(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1(a)は本発明の第1の実施形態に係るIII-V族窒化物半導体からなる半導体レーザ装置を示している。図1(a)に示すように、例えば、第1の実施形態に係る半導体レーザ装置は、平面形状が長方形でn型窒化ガリウム(GaN)からなる基板1の上に、順次エピタキシャル成長により形成された、n型GaN層2、n型Al0.07Ga0.93Nからなる第1クラッド層3、n型GaNからなる第1光ガイド層4、多重量子井戸(MQW)活性層5、p型GaNからなる第2光ガイド層6、p型Al0.07Ga0.93Nからなる第2クラッド層7及びp型GaNからなるコンタクト層8を有している。
第2クラッド層7の上部には、長手方向に延びるリッジストライプ部20が形成されており、コンタクト層8は該リッジストライプ部20の上面(頂面)にのみ形成されている。ここで、第1クラッド層3、第1光ガイド層4、MQW活性層5、第2光ガイド層6及び第2クラッド層7により発光部本体15が形成される。
また、図1(a)及び(b)に示すように、第2クラッド層7の上面であって、リッジストライプ部20の側面上及び両側方には、出射端面22側から後方(リッジストライプ部20の延伸方向)に、実効屈折率がn1 で領域Aに属する第1電流狭窄層9、実効屈折率がn2 で領域Bに属する第2電流狭窄層10及び実効屈折率がn3 で領域Cに属する第3電流狭窄層11が順次形成されている。
コンタクト層8の上には、リッジストライプ部20の側面すなわち第1電流狭窄層9、第2電流狭窄層10及び第3電流狭窄層11を覆うようにp側電極12が形成され、基板1のn型GaN層2と反対側の面上には、N側電極13が形成されている。
第1電流狭窄層9及び第2電流狭窄層10は、厚さが100nmであり且つ領域Aの長さ寸法は50μmである。第3電流狭窄層11は、厚さが100nmであり且つ領域Cの長さ寸法は500μmである。従って、第1の実施形態に係る半導体レーザ装置の共振器長(リッジストライプ部20の長さ)は600μmである。
第1の実施形態の特徴として、図2に示すように、第1電流狭窄層9、第2電流狭窄層10及び第3電流狭窄層11の発光光の波長(発振波長)に対する屈折率n1 、n2 、n3 は、そのいずれもがリッジストライプ部20を構成するp型Al0.07Ga0.93Nからなる第2クラッド層7の屈折率である2.52よりも小さく、さらに、n1 <n2 <n3 <2.52の関係式が成立するように構成されている。なお、本願明細書においては、半導体及び誘電体の屈折率は、本発明に係る半導体レーザ装置が発振する400nm程度の波長に対する実効屈折率を指すが、単に屈折率とも呼ぶ。
以下、前記のように構成された半導体レーザ装置の製造方法について図面を参照しながら説明する。
図3(a)、(b)及び図4(a)、(b)は本発明の第1の実施形態に係る半導体レーザ装置の製造方法の工程順の断面構成を示している。
まず、図3(a)に示すように、例えば有機金属気相成長(MOCVD)法等により、n型GaNからなる基板1の主面上に、AlGaNからなる低温成長バッファ層(図示せず)を堆積し、その後、n型GaN層2、n型Al0.07Ga0.93Nからなる第1クラッド層3、n型GaNからなる第1光ガイド層4、MQW活性層5、p型GaNからなる第2光ガイド層6、p型Al0.07Ga0.93Nからなる第2クラッド層7及びp型GaNからなるコンタクト層8を順次成長させる。ここで、MQW活性層5は、厚さが3.5nmのGa0.92In0.08Nからなる井戸層と、厚さが7.0nmのGaNからなるバリア層とを3周期分組み合わせて構成する。
次に、図3(b)に示すように、リソグラフィ法により、コンタクト層8におけるリッジストライプ部形成領域を覆う第1のレジストパターン(図示せず)を形成し、その後、形成したレジストパターンをマスクとして、コンタクト層8及びその下の第2クラッド層7に対して塩素(Cl2 )ガスを主成分とする反応性イオンエッチング(RIE)を行なって、コンタクト層8と第2クラッド層7の上部を除去することにより、コンタクト層8及び第2クラッド層からリッジストライプ部20を形成する。ここで、半導体レーザ装置に対して、高出力特性を実現する高いキンクレベルと、発光光の投影面形状の低楕円率化を実現する水平拡がり角の広角化とを同時に満たすには、図5の横軸に示すリッジ幅と、縦軸に示すMQW活性層5の上面から第2クラッド層7のリッジストライプ部20側方の上面までの厚さである残し厚とから決定される「設計範囲」に設定することが望ましい。すなわち、リッジ幅は1.0μm以上且つ2.0μm以下が好ましく、水平拡がり角は8°以上が好ましい。第1の実施形態においては、リッジ幅を1.6μmとし且つ残し厚を0.18μmとしている。
次に、図4(a)に示すように、第1のレジストパターンを除去した後、リソグラフィ法により、リッジストライプ部20の上面及び第2クラッド層7上の領域A及び領域Bを覆う第2のレジストパターン(図示せず)を形成する。続いて、例えば、電子サイクロトロン共鳴(ECR)スパッタ法により、ECRプラズマ、金属タンタル(Ta)からなるターゲット材、アルゴン(Ar)ガス及び酸素(O2 )ガスを用いて、第2のレジストパターンをマスクとして、リッジストライプ部20を含む第2クラッド層7の上に、酸化タンタル(Ta2O5)層を堆積し、第2のレジストパターンをアセトン等の有機溶剤によりリフトオフすることにより、第2クラッド層7上の領域Cに酸化タンタルからなる第3電流狭窄層11を形成する。その後、同様にリソグラフィ法により、リッジストライプ部20の上面及び第2クラッド層7上の領域A及び領域Cを覆う第3のレジストパターン(図示せず)を形成する。続いて、ECRスパッタ法により、ECRプラズマ、金属シリコン(Si)からなるターゲット材、Arガス及びN2 ガスを用いて、第3のレジストパターンをマスクとして、リッジストライプ部20を含む第2クラッド層7の上に、窒化シリコン(SiN)層を堆積し、第3のレジストパターンをアセトン等の有機溶剤によりリフトオフすることにより、第2クラッド層7上の領域Bに窒化シリコンからなる第2電流狭窄層10を形成する。その後、同様にリソグラフィ法により、リッジストライプ部20の上面及び第2クラッド層7上の領域B及び領域Cを覆う第4のレジストパターン(図示せず)を形成する。続いて、ECRスパッタ法により、ECRプラズマ、金属シリコン(Si)からなるターゲット材、Arガス及びO2 ガスを用いて、第4のレジストパターンをマスクとして、リッジストライプ部20を含む第2クラッド層7の上に、酸化シリコン(SiO2 )層を堆積し、第4のレジストパターンをアセトン等の有機溶剤によりリフトオフすることにより、第2クラッド層7上の領域Aに酸化シリコンからなる第1電流狭窄層9を形成する。
この工程により、第1の実施形態に係る半導体レーザ装置に、リッジストライプ部20の側面及び側方を覆う電流狭窄層として、出射端面22側から、屈折率が1.56の酸化シリコンからなる第1電流狭窄層9、屈折率が2.07の窒化シリコンからなる第2電流狭窄層10及び屈折率が2.23の酸化タンタルからなる第3電流狭窄層11が形成される。なお、第1の実施形態においては、各電流狭窄層9、10、11を、第3電流狭窄層11、第2電流狭窄層10及び第1電流狭窄層9の順に形成したが、第1電流狭窄層9、第2電流狭窄層10及び第3電流狭窄層11の順に形成してもよく、第2電流狭窄層10を裂き形成してもよい。
次に、図4(b)に示すように、リソグラフィ法により、各電流狭窄層9、10、11の上におけるp側電極形成領域、すなわち少なくともリッジストライプ部20の上面及び側面を露出する開口パターンを有する第5のレジストパターン(図示せず)を形成し、形成した第5のレジストパターンをマスクとして、スパッタ法又は真空蒸着法等により、リッジストライプ部20の上に、例えばニッケル(Ni)、白金(Pt)及び金(Au)からなる金属積層膜を形成する。その後、第5のレジストパターンをアセトン等の有機溶剤によりリフトオフすることにより、堆積した金属積層膜からなるp側電極12を形成する。続いて、基板1のp側電極12の反対側の面上に全面的に、例えばチタン(Ti)及びアルミニウム(Al)の積層膜からなるn側電極13を形成する。
ここで、p側電極12の形成材料は、Ni/Pt/Auに限られず、半導体レーザ装置における動作電圧を下げられるように、コンタクト層8とのコンタクト抵抗を低くできると共に、コンタクト層8及び各電流狭窄層9、10、11との密着性が良好な材料であればよい。従って、Ni/Pt/Au以外にも、Ni/Au、パラジウム(Pd)/白金(Pt)、パラジウム(Pd)単体、又はパラジウム(Pd)/モリブデン(Mo)を用いることができる。
以上説明したように、第1の実施形態によると、発光部本体15の上部に形成されたリッジストライプ部20の側面及び側方を覆い、該リッジストライプ部20の上面のみから動作電流を注入するための電流狭窄層を、出射端面22側から酸化シリコンからなる第1電流狭窄層9、窒化シリコンからなる第2電流狭窄層10及び酸化タンタルからなる第3電流狭窄層11を順次形成して、図2に示すように、各電流狭窄層9、10、11の屈折率を出射端面22側から順次大きくしている。これにより、出射端面22を含む領域Aにおいては、リッジストライプ部20との間の比較的に大きい屈折率差によって、光の水平方向の閉じ込め効果が大きくなるため、水平拡がり角を増大させることができ、発光光の投影面の断面形状の低楕円率化を実現できる。一方、領域A及びBを除く大部分の領域を占める領域Cにおいては、リッジストライプ部20との間の比較的に小さい屈折率差によって、キンクレベルが上昇するため、高出力動作に必要な内部構造を維持できる。
その上、第1の実施形態においては、領域Aと領域Cとの間に位置する領域Bに、屈折率が領域Aと領域Cとの間の値を持つ第2電流狭窄層10を設けることにより、ストライプ(共振器)方向の異なる屈折率差を2段階のステップ状に変化させることができる。このため、共振器内部における光の散乱及び反射を防ぐことができるので、高出力動作が可能な半導体レーザ装置を得ることができる。
なお、第1の実施形態においては、第1電流狭窄層9に屈折率n1 が1.56の酸化シリコン(SiO2 )を用い、第2電流狭窄層10に屈折率n2 が2.07の窒化シリコン(Si3N4)を用い、第3電流狭窄層11に屈折率n3 が2.22の酸化タンタル(Ta2O5)を用いたが、[表1]に示す誘電体のなかから、n1 <n2 <n3 を満たす範囲で任意に選択することができる。
さらには、n1 <n2 <n3 を満たす範囲で、第1電流狭窄層9に酸化シリコン(SiO2 )、酸化アルミニウム(Al2O3)又は酸化ガリウム(Ga2O3)を用い、第2電流狭窄層10に酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化ガリウム(Ga2O3)、窒化アルミニウム(Si3N4)、酸化チタン(TiO2 )又は窒化シリコン(Si3N4)を用い、第3電流狭窄層11に酸化ハフニウム(Hf2O5)、酸化ジルコニウム(ZrO2 )、酸化タンタル(Ta2O5)又は酸化ニオブ(Nb2O5)を用いることが好ましい。但し、例えば第3電流狭窄層11に屈折率が2.00のHf2O5を用いる場合には、第2電流狭窄層10には、屈折率が1.82のGa2O3又は屈折率が1.64のAl2O3を選択し、第2電流狭窄層10にAl2O3を選択した場合には、第1電流狭窄層9には、屈折率が1.56のSiO2 を選択する。
このようにして得られた第1の実施形態に係る半導体レーザ装置において、n側電極13を接地し、p側電極12に正電圧を印加すると、MQW活性層5にキャリアが注入されて、該MQW活性層5内で光学利得が生じ、発振波長が400nm程度のレーザ発振を起こす。
なお、第1の実施形態においては、電流狭窄層9、10、11を3種類の材料で形成する場合を示したが、4種類かそれ以上の屈折率が異なる材料で形成してもよい。共振器内部における光の散乱及び反射をより確実に防ぐには、電流狭窄層における共振器方向の屈折率の変化が小さい方が好ましいからである。この場合も、少なくとも4通りの屈折率を持つ複数の電流狭窄層は、発光部本体15の出射端面22に近い程、各屈折率が段階的に低くなるように形成する。
(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図6(a)は本発明の第2の実施形態に係るIII-V族窒化物半導体からなる半導体レーザ装置を示し、図6(b)は半導体レーザ装置における電流狭窄層の共振器方向の断面構成を示している。図6(a)及び(b)において、図1(a)及び(b)に示す構成部材と同一の構成部材には同一の符号を付すことにより説明を省略する。
図6(b)に示すように、第1の実施形態との相違点は、リッジストライプ部20の側面及び側方を覆う電流狭窄層として、実効屈折率n1 が1.56の酸化シリコンからなる第1の電流狭窄層9を領域A及び領域Bに跨って形成し、実効屈折率n3 が2.22の酸化タンタルからなる第2の電流狭窄層14を領域B及び領域Cに跨って形成し、領域Bにおいては、第1の電流狭窄層9と第2の電流狭窄層14とが積層される点である。
具体的には、第1電流狭窄層9は、厚さが50nmであり且つ領域A及び領域Bの長さ寸法は100μmであり、第2電流狭窄層14は、厚さが100nmであり且つ領域B及び領域Cの長さ寸法は550μmである。従って、共振器長が600μmであることから、領域Bの長さ寸法は50μmである。
このように、第2の実施形態に係る半導体レーザ装置は、領域Bにおいて、酸化シリコンからなる第1の電流狭窄層9と酸化タンタルからなる第2の電流狭窄層14とを積層して形成することにより、領域Bの実効屈折率をn2 とすると、領域A、B及びCの各屈折率には、n1 <n2 <n3 の関係式が成立する。すなわち、2種類の誘電体材料からなる電流狭窄層9、14を設けることにより、第1の実施形態と同様に、電流狭窄層9、14を共振器方向に3通りで且つ段階的に変化させることができる。
以下、前記のように構成された半導体レーザ装置の製造方法について図面を参照しながら説明する。
図7(a)、(b)及び図8(a)、(b)は本発明の第2の実施形態に係る半導体レーザ装置の製造方法の工程順の断面構成を示している。
まず、図7(a)に示すように、第1の実施形態と同様に、MOCVD法により、n型GaNからなる基板1の主面上に、n型GaN層2、n型Al0.07Ga0.93Nからなる第1クラッド層3、n型GaNからなる第1光ガイド層4、MQW活性層5、p型GaNからなる第2光ガイド層6、p型Al0.07Ga0.93Nからなる第2クラッド層7及びp型GaNからなるコンタクト層8を順次成長させる。その後、コンタクト層8の上に形成したリッジストライプ部形成領域を覆う第1のレジストパターンをマスクとして、コンタクト層8及び第2クラッド層7に対して選択的にドライエッチングを行なって、リッジストライプ部20を形成する。
次に、図7(b)に示すように、第1のレジストパターンを除去した後、リソグラフィ法により、リッジストライプ部20の上面及び第2クラッド層7上の領域Cを覆う第2のレジストパターン(図示せず)を形成する。続いて、例えば、ECRスパッタ法により、ECRプラズマ、金属シリコン(Si)からなるターゲット材、アルゴン(Ar)ガス及び酸素(O2 )ガスを用いて、第2のレジストパターンをマスクとして、リッジストライプ部20を含む第2クラッド層7の上に、酸化シリコン(SiO2 )層を堆積し、第2のレジストパターンを有機溶剤によりリフトオフすることにより、第2クラッド層7上の領域A及び領域Bに酸化シリコンからなる第1電流狭窄層9を形成する。
次に、図8(a)に示すように、リソグラフィ法により、リッジストライプ部20の上面及び第2クラッド層7上の領域Aを覆う第3のレジストパターン(図示せず)を形成する。続いて、ECRスパッタ法により、ECRプラズマ、金属タンタル(Ta)からなるターゲット材、Arガス及びO2 ガスを用いて、第3のレジストパターンをマスクとして、リッジストライプ部20を含む第2クラッド層7の上に、酸化タンタル(Ta2O5)層を堆積し、第3のレジストパターンを有機溶剤によりリフトオフすることにより、第2クラッド層7上の領域B及び領域Cに酸化タンタルからなる第2電流狭窄層14を形成する。これにより、領域Bにおいては、第1電流狭窄層9の上に第2電流狭窄層14が積層される。なお、この積層部分において、共振器で生成される光の分布が第3電流狭窄層14にまで達するように、本実施形態においては、第1電流狭窄層9の厚さを50nmとしている。また、第3電流狭窄層14を第1電流狭窄層9よりも先に形成してもよいが、この場合には、第2電流狭窄層14の厚さを領域Bにおいて50nmとする。
次に、図8(b)に示すように、リソグラフィ法により、各電流狭窄層9、14の上におけるp側電極形成領域、すなわち少なくともリッジストライプ部20の上面及び側面を露出する開口パターンを有する第4のレジストパターン(図示せず)を形成し、形成した第4のレジストパターンをマスクとして、スパッタ法又は真空蒸着法等により、リッジストライプ部20の上に、例えばニッケル(Ni)、白金(Pt)及び金(Au)からなる金属積層膜を形成する。その後、第4のレジストパターンを有機溶剤によりリフトオフすることにより、堆積した金属積層膜からなるp側電極12を形成する。続いて、基板1のp側電極12の反対側の面上に全面的に、例えばチタン(Ti)及びアルミニウム(Al)の積層膜からなるn側電極13を形成する。
以上説明したように、第2の実施形態によると、第1クラッド層3、第1光ガイド層4、MQW活性層5、第2光ガイド層6及び第2クラッド層7を含む発光部本体15の上部に形成されたリッジストライプ部20の側面及び側方を覆い、該リッジストライプ部20の上面のみから動作電流を注入するための電流狭窄層を、出射端面22側から酸化シリコンからなる第1電流狭窄層9及び酸化タンタルからなる第2電流狭窄層14を領域Bにおいて積層することにより、各電流狭窄層9、14の屈折率を出射端面22側から3通りに段階的に大きくしている。これにより、出射端面22を含む領域Aにおいては、リッジストライプ部20との間の比較的に大きい屈折率差によって、光の水平方向の閉じ込め効果が大きくなるため、水平拡がり角を増大させることができ、発光光の投影面の断面形状の低楕円率化を実現できる。一方、領域A及びBを除く大部分の領域を占める領域Cにおいては、リッジストライプ部20との間の比較的に小さい屈折率差によって、キンクレベルが上昇するため、高出力動作に必要な内部構造を維持できる。
その上、第2の実施形態においては、領域Aと領域Cとの間に位置する領域Bに、屈折率が領域Aと領域Cとの間の値を持つ、第1電流狭窄層9と第2電流狭窄層14とからなる積層部を設けることにより、ストライプ(共振器)方向の異なる屈折率差を2段階のステップ状に変化させることができる。このため、共振器内部における光の散乱及び反射を防ぐことができるので、高出力動作が可能な半導体レーザ装置を得ることができる。
なお、第2の実施形態においては、第1電流狭窄層9に屈折率n1 が1.56の酸化シリコン(SiO2 )を用い、第2電流狭窄層14に屈折率n3 が2.22の酸化タンタル(Ta2O5)を用いたが、前掲した[表1]に示す誘電体のなかから、n1 <n3 を満たす範囲で任意に選択することができる。
なお、第1電流狭窄層9に酸化シリコン(SiO2 )、酸化アルミニウム(Al2O3)又は酸化ガリウム(Ga2O3)を用い、第2電流狭窄層14に酸化ハフニウム(Hf2O5)、酸化ジルコニウム(ZrO2 )、酸化タンタル(Ta2O5)又は酸化ニオブ(Nb2O5)を用いることが好ましい。
このようにして得られた第2の実施形態に係る半導体レーザ装置において、n側電極13を接地し、p側電極12に正電圧を印加すると、MQW活性層5にキャリアが注入されて、該MQW活性層5内で光学利得が生じ、発振波長が400nm程度のレーザ発振を起こす。
(第3の実施形態)
以下、本発明の第3の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図9(a)は本発明の第3の実施形態に係るIII-V族窒化物半導体からなる半導体レーザ装置を示し、図9(b)は半導体レーザ装置における電流狭窄層の共振器方向の断面構成を示している。図9(a)及び(b)において、図6(a)及び(b)に示す構成部材と同一の構成部材には同一の符号を付すことにより説明を省略する。
図9(b)に示すように、第3の実施形態に係るリッジストライプ部20の側面及び側方を覆う電流狭窄層は、領域Bに形成された酸化シリコンからなる第1の電流狭窄層9の厚さを領域C側に向かって除々に薄くなるテーパ状に形成している。
具体的には、第1電流狭窄層9は、厚さが100nmであり且つ領域A及びBの長さ寸法は60μmであり、酸化タンタルからなる第2電流狭窄層14は、厚さが100nmであり且つ領域B及びCの長さ寸法は550μmである。従って、共振器長が600μmであることから、領域Bの長さ寸法は10μmである。
このように、第3の実施形態に係る半導体レーザ装置は、領域Bにおいて、酸化シリコンからなる第1の電流狭窄層9と酸化タンタルからなる第2の電流狭窄層14とを積層して形成することにより、領域Bの実効屈折率をn2 とすると、領域A、B及びCの各屈折率には、n1 <n2 <n3 の関係式が成立する。さらに、第3の実施形態においては、領域Bにおいて第1電流狭窄層9の断面形状を領域C側に薄くするテーパ状としているため、2種類の誘電体材料からなる第1電流狭窄層9及び第2電流狭窄層14の接合部分において、屈折率が連続的に変化する。従って、第1電流狭窄層9及び第2電流狭窄層14を共振器方向に少なくとも3通りで且つ連続的に変化させることができる。
以下、前記のように構成された半導体レーザ装置の製造方法について図面を参照しながら説明する。
図10(a)、(b)、図11(a)、(b)及び図12(a)、(b)は本発明の第3の実施形態に係る半導体レーザ装置の製造方法の工程順の断面構成を示している。
まず、図10(a)に示すように、第1の実施形態と同様に、MOCVD法により、n型GaNからなる基板1の主面上に、n型GaN層2、n型Al0.07Ga0.93Nからなる第1クラッド層3、n型GaNからなる第1光ガイド層4、MQW活性層5、p型GaNからなる第2光ガイド層6、p型Al0.07Ga0.93Nからなる第2クラッド層7及びp型GaNからなるコンタクト層8を順次成長させる。その後、コンタクト層8の上に形成したリッジストライプ部形成領域を覆う第1のレジストパターンをマスクとして、コンタクト層8及び第2クラッド層7に対して選択的にエッチングを行なって、リッジストライプ部20を形成する。
次に、図10(b)に示すように、第1のレジストパターンを除去した後、リソグラフィ法により、リッジストライプ部20の上面を覆う第2のレジストパターン(図示せず)を形成する。続いて、例えば、ECRスパッタ法により、ECRプラズマ、金属シリコン(Si)からなるターゲット材、アルゴン(Ar)ガス及び酸素(O2 )ガスを用いて、第2のレジストパターンをマスクとして、リッジストライプ部20を含む第2クラッド層7の上に、酸化シリコン(SiO2 )層を堆積し、第2のレジストパターンを有機溶剤によりリフトオフすることにより、第2クラッド層7上におけるリッジストライプ部20の側面上及び側方の領域に酸化シリコンからなる第1電流狭窄層9を全面的に形成する。
次に、図11(a)に示すように、リソグラフィ法により、リッジストライプ部20の上面及び酸化シリコン層における領域A及び領域Bを覆う第3のレジストパターン25を形成する。このとき第3のレジストパターン25に対して、露光時間及び現像時間を通常よりも長く設定することにより、第3のレジストパターン25の領域Bに含まれる部分を領域C側に向かって薄くなるテーパ状とすることができる。
次に、図11(b)に示すように、領域Bを覆う部分がテーパ状とされた第3のレジストパターン25をマスクとして、酸化シリコン層に対して、例えばテトラフルオロカーボン(CF4 )ガスを主成分とする反応性イオンエッチング(RIE)を行なうことにより、第2クラッド層7上のリッジストライプ部20の上面を除く領域A及び領域Bに酸化シリコンからなる第1電流狭窄層9を形成する。このとき、第3のレジストパターン25における領域B上のテーパ部分は酸化シリコンよりもエッチングレートは低いものの、エッチングガスによりエッチングされるため、第1電流狭窄層9の領域Bを覆う部分にも、領域C側に向かって薄くなるテーパ状部分が形成される。その後、第3のレジストパターン25を除去する。
次に、図12(a)に示すように、リソグラフィ法により、リッジストライプ部20の上面及び第2クラッド層7上の領域Aを覆う第4のレジストパターン(図示せず)を形成する。続いて、ECRスパッタ法により、ECRプラズマ、金属タンタル(Ta)からなるターゲット材、Arガス及びO2 ガスを用いて、第4のレジストパターンをマスクとして、リッジストライプ部20を含む第2クラッド層7の上に、酸化タンタル(Ta2O5)層を堆積し、第4のレジストパターンを有機溶剤によりリフトオフすることにより、第2クラッド層7上の領域B及び領域Cに酸化タンタルからなる第2電流狭窄層14を形成する。これにより、領域Bにおいては、第1電流狭窄層9の上に第2電流狭窄層14が積層される。
次に、図12(b)に示すように、リソグラフィ法により、各電流狭窄層9、14の上におけるp側電極形成領域、すなわち少なくともリッジストライプ部20の上面及び側面を露出する開口パターンを有する第5のレジストパターン(図示せず)を形成し、形成した第5のレジストパターンをマスクとして、スパッタ法又は真空蒸着法等により、リッジストライプ部20の上に、例えばニッケル(Ni)、白金(Pt)及び金(Au)からなる金属積層膜を形成する。その後、第5のレジストパターンを有機溶剤によりリフトオフすることにより、堆積した金属積層膜からなるp側電極12を形成する。続いて、基板1のp側電極12の反対側の面上に全面的に、例えばチタン(Ti)及びアルミニウム(Al)の積層膜からなるn側電極13を形成する。なお、第3電流狭窄層14を第1電流狭窄層9よりも先に形成してもよい。
以上説明したように、第3の実施形態によると、第1クラッド層3、第1光ガイド層4、MQW活性層5、第2光ガイド層6及び第2クラッド層7を含む発光部本体15の上部に形成されたリッジストライプ部20の側面及び側方を覆い、該リッジストライプ部20の上面のみから動作電流を注入するための電流狭窄層を、出射端面22側から酸化シリコンからなる第1電流狭窄層9及び酸化タンタルからなる第2電流狭窄層14を領域Bにおいて積層し、且つ、第1電流狭窄層9を領域Bにおいてテーパ状とすることにより、各電流狭窄層9、14の屈折率を出射端面22側から連続に大きくしている。これにより、出射端面22を含む領域Aにおいては、リッジストライプ部20との間の比較的に大きい屈折率差によって、光の水平方向の閉じ込め効果が大きくなるため、水平拡がり角を増大させることができ、発光光の投影面の断面形状の低楕円率化を実現できる。一方、領域A及びBを除く大部分の領域を占める領域Cにおいては、リッジストライプ部20との間の比較的に小さい屈折率差によって、キンクレベルが上昇するため、高出力動作に必要な内部構造を維持できる。
その上、第3の実施形態においては、領域Aと領域Cとの間に位置する領域Bに、屈折率が領域Aと領域Cとの間の値を持つ、第1電流狭窄層9と第2電流狭窄層14とからなる積層部をテーパ状としていることにより、ストライプ(共振器)方向の異なる屈折率差を連続的に変化させることができる。このため、共振器内部における光の散乱及び反射をより確実に防止できるので、高出力動作が可能な半導体レーザ装置を得ることができる。
なお、領域Aには、第2電流狭窄層14の端部が存在し、屈折率差が不連続に発生するが、第2電流狭窄層9の厚さをある程度大きくすることにより、電流狭窄層の外側への光の染み出しを抑制することができる。第2電流狭窄層9の厚さをある程度大きくすると、発光光は第2電流狭窄層14を感知しなくなるため、領域Bにおける連続的な屈折率分布を実現することが可能となる。例えば、第1電流狭窄層9の厚さは100nm以上が必要であり、ここでは100nmとしている。
なお、第3の実施形態においては、第1電流狭窄層9に屈折率n1 が1.56の酸化シリコン(SiO2 )を用い、第2電流狭窄層14に屈折率n3 が2.22の酸化タンタル(Ta2O5)を用いたが、前掲した[表1]に示す誘電体のなかから、n1 <n3 を満たす範囲で任意に選択することができる。
なお、第2の実施形態と同様に、第1電流狭窄層9に酸化シリコン(SiO2 )、酸化アルミニウム(Al2O3)又は酸化ガリウム(Ga2O3)を用い、第2電流狭窄層14に酸化ハフニウム(Hf2O5)、酸化ジルコニウム(ZrO2 )、酸化タンタル(Ta2O5)又は酸化ニオブ(Nb2O5)を用いることが好ましい。
このようにして得られた第3の実施形態に係る半導体レーザ装置において、n側電極13を接地し、p側電極12に正電圧を印加すると、MQW活性層5にキャリアが注入されて、該MQW活性層5内で光学利得が生じ、発振波長が400nm程度のレーザ発振を起こす。
なお、第1〜第3の各実施形態においては、発光部本体15を形成する基板1として、窒化ガリウム(GaN)を用いたが、これに限られない。例えば、サファイア(単結晶Al2O3)、サファイア又はGaNからなる基板上にELOG(Epitaxial Lateral Over Growth)法若しくはABLEG(Air Bridge Lateral Epitaxial Growth)法を用いた低転位基板、レーザリフトオフ法によりサファイア基板を除去したGaNテンプレート基板又は炭化ケイ素(SiC)を用いることができる。さらには、砒化ガリウム(GaAs)、酸化ネオジムガリウム(NdGaO3:NGO)、酸化リチウムガリウム(LiGaO3:LGO)又はシリコン(Si)等を用いることができる。
また、各実施形態においては、発光部本体15を構成する化合物半導体材料に窒化ガリウム系半導体を用いたが、他の材料系、例えばAlGaInP系、AlGaAs系又はInGaAsP系の化合物半導体にも適用可能である。