JP4707920B2 - 聴覚上の定常状態応答を使用した聴力を客観的に評価するためのシステム及び方法 - Google Patents

聴覚上の定常状態応答を使用した聴力を客観的に評価するためのシステム及び方法 Download PDF

Info

Publication number
JP4707920B2
JP4707920B2 JP2001583621A JP2001583621A JP4707920B2 JP 4707920 B2 JP4707920 B2 JP 4707920B2 JP 2001583621 A JP2001583621 A JP 2001583621A JP 2001583621 A JP2001583621 A JP 2001583621A JP 4707920 B2 JP4707920 B2 JP 4707920B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
test
ssaep
stimulus
response
modulation
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Lifetime
Application number
JP2001583621A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2003533258A (ja
JP2003533258A5 (ja
Inventor
サシャ ジョン マイケル
ダブリュー.ピクトン テレンス
Original Assignee
ベイクレスト・センター・フォー・ジェリアトリック・ケア
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by ベイクレスト・センター・フォー・ジェリアトリック・ケア filed Critical ベイクレスト・センター・フォー・ジェリアトリック・ケア
Publication of JP2003533258A publication Critical patent/JP2003533258A/ja
Publication of JP2003533258A5 publication Critical patent/JP2003533258A5/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4707920B2 publication Critical patent/JP4707920B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Lifetime legal-status Critical Current

Links

Images

Classifications

    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61BDIAGNOSIS; SURGERY; IDENTIFICATION
    • A61B5/00Measuring for diagnostic purposes; Identification of persons
    • A61B5/12Audiometering
    • A61B5/121Audiometering evaluating hearing capacity
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61BDIAGNOSIS; SURGERY; IDENTIFICATION
    • A61B5/00Measuring for diagnostic purposes; Identification of persons
    • A61B5/0048Detecting, measuring or recording by applying mechanical forces or stimuli
    • A61B5/0051Detecting, measuring or recording by applying mechanical forces or stimuli by applying vibrations
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61BDIAGNOSIS; SURGERY; IDENTIFICATION
    • A61B5/00Measuring for diagnostic purposes; Identification of persons
    • A61B5/24Detecting, measuring or recording bioelectric or biomagnetic signals of the body or parts thereof
    • A61B5/316Modalities, i.e. specific diagnostic methods
    • A61B5/369Electroencephalography [EEG]
    • A61B5/377Electroencephalography [EEG] using evoked responses
    • A61B5/38Acoustic or auditory stimuli
    • HELECTRICITY
    • H04ELECTRIC COMMUNICATION TECHNIQUE
    • H04RLOUDSPEAKERS, MICROPHONES, GRAMOPHONE PICK-UPS OR LIKE ACOUSTIC ELECTROMECHANICAL TRANSDUCERS; DEAF-AID SETS; PUBLIC ADDRESS SYSTEMS
    • H04R25/00Deaf-aid sets, i.e. electro-acoustic or electro-mechanical hearing aids; Electric tinnitus maskers providing an auditory perception
    • H04R25/70Adaptation of deaf aid to hearing loss, e.g. initial electronic fitting
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61BDIAGNOSIS; SURGERY; IDENTIFICATION
    • A61B5/00Measuring for diagnostic purposes; Identification of persons
    • A61B5/72Signal processing specially adapted for physiological signals or for diagnostic purposes
    • A61B5/7235Details of waveform analysis
    • A61B5/7253Details of waveform analysis characterised by using transforms
    • A61B5/7257Details of waveform analysis characterised by using transforms using Fourier transforms

Landscapes

  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Physics & Mathematics (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Biomedical Technology (AREA)
  • Veterinary Medicine (AREA)
  • Heart & Thoracic Surgery (AREA)
  • Medical Informatics (AREA)
  • Molecular Biology (AREA)
  • Surgery (AREA)
  • Animal Behavior & Ethology (AREA)
  • Biophysics (AREA)
  • Public Health (AREA)
  • Pathology (AREA)
  • Acoustics & Sound (AREA)
  • Audiology, Speech & Language Pathology (AREA)
  • Otolaryngology (AREA)
  • Psychiatry (AREA)
  • Psychology (AREA)
  • Multimedia (AREA)
  • Neurosurgery (AREA)
  • Signal Processing (AREA)
  • Measurement Of The Respiration, Hearing Ability, Form, And Blood Characteristics Of Living Organisms (AREA)
  • Measurement And Recording Of Electrical Phenomena And Electrical Characteristics Of The Living Body (AREA)

Description

【0001】
(発明の分野)
本発明は聴覚の検査に関し、特に、聴力の障害の特定及び評価に関する。さらに詳細に述べると、本発明は聴覚上の定常状態応答(steady-state response)を記録することによって個人の聴力を客観的に評価するためのシステム及び方法を開示する。
【0002】
(発明の背景)
聴力障害は特に、人間の寿命の両端の時期において生活上の重要な問題である。新生児の約千人に一人及び、65歳以上成人の4人に一人は聴力上の障害を持つ。新生児の場合、初期の段階で適切な処置をし、新生児が通常の会話や言語を学ぶことを可能にするために、聴力障害の初期の発見が必要または重要である。聴力障害の診断は個人がどのくらいの敏感度で音声を聞くことができるかの測定(すなわち、聴能測定)を必要とする。
【0003】
従来の聴能測定は被験者がボタンを押す、「はい」と言う、または、音声刺激を繰り返すことによって音声刺激に応答することによって実施されてきた。これらの試験は本質的に主観的である。聴能測定は聴覚学者または医者が、被験者が聞くことができる最小の音声である、被験者の聴覚上の閾値を決定することを可能にする。聴覚学者は通常、純粋なトーン(または、一定のピッチの音声)から成る刺激を使用することによって被験者の聴覚上の閾値を評価する。刺激はイヤホン、自由音場スピーカー(free field speaker)、または骨伝導変換器(bone conduction transducer)を介して送られる。そしてその結果は、異なった周波数のトーンに対する聴覚上の閾値を示す聴力図として示される。聴力図は被験者の聴力障害の種類を診断するために役立つ。聴力図はまた、補聴器を必要とする被験者に補聴器を付け、補聴器の増幅率の調節をするために使用することもできる。
【0004】
聴能測定はまた、被験者の聴覚システムがどの程度、通常の強度の(または、通常の大きさの)、異なった音声(例えば、会話等)を区別することができるかを決定するための上方閾値(supra threshold)の大きさの試験を含む。したがって、聴覚学者は被験者が異なった量のバックグラウンドノイズの有る状態または無い状態で、どのくらいの量の単語を正確に識別することができるかを調べることができる。聴覚学者はまた、音声の強度及び周波数の変化をどの程度区別することができるか、または、どの程度の速さでこれらの変化が起きるか(または、変化に応答するか)を測定する試験を実施してもよい。
【0005】
しかしながら、従来の聴能測定は新生児、幼児、または、認識力に障害を持つ成人に対して実施することができない。このような状況においては、被験者が意図した応答をする必要がない、客観的な聴力の試験が必要である。客観的聴能測定は新生児や老人、あるいは機能的な聴力障害を診断するために欠くことができないものである。また、会話の上方閾値、周波数、または強度区別に対する客観的な試験もほとんど開発されていないのが現状である。
【0006】
客観的聴能測定の1つの形式は聴覚誘発電位(auditory evoked potential)を使用する。聴覚誘発電位試験は被験者に音声刺激を与え、それと同時に、被験者の電位を検出(すなわち、記録)することによって行われる。検出された電位は被験者の聴覚システムが刺激を処理したときの、被験者の刺激に対する応答を含む、被験者の脳波図(EEG)である。これらの電位は、それらが音声刺激に対する応答を含むかどうかを決定するために分析される。聴覚誘発電位は聴覚閾値及び特定の周波数に対する聴力を決定するために使用されている。
【0007】
聴覚誘発電位の1つの種類は定常状態誘発電位(SSAEP(steady state evoked potential))である。SSAEPに対する刺激(以下、SSAEP刺激と呼ぶ)は通常正弦波である変調信号によって振幅変調された、やはり通常正弦波である搬送波信号から成る。SSAEP刺激は被験者のEEG(脳電図)の記録と共に行われる。被験者の聴覚システムがSSAEP刺激に応答した場合、それに対応する定常状態正弦波信号がEEGに記録される。記録された信号は変調信号の周波数と同じ周波数(すなわち、変調周波数)を持つはずである。EEG上のこのような対応する信号の存在はSSAEP刺激への応答を示している。あるいは、SSAEP刺激を生成するために振幅変調の代わりに、または、振幅変調に加え、搬送波信号の位相が周波数変調されてもよい。
【0008】
SSAEP刺激は聴覚システムの特定の部分の試験を可能にするために十分な周波数特性を持つ。さらに、SSAEP刺激は自由音場スピーカーまたは補聴器のひずみの影響を受けにくい。SSAEP刺激で使用される典型的な変調周波数は30から50Hzまたは75から110Hzの間である。後者の範囲は、これらのレートにおいてSSAEPの応答が睡眠の影響をあまり受けず、新生児に対して利用することができるので、聴能測定に対して特に有効である。さらに、これらのレートのSSAEP応答は純粋なトーン刺激に対する行動閾値(behavioral threshold)と大きな相関関係がある聴能測定閾値の評価として利用できる。SSAEP試験において、SSAEP刺激に対するSSAEPの応答の有無はいくつかの統計的技術を使用して決定される。
【0009】
しかしながら、SSAEP応答の振幅は試験が行われているときの被験者の脳の活動(すなわち、EEG)のバックグラウンドノイズに比べて非常に小さいので、SSAEP試験を利用する客観的聴能測定は非常に時間がかかる。すなわち、SSAEP応答は非常に小さいSN比(SNR)を持ち、短い時間でSSAEP応答を検出することが困難である。SSAEPの試験時間を短くするための1つの技術は複数のSSAEP試験信号を組み合わせた多重SSAEP刺激を使用することである(すなわち、ここで1つの試験信号は1つのSSAEP刺激を意味する)。多重SSAEP刺激を与えている間に被験者から検出された電位は多重SSAEP刺激の各SSAEP試験信号に対するSSAEP応答の線形上の重ね合わせ(linear superposition)を含む。
【0010】
この方法は単一の刺激に対する応答を記録するために必要な時間内に、(例えば、4重または8重の)多重刺激に対するSSAEP応答の記録を可能にする。したがって、この技術は複数のSSAEP試験に対するSSAEP応答が同時に検出されることを可能にし、試験時間を減少させる結果となる。しかしながら、各SSAEP応答に対するSNRは小さいままであるので、単一のSSAEP刺激に対する応答を記録するための試験時間は短縮されない。SSAEPの試験時間を短縮するためには、SSAEP応答の振幅を増大させ、さらに(または)SSAEP応答と共に記録されるノイズの振幅を減少させる技術を必要とする。また、小さなSNRを持ったSSAEP応答を検出することが可能な、より敏感度の良い統計的方法も時間の短縮のために役立つであるだろう。
【0011】
被験者が聴力障害を持つと客観的試験が特定した場合、次のステップは通常、補聴器を備えることにより被験者を処置することである。しかしながら、被験者が新生児の場合、これらの処置を主観的な方法で実施することができないので、補聴器を客観的に調節するための方法が必要である。補聴器が配置されたときに、実際の耳の挿入利得(real ear insertion gain)を測定する等の、いくつかの客観的方法が開発されている。しかしながら、この方法は被験者が補聴器をしていないときの実際の聴覚閾値が判っており、規範的な目標値に補聴器を調節することができる場合のみ有効である。
【0012】
さらに、新生児へのプローブチューブ(probe tube)の配置は非常に困難である。クリック誘発聴覚誘発電位(click evoked auditory evoked potential)に基づいた方法も存在するが、これらの方法で使用される刺激は特定の周波数範囲に限定されており、会話等の連続的な信号を処理するための補聴器の能力を試験することができない。したがって、行動閾値(behavioral threshold)及び実際の耳の測定を行うのが困難な場合等に、患者の補聴器の効果を測定するための、客観的方法に対する必要性が存在する。
【0013】
(発明の要約)
本発明はSSAEP応答を記録するための装置及び、被験者の聴覚システムの多様な特性を試験するために、その装置を使用するための方法を提供する。装置はSSAEP刺激を与え、SSAEP刺激と同時にEEGデータを取得し、さらに、SSAEP応答の存在を検出するためにEEGデータを分析するためのハードウェアから成る。装置はさらに、SSAEP刺激の生成及び送信、EEGデータの取得、及びEEGデータの分析を可能にするためのソフトウェアを備える。ソフトウェアはさらに、進行中の試験の結果、試験の最終的な結果を表示すると共に、その後の表示及び(または)分析のための試験結果の格納を可能にする。
【0014】
本発明はまた、サンプル重み付け平均化(sample weighted averaging)を含む、効果的なノイズリダクションアルゴリズムを実施するソフトウェアを含む。ソフトウェアはまた、SSAEP刺激に対するSSAEP応答を検出するために使用される効果的な統計的試験を実施する。これらの統計的試験は位相重み付けt検定(phase weighted t-test)、位相区間技術(phase zone technique)、及び改良された円状均一性のレイリー試験(MRC(modified Rayleigh test of circular uniformity))を含む。
【0015】
本発明はまた、結果として生ずるSSAEP応答の振幅を増大させるために特定の種類のSSAEP刺激を使用する。SSAEP刺激は周波数変調信号の位相が振幅変調の位相に対して調節されている振幅変調と周波数変調との組み合わせ信号を使用してもよい。これらのSSAEP刺激はまた、指数変調(exponential modulation)信号の使用を含んでもよい。本発明はまた、AM(振幅変調)変調レートがFM(振幅変調)変調レートと異なる、独立した振幅変調信号及び周波数変調信号から成るSSAEP刺激を使用してもよい。この刺激は独立に分析することが可能な2つのSSAEP応答を誘発する。
【0016】
本発明のもう1つの側面において、これらのSSAEP刺激は被験者の聴能測定上の閾値の決定及び、補聴器付き、及び無しでの試験等の、多様な客観的試験に対して使用することができる。本発明はさらに、潜伏時間試験(latency test)、AM/FM識別試験、レート敏感度(rate sensitivity)試験、補聴器付き試験、深さ敏感度(depth sensitivity)試験、及び上方閾値(supra-threshold)試験を含む多様な聴力測定のプロトコルを含む。
【0017】
本発明はさらに、SSAEP刺激の構築、SSAEP応答の検出、及び検出されたSSAEP応答が正常な聴力であるか異常な聴力であるかの決定をするために使用することができる基準となるデータ(normative data)のデータベースを備える。データベースは年齢、性別等の被験者の特徴、並びに、SSAEP刺激の種類、変調(振幅vs周波数)の種類、変調レート、及び変調の深さ(depth)等の、多様な刺激の状態によって類別されたデータを格納する。データベースはまた好まれるものとして、潜伏時間(latency)並びに、振幅変調及び周波数変調されたSSAEP刺激に対するSSAEP応答の振幅の比等の、SSAEP応答の特性に対するデータを格納する。
【0018】
代替的な実施例において、装置は被験者の2つ以上の感覚の種類(sensory modality)(例えば、視覚及び聴覚)が同時に試験される、複数感覚(multi modality)試験を実施するように構成されてもよい。
【0019】
本発明は以下のステップから成る被験者の聴力の試験の方法を提供する:
(a)少なくとも1つの試験信号を選択すること;
(b)少なくとも1つの変調試験信号を生成するために、指数変調(exponential modulation)信号によって少なくとも1つの試験信号の振幅と周波数の少なくとも1つを変調すること;
(c)音声刺激を生成するために少なくとも1つの変調試験信号を変換し、音声刺激を被験者に与えること;
(d)被験者に音声刺激を与えるのと実質的に同時に、被験者から電位を検出すること;及び、
(e)電位が音声刺激への応答で少なくとも1つの定常状態応答を示すデータを含むかを決定するために電位を分析すること。
【0020】
本発明はさらに、以下のステップから成る被験者の聴力を試験することを含む:
(a)第1の位相と共に振幅変調された成分及び第2の位相と共に周波数変調された成分を持った少なくとも1つの信号であって、第2の位相が被験者からの応答の増大を誘発するために第1の位相に対して調整されている信号を含む最適ベクトル混合変調試験信号(optimum-vector mixed modulation test signal)を生成すること;
(b)音声刺激を生成するために少なくとも1つの変調試験信号を変換し、音声刺激を被験者に与えること;
(c)被験者に音声刺激を与えるのと実質的に同時に、被験者から電位を検出すること;及び、
(d)電位が音声刺激への応答で少なくとも1つの定常状態応答を示すデータを含むかを決定するために電位を分析すること。
【0021】
もう1つの側面において、本発明は以下のステップから成る被験者の聴力の試験の方法を提供する:
(a)振幅変調された成分及び周波数変調された成分を持った、少なくとも1つの独立に振幅変調及び周波数変調された信号であって、振幅変調された成分が第1変調周波数及び第1搬送波周波数を持ち、周波数変調された成分が第2変調周波数及び第2搬送波周波数を持ち、第1変調周波数が第2変調周波数と実質的に異なり、第1搬送波周波数が第2搬送波周波数と実質的に同じである信号を含む試験信号を生成すること;
(b)音声刺激を生成するために少なくとも1つの変調試験信号を変換し、音声刺激を被験者に与えること;
(c)被験者に音声刺激を与えるのと実質的に同時に、被験者から電位を検出すること;及び、
(d)電位が各振幅変調された成分に応答した定常状態応答及び、各周波数変調された成分に応答した定常状態応答を示すデータを含むかを決定するために電位を分析すること。
【0022】
もう1つの側面において、本発明は以下の構成要素から成る、被験者の聴力を試験するための装置を提供する:
(a)第1の位相と共に振幅変調された成分及び第2の位相と共に周波数変調された成分を持った少なくとも1つの信号を含む試験信号を生成するための信号生成器であって、第2の位相を第1の位相に対して調節するための手段を備えた信号生成器;
(b)音声刺激を生成し、音声刺激を被験者に与えるために試験信号を処理及び変換するための、プロセッサーに電気的に接続された変換器;
(c)被験者に音声刺激を与えるのと実質的に同時に、被験者から電位を検出するためのセンサー;及び、
(d)電位が少なくとも1つの音声刺激への応答を示すデータを含むかを決定するために電位を受信し、分析するためにセンサーに電気的に接続されたプロセッサー。
【0023】
もう1つの側面において、本発明は電位が定常状態誘発電位刺激(steady state evoked potential stimulus)への応答で少なくとも1つの定常状態応答の存在を示すデータを含むかを決定するために電位を分析するための方法を提供する。方法は以下のステップから成る:
(a)被験者に誘発電位刺激(evoked potential stimulu)を与えること;
(b)複数のデータポイントを得るために、被験者に刺激を与えるのと実質的に同時に、被験者から電位を検出すること;
(c)複数のデータポイントを第2の複数のデータポイントに変換させること;
(d)偏りのある複数のデータポイント(biased data point)を得るために、第2の複数のデータポイントに位相期待値(expected phase value)で偏らせること(biasing);及び、
(e)応答を検出するために偏りのある複数のデータポイントに統計的試験を適用すること。
【0024】
本発明はさらに、以下のステップから成る誘発電位刺激への応答を検出するための方法を提供する:
(a)被験者に誘発電位刺激を与えること;
(b)複数のデータポイントを得るために、被験者に刺激を与えるのと実質的に同時に、被験者から電位を検出すること;
(c)複数のデータポイントに対する位相値(phase value)を計算することであって、適当な数の計算された位相値が予め決められた位相値範囲に入ったときに応答が検出されるように計算すること;
【0025】
本発明は以下の構成要素から成る、被験者の聴力を試験するための装置を提供する:
(a)試験信号を生成するための信号生成器;
(b)音声刺激を生成し、音声刺激を被験者に与えるために試験信号を処理及び変換するための、信号生成器に電気的に接続された変換器;
(c)被験者に音声刺激を与えるのと実質的に同時に被験者から電位を検出するためのセンサー;及び、
(d)電位が少なくとも1つの音声刺激への応答を示すデータを含むかを決定するために電位を受信し、分析するための、センサーに電気的に接続されたプロセッサー。
装置の分析は電位に位相期待値(expected phase value)に基づいて偏らせることを含む。装置はさらに、被験者の特徴及び刺激の特徴と相関関係を持った位相期待値のデータベースを含む。
【0026】
もう1つの側面において、本発明は以下のステップから成る、定常状態誘発電位刺激試験中に得られた少なくとも1つの信号及びノイズを含む複数のデータポイントに対するノイズリダクションの方法を提供する:
(a)前記複数のデータポイントを取得すること;
(b)前記複数のデータポイントを複数の時間区分(epoch)に分割すること;及び、
(c)各時間区分に適応性ノイズリダクション(adaptive noise reduction)を適用すること。
【0027】
もう1つの側面において、本発明は以下のステップから成る、被験者の聴力を客観的に試験する方法を提供する:
(a)聴覚試験を選択すること;
(b)聴覚試験のために少なくとも1つの成分を含む適当な試験信号を生成すること;
(c)刺激を生成するために試験信号を変換し、前記刺激を被験者に与えること;
(d)被験者に刺激を与えるのと実質的に同時に、被験者から電位を検出すること;及び、
(e)少なくとも1つの応答を検出するために電位を分析すること。
【0028】
もう1つの側面において、本発明は以下の構成要素から成る、被験者の聴力の客観的な試験のための装置を提供する:
(a)被験者に実施するために聴覚試験を選択するためのセレクター;
(b)少なくとも1つの試験のための成分を含む適当な試験信号を生成するための、セレクターに電気的に接続された信号生成器;
(c)音声刺激を生成し、音声刺激を被験者に与えるために試験信号を変換するための、信号生成器に電気的に接続された変換器;
(d)被験者に音声刺激を与えるのと実質的に同時に、被験者から電位を検出するためのセンサー;、
(e)電位が少なくとも1つの音声刺激への応答を示すデータを含むかを決定するために電位を受信し、分析するためにセンサーに電気的に接続されたプロセッサー;及び、
(f)前記プロセッサーに接続されたプログラム可能な補聴器であって、異なった周波数領域に対する複数のプログラム可能な利得率(または、利得ファクター)及び、少なくとも1つのプログラム可能なフィルター勾配(filter slope)を備えた補聴器。
【0029】
代替的な実施例において、本発明は以下のステップから成る被験者の少なくとも2つの感覚を試験する方法を提供する:
(a)第1の感覚の種類を試験するために第1定常状態試験信号を選択すること;
(b)第1刺激を生成し、第1刺激を被験者に与えるために、第1定常状態試験信号を変換すること;
(c)第2の感覚の種類を試験するために第2定常状態試験信号を選択すること;
(d)第2刺激を生成し、第2刺激を被験者に与えるために、第2定常状態試験信号を変換すること;
(e)被験者に両方の刺激を与えるのと実質的に同時に、電位を検出すること;及び、
(f)電位が刺激への応答で少なくとも1つの定常状態応答を示すデータを含むかを決定するために電位を分析すること。
【0030】
代替的な実施例において、本発明は以下の構成要素から成る被験者の少なくとも2つの感覚を試験するための装置を提供する:
(a)第1定常状態試験信号及び第2定常状態試験信号を生成するための信号生成器;
(b)第1刺激を生成し、第1刺激を被験者に与えるために、第1試験信号を変換するための、セレクターに電気的に接続された第1変換器;
(c)第2刺激を生成し、第2刺激を被験者に与えるために、第2試験信号を変換するための、セレクターに電気的に接続された第2変換器;
(d)被験者に第1刺激が与えられるのと実質的に同時に、被験者から第1電位を検出するための第1センサー;
(e)被験者に第2刺激が与えられるのと実質的に同時に、被験者から第2電位を検出するための第2センサー;
(f)第1電位が第1刺激への少なくとも1つの応答を示すデータを含むかを決定するために第1電位を受信し、分析するための、第1センサーに電気的に接続されたプロセッサー。
さらに、装置は:
(g)前記プロセッサーが第2電位が第2刺激への少なくとも1つの応答を示すデータを含むかを決定するために第2電位を受信し、分析するために構成されており、前記プロセッサーが第2センサーに電気的に接続されており、各刺激は被験者に実質的に同時に与えられることを特徴する。
【0031】
本発明のさらなる目的及び長所は以下の詳細な説明を付随する図面と共に読むことにより明らかになるだろう。本発明をより明確な理解及び、本発明がどのように実施されるかを示すために、以下の、本発明の好まれる実施例を示している、例としての図面と共に本発明が詳細に説明される。
【0032】
(発明の詳細な説明)
本発明は定常状態誘発電位(steady-state evoked potential)を記録するための装置及び、被験者の聴力の多様な特徴を試験するために、その装置を使用するための方法を提供する。装置の基本的なハードウェア及びソフトウェアの構成要素を最初に説明する。次に、ノイズリダクション法を説明し、さらに、応答の検出について説明する。次に、SSAEPのために使用することができる試験信号を説明し、最後に、SSAEP刺激に基づいた客観的な聴能測定試験のためのプロトコルが説明される。
【0033】
(本発明のハードウェア及びソフトウェア構成要素)
図1aを参照すると、客観的聴能測定試験装置10はプロセッサー12、デジタル−アナログ変換器(DAC)16及びアナログ−デジタル変換器(ADC)18を持ったデータ取得ボード14、フィルター22及び増幅器24を持った聴能測定器20、変換器26、センサー28、第2増幅器30、第2フィルター32、複数のデータベースD1,D2,,,Dnを持ったマスターデータベース52、格納装置34、並びにディスプレイ36を含む。プロセッサー12は実質的に、信号生成器モジュール42、変調器モジュール44、並びにノイズリダクションモジュール48及び検出モジュール50を持った分析モジュール46から成るソフトウェアプログラム40でプログラムされている。
【0034】
例えば、ウィンドウズ98を起動しているペンティアム750等のパソコンはプロセッサー12、格納装置34、及びディスプレイ36を備えていてもよい。ソフトウェアプログラム40はパソコン上で起動され、複数のデータベースD1−Dnを備えたマスターデータベース52はパソコンのメモリーに格納され、ソフトウェアプログラムと通信を行うことが可能である。あるいは、これらの構成要素はラップトップ、パームトップ等の手のひらサイズのコンピューター、または専用の電子装置を使用して実施されてもよい。
【0035】
客観的聴能測定試験装置10は被験者60にSSAEP刺激を与えることによって、被験者60の聴覚システムを検査するために使用することができる。刺激が与えられている間に、客観的聴能測定試験装置10は検出された電位(すなわち、EEGデータ)を記録し、EEGデータを増幅する。これらは被験者60にSSAEP刺激を与える動作と実質的に同時に行われる。次に、EEGデータは記録されたEEGデータがSSAEP応答を含むかどうかを決定するために処理され、統計的に評価される。例えば、データの処理は、統計的にみて明らかにEEGのバックグラウンドノイズレベルと異なる応答が含まれていることを示すような処理を含む。客観的聴能測定試験装置10の設計は、音声刺激の生成、アーティファクトの無いデータの取得、EEGデータの周波数領域(frequency domain)による分析、及びノイズ中のSSAEP応答の客観的検出を考慮しながら行われる。
【0036】
プロセッサー12は、例えばペンティアム750等の、どのようなプロセッサーであってもよい。データ取得ボード14はNational Instrumentsから入手可能なデータ取得ボード(AT-MIO-16E-10)であってもよい。あるいは、適当な数の入力/出力チャネルを備えた他のデータ取得ボードが使用されてもよい。データ取得ボード14はDAC16を介したデータの出力及び、ADC18を介したデータの入力を可能にする。
【0037】
DAC16からの出力は、DAC等と同様にプロセッサー12によって制御されてもよい聴能測定器20に送られる。聴能測定器20はフィルター22及び増幅器24を介して被験者60に与えたれる刺激を調節または制御するために利用される。聴能測定器20を使用する代わりに、被験者60に与えられる刺激の強度及び周波数を制御するために、機能的な同等な増幅/減衰及びフィルタリング機能を持ったハードウェアを聴能測定試験装置10に組み込むこともできる。
【0038】
SSAEP刺激は、例えば一組のスピーカー、ヘッドホン、または少なくとも1つの挿入型イヤホン(earphone)等であってもよい、変換器26を介して被験者60に与えられる。挿入型イヤホンはEtymotics Researchによって設計されたイヤホンであってもよい。変換器26はSSAEP刺激が被験者60の左及び(または)右の耳を介して与えられることを可能にする。刺激はまた、自由音場スピーカー(free field speaker)、または骨伝振動器(bone conduction vibrator)を使用して与えられてもよい。
【0039】
刺激が被験者60に与えられているのと実質的に同時に、通常電極から成るセンサー28を使用して被験者60からEEGが検出される。電極は通常、被験者60の頭頂に配置される1つの能動電極、被験者60の首に配置される基準電極、及び被験者60の鎖骨に配置されるグランド電極を含む。もちろん、他の電極の配置が利用されてもよい。また、4つ以上の電極を使用することも可能である。
【0040】
次に、検出されたEEGデータは検出されたEEGデータをADC18の入力範囲に対して適当なレベルに増幅する増幅器30に送られる。増幅器30は10,000の利得(または、ゲイン)を使用する。増幅されたEEGデータは次に、ADC18がエイリアシング(aliasing)無しでサンプリングを行うことができるように、検出されかつ増幅されたEEGデータをフィルタリングするフィルター32に送られる。フィルター32は300Hzのローパス設定及び、1Hzのハイパス設定に設定されてもよい。ADC18は濾波されたEEGデータを受信し、約1000Hzのレートでサンプリングする。サンプリングレートはフィルター32の設定に依存する。他のサンプリングレートが使用されてもよいが、しかしながら、当業者には明らかなように、ナイキスト周波数(Nyquist rate)を違反しないことが条件である。
【0041】
図1aに示されている客観的聴能測定試験装置10は装置の較正を行うために使用される減衰回路等の、他の回路を含んでもよい。補聴器等を使用した場合の試験等の他の聴能測定試験を行うために、客観的聴能測定試験装置10に他の回路が加えられてもよい。補聴器を使用した試験において、被験者60は少なくとも1つの補聴器を備え、客観的聴能測定試験装置10は補聴器の利得を変更することにより、被験者60が被験者60に自由音場スピーカーを介して与えられるSSAEP刺激を聞くことができるように構成される。
【0042】
客観的聴能測定試験装置10は多様な様式で実施することができる。例えば、異なったタイプのコンピューターを使用することができるだろう。さらに、データ取得ボード14は複式の入力(ADC)及び複式の(DAC)を備えていてもよい。SSAEP応答のSNR(S/N比)を増大させるために、SSAEP応答が被験者60の複数の電極で記録され、これらの電極から得られる複数のEEGデータが使用される場合に、複式の入力が使用されてもよい。
【0043】
さらに、EEGデータポイントの分散が少なくとも1つのダイポールソース(dipole source)に射影され、ダイポールソースに関係のないデータがEEGデータから排除され、それにより信号をノイズから分離する主成分分析(principal component analysis)またはソース分析(source analysis)が使用されてもよい。また、被験者の両耳に送られる音声刺激を生成するために複式の出力(例えば、8つのDAC)が使用されてもよい。この構成はSSAEP刺激の複数の成分を他の成分とは独立に操作することを可能にする。例えば、複式のDACは、DACチャネルの1つを介して与えられた、特定のSSAEP刺激が重要になった場合、帯域限定された雑音マスキング(band limited noise masker)の強度を増大することを可能にする。
【0044】
MASTER(複式聴覚定常状態応答(Multiple Auditory Steady State Response))と呼ばれるソフトウェアプログラム40はユーザーが被験者60に実施する特定の聴覚試験を選択することを可能にする。ソフトウェアプログラム40は好まれるものとして、National Instrumentsから入手可能なLabVIEWを使用してプログラムされるが、もちろん他のソフトウェアパッケージを使用して実施されてもよい。ソフトウェアプログラム40は(図を簡潔にするために図1aには全てが図示されていない)複数のモジュールを含む。
【0045】
ソフトウェアプログラム40は信号生成器モジュール42及び変調器モジュール44を介した試験信号の生成を制御する。ソフトウェアプログラム40はまた、オペレーターが以下に詳細に説明される複数の客観的聴能測定試験から特定の試験を選択することを可能にする。信号生成器モジュール42はSSAEP刺激で使用される搬送波信号のためのデータ列(data series)を生成する。信号生成器モジュール42は通常、これらの搬送波信号を振幅変調及び(または)周波数変調するために変調器モジュール44を利用する。ソフトウェアプログラム40は次に、実施されている聴覚試験のプロトコルに従ってアナログからデジタルへの変換及びデジタルからアナログへの変換を制御する。
【0046】
ソフトウェアプログラム40は次に、ノイズリダクションモジュール48及び応答検出モジュール50を含む分析モジュール46を介して、検出されたEEGデータを分析する。上述したように、SSAEP応答のSNRは非常に小さい。それゆえ、検出されたEEGデータはバックグラウンドノイズを減少させるために処理されなければならない。すなわち、ノイズリダクションモジュール48はサンプル重み付け平均化(sample weighted averaging)、時間平均化(time averaging)、及び(または)適応性アーティファクト除去(adaptive artifact rejection)を利用してもよい。(これらの技術ついては、後で詳細に説明する。)
【0047】
ノイズを減少した信号は次に、データ中に少なくとも1つのSSAEP応答が存在するかを決定するために検出モジュール50に送られる。検出モジュール50は、後で詳細に説明される位相重み付けt検定(phase weighted t-test)、位相区間技術(phase zone technique)、またはMRC法(modified Rayleigh test of circular uniformity method)を利用してもよい。
【0048】
ソフトウェアプログラム40はまた、ディスプレイ36に周波数領域(frequency domain)で結果を表示することができる。ソフトウェアプログラム40はまた、他のプログラムによる、さらなる詳細な分析のために、ハードディスク等の格納装置34に試験結果を保存することができる。ソフトウェアプログラム40はまた、プリンター(図示せず)によって試験結果を印刷することを可能にする。
【0049】
ソフトウェアプログラム40はまた、複数のデータベースD1−Dnを含むマスターデータベース52と通信することができる。図を簡潔にするために、図1にはこれらのデータベースのうち3つだけが図示されている。データベースはSSAEP試験のために、多様なパラメーターに関連する、被験者のサンプルの母集団(sample population)からの基準データ(normative data)を含む。例えば、データベースは増大した振幅でSSAEP応答を誘発するために調節された、振幅変調及び周波数変調された成分を持った最適ベクトルSSAEP刺激(optimal vector SSAEP stimuli)を生成するために使用することができる基準位相データを含む。データベースはさらに、多様なSSAEP刺激に対するSSAEP応答の振幅に関する情報を含む。
【0050】
ソフトウェアプログラム40は連続的で、かつインタラクティブな画面から成るグラフィックユーザーインターフェースを備える。これらのインタラクティブな画面はユーザーがソフトウェアプログラム40を制御し、所望の聴覚試験を実施し、試験結果を分析することを可能にする。インタラクティブな画面はメイン画面(Main screen)、刺激設定画面(Stimulus Set Up screen)、刺激ビュー画面(View Stimulus screen)、パラメーター記録画面(Recording Parameters screen)、データ記録画面(Record Data screen)、データ処理画面(Process Data screen)、及び多様な試験結果一覧画面(Test Result summary screen)を含む。
【0051】
メイン画面はユーザーが実施する特定の聴能測定試験を選択することを可能にする。メイン画面はまた、ユーザーが利用可能な他の多様な画面をナビゲート(または、操縦する)ことを可能にする。
【0052】
刺激設定画面はユーザーが多重SSAEP刺激に組み合わされ、被験者60の両耳に与えられる、最大8つのSSAEP試験信号を規定することを可能にする。本発明の他の実施例においては、9つ以上の刺激が与えられてもよい。例えば、被験者60の各々の耳に8つの刺激が与えられ、計16個の刺激が与えられてもよい。ユーザーは特定の種類のSSAEP刺激のために、搬送波信号の周波数(すなわち、搬送波周波数)、変調信号の周波数(すなわち、変調周波数)、振幅変調の深さ(amplitude modulation depth)、刺激の強度、及び振幅変調成分の位相に対する周波数変調成分の位相を規定することができる。
【0053】
したがって、刺激設定画面はユーザーが振幅変調試験信号(AM)、周波数変調試験信号(FM)、振幅変調と周波数変調が組み合わされた試験信号(以下、混合変調またはMM(mixed modulation)と呼ぶ)、最適ベクトルによって振幅変調と周波数変調が組み合わされた試験信号(OVMM(optimum vector combined amplitude modulation and frequency modulation))、並びに、独立な振幅変調及び周波数変調試験信号(IAFM(independent amplitude modulation and frequency modulation))から構成されるSSAEP刺激を選択することを可能にする。さらに、ユーザーはまた、特定の変調信号を選択することによって搬送波の包絡線(envelope)を規定することができる。詳細に述べると、ユーザーは変調信号として正弦波信号を選択することもできるし、また、変調信号として指数変調(exponential modulation)信号を選択することもできる。例としての指数変調信号は2、3、4または5の指数を持つ正弦波を含む。あるいは、分数の指数が使用されてもよい。
【0054】
搬送波周波数及び変調周波数が選択された後、信号生成器42は搬送波信号及び変調信号のサイクルの整数(integer number of cycle)がDAC16の出力バッファ及びADC18の入力バッファに適合することができることを確実にするために、これらの周波数を調節する。これは生成された音声刺激のスペクトルのスプレッド(spectral spreading)、及びADC18によってデジタル化される、検出されたEEGデータのスペクトルのスプレッドを防ぐために重要である。信号生成器42はまた、試験信号の包絡線の振幅を増大させ、変調の深さ(modulation depth)を補正するために、被験者60に一定の最高最低振幅(peak to peak amplitude)または一定の平方自乗平均(RMS)振幅を持った試験信号を与えるために使用されてもよい。
【0055】
信号生成器42はまた、トーン(または、一定のピッチの音声)、広帯域ノイズ、ハイパスノイズ、ローパスノイズ、またはバンドパスノイズ(これらは変調されていても変調されていなくてもよい)から成る刺激を生成することができる。ノイズの場合、信号生成器42はユーザーがバンドパス(band-pass)とバンドストップ(band-stop)領域との間にある変移領域のロールオフ(roll-off)を含むノイズのバンドパス及びバンドストップ特性を調節することが可能であるように構成されてもよい。実施例において、客観的聴能測定試験装置10はDAC16のサーキュラーバッファ(circular buffer)を使用する。しかしながら、ノイズ刺激の場合、データがバッファの一方の半分から読み出され、もう一方の半分に書き込まれる二重緩衝技術(double buffering technique)が組み込まれてもよい。バッファに書き込まれたデータは次に、データが読み出される側のバッファの半分にシフトされる。
【0056】
パラメーター記録画面はユーザーがADC18のレート、(ADCレートの倍数である)DAC16のレート、及び時間区分の継続期間(epoch duration)(すなわち、ADC18に含まれる入力バッファのサイズ)を規定することを可能にする。ユーザーはまた、アーティファクト除去レベル、較正係数、位相調整係数、及びオンライン計算(または、リアルタイムでの計算)が重み付けされたデータ行われるか、または重み付けされていないデータ(すなわち、生データ)で行われるかを規定してもよい。ユーザーはまた、AT-MIO-16e-10ボード等の増幅器を備えたデータ取得ボードに対する増幅値を選択してもよい。アーティファクト除去レベルは絶対閾値(absolute threshold value)、または検出されたEEGデータの高周波数領域の平均振幅に基づいて決められてもよい。
【0057】
刺激ビュー画面はユーザーが被験者60に与えられるSSAEP刺激を見ることを可能にする。刺激ビュー画面はまた、ユーザーがSSAEP刺激の振幅スペクトルを見ることを可能にする。
【0058】
データ記録画面はユーザーがサンプリングされている現在の時間区分に対する検出されたEEGデータを見ることを可能にする。ユーザーはまた、平均スイープまたは平均掃引(average sweep)のスペクトルを見ることができる。(スイープ(または、掃引)とは時間区分の連鎖のことであり、平均スイープ(または、平均掃引)とは複数のスイープの平均化の結果のことである。)平均スイープが表示された場合、EEGデータのSSAEP応答の周波数はバックグラウンドのEEGの活動(すなわち、バックグラウンドノイズ)との比較を容易にするためにハイライト(または、強調表示)されてもよい。データ記録画面はまた、ユーザーがEEGデータの取得を制御することを可能にする。さらに、データ既得画面はユーザーがSSAEP刺激に対する少なくとも1つのSSAEP応答の存在を検出するためにEEGデータに対して実施されている統計的分析の数値的及びグラフィカルな結果の両方を見ることを可能にする。
【0059】
データ処理画面はユーザーが1人または複数の被験者からのスイープまたはSSAEP応答を含むデータの組を見たり、格納したり、組み合わせたり、または分析したりすることを可能にする。データの組は最終的な平均化に取り込まれる各スイープが、それが生成されたデータの数によって、または組み合わされたデータの組の数によって重み付けされるように組み合わされてもよい。データの組はまた、ユーザーが、例えば派生バンド応答または導バンド応答(derived-band response)を計算することを可能にするために、減算されてもよい。
【0060】
ソフトウェアプログラム40はデータの収集及び表示に対してオプションを持つ。例えば、臨床上の聴能測定装置に一般的に組み込まれているように、複数の試験が自動的に行われるように複数の臨床上のプロトコル(例えば、異なった刺激強度や異なったSSAEP刺激を備えたプロトコル)に対するパラメーターをパラメーターファイルに格納することができる。異なったSSAEP刺激及び異なった刺激強度レベルを組み込んだ試験に対する結果は多様な試験一覧画面に表示することができ、被験者60の全ての聴能測定試験の結果が、例えば、通常の聴力図の形式で表示されてもよい。
【0061】
客観的聴能測定試験装置10のもう1つの実施例において、聴力試験が半自動的または全自動的に実施されてもよいし、補聴器の調節のために聴能測定試験装置が使用されてもよい。補聴器の調節の場合、実施された補聴器を付けた状態での結果に基づいて、客観的聴能測定試験装置10によって補聴器の利得が調節されてもよい。例えば、補聴器の較正中、特定の周波数領域の与えられたSSAEP刺激に対するSSAEP応答が検出されない場合、その特定の周波数領域に対する補聴器の利得は自動的に増大される。この実施例の場合、客観的聴能測定試験装置10はリボンケーブル等の物理的な接続を使用して、または(移植された刺激器等の)他の生物医学的装置で使用されているようなRF遠隔測定法を介して補聴器と通信できるように構成される。
【0062】
図1bは客観的聴能測定試験装置10によって実施される概略的なステップを図示している。客観的聴能測定試験装置10は最初にステップM1で、被験者60の聴覚システムの特徴を試験するために適当な試験信号を生成する。試験信号はトーン、ノイズ、振幅変調信号、周波数変調信号、最適ベクトルによって振幅変調と周波数変調が組み合わされた試験信号、独立な振幅変調及び周波数変調試験信号、指数変調信号によって変調された包絡線を持った信号等を含む多様な信号を含む。すなわち、このステップは試験信号を選択し、変調された試験信号を得るために試験信号を変調することから成る。この処理はまた、試験信号が少なくとも1つの変調された試験信号から成るように、1つ以上の試験信号に対して行われてもよい。
【0063】
次のM2ステップは刺激を生成し、その刺激を被験者60に与えるために試験信号を変換する。次のM3刺激は刺激の送信と同時に、被験者60のEEGデータを記録する。刺激の送信及びEEGデータの取得は目的の信号を正確に捕らえるために客観的聴能測定試験装置10で同期が取られる。次のM4ステップはEEGデータに応答が存在するかを決定するために記録されたEEGデータを分析することから成る。このステップは通常、EEGデータに対してノイズリダクション法を実施すること、及びノイズリダクションされたデータに検出法を適用することを含む。次のM5ステップは試験結果をレポートすることから成る。図1bで概略的に図示されたステップは通常、各ステップを数回繰り返す実際の聴能測定試験の一部である。これらの特定の聴能測定試験及び、それに含まれるこれらのステップは以下に詳細に説明される。
【0064】
(SSAEP検出)
多重SSAEP刺激の送信中に検出されたEEGデータはSSAEP刺激の複数の成分及びバックグラウンドノイズが重なり合った応答を含む。したがって、時間領域(time domain)でSSAEP応答を識別することは困難である。しかしながら、例えば高速フーリエ変換(FFT)を使用してEEGデータを周波数領域(frequency domain)に変換してしまえば、各SSAEP応答の振幅及び位相は多重SSAEP刺激の各変調信号の特定の周波数で測定することができる。
【0065】
上述したように、SSAEP応答のSNRは非常に小さい。したがって、SSAEPデータのSNRを増大させるためには膨大な量のEEGデータを収集する必要がある。SSAEP応答のSNRを増大させるための一般的な手法はアーティファクト除去及び時間平均化を含む。これらの技術は聴能測定の臨床上または研究上分野で一般的であり、これらの手法は分析モジュール46によって実施される。
【0066】
上述したように、EEGデータの時間区分はSSAEP試験中に取得される。アーティファクトはデータを劣化させ、顔面の筋肉の動き等の、脳以外の電位によるノイズのスパイクを導入する。したがって、アーティファクト除去は時間区分が80μV等の閾値レベルより大きいデータポイントを含むかを決定するために各時間区分を分析することを必要とする。アーティファクト除去は時間平均化等のノイズリダクション技術をより効率的にするためにスプリアスノイズ(spurious noise)を排除するときに有効である。ノイズリダクションモジュール48は記録された時間区分のアーティファクト除去を実施するために構成される。時間区分が排除された場合、アーティファクト除去閾値を超えない次の時間区分が、容認された直前の時間区分に連鎖される。SSAEP応答を誘発するSSAEP刺激は各時間区分がSSAEP応答の整数個の期間を含むように構成されるので、連鎖処理はデータ上に不連続性を生じさせない。
【0067】
時間平均化はスイープを形成するために時間区分を連鎖することを含む。次に、複数のスイープが時間に対して平均化された平均スイープを産出する。時間平均化は刺激に対して時間的にロックされていない(または、時間的に結びついていない)バックグラウンドノイズの活動のレベルを減少させる。平均スイープが得られた後、それはFFTを介して周波数領域に変換される。ここで、SSAEP応答は単一または固有の周波数で発生し、ノイズは(周波数に関係なく)広帯域で発生するので、スイープの継続時間の増大は単一のFFTビン(FFT bin)に含まれるSSAEP応答の振幅に影響を与えずに、より多くのFFTビンにバックグラウンドノイズのパワーを分散させる。したがって、スイープの継続時間には重要な意味がある。すなわち、スイープの継続時間の増大はFFTの周波数分解能を増大させる。
【0068】
FFTから取得可能な特定の周波数は、1/(Nt)で表されるFFTの分解能の整数倍である。ここで、Nはデータポイントの数であり、tはサンプリングレートである。1つの可能な実施例は1000Hzのレート、1024ポイントの時間区分長、及び16時間区分(16epoch)の長さ(16,384ポイント)のスイープである。したがって、結果としての周波数分解能は0.61Hz(1/(16*1.024*0.001))であり、FFTの周波数の領域(frequency region)はDC(0Hz)から500Hzの間に広がる。あるいは、スイープは8時間区分長または12時間区分長であってもよい。
【0069】
検出モジュール50はSSAEP応答が存在しない、振幅スペクトル(すなわち、FFT)の周辺の周波数から得られるノイズの推定を与えてもよい。記録されたデータにSSAEP応答が全く存在しない場合、応答が起こるべき変調周波数のパワーは周辺の周波数のノイズパワーの範囲内にある可能性がある。そこで、結果としてのFFTの変調周波数の振幅がノイズの推定と統計的に異ならないことの可能性を推定するためにF−比(F-ratio)が使用されてもよい。
【0070】
可能性が0.05より小さい場合(p<0.05)、SSAEP応答はノイズとは明らかに異なると考えられるので、被験者60はSSAEP刺激を聞き取っていると考えられる。もちろん、p<0.01等のより厳しい基準が選択されてもよい。実施例において、客観的聴能測定試験装置10は変調の周波数に関連した振幅スペクトル中の各SSAEP応答がSSAEP応答を含むFFTビン(FFT bin)に対して60ノイズビン(noise bin)以上、及び60ノイズビン以下のFFTデータと比較される条件でF−比を与える。したがって、この比は2及び240度の自由度を持ったF−統計として評価される。
【0071】
客観的聴能測定試験装置10はさらに、アーティファクト除去を実施可能なノイズリダクションモジュール48を備え、そこにおいて、時間区分は高周波数の動作に基づいて排除される。低周波数(例えば、20Hz以下)で高振幅のEEG活動は検出されたEEGデータの振幅の優位を占めるので、単に検出された電位に基づいて閾値を選択するアーティファクト除去はあまり効果的ではない。すなわち、70から200Hzの周波数領域のSSAEP応答の付近のノイズは記録されたEEGデータにおいて適切に表されない。したがって、高周波数のEEGノイズの平均振幅(mean amplitude)に基づいて時間区分を排除するほうが、より適切な処理といえる。
【0072】
ノイズリダクションモジュール48はまた、時間区分のデータポイントの統計的特性に依存して適応性閾値(adaptive threshold value)が計算される、適応性アーティファクト除去法(adaptive artifact rejection method)を利用してもよい。この方法は時間区分中のデータポイントの標準偏差を計算すること、及び閾値を計算された標準偏差値の2倍に設定することを含む。時間区分がこの閾値制限を越えるデータを含む場合、時間区分は排除される。この排除法は被験者から検出されたEEGデータが記録された後に、オフラインで(すなわち、一連の試験終了後に)実施されてもよいし、被験者から検出されたEEGデータが記録されている間にオンラインで(すなわち、リアルタイムで)実施されてもよい。
【0073】
オンラインのアーティファクト除去法は排除された時間区分の数に基づいて、被験者60からどの程度の数のEEGデータが記録される必要があるかを示してもよい。あるいは、適応性アーティファクト除去は時間区分がSSAEP応答が起きる可能性がある周波数領域(すなわち、70から110Hzまたは120から250Hzの周波数領域)と実質的に等しいパスバンドを持ったバンドパスフィルターによって濾波された後に行われてもよい。あるいは、アーティファクト除去閾値を適切に設定するために他の統計的方法が使用されてもよい。
【0074】
ノイズリダクションモジュール48はさらに、検出されたEEGデータのノイズを減少させるためにサンプル重み付け平均化(sample weighted averaging)を利用してもよい。サンプル重み付け平均化法において、時間区分は十分な継続時間を持ったスイープに連鎖される。スイープが行であり、時間区分が列であるマトリックスを形成するように、複数のスイープが整列される。各スイープが濾波された後、各列の時間区分はSSAEP応答が存在する周波数領域に対して局所的なノイズの分散の推定値によって重み付けされる。
【0075】
スイープのバンドパス濾波は、パスバンドがSSAEP応答が発生する可能性がある周波数領域と実質的に等しいフィルターによって行われるので、ノイズの分散の推定はSSAEP応答が存在する周波数領域に対して局所的となる。例えば、バンドパスフィルターのパスバンドは70から110Hzであってもよい。次に、時間区分はノイズの分散が標準化された後、このノイズ分散の逆数によって重み付けされる。そして、スイープを産出するために重み付けされた時間区分がマトリックスの列に沿って足し合わされる。結果として生ずるスイープは、複数のスイープに対して単に時間平均化を実施しただけのものに比べて減少したノイズ成分を持ったスイープとなる。あるいは、定常状態応答の振幅がノイズ推定から取り除かれる、ノイズ重み付け平均化(noise weighted averaging)が使用されてもよい。
【0076】
擬似コード形式(pseudo-code format)において、サンプル重み付け平均化は以下のステップに従って実施される:
a)SSAEP刺激を送信しながら、被験者60からEEGデータを検出している間に複数の時間区分を取得すること;
b)時間区分を連鎖することによって複数のスイープを形成すること;
c)複数の濾波されたスイープを得るために各スイープを濾波すること;
d)スイープが行であり、複数のスイープの時間区分が列である第1マトリックスを形成するために各スイープを整列し、さらに、重み付けを計算するために使用される濾波されたマトリックスを形成するために同様な様式で濾波された各スイープを整列すること;
e)濾波されたマトリックスの各時間区分に対するノイズ分散推定値を得るために、濾波されたマトリックスの各時間区分の分散を計算すること;
f)各時間区分に対する標準化されたノイズ分散推定値を得るために、濾波されたマトリックスの各時間区分に対するノイズ分散推定値を、時間区分を含む濾波されたマトリックスの列に沿って時間区分に対するノイズ分散推定値を全て足し合わせた値で割ることによって、濾波されたマトリックスの各時間区分のノイズ分散推定値を標準化すること;
g)各時間区分に対する重み付けを得るために、標準化されたノイズ分散推定値の各々を反転し(または、逆数をとり)、複数の重み付けされた時間区分を得るために、第1マトリックスの各時間区分に、対応する重み付けを乗算すること;
及び、
h)単一の推定値を得るために、第1マトリックスの全ての重み付けされた時間区分を第1マトリックスの列に沿って足し合わせること。
【0077】
図2a−2hを参照すると、サンプル重み付け平均化及び(高周波数領域の平均振幅に基づいた)アーティファクト除去が通常の平均化と比較されている。これらの結果はサンプル重み付け平均化が高いSNRを持ったSSAEP応答を生ずることを示している。図2aは雑音のある記録(すなわち、記録中に、図2aにおいて矢印で示されている多くのアーティファクトが存在する記録)に対する記録されたEEGデータの振幅のヒストグラムを示している。図2bは雑音のない記録(すなわち、記録中にアーティファクトがあまり存在しない記録)に対する記録されたEEGデータの振幅のヒストグラムを示している。図2a及び2bのデータポイントは50dBSPLの8個の試験信号から成る多重SSAEP刺激が与えられた、同じ被験者から得られたものである。
【0078】
図2c及び2dは標準平均化(すなわち、通常の平均化)を使用してデータを分析した結果を示している。検出されたSSAEP応答は黒い矢印で示されている。図2cにおいては、8個のSSAEP応答のうち4個だけが検出されているが、図2dにおいては8つの全てのSSAEP応答が検出されている。図2e及び2fはサンプル重み付け平均化を使用してデータを分析した結果を示している。図2eでは7つのSSAEP応答が検出されており、図2fでは8つのSSAEP応答が検出されている。すなわち、図2eを2cと比較すると、サンプル重み付け平均化はSSAEP応答の平均SNRを約2倍に増大させると共に、図2cで検出されていない3つのSSAEP応答を検出している。図2g及び2hは高周波数領域でのEEGデータの平均振幅に基づいた振幅排除(amplitude rejection)を使用して、EEGデータを分析した結果を示している。図2gはこの形式のアーティファクト除去が7個のSSAEP応答の検出を生じさせたことを示しており、図2hは8個のSSAEP応答が検出されたことを示している。
【0079】
次に、検出モジュール50を参照すると、記録されたEEGデータ中のSSAEP応答の存在を検出するために位相重み付けt検定(phase weighted t-test)が使用されている。位相重み付けt検定はSSAEP応答についてのアプリオリ(仮定された公理)に基づいてSSAEP応答を検出するために、データの偏らせ(data biasing)を利用している。詳細に述べると、SSAEP応答の位相が判っている場合、統計的分析(すなわち、検出方法)が多様な位相を持ったノイズデータより予期された位相に近い位相を持ったSSAEP応答をより多く認識することができるように、EEGデータを偏らせることができる。データポイントの偏らせ(または、バイアシング(biasing))は位相期待値(または、予期された位相値)に近い位相を持ったSSAEP応答により大きな重み付けを与える重み付け関数(weighting function)を利用することによってなされる。位相重み付けt検定はSSAEP応答が検出される可能性があるレベルに対して経験的な補正を必要とせずに、位相重み付け(phase weighting)を行うことを可能にする。
【0080】
記録されたEEGデータはFFTによって処理されるので、結果的なデータポイントは2次元であり、実数成分と虚数成分を持つ。SSAEP応答及び周辺のノイズを表すFFTビンは以下の式を使用することにより位相期待値の方向を向いた1次元上に射影することができる。
【数4】
Figure 0004707920
ここで、Pは射影された値であり;aはFFT成分(すなわち、ビン)の振幅であり;θはFFT成分の位相であり;θは応答の位相期待値である。
【0081】
そして、ノイズを含む射影されたFFT成分の振幅に基づいた信頼限界(confidence limit)の上限はp<0.05(偽陽性(false positive)の数を減らすためにはp<0.01でもよい)の条件で、片側スチューデントt検定(one tailed Student t test)を使用して推定することができる。そして、検出されたSSAEP応答の周波数と同じ周波数を持ったFFT成分の射影された値が信頼限界の上限より大きい場合、SSAEP応答は統計的にみてノイズより明らかに大きいものとして識別される。
【0082】
EEGのデータポイントに対して位相重み付けt検定を利用するためのステップは以下のステップを含む:
a)EEGのデータポイントから複数のスイープを形成する;
b)複数の平均化されたデータポイントを得るために、複数のスイープを平均化すること;
c)応答が発生すべき領域及び(ノイズ推定のための)その付近の領域の周波数領域に対してフーリエ成分が計算されるように、平均化された複数のデータポイントに対する複数のフーリエ成分を計算すること;
d)ステップ(c)で計算された複数のフーリエ成分に対する振幅(a)及び位相(θ)を計算すること;
e)以下の式に従って偏りのあるデータポイント(biased data point)(p)を得るために振幅(a)に偏らせること;
【数5】
Figure 0004707920
ここで、θeは位相期待値である。(これは応答が発生すべき領域のフーリエ成分及び、ノイズを表す前記領域に隣接したフーリエ成分に対して行われる);
f)応答が発生すべきフーリエ成分の付近のノイズを表す、偏らされた振幅に対して、片側スチューデントt検定を使用して信頼限界の上限を計算すること;
g)偏らされた振幅が信頼限界の上限より大きいかを決定するために、応答が発生すべきフーリエ成分の偏らされた振幅を信頼限界の上限と比較すること。
【0083】
応答に対する偏らされた振幅が信頼限界の上限より大きい場合、応答が検出され、そうでない場合、応答は検出されない。上述の方法において、ノイズリダクションモジュール48により、複数のデータポイント中のEEGのバックグラウンドノイズの振幅を減少させるために、いくつかの予備処理技術がなされてもよいことは理解されなければならない。これらの予備処理技術はアーティファクト除去、適応性アーティファクト除去、時間平均化、及びサンプル重み付け平均化を含む。
【0084】
図3a及び3bを参照すると、複数のサンプルデータに対する位相重み付けt検定の使用が図示されている。図3aは応答70が円72で示されている信頼限界の上限内にあることを示している。信頼限界の上限72は2次元F統計(F-statistic)を使用して、前述の処理に従って得られたものである。SSAEP応答70は信頼限界の上限72より大きくないので、SSAEP応答70は統計的に有意(significant)でない(すなわち、検出されない)。
【0085】
しかしながら、SSAEP応答の位相期待値が、例えば104度であるべきであることが判っている場合、図3bに示されている位相重み付けt検定を使用することができる。ノイズの結果を表すFFT成分を偏らせることにより(すなわち、図3bの白い円)、信頼限界の上限76は図示されているような放物線となる(実際の信頼限界の上限は放物線と位相期待値の交点の一点である)。放物線76の頂点が円72に比べて原点に近く、実際の位相(すなわち、測定された位相)が予期された位相に近い場合、SSAEP応答が検出されやすくなることが示されている。SSAEP応答はここで、104度の位相期待値に射影することによって偏らされている。SSAEP応答74は射影されたノイズ測定の信頼限界76を超えて拡張している。したがって、SSAEP応答は統計的にみて有意(significant)であり、図3aに示されているのと同じ数のノイズデータから検出することができる。
【0086】
多重SSAEP応答を誘発する複数の信号を含む多重SSAEP刺激の場合、位相重み付けt検定は予期されるSSAEP応答の全てに対して繰り返される。各応答は多様な搬送波周波数を持った信号によって誘発されるので、それらは異なった位相期待値を持つ。
【0087】
測定された位相と予期された位相との差に基づいて振幅を偏らせるための式(1)は、使用される重み付け関数に依存して広げられてもよいし、狭められてもよい。例えば、位相期待値から離れた値に対してより強い制限を与えるために、式(1)のコサインによる重み付けはコサイン2乗(cosine squared)関数に置き換えられてもよい。あるいは、重み付け関数の「狭さ」は位相期待値の基準被験者間分散(normative inter subject variance)または基準被験者内分散(normative intra subject variance)に従って調節されてもよい。例えば、マスターデータベース52内に含まれる基準データベース(normative database)の測定された位相値の標準偏差を標準化し、式(1)の予期された位相と観測された位相との間の差を重み付けするために使用することもできるだろう。
【0088】
さらに、位相コヒーレンス(phase coherence)の測定値も位相重み付けt検定と全く同じ様式で位相期待値の向きに偏らせることができ、それにより、位相コヒーレンスの推定値が予期された位相と観測された位相との間の差によって偏らされてもよい。さらに、データを偏らせるためのこれらの方法は平均スイープ、単一のスイープ、または個々の時間区分内の応答を評価するためにも使用することができる。すなわち、平均スイープを計算せずに、各スイープまたは各時間区分に対するSSAEP応答を評価することによって応答の存在を統計的に評価することもできる。
【0089】
位相期待値を規定するためにいくつかの手法を使用することができる。最初に、基準位相期待値(normative expected phase)のデータベースが収集され、マスターデータベース52に格納される。これらの基準位相期待値は同様な刺激を与えられた(例えば、年齢及び性別が同じである)通常の被験者のグループから得られたSSAEP応答の平均位相(average phase)を収集することによって得ることができる。もう1つの手法は現在試験されている特定の被験者の、以前に記録されたデータから位相期待値を推定する方法である。例えば、60dBSPLでのSSAEP応答が80度の位相を持つ場合、50dBSPLでの同様なSSAEP刺激を利用する試験中に記録されたSSAEP応答に対する位相期待値として、同じ値または僅かに小さい位相を使用してもよいだろう。あるいは、記録期間中の先行する複数のスイープから測定された位相を記録期間中の以後のスイープの位相の推定値を得るために使用してもよいだろう。
【0090】
また、異なった搬送波周波数の別個のSSAEP刺激を含む多重SSAEP刺激の場合、任意の試験期間中に、統計的に有意とされた(すなわち、検出された)SSAEP応答の位相を、その時点で有意でない(すなわち、検出されていない)SSAEP応答の位相を推定するために使用することができるだろう。例えば、80Hzで振幅変調された1000Hzのトーンから成る搬送波信号を持ったSSAEP刺激に対する応答の位相が45度であり、90Hzで振幅変調された4000Hzのトーンから成る搬送波信号を持ったSSAEP刺激に対する応答の位相が90度であった場合、まだ統計的に有意でない85Hzで振幅変調された2000Hzのトーンから成る搬送波信号を持ったSSAEP刺激に対するSSAEP応答の予期される位相は60度であると推定してもよいだろう。もちろん、他の補間法が使用されてもよい。
【0091】
検出モジュール50はさらに、記録されたEEGデータのSSAEP応答の存在を検出するために、位相区間法(phase zone method)を実施するように構成されてもよい。従来技術の統計的検出方法はランダムに発生する位相の可能性に依存しているが、位相の分布が位相期待値から特定の角度の範囲(すなわち、目標位相範囲(target phase range))の内側にあることが予想される場合、統計的検出方法はより強力なものとなる。例えば、任意の応答の位相期待値が90°である場合、位相値が位相期待値のN°内に入る確立は(N/360)である。したがって、Nが90に設定され、位相期待値が70°である場合、SSAEP応答の無い記録中に計算された各位相値が25°から115°の間(すなわち、目標位相値)に入る確立は4分の1である。
【0092】
この例の場合、0.25(すなわち、4分の1)の可能性の条件と共に二項式分析(binomial analysis)を使用することにより、目標位相値内に入る位相の数を目標位相値の外側に入る位相の数と比較することができる。しかしながら、計算された位相の分散が小さい場合、目標位相値も小さく設定することができる(すなわち、90°以下の目標位相値を設定することができる)。目標位相値が小さくなると、二項確率指数(binomial probability index)も小さくなるので、これはSSAEP応答が比較的少ないEEGデータポイントの数で統計的に有意となる(すなわち、検出される)ことを可能にする。
【0093】
SSAEPに関して述べると、位相区間法はF−試験で行われるような、平均スイープを使用して行うものではなく、データの各スイープを分析することにより実施される。方法は以下のステップから成る:
a)被験者60にSSAEP刺激を与えること;
b)複数のデータポイントを得るために被験者60に刺激を与えるのと実質的に同時に、被験者60からEEGを検出すること;
c)複数のデータポイントをスイープに分割すること;
d)各スイープに対して、応答が発生すべき周波数に対するフーリエ成分を計算すること;
e)各フーリエ成分に対する位相値を計算すること;
f)目標位相値を計算すること;
g)ステップ(e)から目標位相値内の位相の数(Na)を計算すること;及び、
h)Naを分析することにより、複数のデータポイントが応答を含むかを決定するために、二項分析を使用すること。
【0094】
目標位相値はマスターデータベース52に格納されている、被験者及びSSAEP刺激の特徴または特性と相関のある、基準位相期待値(normative expected phase)のデータベースに基づいて計算することができる。
【0095】
検出モジュール50はさらに、MRC法と呼ばれるもう1つの統計的な検出方法を実施するように構成されていてもよい。円状均一性のためのレイリー試験(RC(Rayleigh test of circular uniformity method))の変形体、すなわち、RC法に位相角度期待値(expected phase angle)の使用を組み込んだものを、改良された円状均一性のレイリー試験(MRC(modified Rayleigh test of circular uniformity method))と呼ぶ。位相角度期待値が既知である場合、RC法を統計的により強力なものとすることができる。すなわち、MRCは以下の式に従って位相期待値を組み込んだ重み付け関数(weighting function)でRC値を重み付けしたものである。
【数6】
Figure 0004707920
ここでθはデータの組のベクトル平均角度(vector averaged angle)であり、θは角度期待値(expected angle)である。
【0096】
検出モジュール50はSSAEP刺激で使用される変調周波数で応答を検出することに加え、搬送波周波数で発生するSSAEP応答を検出するように構成されていてもよい。この場合、ADC18のサンプリングレートは搬送波周波数の領域の周波数成分が適当にサンプリングされるように拡張されなければならない。しかしながら、電磁誘導によって発生する刺激のアーティファクトがEEGデータに加わり、データを歪めるので、このEEGデータは解析するのが困難である。これらのアーティファクトは変換器26の遮蔽及び、変換器26の記録装置(すなわち、センサー28、増幅器30、及びフィルター32)からの分離等の多様な技術によって減少させることができる。
【0097】
さらに、(変換器の変換機能がエアチューブの濾波効果に対する補正を行うことができるという条件を満たせば)エアチューブが十分に長い挿入型イヤホンの使用は刺激アーティファクトの減少に有効である。刺激アーティファクトを除去するためのもう1つの技術は、SSAEP応答がそれの強度に対して非線形性を示し、潜伏時間(latency)を変化させるのに対し、刺激アーティファクトがその振幅をSSAEP刺激の強度の変化に対して線形に変化させ、刺激アーティファクトの潜伏時間が一定であるという事実に基づくものである。すなわち、EEGデータが2つ以上の刺激強度で記録されている場合、刺激強度に対する刺激アーティファクトの線形性に基づいて刺激アーティファクトを除去するようなアルゴリズムを構築することができる。
【0098】
(SSAEP刺激)
客観的聴能測定試験装置10は信号生成器42を介して、SSAEP刺激で使用することができる多様な試験信号を構築することができるように構成されてもよい。これらの試験信号はトーン、振幅変調信号(AM)、周波数変調信号(FM)、最適ベクトルによって振幅変調と周波数変調が組み合わされた試験信号(最適ベクトル混合変調またはOVMM)、独立な振幅変調及び周波数変調試験信号(IAFM)を含む。指数変調信号による包絡線変調を行うために信号生成器42と共に変調器44が使用されてもよい。信号生成器42はまた、広帯域ノイズ、ハイパスノイズ、ローパスノイズ、またはバンドパスノイズ(これらの全ては変調可能されていても変調されていなくてもよい)から成る試験信号を生成してもよい。
【0099】
信号生成器42は振幅変調のレートが周波数変調のレートと等しくなるように、最適ベクトルによって振幅変調と周波数変調が組み合わされた試験信号(OVMM)を生成する。さらに、OVMM試験信号の周波数変調された成分の位相は被験者から誘発されたSSAEP応答が増大された振幅を持つようにOVMM試験信号の振幅変調された成分の位相に対して調節される。
【0100】
図4a−4fを参照すると、AM試験信号(振幅変調された試験信号)から成るSSAEP刺激に対するSSAEP応答の振幅(白い四角形)及びMM試験信号(振幅変調と周波数変調が組み合わされた試験信号)から成るSSAEP刺激に対するSSAEP応答(黒い四角形)が示されている。データは8人の被験者から収集された。SSAEP応答は多様な搬送波周波数、刺激強度、及び周波数変調の深さに対して取得された。図4a−4fはMMSSAEP刺激によって誘発されたSSAEP応答が多様な刺激強度及び搬送波周波数において、AMSSAEP刺激によって誘発されたSSAEP応答より大きな振幅を持つことを示していいる。
【0101】
MMSSAEP刺激の周波数変調の深さは図4a−4cに対して25%であり、図4d−4fに対して10%である。(周波数変調の深さはSSAEP刺激の搬送波周波数からの偏移を意味する。)振幅変調の深さは図に示されているAMSSAEP試験の結果に対して、全て100%である。図4a−4cにおいて(すなわち、50、40、30dBSPLにおいて)、MMSSAEP刺激によって誘発されたSSAEP応答の振幅はAMSSAEP刺激によって誘発されたSSAEP応答に比べ、それぞれ30%、49%、28%大きい。図4d−4fは異なった8人の被験者のグループからの結果を示しており、MMSSAEP刺激を使用した場合にSSAEP応答の振幅が、それぞれ20%、7%、8%大きいことを示している。図はまた、約25%の周波数変調の深さを使用したときに、閾値近辺で増強された応答の振幅を得ることが可能であることを示している。
【0102】
図4a−4hに示されている試験結果に対して、MMSSAEP刺激は最適な振幅を持ったSSAEP応答を誘発するようには調節されていない。最適ベクトル混合変調信号(optimum vector mixed modulation signal)が使用された場合、SSAEP応答の振幅は高周波数(すなわち、4000から6000Hz)試験結果に対して比較的大きくなる。また、10%のFMの深さを持ったMMSSAEP刺激の使用が、AMSSAEP刺激を使用したときに得られる応答の振幅に対する、SSAEP応答の振幅の増大に対して、あまり効果がないことに注意する必要がある。というより、図4b及び4cに示されているように、比較的大きな振幅のSSAEP応答を誘発するためには25%のFMの深さが必要である。
【0103】
図5aを参照すると、MMSSAEP刺激のAM成分の位相に対するFM成分の位相の調整が異なった振幅のSSAEP応答を生じることが示されている。位相の差が特定の値に設定された場合、応答は他の位相に対して最大になる。これは最適ベクトル混合変調刺激の基礎となる。この調整はMMSSAEP刺激に対するSSAEP応答80がSSAEP刺激のAM成分82に対する応答とSSAEP刺激に対するFM成分84のベクトル加算になっているという原理に基づいている(そこにおいて、各成分は独立または、ほとんど従属しない)。AM成分82に対するSSAEP応答は原点から始まるベクトルとして示されている。AM成分82に対するSSAEP応答に加算されるSSAEP刺激のFM成分84はAM成分82に対するSSAEP応答と異なる位相を持つ。
【0104】
これらのSSAEP応答はSSAEP刺激によって誘発され、そこにおいて、FM成分はAM成分と同じ位相を持ち、SSAEP刺激のAM成分とFM成分との間の相対的な位相はゼロである。図5aから明らかなように、これはMM刺激に対するSSAEP応答がAM刺激単独に対する応答より小さくなる結果となる。図5bを参照すると、SSAEP刺激のFM成分が0から360°の範囲でSSAEP刺激のAM成分に対して調節されている場合に、正弦波としてモデル化される応答86の振幅の変化が示されている。SSAEP刺激のFM成分の位相が増大するにつれて、FM応答のベクトル84は時計回りに回転する。x軸から応答曲線88に向かって直線状に拡張するベクトルを描くことによって、SSAEP刺激のAM成分に対して多様なFM成分の位相差を持ったMMSSAEP刺激に対するSSAEP応答を得ることができる。
【0105】
この直線はx軸上の、SSAEP刺激のAM成分に対するFM成分の位相差の点で描かれる。1つの可能な応答の例として、最大の応答振幅を持ったベクトル86が点線で描かれている。この例の場合、SSAEP刺激のFM成分に対する応答84及びSSAEP刺激の振幅変調に対する応答82は最適ベクトル混合変調(OVMM)刺激を生成するために整列されており(すなわち、直線状に並んでおり)、SSAEP刺激のFM成分とAM成分との間の相対的な位相がφのときに最大のMM応答が発生することを示している。すなわち、図5bはSSAEP刺激のFM成分とAM成分との間の相対的な位相が変化したときに、複数のMM応答を使用して、どのように角度φを得ることができるかを示している。結果的なSSAEP応答の振幅は(図5bに示されているように)基線(baseline)にオフセットを持ったサイン波に一致させることができる。基線のオフセットの大きさはSSAEP刺激のAM成分に対する応答の振幅に等しく、サイン波の振幅はSSAEP刺激のFM成分の応答の振幅に等しい。
【0106】
これらの刺激は、AM成分とFM成分との相対的な位相が任意である、通常のMM刺激と区別するために、最適ベクトル混合変調(OVMM)刺激と呼ばれる。すなわち、OVMMSSAEP刺激は最大の振幅を持ったSSAEP応答を誘発するために使用することができる。大きな振幅を持ったSSAEP応答は大きなSNRを持ち、比較的短い時間でのSSAEP応答の検出を可能にするため、これは非常に有効である。
【0107】
OVMMSSAEP刺激を使用した試験の処理は以下のステップに従う:
a)被験者から増大した応答が誘発されるように、試験信号のFM成分の位相がAM成分の位相に対して調節されている、振幅変調と周波数変調が組み合わされた少なくとも1つの信号を含む試験信号を生成すること;
b)上述の試験信号生成は、FM成分の搬送波周波数に実質的に等しくなるようにAM成分の搬送波周波数を選択し、FM成分の変調周波数に実質的に等しくなるようにAM成分の変調周波数を選択することを含み;
c)音声刺激を生成するために試験信号を変換し、被験者に音声刺激を与えること;
d)被験者に音声刺激を与えるのと実質的に同時に、被験者から電位を検出すること;及び、
e)電位が音声刺激に対する少なくとも1つの定常状態応答を含むかを決定するために検出された電位を分析すること。
【0108】
OVMMSSAEP刺激による試験は好まれるものとして、OVMMSSAEP刺激のAM成分に対してOVMMSSAEP刺激のFM成分の位相を調節するために使用される、マスターデータベース52に格納された基準最適位相値(normative optimal phase value)のデータベースを利用する。これは基本的に基準値のデータベースを生成することを必要とする。データベースはマスターデータベース52に格納される。基準値のデータベースは被験者の特徴及び刺激の特性に対して相関のある位相差のデータ(すなわち、OVMMSSAEP刺激のFM成分とAM成分との位相の差)を含むことができる。被験者の特徴は通常、被験者の年齢、性別等を含む。刺激の特性はFM成分またはAM成分の搬送波周波数、刺激の強度、AM変調の深さ、FM変調の深さ等を含んでもよい。
【0109】
基準位相差データ(normative phase difference data)のデータベースを作成するためには以下のステップに従う:
a)試験される被験者のグループに相関のある、試験のためのサンプル母集団(sample population)を選択する、例えば、新生児に対して試験を実施する場合、年齢及び性別がほぼ一致した100人の被験者のサンプルが試験される;
b)サンプル母集団からAM成分だけを含むSSAEP刺激に対する応答を含むEEGデータ及び、FM成分だけを含むSSAEP刺激に対する応答を含むEEGデータを記録する、この試験はステップ(a)の被験者のグループを試験するときに使用される刺激の各々に対して行うことが望ましい;
c)記録されたEEGデータのSSAEP応答を検出し、各SSAEP応答の位相を測定する;
d)ステップ(c)で測定された、AM成分だけのSSAEP刺激に対するSSAEP応答とFM成分だけのSSAEP刺激に対するSSAEP応答との間の位相の差を計算し、図5bに示されているような波形を得るために、(AM成分だけのSSAEP刺激に対する応答とFM成分だけのSSAEP刺激に対する応答とのベクトルの足し合わせである)SSAEP応答の振幅の結果をプロットする;
e)AM成分及びFM成分に対する応答の振幅のベクトル加算の結果が最大の振幅を生ずる位相差を見つけ出す。
そして、この位相値は試験される被験者から増大した応答を誘発するためにOVMMSSAEP刺激で使用される。
【0110】
信号生成器42はまた、AM成分とFM成分が互いに独立で、互いに独立なSSAEP応答を誘発する、AM成分及びFM成分から成るもう1つの試験信号を生成することができる。この方法は複数の独立なAM成分及びFM成分を含む多重SSAEP刺激に対して利用することができる。試験信号は、独立な振幅変調及び周波数変調試験信号(IAFM)と呼ばれる。IAFM信号はFM変調周波数と異なるAM変調周波数を持つ。
【0111】
図6aを参照すると、最上段に100%の振幅変調深さを持ったAM試験信号を含む多重SSAEP刺激に対するSSAEP応答の振幅の部分的なスペクトルが示されている。中央の図は20%の振幅変調深さを持ったFM試験信号を含む多重SSAEP刺激に対するSSAEP応答の振幅の部分的なスペクトルを示しており、最下段の図はIAFM試験信号を含む多重SSAEP刺激に対するSSAEP応答の振幅の部分的なスペクトルを示している。SSAEP応答の周波数は逆三角形によって示されている。
【0112】
図6bはSSAEP応答の各々に対する極性プロット(polar plot)を示している。円は各SSAEP応答の信頼限界を示している。原点が円に含まれていない場合、SSAEP応答は、統計的に明らかにバックグラウンドノイズと異なり(p<0.05)、検出することができる。最下段のSSAEP応答はSSAEP刺激に1種類の変調を使用した場合に得られる振幅より小さめの振幅となる傾向がある。しかしながら、下部のSSAEP応答の位相は上段及び中央の対応する応答の位相と非常に類似している。すなわち、IAFM刺激は聴覚システムの振幅変調に応答する部分と、聴覚システムの周波数変調に応答する部分とを独立に試験することを可能にする。ストウファーズ法(Stouffer method)を使用してSSAEP応答が存在するかを評価するために、これらのSSAEP応答の両方(すなわち、AM及びFMのSSAEP刺激)を組み込み、特定の周波数領域に対する聴力を評価するために、別々のSSAEP応答(すなわち、AMまたはFMのSSAEP刺激のどちらかに対する応答)を使用することができる。
【0113】
実験的な結果は周波数変調の深さが2%程度に小さい場合に、FMSSAEP刺激がSSAEP応答を誘発することができることを示している。さらに、SSAEP応答は比較的速いFM変調レートを使用した場合に誘発される。実験的データはまた、これらの速いレート及び低い変調深さにおいてFM刺激に対するSSAEP応答を引き出すことができることに加え、AMSSAEP刺激に対するSSAEP応答とは異なる位相を生成することを示している。これはFMSSAEP刺激がAMSSAEP刺激とは異なった様式で処理されていることを示している。この結果は、これらの速いレートに依存する試験に対して重要な意味がある。さらに、実験的データは100%より小さい変調の深さ、及び70Hz以上の変調レートを持った上方閾値強度(supra-threshold intensity)で与えられるAM及びFM刺激の使用が行動閾値(behavioral threshold)に対応する振幅のSSAEP応答を誘発することを示している。
【0114】
信号生成器42はまた、同じ様式で、かつ、異なった変調レートで変調された2つの変調信号によって変調された搬送波信号から成る試験信号を生成するように構成されていてもよい。この試験信号は二重変調信号(dual modulation signal)と呼ばれる。例えば、異なった変調レートで搬送波信号を変調する2つの変調信号が使用されてもよい。この種の試験信号に基づいたSSAEP刺激は特定の状況において便利である。例えば、二重変調SSAEP刺激によって誘発された2つのSSAEP応答はストウファーズ法(Stouffer method)を使用して評価することができる。
【0115】
例えば、低めの変調レートを30−40Hzの範囲に設定し、高めの変調レートを70−90Hzの範囲に設定してもよい。すなわち、ストウファーズ法を使用することによって、30−40Hzの範囲及び70−90Hzの範囲の両方に対する応答を同時に評価することができる。被験者が緊張状態にある場合、低い変調レートに対するSSAEP応答がより有効になる可能性があり、被験者がうとうとしている場合、速いレートの刺激に対するSSAEP応答がより有効になる可能性がる。
【0116】
ストウファーズ法は1つではなく、2つの応答を検出するために統計的な補正を行うが、単独で評価されたときに有意となる(すなわち、検出される)SSAEP応答が、もう1つのSSAEP応答との組み合わせで評価したときに有意とならない(すなわち、検出されない)可能性があるという欠点を持つ。例えば、非常に有意な80HzのSSAEP応答は、有意でない40HzのSSAEP応答と組み合わされた場合、有意ではないと評価されるべきではない。ソフトウェアプログラム40はボンフェローニ補正(Bonferroni correction)を使用することによってこれを補正することもできるし、ユーザーがSSAEP応答を検出するための異なった基準(すなわち、p<0.05の基準の代わりにp<0.01またはp<0.001の基準)を選択することを可能にしてもよい。
【0117】
二重変調試験の1つの使用方法は麻酔を施されている患者に対する覚醒のレベルを監視することである。麻酔の使用は40HzSSAEP応答の振幅を減少させるが、高周波数のSSAEP応答の振幅は減少させない。したがって、データの測定が、イヤホンの不良や伝音性難聴(conductive hearing loss)の発現等の他の機能不全によって汚染されないことを確実にするために、40Hzと80HzのSSAEP応答の両方を同時に監視することが効果的である。80HzSSAEP応答は被験者または患者60の周辺の聴覚機能が正常であることを示すために使用することができる。二重変調試験信号のもう1つの使用方法は(後で詳細に説明されるように)被験者60が時間的変調機能(temporal modulation function)を処理する能力の評価での使用である。
【0118】
信号生成器42は以下の式2に従ってSSAEP刺激で使用される多様な試験信号を生成することができる。すなわち、式2はAM、FM、MM、OVMM,IAFM試験信号を生成するために使用することができる。
【数7】
Figure 0004707920
ここで、iはDAC出力バッファのアドレスであり;tはDACのレートであり;θは試験信号のAMとFM成分との間の度数で表した位相差であり;famは振幅変調の変調周波数であり;ffmは周波数変調の変調周波数である。
【0119】
試験信号s(t)は搬送波周波数fを持った正弦波のトーンから成る。AMは角括弧内の項によって実施される。AM試験信号は搬送波信号の振幅(a)の変調によって生成される。振幅変調の深さ(m)は変調信号の搬送波信号の包絡線に対する影響を制御する。
【0120】
FM試験信号は式3に示されている関数F(i)に従って搬送波波形の位相を変調することによって形成される。周波数変調の深さ(m)は搬送波周波数に対する周波数変調された信号の最小周波数と最大周波数との間の差の比によって定義される。例えば、1000Hzの搬送波のトーンが25%の深さで周波数変調された場合、周波数は1000Hzの搬送波周波数から±12.5%の偏移を持った875Hzから1125Hzの間で変化する。項m/(2ffm)は(一般的にβで示される)周波数変調指標(frequency modulation index)を表す。式2の最後の除数は多様な振幅変調に対して一定の自乗平均(root-mean-square)振幅を維持するために使用される。
【0121】
がゼロの場合、試験信号s(i)はAM正弦波になる。mがゼロの場合、試験信号s(i)はFM正弦波になる。fam及びffmが等しく、かつmとmの両方がゼロより大きい場合、試験信号s(i)ははMM試験信号になる。fam及びffmが等しくなく、かつmとmの両方がゼロより大きい場合、試験信号s(i)ははIAFM試験信号になる。
【0122】
信号生成器42はまた、信号の包絡線が指数変調(exponential modulation)信号によって変調される試験信号を生成することができる。指数振幅変調(exponential amplitude modulation)を使用するためには、式3の(角括弧内の)AMに対する式が以下の式のようにならなければならない。
【数8】
Figure 0004707920
ここで、eamは指数である。この式において、試験信号は指数変調信号で使用される指数にかかわりなく、結果として生ずるSSAEP刺激の強度の自乗平均を同じ値に保つために試験信号が調節される。指数の包絡線を持ったFM試験信号を形成するために、包絡線方程式のランニング積分(running integral)が維持されなければならない。ランニング積分は以下の式に従ってバッファの現在のアドレスまで全ての包絡線値(envelope value)を足し合わせる。
【数9】
Figure 0004707920
積分される包絡線は以下の式で表される。
【数10】
Figure 0004707920
ここで、efmは指数変調信号の指数である。積分された値は次に、値F(i)の代わりに式3に代入される。さらに、包絡線の位相の変化は関数を時間に対してシフトすることによってなされてもよい。
【0123】
図7a−7dを参照すると、AM及びFMSSAEP刺激の両方に対して、指数の包絡線変調の使用がAMSSAEP刺激より大きな応答を生成することが示されている。図7a及び7bは50dBpSPL及び30dBpSPLの刺激強度に対する指数包絡線を使用していないAMSSAEP刺激と比較したときの、指数包絡線を使用したときのAMSSAEP刺激に対する応答の振幅の増大をパーセントで示している。図7c及び7dは図7a及び7bに示されているデータに対応する応答振幅をnVで示している。50dBpSLPの場合、指数包絡線変調は低周波数及び高周波数でSSAEP応答の振幅を増大させている。30dBpSLPの場合、指数包絡線変調は特に低周波数でSSAEP応答の振幅を増大させている。
【0124】
図7a−7dに示されている結果の概略的な分析は30及び50dBpSPLの刺激強度で、2または3乗(または、2または3のパワー)に対する正弦波信号の使用が比較的大きなSSAEP応答の振幅を生成することを示している。ここで、代替的に分数の指数が使用されてもよいことは理解されなければならない。また、EEGノイズはデータの平方根(すなわち、1.4142=(2)1/2)で減少するので、SSAEP応答の振幅の40%の増大がSSAEP応答を検出するための試験時間を約1/2に減少させることは理解されなければならない。したがって、指数信号によるSSAEP刺激の包絡線の変調は試験時間の減少をもたらす。
【0125】
指数包絡線はまた、SSAEP刺激の定常状態特性を維持するために80%等の、100%未満のAM深さを使用して生成されてもよい。また、指数包絡線の使用は変調周波数の倍音(harmonic)でSSAEP応答の振幅を増大させる傾向がある。したがって、包絡線が40Hzの領域で指数の正弦曲線によって変調され、SSAEP応答が変調周波数の第2高調波(second harmonic)で評価される状況で聴力試験が行われてもよい。検出方法はまた、検出されたEEGデータがストウファーズ法または、単一調和(single harmonic)と第2高調波の2つの調波の1つが基準(すなわち、p<0.01またはp<0.001)を満たしたときにデフォルトで単一調和の評価を行うストウファーズ法を使用して、変調周波数及び変調周波数の第2高調波の両方で評価されるように構成されてもよい。
【0126】
(定常状態誘発電位を使用した聴能測定試験)
客観的聴能測定試験装置10はまた、特定の聴能測定試験の選択及び試験開始以外のユーザーによる制御を必要としない、SSAEP刺激を使用した客観的な、多様な聴能測定試験を実施するように構成されてもよい。試験は被験者が試験で使用される刺激に対して応答する必要がないという点、及び記録されたデータを分析するために統計的な方法が使用されるので、試験を実施しているユーザーが記録されたデータを判別する必要がないという点で客観的である。すなわち、「完全に客観的な聴能測定試験システム」(COATS(completely objective auditory testing system))がこれらの作業を客観的に実行する。客観的聴能測定試験装置10は被験者の通常の聴力(normal hearing)、蝸牛難聴(cochlear hearing loss)または聴覚神経システムの異常(abnormal auditory nervous system)、及び補聴器を使用した被験者の聴力を評価するために使用されてもよい。
【0127】
概略的に述べると、客観的聴能測定試験装置10はSSAEP刺激を送信し、EEGデータを記録し、EEGデータにSSAEP応答が存在するかを決定する。そして、客観的聴能測定試験装置10はさらに正確な情報を得るためにさらなるSSAEP刺激を送信する。もちろん、聴能測定試験を実施する各ユーザーはSSAEP刺激の種類、及び各試験の継続時間を選択することができる。
【0128】
客観的聴能測定試験装置10はさらに、複数の聴能測定閾値を同時に取得するように構成されてもよい。さらに、客観的聴能測定試験装置10は補聴器付き、または補聴器なしの被験者に対して聴能測定試験を実施するように構成されてもよい。補聴器付きの試験に関して述べると、客観的聴能測定試験装置10は補聴器の多様なパラメーターを調節するために使用することができる。客観的聴能測定試験装置10はまた、潜伏時間(latency)試験、AM/FM識別試験、レート刺激敏感度(rate sensitivity)試験、補聴器試験、深さ刺激敏感度(depth sensitivity)試験、及び上方閾値(supra threshold)試験を実施することができる。
【0129】
客観的聴能測定試験装置10はまた、SSAEP刺激を構築するため、SSAEP応答を検出するため、及び検出されたSSAEP応答が示されているか、正常な聴力か、異常な聴力かを決定するための、マスターデータベース52に格納された基準データ(normative data)のデータベースの1つを利用する。被験者は年齢、性別等の被験者の特徴及び、変調の種類、変調レート、及び変調の深さ等の多様な刺激の特性に相関があるデータを含む。データベースはまた、潜伏時間(latency)、AM及びFMのSSAEP刺激に対するSSAEP応答の振幅のレート等の、SSAEP応答に関するデータを含む。
【0130】
客観的聴能測定試験装置10は被験者の上方閾値聴力(supra-threshold hearing)を評価するために聴能測定試験を実施することができる。上方閾値試験は上方閾値刺激強度(supra-threshold stimulus intensity)での、刺激の周波数または強度の変化の検出に対する被験者の聴覚システムの閾値を評価する。すなわち、上方閾値試験は強度閾(intensity limen)及び周波数閾(frequency limen)から成る。強度閾試験プロトコルはAM深さを変えることによって刺激の強度を変更することを含む。詳細に述べると、強度閾は刺激の振幅変調の深さの変化を検出するための閾値を推定することを含む。周波数閾は周波数変調の深さを変えることによってSSAEP刺激の周波数成分を変更することを含む。詳細に述べると、周波数閾はSSAEP刺激のFM深さの変化を検出するための閾値を推定することを含む。強度閾及び周波数閾は被験者60の多様な強度及び周波数の上方閾値音声(supra threshold sound)を識別するための能力に相関を持つ。
【0131】
強度閾の決定の処理は好まれるものとして、以下のステップを含む:
a)100%のAM深さを持ったAM成分のSSAEP刺激を構築すること;
b)被験者60にSSAEP刺激を送信しながら、EEGデータを記録すること;
c)SSAEP刺激に対する応答が存在するかを決定するためにEEGデータを分析すること;
d)応答が存在する場合、AM成分のAM深さを半分に減少させ、ステップ(b)及び(c)を繰り返すこと;及び、
e)応答が検出されない場合、強度閾はSSAEP応答が検出された最小のAM深さによって決定される。
【0132】
同様に、周波数閾は以下のステップに従って実施される:
a)40%のFM変調深さを持ったFM成分のSSAEP刺激を構築すること;
b)被験者にSSAEP刺激を送信しながら、EEGデータを記録すること;
c)SSAEP刺激に対する応答が存在するかを決定するためにEEGデータを分析すること;
d)応答が存在する場合、FM成分のFM深さを半分に減少させ、ステップ(b)及び(c)を繰り返すこと;及び、
e)応答が検出されない場合、周波数閾はSSAEP応答が検出された最小のFM深さによって決定される。
【0133】
上方閾値聴力試験はさらに、SSAEP刺激の変調深さを変えること、及び母集団基準値(population normative value)と比較したときのSSAEP応答の大きさを評価することを含む。
【0134】
上方閾値聴力試験はまた、被験者間の差(inter subject difference)に影響を受けにくい方法から成る。方法は被験者に100%のAM深さを持ったAMSSAEP刺激を与えたときの、SSAEP応答の振幅を測定することを含む。この応答の振幅は次に、被験者に小さめのAM深さを持ったAMSSAEP刺激を与えたときに得られたSSAEP応答の振幅と比較されてもよい。すなわち、例としての測定は、被験者に50%のAM深さを持ったAMSSAEPを与えたときのSSAEP応答の振幅の、被験者に100%のAM深さを持ったAMSSAEPを与えたときのSSAEP応答の振幅に対する比である。絶対振幅(absolute amplitude)の場合、同様な刺激に対する試験を行った、適当に年齢及び性別が合った対照母集団(control population)を使用して、これらの比に対する基準値(normative value)を得ることができる。これらの基準値はマスターデータベース52内のデータベースの1つから取得されてもよい。
【0135】
客観的聴能測定試験装置10はまた、被験者が正常または異常な聴力を持っているかを決定するために潜伏時間(latency)試験を実施してもよい。「先行するサイクル技術」(preceding cycles technique)の使用により、SSAEP応答が正常な聴力の耳において信頼性及び反復性のあるSSAEP応答を示すことが実験的に示された。潜伏時間値は検出されたSSAEP応答の位相から得られる。SSAEP応答の潜伏時間は多様な感覚神経性難聴(sensorineural hearing loss)の診断において重要である。異常に長い潜伏時間値は聴覚上の神経腫が存在することを示している可能性がある。あるいは、異常に短い潜伏時間値は被験者がメニエール病(Meniere's disorder)であることを示している可能性がある。
【0136】
図8を参照すると、ダイオテック刺激(dichotic stimulation)(または、左右の耳に異なって聞こえる刺激)を使用した一組の実験結果が示されている。被験者のグループに対して、1オクターブずつ分離された搬送波周波数を持つ4つの搬送波信号を含むSSAEP刺激が一方の耳に与えられ、それらの中間の搬送波周波数(intervening carrier frequency)の4つの刺激がもう一方の耳に与えられた。次に、SSAEP刺激が反転され、逆側の耳に与えられた。
【0137】
図8に示されているデータは8人の被験者のグループに対して測定されたベクトル平均位相遅延(vector averaged phase delay)のモデリング(modeling)によって得られた潜伏時間を示している。これらの位相遅延は刺激波形中の1つ前のサイクルの後に発生したものとして測定された。位相遅延は、SSAEP刺激の隣接する搬送波周波数が少なくとも1オクターブ以上分離していれば、1つの信号成分を持ったSSAEP刺激または2つ以上の試験信号成分を持ったSSAEP刺激によって誘発されたSSAEP応答に対して類似していることが判った。実験結果は、予想通りに、位相(すなわち、潜伏時間)が時間及び刺激の強度レベルの変化に対して安定していることを示した。位相遅延はまたモノラル(または、片耳)及び両耳への送信に対して同じ結果であった。
【0138】
位相遅延は無矛盾(consistent)であることが判ったので、マスターデータベース52に格納される、多様な刺激のための、適当に年齢及び性別の一致した基準位相遅延(normative phase delay)または潜伏時間値を含む基準データベース(normative database)を構成することが可能である。そして、位相遅延値の基準データベースは、被験者の位相遅延及び潜伏時間を測定したときに、被験者に異常があることを検出するために参照することができる。絶対潜伏時間値(absolute latency value)に加え、異常聴力の検出のために1組の刺激の応答に対する潜伏時間の間の差に対する基準値が使用されてもよい。例えば、2000及び4000Hzの搬送波周波数のSSAEP刺激に対する潜伏時間の推定値の差を使用してもよい。
【0139】
潜伏時間を測定するための処理は以下のステップに従う:
a)SSAEP刺激に対するSSAEP刺激応答を記録し、応答の開始位相(onset phase)を度数で測定する;
b)360°から開始位相を引くことによって開始位相を位相遅延(P)に変換する(低い周波数の搬送波周波数に対する位相遅延が高い周波数の搬送波周波数に対する位相遅延より長くなるように、位相遅延を異なった搬送波周波数に対して「有理」(rational)にするためにこの処理が必要であり、位相遅延に余分な360°が加えられる(すなわち、位相アンラッピング(phase unwrapping))(高い周波数は蝸牛の基底端(basal end)の付近で変換されるので、この状況は意味がある));及び、
c)以下の式に従って位相遅延をミリ秒の潜伏時間(L)に変換する。
【数11】
Figure 0004707920
ここで、fはSSAEP応答を誘発するSSAEP刺激に対する変調周波数であり、Nは先行するサイクルの数として選択される。例えば、約75−100Hzの変調周波数範囲に対して、Nは1として選択することができる。Nの値は異なった変調周波数を使用した基準調査(normative study)から決定することができる。Nは被験者に対して計算された潜伏時間値を可能な限り基準潜伏時間値に近づけるために、各応答に対して設定される。
【0140】
潜伏時間値を決定するためのもう1つの方法は任意の搬送波周波数で多様な変調周波数のSSAEP刺激を与えることである。次に、異なった変調周波数の各々に対する応答の位相が測定され、変調周波数に対してプロットされる。そして、潜伏時間値は位相vs変調周波数のグラフの傾きから推定される。
【0141】
客観的聴能測定試験装置10はまた、SSAEP刺激を使用してAM/FM識別試験を実施することができる。AM/FM識別試験はスピーチ識別試験(または、言語識別試験)と相関がある。1つの試験は被験者の聴覚システムのスピーチ(または、言語)の認知に必要な周波数及び強度を識別する能力の推定として、多重IAFMSSAEP刺激に対する複数の応答を使用することを含む。SSAEP応答が被験者の聴覚システムがこれらの識別を行えないことを示した場合、被験者は言語の全てを識別することができないと考えられる。したがって、SSAEP刺激の強度は自乗平均SPLの点からみた主観的スピーチ識別試験中に与えられる言語の強度に類似する。
【0142】
図9を参照すると、被験者によって正確に識別された言語の割合に対する、被験者に多重IAFMSSAEP刺激が与えられたときに検出された有意なSSAEP応答の数が示されている。多重IAFMSSAEP刺激は500、1000、2000、4000Hzの搬送波周波数のAM及びFM信号から成る。プロットされた円の面積はデータポイントの数と関連しており、最も大きな円は7個のデータポイントを表している。この散布図は検出された(すなわち、有意な)SSAEP応答の数と言語の識別との間の相関を示している。IAFM刺激は多重のAM及びFM刺激を同時に与えるので、言語の識別の試験に対して優れた刺激であると考えられる。もちろん、他の刺激が使用されてもよい。例えば、4つの振幅変調及び4つの周波数変調と共に与えられる8つの別個の搬送波信号が与えられてもよい。この手法の基本的な考え方は複数の周波数における振幅及び周波数の両方を評価することである。
【0143】
すなわち、被験者のスピーチ処理能力(または、言語処理能力)を示すために使用することが可能なプロトコルは多重IAFMSSAEP刺激によって誘発されたSSAEP応答の数を決定することを含む。試験期間は、例えば12分、または残余のノイズバックグラウンドが最小の限界値に達するまで持続されてもよい。試験は主観的な従来のスピーチ識別試験で行われているような雑音マスキングの無い状態及び有る状態の両方で実施されてもよい。雑音マスキングの使用はバックグラウンドノイズのあるスピーチを聞き取ることが困難な被験者の試験において重要である。
【0144】
そして、言語識別のスコア(または、得点)は、多重IAFMSSAEP刺激によって誘発され、かつ検出されたSSAEP応答の数を言語識別スコアに相関させる関数から推定される。実際の関数は被験者の基準サンプル母集団(normative sample population)から決定されてもよい。応答が信頼性を持って記録されること(かつ、ノイズレベルが高くなり過ぎないこと)を確実にするために対照標準となる記録(Control recording)が含まれる必要がある。対照標準の試験(control test)は100%の振幅変調の単一のトーン(すなわち、正弦波)に対するSSAEP応答を利用してもよい。
【0145】
AM/FM識別試験はさらに、被験者の周波数の変化を振幅変調の変化から識別する能力の試験を含むことができる。IAFMSSAEP刺激のFM成分に対するSSAEP応答の振幅は(FM/AMで示される)応答振幅比の形式で、IAFMSSAEP刺激のAM成分に対するSSAEP応答の振幅と比較することができる。あるいは、個々のFMSSAEP及びAMSSAEP刺激が使用されてもよい。そして、このFM/AM比は全ての年齢のグループに対して計算され、マスターデータベース52内のデータベースに格納された基準FM/AM比(normative FM/AM ratio)と比較することができる。初期の調査は500から600Hzの搬送波周波数に対するFM/AM比が若年の被験者に対して約1から2であり、老年者(または、年長者)の被験者に対して約1以下であることを示している。この範囲からの偏差は聴覚システムのAM信号を処理する部分または、聴覚システムのFM信号を処理する部分に問題(または、障害)があることを示すために使用することができる。
【0146】
客観的聴能測定試験装置10はまた、増大した変調周波数のSSAEP刺激に対するSSAEP応答の振幅が測定されるレート敏感度試験(rate sensitivity test)を実施するために使用することができる。上述された多様なSSAEP刺激(すなわち、AM、FM、OVMM、MM、IAFM)及び、指数包絡線変調の使用は数Hzから数百Hzの変調レートと共に被験者に与えることができる。一般に、変調周波数(または、変調レート)が増大すると、SSAEP刺激に対するSSAEP応答の振幅は40、80、160Hz範囲で発生する可能性がある局所的最大(local maximum)を除いて減少する。しかしながら、応答振幅の減少のレートは、被験者間、とくに正常な聴力の被験者と異常な聴力の被験者との間で変化する可能性がある。
【0147】
図10を参照すると、変調周波数の特定の範囲を持ったSSAEP刺激に対して測定された老年者の被験者100のSSAEP応答振幅が標準的な対照標準被験者(normal control subject)102のグループから得られた平均SSAEP応答振幅と比較されている。データは変調レートの増大に伴うSSAEP応答の減少がある程度の難聴を持った老年者の被験者に対して、より急激に起こっていることを示している。老年の被験者100は高い変調周波数のSSAEP刺激を聞き取ることができるが、高い変調周波数のSSAEP刺激に対するSSAEP応答振幅は大きな振幅のSSAEP応答を生成しない。
【0148】
したがって、SSAEP刺激の増大に伴って起きるSSAEP応答振幅の減少(すなわち、レート敏感度)を適当な基準母集団から得られたものと比較することによって、異常な聴力を持った被験者を発見することができる。あるいは、(図10に示されている)SSAEP応答振幅の絶対値を使用する代わりに、高変調周波数のSSAEP刺激に対するSSAEP応答の振幅に対する、低変調周波数のSSAEP刺激に対するSSAEP応答の振幅の比等の、SSAEP応答振幅の比を使用することもできるだろう。
【0149】
(軽微な難聴を持った)老年者の被験者に対して増大した変調周波数と共に起こるSSAEP応答振幅の急激な減衰は、広間隔検出閾値(large gap detection threshold)及び時間的変調変換機能(temporal modulation transfer function)に急激な減衰を呈する、老年の成人の調査にから予想される減衰と類似している。100Hzの搬送波周波数のAMSSAEP刺激は半サイクルがオンで半サイクルがオフの刺激に類似していると考えることができるので、100HzAMSSAEP刺激は5msのオン時間及び5msの間隔継続時間を持っていると考えてもよい。
【0150】
したがって、200Hz搬送波周波数のAMSSAEP刺激は2.5msのオン時間及び2.5msの間隔継続時間を持った刺激に類似している。したがって、100から200Hzの範囲の変調周波数を持ったSSAEP刺激の応答で記録されたSSAEP応答は、5msから2.5msの範囲の間隔に対する、被験者の変調変換機能(modulation transfer function)または間隔機能(gap function)の生理的相関(physiological correlate)を与えるために使用することができる。SSAEP刺激の間隔の期間は変調周波数を減少させることによって、またはSSAEP刺激と共に指数変調を使用した場合の指数の増大によって機能的に増大させることができる。あるいは、これらの両方の操作がSSAEP刺激に加えられてもよい。
【0151】
レート敏感度試験はさらに、4個のAM試験信号から成る多重SSAEP刺激を使用することを含んでもよい。4個のAM試験信号の変調周波数は最初に、例えば40、44、48、52Hzから選択することができる。被験者の2つの耳が同様な聴力能力を示す場合、被験者のもう一方の耳に42、46、50、54Hzの変調周波数を持った4個のAM試験信号から成る多重SSAEP刺激が与えられてもよい。各々の記録がなされた後、各AM試験信号の変調周波数は10Hzずつ増大されてもよい。この様式により、SSAEP応答振幅の推定は約40から190Hzの範囲で、10hz間隔で測定することができる。
【0152】
そして、各AM試験信号に対する、または各変調周波数の平均SSAEP応答振幅としての、4個のAM試験信号に対するSSAEP応答の組み合わせに対する変調周波数vsSSAEP応答振幅のプロットが生成されてもよい。各変調周波数に対する平均値が4個のAMトーンに対して別個に得られた情報を使用するより便利であることが判った場合、この試験に対して多重刺激ではなく単一刺激が使用されてもよい。あるいは、搬送波波形は単一の変調レートで変調された帯域限定ノイズ(band-limited noise)であってもよい。広帯域ノイズ(broadband noise)は単一のAMトーンによって誘発される応答より大きなSSAEP応答を誘発することができるので、この試験の継続時間は短めになるだろう。
【0153】
客観的聴能測定試験装置10はさらに、それ以上になると被験者の聴覚システムがSSAEP刺激で使用される変調周波数に対して応答することができないことを示す閾値を推定することができる。この試験は被験者の聴覚システムがそれ以上に高い変調周波数を識別できないことを示す「カットオフ」変調周波数閾値(cutoff modulation frequency threshold)を産出する。
【0154】
客観的聴能測定試験装置10はまた、補聴器を備えた被験者に対して使用することもできる。この場合、客観的聴能測定試験装置10は被験者が被験者の閾値付近の音声を聞き取れることができるように補聴器の設定(すなわち、利得)を調節するために使用されてもよい。調節プロトコルは被験者のEEGを記録しながら、被験者にSSAEP刺激を与えることを含む。そして、SSAEP刺激に対するSSAEP応答が存在するかを決定するためにEEGが分析される。
【0155】
SSAEP応答が発生しなかった場合、SSAEP刺激に対するSSAEP応答が検出可能になるまで(または、耳に損傷を与える利得レベルの使用を防ぐために必要な利得の最大レベルになるまで)、補聴器の利得がステップ式に(または、段階的に)増大されてもよい。通常、プロトコルは約50−60dBHLである通常のスピーチに相当する強度レベルのSSAEP刺激を使用する。SSAEP刺激はまた、約20%のFM深さを持ったFM試験信号及び約50%のAM深さを持ったAM試験信号を持ったAM試験信号等の、通常のスピーチの音声と同等の変調深さを使用することが望ましい。
【0156】
調節プロトコルは補聴器で調節することができるパラメーターに依存し、補聴器の操作に対して固有のものであってもよい。例えば、補聴器の利得は異なった周波数領域に対して別々に調節されてもよい。そして、これらの利得は別々かつ同時に調節されてもよい。あるいは、補聴器の利得及びフィルターの勾配(filter slope)だけが調節可能である場合、被験者に対して異なった周波数でSSAEP刺激が与えられたときに識別されたSSAEP応答に基づいて、これらのパラメーターを調節するために異なったプロトコルが使用されてもよい。
【0157】
客観的聴能測定試験装置10はさらに、検知及び調節単一多重(SASM(Seek and Adjust Single Multiple))技術として知られるもう1つの補聴器の調節プロトコルを含んでもよい。この場合、補聴器の利得はSSAEP刺激のSSAEP応答が検出されるまで、客観的聴能測定試験装置10によって自動的に増大される。全てのSSAEP刺激に対してこの操作が行われた後、複数の組になったSSAEP刺激が被験者に与えられる。あるいは、この組の代わりに、多重SSAEP刺激で4個またはそれ以上のAM試験信号が使用されてもよい。(スピーチ等の自然な音声より類似した)多重SSAEP刺激に対する閾値は単一の試験信号から成るSSAEP刺激に対する閾値より高いことが示されているので、このような様式で実施される。
【0158】
例えば、4kHz付近で急激な勾配を持つ高周波数難聴(high frequency hearing loss)の場合、多重SSAEP刺激において、2kHz及び4kHzAM正弦波の両者が一緒に与えられる。被験者の聴覚システムに2及び4kHzAM試験信号を検出させるために60dBSPL刺激を20dBだけ増幅させる必要がある場合、多重AMSSAEP刺激は最初に20dBの利得を使用して被験者に与えられる。多重SSAEP刺激のどの成分に対しても有意なSSAEP応答が検出されない場合、補聴器のこの周波数領域に対する利得は例えば、+5dBSPLのステップで最大3回まで増大されてもよい。あるいは、多重SSAEP刺激のどの成分に対しても有意なSSAEP応答が検出されない場合、多重SSAEP刺激の第1成分かSSAEP刺激の第2成分のどちらか、またはSSAEP刺激の両方の成分が例えば、+5dBSPLのステップで最大3回まで増大されてもよい。この方法において、相互の影響(interaction)が評価され、結果的に補聴器に対して最小の全体的な利得となる利得パラメーターが自動的に選択されてもよい。
【0159】
客観的聴能測定試験装置10はまた、被験者に複数の強度で多重SSAEP刺激を与え、SSAEP応答を記録することによって、被験者の聴能測定閾値を客観的に測定するために使用されてもよい。客観的聴能測定試験装置10はSSAEP応答の検出及びSSAEP応答の振幅に基づいてSSAEP刺激の強度レベルの調節をする。多重SSAEP刺激が使用されるので、複数の聴能測定閾値を同時に推定することができる。SSAEP刺激と共に推定された聴能測定閾値は行動聴能測定閾値(behavioral audiometric threshold)と相関があることが実験的に示されている。
【0160】
客観的聴能測定閾値評価法は100%の振幅変調深さ及び、少なくとも0.5オクターブ以上分離した搬送波周波数を持った4個またはそれ以上のAMSSAEP試験信号から成る多重SSAEP刺激を使用することを含む。あるいは、多重SSAEP刺激は各々が20%程度のFM変調深さを持ったFM試験信号から構成されてもよい。多重SSAEP刺激のAM及びFM成分に対するこれらの変調深さの使用は聴能測定試験が周波数特有(frequency specific)となることを可能にする。SSAEP刺激はまた、同様な変調深さを持ったMMまたはOVMMSSAEP試験信号から構成されてもよい。さらに、SSAEP刺激はまた、結果として生ずるSSAEP刺激が優勢的に周波数特有となるような変調方法で、指数変調信号によって変調された包絡線を持つこともできる。
【0161】
客観的聴能測定閾値評価法はさらに、多重SSAEP刺激の各成分の強度を独立に、または同時に調節することを含む。独立に調節する場合、多重SSAEP刺激の成分の強度は記録されているEEGデータで対応するSSAEP応答が検出されたときに減少させられる。独立強度調節は多重SSAEP刺激の各成分がリアルタイムで調節可能な別々のDACに送信される場合に達成可能となる。あるいは、多重SSAEP刺激の成分はデジタル的に組み合わされ、(被験者の各耳に対して1つずつの)2つのDACを介して送信されてもよい。この場合、多重SSAEP刺激の任意の成分は他の成分とは独立に、デジタル的に調節されて多重SSAEP刺激に組み込まれる。これはDACが高い強度の成分が存在するときに、弱い強度の成分の正確な送信を可能にするために(例えば、16ビットまたはそれ以上の)十分な分解能を持っている場合に実施することができる。
【0162】
この原理を説明するために、多重SSAEP刺激は50dBSPLで0.5、1、2、4kHzの搬送波周波数を持った4つのAM試験信号から成っているとする。4つの試験信号の各々は(当然、試験装置で使用される特定のデータ取得ボードにも依存するが)各々約16,384ビットの16ビットのバッファで表される。1kHzの搬送波周波数のAM試験信号に対するSSAEP応答が最初に有意になった場合、他の試験信号の成分を50dBSPLで与えながら、このAM試験信号を40dBSPLで与えるために、この試験信号は10dBSPLだけ減少させられなければならない。
【0163】
多重SSAEP刺激はプロセッサー12のRAMに格納されるので、新規の多重SSAEP刺激は(この時点で、1kHz搬送波周波数を持った減少した強度のAM試験信号成分と共に)試験信号成分を足し合わせることによって生成され、DAC16の出力バッファに送られてもよい。この場合、出力バッファが最初にSSAEP刺激の2倍の長さで規定される、二重バッファ(dual buffer)技術を使用することができる。そして、多重SSAEP刺激はバッファの最初の半分にロードされる。新規の多重SSAEP刺激が生成されたときには、第1のバッファが終了したときにDAC16のアナログデータの変換結果のためのメモリーアドレスを変化させるだけで、被験者に新規の多重SSAEP刺激をシームレスに(すなわち、継ぎ目のない状態で)送ることができるように、新規の多重SSAEP刺激を出力バッファの第2の半分にロードすることができる。
【0164】
あるいは、多重SSAEP刺激の全体を再生成する代わりに、刺激流動法(Stimulus Flux method)を使用して、多重SSAEP刺激内の単一の成分の強度が調節されてもよい。刺激流動法は多重SSAEP刺激の各成分に対する波形を別々に生成及び格納することによって、多重SSAEP刺激内の単一の成分の強度を変更することを含む。多重SSAEP刺激の特定の成分の強度が調節されなければならない場合、対応する波形が多重SSAEP刺激から減ぜられるときに、所望の成分の強度が所望の値に調節されるように、対応する波形の振幅に必要な増幅率が乗算される。そして、新規の多重SSAEP刺激はDAC16の出力バッファにロードされ、その後に被験者60に与えられる。
【0165】
客観的聴能測定閾値評価法を実施するためのアルゴリズムは適応性階段法(adaptive staircase method)を含んでもよい。適応性階段法は聴能測定閾値をステップの大きさの値を調節することによって可能な限り効率良く一括するために(または、収束させるために)構成される。ステップの大きさは多重SSAEP刺激を被験者に与えている間に多重SSAEP刺激内の成分の強度を増大または減少させるために使用される。ステップの大きさは任意の刺激の強度でのSSAEP応答の検出と聴能測定閾値の推定との連続的な反復に基づいて調節されてもよい。聴能測定閾値の1つの可能な定義は、最小のステップの大きさを使用したときに検出されたSSAEP応答と検出されなかったSSAEP応答を生じた2つの刺激強度の間の、多重SSAEP刺激の(聴能測定閾値を決定しようとしている)特定の成分の強度である。聴能測定閾値は図11に示されている階段手順(staircase procedure)を使用して、反復された聴能測定閾値推定に基づいて確定されてもよい。
【0166】
客観的聴能測定閾値評価法はまた、最初の刺激強度、最初のステップサイズ、及び最小ステップサイズの選択を含む。刺激強度の最大値及び最小値は方法が、それ以上またはそれ以下で聴能測定閾値を試験しない最大の値及び最小の値に設定されなければならない。ステップサイズの変化に対するルールが決められてもよい。さらに、ステップサイズは時間と共に減少してもよいし、試験される強度の残りの範囲と共に変化してもよい(例えば、ステップサイズは現在の刺激強度と試験される刺激強度の最初値または最大値との間の半分の値によって規定されてもよい)。
【0167】
聴能測定閾値が推定されるときの精度(例えば、5または10dBSPL)を決定するための、刺激サイズの最小値が設定されなければならない。設定が必要な他のパラメーターはSSAEP応答が存在するか、しないかを判定するための基準である。応答を検出するために位相重み付けt検定または位相区間法が使用されてもよい。あるいは、この分野で周知の他の検出法が使用されてもよい。SSAEP刺激に対するSSAEP応答が存在しないことを判定するための基準は処理されたEEGデータの残留性バックグラウンドノイズ(residual background noise)の最初レベルに基づいて調節されてもよい。この基準はまた、試験が満了するまでの時間制限を含んでもよい。あるいは、これらの両方の基準が使用されてもよい。
【0168】
客観的聴能測定閾値評価法は以下のように実施されてもよい。複数の試験信号成分が任意の強度レベルで与えられる多重SSAEP刺激に組み合わされる。あるいは、単一の試験信号成分がSSAEP刺激に使用されてもよい。被験者にSSAEP刺激が送信されるのと同時に、EEGデータが記録される。続いて、記録されたEEGデータはSSAEP応答の検出のために分析される。SSAEP応答が検出されるとすぐに、SSAEP応答を誘発した(TS1で示される)試験信号の成分の強度は、試験信号の成分TS1の現在の強度と聴能測定閾値試験で試験される強度のレベルの最小値との間の半分の大きさのdBSPLに等しいステップサイズだけ減少させられる。そして、新規のSSAEP刺激はこの新規の試験信号成分TS1に基づいて構築される。
【0169】
方法は前の処理と同じステップ:多重SSAEP刺激を与えること、EEGデータを記録すること、及びSSAEP応答のためにデータを分析することを含む。プロトコルはまた、検出されたSSAEP応答を誘発した多重SSAEP刺激の成分のためのステップサイズを半分にすることを含む。それゆえ、SSAEP応答が試験信号成分TS1に対して検出された場合、試験信号成分TS1に対する刺激強度は新規のステップサイズだけ減少させられる。あるいは、試験信号成分TS1に対する応答が検出されない場合、試験信号成分TS1に対する強度レベルは新規のステップサイズだけ増大させられる。SSAEP応答が検出されない場合、それが記録されたEEGデータの過剰なノイズによるものでないことを確実にするために、記録されたEEGデータのノイズレベルの推定が行われてもよい。ノイズ推定はまた、任意の多重SSAEP刺激を送信する試験時間を増大させるための増大率として使用されてもよい。すなわち、試験時間は記録されたEEGデータのノイズの量の関数として延長されてもよい。
【0170】
客観的聴能測定閾値評価法はさらに、多重SSAEP刺激の全ての試験信号の成分に対する閾値が得られるまで閾値交差(threshold crossing)を得ることを含む。あるいは、多重SSAEP刺激のいくつかの試験信号成分に対して十分な数の閾値交差が得られ、他の試験信号成分に対して得られていないときに、閾値の得られていない試験信号成分から構成される新規の多重SSAEP刺激が構築されてもよい。そして、試験はこの新規の多重SSAEP刺激と共に続けられる。
【0171】
客観的聴能測定閾値評価法はさらに、多重SSAEP刺激の全ての試験信号成分の強度を同時に調節することを含んでもよい。そして、多重SSAEP刺激のいくつかの試験信号成分は、特定の継続時間の後、これらの試験信号成分に対してSSAEP応答が検出されたときに除去されてもよい。そして、多重SSAEP刺激の残りの試験信号成分は、例えば90秒等のもう1つの継続時間の対して送信されてもよい。単一のSSAEP刺激に対するSSAEP応答の継続時間が約90秒要するとすると、この聴能測定閾値検出手順は単一の試験信号成分を持ったSSAEP刺激の試験の約2倍速く行われる。さらに、AM、FM、OVMM、またはMM試験信号から成るSSAEP刺激は被験者にバイノーラルに(すなわち、被験者の両耳に)与えられることができるので、客観的聴能測定閾値評価法は各耳に別々に与えられるSSAEP刺激の試験に比べ、4倍速く行うことができる。
【0172】
あるいは、客観的聴能測定閾値評価法は多重SSAEP刺激の試験信号成分を異なった強度で与えてもよい。500Hz及び4000Hzの搬送波周波数を持った試験信号に対するSSAEP応答は1000Hz及び2000Hzの搬送波周波数を持った試験信号に対するSSAEP応答に比べて、検出されるためにより長い時間を必要とするので、前者の試験信号成分の刺激強度は後者の試験信号成分に対して増大されてもよい。
【0173】
したがって、500Hz及び4000Hzの搬送波周波数を持った試験信号成分の強度は1000Hz及び2000Hzの搬送波周波数を持った試験信号成分に対する強度レベルより10dBSLP大きい値で与えられてもよい。(ここで、重要なのは周波数の範囲であり、上述の周波数が説明のためであり、正確にその値である必要がないことは注意しなければならない。)この様式により、試験信号成分に対するSSAEP応答は全て、ほぼ同じ時間で検出することができる。あるいは、500Hz及び4000Hzの搬送波周波数を持った試験信号成分は基底膜(basilar membrane)のかなり離れた、異なった領域で変換され、さらに、これらの特定の刺激にSSAEP応答は両方とも検出されるために長い時間を要するので、多重SSAEP刺激は500Hz及び4000Hzの搬送波周波数を持った試験信号等の、2つだけの信号成分から構成されてもよい。
【0174】
客観的聴能測定閾値評価法が完了したとき、結果はこの分野の技術者に一般的な、標準的な聴能測定形式で表すことができる。試験結果の表示は試験信号成分が単独で、または他の試験信号成分との組み合わせで与えられたときに、試験信号成分に対するSSAEP応答が検出されたかをハイライト(または、強調表示)することを含んでもよい。例えば、これらのSSAEP応答は特定の色で描かれたり(または、囲われたり)、ハイライトされたりしてもよい。試験から得られた実際の聴能測定閾値に加え、高い刺激強度で与えられた試験信号成分に対する、検出されたSSAEP応答から外挿された(extrapolated)、聴能測定閾値の推定が表示されてもよい。例えば、60、50、40dBSPLで与えられた試験信号成分に対して得られたSSAEP応答の増幅器の減少を考慮することによって、検出されたSSAEP応答の振幅を接続する直線を平均のバックグラウンドEEGノイズに射影することによってSSAEP応答が検出されないだろうということが推定されてもよい。
【0175】
(複数感覚試験(Multi Modality Testing))
図12を参照すると、客観的聴能測定試験装置10の代替的な実施例は客観的複数感覚試験装置200から成る。図12において、図1aに示されている客観的聴能測定試験装置10の構成要素と同一または同様な要素は同じ番号で示されている。客観的複数感覚試験装置200は被験者60の聴覚システムを試験しながら、他の感覚を同時に試験するために使用することができる。この実施例においては、視覚及び体性感覚(somatosensory)が聴覚の試験と同時に試験される。他の実施例においては、他の感覚が聴覚システムの試験と同時に試験されてもよい。複数感覚の試験は聴覚の異常が、例えば多発性硬化症等の、神経系のより広範囲の障害の一部であるかを決定することを可能にすることができる。さらに、複数感覚試験は神経学上の異常を検査または研究するために使用することもできるだろう。
【0176】
客観的複数感覚試験装置200はプロセッサー12、少なくとも1つのDAC204及び少なくとも1つのADC206を持ったデータ取得ボード202、増幅器22、208、210、フィルター24、212、214、変換器26、216、218、センサー28、220、224、増幅器30、224、226、並びにフィルター32、228、230を含む。プロセッサー12はさらに、客観的複数感覚試験装置200の多様な機能をエンコードしたソフトウェアプログラム232を含む。ソフトウェアプログラム232は信号生成器234、変調器236、並びにノイズリダクションモジュール240及び検出モジュール242を持った分析モジュール238を含む。ソフトウェアプログラム232はまた、複数のデータベースD1−Dnを含むマスターデータベース250に接続されている。プロセッサー12はまた、格納装置34及びディスプレイ36に接続されている。
【0177】
使用中、信号生成器234は聴覚、視覚、及び体性感覚応答電位を誘発するために適当な刺激となる試験信号を生成する。変調器236は試験信号の生成のために使用されてもよい。そして、試験信号は複数の出力チャネル、または複数の単一チャネルDACを備えるDAC204に送られる。DAC204は試験信号を増幅器22、208、210に送る。増幅器22、208、210は試験信号の強度レベルを試験に対して適当なレベルに調節するために試験信号を増幅する。増幅された試験信号は次に、デジタル−アナログ変換及び増幅処理において発生した全てのノイズを取り除くためにフィルター24、212、214に送られる。
【0178】
増幅され、かつ濾波された試験信号は次に、試験信号が変換器によって変換され、それと同時に被験者60に送信されるように、変換器26、216、218に送られる。変換器26は適当な試験信号を音声刺激に変換する聴覚変換器であってもよい。したがって、変換器26は一組のヘッドホンまたは少なくとも1つの挿入型イヤホンであってもよい。音声刺激として使用される試験信号は客観的聴能測定試験装置10と共に上述された多様な刺激のどれかであってもよい。例えば、音声刺激は87及び93Hzの変調周波数を持った、異なった搬送波周波数の2つのAM正弦波(すなわち、トーン)であってもよい。
【0179】
変換器216は適当な試験信号を視覚刺激(または、光学刺激)に変換する視覚変換器であってもよい。したがって、変換器216は脈動する光(または、フラッシュ)を生成することができるストロボ(または、フラッシュライト)であってもよいし、格子状に並んだ発光ダイオードであってもよい。視覚刺激は被験者60の左及び右目に対して、例えば16及び18Hzの変調レートで与えられてもよい。あるいは、視覚刺激は被験者60の片目だけに与えられてもよい。音声刺激と同様に、1つの目に多重変調視覚刺激(multiple modulated visual stimuli)が与えられてもよい。
【0180】
変換器218は適当な試験信号を触覚刺激に変換する触覚変換器であってもよい。したがって、変換器218は振動性触覚刺激(vibrotactile stimulator)であってもよい。振動性触覚刺激は被験者60の少なくとも1つの指に適用されてもよい。例えば、振動性触覚刺激は被験者の左手及び右手の人差指に適用されてもよい。触覚刺激は例えば、23及び25Hzのレートで与えられてもよいし、他のレートで与えられてもよい。
【0181】
複数感覚刺激を被験者60に与える場合、使用される試験信号は聴覚、視覚、及び触覚刺激の各々に対する応答の周波数が互いに同じ、または各々の整数倍ならず、かつ、共通因数が最小(minimum of common factor)になるように選択されなければならない。これは、応答やそれらの倍音が互いに干渉しないように、確実に行われなければならない。
【0182】
EEGデータは被験者60に複数感覚刺激が送信されている間に記録される。被験者60のEEGデータは通常、電極であるセンサー28、220、222を使用して記録される。これらの電極はより良いSN比を持ったEEGデータを得るために適当な特定の領域に配置される。視覚刺激に対する応答を測定するセンサー220は被験者60の脳の後頭部領域に配置されてもよい。触覚刺激に対する応答を測定するセンサー222は触覚刺激の存在に対側性(contralateral)の頭皮の中央(central scalp)に配置されてもよい。音声刺激に対する応答を測定するセンサー28は被験者60の頭頂に配置されてもよい。もちろん、これらの刺激の各々に対して他の場所に電極が配置されてもよい。例えば、これらのセンサーの配置は被験者60の頭皮の多数の(例えば、32または64箇所の)場所の電極を使用してもよい。
【0183】
検出された電位の各々(すなわち、時系列データとして知られているEEGデータ)は次に、デジタル化をするために十分なレベルに増幅するために、増幅器30、224、226によって増幅されてもよい。増幅されたEEGデータは次に、フィルター32、228、230によって濾波される。増幅され、かつ濾波されたEEGデータは次に、エイリアシング(aliasing)無しでEEGデータのサンプリングを行うために十分なサンプリングレートでデジタル化するために、ADC206に送られる。
【0184】
サンプリングされたデータは次に、分析モジュール242によって分析される。データは最初に、サンプリングされたデータ中のノイズを減少させ、ノイズを減少させられたEEGデータを生成するためにノイズリダクションモジュール240によって処理される。ノイズリダクションモジュール240はノイズを減少させるためにサンプル重み付け平均化を使用してもよい。ノイズリダクションモジュール242はまた、適応性アーティファクト除去を使用してもよい。あるいは、ノイズリダクションモジュール242はこの分野で周知の他のノイズリダクションアルゴリズムを使用してもよい。
【0185】
ノイズを減少させられたEEGデータは次に、ノイズを減少させられたEEGデータ中に何らかの応答が存在するかを決定するために、検出モジュール242によって分析される。検出モジュール242は位相重み付けt検定、位相区間技術、またはMRC法を実施してもよい。あるいは、検出モジュール242はこの分野で周知の他の検出アルゴリズムを使用してもよい。検出モジュール242はまた、検出された応答が実際に信号であり、ノイズではないことを示す確率推定(probability estimate)を与えてもよい。検出された応答は次に、マスターデータベース250に含まれる、他の被験者に対する基準データ(normative data)と比較されてもよい。この比較は被験者60が神経系に広範囲の異常(または、障害)を持つかを示す指標を与えてもよい。
【0186】
客観的複数感覚試験装置200を利用する、複数感覚試験のための手順は以下のステップを含む:
(i)被験者60に電極を付けること;
(ii)被験者60に複数感覚刺激を与えるために変換器を設定または装着すること;
(iii)多重応答がそれらの識別用変調周波数(signature modulation frequency)によって識別できるように、各感覚に対する刺激が客観的複数感覚試験装置200に同期している、複数感覚刺激を被験者60に送信すること;
(iv)3つのEEGデータ時系列を得るために、各電極の場所からEEGデータを記録すること;
(v)ノイズの減少したEEGデータ時系列の組を生成するために各EEGデータ時系列中のノイズを減少させること;
(vi)ノイズの減少したEEGデータ時系列中から、応答を誘発した感覚刺激に対して特有な変調周波数で識別される定常状態応答を検出すること;及び、
(vii)検出された応答の振幅を応答を年齢及び性別の一致した基準値(normative value)と比較すること(あるいは、感覚刺激が被験者60の身体の左側及び右側の両方に与えられた場合、この比較は被験者60内で行うこともできる)。
【0187】
(ポータブル客観的複数感覚試験装置)
強度はさらに、図13に示されているような、持ち運び式(または、ポータブル)客観的複数感覚試験装置300を含む。ポータブル客観的複数感覚試験装置300は図12に示されている客観的複数感覚試験装置200と類似しており、多くの同一または同様な構成要素を含む。
【0188】
ポータブル客観的複数感覚試験装置300は画面304、ソフトウェアプログラム306、格納装置308、複数のデータベースD1−Dnを含むマスターデータベース390、及びPCMCIAデータ通信カード310を含むラップトップコンピューター302から構成される。ソフトウェアプログラム306は信号生成器234、変換器236、並びにノイズリダクションモジュール240及び検出モジュール242を含む分析モジュール238を含む。客観的複数感覚試験装置300はさらに、増幅器314、316、318、320、322、324、326、328、フィルター330、332、334、336、338、340、342、及び変換器350、352、354、356、358、360を持ったコントロールボックス312、並びにセンサー362、364、366を備える。
【0189】
ポータブル客観的複数感覚試験装置300はラップトップコンピューター302及びコントロールボックス312をベースに構成される点を除いて、客観的複数感覚試験装置200と同様な様式で動作する。あるいは、パームトップ(または、手のひらサイズのコンピューター)や他の持ち運び可能な計算装置が使用されてもよい。画面304上には、ソフトウェアプログラム306によって実施される、多様なグラフィックユーザーインターフェース(GUI)ウィンドウが存在する。これらの中にはロードプロトコルウィンドウ(Load protocol window)370、刺激ビューウィンドウ(View Stimuli window)372、EEGビューウィンドウ(View EEG window)374、データ取得ウィンドウ(data acquisition window)376、連続取得ウィンドウ(continue acquisition window)378、及びデータ処理ウィンドウ(process data window)380がある。これらのGUIウィンドウはユーザーがポータブル客観的複数感覚試験装置300を操作し、被験者60に対して多様な試験を実施することを可能にする。
【0190】
例えばNational InstrumentのDAQCard6062eカードである、PCMCIAデータ通信カード310はラップトップ302とコントロールボックス312との間の機能的な通信及びデータ転送を可能にする。PCMCIAデータ通信カード310はコントロールボックス312に試験信号を送信し、記録されたEEGデータを受信する。十分なデータ転送レートを備えているという条件を満たしていれば、システムの構成要素間のデータ転送を行うために他の通信システムが使用されてもよい。
【0191】
コントロールボックス312はPCMCIAデータ通信カード310によって送られる試験信号を増幅する、2つの可聴周波増幅器(audio amplifier)314及び316を含み、試験信号を音声刺激に変換し、被験者に音声刺激を与えるための2つの変換器350及び352に試験信号を送る。ラップトップ302は可聴周波増幅器314及び316の利得を介して音声刺激の強度を制御する。
【0192】
あるいは、被験者60に与えられる多重SSAEP刺激内に含まれる試験信号の独立した強度制御を可能にするために、コントロールボックス312内に8個またはそれ以上の可聴周波増幅器が備えられてもよい。可聴周波増幅器314及び316の出力は次に、試験信号中のデジタル化による全てのノイズまたはアーティファクトを除去するためにフィルター330及び332に送られる。フィルター330及び332はまた、試験信号にパスバンドマスキング信号(pass band masking signal)を導入するために使用されてもよい。同様な様式により、コントロールボックス312はさらに、試験信号が視覚刺激または触覚刺激に変換される前に、試験信号を操作する他の増幅器318及び320並びにフィルター334及び336を含む。
【0193】
そして、多様な試験信号は変換器350、352、354、356によって変換される。変換器350及び352はヘッドホンまたは挿入型イヤホンであってもよい。変換器350及び352はまた、両耳が別個に試験されない場合、スピーカーであってもよい。変換器354は被験者60への視覚刺激であり、ストロボ式の光源(strobing light source)または被験者60の目の前に配置されるゴーグルであってもよい。変換器356は被験者60に触覚刺激を与え、被験者60の少なくとも1つの指に装着される、少なくとも1つの振動性変換器(vibration transducer)であってもよい。各感覚に対する各刺激は固有な周波数で変調される。各刺激はまた、複数感覚刺激に対する定常状態応答がそれらの識別用変調周波数(signature modulation frequency)によって識別されるように、ポータブル客観的複数感覚試験装置300に対して同期し、かつ同位相に固定(または、ロック)されなければならない。(定常状態応答は感覚刺激で使用される変調周波数で発生する。)
【0194】
感覚刺激の各々に対する定常状態応答を記録するために、1組の電極362、364、366が、客観的複数感覚試験装置200と共に上述されたのと同様な様式で、被験者60の頭皮に配置される。複数感覚定常状態試験はまた、(頭皮上に32個等の電極を使用する)多重頭皮記録(multiple scalp recording)を使用して実施されてもよいし、特定の場所に配置された電極と共に、(例えば、3個等の)比較的少ない数の入力データチャネルを使用して記録することによって実施されてもよい。
【0195】
電極362、364、366はコントロールボックス312にEEG時系列データの組を与える。これらのEEG時系列データの組は次に、増幅器324、326、328によって増幅され、フィルター338、340、342によって濾波される。あるいは、使用される増幅器及びフィルターは1つずつであってもよい。増幅器324、326、328の利得の設定はラップトップ302によって制御される。フィルター338、340、342はEEG時系列データに対してローパス、ハイパス、及びノッチ(notch)フィルタリングを行うためのプログラム可能なアナログフィルターであってもよい。
【0196】
フィルター338、340、342はまた、ラップトップ302によって制御されてもよい。(ラップトップまたは、コントロールボックス312内の他の増幅器及びフィルターを制御してもよい。)濾波及び増幅されたEEG時系列データも組は次に、EEG時系列データの組をデジタル化し、分析モジュール238に送るPCMCIAデータ通信カード310に送られる。EEG時系列データの組は次に、客観的複数感覚試験装置200と共に上述されたのと同様な様式で、ノイズリダクションモジュール240を介して、ノイズを減少させるために処理され、検出モジュール242を介して、応答の検出のために分析される。
【0197】
ポータブル客観的複数感覚試験装置300はさらに、被験者60に装着される補聴器装置の調節を可能にするための手段を含んでもよい。詳細に述べると、コントロールボックス312は補聴器装置358及び360と通信することができるように構成されてもよい。通信はリボンケーブル361等の物理的な接続を介して行われてもよい。あるいは、移植された補聴器装置の場合、通信は(移植された刺激器等の)他の生物医学的装置で使用されているようなRF遠隔測定法を介して行われてもよい。
【0198】
ポータブル客観的複数感覚試験装置300はさらに、SSAEP刺激を使用した補聴器の調節法で上述された、周波数特有利得(frequency specific gain)の設定、フィルターの勾配(filter slope)の設定、または補聴器装置358及び360の他の関連がある設定の調節を行うために使用されてもよい。補聴器装置358及び360の調節は熟練した医師または医療従事者によってなされてもよいし、SSAEP試験手順のパス/フェイル結果に基づいて、ラップトップ302によって自動的に調節されてもよい。
【0199】
付随する請求の範囲で規定される本発明の範囲から外れることなく、ここで説明及び図示されてきた好まれる実施例に対して多様な変更または改良が可能であることは理解されなければならない。
【図面の簡単な説明】
【図1a】本発明の装置の実施例の概略図である。
【図1b】概略的な聴覚試験方法を図示している流れ図である。
【図2】(a)雑音のある記録期間中のEEG振幅のヒストグラムである。
(b)雑音のない記録期間中のEEG振幅のヒストグラムである。
(c)図2aに示されているEEGデータに標準的な時間平均化を実施した結果の振幅スペクトルである。
(d)図2bに示されているEEGデータに標準的な時間平均化を実施した結果の振幅スペクトルである。
(e)図2aに示されているEEGデータにサンプル重み付け平均化を実施した結果の振幅スペクトルである。
(f)図2bに示されているEEGデータにサンプル重み付け平均化を実施した結果の振幅スペクトルである。
(g)図2aに示されているEEGデータに振幅排除を実施し、さらに正常時間平均化を実施した結果の振幅スペクトルである。
(h)図2bに示されているEEGデータに振幅排除を実施し、さらに正常時間平均化を実施した結果の振幅スペクトルである。
【図3】(a)SSAEP応答を含むEEGデータポイントの平均化されたスイープのF−試験を結果のプロットである。
(b)図3aに示されているデータの組に対する位相重み付けt検定の結果のプロットである。
【図4】(a)50dBSPL刺激強度及び25%の周波数変調深さに対するMMSSAEP刺激及びAMSSAEP刺激へのSSAEP応答の振幅のグラフである。 (b)40dBSPL刺激強度及び25%の周波数変調深さに対するMMSSAEP刺激及びAMSSAEP刺激へのSSAEP応答の振幅のグラフである。 (c)30dBSPL刺激強度及び25%の周波数変調深さに対するMMSSAEP刺激及びAMSSAEP刺激へのSSAEP応答の振幅のグラフである。 (d)50dBSPL刺激強度及び10%の周波数変調深さに対するMMSSAEP刺激及びAMSSAEP刺激へのSSAEP応答の振幅のグラフである。 (e)40dBSPL刺激強度及び10%の周波数変調深さに対するMMSSAEP刺激及びAMSSAEP刺激へのSSAEP応答の振幅のグラフである。 (f)30dBSPL刺激強度及び10%の周波数変調深さに対するMMSSAEP刺激及びAMSSAEP刺激へのSSAEP応答の振幅のグラフである。
【図5】(a)振幅変調及び周波数変調された成分を含むSSAEP刺激への応答が、どのようにSSAEP刺激の振幅変調された成分へのSSAEP応答とSSAEP刺激の周波数変調された成分へのSSAEP応答との、ベクトルの加法としてモデル化することができるかを図示しているプロットである。
(b)周波数変調された成分の位相がSSAEP刺激の振幅変調された成分の位相に対して変化するとき、振幅変調及び周波数変調された成分を含むSSAEP刺激への応答が、どのように正弦波としてモデル化することができるかを図示しているグラフである。
【図6】(a)AMSSAEP刺激、FMSSAEP刺激、及びIAFMSSAEP刺激に対するSSAEP応答の振幅スペクトルである。
(b)図6aに示されているSSAEP応答の検出を示している極性プロットのグループである。
【図7】(a)50dBpSPLの刺激強度に対するAMSSAEP刺激との比較で、SSAEP刺激に指数変調信号を使用したときの、SSAEP応答のパーセントでの増大を示している試験結果のグラフである。
(b)30dBpSPLの刺激強度に対するAMSSAEP刺激との比較で、SSAEP刺激に指数変調信号を使用したときの、SSAEP応答のパーセントでの増大を示している試験結果のグラフである。
(c)50dBpSPLの刺激強度に対するAMSSAEP刺激との比較で、SSAEP刺激に指数変調信号を使用したときの、SSAEP応答の振幅を示している試験結果のグラフである。
(d)30dBpSPLの刺激強度に対するAMSSAEP刺激との比較で、SSAEP刺激に指数変調信号を使用したときの、SSAEP応答の振幅を示している試験結果のグラフである。
【図8】被験者のグループの右及び左の耳にSSAEP刺激を与えたとときのSSAEP応答に対する、80及び160Hz変調レートに対して計算された潜伏時間のグラフの組である。
【図9】多様な被験者に対するIAFMSSAEP刺激への有意な応答の数の関数として表された、単語識別のプロットである。
【図10】SSAEP刺激の変調レートの関数として表された、若い対照標準被験者及び、比較的少ない聴力障害を持った老年者の被験者のグループに対する、SSAEP応答の振幅のグラフである。
【図11】SSAEP応答が検出されたかどうかに基づいて、自動的に音声の強度を調節するアルゴリズムを使用して、聴覚閾値がどのように評価されるかを示す概略的なグラフである。
【図12】客観的複数感覚試験装置の概略図である。
【図13】複数感覚試験を実施することができる、客観的聴能測定試験装置のポータブル版の概略図である。
【符号の説明】
10 客観的聴能測定試験装置
12 プロセッサー
14 データ取得ボード
16 デジタル−アナログ変換器
18 アナログ−デジタル変換器
20 聴能測定器
22 フィルター
24 増幅器
26 音響変換器
28 センサー(電極)
30 増幅器
32 フィルター
34 格納装置
36 ディスプレイ
40 ソフトウェアプログラム
42 信号生成器
44 変調器
46 分析モジュール
48 ノイズリダクションモジュール
50 検出モジュール
52 マスターデータベース
60 被験者
70 応答ベクトル
72 信頼限界の上限
74 応答ベクトル
76 信頼限界の上限
80 MMSSAEP刺激に対する応答
82 AM成分に対する応答
84 FM成分に対する応答
86 最大の振幅を持った応答
88 正弦波としてモデル化された応答曲線
99 応答曲線
100 老年の被験者のSSAEP応答振幅
102 基準対照被験者のSSAEP応答振幅
200 客観的複数感覚試験装置
202 データ取得ボード
204 デジタル−アナログ変換器
206 アナログ−デジタル変換器
208,210 増幅器
212,214 フィルター
216,218 変換器
220,222 センサー
224,226 増幅器
228,230 フィルター
232 ソフトウェアプログラム
234 信号生成器
236 変換器
238 分析モジュール
240 ノイズリダクションモジュール
242 検出モジュール
250 マスターデータベース
300 ポータブル客観的複数感覚試験装置
302 ラップトップコンピューター
304 画面
306 ソフトウェアプログラム
308 格納装置
310 データ通信カード
312 コントロールボックス
314,316 可聴周波増幅器
318,320 増幅器
324−328 増幅器
330−336 フィルター
338−342 フィルター
350−356 変換器
358,360 補聴器装置
361 リボンケーブル
362−366 センサー(電極)
390 マスターデータベース
370 ロードプロトコルウィンドウ
372 刺激ビューウィンドウ
374 EEGビューウィンドウ
376 データ取得ウィンドウ
378 連続取得ウィンドウ
380 データ処理ウィンドウ

Claims (18)

  1. 被験者の聴力を試験する方法であって:
    (a)少なくとも2つの搬送波周波数を持った少なくとも1つの試験信号を生成すること;
    (b)音声刺激を生成するために前記少なくとも1つの試験信号を変換し、被験者に前記音声刺激を与えること;
    (c)前記音声刺激を前記被験者に与えるのと実質的に同時に、前記被験者から電位を検出すること;及び、
    (d)前記電位が前記音声刺激に対する少なくとも1つの定常状態応答の存在を示すデータを含むかを決定するために前記電位を分析することのステップを含む方法。
  2. 少なくとも1つの試験信号を生成する前記ステップが指数変調信号によって前記少なくとも1つの試験信号の振幅及び周波数の少なくとも1つを変調することを含む、請求項1に記載の方法。
  3. 少なくとも1つの試験信号を生成する前記ステップが第1位相の振幅変調成分及び第2位相の周波数変調成分を持った少なくとも1つの信号であって、前記被験者からの増大した応答を誘発するために第2位相が第1位相に対して選択されている信号を含む最適ベクトル混合変調試験信号を生成することを含む、請求項1に記載の方法。
  4. 少なくとも1つの試験信号を生成する前記ステップが振幅変調成分及び周波数変調成分を持った、少なくとも1つの独立した振幅変調及び周波数変調信号を含む変調された試験信号を生成することを含み、前記振幅変調成分が第1変調周波数及び第1搬送波周波数を持ち、前記周波数変調成分が第2変調周波数及び第2搬送波周波数を持ち、第1変調周波数が第2変調周波数と実質的に異なり、第1搬送波周波数が第2搬送波周波数と実質的に同じであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  5. 被験者の聴力を試験するための装置であって:
    (a)少なくとも2つの搬送波周波数を持った試験信号を生成するために構成された信号生成器;
    (b)前記試験信号に基づいて音声刺激を生成し、前記音声刺激を前記被験者に与えるために構成された変換器;
    (c)前記音声刺激を前記被験者に与えるのと実質的に同時に、前記被験者から電位を検出するために構成されたセンサー;及び、
    (d)前記電位を受信し、前記電位が前記音声刺激に対する少なくとも1つの応答を示すデータを含むかを決定するために前記電位を分析するために構成され、前記変換器及び前記センサーに電気的に接続されたプロセッサーを備える装置。
  6. 被験者の特徴及び刺激の特性に相関がある基準位相差データのデータベースをさらに含む、請求項5に記載の装置。
  7. 前記信号生成器が第1位相の振幅変調成分及び第2位相の周波数変調成分を持った少なくとも1つの信号であって、前記被験者からの増大した応答を誘発するために第2位相が第1位相に対して選択されている信号を含む最適ベクトル混合変調試験信号を生成するために構成されている、請求項5に記載の装置。
  8. 前記信号生成器が指数変調信号によって前記少なくとも1つの試験信号の振幅及び周波数の少なくとも1つを変調するために構成されている、請求項5に記載の装置。
  9. 前記信号生成器が振幅変調成分及び周波数変調成分を持った、少なくとも1つの独立した振幅変調及び周波数変調信号を含む変調された試験信号を生成するために構成されており、前記振幅変調成分が第1変調周波数及び第1搬送波周波数を持ち、前記周波数変調成分が第2変調周波数及び第2搬送波周波数を持ち、第1変調周波数が第2変調周波数と実質的に異なり、第1搬送波周波数が第2搬送波周波数と実質的に同じであることを特徴とする、請求項5に記載の装置。
  10. 被験者の聴力を客観的に試験する方法であって:
    (a)聴覚試験を選択すること;
    (b)前記聴覚試験のために少なくとも1つの成分を含む、少なくとも2つの搬送波周波数を持った試験信号を生成すること;
    (c)刺激を生成するために前記試験信号を変換し、前記刺激を被験者に与えること;
    (d)前記被験者に前記刺激を与えるのと実質的に同時に前記被験者から電位を検出すること;及び、
    (e)少なくとも1つの応答を検出するために前記電位を分析することのステップを含む方法。
  11. 前記聴覚試験が検出された応答に対する潜伏時間値を計算すること、及び前記被験者の聴覚システムの正常/異常状態の指標を得るために前記潜伏時間値を基準潜伏時間値のデータベースと比較することから成る潜伏時間試験である、請求項10に記載の方法。
  12. 前記聴覚試験が補聴器を付けた状態での試験であり:
    (m)前記被験者に補聴器を装着すること;
    (n)ステップ(b)から(e)を実施すること;
    (o)ステップ(e)での検出応答数が不十分である場合、前記補聴器を調節すること;
    (p)前記電位で十分な応答数が検出されるまでステップ(n)及び(o)を実施することのステップを含む、請求項10に記載の方法。
  13. 前記聴覚試験がAM/FM識別試験であり、前記試験信号が少なくとも1つの独立な振幅変調及び周波数変調された信号を含み、前記AM/FM識別試験が:
    (q)ステップ(b)から(e)を実施すること;
    (r)前記刺激に対して発生する可能性がある応答の全ての数で除算された、検出された応答の数に従って応答比を計算すること;及び、
    (s)前記応答比に相関のある言語識別スコアを推定することのステップを含む、請求項10に記載の方法。
  14. 前記聴覚試験が深さ敏感度試験であり、前記試験信号が変調深さを持った1つまたは複数の振幅変調成分または変調深さを持った1つまたは複数の周波数変調成分を含み、前記深さ敏感度試験が:
    (z)ステップ(b)から(e)を実施すること;
    (aa)検出された応答の各々に対して応答振幅の推定を得ること;
    (bb)前記被験者の聴覚システムの状態の指標を得るために、前記応答振幅の推定を基準応答振幅のデータベースと比較することのステップを含む、請求項10に記載の方法。
  15. 前記聴覚試験がレート敏感度試験であり:
    (gg)少なくとも2つの変調周波数から成る変調周波数の組を生成すること;
    (hh)各試験信号が前記変調周波数の組から選択された固有の変調周波数を持った、少なくとも1つの振幅変調成分を含む、試験信号の組を生成すること;
    (ii)前記試験信号の組の各試験信号に対してステップ(c)及び(d)を実施すること;
    (jj)前記試験信号の組の各振幅変調成分に対する応答を検出するために電位の組を分析し、検出された応答の各々に対する応答振幅を推定すること;
    (kk)前記推定された応答振幅に基づいてレート敏感度を計算すること;及び、
    (ll)前記被験者の聴覚システムの状態の指標を得るために、前記レート敏感度値を基準レート敏感度値のデータベースと比較することのステップを含む、請求項10に記載の方法。
  16. 前記聴覚試験が強度閾試験から成る上方閾値試験であり、前記試験信号が100%の変調深さを持った振幅変調成分を含み、前記強度閾試験が:
    (mm)応答が検出される最小の変調深さを決定するために、検出された応答の各々に対する試験信号の変調深さを最小にしながら定常状態誘発電位試験を実施すること;及び、
    (nn)前記被験者の聴覚システムの状態の指標を得るために、前記最小変調深さを基準最小変調深さのデータベースと比較することのステップを含む、請求項10に記載の方法。
  17. 前記聴覚試験が聴覚閾値試験であり、前記試験信号が、各々が0.5オクターブ以上分離した搬送波周波数を持った、2つ以上の振幅変調及び周波数変調信号の組み合わせ信号を含み、組み合わされた振幅変調及び周波数変調信号の各々が周波数変調成分及び振幅変調成分を持ち、周波数変調成分の位相が振幅変調成分の位相に対して調節されており、前記聴覚閾値試験が:
    (qq)組み合わされた振幅変調及び周波数変調信号の各々に対して応答が検出される、最小の刺激強度を決定するためにステップ(c)から(e)を実施することのステップを
    含む、請求項10に記載の方法。
  18. 被験者の少なくとも2つの感覚を試験する方法であって:
    (a)第1の感覚の種類を試験するための、少なくとも2つの搬送波周波数を持った第1定常状態試験信号を選択すること;
    (b)第1刺激を生成するために第1定常状態試験信号を変換し、第1刺激を前記被験者に与えること;
    (c)第2の感覚の種類を試験するための、少なくとも2つの搬送波周波数を持った第2定常状態試験信号を選択すること;
    (d)第2刺激を生成するために第2定常状態試験信号を変換し、第2刺激を前記被験者に与えること;
    (e)前記被験者に前記両方の刺激を与えるのと実質的に同時に、電位を検出すること;及び、
    (f)前記電位が前記刺激に対する少なくとも1つの定常状態応答を含むかを決定するために前記電位を分析することのステップを含む方法。
JP2001583621A 2000-05-19 2001-05-18 聴覚上の定常状態応答を使用した聴力を客観的に評価するためのシステム及び方法 Expired - Lifetime JP4707920B2 (ja)

Applications Claiming Priority (7)

Application Number Priority Date Filing Date Title
US20546900P 2000-05-19 2000-05-19
US60/205,469 2000-05-19
US24799900P 2000-11-14 2000-11-14
US60/247,999 2000-11-14
US28738701P 2001-05-01 2001-05-01
US60/287,387 2001-05-01
PCT/CA2001/000715 WO2001087147A2 (en) 2000-05-19 2001-05-18 System and method for objective evaluation of hearing using auditory steady-state responses

Publications (3)

Publication Number Publication Date
JP2003533258A JP2003533258A (ja) 2003-11-11
JP2003533258A5 JP2003533258A5 (ja) 2008-01-31
JP4707920B2 true JP4707920B2 (ja) 2011-06-22

Family

ID=27394794

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2001583621A Expired - Lifetime JP4707920B2 (ja) 2000-05-19 2001-05-18 聴覚上の定常状態応答を使用した聴力を客観的に評価するためのシステム及び方法

Country Status (8)

Country Link
US (1) US6602202B2 (ja)
EP (1) EP1284647B1 (ja)
JP (1) JP4707920B2 (ja)
AT (1) ATE407622T1 (ja)
AU (1) AU2001261946A1 (ja)
CA (1) CA2409825C (ja)
DE (1) DE60135741D1 (ja)
WO (1) WO2001087147A2 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2013001836A1 (ja) * 2011-06-30 2013-01-03 パナソニック株式会社 不快閾値推定システム、方法およびそのプログラム、補聴器調整システムおよび不快閾値推定処理回路

Families Citing this family (119)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2001063495A2 (en) * 2000-02-24 2001-08-30 Craig Kowalchuk Targeted profitability system
US7399282B2 (en) * 2000-05-19 2008-07-15 Baycrest Center For Geriatric Care System and method for objective evaluation of hearing using auditory steady-state responses
US6885876B2 (en) * 2001-03-12 2005-04-26 Nokia Mobile Phones Ltd. Mobile phone featuring audio-modulated vibrotactile module
WO2002080618A1 (en) * 2001-03-30 2002-10-10 Leonhard Research A/S Noise suppression in measurement of a repetitive signal
CA2349041A1 (en) * 2001-05-28 2002-11-28 Alireza Karimi Ziarani System and method of extraction of sinusoids of time-varying characteristics
WO2002098291A2 (en) * 2001-06-07 2002-12-12 Stuerzebecher Ekkehard Method for hearing screening of newborn by means of steady state response evoked with high click rate
US7578795B2 (en) * 2001-08-07 2009-08-25 Diopsys, Inc. System and method for vision examination utilizing fault detection
US7149684B1 (en) * 2001-12-18 2006-12-12 The United States Of America As Represented By The Secretary Of The Army Determining speech reception threshold
US7143031B1 (en) * 2001-12-18 2006-11-28 The United States Of America As Represented By The Secretary Of The Army Determining speech intelligibility
US7223245B2 (en) * 2002-01-30 2007-05-29 Natus Medical, Inc. Method and apparatus for automatic non-cooperative frequency specific assessment of hearing impairment and fitting of hearing aids
US7922671B2 (en) * 2002-01-30 2011-04-12 Natus Medical Incorporated Method and apparatus for automatic non-cooperative frequency specific assessment of hearing impairment and fitting of hearing aids
CA2475368A1 (en) * 2002-02-08 2003-10-30 Michael Sasha John Rapid hearing screening and threshold evaluation
WO2004071280A2 (en) * 2003-02-07 2004-08-26 Michael Sasha John Rapid screening, threshold, and diagnostic tests for evaluation of hearing
AU2003218956A1 (en) * 2002-03-13 2003-09-22 Danmeter A/S Method of determining the quality of an aep (auditory evoked potential) signal
US6898461B2 (en) * 2002-04-23 2005-05-24 Medtronic, Inc. Implantable medical device stream processor
US7465277B2 (en) * 2002-05-23 2008-12-16 Tympany, Llc System and methods for conducting multiple diagnostic hearing tests
US20070135730A1 (en) * 2005-08-31 2007-06-14 Tympany, Inc. Interpretive Report in Automated Diagnostic Hearing Test
US7136492B2 (en) * 2002-07-11 2006-11-14 Phonak Ag Visual or audio playback of an audiogram
US6866639B2 (en) * 2002-09-23 2005-03-15 Everest Biomedical Instruments Handheld low voltage testing device
WO2004036376A2 (en) * 2002-10-15 2004-04-29 Medtronic Inc. Multi-modal operation of a medical device system
US7146211B2 (en) * 2002-10-15 2006-12-05 Medtronic, Inc. Signal quality monitoring and control for a medical device system
US8738136B2 (en) * 2002-10-15 2014-05-27 Medtronic, Inc. Clustering of recorded patient neurological activity to determine length of a neurological event
EP1558130A4 (en) * 2002-10-15 2009-01-28 Medtronic Inc SCREENING TECHNIQUES FOR THE TREATMENT OF A DISEASE OF THE NERVOUS SYSTEM
US7174206B2 (en) * 2002-10-15 2007-02-06 Medtronic, Inc. Signal quality monitoring and control for a medical device system
ATE537748T1 (de) 2002-10-15 2012-01-15 Medtronic Inc Medizinisches vorrichtungssystem zur bewertung von gemessenen neurologischen ereignissen
US7149572B2 (en) * 2002-10-15 2006-12-12 Medtronic, Inc. Phase shifting of neurological signals in a medical device system
WO2004034998A2 (en) 2002-10-15 2004-04-29 Medtronic Inc. Control of treatment therapy during start-up and during operation of a medical device system
US8543214B2 (en) 2002-10-15 2013-09-24 Medtronic, Inc. Configuring and testing treatment therapy parameters for a medical device system
WO2004037086A1 (de) * 2002-10-23 2004-05-06 Daimlerchrysler Ag Verfahren zur optimierung und erfassung von produktattraktivität oder produktakzeptanz durch beobachtung der gehirnaktivität
AU2004241099B2 (en) * 2003-05-15 2010-05-06 Tympany, Llc. Computer-assisted diagnostic hearing test
US20070106169A1 (en) * 2003-06-19 2007-05-10 Fadem Kalford C Method and system for an automated e.e.g. system for auditory evoked responses
US7435228B2 (en) * 2003-07-18 2008-10-14 Harris Corporation High fidelity hearing restoration
JP4764349B2 (ja) * 2003-11-28 2011-08-31 ジ・オーストラリアン・ナショナル・ユニバーシティー 対象の知覚神経系を評価するための刺激提示、応答測定方法および対象の知覚神経系を評価するための装置
EP1720447A4 (en) * 2004-02-13 2009-10-28 Georgia Tech Res Inst CONTROL WITH DISPLAY FOR SEARCH OF COMMOTIONS AND LIGHT BRAIN INJURY LESIONS
DK1611846T3 (en) * 2004-07-02 2016-02-15 Maico Diagnostic Gmbh Method of designing acoustic stimuli in the spectral range for the recording of Auditory Steady-State Responses (ASSR)
US7505902B2 (en) * 2004-07-28 2009-03-17 University Of Maryland Discrimination of components of audio signals based on multiscale spectro-temporal modulations
US7415305B2 (en) * 2004-10-01 2008-08-19 The Trustees Of Columbia University In The City Of New York Method for the spatial mapping of functional brain electrical activity
DE102004052305A1 (de) * 2004-10-28 2006-05-04 Universitätsklinikum Hamburg-Eppendorf Verfahren zum Betreiben einer Auswertungseinrichtung sowie Vorrichtung zur Messung einer Narkosetiefe
US20060161075A1 (en) * 2004-11-22 2006-07-20 Vivosonic Inc. Method and system for modulating a steady state stimulus
US8027732B2 (en) * 2005-02-15 2011-09-27 Advanced Bionics, Llc Integrated phase-shift power control transmitter for use with implantable device and method for use of the same
EP1865843A2 (en) 2005-03-16 2007-12-19 Sonicom, Inc. Test battery system and method for assessment of auditory function
US7818052B2 (en) * 2005-06-01 2010-10-19 Advanced Bionics, Llc Methods and systems for automatically identifying whether a neural recording signal includes a neural response signal
US20060276720A1 (en) * 2005-06-03 2006-12-07 Mcginnis William C Method of using dermatomal somatosensory evoked potentials in real-time for surgical and clinical management
US7704216B2 (en) * 2005-08-24 2010-04-27 Audiology Incorporated Method for assessing the accuracy of test results
EP1931241A4 (en) * 2005-08-31 2011-11-09 Tympany Llc STENGER SCREENING IN AN AUTOMATIC DIAGNOSTIC HEARING TEST
CN100341462C (zh) * 2005-10-20 2007-10-10 上海交通大学 双耳交替刺激的脑干听觉诱发电位描记装置
US20070195963A1 (en) * 2006-02-21 2007-08-23 Nokia Corporation Measuring ear biometrics for sound optimization
US20090163828A1 (en) * 2006-05-16 2009-06-25 Board Of Trustees Of Southern Illinois University Tinnitus Testing Device and Method
US8088077B2 (en) * 2006-05-16 2012-01-03 Board Of Trustees Of Southern Illinois University Tinnitus testing device and method
EP2046199A4 (en) * 2006-07-12 2010-06-16 Univ Queensland METHOD FOR ACQUIRING PHYSIOLOGICAL RESPONSE
FR2905548B1 (fr) * 2006-09-06 2012-10-19 Spidcom Technologies Procede et equipement pour la transmission d'un signal par filtrage dans une bande miroir;
KR100839109B1 (ko) * 2006-09-20 2008-06-19 [주]이어로직코리아 타각적 자동청력검사 방법 및 그 장치
WO2008038650A1 (fr) * 2006-09-27 2008-04-03 National University Corporation Chiba University Dispositif et système d'inspection du potentiel évoqué
JP4982573B2 (ja) * 2007-03-23 2012-07-25 ヴェーデクス・アクティーセルスカプ 個人の聴力の他覚的測定システムおよび方法
DE102007029224A1 (de) * 2007-06-22 2009-01-08 Petra Bauersachs Altersbestimmung durch Tonhöhen
US8027737B2 (en) * 2007-08-01 2011-09-27 Intelect Medical, Inc. Lead extension with input capabilities
US20090248085A1 (en) * 2008-03-31 2009-10-01 Cochlear Limited Tissue injection fixation system for a prosthetic device
US8144909B2 (en) * 2008-08-12 2012-03-27 Cochlear Limited Customization of bone conduction hearing devices
JP5219202B2 (ja) * 2008-10-02 2013-06-26 学校法人金沢工業大学 音信号処理装置、ヘッドホン装置および音信号処理方法
JP4638558B2 (ja) * 2008-12-22 2011-02-23 パナソニック株式会社 語音明瞭度評価システム、その方法およびそのコンピュータプログラム
US8391966B2 (en) * 2009-03-16 2013-03-05 Neurosky, Inc. Sensory-evoked potential (SEP) classification/detection in the time domain
US8155736B2 (en) * 2009-03-16 2012-04-10 Neurosky, Inc. EEG control of devices using sensory evoked potentials
DK2238899T3 (da) * 2009-04-06 2017-01-02 Gn Resound As Effektiv bedømmelse af høreevne
CN102202570B (zh) * 2009-07-03 2014-04-16 松下电器产业株式会社 语音清晰度评价系统、其方法
CN102265335B (zh) * 2009-07-03 2013-11-06 松下电器产业株式会社 助听器的调整装置和方法
US20110301486A1 (en) * 2010-06-03 2011-12-08 Cordial Medical Europe Measurement of auditory evoked responses
CN102781322B (zh) * 2010-06-11 2015-02-25 松下电器产业株式会社 语音听取的评价系统、及方法
WO2011155197A1 (ja) * 2010-06-11 2011-12-15 パナソニック株式会社 聴力判定システム、その方法およびそのプログラム
JP5144835B2 (ja) * 2010-11-24 2013-02-13 パナソニック株式会社 うるささ判定システム、装置、方法およびプログラム
JP5042398B1 (ja) * 2011-02-10 2012-10-03 パナソニック株式会社 脳波記録装置、補聴器、脳波記録方法およびそのプログラム
ES2396811B1 (es) * 2011-03-10 2014-01-27 Universidad De Granada Procedimiento y sistema para la comunicación con sujetos en estado de consciencia disminuida.
US9479879B2 (en) 2011-03-23 2016-10-25 Cochlear Limited Fitting of hearing devices
JP5603281B2 (ja) * 2011-04-04 2014-10-08 パナソニック株式会社 聴覚検査装置、方法およびコンピュータプログラム、補聴器調整システム
CN103081516A (zh) * 2011-06-30 2013-05-01 松下电器产业株式会社 不舒适声压决定系统、方法及其程序、助听器调整系统及不舒适声压决定装置
DK2740279T3 (da) * 2011-08-03 2021-10-04 T&W Eng A/S Høreapparat med selvtilpassende egenskaber
CN103313654B (zh) * 2011-10-18 2015-09-23 松下电器产业株式会社 不适声压推测系统、不适声压推测装置及不适声压推测方法
US9055927B2 (en) * 2011-11-25 2015-06-16 Persyst Development Corporation User interface for artifact removal in an EEG
US20140012151A1 (en) * 2012-07-06 2014-01-09 Persyst Development Corporation Method And System For Displaying EEG Data
DE102011122025A1 (de) * 2011-12-22 2013-06-27 Universitätsklinikum Hamburg-Eppendorf Vorrichtung und System zur Bestimmung von Gehirnaktivitäten
KR101368927B1 (ko) * 2012-01-03 2014-02-28 (주)가온다 오디오 신호 출력 방법 및 장치, 오디오 신호의 볼륨 조정 방법
US9339216B2 (en) 2012-04-13 2016-05-17 The United States Of America As Represented By The Department Of Veterans Affairs Systems and methods for the screening and monitoring of inner ear function
WO2013161189A1 (ja) * 2012-04-24 2013-10-31 パナソニック株式会社 補聴器利得決定システム、補聴器利得決定方法、およびコンピュータプログラム
EP2874534B1 (en) * 2012-07-20 2024-05-29 Diopsys, Inc. Signal data extraction method and apparatus
WO2014049979A1 (ja) * 2012-09-27 2014-04-03 パナソニック株式会社 不快音圧評価システム、不快音圧評価装置、不快音圧調整装置、不快音圧評価方法およびそのコンピュータプログラム
US9471731B2 (en) * 2012-10-30 2016-10-18 The Boeing Company Electrical power system stability optimization system
JP6052998B2 (ja) * 2013-03-01 2016-12-27 リオン株式会社 聴覚の時間分解能測定装置とその方法
US10028703B2 (en) 2013-07-30 2018-07-24 Emotiv, Inc. Wearable system for detecting and measuring biosignals
US20150257683A1 (en) * 2014-03-13 2015-09-17 Audiology-Online Ltd Apparatus for testing hearing
WO2016011189A1 (en) 2014-07-15 2016-01-21 The Regents Of The University Of California Frequency-multiplexed speech-sound stimuli for hierarchical neural characterization of speech processing
WO2016044942A1 (en) * 2014-09-24 2016-03-31 Vivosonic Inc. (Legal-Representative Of Deceased) System, method and apparatus for detecting an evoked response signal
US9787274B2 (en) * 2014-10-20 2017-10-10 Harman International Industries, Incorporated Automatic sound equalization device
US20160188827A1 (en) * 2014-12-30 2016-06-30 General Electric Company Hybrid Signal Acquisition And System For Combined Electroencephalography And Cardiac Electrophysiology Studies
US10108264B2 (en) 2015-03-02 2018-10-23 Emotiv, Inc. System and method for embedded cognitive state metric system
US20180035925A1 (en) * 2015-03-03 2018-02-08 Sonova Ag Method For Hearing Performance Assessment and Hearing System
US10299705B2 (en) * 2015-06-15 2019-05-28 Centre For Development Of Advanced Computing Method and device for estimating sound recognition score (SRS) of a subject
WO2017108435A1 (en) * 2015-12-22 2017-06-29 Widex A/S Method of fitting a hearing aid system, a hearing aid fitting system and a computerized device
EP3414923A1 (en) * 2016-02-11 2018-12-19 Widex A/S Method of fitting a hearing aid system capable of detecting auditory neuro-synaptopathy, a hearing aid fitting system and a computerized device
EP3423150B1 (en) * 2016-02-29 2021-05-19 Advanced Bionics AG Systems for using an evoked response to determine a behavioral audiogram value
WO2018042282A1 (en) * 2016-08-30 2018-03-08 Ramot At Tel-Aviv University Ltd. Localizing electrical activity in the brain using vibration of the cerebral cortex
US10849526B1 (en) * 2016-10-13 2020-12-01 University Of South Florida System and method for bio-inspired filter banks for a brain-computer interface
EP3311741B1 (en) * 2016-10-19 2019-10-16 Mimi Hearing Technologies GmbH Method for accurately estimating a pure tone threshold using an unreferenced audio-system
WO2018148253A1 (en) * 2017-02-08 2018-08-16 Forest Devices, Inc. Portable device for providing non-contact heat-evoked potentials
EP3684463A4 (en) 2017-09-19 2021-06-23 Neuroenhancement Lab, LLC NEURO-ACTIVATION PROCESS AND APPARATUS
US11717686B2 (en) 2017-12-04 2023-08-08 Neuroenhancement Lab, LLC Method and apparatus for neuroenhancement to facilitate learning and performance
EP3731749A4 (en) 2017-12-31 2022-07-27 Neuroenhancement Lab, LLC NEURO-ACTIVATION SYSTEM AND METHOD FOR ENHANCING EMOTIONAL RESPONSE
US11364361B2 (en) 2018-04-20 2022-06-21 Neuroenhancement Lab, LLC System and method for inducing sleep by transplanting mental states
DK3588984T3 (da) * 2018-06-29 2022-07-04 Interacoustics As System til validering af høreapparater til spædbørn, der anvender et talesignal
CA3112564A1 (en) 2018-09-14 2020-03-19 Neuroenhancement Lab, LLC System and method of improving sleep
US11205414B2 (en) * 2019-02-15 2021-12-21 Brainfm, Inc. Noninvasive neural stimulation through audio
US11786694B2 (en) 2019-05-24 2023-10-17 NeuroLight, Inc. Device, method, and app for facilitating sleep
US11432746B2 (en) 2019-07-15 2022-09-06 International Business Machines Corporation Method and system for detecting hearing impairment
JP6729923B1 (ja) * 2020-01-15 2020-07-29 株式会社エクサウィザーズ 難聴判定装置、難聴判定システム、コンピュータプログラム及び認知機能レベル補正方法
CN113288127B (zh) * 2021-04-12 2023-07-25 中国人民解放军总医院第六医学中心 一种基于时频调制察觉阈的听力检测装置及检测方法
US11957467B2 (en) 2021-07-02 2024-04-16 Brainfm, Inc. Neural stimulation through audio with dynamic modulation characteristics
US11392345B1 (en) 2021-12-20 2022-07-19 Brainfm, Inc. Extending audio tracks while avoiding audio discontinuities
US11966661B2 (en) 2021-10-19 2024-04-23 Brainfm, Inc. Audio content serving and creation based on modulation characteristics
EP4380437A1 (en) * 2021-08-05 2024-06-12 Phoeb-X, Inc. Multi-sensory, assistive wearable technology, and method of providing sensory relief using same
US20230059333A1 (en) * 2021-08-18 2023-02-23 Cirrus Logic International Semiconductor Ltd. Haptics signal generation
NL2029113B1 (en) 2021-09-02 2023-03-20 Mindaffect B V Determining a person's sensory capability based on stimulus response amplitude weights

Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO1997004704A1 (en) * 1995-08-01 1997-02-13 Sonamed Corporation Audiometric apparatus and associated screening method

Family Cites Families (23)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US4321427A (en) 1979-09-18 1982-03-23 Sadanand Singh Apparatus and method for audiometric assessment
US4275744A (en) 1979-11-19 1981-06-30 Wisconsin Alumni Research Foundation Auditory response detection method and apparatus
US4462411A (en) * 1981-01-07 1984-07-31 The University Of Melbourne Evoked response audiometer
US4561449A (en) 1982-11-30 1985-12-31 Minnesota Mining And Manufacturing Company Auditory-evoked-action-potential-measuring system
US4556069A (en) 1983-03-15 1985-12-03 Energy Optics, Inc. Method and apparatus for measuring differential auditory system
JPS59225039A (ja) * 1983-06-06 1984-12-18 石原 恒 オ−ジオメ−タ
US5699809A (en) 1985-11-17 1997-12-23 Mdi Instruments, Inc. Device and process for generating and measuring the shape of an acoustic reflectance curve of an ear
US4913160A (en) 1987-09-30 1990-04-03 New York University Electroencephalographic system and method using factor structure of the evoked potentials
NZ226959A (en) * 1987-11-11 1990-07-26 Univ Melbourne Evoked response audiometer: determining locking of brain signals to audio stimulus
US5105822A (en) 1988-02-16 1992-04-21 Sensimetrics Corporation Apparatus for and method of performing high frequency audiometry
US4901353A (en) 1988-05-10 1990-02-13 Minnesota Mining And Manufacturing Company Auditory prosthesis fitting using vectors
US4953112A (en) 1988-05-10 1990-08-28 Minnesota Mining And Manufacturing Company Method and apparatus for determining acoustic parameters of an auditory prosthesis using software model
IL99946A (en) 1991-11-03 1995-12-31 Or Gil Computerized Medical Sy Apparatus for determination of auditory threshold to intelligible speech
US5267571A (en) 1992-04-08 1993-12-07 Sensimetrics Corporation Method for testing adequacy of human hearing
US5230344A (en) 1992-07-31 1993-07-27 Intelligent Hearing Systems Corp. Evoked potential processing system with spectral averaging, adaptive averaging, two dimensional filters, electrode configuration and method therefor
US5825894A (en) 1994-08-17 1998-10-20 Decibel Instruments, Inc. Spatialization for hearing evaluation
US5697379A (en) * 1995-06-21 1997-12-16 Neely; Stephen T. Method and apparatus for objective and automated analysis of auditory brainstem response to determine hearing capacity
DE19548982A1 (de) 1995-12-28 1997-07-03 Pilot Blankenfelde Medizinisch Verfahren zur automatischen Hörschwellenbestimmung, insbesondere bei Neugeborenen und Kleinkindern
US5792073A (en) * 1996-01-23 1998-08-11 Boys Town National Research Hospital System and method for acoustic response measurement in the ear canal
DE29615656U1 (de) 1996-09-07 1997-01-02 Finkenzeller, Peter, Prof. Dr.rer.nat., 91054 Erlangen Gerät zur Ableitung akustisch evozierter Gehirnpotentiale
US5999856A (en) 1997-02-21 1999-12-07 St. Croix Medical, Inc. Implantable hearing assistance system with calibration and auditory response testing
AUPP313798A0 (en) 1998-04-22 1998-05-14 University Of Melbourne, The Improved evoked response audiometer
US6110126A (en) 1998-12-17 2000-08-29 Zoth; Peter Audiological screening method and apparatus

Patent Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO1997004704A1 (en) * 1995-08-01 1997-02-13 Sonamed Corporation Audiometric apparatus and associated screening method

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2013001836A1 (ja) * 2011-06-30 2013-01-03 パナソニック株式会社 不快閾値推定システム、方法およびそのプログラム、補聴器調整システムおよび不快閾値推定処理回路

Also Published As

Publication number Publication date
AU2001261946A1 (en) 2001-11-26
JP2003533258A (ja) 2003-11-11
DE60135741D1 (de) 2008-10-23
US20010049480A1 (en) 2001-12-06
CA2409825C (en) 2009-06-23
WO2001087147A2 (en) 2001-11-22
EP1284647B1 (en) 2008-09-10
EP1284647A2 (en) 2003-02-26
WO2001087147A3 (en) 2002-03-14
CA2409825A1 (en) 2001-11-22
ATE407622T1 (de) 2008-09-15
US6602202B2 (en) 2003-08-05

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4707920B2 (ja) 聴覚上の定常状態応答を使用した聴力を客観的に評価するためのシステム及び方法
US7399282B2 (en) System and method for objective evaluation of hearing using auditory steady-state responses
JP5580943B2 (ja) 電極妥当性検証を備える個人用eegモニタリング装置
US8177726B2 (en) Rapid screening, threshold, and diagnostic tests for evaluation of hearing
Blumenthal et al. Committee report: Guidelines for human startle eyeblink electromyographic studies
RU2481789C2 (ru) Способ и устройство для объективного обнаружения нарушений слуха
US8065017B2 (en) Method and apparatus for obtaining and registering an Electrical Cochlear Response (“ECR”)
JP2001231768A (ja) 患者接続の判定能力を備えた聴力判定装置
Colon et al. Evoked potential manual: a practical guide to clinical applications
WO2018154289A2 (en) System, method, computer program and computer program product for detecting a change in hearing response
Mertes et al. Concurrent measures of contralateral suppression of transient-evoked otoacoustic emissions and of auditory steady-state responses
Griffiths et al. The amplitude modulation-following response as an audiometric tool
Kapul et al. Pure-tone audiometer
Jennings et al. Middle ear muscle and medial olivocochlear activity inferred from individual human ears via cochlear potentials
Felix et al. Avoiding spectral leakage in objective detection of auditory steady-state evoked responses in the inferior colliculus of rat using coherence
Baljić et al. Evaluation of optimal masking levels in place-specific low-frequency chirp-evoked auditory brainstem responses
Almohammad et al. Auditory nerve phase-locked response recorded from normal hearing adults using electrocochleography
Stoody et al. 2 Basic Instrumentation, Acquisition, and Recording Considerations
WO2021156465A1 (en) Method and system for determining the integrity of auditory nerve fibers and synapses
Larsby et al. A system for recording of auditory evoked responses
CA2475368A1 (en) Rapid hearing screening and threshold evaluation
Join et al. Short Latency Auditory Evoked Potentials
Small et al. Physiological Mechanisms Underlying ASSRs
US20150351657A1 (en) Method And System For Monitoring Depth Of Anaesthesia And Sensory Functioning

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20071129

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20071129

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20100916

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20100928

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20101224

RD13 Notification of appointment of power of sub attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7433

Effective date: 20101224

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20101224

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20110222

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20110316

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 4707920

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

EXPY Cancellation because of completion of term