JP4714381B2 - 難燃性無反射フィルム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種光学装置、特にプロジェクションテレビや3D映像システムのような大型光学機器の内壁面に入射した光の反射を防止するために用いるのに好適な無反射フィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、カメラ、複写機、現像機などの光学装置においては、入射光の反射による種々の障害が問題となっている。例えば、カメラの場合、入射光が内壁面で反射してフィルムに悪影響を与えたり、光源からの光がカメラ内壁面で反射し、ファインダー光路中に入射してファインダー視野画像を見にくくする。レンズがカメラ内に内蔵され、レンズ部を伸縮可能に設け、標準撮影とズーム撮影が可能なものが多く出てきているが、この場合、入射した経路の異なる光が混合し、撮影写真にハレーションやゴーストを発生させるし、また、複写機においては、感光体に画像を形成する際、複写機内から発生する光が機内で反射し、感光体の画像が不鮮明になる場合がある。一方、現像機においては、入射光が内壁面で反射して、現像中のフィルムに感光したり、あるいは印画紙への焼き付けの際には、写真の焦点がぼけて不鮮明になる。
【0003】
このため、これまで、光学機器、例えばカメラでは、カメラ本体、シャッターケース、カバーなどを黒色艶消しのプラスチック材料により形成したり、フレキシブルプリント基板の表面や光学機器の内部に、植毛紙を貼付することが行われていた。
【0004】
しかしながら、光学機器の内壁面を黒色艶消しプラスチック材料で形成すると、設計段階では予想できない光の反射に関係する部分については、その個所のみを加工するために、技術的に煩雑となり、コスト高になるのを免れず、しかも内壁面に対して水平に近い、いわゆる低角度で入射する光に対して満足しうる反射防止効果が得られないという欠点を生じる。
【0005】
本発明者らは、これらの欠点を克服するために、先に合成樹脂バインダー100質量部中に、(A)質量平均粒径15〜50μmの合成樹脂微粒子と(B)質量平均粒径1.0μm以下のカーボンブラック微粒子とを質量比10:1ないし1:5の割合で、かつそれらの合計量が20〜500質量部になるように分散させて成る厚さ15〜100μmの反射防止層を基材の一方の面に設け、該反射防止層表面の入射光60度に対する光沢度を0〜0.5%に制御したことを特徴とする反射防止用フィルムを提案した。
【0006】
しかしながら、この反射防止用フィルムは、カメラのような小型の光学機器に適用するものとしては好適であるが、プロジェクションテレビや3D映像システムのような大型の光学機器に用いるには、小型光学装置ではあまり問題とされず、大型光学装置において重要な問題となる難燃性の点については全く配慮されていない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような事情のもとで、プロジェクションテレビや3D映像システムのような大型光学機器において、燃焼に対する十分な安全性を有する無反射フィルムを提供することを目的としてなされたものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、内壁面に入射した光の反射を効果的に防止し、しかも内部で発生する熱による燃焼の危険のない無反射フィルムを開発するために鋭意研究を重ねた結果、難燃性のベースフィルムを用いるとともに、2種の樹脂粒子及び着色剤とを含有する反射防止層を設けることにより、その目的を達成しうることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、難燃性ベースフィルムの少なくとも一方の面に反射防止層を設けてなる積層体において、該反射防止層が合成樹脂バインダー100質量部に対し、(A)平均粒径5〜25μmのカーボンブラック含有合成樹脂粒子と(B)平均粒径30〜50μmのカーボンブラック含有合成樹脂粒子とを質量比6:1ないし2:1の割合で含む混合粒子20〜500質量部及び(C)平均粒径1μm以下のカーボンブラック粒子1〜100質量部を配合した厚さ15〜100μmの層であることを特徴とする難燃性無反射フィルムを提供するものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の無反射フィルムにおいては、ベースフィルムとして難燃性フィルムを用いることが必要であるが、この難燃性フィルムは、難燃性の素材からなるものでもよいし、また汎用プラスチックフィルムに難燃剤を配合して難燃性にしたものでもよい。
【0011】
この素材が難燃性のフィルムとしては、例えばポリカーボネート、ポリフェニレンオキシド、芳香族ポリイミド、芳香族ポリアミド、ポリスルホン、ポリキシリレン、ポリベンズイミダゾール、ポリキナゾリンジオン、ポリベンゾオキサジノンなどのフィルムがあるが、入手しやすいという点で、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキシド、芳香族ポリイミド及びポリスルホンのフィルムが好ましい。
【0012】
他方、難燃剤を配合して難燃性が付与される汎用プラスチックフィルムとしては、例えばポリエステル、フェノール樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリハロゲン化ビニル、ポリスチレンなどのフィルムを挙げることができる。
【0013】
また、これらの汎用プラスチックフィルムに配合される難燃剤の例としては、トリエチルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリス(2,3‐ジクロロプロピルホスフェート)などの有機リン系難燃剤やヘキサブロモベンゼン、ヘキサブロモドデカンなどの含ハロゲン系難燃剤や、三酸化アンチモン、水酸化アルミニウム、ホウ酸塩などの無機系難燃剤やテトラブロモ無水フタル酸、クロルエンド酸などの有機カルボン酸系難燃剤があり、任意に選んで用いることができる。
【0014】
これらの難燃剤は、汎用プラスチックフィルム100質量部当り1〜30質量部、好ましくは5〜24質量部の割合で配合される。
このベースフィルムの厚さは25〜200μmの範囲が適当である。これよりも厚さが小さいとハンドリング性が低下し、またこれよりも厚さが大きいと軽量化の点で不利になる。
【0015】
このベースフィルムとしては、粗面化処理を施したものを用いてもよい。この粗面化処理は、例えば化学的エッチング法やサンドブラスト法により、JIS B0601に従い測定した中心線平均粗さ0.02〜10.0μm、好ましくは0.2〜5.0μmの範囲内で行うのが好ましい。また、このベースフィルムは、カーボンブラックなどの顔料や染料によって着色してあってもよい。
【0016】
さらに、本発明においては、上記ベースフィルムの粗面化処理面に、ベースフィルムと反射防止層との接着性を向上させるために、所望によりアンカー層を設けることもできる。このアンカー層は、通常、ポリエステル系樹脂、尿素系樹脂、メラミン系樹脂、ウレタン系樹脂などから構成されており、厚さ0.1〜2.0g/m2程度の層とすることが好ましい。
【0017】
このアンカー層には、難燃性を付与するために、難燃剤を配合してもよい。この難燃剤の例としては、前記したベースフィルムに配合する難燃剤として列挙したものがあり、任意に選んで用いることができる。
【0018】
次に、本発明においては、バインダー合成樹脂に、(A)平均粒径5〜25μmのカーボンブラック含有合成樹脂粒子と(B)平均粒径30〜50μmのカーボンブラック含有合成樹脂粒子との混合物及び(C)平均粒径1μm以下のカーボンブラック粒子を分散させたものを反射防止層として用いることが必要である。この合成樹脂バインダーとしては、熱や光などにより硬化する硬化性樹脂や熱可塑性樹脂などが用いられる。
【0019】
この熱硬化性樹脂としては、例えばアクリル系、ウレタン系、フェノール系、メラミン系、尿素系、ジアリルフタレート系、ポリエステル系、エポキシ系、アルキド系などが好ましく用いられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中で、特に熱硬化性アクリル樹脂が、耐熱性、耐湿性、耐溶剤性及び表面硬度などが優れるので好ましい。また、熱可塑性樹脂としては、熱可塑性アクリル樹脂や、塩化ビニル樹脂、ブチラール樹脂、スチレン/ブタジエン樹脂などが挙げられる。なお、この合成樹脂バインダーは難燃性の樹脂からなるものでもよいし、汎用の樹脂に難燃剤を配合して難燃性にしたものでもよい。さらに、この合成樹脂バインダーは合成樹脂微粒子の屈折率と同等のものを用いることにより、光の拡散を抑制するので反射防止効果を向上することができる。
【0020】
この合成樹脂バインダーには、所望により、架橋剤を含有させることができる。この架橋剤としては、例えば、尿素樹脂、メラミン樹脂、イソシアネート樹脂、アジリジン樹脂、オキサゾリン樹脂などが挙げられ、特にメラミン樹脂が、耐熱性、耐溶剤性及び塗膜硬度などが優れるので好ましい。架橋剤の配合割合は、合成樹脂バインダーに対し、通常5〜50質量%の範囲である。これよりも少ないと所望の特性が得られず、また、これより多いと塗膜が硬すぎてもろくなる。
【0021】
さらに、架橋剤を用いる場合は、その反応を促進するために、反応触媒を併用するのが望ましい。この反応触媒の配合割合は、架橋剤に対し通常0.1〜10質量%の範囲である。
【0022】
前記の(A)成分及び(B)成分は、カーボンブラック微粒子を合成樹脂粒子中に均一分散したものや、カーボンブラック微粒子を合成樹脂粒子表面に付着させたものがあり、どちらを用いてもよい。この合成樹脂粒子としては、合成樹脂バインダーで列挙した、熱や光などにより硬化する硬化性樹脂や熱可塑性樹脂などからなり、(A)成分と(B)成分とで任意に選択することができる。この(A)成分及び(B)成分中のカーボンブラック含有量としては、2〜30質量%の範囲で選ばれる。
【0023】
この(A)成分は、平均粒径が5〜25μmの範囲にあることが必要である。これよりも小さいと低角度(85°)での光沢度が高くなるし、また、これよりも大きいと高角度(60°)の光沢度が高くなる。以上の点で、この(A)成分の好ましい範囲は15〜25μmである。
他方、(B)成分は、平均粒径が30〜50μmの範囲にあることが必要である。これよりも小さいと低角度(85°)での光沢度が高くなるし、また、これよりも大きいと塗布液の分散安定性が悪くなり、沈降してくるため、良質の反射防止層が得られない。以上の点で、この(B)成分の好ましい範囲は35〜45μmである。
【0024】
上記の(A)成分と(B)成分とは質量比6:1ないし2:1、好ましくは5:1ないし3:1の割合で混合して用いられる。
(A)成分がこれよりも多くなると低角度(85°)の光沢度が高くなるし、またこれよりも少なくなると高角度(60°)の光沢度が高くなり、いずれにしても反射防止性が低下する。最も好ましい(A)成分と(B)成分の混合割合は4:1である。
【0025】
また、本発明においては、この(A)成分と(B)成分は、その合計量が、前記合成樹脂バインダー100質量部に対して、20〜500質量部になるような割合で配合することが必要である。この配合量が20質量部未満では光沢度が高くなるおそれがあるし、500質量部を越えると塗膜がもろくなりやすい。塗膜物性及び反射防止性の面から、この(A)成分と(B)成分の好ましい配合量は、その合計量が合成樹脂バインダー100質量部に対し、50〜200質量部の範囲である。
【0026】
他方、(C)成分は、垂直方向からの入射光を吸収して無反射効果をいっそう向上させる作用を付加するもので、そのためには平均粒径1μm以下にするとともに、前記合成樹脂バインダー100質量部に対して、1〜100質量部になるような割合で配合することが必要である。この配合量が1質量部未満ではバインダーへの着色が不十分であるし、100質量部を越えると塗膜がもろくなりやすい。(C)成分の好ましい配合量は、合成樹脂バインダー100質量部に対し、10〜50質量部の範囲である。
【0027】
さらに、反射防止層の厚さは、15〜100μmの範囲にあることが必要である。この反射防止層の厚さが15μm未満であると反射防止性が悪くなるし、100μmを越えるとフィルム全厚が厚くなり、厚みの点で有効性が失われる。
【0028】
本発明の反射防止層には、その中に含ませる合成樹脂バインダーとして難燃性のものを用いるか、あるいはその中に難燃剤を配合させることにより、難燃性を付与するのが有利である。この際用いる難燃剤の例としては、ベースフィルムに配合する難燃剤として列挙されたものがあり、任意に選んで用いることができる。
【0029】
本発明における反射防止層を形成させるには、例えば前記した合成樹脂バインダーと(A)成分と(B)成分と(C)成分とを、水とエチルアルコールからなる混合溶剤に溶解して塗布液を調製し、厚さ15〜100μmの塗膜が形成される坪量で、前記の難燃性ベースフィルムの上に塗布し、乾燥する。
この際、塗布液には必要に応じ、従来慣用されている各種添加剤、例えば増粘剤、分散剤、着色剤、消泡剤などを配合することができる。
【0030】
本発明の難燃性無反射フィルムでは、所望に応じ反射防止層とは反対側の表面にベースフィルムの全面又は部分的に粘着層を設けることもできる。そして使用時にはこの粘着層により、容易に装置内へ貼着することができる。この粘着層の厚さとしては、通常5〜100g/m2、好ましくは10〜50g/m2の範囲が選ばれる。
【0031】
この粘着層を構成する粘着剤としては、天然ゴム、天然ゴムとスチレンブタジエンゴムとの混合物、アクリル系共重合体、ブタジエン又はイソプレンとスチレンとの共重合体、ビニルエーテル共重合体、シリコーンゴムなどを基材とし、これらにロジン系、石油系又はテルペン系の粘着性付与剤を粘着調整剤、接着改良剤、老化防止剤、安定剤、着色剤などの成分を添加したものを用いることができるが、特にアクリル酸エステル系樹脂を主成分とする基材からなるものが好適である。この粘着層には、難燃性を付与するために難燃剤を配合することもできる。この難燃剤としては、前記のベースフィルムに配合する難燃剤の例として列挙したものがあり、任意に選んで用いることができる。
また、断面などにおいて側方からの入射光に基づく反射をできるだけ防止するために、濃色着色剤を含有させるのが有利である。
【0032】
本発明の難燃性無反射フィルムは、難燃性試験の規格UL94に十分合格しうる難燃性を有することが必要である。この規格UL94には、水平燃焼試験UL94HB、20mm垂直燃焼試験UL94V及び薄手材料垂直燃焼試験UL94VTMがあるが、これらの試験のすべてに合格しうる難燃性を有するのが望ましい。
【0033】
【発明の効果】
本発明の難燃性無反射フィルムは、反射防止性、特に低角度の入射光に対する光の反射防止に優れ、植毛紙に比べて薄く、しかも植毛紙のように抜け毛やごみの付着による汚染を生じないので、各種光学機器、特にプロジェクションテレビや3D映像のような大型光学機器の内壁面に貼着する内面無反射フィルムとして好適である。
【0034】
【実施例】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
【0035】
実施例1
厚さ70μmの、難燃剤を含有するポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱樹脂製、商品名「ダイアラミー」)の片面にアンカー層を厚さ0.4g/m2で設けたのち、次に示す組成の反射防止層形成塗工液を塗布し、厚さ30μmの塗膜を形成させることにより、全厚100μmの難燃性無反射フィルムを製造した。
Figure 0004714381
【0036】
実施例2
反射防止層形成塗工液として次の組成のものを用いること以外は実施例1と同様にして全厚100μmの難燃性無反射フィルムを製造した。
Figure 0004714381
【0037】
比較例
実施例1における難燃剤を含有するポリエチレンテレフタレートフィルムを難燃剤を含まないポリエチレンテレフタレートフィルムに変えた以外は、実施例1と同様にして無反射フィルムを製造した。
【0038】
参考例
実施例1、2及び比較例で得た無反射フィルムについて、光沢度、表面粗さ(Ra)、反射濃度、塗膜硬度及び難燃性を以下の方法に従って測定し、その結果を表1に示す。
(1)光沢度:JIS Z8741に従い、入射光60°、75°及び85°に対する鏡面光沢度を測定した。
(2)表面粗さ(Ra):JIS B0601に従い、中心線平均粗さを測定した。
(3)反射濃度:デジタル反射濃度計マクベス(Macbath)RD−918を用いて測定した。
(4)塗膜硬度:JIS K5400に従い、鉛筆引掻試験を行い測定した。
(5)燃焼性:機器についてのプラスチック材料の燃焼試験(UL94)に従い、薄手材料垂直燃焼試験(94VTM)を行い、VTM−2以上の難燃性を示したものを○、それ以外のものを×とした。
【0039】
【表1】
Figure 0004714381

Claims (4)

  1. 難燃性ベースフィルムの少なくとも一方の面に反射防止層を設けてなる積層体において、該反射防止層が合成樹脂バインダー100質量部に対し、(A)平均粒径5〜25μmのカーボンブラック含有合成樹脂粒子と(B)平均粒径30〜50μmのカーボンブラック含有合成樹脂粒子とを質量比6:1ないし2:1の割合で含む混合粒子20〜500質量部及び(C)平均粒径1μm以下のカーボンブラック粒子1〜100質量部を配合した厚さ15〜100μmの層であることを特徴とする難燃性無反射フィルム。
  2. ベースフィルムがポリカーボネート、ポリフェニレンオキシド、芳香族ポリイミド又はポリスルホンである請求項1記載の難燃性無反射フィルム。
  3. ベースフィルムが難燃剤を含むポリエチレンテレフタレートである請求項1記載の難燃性無反射フィルム。
  4. 反射防止層が難燃性である請求項1、2又は3記載の難燃性無反射フィルム。
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