以下、本発明を実施するための最良の形態について、平版状の合成セグメントを例にして、添付の図面を参照して詳細に説明する。先ず、本発明の第1の実施形態に係る合成セグメントについて説明する。図1は本実施形態の合成セグメントを示す斜視図であり、図2は図1に示すA−A線による断面図である。本実施形態の合成セグメント1は、コンクリートと鋼材とで構成され、外周面、内周面、2つの軸方向端面、及び2つの周方向端面の6面を有し、トンネル周方向及びトンネル軸方向に複数連結されることで、地中に壁状構造の閉空間を形成するものである。具体的には、図1及び図2に示すように、本実施形態の合成セグメント1は、主桁7、断面L形状の構造部材4a〜4b、及び橋渡し材15a,15bで構成される鋼殻の内部空間に、中詰めコンクリート8を充填したものである。本実施形態の合成セグメント1における鋼殻は、フランジ7a及びウェブ7bからなる2本の主桁7が間隔をあけて相互に平行に配置されており、主桁7の両側には、主桁7から間隔をあけて、トンネル軸方向の両端部の角部を覆う構造部材4a〜4dが主桁7と平行に配置されている。そして、隣り合う主桁7と構造部材4a〜4d及び主桁7同士は、夫々橋渡し材15a,15bを介して相互に連結されており、橋渡し材15a,15bと、構造部材4a〜4d及び主桁7とは、弾性体座金16及びドリルねじ17により接合されている。この合成セグメント1は、主桁7及び構造部材4a〜4bの長手方向が、トンネル周方向と平行になるように設置される。
本実施形態の合成セグメント1の高さ(厚さ)は、特に限定されるものではなく、例えば、一般的な下水道用トンネル等に適用する場合は100〜200mm程度、大断面の道路用トンネル等に適用する場合は300〜1000mm程度と、用途に応じて適宜設定することができる。また、合成セグメント1の幅も同様に、例えば500〜2500mm程度と、セグメントの桁高さ、トンネル外径及び土水圧荷重の大きさ等に応じて適宜設定することができる。
また、主桁7の板厚さは、例えば6〜100mm程度であるが、この範囲に限定されるものではなく、トンネルに作用する土水圧荷重及び主桁7の設置数に応じて設定することができる。なお、コンクリート8の流動性を高めるために、主桁7のウェブ7bに開口孔を設けてもよい。その場合、円形状、矩形状又は三角形状の孔を、トンネル周方向に対して所定の間隔で設けることにより、コンクリート8を充填する際の流動性を確保できる。通常、この開口孔の寸法は桁高さの30〜50%程度とし、トンネル周方向の配置間隔は桁高さと同等にすればよい。また、同様の効果を得るために、トンネルの外周面2側及び内周面3側に配置されるフランジ7aをタイバーで接続するトラス形式のラチス構造材を構成してもよい。
更に、主桁7の設置数をn(nは2以上の自然数)、合成セグメント1の幅をBとしたとき、最も外側に配置される主桁7の位置をトンネル軸方向端部から略0.5×B/nとし、隣り合う主桁7同士の間隔が略B/nとなるように、各主桁7を配置することが望ましい。図3は主桁7の設置数が2本の場合の配置状態を示す図であり、図1に示すA−A線による断面図に相当する。図3に示すように、本実施形態の合成セグメント1のように主桁7の設置数が2本である場合は、主桁7同士の間隔をセグメント幅Bの1/2に相当する長さとし、トンネル軸方向端部(セグメント幅方向端部)と主桁7との間隔をセグメント幅Bの1/4に相当する長さとしている。これにより、主桁7の外側に充填されている外側コンクリート8と、主桁7間に充填されている内側コンクリート8との荷重負担を等しくすることができるため、中詰めコンクリート8の仕様を合理化することができると共に、合成セグメント1の幅の幅広化に対して効果を発揮する。
主桁7は、トンネルに作用する土水圧荷重がセグメントに対して均等に作用することを考慮して配置すると、合理的な断面を形成することができる。合成セグメント1はトンネル軸方向に連続して連結されるため、構造部材4a〜4dと主桁7との間に充填されているコンクリート8の幅が、主桁7間に充填されているコンクリート8の幅の1/2程度となるように、各主桁7を配置すればよい。ただし、主桁7に溝形鋼を用いる場合等のように主桁断面が非対称なとき、又はリング間の接続剛度が低い場合等は、主桁7の外側に充填されているコンクリート8と内側に充填されているコンクリート8の剛性が異なることがある。その場合は、各コンクリート8の剛性に合わせて主桁7の配置間隔を調整すればよい。
一方、セグメント外周面とトンネル軸方向端面とがなす角部を覆う4a,4bは、断面L形状であれば、山形鋼等の形鋼であっても、セグメント外周面側の第一構造部材とトンネル軸方向端面側の第二構造部材とを溶接等により接合し、断面L形形状としたものでもよい。同様に、セグメント内周面とトンネル軸方向端面とがなす角部を覆う4c,4dも、断面L形状であれば、山形鋼等の形鋼であっても、セグメント内周面側の第三構造部材とトンネル軸方向端面側の第四構造部材とを溶接等により接合し、断面L形形状としたものでもよい。また、構造部材4a〜4dは、プレート寸法(幅方向の寸法)が30〜70mm程度、厚さが5mm程度であれば、コンクリート8の割れ及び欠けに対して十分な防護性能を発揮する。なお、断面L形状の構造部材4a〜4dをセグメント断面の性能に加える場合は、作用する土水圧荷重と主桁仕様とを考慮してその寸法を設定すればよい。本実施形態の合成セグメント1のように、角部に断面L形状の構造部材4a〜4dを配置することにより、角部におけるコンクリート8の割れ及び欠けに対する抵抗が強くなる。また、コンクリート8の拘束度を高める効果が高まり、鋼殻を構成する各鋼材とコンクリート8との力伝達が増加する効果も発揮される。
次に、橋渡し材15a,15bについて説明する。主桁7間に充填されているコンクリート8は比較的拘束度が高いが、主桁7よりも外側、即ち、主桁7と構造部材4a〜4dとの間に充填されているコンクリート8は拘束度が低い。このため、本実施形態の合成セグメント1においては、橋渡し材15aを配置することでこれに対処している。具体的には、橋渡し材15aを介して主桁7と構造部材4a〜4dとを連結することにより、これらの間に充填されたコンクリート8の拘束度を向上させ、補強効果を高めている。このように、橋渡し材15aを介して断面L形状の構造部材4a〜4dと主桁7とを連結することにより、主桁7よりも外側に充填されたコンクリート8に作用する土水圧による荷重を、主桁7又は断面略L形状の構造部材4a〜4dに伝達することができるため、合成セグメント1における部材断面の一体化を図ることができる。
また、本実施形態の合成セグメント1においては、橋渡し材15bを介して主桁7同士も連結しているが、主桁7に挟まれている部分のコンクリート8は拘束が高いため、例えば、トンネルに作用する土水圧が小さい場合又はセグメントの断面寸法が小さい場合には、図4に示す本実施形態の第1変形例の合成セグメント31のように、橋渡し材15bを省略した構造、即ち、主桁7と構造部材4a〜4dとの間にのみ橋渡し材15aが設けられている構造とすることも可能である。ただし、トンネルに作用する土水圧が大きい場合又はセグメントの断面寸法が大きい場合には、本実施形態の合成セグメント1のように、主桁7間にも橋渡し材15bを設置することが望ましい。このように、橋渡し材15bを介して主桁7同士を連結することにより、断面同士の力伝達がなされ、双方の断面を一体化することができるため、コンクリート8の拘束効果を高めることができると共に、トンネルに作用する土水圧荷重による発生応力をトンネル周方向、トンネル軸方向及びセグメント桁高さ方向に対して、コンクリート8から鋼殻への力伝達効果を高めることができる。その結果、セグメント幅の幅広化に伴いコンクリート8へ作用する土水圧荷重の増加に対して、コンクリート8の補強効果をより向上させることができる。
なお、これら橋渡し材15a,15bは、トンネルに作用する土水圧荷重による発生応力をトンネル周方向、トンネル軸方向及びセグメント桁高さ方向に対して伝達する機能を持つものであり、一般的には鉄筋又は鋼板が適している。また、橋渡し材15a,15bの形状は特に限定するものではないが、本実施形態のようなL型断面形状、又は、矩形断面形状若しくはT型断面形状にすると、接合面が広く確保でき、ボルト又はドリルねじによる接続が確実に実施できるようになり、セグメントの品質が安定する。
更に、本実施形態の合成セグメント1においては、橋渡し材15a,15bと、セグメント角部に配置される断面L形状の構造部材4a〜4d及び主桁7との接合を、弾性体座金16を介してボルト又はドリルねじ17によって行っている。このため、溶接熱ひずみによる形状変形は発生せず、また、板厚の異なる板間の連結等により不陸を生じる場合でも、弾性体座金16の潰れによる変形で取り付け誤差を吸収することができる。また、ドリルねじ17は、ボルトに鋼板を削孔する機能があるためボルト接続のような先孔加工を必要とせず、更に接続する前の原部材が多少の反りや捩れが発生していても、ドリルねじ17を接続部材に押し付けて回転削孔することで接続が可能である。これにより、本実施形態の合成セグメント1においては、従来のセグメントに比べて製造工程を短縮することが可能となる。
また、主桁7と構造部材4a〜4dの板厚が異なる場合等には、橋渡し材15a,15bの連結部に弾性体座金16を用いることで形状の不陸を調整することができる。この弾性体座金16としては、一般的に、繊維補強ゴム及びエポキシ樹脂などのように、ボルト又はドリルねじ17を締結する際の回転トルクにより座金が変形して断面が押し潰される形態のものであればよい。連結部の力の伝達は、ボルト又はドリルねじ17の有効断面により伝達され、断面を切断する方向のせん断力、断面に垂直な方向の軸方向力を伝達することができる。更に、弾性体座金16の厚さを5〜10mm程度とし、やや断面を潰し気味に架設すると効果的である。
なお、図1及び図2においては、ドリルねじ17を使用して接続した例を示しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、橋渡し材15a,15bに外接するブラケットを、ボルト接続により鋼殻に連結してもよい。また、橋渡し材15a,15bの寸法及び配置間隔は、作用荷重及びセグメント断面寸法に応じて配置すればよく、いずれの配置でも鋼殻製造時における熱ひずみなどの形状変形は一切発生しない。
次に、本実施形態の合成セグメント1の製造方法について説明する。先ず、コンクリート型枠又は鋼殻固定治具に、構造部材4a〜4d及び主桁7を所定の精度で配置し、その位置を固定する。次に、橋渡し材15a,15bを、ドリルねじ17により構造部材4a〜4d及び主桁7に固定する。その際、構造部材4a〜4d及び主桁7と橋渡し材15a,15bとの間に、弾性体座金16を配置する。このため、溶接組立のような熱変形が発生せず、組み立てられた鋼殻に形状変形が発生しない。その後、構造部材4a〜4d及び主桁7で囲まれた部分、即ち、鋼殻の内部空間に、コンクリート8を打設する。コンクリート8を打設する際は、鋼殻構造を型枠として兼用してもよく、また、別途型枠を設置してもよい。
上述の如く、本実施形態の合成セグメント1においては、角部に配置する断面L形状の構造部材4a〜4dと主桁7とを、ボルト又はドリルねじ17を用いて橋渡し材15aを介して連結しているため、鋼殻の溶接熱ひずみによる形状変形を発生させずに断面の一体化を図ることができる。これにより、合成セグメント1の形状矯正が不要となる。なお、ボルトによる接続の場合では、先孔加工を行った後に接合面にボルトを螺着するが、ドリルねじ17による接続の場合では、先孔加工が不要となると共にボルトの締め込み管理も必要なくなるため、セグメント製造工程の大幅な短縮効果が得られる。
また、ボルト又はドリルネジ17と橋渡し材15aと主桁7及び構造部材4a〜4dとの間に弾性体座金16を配置して接合しているため、構造部材4a〜4dの板厚と主桁7の板厚が異なっている場合、又はセグメント断面内における配置高さが異なっている場合でも、形状の不陸を調整することができると共に、ボルト又はドリルねじ17のせん断強度を用いて力伝達することができるため、高い伝達性能を発揮する。
以上の効果により、本実施形態の合成セグメント1は、製造時における鋼殻構造の形状変形の矯正工程が不要となるため、従来のセグメントに比べて製造コストを約2割削減することができる。更に、本実施形態の合成セグメント1は、セグメントの全幅が有効に合成構造として機能するため、セグメントの構造性能が高まり、セグメントの桁高さの縮小化及びセグメント幅の幅広化に有効である。
なお、本実施形態の合成セグメント1においては、主桁7の桁高さと合成セグメント1の高さ(厚さ)とが同じで、主桁7のフランジ7aがセグメントの内面及び外面の一部を構成しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、主桁7の桁高さは、トンネルに作用する土水圧荷重の大きさに応じて設定することができる。図5は本発明の第1の実施形態の第2変形例の合成セグメントを示す断面図であり、図1に示すA−A線による断面図に相当する。例えば、図5に示すように、主桁47の桁高さを合成セグメント41の高さ(厚さ)よりも小さくして、主桁47をコンクリート8内に埋没させた構造とすることも可能であり、その場合も、前述した第1の実施形態の合成セグメント1と同様の効果が得られる。
また、本実施形態の合成セグメント1においては、主桁7としてフランジ7aとウェブ7bからなるH型断面形状の鋼材を使用しているが、本発明の効果は主桁7の断面形状に依存するものではなく、主桁には、一般的なセグメントと同様に、断面形状がウェブ7bのみの板状の鋼材(鋼板)を使用してもよく、又はセグメントの断面性能を高めたI型断面形状、C型断面形状若しくはT型断面形状の鋼材を使用することもできる。
更に、本実施形態の合成セグメント1では、2本の主桁7を設置しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、主桁7の設置枚数は、トンネルに作用する土水圧荷重とセグメントの幅又は桁高さに応じて設定すればよく、通常は、2〜4枚程度とすることが多い。図6は本発明の第1の実施形態の第3変形例の合成セグメントを示す断面図であり、図1に示すA−A線による断面図に相当する。例えば、図6に示す合成セグメント51のように主桁7を3本設置する場合も同様に、主桁7の設置数をn(nは2以上の自然数)、合成セグメント1の幅をBとしたとき、最も外側に配置される主桁7の位置をトンネル軸方向端部から略0.5×B/nとし、隣り合う主桁7同士の間隔が略B/nとなるように、各主桁7を配置することが望ましい。具体的には、図6に示すように、外側に配置する2本の主桁7は、セグメントのトンネル軸方向端部(幅方向端部)からセグメント幅Bの1/4に相当する位置に配置し、各主桁7間の間隔は、セグメント幅Bの1/3に相当する長さとすることが望ましい。これにより、主桁7と構成部材4a〜4dとの間に充填されたコンクリート8と、主桁7間に充填されたコンクリート8とで、荷重負担を等しくすることができるため、中詰めコンクリート8の仕様の合理化及びセグメント幅の幅広化に対して効果を発揮する。
更にまた、本実施形態の合成セグメント1では、セグメントの角部を覆う構成部材4a〜4dとして、山形鋼等の形鋼又は鋼板を接合して断面L字状とした鋼材を使用しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、2枚の鋼板を断面がL字状になるように、セグメント外周面側とトンネル軸方向端面側、又はセグメント内周面とトンネル軸方向端面側に配置し、それらを固着せずに当接させた状態で使用することもできる。図7は本発明の第1の実施形態の第4変形例の合成セグメントを示す断面図であり、図1に示すA−A線による断面図に相当する。図7に示すように、本変形例の合成セグメント61においては、帯状の鋼板からなる構成部材64a〜64hを、構成部材64a,64cをセグメント外周面側に、構成部材64b,64dをトンネル軸方向端面の外周面側に、構成部材64e,64gをセグメント内周面側に、構成部材64f,64hをトンネル軸方向端面の内周面側に夫々配置し、更に、構成部材64aと構成部材64b、構成部材64cと構成部材64d、構成部材64eと構成部材64f、構成部材64gと構成部材64hとを夫々断面がL形状になるように当接させることにより、セグメントの角部を覆っている。なお、当接に際して、接合又は固着等で固定は行っていないため、当接面に多少の隙間が生じる場合があるが、このような隙間は本発明の効果に影響しないため、問題はない。
本変形例の合成セグメント61においては、1つの角部を覆う2枚の構成部材同士を相互に固着していないため、製造コストを低減することができる。本発明の合成セグメントにおいては、角部を覆う断面L形状の構造部材は、一体構造でなくてもコンクリート8の割れや欠けに対する保護効果は十分発揮される。また、1つの角部を覆う2枚の構造部材のうちの一方に、各構造部材と主桁7とを連結する橋渡し材が接合されていれば、前述した力伝達性能は得られる。
更にまた、図1及び図2に示す合成セグメント1では、複数の鋼材で鋼殻構造を構成しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、鋼殻の作製方法は、鋼板を切断・溶接して鋼殻を組み立てる方法、又は、鋳型を用いて鋳鉄製の鋼殻を成型する方法等、鋼材の形状及び板厚に応じて適宜選択することができる。
次に、本発明の第2の実施形態に係る合成セグメントについて説明する。図8は本発明の第2の実施形態の合成セグメントを示す斜視図である。図8に示すように、本実施形態の合成セグメント71の鋼殻は、主桁7、断面L形状の構造部材4a〜4b及び構造部材5a〜5d、並びに橋渡し材15a,15bで構成されている。即ち、前述した第1の実施形態の合成セグメント1の各構成要素に加えて、更に、トンネル周方向の両端部に、断面L形状の構造部材5a〜5dがトンネル軸方向と平行に配置されており、これらの構造部材5a〜5dよりトンネル周方向の両端部の角部が覆われている。
構造部材4a〜4dと同様に、構造部材5a,5cは、断面L形状であれば、山形鋼等の形鋼であっても、セグメント外周面側の第五構造部材とトンネル周方向端面側の第六構造部材とを溶接等により接合し、断面L形形状としたものでもよく、また、構造部材5b,5cも、山形鋼等の形鋼であっても、セグメント内周面側の第八構造部材とトンネル軸方向端面側の第七構造部材とを溶接等により接合し、断面L形形状としたものでもよい。更に、2枚の鋼板を断面がL字状になるように、セグメント外周面側とトンネル周方向端面側、又はセグメント内周面とトンネル周方向端面側に配置し、それらを固着せずに当接させた状態で使用することもできる。なお、当接に際して、接合又は固着等で固定は行っていないため、当接面に多少の隙間が生じる場合があるが、このような隙間は本発明の効果に影響しないため、問題はない。
本実施形態の合成セグメント71においては、トンネル周方向の両端部にも断面略L形状の構造部材5a〜5dを配置しているため、前述した第1の実施形態の合成セグメント1よりも更に、コンクリート8の角部における割れや欠けに対する抵抗性能が向上すると共に、コンクリート8の拘束効果を高めることができる。なお、本実施形態の合成セグメント71における上記以外の構成及び効果は、前述した第1の実施形態の合成セグメント1と同様である。
次に、本発明の第3の実施形態に係る合成セグメントについて説明する。図9は本発明の第3の実施形態の合成セグメントを示す斜視図である。図9に示すように、本実施形態の合成セグメント81は、前述した第1の実施形態の合成セグメント1の各構成要素に加えて、トンネル周方向端部の位置にセグメント継手9が、トンネル軸方向端部の位置にリング継手10が夫々配置されている。一般的な継手構造の例として、セグメント継手9は、ボルトボックス9aのセグメント端面に面する位置にボルト孔9bが配置されており、現場で隣接配置されるセグメントとボルト接続されるものである。同様にリング継手10は、ボルトボックス10aのセグメント端面に面する位置にボルト孔10bが配置されており、現場で隣接配置されるセグメントとボルト接続されるものである。
また、合成セグメント同士を接合するにあたって、嵌合される双方の継手は相互に伝達力を伝達し合う必要があるため、これらの継手は、合成セグメント81の本体に十分に定着されなければならない。通常のRCセグメントでは、コンクリート8中に鉄筋等の定着材を配置して定着させて継手の伝達力を確保しているが、その場合、コンクリート8の割裂破壊及びせん断破壊の可能性があるため、大きな伝達力を伝達することができない。また、本実施形態の合成セグメント81は、応力負担を行う主要構造が主桁7等の鋼殻構造であるため、継手の伝達力は鋼殻に伝えなければならず、コンクリート8を介して伝達させる構造では主桁7側にも力伝達用のずれ止めが必要になり、構造の複雑化が懸念される。そこで、本実施形態の合成セグメント81においては、セグメント継手9及びリング継手10の伝達力を直接鋼殻構造へと伝達する構造形式とすることで、上記の課題を解決している。
図10は本実施形態の合成セグメント81におけるリング継手10と主桁7との連結部を示す斜視図である。図10に示すように、本実施形態の合成セグメント81においては、ボルトボックス10aを構成する側板に定着材12が溶接13により固着され、定着材12は略トンネル軸方向に向かって延長されて主桁7のウェブ板7bに連結され、連結部は溶接13により固着されている。そして、隣接配置されるセグメントのリング継手からリングボルト11がボルト孔10bを挿通して配置されて螺着される。従って、隣接配置されたセグメントからの伝達力はリングボルト11からボルトボックス10a、定着材12さらには主桁7のウェブ板7bへと順次伝達される。
図11は本実施形態の合成セグメント81におけるセグメント継手9と主桁7との連結部を示す斜視図であり、図12(a)及び(b)はその断面図である。更に、図11及び図12に示すように、セグメント継手9は、ボルトボックス9aを構成する側板に定着材12が溶接13により固着され、定着材12は略トンネル周方向に向かって延長されて主桁7のウェブ板7bに連結され、連結部は溶接13により固着されている。また、主桁7のフランジ板7aは、ボルトボックス9aが配置される位置で部分的に切り欠き加工を行うことでピースボルト14の挿通作業が可能となる。そして、隣接配置されるセグメントのセグメント継手から、ボルト孔9bを挿通してピースボルト14が配置されて、螺着される。従って、隣接配置されたセグメントからの伝達力はピースボルト14からボルトボックス9a、定着材12さらには主桁7のウェブ板7bへと順次伝達される。
なお、合成セグメント同士を、トンネル周方向に現場接続するためのセグメント継手9、同様にトンネル軸方向に現場接続するためのリング継手10には、ボルト接続式又は機械接続式がある。ボルト接続式の場合は、ボルト11,14を内包するボルトボックス9a,10a又は定着材12を鋼殻構造に固着し、機械接続式の場合にはカプラー等の継手材又は定着材12を鋼殻構造に固着する。その固着方法としては、一般的には溶接13でもよく、溶接長さの比較的短い溶接であるため、セグメント全体の形状変形に及ぼす影響は少ない。また、セグメント継手9とリング継手10は、それぞれ主桁7に固着されるケースの他、断面L形状の構造部材に固着されていてもよく、更には、主桁7と断面L形状の構造部材の両方に固着されていてもよい。
本実施形態の合成セグメント81においては、セグメント継手9及びリング継手10の伝達力を直接鋼殻構造へと伝達する構造形式としているため、セグメント間及びリング間の力伝達が良好になると共に、コンクリートへの負担が軽減するため、合成セグメント1の構造性能及び耐久性の向上が発揮される。なお、本実施形態の合成セグメント81における上記以外の構成及び効果は、前述した第1の実施形態の合成セグメント1と同様である。
次に、本発明の第4の実施形態に係る合成セグメントについて説明する。図13は本発明の第4の実施形態の合成セグメントを示す断面図であり、図1に示すA−A線による断面図に相当する。図13に示すように、本実施形態の合成セグメント91は、図8に示す第2の実施形態の合成セグメント71の外周面2に、スキンプレート20を配置したものである。このスキンプレート20は、断面L形状の構造部材94a及び94bの外周面2側に配置されている部分に、ドリルねじ97により連結されている。スキンプレート20の厚さは、通常2〜10mm程度であり、その形状はトンネルの形状に合わせて円弧版状又は平板状等、適宜選択することができる。また、本実施形態の合成セグメント91においては、外周面2側に配置されている各構造部材(トンネル軸方向両端部の角部を形成する構造部材94a、94b及びトンネル周方向両端部の角部を形成する構造部材(図示せず))の側面側(セグメント高さ方向側)の部分の表面にシール溝18を設け、このシール溝18中に水膨潤シール材19を配置して止水を行う。なお、本実施形態の合成セグメント91における外周面2側に配置される各構造部材は、トンネル外周面2に面する部分と側面に面する(セグメント高さ方向に配置する)部分とが一体成型されているか、又は双方を止水溶接等により漏水しない構造とすることが望ましい。
従来のセグメントでは、スキンプレートの周囲は溶接延長が長く、通常、止水性を確保するために連続溶接による止水溶接が採用されていた。このため、溶接による熱ひずみの影響が大きく発生し、溶接後に鋼殻の形状矯正が多く必要となっていた。そこで、本実施形態の合成セグメント91においては、スキンプレート20を、ボルト又はドリルねじ17により連結している。これにより、鋼殻の形状矯正が大幅に軽減されるため、製造コストの低減効果が発揮されると共に、止水性を確保することができ、トンネルの耐久性向上の効果が発揮される。更に、本実施形態の合成セグメント91では、構造部材94a及び94bのセグメント側面側(セグメント高さ方向に配置されている)部分に、シール溝18を形成し、その中にシール材19を配置しているため、セグメント周囲の現場接続面の止水効果も発揮される。なお、本実施形態の合成セグメント91における上記以外の構成及び効果は、前述した第2の実施形態の合成セグメント71と同様である。
次に、本実施形態の変形例の合成セグメントについて説明する。図14は本発明の第4の実施形態の変形例の合成セグメントを示す断面図であり、図1に示すA−A線による断面図に相当する。図14に示すように、本変形例の合成セグメント101は、図13に示す第4の実施形態の合成セグメント91の構成要素に加えて、更に、外周面2側に配置されている各構造部材(トンネル軸方向両端部の角部を形成する構造部材104a,104b及びトンネル周方向両端部の角部を形成する構造部材(図示せず))のスキンプレート20に当接する面に、セグメントの外縁に沿って連続したシール溝108を設け、この溝中に水膨潤シール材109を配置したものである。これにより、スキンプレート20とこれに当接する各構造部材との連結部の止水性能を、さらに向上させることができる。特に、鋼材とコンクリート8との界面は地下水を通水する水道となりやすいため、このようにセグメントの止水性能を向上させることにより、トンネル構造の耐久性が向上する効果が発揮する。
次に、本発明の第5の実施形態に係る合成セグメントについて説明する。図15は本実施形態の合成セグメントを示す断面図であり、図1に示すA−A線による断面図に相当する。図15に示すように、本実施形態の合成セグメント111は、前述した第1又は第2の実施形態の合成セグメントのコンクリート8内に、トンネル周方向と略平行に鉄筋21を配置したものである。
本実施形態の合成セグメント111における鉄筋21の直径は、コンクリート8のひび割れ抑制面から少なくとも10mmとし、鉄筋21の配置間隔は200〜300mmとすることが好ましい。また、応力負担をさせる場合は、鉄筋21の直径を41mm程度まで太径化することで対処できる。更に、鉄筋21をセグメント桁高さ方向にフープ形状に形成して配置することにより、中詰めコンクリート8のせん断耐力を向上させることができる。
本実施形態の合成セグメントにおいては、コンクリート8内に鉄筋21を配置しているため、中詰めコンクリート8の構造性能が高まる効果が発揮される。また、橋渡し材15a,15bと鉄筋21とが格子状に配置されているため、コンクリート8の補強効果が一層高まると共に、中詰めコンクリート8と鋼殻の一体化の効果も高められる。更に、コンクリート8の表面ひび割れを抑制することもできるため、トンネルの耐久性の向上につながる。更にまた、セグメント断面の経済設計を行うために、主桁7の板厚をトンネル部位の発生断面力に応じて設定すると、主桁7を構成する鋼板の種類が多くなり、鋼板の製造コストの増加を招くが、本実施形態の合成セグメント111では、セグメント断面の必要性能に合わせてトンネル周方向の鉄筋21の量を調整することができるため、製造コストの低減を図ることができる。なお、本実施形態の合成セグメント111における上記以外の構成及び効果は、前述した第1又は第2の実施形態の合成セグメントと同様である。
また、図15に示す合成セグメント111ではコンクリート8内に鉄筋21を配置しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、鉄筋21の代わりに、表面にずれ止め機能を有する鋼(延)材を使用することもできる。その場合、表面にずれ止め機能を有する鋼(延)材としては、製造コストが安い矩形断面形状、L型断面形状又はT型断面形状の圧延材を使用することが望ましく、具体的には、板厚が10〜30mm程度で、幅が20〜50mm程度の平鋼、又は板厚が2〜20mm程度で、辺長が20〜50mm程度の山形鋼が好適である。
次に、本発明の第6の実施形態に係る合成セグメントについて説明する。図16は本実施形態の合成セグメントを示す断面図であり、図1に示すA−A線による断面図に相当する。図16に示すように、本実施形態の合成セグメント121は、前述した第1又は第2の実施形態の合成セグメントの橋渡し材15a,15b同士を、せん断補強筋22によってセグメント桁高さ方向に連結したものである。各せん断補強筋22は、溶接により橋渡し材15a,15bに固着されている。
トンネル外周側からの土水圧荷重が、合成セグメントに作用した場合、セグメント1高さ方向への力伝達が必要となる。特に、土水圧荷重が大きく発生する深度の深いトンネル及び外径の大きなトンネルでは、コンクリート8のせん断破壊に抵抗する構造が要求される。一方、本実施形態の合成セグメント121においては、橋渡し材15a,15b同士を、夫々セグメント高さ方向に連結しているため、これらがセグメント高さ方向の引張材として機能し、せん断伝達効果が発揮される。
次に、前述した第6の実施形態に係る合成セグメントの第1変形例について説明する。図17は本変形例の合成セグメントを示す断面図であり、図1に示すA−A線による断面図に相当する。図17に示すように、本変形例の合成セグメント131においては、せん断補強筋22と橋渡し材15a,15bとをドリルねじ117で接続している以外は、前述した第6の実施形態に係る合成セグメントと同様である。本実施形態の合成セグメント131においては、せん断補強筋22と橋渡し材15a,15bとを溶接ではなく、ドリルネねじで接続しているため、鋼殻を変形させずに優れたせん断伝達効果が得られる。
次に、前述した第6の実施形態に係る合成セグメントの第2変形例について説明する。図18は本変形例の合成セグメントを示す断面図であり、図1に示すA−A線による断面図に相当する。図18に示すように、本変形例の合成セグメント141は、セグメント桁高さ方向に対向配置された橋渡し材15a,15b間に充填されたコンクリート8中に、トンネル周方向と略平行に複数の鉄筋21が配置されている以外は、前述した第6の実施形態の合成セグメント121と同様である。このように、橋渡し材15a,15b同士を、せん断補強筋22によってセグメント桁高さ方向に連結すると共に、コンクリート8中にトンネル周方向と略平行に複数の鉄筋21を配置することにより、コンクリート8を3次元的に補強することができる。
なお、前述した第1〜6の実施形態及びその変形例では、合成セグメントの形状が平版状である場合を例に説明しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、コンクリートと鋼材とで構成され、トンネル周方向および軸方向に複数連結されることで地中に壁状構造の閉空間を形成し、外周面、内周面、2つの軸方向端面、及び2つの周方向端面の6面を有する円弧版状の合成セグメントであっても、同様の構成とすることにより、上述した効果が得られる。