアインパクトドライバが起動する。
【0004】
このように、トリガレバーとコンタクトアームとが協働してトリガ弁をオンさせるように構成されていて、トリガレバーのみを操作した場合はフリーアームがトリガ弁のステムの位置まで達せず、エアインパクトドライバを起動させることができないようにしてトリガレバーの誤操作によるエアインパクトドライバの起動を防止している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従来の機械式安全機構は、コンタクトアームがシリンダハウジングの側面を通っているので、エアインパクトドライバ全体の幅が広くなり、隅部や幅が狭隘な場所へネジを打込むことが困難な場合がある。また、コンタクトアームをスライドさせてトリガレバーに取付けてあるフリーアームの先端を押し上げ、さらにトリガレバーを引いてフリーアーム全体を移動させることによりトリガ弁のステムを押す構成においては、コンタクトアームの押込みストロークが長くなって操作性が良好ではなく、また、1サイクルの作業の迅速性に欠けるという問題がある。
【0006】
さらに、他の問題としては長いコンタクトアームを支持するスライドガイドとコンタクトアームとの間に、ネジ締め時に生じる石膏粉が詰まってコンタクトアームがスライドしなくなることがあり、コンタクトアームが押込み位置から初期位置へ戻らなくなった場合は、トリガレバーを誤操作したときにエアインパクトドライバが起動してしまい、安全機構として機能しないという問題がある。
【0007】
そこで、隅部や狭隘な場所へのネジ締めの困難性ならびに全般的な作業性を改善するとともに安全性を向上させたエアインパクトドライバを提供するために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明は上記課題を解決することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この発明は、上記目的を達成するために提案するものであり、エアインパクトドライバのノーズにスライド自在なコンタクトノーズを装着し、コンタクトノーズのスライド運動によって切換え操作されるコンタクト弁を設け、トリガレバーによって操作するトリガ弁と前記コンタクト弁とによってエアインパクトドライバの起動制御弁を制御する空気圧論理回路を構成し、コンタクトノーズを押込み、且つトリガレバーを引いてトリガ弁とコンタクト弁とをオン位置に切換えたときにエアインパクトドライバが起動する論理構成としたエアインパクトドライバの安全装置を提供するものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の一形態を図に従って詳述する。図1はエアインパクトドライバ1を示し、上からエアモータハウジング2、クラッチハウジング3、シリンダハウジング4、ノーズ5を一列に連結し、クラッチハウジング3から直角方向へ延びるグリップ6を取付けた筐体構造となっている。図示は省略するが、一般の空気圧工具と同様にグリップ6の端部にエアプラグが取付けられており、エアプラグへエアホースを接続してエアコンプレッサからグリップ6内のエアチャンバ7へ高圧空気を供給する。グリップ6の基部にはトリガ弁8及びトリガレバー9が設けられていて、トリガレバー9を操作してトリガ弁8を開閉することにより、エアインパクトドライバ1の起動及び停止を行う。
【0010】
ノーズ5の背面(図において右)にはバネオフセット型エアシリンダ10とそのピストンロッドに連結された送り爪11からなる公知の連結ネジ送り装置が設けられており、エアインパクトドライバ1の1サイクルの動作に連動して送り爪11が後退及び前進することにより連結ネジマガジン(図示せず)内の連結ネジをノーズ5内へ送り込む。尚、図中右上のA部はトリガ弁8の部分を右から見た断面図、左下のB部はノーズ5に装備されるコンタクトノーズ12の部分を左から見た断面図であり、空気配管を鎖線で示している。
【0011】
シリンダハウジング4に内蔵したエアシリンダ13のピストン14は、前面(図において下)にドライバビット15が取付けられていて、背面(図において上)に六角シャフト16が取付けられている。クラッチハウジング3には遠心噛合い式のインパクト機構17が内蔵されており、中心に配置されている水平断面が蝶型の従動回転体18(以下、アンビルという)の中心の六角穴を六角シャフト16が貫通している。インパクト機構17の上に配置したエアモータ19のロータ20には、六角シャフト16よりも径の大きい中心孔を設けてあり、六角シャフト16の上部は中心孔内へ進入している。ピストン14とドライバビット15と六角シャフト16は、インパクト機構17のアンビル18とともに軸回りに回転し、且つエアシリンダ13内を昇降自在となっている。
【0012】
エアモータ19とインパクト機構17によるインパクト動作は周知のものであり、エアモータ19のロータ20はインパクト機構17のアウターロータ21に結合されていて、両者は一体に回転する。図2(a)に示すように、アウターロータ21にはレバー式のハンマ21aが揺動自在に取付けられている。アウターロータ21が図において時計方向へ回転を開始すると、ハンマ21aは静止慣性によって回転方向後ろ側が回転中心方向へ回り、(b)に示すように後ろ側角部がアンビル18に接触し、(c)に示すようにアンビル18の凸部に乗り上げて起動時とは逆に外側へ押出される。これにより、(d)に示すように回転方向前側の角部が回転中心方向へ回ってアンビル18の凸部に噛合い、アンビル18に衝撃を与えて回転させる。そして、アンビル18が回転することにより、(e)に示すようにハンマ21aの前側角部がアンビル18から外れ、(b)に示すように後ろ側角部がアンビル18に接触する。以下、ハンマ21aがスイングする(b)から(e)のサイクルを高速で循環してアンビル18に回転方向の打撃を連続して加え、六角シャフト16及びピストン14とドライバビット15とを回転させる。
【0013】
次に、図1のコンタクトノーズ12を説明する。ノーズ5の先端部外周面に嵌合しているコンタクトノーズ12は、ノーズ5に対して上方へスライドすることができる。コンタクトノーズ12には上方へ向けてロッド22が取付けられており、ロッド22の先端はシリンダハウジング4の下部に設けたコンタクト弁23のロッドガイド穴に入り、ロッドガイド穴内のステム24に接している。
【0014】
コンタクトノーズ12の前面の中央にはストロ−ク調節ダイアル25が取付けられており、ノーズ5に形成したストッパー26がストロ−ク調節ダイアル25の上方に位置している。ストロ−ク調節ダイアル25の裏面には回転角度によって回転中心からの半径が段階的(図示例では8段階)に変化するカム部27が形成されている。ストロ−ク調節ダイアル25の裏面の穴に挿入したバネ(図示せず)とボール28、及びコンタクトノーズ12の前面に環状に配列したボール受け穴29とによって8段階のクリックストップ機構を形成し、ストロ−ク調節ダイアル25が一定の回転角度毎に固定されるようにしている。
【0015】
ノーズ5に設けたストッパー26は、ストロ−ク調節ダイアル25のカム部27の外周面に対向していて、コンタクトノーズ12を上方へスライドさせると、カム部27の外周面がストッパー26に当たってコンタクトノーズ12が停止する。前述したように、ストローク調節ダイアル25の回転角度によってストッパー26に当たるカム部27の半径が異なるので、ストローク調節ダイアル25を任意のクリック位置へ回転することによってコンタクトノーズ12の上方へのスライドストロークを8段階に調節でき、これによりネジの締込み深さを調節することができる。
【0016】
続いて、エアインパクトドライバ1の空気圧回路及び動作行程について説明する。図1は待機状態を示し、トリガ弁8のステム30はバネにより閉位置に下降していて、ステム30と同軸のポペット31はバネと下面に作用する空気圧とによって上昇している。
【0017】
エアモータ19の吸気ポート32にエアモータ切換え弁33が接続されており、エアモータ切換え弁33の入力ポート34はトリガ弁8の上部出力ポート35へ接続し、上部パイロットポート36は、A部に示すトリガ弁8の上部出力ポート37へ接続し、下部パイロットポート38はエアモータ制御用パイロット弁39へ接続している。
【0018】
エアモータ制御用パイロット弁39の上部パイロットポート40と、その左のピストン制御用パイロット弁41の上部パイロットポート42は、A部に示すトリガ弁8の上部出力ポート37へ接続されている。
エアシリンダ13の上部ポート43と、連結ネジ送り装置のバネオフセット型エアシリンダ10の前部ポート44は、ピストン制御用パイロット弁41の下部ポート45へ接続されており、エアシリンダ13の下部ポート46はA部に示すトリガ弁8の下部ポート47へ接続されている。
【0019】
シリンダハウジング4の下部に配置したコンタクト弁23の下部ポート48は、ピストン制御用パイロット弁41の上部ポート49へ接続されており、コンタクト弁23の上部ポート50は、A部に示すエアチャンバ接続ポート51へ接続されている。
コンタクト弁23の下部ポート48と、コンタクト弁23の隣に配置した小型のポペット弁52は、コンタクト弁23の外周の隙間を通じて連通しており、ポペット弁52はエアモータ制御用パイロット弁39の上部ポート53へ通じる通路54を開閉する。
【0020】
図1に示すように、トリガ弁8が閉位置であってコンタクトノーズ12が下降した待機位置にある状態においては、エアチャンバ7内の高圧空気がトリガ弁8の下部ポート47からエアシリンダ13の下部ポート46を通じて下部空気室に供給され、ピストン14を上部待機位置へ押し上げている。
【0021】
図3はコンタクトノーズ12をネジ締め対象面に当てて押込んだ状態を示し、コンタクトノーズ12のロッド22によりコンタクト弁23のスプールが押し上げられて上部ポート50と下部ポート48が連通し、下部ポート48を通じてピストン制御用パイロット弁41の空気室へ圧力空気が供給されてスプールが上昇し、上部ポート49と下部ポート45を遮断している。また、これと同時に、圧力空気がコンタクト弁23の外周の通路を通じてポペット弁52を押し上げ、通路54を通じてエアモータ制御用パイロット弁39の空気室に圧力空気が供給され、スプールが上昇して上部ポート53と下部ポート55を遮断した状態を維持している。
【0022】
続いて、図4に示すようにトリガレバー9を引くと、トリガ弁8のステム30が上昇してトリガ弁8の上部ポート35,37とエアチャンバ7が連通するとともに、ポペット31の下面に作用している圧力空気がステム30の周囲から下方へ向かって排気されてポペット31が下降し、エアシリンダ13の下部空気室の空気がトリガ弁8を通じて大気へ排出される。
【0023】
そして、トリガ弁8の上部ポート35を通じてエアモータ切換え弁33の入力ポート34へ圧力空気が供給されるとともに、エアモータ切換え弁33の上部パイロットポート36と、エアモータ制御用パイロット弁39のパイロットポート40と、ピストン制御用パイロット弁41のパイロットポート42とにパイロット圧がかかる。これにより、エアモータ切換え弁33のスプールと、エアモータ制御用パイロット弁39のスプールと、ピストン制御用パイロット弁41のスプールとが下降し、シリンダハウジング4の下部にあるコンタクト弁23の下部ポート48からピストン制御用パイロット弁41を通じてエアシリンダ13の上部空気室に圧力空気が供給され、ピストン14とドライバビット15及び六角シャフト16が下降を開始する。
【0024】
また、エアモータ制御用パイロット弁39の下部ポート55を通じてエアモータ切換え弁33の下部パイロットポート38へ圧力空気が供給され、エアモータ切換え弁33のスプール56が上昇し、ピストン14の下降後にエアモータ19が起動してピストン14とドライバビット15及び六角シャフト16が回転を開始する。エアモータ19が起動すると、インパクト機構17の高速インパクト動作によりアンビル18及び六角シャフト16、ピストン14、ドライバビット15が回転し、ネジがネジ締め対象物に締結される。
【0025】
図5はネジ締め完了状態を示し、ピストン14が可動範囲の下端に達してエアシリンダ13内のバンパー57と底部のポペット弁52を押し下げる。ポペット弁52が下降することにより、エアモータ制御用パイロット弁39からエアモータ切換え弁33の下部空気室へ供給されている圧力空気が、ポペット弁52及びエアシリンダの下部ポート46を通じてトリガ弁8から排出される。これにより、エアモータ切換え弁33のスプール56の下面に作用している空気圧が低下してスプール56が下降し、エアモータ19の入力ポート32とエアチャンバ7が遮断されてエアモータ19が回転を停止する。
【0026】
ネジ締め完了後にトリガレバー9をオフするとトリガ弁8のステム30が初期位置へ下降し、ポペット31の下面に圧力空気が入ってポペット31が上昇し、エアチャンバ7からトリガ弁8の下部ポート47を通じてエアシリンダ13の下部空気室へ圧力空気が供給され、ピストン14が上昇して初期位置へ戻る。
【0027】
次に、図1に示した初期状態でトリガレバー9のみをオン操作した場合について説明する。トリガレバー9の操作によりトリガ弁8がオンすると、エアモータ切換え弁33とエアモータ制御用パイロット弁39とピストン制御用パイロット弁41のそれぞれの上部パイロットポート36, 40, 42にパイロット圧がかかり、エアモータ制御用パイロット弁39とピストン制御用パイロット弁41のそれぞれのスプールが開位置に下降する。
【0028】
このとき、コンタクトノーズ12によって操作されるコンタクト弁23は初期状態にあるため、エアモータ制御用パイロット弁39とピストン制御用パイロット弁41へ圧力空気が供給されず、エアシリンダ13は停止状態のままである。また、エアモータ制御用パイロット弁39からエアモータ切換え弁33の下部パイロットポート38に圧力空気が供給されないため、上部パイロットポート36に加わるパイロット圧によりエアモータ切換え弁33のスプール56が下降し、エアモータ19の入力ポート32とエアチャンバ7を遮断するのでエアモータ19は起動せず、従来の機械式安全装置と同様にトリガレバーの誤操作によるエアインパクトドライバの起動を防止できる。
【0029】
尚、この発明は上記の実施形態に限定するものではなく、この発明の技術的範囲内において種々の改変が可能であり、この発明がそれらの改変されたものに及ぶことは当然である。
【0030】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のエアインパクトドライバの安全装置は、トリガレバーによって操作するトリガ弁とコンタクトノーズによってスライド操作するコンタクト弁とによってエアインパクトドライバの起動制御弁をパイロット操作するように構成したので、従来の機械式安全装置におけるノーズからトリガレバーにいたる長いコンタクトアームが不要となり、エアインパクトドライバの幅を狭くすることができて、従来は作業が困難であった隅部や幅が狭隘な場所へも対応することができる。
【0031】
また、コンタクトノーズによってアームやレバー等の中継部材を動かすものとは異なり、コンタクトノーズが弁を操作する構成であるから、コンタクトノーズのストロークが極めて短くなり、操作性及び作業能率が向上する。
また、コンタクトノーズとコンタクト弁とを接近させて配置することにより、コンタクトノーズとコンタクト弁との連結部材を案内するガイドが不要となり、ガイド部分に石膏粉などが詰まってスライド不良となる虞も解消される等、種々の効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の一形態を示し、エアインパクトドライバの待機状態を示す断面図。
【図2】 (a)乃至(e)はインパクト機構の動作工程を示す断面図。
【図3】エアインパクトドライバのコンタクトノーズをオン操作した状態の断面図。
【図4】エアインパクトドライバのコンタクトノーズとトリガレバーをオン操作した状態の断面図。
【図5】エアインパクトドライバのネジ締め完了時の状態を示す断面図。
【符号の説明】
1 エアインパクトドライバ
5 ノーズ
8 トリガ弁
9 トリガレバー
12 コンタクトノーズ
13 エアシリンダ
14 ピストン
15 ドライバビット
16 六角シャフト
17 インパクト機構
19 エアモータ
22 ロッド
23 コンタクト弁
33 エアモータ切換え弁
39 エアモータ制御用パイロット弁
41 ピストン制御用パイロット弁
52 ポペット弁

Claims (1)

  1. エアインパクトドライバのノーズにスライド自在なコンタクトノーズを装着し、コンタクトノーズのスライド運動によって切換え操作されるコンタクト弁を設け、トリガレバーによって操作するトリガ弁と前記コンタクト弁とによってエアインパクトドライバの起動制御弁を制御する空気圧論理回路を構成し、コンタクトノーズを押込み、且つトリガレバーを引いてトリガ弁とコンタクト弁とをオン位置に切換えたときにエアインパクトドライバが起動する論理構成としたエアインパクトドライバの安全装置。
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