本発明は、所定の通信対象からの信号に応じてその通信対象の方向を検出する無線装置の改良に関する。
所定の通信対象との間で通信を行う無線装置の一例として、所定の情報が記憶された小型の無線タグ(応答器)から所定の無線タグ通信装置(質問器)により非接触にて情報の読み出しを行うRFID(Radio Frequency Identification)システムが知られている。このRFIDシステムは、無線タグが汚れている場合や見えない位置に配置されている場合であっても無線タグ通信装置との通信によりその無線タグに記憶された情報を読み出すことが可能であることから、商品管理や検査工程等の様々な分野において実用が期待されている。
斯かる無線タグ通信装置の一利用形態として、通信対象である無線タグとの通信の指向性を変化させることによりその無線タグの方向を検知する技術が知られている。例えば、特許文献1に記載されたアンテナの指向角を制御する無線受信方法がそれである。この技術によれば、指向角可変アンテナにより受信された受信信号の希望波電力と干渉波電力との比に基づいてその指向角可変アンテナの指向角の広狭を制御することにより、通信対象である無線タグの方向を好適に検知することができる。
しかし、前記従来の技術のように、一般的なBFA(Beam Forming Antenna)処理による方向検知では計算量が少なくて済む反面、分解能が低く通信対象である無線タグの方向を詳細に検出できないという不具合があった。また、MUSIC法やESPRIT法等、分解能が高い方向検知では、処理が複雑であり計算量が多くなるという弊害があった。すなわち、可及的簡単な処理により分解能が高い方向検知を実現する技術は、未だ開発されていないのが現状である。
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、可及的簡単な処理により分解能が高い通信対象の方向検知を実現する無線装置を提供することにある。
斯かる目的を達成するために、本発明の要旨とするところは、所定の通信対象からの信号を受信する受信アンテナを備え、その受信アンテナにより受信される受信信号に基づいて前記通信対象の方向を検出する無線装置であって、前記受信アンテナによる受信指向性を制御する受信指向性制御部と、前記受信アンテナにより受信される受信信号強度を検出する受信信号強度検出部と、前記受信指向性制御部により最大受信指向性方向が第1の指向性方向とされた場合における受信信号強度及びその第1の指向性方向と所定角度異なる第2の指向性方向とされた場合における受信信号強度のうち何れか大きい方の受信信号強度が極小となる方向に基づいて前記通信対象の方向を検出する方向検出部とを、含み、その方向検出部は、前記検出に先立って、前記受信指向性制御部により受信最大指向性方向を所定角度ずつ変更しつつ前記受信信号強度検出部により検出される受信信号強度が最大となる方向に基づいて前記通信対象の方向を予備検出するものであり、前記検出において前記第1の指向性方向及び第2の指向性方向の初期値を前記予備検出において検出された前記通信対象の方向に基づいて定めると共に、前記第1の指向性方向及び第2の指向性方向を所定角度ずつ変更しつつ前記検出を繰り返し実行することを特徴とするものである。
このようにすれば、前記受信アンテナによる受信指向性を制御する受信指向性制御部と、前記受信アンテナにより受信される受信信号強度を検出する受信信号強度検出部と、前記受信指向性制御部により受信最大指向性が第1の指向性方向とされた場合における受信信号強度及びその第1の指向性方向と所定角度異なる第2の指向性方向とされた場合における受信信号強度のうち何れか大きい方の受信信号強度が極小となる方向に基づいて前記通信対象の方向を検出する方向検出部とを、含み、その方向検出部は、前記検出に先立って、前記受信指向性制御部により受信最大指向性方向を所定角度ずつ変更しつつ前記受信信号強度検出部により検出される受信信号強度が最大となる方向に基づいて前記通信対象の方向を予備検出するものであり、前記検出において前記第1の指向性方向及び第2の指向性方向の初期値を前記予備検出において検出された前記通信対象の方向に基づいて定めると共に、前記第1の指向性方向及び第2の指向性方向を所定角度ずつ変更しつつ前記検出を繰り返し実行するものであることから、所定角度異なる2つの指向性方向それぞれにおけるメインローブが重なり合うゲインの谷間において前記受信信号強度が極小となる性質を利用することで、前記通信対象との通信感度が最大となるメインローブそのものを用いる場合よりも高い分解能が得られ、前記通信対象の方向を好適に検出することができる。また、信号強度の強い受信信号に対しては分解能が高くなるが信号強度の弱い受信信号に対しては効果がないヌルを用いた場合と違って、信号強度が弱い受信信号に対しても前記通信対象の方向を好適に検出することができる。また、前記通信対象との通信感度が最大となるメインローブ方向においてその通信対象の方向を短時間で大まかに検出し、その方向を利用することで前記検出に要する時間を短縮することができる。すなわち、可及的簡単な処理により広範囲で分解能が高い通信対象の方向検知を実現する無線装置を提供することができる。
ここで、好適には、前記受信アンテナは、2つ以上のアンテナ素子から成るものである。このようにすれば、実用的な受信アンテナにより受信指向性を簡単に制御できる。
また、好適には、前記2つ以上のアンテナ素子から成る受信アンテナは、アレイアンテナである。このようにすれば、実用的な受信アンテナにより受信指向性を簡単に制御できる。
また、好適には、前記受信アンテナにより受信された受信信号を記憶する受信信号記憶部を含むものである。このようにすれば、簡単な構成により受信信号の合成処理を行い指向性制御等の効果を得ることができる。
また、好適には、前記方向検出部は、基準となる方向から所定角度引いた角度を前記第1の指向性方向、その基準となる方向に所定角度足した角度を前記第2の指向性方向として、角度0°に対応する原方向から前記基準となる方向を所定角度ずつ変更しつつ前記検出を繰り返し実行するものであり、前記基準となる方向と前記原方向との成す角度が大きくなるほど、それら第1の指向性方向と第2の指向性方向との成す角度を広く補正するものである。このようにすれば、前記通信対象の方向を更に正確に検出することができる。
また、好適には、前記通信対象へ所定の信号を送信する送信アンテナを有するものである。このようにすれば、所定の信号に応じて返信を行うパッシブタグ等の通信対象の方向を好適に検出することができる。
また、好適には、前記受信指向性制御部は、複数のアンテナ素子に対応する信号それぞれにウェイトを乗算することにより指向性を定めるものであり、前記受信アンテナによる受信指向性方向の初期値を定めるウェイトを前記送信アンテナから送信される信号の送信最大指向性方向に対応するウェイトとするものである。このようにすれば、前記検出における受信最大指向性方向の初期値を好適に定めることができる。
また、好適には、前記送信アンテナから送信される信号の送信指向性を制御する送信指向性制御部を含むものである。このようにすれば、更に離れた場所に設置された通信対象であっても、その方向を好適に検出することができる。
また、好適には、前記送信指向性制御部は、送信指向性と受信指向性とをそれぞれ独立して制御するものである。このようにすれば、送信指向性及び受信指向性のうち少なくとも一方を好適に制御することができる。
また、好適には、前記送信指向性制御部は、前記検出又は該検出に先立って行われる予備検出において送信指向性と受信指向性とを一致させるように制御するものである。このようにすれば、前記通信対象との間で好適な情報通信を行うことができる。
また、好適には、前記送信指向性制御部は、前記第1の指向性方向及び第2の指向性方向の中間方向に送信指向性が向くように制御するものである。このようにすれば、前記通信対象との間で好適な通信を行うことができる。
以下、本発明の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の無線装置が好適に用いられる通信システム10を説明する図である。この通信システム10は、本発明の無線装置の一実施例である無線タグ通信装置12と、その無線タグ通信装置12の通信対象である単数乃至は複数(図1では単数)の無線タグ14とから構成される所謂RFID(Radio Frequency Identification)システムであり、上記無線タグ通信装置12はそのRFIDシステムの質問器として、上記無線タグ14は応答器としてそれぞれ機能する。すなわち、上記無線タグ通信装置12から質問波Fc(送信信号)が上記無線タグ14に向けて送信されると、その質問波Fcを受信した上記無線タグ14において所定の情報信号(データ)によりその質問波Fcが変調され、応答波Fr(返信信号)として上記無線タグ通信装置12に向けて返信されることで、その無線タグ通信装置12と無線タグ14との間で情報の通信が行われる。
図2は、上記無線タグ通信装置12の構成を説明する図である。この図2に示すように、上記無線タグ通信装置12は、上記無線タグ14に対する情報の読み書きや、その無線タグ14の方向検知等を実行するためにその無線タグ14との間で情報の通信を行うものであり、送信信号をディジタル信号として出力したり、上記無線タグ14からの返信信号を復調する等のディジタル信号処理を実行するDSP(Digital Signal Processor)16と、そのDSP16により出力された送信信号をアナログ信号に変換する送信信号D/A変換部18と、所定の周波数変換信号を出力する周波数変換信号出力部20と、上記送信信号D/A変換部18によりアナログ信号に変換された送信信号の周波数をその周波数変換信号出力部20から出力される周波数変換信号の周波数だけ高くするアップコンバータ22と、そのアップコンバータ22から出力される送信信号を質問波Fcとして上記無線タグ14に向けて送信するための送信アンテナ素子24を有する送信アンテナ26と、その質問波Fcに応じて無線タグ14から返信される応答波Frを受信するための複数(図2では3つ)の受信アンテナ素子28a、28b、28c(以下、特に区別しない場合には単に受信アンテナ素子28と称する)を有する受信アンテナ30と、それら受信アンテナ素子28により受信される受信信号それぞれの周波数を上記周波数変換信号出力部20から出力される周波数変換信号の周波数だけ低くする複数(図2では3つ)のダウンコンバータ32a、32b、32c(以下、特に区別しない場合には単にダウンコンバータ32と称する)と、それらダウンコンバータ32からそれぞれ出力されるダウンコンバートされた受信信号をディジタル信号に変換する複数(図2では3つ)の受信信号A/D変換部34a、34b、34c(以下、特に区別しない場合には単に受信信号A/D変換部34と称する)と、それら受信信号A/D変換部34によりディジタル信号に変換された受信信号を記憶すると共に、上記DSP16からの指令に応じてそのDSP16にそれら受信信号を出力させる受信信号記憶部であるメモリ部36とを、備えて構成されている。
上記DSP16は、CPU、ROM、及びRAM等から成り、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行う所謂マイクロコンピュータシステムであり、前記無線タグ14への送信信号に対応するコマンドビット列を生成する送信ビット列生成部38と、その送信ビット列生成部38から出力されたディジタル信号をFSK方式で符号化するFSK符号化部40と、そのFSK符号化部40により符号化された信号をAM方式で変調して上記送信信号D/A変換部18に供給するAM変調部42と、上記複数の受信アンテナ素子28により受信された受信信号それぞれに所定のウェイトを乗算することによりフェイズドアレイ処理を行うPAA(Phased Array Antenna)処理部44と、そのPAA処理部44によりフェイズドアレイ処理された受信信号をAM方式で復調してAM復調波を検出するAM復調部46と、そのAM復調部46により復調されたAM復調波をFSK方式で復号化するFSK復号部48と、そのFSK復号部48により復号化された復号信号を解釈して前記無線タグ14の変調に関する情報信号を読み出す返答ビット列解釈部50と、上記AM復調部46から出力されるAM復調波に基づいて受信信号強度を検出する受信信号強度検出部52と、その受信信号強度検出部52により検出される受信信号強度に基づいて通信対象である無線タグ14の方向を検出する方向検出部54とを、機能的に備えている。
上記PAA処理部44は、上記受信信号強度検出部52により検出される受信信号強度に基づいて前記複数の受信アンテナ素子28により受信された受信信号それぞれに与えるPAAウェイトを算出するPAAウェイト制御部56と、そのPAAウェイト制御部56により算出されるPAAウェイトを前記複数の受信アンテナ素子28により受信された受信信号それぞれに乗算する複数(図2では3つ)の受信PAAウェイト乗算部58a、58b、58c(以下、特に区別しない場合には単に受信PAAウェイト乗算部58と称する)と、それら受信PAAウェイト乗算部58によりそれぞれPAAウェイトが乗算された受信信号を合成(加算)して上記AM復調部46に供給する受信信号合成部60とを、備えて構成されており、前記無線タグ14との間の通信における受信指向性を制御する。すなわち、前記PAAウェイト制御部54は、前記受信アンテナ30による受信指向性を制御する受信指向性制御部である。
図3は、前記無線タグ14の構成を説明する図である。この図3に示すように、前記無線タグ14は、前記無線タグ通信装置12との間で信号の送受信を行うためのアンテナ部62と、そのアンテナ部62により受信された信号を処理するためのIC回路部64とを、備えて構成されている。そのIC回路部64は、上記アンテナ部62により受信された前記無線タグ通信装置12からの質問波Fcを整流する整流部66と、その整流部66により整流された質問波Fcのエネルギを蓄積するための電源部68と、上記アンテナ部62により受信された搬送波からクロック信号を抽出して制御部76に供給するクロック抽出部70と、所定の情報信号を記憶し得る情報記憶部として機能するメモリ部72と、上記アンテナ部62に接続されて信号の変調及び復調を行う変復調部74と、上記整流部66、クロック抽出部70、及び変復調部74等を介して上記無線タグ14の作動を制御するための制御部76とを、機能的に含んでいる。この制御部76は、前記無線タグ通信装置12と通信を行うことにより上記メモリ部72に上記所定の情報を記憶する制御や、上記アンテナ部62により受信された質問波Fcを上記変復調部74において上記メモリ部72に記憶された情報信号に基づいて変調したうえで応答波Frとして上記アンテナ部62から反射返信する制御等の基本的な制御を実行する。
図4は、前記PAA処理部44に備えられたPAAウェイトレジスタ78を例示する図である。このPAAウェイトレジスタ78は、前記PAAウェイト乗算部58a、58b、58cにおいてそれぞれ乗算されるPAAウェイトW1、W0、W−1を記憶するものであり、前記PAA処理部44は、予め計算されてこのPAAウェイトレジスタ78に記憶されたPAAウェイトW1、W0、W−1を読み出して前記PAAウェイト乗算部58a、58b、58cにおいてそれぞれの受信信号に乗算する。ここで、図4に示すように、前記PAAウェイト乗算部58aにて乗算されるPAAウェイトW1は、次の(1)式に従って算出され、PAAウェイト乗算部58bにて乗算されるPAAウェイトW0は、次の(2)式に従って算出され、前記PAAウェイト乗算部58cにて乗算されるPAAウェイトW−1は、次の(3)式に従って算出される。これら(1)〜(3)式において、φ及びΔは、次の(4)及び(5)式により示される値であり、λは波長、dは素子間隔、θは設定されるメインローブ方向である。また、上記PAAウェイトレジスタ78は、複数の指向性それぞれに対応して前記複数の受信アンテナ素子28それぞれに乗算するウェイトが予め定められたテーブルを有するものであってもよい。更には、これらの算出式はPAAウェイトW0を基準にしてPAAウェイトW1とPAAウェイトW−1とを設定したときの一例であり、ウェイト値はこれらの値に限定されるものではない。
W1=cos(φ)−sin(φ)i ・・・(1)
W0=1+0i ・・・(2)
W−1=cos(φ)+sin(φ)i ・・・(3)
φ=2π・Δ/λ ・・・(4)
Δ=d・sinθ ・・・(5)
図5は、前記PAA処理部44により受信指向性を変化させていった場合のメインローブの変化を説明する図であり、0乃至45[°]の間で15[°]ずつメインローブ方向を変化させた様子を示している。この図5に示すような指向性パターンにおいて一般に、通信感度が最大となる部分をメインローブ、その他の極大部分をサイドローブ、ローブ間の極小点をヌル点とそれぞれ称する。前記方向検出部54は、本検出に先立って、前記PAA処理部44により受信最大指向性方向を所定角度(例えば、15[°])ずつ変更しつつ前記受信信号強度検出部52により検出される受信信号強度が最大となる方向に基づいて前記通信対象の方向を予備検出する。すなわち、先ず、前記PAA処理部44によりメインローブ方向の角度θを変更し、前記受信信号強度検出部52により各メインローブ方向における前記無線タグ14からの返信信号強度を検出することで、通信対象である前記無線タグ14の方向を大まかに検出する。メインローブを制御することによる方向検知では、分解能が低く通信対象である無線タグ14の方向を詳細には検出できないが、短時間でその無線タグ14の有無及び大まかな方向を検知する目的では好適に利用できる。図6は、−45乃至45[°]の間で15[°]ずつメインローブ方向を変化させて、各メインローブ方向において検出された受信信号強度を示す図である。この図6に示す検出結果では、θ=15[°]で受信信号強度が最大値をとっており、この方向付近に通信対象である無線タグ14が存在していることがわかる。
前記方向検出部54は、前記PAA処理部44により受信最大指向性が第1の指向性方向とされた場合における受信信号強度及びその第1の指向性方向と所定角度異なる第2の指向性方向とされた場合における受信信号強度のうち何れか大きい方の受信信号強度が極小となる方向に基づいて前記通信対象の方向を検出(本検出)する。図7乃至図9は、前記方向検出部54による検出のために用いられる所定角度異なる2つの指向性方向それぞれにおける指向性パターンを示している。図7では第1の指向性方向がθ=0[°]、第2の指向性方向が20[°]である。また、図8では第1の指向性方向がθ=5[°]、第2の指向性方向が25[°]である。また、図9では第1の指向性方向がθ=10[°]、第2の指向性方向が30[°]である。これらの図に示すように、指向性方向の角度差が例えば20[°]以下といった比較的小さい2つの指向性パターンを重ねた場合、メインローブが重なり合う部分に見かけ上のゲインの谷間ができ、この谷間に対応する角度すなわち上記2つの角度の略中央の角度θHOLにおいて感度が極小となる。
前記方向検出部54は、好適には、前記第1の指向性方向及び第2の指向性方向を所定角度ずつ変更しつつ前記検出を繰り返し実行し、前記受信信号強度検出部52により検出される受信信号強度が極小となる方向を通信対象である前記無線タグ14の存在する方向として検出する。図10は、上記角度θHOLを0乃至30[°]の間で5[°]ずつ変化させて、各方向において検出された第1の指向性方向とされた場合における受信信号強度及び第2の指向性方向とされた場合における受信信号強度のうち何れか大きい方の受信信号強度(最大受信信号強度)を示す図である。この本検出では、前述したメインローブの制御による変化角度よりも小さい角度毎に角度θHOLを変化させて検出を行うのが好ましい。図10では、θHOL=0[°]から10[°]にかけて検出される最大受信信号強度が漸減し、θHOL=10[°]において極小値をとり、θHOL=10[°]から30[°]にかけて検出される最大受信信号強度が漸増している。受信最大指向性が第1の指向性方向とされた場合における受信信号強度及び第2の指向性方向とされた場合における受信信号強度のうち何れか大きい方の受信信号強度を検出する場合、通信対象である前記無線タグ14の方向と上記角度角度θHOLにより示される角度とが一致する場合に極小値をとるため、図10に示す検出結果では、θHOL=10[°]において最大受信信号強度が極小値をとっており、通信対象である無線タグ14はこの方向に存在することがわかる。このように、所定角度異なる2つの最大指向性方向それぞれにおけるメインローブが重なり合うゲインの谷間において前記受信信号強度が極小となる性質を利用することで、前記メインローブそのものを用いる場合よりも高い分解能が得られる。ここで、図10は、図6に示す予備検出の結果得られたθ=15[°]を中心として±15[°]の範囲を対象に本検出を実行して得られた検出結果であり、前記方向検出部54は、好適には、前記第1の指向性方向及び第2の指向性方向の初期値を前記予備検出において検出された前記通信対象の方向に基づいて定めるものである。
図11は、前記無線タグ通信装置12のDSP16による前記無線タグ14との情報通信制御を説明するフローチャートであり、所定の周期で繰り返し実行されるものである。
先ず、前記送信ビット列生成部38及びFSK符号化部40の動作に対応するステップ(以下、ステップを省略する)S1において、前記無線タグ14への送信信号に対応するコマンドビット列が生成されてFSK方式で符号化される。次に、前記AM変調部42の動作に対応するS2において、S1にて符号化された信号がAM方式で変調される。次に、S3において、S2にて変調された送信信号が前記送信信号D/A変換部18及びアップコンバータ22を介して前記送信アンテナ26から質問波Fcとして前記無線タグ14に向けて送信される。次に、S4において、S3にて送信された質問波Fcに応じて前記無線タグ14から返信される応答波Frが前記受信アンテナ30により受信され、前記ダウンコンバータ32及び受信信号A/D変換部34を介して前記メモリ部36に記憶される。次に、図12に示すタグ方向の予備検出制御(メインローブを利用した方向検出制御)が実行された後、S5において、通信対象である無線タグ14が検出されたか否かが判断される。このS5の判断が否定される場合には、通信対象である無線タグ14は存在しないとして本ルーチンがエラー終了させられるが、S5の判断が肯定される場合には、図13に示すタグ方向の本検出制御(2つの指向性方向それぞれにおけるメインローブが重なり合うゲインの谷間を利用した方向検出制御)が実行された後、S6において、通信対象である無線タグ14の方向を示す角度がθREF,MINとされる。次に、前記AM復調部46の動作に対応するS7において、前記PAA処理部44によりフェイズドアレイ処理された受信信号がAM方式で復調されてAM復調波が検出される。次に、前記FSK復号部48及び返答ビット列解釈部50の動作に対応するS8において、S7にて復調されたAM復調波がFSK方式で復号化されて復号信号が解釈され、前記無線タグ14の変調に関する情報信号が読み出された後、本ルーチンが終了させられる。
図12は、図11の情報通信制御の一部であるタグ方向の予備検出制御、すなわちメインローブを利用した方向検出制御を説明するフローチャートである。この制御では、先ず、SA1において、前記PAAウェイトレジスタ78に初期値が設定され、メインローブの方向θMAINが−45[°]とされる。次に、SA2において、図11のS4にて記憶された前記複数の受信アンテナ素子28にそれぞれ対応する受信信号が前記メモリ部36から読み出される。次に、SA3において、SA2にて読み出された複数の受信信号に前記PAAウェイトレジスタ78の値が掛け合わされ、前記受信信号合成部60からの合成出力Yが算出される。次に、SA4において、SA3にて算出された合成出力Yに含まれる前記無線タグ14からの応答波(反射波)成分すなわち受信信号強度が最大であるか否かが判断される。このSA4の判断が肯定される場合には、SA5において、前記無線タグ14の大まかな方向を示す角度θREF_MAXがθMAINとされた後、SA6以下の処理が実行されるが、SA4の判断が否定される場合には、SA6において、前記PAAウェイトレジスタ78の設定値が更新され、メインローブの方向θMAINに15[°]が加算された後、SA7において、メインローブの方向θMAINが45[°]より大きいか否かが判断される。このSA7の判断が否定される場合には、SA2以下の処理が再び実行されるが、SA7の判断が肯定される場合には、それをもって本ルーチンが終了させられ、図11に示すメインルーチンへ復帰させられる。
図13は、図11の情報通信制御の一部であるタグ方向の本検出制御、すなわち2つの最大指向性方向それぞれにおけるメインローブが重なり合うゲインの谷間を利用した方向検出制御を説明するフローチャートである。この制御では、先ず、SB1において、前記PAAウェイトレジスタ78に初期値が設定され、2つの最大指向性方向の中央の角度θHOLが図12のSA5にて設定された角度θREF_MAX−5[°]に設定されると共に、第1のメインローブの方向を示す角度θMAINがθHOL−10[°]に設定される。次に、SB2において、図11のS4にて記憶された前記複数の受信アンテナ素子28にそれぞれ対応する受信信号が前記メモリ部36から読み出される。次に、SB3において、SB2にて読み出された複数の受信信号に前記PAAウェイトレジスタ78の値が掛け合わされ、前記受信信号合成部60からの合成出力Y1が算出される。次に、SB4において、前記PAAウェイトレジスタ78の値が更新され、第2のメインローブの方向を示す角度θMAINがθMAIN+20[°]に設定される。次に、SB5において、図11のS4にて記憶された前記複数の受信アンテナ素子28にそれぞれ対応する受信信号が前記メモリ部36から読み出される。次に、SB6において、SB5にて読み出された複数の受信信号に前記PAAウェイトレジスタ78の値が掛け合わされ、前記受信信号合成部60からの合成出力Y2が算出される。次に、SB7において、SB3にて算出されたY1とSB6にて算出されたY2とが比較されて、何れか大きい方の値がYHOLとされる。次に、SB8において、SB7にて決定されたYHOLの反射波成分が最小であるか否かが判断される。このSB8の判断が肯定される場合には、SB9において、前記無線タグ14の方向を示す角度θREF,MINがθHOLとされた後、SB10以下の処理が実行されるが、SB8の判断が否定される場合には、SB10において、前記PAAウェイトレジスタ78の設定値が更新され、2つの最大指向性方向の中央の角度θHOLがθHOL+5[°]に設定されると共に、第1のメインローブの方向を示す角度θMAINがθHOL−10[°]に設定される。次に、SB11において、2つの最大指向性方向の中央の角度θHOLが所定の角度θREF_MAX+5[°]より大きいか否かが判断される。このSB11の判断が否定される場合には、SB2以下の処理が再び実行されるが、SB11の判断が肯定される場合には、それをもって本ルーチンが終了させられ、図11に示すメインルーチンへ復帰させられる。以上の制御において、S6、SA、及びSBが前記方向検出部54の動作に、SA及びSBが前記PAA処理部44の動作にそれぞれ対応する。
このように、本実施例によれば、前記受信アンテナ30による受信指向性を制御する受信指向性制御部であるPAA処理部44(SA及びSB)と、前記受信アンテナ30により受信される受信信号強度を検出する受信信号強度検出部52と、前記PAA処理部44により受信最大指向性方向が第1の指向性方向とされた場合における受信信号強度及びその第1の指向性方向と所定角度異なる第2の指向性方向とされた場合における受信信号強度のうち何れか大きい方の受信信号強度が極小となる方向に基づいて通信対象である前記無線タグ14の方向を検出する方向検出部54(S6、SA、及びSB)とを、含むことから、所定角度異なる2つの指向性方向それぞれにおけるメインローブが重なり合うゲインの谷間において前記受信信号強度が極小となる性質を利用することで、前記無線タグ14との通信感度が最大となるメインローブそのものを用いる場合よりも高い分解能が得られ、その無線タグ14の方向を好適に検出することができる。また、信号強度の強い受信信号に対しては分解能が高くなるが信号強度の弱い受信信号に対しては効果がないヌルを用いた場合と違って、信号強度が弱い受信信号に対しても前記無線タグ14の方向を好適に検出することができる。すなわち、可及的簡単な処理により広範囲で分解能が高い無線タグ14の方向検知を実現する無線タグ通信装置12を提供することができる。
また、前記方向検出部54は、前記検出に先立って、前記PAA処理部44により受信最大指向性方向を所定角度ずつ変更しつつ前記受信信号強度検出部52により検出される受信信号強度が最大となる方向に基づいて前記通信対象の方向を予備検出するものであるため、前記無線タグ14との通信感度が最大となるメインローブ方向においてその無線タグ14の方向を短時間で大まかに検出することができる。
また、前記方向検出部54は、前記第1の指向性方向及び第2の指向性方向の初期値を前記予備検出において検出された前記通信対象の方向に基づいて定めるものであるため、前記予備検出において大まかに検出された方向を利用することで、前記検出に要する時間を短縮することができる。
また、前記方向検出部54は、前記第1の指向性方向及び第2の指向性方向を所定角度ずつ変更しつつ前記検出を繰り返し実行するものであるため、実用的な態様で前記無線タグ14の方向を検出することができる。
また、前記受信アンテナ30は、2つ以上の受信アンテナ素子28から成るものであるため、実用的な受信アンテナ30により受信指向性を簡単に制御できる。
また、前記2つ以上の受信アンテナ素子28から成る受信アンテナ30は、アレイアンテナであるため、実用的な受信アンテナ30により受信指向性を簡単に制御できる。
また、前記受信アンテナ30により受信された受信信号を記憶する受信信号記憶部であるメモリ部36を含むものであるため、簡単な構成により受信信号の合成処理を行い指向性制御等の効果を得ることができる。また、可及的に少ない前記送信信号の送信回数(通信対象である無線タグ14との通信回数)により無線タグ14を検出することができる。
また、前記無線タグ14へ所定の信号を送信する送信アンテナ26を有するものであるため、所定の信号に応じて返信を行うパッシブタグ等の通信対象の方向を好適に検出することができる。
また、前記PAA処理部44は、前記受信アンテナ30による受信指向性を送信指向性とは独立に制御するものであるため、送信指向性及び受信指向性のうち少なくとも一方を好適に制御することができる。
続いて、本発明の他の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の説明に関して、前述した実施例と共通する部分については、同一の符号を付してその説明を省略する。
図14は、本発明の第2実施例である無線タグ通信装置80の構成を説明する図である。この図14に示すように、本実施例の無線タグ通信装置80は、前記AM変調部42により変調された送信信号を記憶すると共に、上記DSP16からの指令に応じてそのDSP16にその送信信号を出力させる記憶装置であるメモリ部82と、前記PAAウェイト制御部56により算出されるPAAウェイトをその送信信号に乗算する複数(図14では3つ)の送信PAAウェイト乗算部84a、84b、84c(以下、特に区別しない場合には単に送信PAAウェイト乗算部84と称する)と、それら送信PAAウェイト乗算部84によりそれぞれPAAウェイトが乗算された送信信号をアナログ信号に変換する複数(図14では3つ)の送信信号D/A変換部18a、18b、18c(以下、特に区別しない場合には単に送信信号D/A変換部18と称する)と、それら送信信号D/A変換部18によりアナログ信号に変換された送信信号それぞれの周波数を前記周波数変換信号出力部20から出力される周波数変換信号の周波数だけ高くする複数(図12では3つ)のアップコンバータ22a、22b、22c(以下、特に区別しない場合には単にアップコンバータ22と称する)と、それらアップコンバータ22からそれぞれ出力されるアップコンバートされた送信信号を質問波Fcとして前記無線タグ14に向けて送信する複数(図14では3つ)の送信アンテナ素子24a、24b、24c(以下、特に区別しない場合には単に送信アンテナ素子24と称する)を有する送信アンテナ86とを、備えて構成されている。
上記無線タグ通信装置80では、前記PAAウェイト制御部56、受信PAAウェイト乗算部58、受信信号合成部60、及び送信PAAウェイト乗算部84がPAA処理部88を構成している。このPAA処理部88において、前記PAAウェイト制御部56から供給される送信PAAウェイトに応じて上記送信PAAウェイト乗算部84により送信指向性の制御が、前記PAAウェイト制御部56から供給される受信PAAウェイトに応じて前記受信PAAウェイト乗算部58により受信指向性の制御がそれぞれ行われる。
また、前記無線タグ通信装置80では、前記受信信号強度検出部52、PAAウェイト制御部56、受信PAAウェイト乗算部58、受信信号合成部60、及び送信PAAウェイト乗算部84が方向検出部90を構成している。この方向検出部90は、好適には、前記PAA処理部88により前記受信アンテナ30による受信最大指向性方向の初期値を前記送信アンテナ86から送信される信号の送信指向性方向として通信対象である無線タグ14の方向検出を行う。
また、前記方向検出部90は、好適には、前述した受信最大指向性が第1の指向性方向とされた場合における受信信号強度及び第2の指向性方向とされた場合における受信信号強度のうち何れか大きい方の受信信号強度が極小となる方向に基づく前記無線タグ14の方向検出において、前記第1の指向性方向及び第2の指向性方向の基準となる方向と所定の原方向との成す角度が大きくなるほど、それら第1の指向性方向と第2の指向性方向との成す角度を広く補正する。図15及び図16は、原方向を角度0[°]方向として斯かる角度の補正について説明する図である。例えば、原方向である角度0[°]から基準となる方向θSTを5[°]ずつ変更しつつ前記第1の指向性方向をその基準となる方向θSTから所定角度例えば10[°]引いた角度、第2の指向性方向をその基準となる方向θSTに所定角度例えば10[°]足した角度として前記検出を行う場合を考えると、上記基準となる方向θSTと所定の原方向との成す角度が大きくなるにつれて、その基準となる方向θSTと前述した2つの指向性方向それぞれにおけるメインローブが重なり合うゲインの谷間に対応する方向θHOLとにずれが生じる。例えば、図15に示すように、基準となる方向θSTが35[°]であり、2つの指向性方向がそれぞれ25[°]、45[°]である場合には、メインローブが重なり合うゲインの谷間に対応する方向θHOLが基準となる方向θSTよりも原方向0[°]側にずれ、約34[°]の方向を示しているのがわかる。この場合、図16に示すように、第2の指向性方向を原方向から所定角度例えば1[°]大きくすること、すなわち46.5[°]とすることで、上記基準となる方向θSTと前述した2つの指向性方向それぞれにおけるメインローブが重なり合うゲインの谷間に対応する方向θHOLとが一致する。このようにすることで、通信対象である無線タグ14の方向を更に正確に検出することができる。また、斯かる補正は実施例1の方向検出部54にも適用できる。
図17は、前記無線タグ通信装置80のDSP16による前記無線タグ14との情報通信制御を説明するフローチャートであり、所定の周期で繰り返し実行されるものである。この図17に示す制御は、前述した図11に示す制御に対応するものであり、共通するステップについては同一の符号を付してその説明を省略する。この制御では、前述したS2の処理に続いて、図18に示すタグ方向の予備検出制御が実行された後、S5において、通信対象である無線タグ14が検出されたか否かが判断される。このS5の判断が否定される場合には、通信対象である無線タグ14は存在しないとして本ルーチンがエラー終了させられるが、S5の判断が肯定される場合には、図19に示すタグ方向の本検出制御が実行された後、前述したS6以下の処理が実行される。
図18に示す制御は、前述した図12に示す制御に対応するものであり、共通するステップについては同一の符号を付してその説明を省略する。この制御では、前述したSA1の処理に続いて、SA8において、図17のS2にて変調された送信信号に前記PAAウェイトレジスタ78の値が掛け合わされ、前記送信信号D/A変換部18及びアップコンバータ22を介して前記送信アンテナ86から質問波Fcとして前記無線タグ14に向けて送信される。次に、SA9において、SA8にて送信された質問波Fcに応じて前記無線タグ14から返信される応答波Frが前記受信アンテナ30により受信され、前記ダウンコンバータ32及び受信信号A/D変換部34を介して前記メモリ部36に記憶された後、前述したSA2以下の処理が実行される。
図19に示す制御は、前述した図13に示す制御に対応するものであり、共通するステップについては同一の符号を付してその説明を省略する。この制御では、前述したSB1の処理に続いて、SB12において、図17のS2にて変調された送信信号に前記PAAウェイトレジスタ78の値が掛け合わされ、前記送信信号D/A変換部18及びアップコンバータ22を介して前記送信アンテナ86から質問波Fcとして前記無線タグ14に向けて送信された後、前述したSB2以下の処理が実行される。また、前述したSB4の処理に続いて、SB13において、図17のS2にて変調された送信信号に前記PAAウェイトレジスタ78の値が掛け合わされ、前記送信信号D/A変換部18及びアップコンバータ22を介して前記送信アンテナ86から質問波Fcとして前記無線タグ14に向けて送信された後、前述したSB5以下の処理が実行される。以上の制御において、S6、SA、及びSBが前記方向検出部90の動作に、SA及びSBが前記PAA処理部88の動作にそれぞれ対応する。
このように、本実施例によれば、前記方向検出部90(S6、SA、及びSB)は、前記第1の指向性方向及び第2の指向性方向の基準となる方向と所定の原方向との成す角度が大きくなるほど、それら第1の指向性方向と第2の指向性方向との成す角度を広く補正するものであるため、通信対象である無線タグ14の方向を更に正確に検出することができる。
また、前記送信アンテナ86から送信される信号の送信指向性を制御する送信指向性制御部であるPAA処理部88を含むものであるため、更に離れた場所に設置された通信対象であっても、その方向を好適に検出することができる。
また、前記受信指向性制御部であるPAA処理部88(SA及びSB)は、前記受信アンテナ30による受信最大指向性方向の初期値を前記送信アンテナ86から送信される信号の送信最大指向性方向とするものであるため、前記検出における受信最大指向性方向の初期値を好適に定めることができる。
また、前記PAA処理部88は、送信指向性と受信指向性とを一致させるように制御するものであるため、前記無線タグ14との間で好適な情報通信を行うことができる。
以上、本発明の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、更に別の態様においても実施される。
例えば、前述の実施例において、前記無線タグ通信装置12、80は、複数の受信アンテナ素子28を有する受信アンテナ30を備え、それら受信アンテナ素子28により受信される受信信号それぞれにPAAウェイトを乗算することにより受信指向性を制御するものであったが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、図20に示すように、所定の指向性を有する八木アンテナ92と、その八木アンテナ92を所定の軸まわりに機械的に回転させることにより指向性を変更する指向性制御装置94とから成るアンテナユニット96を備え、斯かるアンテナユニット96により前述の検出制御を行うものであってもよい。また、図21に示すように、2つの八木アンテナ92a、92bが互いに所定角度異なる指向性方向をとるように構成され、それら2つの八木アンテナ92a、92b相互間の角度を保ちながら軸まわりに機械的に回転させることにより指向性を変更するアンテナユニット98により前述の検出制御を行うものであっても構わない。斯かるアンテナユニット98によれば、受信最大指向性が第1の指向性方向とされた場合における受信信号と、受信最大指向性が第2の指向性方向とされた場合における受信信号とを同時に受信できる。
また、前述の実施例では特に言及していないが、送信指向性制御部である前記PAA処理部88は、前記第1の指向性方向及び第2の指向性方向の中間方向に送信指向性が向くように制御するものである。このようにすれば、通信対象である前記無線タグ14との間で好適な通信を行うことができる。この場合、図22に示すように、一点鎖線で示す前記第1の指向性及び鎖線で示す前記第2の指向性両方のメインローブを覆う程度のメインローブ特性を有する送信指向性とすることが望ましい。送信メインローブが受信メインローブと同程度の細さであると、2つの受信指向性の最小(落ち込み)部分が送信指向性の最大部分で打ち消されて効果が少なくなるが、前記第1の指向性及び第2の指向性両方のメインローブを覆う程度のメインローブ特性を有する送信指向性とすることで、斯かる弊害を好適に解消できるのである。
また、前述の実施例において、前記無線タグ通信装置12、80は、前記送信信号を送信するための送信アンテナ素子24及び前記返信信号を受信するための複数の受信アンテナ素子28をそれぞれ個別に備えたものであったが、前記送信信号を送信すると共に前記返信信号を受信するための送受信共用のアンテナ素子を備えたものであっても構わない。このようにすれば、前記無線タグ通信装置12、80のアンテナ構成を可及的に簡単なものとすることができる。
また、前述の実施例において、前記受信信号強度検出部52、方向検出部54、及びPAAウェイト制御部56等は、何れも前記DSP16に機能的に備えられたものであったが、これらはそれぞれ個別の制御装置として設けられるものであってもよい。また、それらの制御は、ディジタル信号処理によるものであるとアナログ信号処理によるものであるとを問わない。
その他、一々例示はしないが、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が加えられて実施されるものである。
本発明の無線装置が好適に用いられる通信システムを説明する図である。
本発明の無線装置の一実施例である無線タグ通信装置の構成を説明する図である。
図2の無線タグ通信装置の通信対象である無線タグの構成を説明する図である。
図2の無線タグ通信装置のPAA処理部に備えられたPAAウェイトレジスタを例示する図である。
図2の無線タグ通信装置のPAA処理部により受信指向性を変化させていった場合のメインローブの変化を説明する図であり、0乃至45[°]の間で15[°]ずつメインローブ方向を変化させた様子を示している。
図2の無線タグ通信装置のPAA処理部により−45乃至45[°]の間で15[°]ずつメインローブ方向を変化させて、各メインローブ方向において検出された受信信号強度を示す図である。
図2の無線タグ通信装置の方向検出部による検出のために用いられる所定角度異なる2つの指向性方向それぞれにおける指向性パターンであり、それら2つの指向性方向の中心角度が10[°]の方向である場合を示している。
図2の無線タグ通信装置の方向検出部による検出のために用いられる所定角度異なる2つの指向性方向それぞれにおける指向性パターンであり、それら2つの指向性方向の中心角度が15[°]の方向である場合を示している。
図2の無線タグ通信装置の方向検出部による検出のために用いられる所定角度異なる2つの指向性方向それぞれにおける指向性パターンであり、それら2つの指向性方向の中心角度が20[°]の方向である場合を示している。
図2の無線タグ通信装置のPAA処理部により2つの指向性方向の中心角度を0乃至30[°]の間で5[°]ずつ変化させて、各方向において検出された第1の指向性方向とされた場合における受信信号強度及び第2の指向性方向とされた場合における受信信号強度のうち何れか大きい方の受信信号強度を示す図である。
図2の無線タグ通信装置のDSPによる図3の無線タグとの情報通信制御を説明するフローチャートである。
図11に示す制御の一部であるタグ方向の予備検出制御を説明するフローチャートである。
図11に示す制御の一部であるタグ方向の本検出制御を説明するフローチャートである。
本発明の無線装置の他の実施例である無線タグ通信装置の構成を説明する図である。
図14の無線タグ通信装置の方向検出部による第1の指向性方向と第2の指向性方向との成す角度の補正について説明する図である。
図14の無線タグ通信装置の方向検出部による第1の指向性方向と第2の指向性方向との成す角度の補正について説明する図である。
図14の無線タグ通信装置のDSPによる図3の無線タグとの情報通信制御を説明するフローチャートである。
図17に示す制御の一部であるタグ方向の予備検出制御を説明するフローチャートである。
図17に示す制御の一部であるタグ方向の本検出制御を説明するフローチャートである。
本発明の無線装置に備えられる受信アンテナの他の一例を説明する図である。
本発明の無線装置に備えられる受信アンテナの更に別の一例を説明する図である。
図14に示す無線タグ通信装置のPAA処理部により第1の指向性方向及び第2の指向性方向の中間方向に送信指向性が向くように制御する様子を説明する図である。
符号の説明
12、80:無線タグ通信装置(無線装置)
14:無線タグ(通信対象)
26、86:送信アンテナ
28:受信アンテナ素子
30:受信アンテナ
36:メモリ部(受信信号記憶部)
44:PAA処理部(受信指向性制御部)
52:受信信号強度検出部
54、90:方向検出部
88:PAA処理部(受信指向性制御部、送信指向性制御部)
96、98:アンテナユニット(受信アンテナ)