JP4719918B2 - レーザー光の波長変換法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、非線形光学結晶に入射レーザー光を多数回パスさせることによりレーザー光に対する波長変換効率を向上させることより入射レーザー光の第二高調波(光)、第三高調波(光)又は第四高調波(光)などの高次高調波(光)を発生させることに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来からレーザー光の第二高調波発生などの波長変換は、レーザー光を1つの非線形光学結晶にシングルパスさせることによって行なわれてきた。波長変換の代表的な従来例として、第二高調波発生の構成図を図1に示す。図1に示されるように、入射レーザー光1を1つの非線形光学結晶2にシングルパスさせると、その結晶を透過する波長変換されない入射レーザー光1とともに第二高調波(光)3が得られた。
【0003】
入射レーザー光の時間的、空間的な強度の不均一性や非線形光学結晶における位相不整合などのため、図1に示す従来法では、入射レーザー光は1つの非線形光学結晶をシングルパスしかできないので波長変換効率は通常50%程度である。従って約半分のレーザー光のエネルギーを波長変換に寄与させることができない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、レーザー光を複数の非線形光学結晶に多数回パスさせることにより効率良くレーザー光を波長変換する方法を提供することにある。
【0005】
【問題点を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明の波長変換法は、非線形光学結晶を2つ配置することを特徴としている。すなわち、非線形光学結晶を2つ配置することによって、1つ目の非線形光学結晶で波長変換されなかった入射レーザー光は2つ目の非線形光学結晶で波長変換される。その結果、入射レーザー光は効率良く波長変換に用いられる。
【0006】
すなわち、本発明の波長変換法は、2つの非線形光学結晶の光軸(e軸)を互いに垂直に配置することを特徴としている。すなわち、2つの非線形光学結晶のe軸を互いに垂直に配置することによって、1つ目の非線形光学結晶で発生した高調波は、2つ目の非線形光学結晶のe軸を透過しないので、2つ目の非線形光学結晶で元の入射レーザー光へと逆変換されることはない。その結果、入射レーザー光が効率良く波長変換される。
【0007】
また、本発明の波長変換法は、入射レーザー光に対して折り返し鏡と偏光素子を配置し、偏光の回転を利用することにより、2つの非線形光学結晶に入射レーザー光を多数回パスさせることを特徴としている。すなわち、入射レーザー光に対して折り返し鏡や偏光素子を配置し、偏光の回転を利用することによって、シングルパスでは変換されなかった入射レーザー光は反射され、2つの非線形光学結晶中を多数回パスする。その結果、入射レーザー光がより効率良く波長変換される。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の実施例のレーザー光の波長変換法について、図面を参照して説明する。ここでは、図1に示した従来と同様に第二高調波発生を例にとって説明する。図2に本発明の実施形態にかかる例としての第二高調波発生の構成図を示す。本発明の実施例は、偏光子4、折り返し鏡5、全反射鏡6、1/2波長板7、1/4波長板8及び2つの非線形光学結晶2、2から構成されている。折り返し鏡5は、入射レーザー光(基本波)1に対して高反射、第二高調波3に対して無反射のコーティングが施されている。紙面に対して水平面内で振動する基本波1は、偏光子4を透過し、折り返し鏡5で反射される。その後、基本波は、進相軸を水平方位から22.5度だけ傾けた1/2波長板7を透過するので、その振動面は水平方位から45度回転させられ、互いにe軸を垂直に配置したタイプII位相整合の非線形光学結晶2、2(一方のe軸は紙面に水平に、他方は紙面に垂直に配置)により第二高調波3へ変換される。発生した第二高調波3は、1/4波長板8、折り返し鏡5を透過して外部に出力される。
【0009】
このシングルパスでは変換されなかった基本波1は、進相軸を基本波1の振動面に対して45度傾けた1/4波長板8を透過し、折り返し鏡5で反射されてもう一度1/4波長板8を透過することにより、基本波1の振動方向は水平方位から135度回転させられる。この基本波は再度2つの非線形光学結晶に入射し波長変換される。発生した第二高調波3は1/2波長板7、折り返し鏡5を透過して外部に出力される。
【0010】
さらにこのダブルパスでは変換されなかった基本波1は、1/2波長板7を透過し、折り返し鏡5により反射され、偏光子4に至る。この偏光子4での基本波1の偏光状態は紙面に対して垂直の方向になるので、偏光子4及び全反射鏡6で反射され、もう一度同じパスを通り、合計4回2つの非線形光学結晶2中を伝搬することになる。
【0011】
従って、変換されなかった基本波1は合計8回非線形光学結晶2中を伝搬することができるので、効率の良い波長変換が可能となる。
以下に上述の第二高調波発生の他に良く用いられる例として第三及び四高調波発生についての応用例について示す。
【0012】
第三高調波発生については、図4に示すように、入射光として振動方向が互いに垂直な基本波1(図1で使用される)と第二高調波3(図1で発生した)とからなる入射レーザー光9を用い、そして非線形光学結晶としてe軸が互いに垂直なタイプII位相整合の結晶2(例えば、KDP:Potassium Dihydrogen Phosphate)とタイプIII位相整合の結晶10(例えば、LFM:Lithium Formate Monohydrate)とを用いる。基本波1をタイプII位相整合の結晶2のe軸に、第二高調波3をタイプIII位相整合の結晶10のe軸に合うように入射させることにより、本発明の波長変換法は第三高調波11の発生へ応用可能である。
【0013】
また、第四高調波発生については、図5に示すように、入射光として振動方向が互いに垂直な第二高調波3(図2で発生した)からなる入射レーザー光12を用い、そして非線形光学結晶としてe軸が互いに垂直なタイプI位相整合の結晶13、13(例えば、BBO:Beta−Barium Borate)を用いる。第二高調波3からなる入射レーザー光12をタイプI位相整合の結晶13、13のe軸に合うように入射させることにより、本発明の波長変換法は第四高調波14の発生へ応用可能である。
【0014】
【実施例】
以下に実際の実施例を揚げて本発明をより具体的に説明する。図2に示した構成で実施を行った。入射レーザー光には市販のランプ励起1064nmNd:YAGレーザー(Contiunuum Powerlite)を用いた。このレーザーの出力光は、パルス当たりのエネルギー〜1J、レーザー波長1064nm、パルス幅15ns(FWHM)、繰り返し率10Hz、ビーム径8.2mmで直線偏光で発振するという特徴を持つ。非線形光学結晶には、タイプII位相整合のKTP結晶(Potassium Taitaryl Phosphate)を用いた。KTP結晶(10mm×10mm×10mm)のレーザー光の入出射面は1064nmの波長(基本波波長)と532nmの波長(第二高調波波長)で無反射コーティングを施した。
【0015】
図3に入射レーザー光強度に対する第二高調波変換効率特性を示す。図中の白丸は1つの非線形光学結晶に入射レーザー光をシングルパスさせた場合(従来例)、黒丸は2つの非線形光学結晶に入射レーザー光を4パスさせた場合(実施例)の実験結果である。実施例の波長変換法を用いることにより、変換効率が向上し、この波長変換法の有用性が示される結果が得られた。
【0016】
【発明の効果】
本発明の波長変換法を用いることにより、非線形光学結晶に入射するレーザー光を効率良く波長変換することが可能となり、高出力の高調波光を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 波長変換の代表的な従来例としての第二高調波波長変換構成図を示す図である。
【図2】 本発明の実施形態にかかる例としての第二高調波波長変換構成図を示す図である。
【図3】 従来例と実施例における入射レーザー光強度に対する第二高調波変換効率特性を示す図である。
【図4】 本発明の実施形態にかかる例としての第三高調波波長変換構成図を示す図である。
【図5】 本発明の実施形態にかかる例としての第四高調波波長変換構成図を示す図である。
【符号の説明】
1 入射レーザー光(基本波)
2 タイプII位相整合の非線形光学結晶
3 第二高調波
4 偏光子
5 折り返し鏡
6 全反射鏡
7 1/2波長板
8 1/4波長板
9 振動方向が互いに垂直な基本波と第二高調波からなる入射レーザー光
10 タイプIII位相整合の非線形光学結晶
11 第三高調波
12 振動方向が互いに垂直な第二高調波からなる入射レーザー光
13 タイプI位相整合の非線形光学結晶
14 第四高調波

Claims (4)

  1. レーザー光の波長変換法であって、
    入射されたレーザー光の高次高調波を発生させる第1及び第2の非線形光学結晶であって、光軸(e軸)が互いに垂直になるように配置された、前記第1及び第2の非線形光学結晶と、
    前記入射レーザー光を反射し前記高次高調波を透過させる第1及び第2の折り返し鏡と、
    前記第1の折り返し鏡と前記第1の非線形光学結晶との間に配置され、かつ、進相軸が水平方位から22.5度傾けられた1/2波長板と、
    前記第2の折り返し鏡と前記第2の非線形光学結晶との間に配置され、かつ、進相軸が入射レーザー光の振動面に対して45度傾けられた1/4波長板と、
    を備えた波長変換装置において、
    偏光したレーザー光を前記第1の折り返し鏡に入射させ、
    前記第1の折り返し鏡により反射されたレーザー光を、前記1/2波長板を通して前記第1の非線形光学結晶を透過させることにより、前記レーザー光を波長変換して高次高調波を発生させ、
    前記第1の非線形光学結晶から出てきた、波長変換されなかったレーザー光と高次高調波を前記第2の非線形光学結晶を透過させることにより、該高次高調波の波長を変換することなく、前記レーザー光を波長変換して高次高調波を発生させ、
    前記第2の非線形光学結晶から出てきた、波長変換されなかったレーザー光と高次高調波を前記1/4波長板を通して前記第2の折り返し鏡に当て、前記レーザー光は、該第2の折り返し鏡により反射されて再度前記1/4波長板を通して前記第2及び第1の非線形光学結晶を透過し、前記高次高調波は前記第2の折り返し鏡を透過する、各工程を備え、
    前記第1及び第2の折り返し鏡の間で、波長変換されなかったレーザー光が反射を繰り返して前記第1及び第2の非線形光学結晶中を該レーザー光が複数回透過すると共に前記高次高調波は前記第1及び第2の折り返し鏡から出力されることを可能にすることによって、入射レーザー光に対する波長変換効率を向上させることを特徴とするレーザー光の波長変換法。
  2. 前記第2の非線形光学結晶で高次高調波を発生させる前記工程では、前記第1の非線形光学結晶で波長変換された光は前記第2の非線形光学結晶の光軸を透過しないので、前記第2の非線形光学結晶で入射レーザー光に逆変換されることはないことを特徴とする請求項1記載のレーザー光の波長変換法。
  3. 第1及び第2の非線形光学結晶として、タイプI、II及びIIIの位相整合の非線形光学結晶を用いることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のレーザー光の波長変換法。
  4. 第二、三、四などの高調波発生に対して応用できることを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項3記載のレーザー光の波長変換法。
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