JP4712768B2 - 大型高密度圧粉成形体の成形方法 - Google Patents

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Description

本発明は、大型高密度圧粉成形体の成形方法に関し、金型潤滑成形法あるいは温間金型潤滑成形法により、例えば大型のモータ用のコア材(ステータ、ロータ)などに適用される大型高密度圧粉成形体を成形する方法に関するものである。
金型潤滑成形法と温間金型潤滑成形法は、基本的に原料粉末に潤滑剤を混合せず、金型の内壁面に潤滑剤を塗布して圧縮成形を行って圧粉成形体を得る方法である。すなわち、金型のキャビティーに原料粉末を充填するに先立ち、金型の内壁面(金型のキャビティー壁面)に、圧縮性及び金型からの抜き出しをよくするため潤滑剤を塗布するようにしている。この金型内壁面に潤滑剤を塗布する方法としては、工業的には、潤滑剤を水、あるいは有機溶媒に懸濁し噴霧する方法(A)と、潤滑剤を帯電させて静電塗布する方法(B)とがある。
前記(A)の方法では、噴霧された潤滑剤がキャビティーを直線的に飛ぶため、金型内の影にあたるところには潤滑剤を塗布できない。したがって、前記(A)の方法は、圧粉成形体の形状が複雑なものには不向きである。
一方、前記(B)の方法は、帯電させた潤滑剤を金型内壁面に静電力で付着させるものであるから、能率が良く、また、圧粉成形体の形状が複雑なものにも塗布可能である。この金型内壁面に潤滑剤を静電塗布し、金型潤滑成形法あるいは温間金型潤滑成形法により圧粉成形体を得るに際し、かじり傷などのない健全な圧粉成形体を得るべく、金型内壁面に潤滑剤粉末を単位面積当たり0.2〜2.0mg/cmの範囲内で塗布するようにした、圧粉磁心の成形方法が提案されている(特開2004−342937号公報、特開2005−72112号公報)。
ところで、近年、大型のモータ用のコア材(ステータ、ロータ)などに適用するために、大型で、かつ高密度の圧粉成形体を得られるようにすることが要請されている。そして、大型で、かつ高密度の圧粉成形体を得るために、深さが9cm以上、かつ、容積(体積)が700cm以上であるキャビティーを有する金型を用い、前記キャビティーに原料粉末を充填し、金型潤滑成形法あるいは温間金型潤滑成形法により密度7.60g/cm以上の大型高密度圧粉成形体を成形する場合、金型への原料粉末の充填時に、金型内壁面上部(キャビティー壁面上部)に接触しながら落下する原料粉末の量が多いため、金型内壁面上部に付着している潤滑剤が、前記落下する原料粉末によって脱離され易い。本発明者らによると、金型内壁面の潤滑剤の塗布量が前記従来技術による0.2〜2.0mg/cm2の範囲では不足して、圧縮成形された圧粉成形体を抜き出すための抜き出し力が大きくなって、圧粉成形体にかじり傷が生じることがわかった。
一方、金型内壁面の全面に塗布されている潤滑剤の量が多すぎると、金型内壁面上部から脱離した潤滑剤がキャビティー底面にたまり、圧粉成形体の表面部分に潤滑剤を巻き込み、潤滑剤巻き込み傷(微小な凹み傷)が生じることがわかった。
特開2004−342937号公報(段落[0006]〜[0010]) 特開2005−72112号公報(段落[0009],[0015])
そこで、本発明の課題は、深さが9cm以上、かつ、容積が700cm以上であるキャビティーを有する金型を用い、前記キャビティーに原料粉末を充填し、金型潤滑成形法あるいは温間金型潤滑成形法により密度7.60g/cm以上の大型高密度圧粉成形体を成形するに際し、かじり傷や、潤滑剤巻き込み傷などのない、健全な圧粉成形体を得ることができるようにした、大型高密度圧粉成形体の成形方法を提供することにある。
前記の課題を解決するため、本願発明では、次の技術的手段を講じている。
請求項1の発明は、深さが9cm以上、かつ、容積が700cm以上であるキャビティーを有する金型を用い、前記キャビティーに原料粉末を充填し、金型潤滑成形法あるいは温間金型潤滑成形法により密度7.60g/cm以上の大型高密度圧粉成形体を成形する方法であって、前記金型の内壁面の上半部に単位面積当たり3〜6mg/cmの範囲を満たす量の潤滑剤を塗布するとともに、下半部に単位面積当たり0.05〜0.1mg/cmの範囲を満たす量の潤滑剤を塗布することを特徴とする大型高密度圧粉成形体の成形方法である。
請求項2の発明は、請求項1記載の大型高密度圧粉成形体の成形方法において、前記金型の内壁面に潤滑剤を塗布するに際し、金型内壁面の上半部に帯電させた潤滑剤を噴霧する金型内壁面上半部用吹付けノズルと、金型内壁面の下半部に帯電させた潤滑剤を噴霧する金型内壁面下半部用吹付けノズルとを備えた静電式潤滑剤塗布装置を用いることを特徴とするものである。
請求項1の大型高密度圧粉成形体の成形方法は、金型内壁面の上半部に、原料粉末充填時における潤滑剤の脱離で潤滑剤不足を生じさせないように、単位面積当たり3〜6mg/cmの範囲を満たす量の潤滑剤を塗布することにより、原料粉末充填後における金型内壁面の上半部に適正な量の潤滑剤が保持された状態をつくりだすことができ、かつ、原料粉末充填時における金型内壁面の上半部からの離脱した潤滑剤が運ばれてくることで潤滑剤の余剰を生じさせないように、下半部に単位面積当たり0.05〜0.1mg/cmの範囲を満たす量の潤滑剤を塗布することにより、原料粉末充填後における金型内壁面の下半部に適正な量の潤滑剤が保持された状態をつくりだすことできる。よって、深さが9cm以上、かつ、容積が700cm以上であるキャビティーを有する金型を用い、前記キャビティーに原料粉末を充填し、金型潤滑成形法あるいは温間金型潤滑成形法により密度7.60g/cm以上の大型高密度圧粉成形体を成形するに際し、かじり傷や、潤滑剤巻き込み傷などのない、健全な圧粉成形体を得ることができる。
請求項2の大型高密度圧粉成形体の成形方法は、静電式潤滑剤塗布装置に備えられた金型内壁面上半部用吹付けノズルにより、金型内壁面の上半部に所定量の潤滑剤を塗布し、前記静電式潤滑剤塗布装置に備えられた金型内壁面下半部用吹付けノズルにより、金型内壁面の下半部に所定量の潤滑剤を塗布するようにしている。よって、金型内壁面の上半部と下半部とに、それぞれ、所定量の潤滑剤を塗布するに際し、潤滑剤塗布量のばらつきが小さく、安定して潤滑剤の塗布を行うことができる。また、圧粉成形体の製造工程の自動化にも寄与することができる。
本発明による大型高密度圧粉成形体の成形方法は、前述した大型のモータ用のコア材(ステータ、ロータ)などに適用可能な圧粉成形体を考慮して、深さが9cm以上、かつ、容積が700cm以上であるキャビティーを有する金型を用い、前記キャビティーに原料粉末を充填して満たし、金型潤滑成形法あるいは温間金型潤滑成形法により、厚み3cm以上、密度7.60g/cm以上(磁気特性の観点から、より好ましくは密度7.65g/cm以上)の圧粉成形体を得ることを対象とするものである。なお、前記金型のキャビティー寸法の上限については、深さ(原料粉末充填深さ):20cm程度、容積(原料粉末充填体積):1500cm程度である。
本発明の成形方法においては、金型として、超硬材料、ダイス鋼など一般的な金型用材料を用いて作製される金型を用いることができる。
また、本発明の成形方法においては、原料粉末として、純鉄粉、鉄系合金粉末などの軟磁性粉末、軟磁性粉末に絶縁材料を混合した粉末、軟磁性粉末の表面に絶縁材料を被覆した粉末などを用いることができる。なお、前記絶縁材料としては、フェノール、エポキシ、ポリイミド、シリコーンなどの熱硬化性樹脂のほか、ポリアミドなどの熱可塑性樹脂などの有機系材料が挙げられる。さらに、前記絶縁材料としては、りん酸皮膜などの無機系被膜、シリカやアルミナなどの酸化物、BNなどの窒化物などの無機系材料が挙げられる。
本発明の成形方法においては、潤滑剤としては、公知のものを使用すればよく、具体的には、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸カルシウムなどのステアリン酸の金属塩粉末、パラフィン、ワックス、天然又は合成樹脂誘導体などが挙げられる。
本発明の成形方法においては、金型内壁面の上半部(キャビティー深さの1/2より上パンチ側における金型内壁面部分)に単位面積当たり3〜6mg/cmの範囲を満たす量の潤滑剤を塗布することが必要である。金型内壁面の上半部に塗布する潤滑剤の量が3mg/cmを下回ると、原料粉末充填時の脱落により金型内壁面の潤滑剤付着量が減少して、圧粉成形体側面にかじり傷が生じることや、成形体抜き出し時の抜き圧(抜き出し力)が上昇することが起こり、最悪の場合、金型から圧粉成形体を抜き出すことができなくなる。一方、6mg/cmを上回ると、金型内壁面への潤滑剤付着量が多すぎるため、原料粉末充填時に剥離に近いような潤滑剤の脱落が発生し、充填された原料粉末に脱落した潤滑剤が塊となって混合し、健全な圧粉成形体が得られなくなる。したがって、金型内壁面の上半部に塗布する潤滑剤の量としては、3〜6mg/cmの範囲を満たすことが必要である。
また、金型内壁面の下半部(キャビティー深さの1/2より下パンチ側における金型内壁面部分)に単位面積当たり0.05〜0.1mg/cmの範囲を満たす量の潤滑剤を塗布することが必要である。金型内壁面の下半部に塗布する潤滑剤の量が0.05mg/cmを下回ると、金型内壁面下半部における潤滑剤の絶対量が不足し、圧粉成形体側面にかじり傷が生じることや、成形体抜き出し時の抜き圧(抜き出し力)が上昇することが起こり、最悪の場合、金型から圧粉成形体を抜き出すことができなくなる。一方、0.1mg/cmを上回ると、キャビティー底面(下パンチ面)に潤滑剤がたまり、圧粉成形体の底面部分に潤滑剤を巻き込み、潤滑剤巻き込み傷(微小な凹み傷)が生じる。したがって、金型内壁面の下半部に塗布する潤滑剤の量としては、0.05〜0.1mg/cmの範囲を満たすことが必要である。
図1は本発明の方法に用いられる静電式潤滑剤塗布装置を説明するための模式的説明図、図2は本発明の方法において金型内壁面に塗布された潤滑剤を説明するための模式的説明図である。
図1及び図2において、1は円柱状のキャビティーを形成する金型、2は下パンチである。また、図1において、3は静電式潤滑剤塗布装置の摩擦帯電部、4は静電式潤滑剤塗布装置の金型内壁面上半部用吹付けノズル、5は静電式潤滑剤塗布装置の金型内壁面下半部用吹付けノズルである。
本発明の方法に用いられる静電式潤滑剤塗布装置は、潤滑剤供給ホッパ、スクリュフィーダ、駆動モータ、接続クラッチ、摩擦帯電部3、金型内壁面上半部用吹付けノズル4、金型内壁面下半部用吹付けノズル5及びコントロールボックスにより構成されている。この静電式潤滑剤塗布装置は、一定量に計量された粉末状の潤滑剤を摩擦帯電部3に供給し、摩擦帯電部3にて摩擦帯電方式でプラスに帯電させ、帯電させた粉末状の潤滑剤を金型1のキャビティーに噴霧し、静電気力により金型内壁面に付着させるようにしたものである。金型1は電気的にグランドされている。そして、金型内壁面上半部用吹付けノズル4を用いて、静電気力にて金型内壁面の上半部に潤滑剤を塗布し、金型内壁面下半部用吹付けノズル5を用いて、静電気力にて金型内壁面の下半部に潤滑剤を塗布するようにしている。
以下、本発明の実施例について説明する。
表1に示す成形条件にて圧粉成形体の成形を行った。このとき、下パンチの位置を変えることにより、充填深さ及び充填体積を変化させた。そして、得られた圧粉成形体の欠陥の有無を目視にて調べた。結果を表2〜表4に示す。ここで、金型内壁面(キャビティー壁面)の上半部の潤滑剤塗布量については、予め、金型と同材質(本実施例ではSKD鋼)の数個(8個)の小片(1cm)を金型内壁面の上半部に貼り付けておき、これらの各小片について潤滑剤塗布前後の質量差を測定し、それらの平均値でもって潤滑剤塗布量(潤滑剤付着量)とした。同様にして、金型内壁面(キャビティー壁面)の下半部の潤滑剤塗布量を求めた。そして、上半部及び下半部のこれらの小片を除去し、その部分に該小片に塗布したのと同条件で潤滑剤を塗布した後に、成形を行った。また、成形体密度は、成形体の質量と成形体の体積(外形寸法より算出)とから計算により求めたものである。
Figure 0004712768
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表2に示すように、実施例1〜実施例11は、かじり傷や、潤滑剤巻き込み傷などがなく、健全な圧粉成形体を得ることができた。一方、比較例1〜比較例4は、金型内壁面の上半部の潤滑剤塗布量が本発明で規定する範囲を下回っているため、得られた圧粉成形体にかじり傷が生じていた。比較例5〜比較例8は、金型内壁面の下半部の潤滑剤塗布量が本発明で規定する範囲を上回っているため、得られた圧粉成形体に潤滑剤巻き込み傷が生じていた。比較例9〜比較例11は、金型内壁面の上半部の潤滑剤塗布量が本発明で規定する範囲を下回り、また、金型内壁面の下半部の潤滑剤塗布量が本発明で規定する範囲を上回っており、得られた圧粉成形体にかじり傷が生じていた。なお、参考例1〜参考例3を示すように、原料粉末の充填深さが9cm未満、原料粉末の充填体積が700cm未満の場合は、金型内壁面の潤滑剤塗布量が本発明で規定する範囲を外れていても、圧粉成形体にかじり傷の発生は認められなかった。
表3に示すように、実施例12〜実施例15は、かじり傷や、潤滑剤巻き込み傷などがなく、健全な圧粉成形体を得ることができた。一方、比較例12〜比較例15は、金型内壁面の上半部の潤滑剤塗布量が本発明で規定する範囲を下回っているため、得られた圧粉成形体にかじり傷が生じていた。比較例16〜比較例19は、金型内壁面の下半部の潤滑剤塗布量が本発明で規定する範囲を上回っているため、得られた圧粉成形体に潤滑剤巻き込み傷が生じていた。比較例20〜比較例22は、金型内壁面の上半部の潤滑剤塗布量が本発明で規定する範囲を下回り、また、金型内壁面の下半部の潤滑剤塗布量が本発明で規定する範囲を上回っており、得られた圧粉成形体にかじり傷が生じていた。なお、参考例4〜参考例6を示すように、原料粉末の充填深さが9cm未満、原料粉末の充填体積が700cm未満の場合は、金型内壁面の潤滑剤塗布量が本発明で規定する範囲を外れていても、圧粉成形体にかじり傷の発生は認められなかった。また、表4には、参考例として、参考例7〜参考例24を示してある。
本発明の方法に用いられる静電式潤滑剤塗布装置を説明するための模式的説明図である。 本発明の方法において金型内壁面に塗布された潤滑剤を説明するための模式的説明図である。
符号の説明
1…金型
2…下パンチ
3…静電式潤滑剤塗布装置の摩擦帯電部
4…静電式潤滑剤塗布装置の金型内壁面上半部用吹付けノズル
5…静電式潤滑剤塗布装置の金型内壁面下半部用吹付けノズル

Claims (2)

  1. 深さが9cm以上、かつ、容積が700cm以上であるキャビティーを有する金型を用い、前記キャビティーに原料粉末を充填し、金型潤滑成形法あるいは温間金型潤滑成形法により密度7.60g/cm以上の大型高密度圧粉成形体を成形する方法であって、前記金型の内壁面の上半部に単位面積当たり3〜6mg/cmの範囲を満たす量の潤滑剤を塗布するとともに、下半部に単位面積当たり0.05〜0.1mg/cmの範囲を満たす量の潤滑剤を塗布することを特徴とする大型高密度圧粉成形体の成形方法。
  2. 前記金型の内壁面に潤滑剤を塗布するに際し、金型内壁面の上半部に帯電させた潤滑剤を噴霧する金型内壁面上半部用吹付けノズルと、金型内壁面の下半部に帯電させた潤滑剤を噴霧する金型内壁面下半部用吹付けノズルとを備えた静電式潤滑剤塗布装置を用いることを特徴とする請求項1記載の大型高密度圧粉成形体の成形方法。
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