半導体集積回路装置やプリント回路基板などの回路装置の電気的検査を行うには、回路基板の被検査電極と電気的検査装置(「チェッカー」ともいう)の検査電極とをそれぞれ対応させて正確に接続する必要がある。回路基板の電気的検査としては、一般に、全数にわたって、導体パターンの接続が設計通りかを検査する導通検査や、導体の導通抵抗、導体間の絶縁抵抗または特性インピーダンスを測定する電気検査が行われている。
近年、半導体パッケージの高密度実装化が進められるに伴って、半導体集積回路装置やプリント回路基板などの回路基板において、回路基板の中央部に機能素子が高集積度で形成されるようになっている。そのため、回路基板に配置されている電極数が増加し、各電極の配列ピッチ(互いに隣接する電極の中心間距離;「電極ピッチ」ともいう)が小さくなってきている。他方、検査装置の検査電極は、検査装置本体にリード線などの配線によって接続されているため、検査電極の電極ピッチを小さくするには限度がある。また、回路基板の電気的検査に際しては、検査電極との接触等によって、回路基板の電極に損傷を与えないようにする必要がある。
従来、被検査対象回路基板の被検査電極と電気的検査装置の検査電極とを接続するために、例えば、プリント基板からなるピッチ変換ボードと異方性導電膜とを介在させる方法が採用されている。具体的に、図3に示すように、ピッチ変換ボード301と異方性導電膜302とを組み合わせて、電気的検査装置(チェッカー)304の検査電極306を配置した基板303上に配置する方法が知られている。検査電極306は、電気的検査装置304からリード線305で接続されている。ピッチ変換ボード301は、異方性導電膜302を介在させて、基板303にビス400によって固定されている。
ピッチ変換ボード301の基板は、一般に、ガラス繊維補強型エポキシ樹脂から形成された多層構造を持つ硬質のプリント基板である。該ピッチ変換ボード301の一方の表面には、被検査対象回路基板の被検査電極の電極ピッチと同じピッチでプローブ電極307が形成されており、他方の表面には、電気的検査装置の検査電極306の電極ピッチと同じピッチで電極309が形成されている。ピッチ変換ボード301の内部は、プローブ電極307と電極309とを電気的に接続する回路308が形成されている。このような回路308を形成するには、ピッチ変換ボード301を多層構造とする必要がある。
ピッチ変換ボードは、一般に多層基板であり、それを構成する各層は、製造時に異なる熱履歴を受けるため、各層の積層後に反りが生じやすい。ピッチ変換ボードに反りが生じると、被検査電極と検査電極とを正確に接続することができなくなる。被検査対象回路基板の被検査電極のバンプ高さが小さくなると、若干の反りによっても、満足に導通しなくなりやすい。ところが、ピッチ変換ボードは、ガラス繊維補強型エポキシ樹脂から形成されているために硬く、電気的検査時に圧力をかけても、反りを矯正することが困難である。ピッチ変換ボードは、硬いため、被検査電極や検査電極を傷つけやすい。
上記問題を緩和するために、ピッチ変換ボード301と、電気的検査装置304の検査電極306を配置した基板303との間に、異方性導電膜302が配置されている。この異方性導電膜302としては、一般に、エラストマーに導電性粒子を分散させた異方性導電ゴムが用いられている。異方性導電膜302は、検査時にかけられる圧力によって、ピッチ変換ボード301の電極309と検査電極306との間にある導電性粒子が連結するため、横方向の絶縁性を保持しながら、これら両電極間のみを導通させることができる。
しかし、ピッチ変換ボードの反りが大きい場合には、異方性導電膜を介在させても、反りを吸収しきれない場合がある。回路の集積化、微細化が進み、被検査対象回路基板の電極ピッチが小さくなるにつれて、上記構成の接続方法では、各部材の電極の正確な位置合わせが困難になっている。また、上記構成では、ピッチ変換ボードのプローブ電極との接触により、被検査電極が傷つけられやすい。
特許第3111688号(特許文献1)には、基板及び基板の上面に設けられた配線層部分を有するアダプター本体と、該アダプター本体の配線層部分の表面上に一体的に設けられた異方導電性コネクター層とよりなる回路基板検査用アダプター装置が開示されている。アダプター本体は、ピッチ変換ボードとしての機能を備えたものであり、ガラス繊維補強型エポキシ樹脂を用いて形成された多層構造のプリント基板である。異方導電性コネクターは、異方導電性エラストマーである。アダプター本体の配線層部分の表面上に異方導電性コネクター層を設けるプロセスは、アダプター本体の上面に、絶縁性の弾性高分子物質となる高分子物質用材料中に導電性磁性体粒子を分散させた流動性の混合物よりなるコネクター用材料層を形成し、アダプター本体の接続用電極に対応する強磁性体部分を有する金型のキャビティ内に配置し、アダプター本体の厚さ方向の平行磁場を作用させて導電性磁性体粒子をアダプター本体の接続用電極上に位置する部分に集合させて厚さ方向に配向させた状態で硬化処理を行うプロセスである。
特許第3163626号公報(特許文献2)には、特許文献1と同様の構造を持つ回路基板検査用アダプター装置が開示されている。特許文献2では、強磁性体部分と非磁性体部分を有する成形用磁性板を用いて、導電性磁性体粒子をアダプター本体の接続用電極上に位置する部分に集合させている。
特開2004−342597号公報(特許文献3)には、アダプター本体(ピッチ変換ボード)の表面上に導電性エラストマー層を形成した後、レーザー加工することにより、アダプター本体の接続用電極に対応した導電性エラストマーよりなる導電路を形成したアダプター装置が開示されている。各導電路の間は、硬化されて弾性高分子物質となる材料よりなる絶縁部用材料層を形成して硬化処理することにより絶縁部が形成されている。
しかし、特許文献1〜3に開示されている回路基板検査用アダプター装置は、アダプター本体(ピッチ変換ボード)と異方導電性エラストマーとの間の電気的接続が損なわれやすい。異方導電性エラストマーは、一般に、シリコーンゴムで形成されているため、他の材質との接着力が低く、温度変化や検査時に繰り返し負荷がかかると剥離しやすい。
特許第3111688号公報
特許第3163626号公報
特開2004−342597号公報
1.異方性導電膜の基膜
異方性導電膜1及び2を構成する「柔軟で膜厚方向に弾力性を有する電気絶縁性の基膜」としては、電気絶縁性のエラストマーや多孔質樹脂からなるシートまたはフィルムを挙げることができるが、異方導電性を示す貫通電極をめっき法により容易に形成できること、被検査電極に損傷を与えない低い荷重で電気的導通が得られる上、繰り返し検査を行っても、電極が損傷して抵抗が上昇することがないことなどの点で、多孔質樹脂膜が好ましい。多孔質樹脂膜としては、低誘電率や耐熱性などの観点から、多孔質フッ素樹脂膜が好ましく、延伸多孔質PTFE膜がより好ましい。
多孔質樹脂膜を形成する合成樹脂材料としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリふっ化ビニリデン(PVDF)、ポリふっ化ビニリデン共重合体、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE樹脂)などのフッ素樹脂;ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリアミド(PA)、変性ポリフェニレンエーテル(mPPE)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリスルホン(PSU)、ポリエーテルスルホン(PES)、液晶ポリマー(LCP)などのエンジニアリングプラスチック;などが挙げられる。これらの合成樹脂材料の中でも、耐熱性、加工性、機械的特性、誘電特性などの観点から、フッ素樹脂が好ましく、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が特に好ましい。
合成樹脂からなる多孔質樹脂膜を作製する方法としては、造孔法、相分離法、溶媒抽出法、延伸法、レーザ照射法などが挙げられる。これらの中でも、平均孔径や気孔率の制御が容易である点で、延伸法が好ましい。合成樹脂を用いて多孔質樹脂膜を形成することにより、膜厚方向に弾性を持たせることができるとともに、誘電率を更に下げることができる。
延伸多孔質PTFE膜などの多孔質樹脂膜は、気孔率が20〜80%程度であることが好ましい。多孔質樹脂膜は、平均孔径が10μm以下あるいはバブルポイントが2kPa以上であることが好ましく、電極(導通部)のファインピッチ化の観点からは、平均孔径が5μm以下、さらには1μm以下であることが好ましい。平均孔径の下限値は、0.05μm程度である。多孔質樹脂膜のバブルポイントは、好ましくは5kPa以上、より好ましくは10kPa以上である。バブルポイントの上限値は、300kPa程度であるが、これに限定されない。
多孔質樹脂膜の膜厚は、使用目的や使用箇所に応じて適宜選択することができるが、通常、20〜3000μm、好ましくは25〜2500μm、より好ましくは30〜1500μmである。したがって、多孔質樹脂膜の厚みは、フィルム(250μm未満)及びシート(250μm以上)の両領域を含んでいる。
多孔質樹脂膜の中でも、延伸法により得られた多孔質ポリテトラフルオロエチレン膜(延伸多孔質PTFE膜)は、弾性、耐熱性、加工性、機械的特性、誘電特性、低アウトガス特性などに優れ、しかも均一な孔径分布を有する多孔質樹脂膜が得られ易いため、異方性導電膜を構成する基膜として、最も優れた材料である。延伸多孔質PTFE膜は、多数のフィブリルとノードからなる微細組織を有しており、該フィブリルにめっき粒子などの導電性金属を付着させることができる。
本発明で使用する延伸多孔質PTFE膜は、例えば、特公昭42−13560号公報に記載の方法により製造することができる。先ず、PTFEの未焼結粉末に液体潤滑剤を混合し、ラム押し出しによって、チューブ状または板状に押し出す。厚みの薄いシートが所望な場合には、圧延ロールによって板状体の圧延を行う。押出圧延工程の後、必要に応じて、押出品または圧延品から液体潤滑剤を除去する。こうして得られた押出品または圧延品を少なくとも一軸方向に延伸すると、未焼結の延伸多孔質PTFE膜が得られる。未焼結の延伸多孔質PTFE膜は、収縮が起こらないように固定しながら、PTFEの融点である327℃以上の温度に加熱して、延伸した構造を焼結・固定すると、強度の高い延伸多孔質PTFE膜が得られる。延伸多孔質PTFE膜は、それぞれPTFEにより形成された非常に細いフィブリルと該フィブリルによって互いに連結されたノードとからなる微細組織を有している。延伸多孔質PTFE膜は、この微細組織が多孔質構造を形成している。
2.異方性導電膜
本発明で使用する異方性導電膜は、柔軟で膜厚方向に弾力性を有する電気絶縁性の基膜に、電極ピッチaで複数の貫通電極を設けた異方性導電膜1と、柔軟で膜厚方向に弾力性を有する電気絶縁性の基膜に、電極ピッチbで複数の貫通電極を設けた異方性導電膜2である。異方性導電膜2の電極ピッチbは、異方性導電膜1の電極ピッチaよりも大きい(すなわち、a<b)。
貫通電極は、基膜に貫通孔を設け、該貫通孔に導電性ペーストやめっきによる穴埋めを行う方法により形成することができる。延伸多孔質PTFE膜などの多孔質樹脂膜の場合には、貫通孔の壁面に無電解めっきによりめっき層を形成した筒状電極を形成する方法により貫通電極を形成することが好ましい。貫通電極の形成は、貫通孔の壁面の導電化処理ということがある。
延伸多孔質PTFE膜などの多孔質樹脂膜に、所定の電極ピッチに対応するピッチで貫通孔を形成し、その内壁を導通化するには、次のような方法を採用することができる。以下、延伸多孔質PTFE膜を例にとって説明するが、延伸多孔質PTFE樹脂シートに代えて、他の多孔質樹脂膜などを用いる場合にも、同様の操作を採用することができる。
延伸多孔質PTFE膜の複数箇所に、第一表面から第二表面にかけて厚み方向に貫通する貫通孔を形成し、次いで、各貫通孔の壁面における多孔質構造の樹脂部(例えば、フィブリル)に導電性金属を付着させて、膜厚方向に導電性を発揮することが可能な複数の筒状電極(導通部)をそれぞれ独立して形成する。導電性金属の付着は、一般に、無電解めっきまたは無電解めっきと電気めっきとの組み合わせにより、各貫通孔の壁面の多孔質構造の樹脂部にめっき粒子を付着させる方法により行うことができる。通常は、無電解めっきのみで十分である。
延伸多孔質PTFE膜の厚み方向に複数の貫通孔を設ける方法、及び該貫通孔の壁面に導電性金属の付着による筒状電極を形成する方法は、特に限定されないが、例えば、以下に述べる方法を例示することができる。
例えば、下記の工程1乃至5:
(1)延伸多孔質PTFE膜の両面に、マスク層として樹脂層を積層して、3層構成の積層体を形成する工程1;
(2)該積層体に、その厚み方向に貫通する複数の貫通孔を形成する工程2;
(3)貫通孔の壁面を含む積層体の表面に、金属イオンの還元反応を促進する触媒を付着させる工程3;
(4)延伸多孔質PTFE膜からマスク層を剥離する工程4;及び
(5)前記触媒を利用して、貫通孔の壁面の樹脂部に導電性金属を付着させる工程5;
を含む方法を挙げることができる。
マスク層の材料としては、樹脂材料が好ましく用いられる。基膜として延伸多孔質PTFE膜などの多孔質フッ素樹脂膜を用いる場合には、マスク層として、同種の多孔質フッ素樹脂膜を用いることが好ましいが、無孔質フッ素樹脂膜や、フッ素樹脂以外の樹脂材料からなる無孔質樹脂膜もしくは多孔質樹脂膜を使用することもできる。各層間の融着性と剥離性とのバランスの観点から、マスク層の材料としては、多孔質樹脂膜と同質の多孔質樹脂膜を用いることが好ましい。マスク層として、粘着テープもしくはシートを用いることもできる。
延伸多孔質PTFE膜の両面にマスク層を配置して、一般に、融着により3層を一体化させる。基膜として延伸多孔質PTFE膜を用いる場合は、マスク層としても同質の延伸多孔質PTFE膜を用いることが好ましい。これら3層は、加熱圧着することにより、各層間が融着した積層体とすることができる。該積層体は、加熱圧着条件を調節することにより、後の工程で容易に剥離することができる。
上記積層体に、その厚み方向に複数の貫通孔を形成する。貫通孔を形成する方法としては、(1)機械的に穿孔する方法、(2)光アブレーション法によりエッチングする方法、(3)先端部に少なくとも1本の振動子を備えた超音波ヘッドを用い、該振動子の先端を押し付けて超音波エネルギーを加えて穿孔する方法などが挙げられる。
機械的に穿孔するには、例えば、プレス加工、パンチング法、ドリル法などの機械加工法を採用することができる。機械加工法によれば、例えば、100μm以上、多くの場合200μm以上、さらには300μm以上の比較的大きな直径を有する貫通孔を安価に形成することができる。機械加工により、これより小さな直径の貫通孔を形成することもできる。
光アブレーション法により貫通孔を形成する場合は、所定のパターン状にそれぞれ独立した複数の光透過部(開口部)を有する光遮蔽シート(マスク)を介して、積層体の表面に光を照射することにより、パターン状の貫通孔を形成する方法を採用することが好ましい。光遮蔽シートの複数の開口部より光が透過して、積層体の被照射箇所は、エッチングされて貫通孔が形成される。この方法によれば、例えば、10〜200μm、多くの場合15〜150μm、さらには20〜100μmの比較的小さな直径を有する貫通孔を形成することができる。光アブレーション法の照射光としては、シンクロトロン放射光、レーザー光などが挙げられる。
超音波法では、先端部に少なくとも1本の振動子を有する超音波ヘッドを用いて、積層体に超音波エネルギーを加えることにより、パターン状の貫通孔を形成する。振動子の先端が接触した近傍のみに超音波エネルギーが加えられ、超音波による振動エネルギーによって局所的に温度が上昇し、容易に樹脂が切断され除去されて、貫通孔が形成される。
貫通孔の形成に際し、延伸多孔質PTFE膜の多孔質構造内にポリメチルメタクリレートなどの可溶性ポリマーまたはパラフィンを溶液または溶融状態で含浸させ、固化させてから穿孔する方法を採用することもできる。この方法によれば、貫通孔の壁面における多孔質構造を保持し易いので好ましい。穿孔後、可溶性ポリマーまたはパラフィンは、溶解もしくは溶融させて除去することができる。
貫通孔の形状は、円形、楕円形、星型、八角形、六角形、四角形、三角形など任意であるが、多くの場合、円形とすることが好ましい。貫通孔の直径は、小径の貫通孔の場合には、通常5〜100μm、さらには5〜30μmにまで小さくすることができる。他方、比較的大径の貫通孔の場合には、貫通孔の直径を通常50〜3000μm、多くの場合75〜2000μm、さらには100〜1500μmにまで大きくすることができる。
貫通孔の壁面を含む積層体の表面に金属イオンの還元反応を促進する触媒(「めっき触媒」ともいう)を付着させるには、積層体を、例えばパラジウム−スズコロイド触媒付与液に十分に撹拌しながら浸漬すればよい。貫通孔の壁面に付着して残留する触媒を利用して、該壁面に選択的に導電性金属を付着させる。導電性金属を付着させる方法としては、無電解めっき法、スパッタ法、導電性金属ペースト塗布法などが挙げられるが、無電解めっき法が好ましい。
無電解めっきを行う前に、貫通孔の壁面に残留した触媒(例えば、パラジウム−スズ)を活性化する。具体的には、めっき触媒活性化用として市販されている有機酸塩等に浸漬することで、スズを溶解し、触媒を活性化する。貫通孔の壁面に触媒を付与した延伸多孔質PTFE膜を無電解めっき液に浸漬することにより、触媒が付着した貫通孔の壁面のみに導電性金属(めっき粒子)を析出させることができる。この方法によって、筒状電極が形成される。導電性金属としては、銅、ニッケル、銀、金、ニッケル合金などが挙げられるが、高導電性が必要な場合には、銅を使用することが好ましい。
延伸多孔質PTFE膜を使用すると、めっき粒子は、初め延伸多孔質PTFE膜の貫通孔の壁面に露出した樹脂部(主としてフィブリル)に絡むように析出するので、めっき時間をコントロールすることにより、導電性金属の付着状態をコントロールすることができる。適度なめっき量とすることにより、多孔質構造を維持した状態で導電性金属層が形成され、弾力性と同時に膜厚方向への導電性も与えることが可能となる。
微細多孔質構造の樹脂部の太さ(例えば、延伸多孔質PTFE膜のフィブリルの太さ)は、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下、さらに好ましくは1μm以下である。導電性金属の粒子径は、0.001〜5μm程度であることが好ましい。導電性金属の付着量は、多孔質構造と弾力性を維持するために、0.01〜4.0g/ml程度とすることが好ましい。
上記で作製した筒状電極は、酸化防止及び電気的接触性を高めるため、酸化防止剤を使用するか、あるいは貴金属または貴金属の合金で被覆しておくことが好ましい。貴金属としては、電気抵抗の小さい点で、パラジウム、ロジウム、金が好ましい。被覆層の厚さは、好ましくは0.005〜0.5μm、より好ましくは0.01〜0.1μmである。例えば、筒状電極を金で被覆する場合、8nm程度のニッケルで導電性金属層を被覆した後、置換金めっきを行う方法が効果的である。
延伸多孔質PTFE膜を使用すると、貫通孔の壁面で、フィブリルに導電性金属粒子が付着した構造の筒状電極が形成される。この延伸多孔質PTFE膜に厚み方向の応力が加わると、フィブリル間の距離が縮むことにより、応力が緩和され、筒状電極の構造も破壊されることなく維持される。したがって、延伸多孔質PTFE膜に繰り返し圧縮力が加えられても、筒状電極の劣化が起こり難い。
筒状電極は、通常、延伸多孔質PTFE膜の厚み方向に設けられた貫通孔の壁面のみに導電性金属が付着した構造を有するものであるが、無電解めっき量を調節するか、無電解めっきに加えて電気めっきを行うことにより、筒状電極の2つの開口端部の一方または両方を閉塞させて、導電性金属からなる蓋体を形成させてもよい。めっき量を増やすと、開口端部の縁からめっき粒子が成長して、開口端部を閉塞させる。貫通孔の壁面に付着させる導電性金属の量を増やすことなく、開口端部を閉塞させる方法としては、導電性金属粒子を含有する高粘度のペーストを開口端部に塗布する方法がある。このような方法により、筒状電極の開口端部を導電性材料により閉塞して蓋体を形成すると、延伸多孔質PTFE膜の筒状電極と、回路基板の被検査電極や電気的検査装置の検査電極などとの接触面積を増やすことができる。
図2に、延伸多孔質PTFE膜に筒状電極を形成した異方性導電膜の一例を示す。延伸多孔質PTFE膜201に、所定のピッチで複数の貫通孔202を形成し、次いで、各貫通孔の内壁を無電解めっきにより導電化処理して、筒状電極203を形成する。
3.ピッチ変換用フレキシブル多層基板
本発明で使用するフレキシブル多層基板は、電気絶縁性の高分子フィルムもしくは多孔質樹脂膜から形成された多層構造を有する基板であり、従来の繊維補強型エポキシ樹脂基板のような硬質のリジッドな多層基板ではなく、柔軟性を有するフレキシブルな多層基板である。このフレキシブル多層基板は、2層以上の高分子フィルムまたは多孔質樹脂膜から形成された構造を持っている。
該ピッチ変換用フレキシブル多層基板は、ピッチ変換ボードととしての機能を有している。ピッチ変換ボードとは、例えば、半導体集積回路装置やプリント回路基板などの回路基板に配置されている電極ピッチが小さな複数の電極と、電気的検査装置に配置されている電極ピッチが大きな複数の電極とを、それぞれ1対1に対応させて接続するため、電極ピッチを変換することができる機能を有する電気接続部品の一種である。ピッチ変換ボードの一方の表面には、被検査電極の電極ピッチに対応する複数の電極が配置され、他方の表面には、検査電極の電極ピッチに対応する複数の電極が配置され、その内部には、両表面の各電極をそれぞれ1対1に電気的に接続するための回路及び/または貫通電極が配置されている。このピッチ変換ボードを被検査電極と検査電極との間に配置すれば、これらの電極を電気的に接続することができる。
本発明では、電気絶縁性の高分子フィルムまたは多孔質樹脂膜を用いてピッチ変換用フレキシブル多層基板を作製する。高分子フィルムとしては、ポリイミドフィルム、ポリエステルフィルム、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルム、液晶フィルム、ポリエーテルスルホンフィルムなど、一般に、フレキシブルプリント配線板やフレキシブル積層板の基板材料として用いられている各種高分子フィルムを用いることができる。これらの中でも、ポリイミドフィルムが好ましい。多孔質樹脂膜としては、前述の異方導電性膜の基膜として用いられる多孔質樹脂膜を用いることができる。多孔質樹脂膜としては、多孔質フッ素樹脂膜が好ましく、延伸多孔質PTFE膜がより好ましい。
高分子フィルムもしくは多孔質樹脂膜を用いてピッチ変換用フレキシブル多層基板を製造するには、各層を形成する高分子フィルムもしくは多孔質樹脂膜のそれぞれに所定のピッチで複数の貫通孔を形成し、各貫通孔に導電性ペーストやめっきによる穴埋めを行う方法により貫通電極を形成する。穴埋めめっきは、貫通孔を充填する完全な穴埋めめっきだけではなく、貫通孔の壁面にめっき粒子を付着させて筒状電極とする方法も含む。
高分子フィルムもしくは多孔質樹脂膜の積層は、貫通孔の形成と、それに続く貫通電極の形成の後に行う。高分子フィルムの積層は、ビルドアップ法を採用してもよい。各層に設けた複数の貫通電極のそれぞれ1対1に対応する各電極を電気的に接続するには、各層の貫通電極を端部で直接接触させるか、回路を形成する。したがって、各層の対応する各貫通電極をそれぞれ電気的に接続するために回路が必要となる場合には、回路を形成してから積層する。
例えば、ピッチ変換用フレキシブル多層基板が2枚の高分子フィルムもしくは多孔質樹脂膜が積層界面で接着もしくは熱融着された2層構造を有する多層構造を有するものである場合には、一方の最表面Aを持つ層Iには、被検査電極の狭い電極ピッチに対応したピッチaで複数の貫通電極を形成し、他方の最表面Bを持つ層IIには、検査電極の広い電極ピッチbに対応したピッチで複数の貫通電極を形成する。積層界面には、層Iの各貫通電極とこれらに対応する層IIの各貫通電極とをそれぞれ1対1に電気的に接続する表面回路を形成する。表面回路は、層Iまたは層IIのいずれか一方に形成する。各層の貫通電極の数は、被検査電極の数をカバーできる数とする。
狭い電極ピッチを広い電極ピッチに変換するには、高分子フィルムもしくは多孔質樹脂膜を3層以上とすることができる。3層以上の高分子フィルムもしくは多孔質樹脂膜が各積層界面で接着もしくは熱融着された多層構造を持つ多層基板の場合は、一方の最表面Aを持つ層Aには、被検査電極の狭い電極ピッチaに対応したピッチで複数の貫通電極が形成され、他方の最表面Bを持つ層Bには、検査電極の電極ピッチbに対応したピッチで複数の貫通電極が形成される。中間層として配置された1層以上の高分子フィルムもしくは多孔質樹脂膜には、最表面Aの電極ピッチaと最表面Bの電極ピッチbとの中間のピッチで複数の貫通電極を形成する。全層の対応する各貫通電極は、各積層界面で直接または表面回路を介してそれぞれ電気的に接続され、それによって、最表面Aの電極ピッチaが中間層の電極ピッチを介して最表面Bの電極ピッチbに至るまで順次拡大される。工程を簡略化するには、全層の対応する各筒状電極を各積層界面で直接それぞれ電気的に接続することが好ましいが、そのために、積層数が多くなりすぎると、多層基板の柔軟性が低下するので、そのような場合には、各層の対応する貫通電極を回路によって接続する方法を採用することが好ましい。積層数は、多層基板がフレキシブルであれば特に限定されないが、通常、2〜10、好ましくは2〜5程度である。
多層基板の各層を形成する高分子フィルムもしくは多孔質樹脂膜には、貫通電極以外に回路を形成することができる。回路は、積層界面に配置されるように、各層の表面に予め形成する。各層の表面に回路を形成する方法としては、従来のプリント配線板での回路形成方法と同様、アディティブ法、サブトラクト法、またはセミアディティブ法を採用することができる。これらの方法では、リソグラフィ技術を用いて、フォトレジスト塗布、パターン状の露光、現像、エッチングの工程を経て、めっきを行い、回路を形成する。また、高分子フィルムもしくは多孔質樹脂膜の表面に銅箔を貼り合わせた基板を作製し、銅箔層に、フォトリソグラフィ技術を用いて、表面回路を形成する方法が挙げられる。さらに、高分子フィルムもしくは多孔質樹脂膜に回路の形状と同じパターンでめっき触媒を付与し、該めっき触媒を利用して、無電解めっきまたは無電解めっきと電解めっきとの組み合わせにより表面回路を形成する方法がある。貫通電極及び回路は、銅、金、ニッケル、パラジウム、ロジウム、これらの組み合わせなどの導電性金属を用いて形成する。
貫通電極や回路を形成した高分子フィルムもしくは多孔質樹脂膜を積層するには、プレス積層法を用いることができる。例えば、貫通電極を形成した延伸多孔質PTFE膜の複数枚を熱融着させるには、これらを積み重ねて、330〜380℃、好ましくは340〜360℃の温度に加熱し、50〜200g/cm2、好ましくは70〜150g/cm2の圧力で、30分から5時間、好ましくは1〜3時間の条件で加熱加圧する方法が挙げられる。延伸多孔質PTFE膜以外の多孔質フッ素樹脂膜や高分子フィルムを積層する場合には、それぞれの樹脂の融点などの溶融特性応じて、適宜加熱加圧条件を設定することができる。各層間に接着剤を配置して積層してもよい。あるいは、各層を順次ビルドアップ法により形成してもよい。
4.電気接続部品
本発明の電気接続部品は、「異方性導電膜1/ピッチ変換用フレキシブル多層基板/異方性導電膜2」の順で、それぞれ対応する各貫通電極が厚み方向に導通可能な状態で配置された構造を有している。図1に、本発明の電機接続部品の一例の断面図を示す。図1に示すように、異方性導電膜1と異方性導電膜2との間に、ピッチ変換用フレキシブル多層基板3を配置する。これらの各層は、接着もしくは熱融着させて一体化してもよく、あるいはピン止めなどの機械的手段により、この積層順に電気的検査装置の検査電極基板上に固定してもよい。
図1に示すピッチ変換用フレキシブル多層基板3は、例えば、ポリイミドフィルム31,32,33からなる3層構成を有している。一方の最外層Aを持つポリイミドフィルム31には、複数の貫通電極34が所定の電極ピッチaで形成されている。この電極ピッチは、異方性導電膜1に設けた複数の貫通電極(筒状電極)11の電極ピッチaと一致させている。この電極ピッチaは、例えば、被検査対象回路装置の被検査電極の電極ピッチに対応している。
他方の最外層Bを持つポリイミドフィルム33には、複数の貫通電極38が所定の電極ピッチbで形成されている。この電極ピッチは、異方性導電膜2に設けた複数の貫通電極(筒状電極)21の電極ピッチbと一致させている。この電極ピッチbは、例えば、電気的検査装置の検査電極の電極ピッチに対応している。中間層のポリイミドフィルム32には、複数の貫通電極36が形成されている。貫通電極36の電極ピッチは、最外層Aの電極ピッチaと最外層Bの電極ピッチbとの中間の大きさを有している。
最外層Aを持つポリイミドフィルム31の複数の貫通電極34と中間層となるポリイミドフィルム32の複数の貫通電極36とは、中間層のポリイミドフィルム32の表面に形成した回路35によって、それぞれ1対1に電気的に接続されている。同様に、中間層となるポリイミドフィルム32の複数の貫通電極36と最外層Bを持つポリイミドフィルム33の複数の貫通電極38とは、ポリイミドフィルム33の表面に形成した回路37によって、それぞれ1対1に対応して電気的に接続されている。このようにして、最外層Aの電極ピッチaは、最外層Bの電極ピッチbにまで順次拡大されている。
ポリイミドフィルムの積層数が多い場合には、各層の各貫通電極の電極ピッチを、それぞれ対応する各層の各貫通電極が互いに少しずつ重なるように調節すれば、各層を積層することにより、各層が一体化すると共に、全層の対応する各貫通電極が直接電気的に接続されたピッチ変換用フレキシブル多層基板を得ることができる。この場合には、各層の対応する各貫通電極の電気的接続に際し、回路の形成を省略することができる。各層の対応する各貫通電極を電気的に接続するために、各貫通電極同士を直接接触させて接続する方法と、回路を形成して接続する方法を併用してもよい。
ポリイミドフィルムに代えて、他の高分子フィルムや多孔質樹脂膜を用いて、同様に、ピッチ変換用フレキシブル多層基板を作製することができる。例えば、延伸多孔質PTFE膜を用いる場合には、異方性導電膜の作製方法と同様の方法を採用して、各層の各貫通電極のピッチが順次拡大するように、各異方性導電膜に複数の貫通電極を形成したものを作製し、必要に応じて、回路を形成した後、各層を重ね合わせて加熱圧着して熱融着させることにより、ピッチ変換用フレキシブル多層基板を作製することができる。
異方性導電膜1及び2として、延伸多孔質PTFE膜を基膜とし、貫通孔を無電解めっきにより導電化処理した筒状電極を形成したものを用いることが好ましい。筒状電極は、異方性導電膜の貫通孔の壁面で、フィブリルに導電性金属粒子が付着した構造を有している。このような延伸多孔質PTFE膜を用いて作製した異方性導電膜1及び2によりピッチ変換用フレキシブル多層基板を挟んだ構造の電機接続部品は、被検査対象回路装置の電気的検査に際し、厚み方向に応力が加わると、フィブリル間の距離が縮むことにより、導通が確実に行われることに加えて、応力が緩和され、筒状電極の構造も破壊されることなく維持される。したがって、延伸多孔質PTFE樹脂シートに繰り返し圧縮力が加えられても、筒状電極の劣化が起こり難い。
異方性導電膜1及び2の膜厚は、通常20〜3000μm、好ましくは25〜2500μm、より好ましくは30〜1500μmの範囲から適宜選択することが望ましいが、異方性導電膜2の膜厚は、異方性導電膜1の膜厚よりも大きくすることが好ましい。異方性導電膜1の各貫通電極は、例えば、被検査対象回路基板の被検査電極と接触するが、被検査電極の電極径は小さく、電極ピッチも小さいため、比較的小さな電極径で、小さな電極ピッチで形成する必要がある。そこで、異方性導電膜1の膜厚は、貫通電極の加工性と被検査電極との接触性などの観点から、30〜150μm程度とすることが好ましい。本発明では、30〜150μmである。他方、異方性導電膜2の各貫通電極は、例えば、電気的検査装置の検査電極と接触するが、検査電極の電極径は比較的大きく、電極ピッチも大きいため、比較的大きな形状で、大きな電極ピッチで形成することが好ましい。電気接続部品全体の厚み方向の弾力性を高めるには、異方性導電膜2の厚みを大きくすることが好ましい。そこで、異方性導電膜2の膜厚は、検査電極との接触性や弾力性などの観点から、通常150μm超過1500μm以下とすることが好ましい。本発明では、150μm超過1500μm以下である。
異方性導電膜1の各貫通電極の径とピッチは、電気接続部品の用途によって適宜設定することができる。本発明の電気接続部品を回路基板の電気的検査のためのアダプターの用途に使用する場合は、異方性導電膜1の各貫通電極の径とピッチは、回路基板の被検査電極の径とピッチに一致させる。異方性導電膜1の貫通電極の径は、通常、5〜100μm、好ましくは8〜80μmの範囲から選ばれるが、この範囲に限定されない。異方性導電膜1の貫通電極のピッチは、通常、15〜100μm、好ましくは20〜80μmの範囲から選ばれるが、この範囲に限定されない。
一方、異方性導電膜2の各貫通電極の径は、電気接続部品の用途によって適宜設定することができるが、異方性導電膜1の各貫通電極の径よりも大きくすることが、例えば、電気的検査装置の検査電極との接触性の観点から好ましい。異方性導電膜2の各貫通電極の径は、通常、100μm超過350μm以下、好ましくは150〜300μmの範囲から選ばれるが、この範囲に限定されない。異方性導電膜2の各貫通電極のピッチは、一般に、電気的検査装置の検査電極のピッチに合わせるが、通常、100μm超過1000μm以下、好ましくは150〜500μmの範囲から選ばれるが、この範囲に限定されない。
ピッチ変換用フレキシブル多層基板の合計厚みは、基板を構成する基材の材質や積層数にもよるが、高分子フィルムを用いて形成する場合には、通常、20〜200μm、好ましくは30〜150μm程度とすることが望ましい。本発明では、30〜150μmである。この厚みが薄すぎると、十分に大きなピッチ変換機能を持つ多層基板を得ることが困難になり、厚すぎると、基材の材質によっては、柔軟性が低下することがある。延伸多孔質PTFE膜を用いてピッチ変換用フレキシブル多層基板を形成する場合には、合計厚みは、積層数にもよるが、通常、60〜3000μm、好ましくは90〜2000μmの範囲から選択することが望ましい。ピッチ変換用フレキシブル多層基板は、両面を異方性導電膜1及び2で挟んで使用するため、その膜厚を過度に大きくする必要はない。
ピッチ変換用フレキシブル多層基板の一方の最外層Aには、電極ピッチaで複数の貫通電極が設けられるが、該貫通電極の径は、異方性導電膜1の貫通電極の径とほぼ一致させることが好ましい。他方の最外層Bには、該電極ピッチより大きい電極ピッチbで同数の貫通電極が設けられるが、該貫通電極の径は、異方性導電膜2の貫通電極の径とほぼ一致させることが好ましい。
本発明の電気接続部品は、ピッチ変換機能と異方性導電膜としての機能を併せ持つものである。異方性導電膜1及び2は、延伸多孔質PTFE膜のような柔軟で膜厚方向に弾力性を有する電気絶縁性の基膜に筒状電極の如き貫通電極を形成したものであり、かつ、ピッチ変換ボードとして機能するピッチ変換用フレキシブル多層基板は、ポリイミドフィルムなどの高分子フィルムや延伸多孔質PTFE膜などの多孔質樹脂膜を用いて形成されているため、可撓性、柔軟性を有している。そのため、本発明の電気接続部品は、電極の位置ずれや、硬質のピッチ変換ボードの反りに起因する導通不良などの不都合が発生しない。
異方性導電膜1及び2として、延伸多孔質PTFE膜に貫通孔を形成し、その壁面に無電解めっきにより導電処理して筒状電極を形成したものを使用すると、得られた電気接続部品は、電気的検査に繰り返し用いても、筒状電極が損傷して抵抗が上昇することがなく、また、被検査電極に損傷を与えないような低荷重で電気的導通を得ることができる。本発明の電気接続部品は、回路装置の電気的検査(例えば、導通検査)に用いられるだけではなく、半導体パッケージの実装などにも適用することができる。
以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
[実施例1]
気孔率(ASTM−D−792)60%、平均孔径0.1μm、バブルポイント(イソプロピルアルコールを使用し、ASTM−F−316−76に従って測定)が150kPa、厚み120μmの延伸多孔質PTFE樹脂シートの両面に、気孔率60%、平均孔径0.1μm、厚み30μmの延伸多孔質PTFE樹脂シートを重ね合わせて、厚さ3mmのステンレス板2枚の間に挟み、荷重を負荷するとともに、350℃で30分間加熱処理した。加熱後、ステンレス板の上から水にて急冷し、3層に融着された多孔質PTFE樹脂シートの積層体を得た。
上記のようにして得られた積層体を50mm角に切り取った。該積層体に、回転速度が100,000/分、送り速度が0.01mm/rev.の条件でドリルを作動させて、ピッチ30μmで、16個所(縦4個×横4個)に直径10μmφの貫通孔を穿孔した。貫通孔を形成した積層体をエタノールに1分間浸漬して親水化した後、100ml/Lに希釈したメルテックス(株)製メルプレートPC−321に、60℃の温度で4分間浸漬し脱脂処理を行った。さらに、積層体を10%硫酸に1分間浸漬した後、プレディップとして、0.8%塩酸にメルテックス(株)製エンプレートPC−236を180g/Lの割合で溶解した液に2分間浸漬した。
さらに、積層体を、メルテックス(株)製エンプレートアクチベータ444を3%、エンプレートアクチベータアディティブを1%、塩酸を3%溶解した水溶液にメルテックス(株)製エンプレートPC−236を150g/Lの割合で溶解した液に5分間浸漬して、触媒粒子を積層体の表面及び貫通孔の壁面に付着させた。次に、積層体をメルテックス(株)製エンプレートPA−360の5%溶液に5分間浸漬し、パラジウム触媒核の活性化を行った。その後、第1層と第3層のマスク層を剥離して、貫通孔の壁面のみに触媒パラジウム粒子が付着した延伸多孔質PTFE樹脂シートを得た。
メルテックス(株)製メルプレートCu−3000A、メルプレートCu−3000B、メルプレートCu−3000C、メルプレートCu−3000Dをそれぞれ5%、メルプレートCu−3000スタビライザーを0.1%で建浴した無電解銅めっき液に、十分エアー撹拌を行いながら、上記多孔質PTFE樹脂シートを20分間浸漬して、貫通孔の壁面のみを銅粒子にて導電化した。
次いで、防錆及び回路基板などの電極との接触性向上のために、金めっきを行った。金めっきは、以下の方法により、ニッケルからの置換金めっき法を採用した。貫通孔の壁面に銅粒子を付着させた多孔質PTFE樹脂シートを、プレディップとしてアトテック製アクチベータオーロテックSITアディティブ(80m1/L)に3分間浸漬した後、触媒付与としてアトテック製オーロテックSITアクチベータコンク(125m1/L)、アトテック製アクチベータオーロテックSITアディティブ(80ml/L)の建浴液に1分間浸漬し、さらにアトテック製オーロテックSITポストディップ(25ml/L)に1分間浸漬して、触媒を銅粒子上に付着させた。
次に、次亜燐酸ナトリウム(20g/L)、クエン酸三ナトリウム(40g/L)、ホウ酸アンモニウム(13g/L)、硫酸ニッケル(22g/L)で建浴した無電解ニッケルめっき液に延伸多孔質PTFE樹脂シートを5分間浸漬し、銅粒子をニッケルコートした。その後、メルテックス製置換金めっき液[メルプレートAU−6630A(200ml/L)、メルプレートAU−6630B(100mI/L)、メルプレートAU−6630C(20ml/L)、亜硫酸金ナトリウム水溶液(金として1.0g/L)]中に基膜を5分間浸漬し、導電性粒子の金コートを行った。
このようにして、電極径10μm、電極ピッチ30μmで、銅/ニッケル/金から構成される筒状電極を有し、厚み120μmの延伸多孔質PTFE膜製の異方性導電膜1を作製した。
他方、厚み600μmの延伸多孔質PTFE膜(気孔率60%、平均孔径0.1μm、バブルポイント150kPa)、を用いて、前記と同様の操作により、電極径200μm、電極ピッチ300μmの筒状電極(16個所(縦4個×横4個)を有する異方導電性膜2を作製した。
ポリイミドフィルム3枚を用いて、無電解めっきによる貫通孔の穴埋め法とセミアディティブ法による回路形成法により、一方の最外層Aには、電極径10μm、電極ピッチ30μmで複数の貫通電極が設けられ、他方の最外層Bには、電極径200μm、電極ピッチ300μmで、銅/金から構成される貫通電極を持つ膜厚50μmのピッチ変換用フレキシブル多層基板を用意した。
異方性導電膜1/ピッチ変換用フレキシブル多層基板/異方性導電膜2を互いの表面のそれぞれ対応する電極位置が一致するように配置して、エポキシ接着剤で互いに接着固定した。このようにして得られた接続電気部品の各電極の電気導通性を評価したところ、すべての電極について良好な導通性が得られた。
[比較例1]
ガラス繊維補強型エポキシ樹脂からなり、一方の最外層Aには、電極径10μm、電極ピッチ30μmで16個の貫通電極が設けられ、他方の最外層Bには、電極径200μm、電極ピッチ300μmで、銅/金から構成される16個の貫通電極を持つ、3層構成のリジッドなピッチ変換ボードを用意した。
実施例1において、ピッチ変換用フレキシブル多層基板に代えて、このリジッドなピッチ変換ボードを用いたこと以外は、実施例1と同様にして電気接続部品を作製した。このようにして得られた接続電気部品の各電極の電気導通性を評価したところ、試験数3回において、電極数の比率で約22%の電極で導通不良が生じた。