図1Aには、本発明の実施例1であるエッチング方法を使用するエッチング装置の構成を示している。本実施例では、ICPプラズマエッチング装置の一例を示している。
図1Aにおいて、5は基板処理反応室であり、ガスが導入されていない状態では10−5Pa程度の高い真空状態を実現できる。この基板処理反応室1の上部には、ガス導入口9が設けられており、該ガス導入口9を通じてガス供給部41からのエッチングガス、保護膜生成ガス(パッシベーションガス)およびパージガスを基板処理反応室5内に導入できる。ガス供給部41内には、図示しないが、各ガスに対応した電磁バルブ等、各ガスの供給、遮断および供給流量(供給圧力)を制御する部材が設けられている。
また、基板処理反応室5の上部には、該基板処理反応室5の外周部に配置されたアンテナコイル6が設けられている。このアンテナコイル6には、例えば13.56MHzのプラズマソース用高周波電源7が接続されており、加工する寸法や形状によって異なるが、例えばピーク電力が1〜3kWである高周波電力がインピーダンスマッチング回路8を経由してアンテナコイル6に印加される。
後述するように、ガス供給部41からは、エッチングガスとしてのSF6が100〜700sccm(standard cc/min)の流量で、また保護膜生成ガスとしてのC4F8が50〜400sccmの流量で、それぞれ順に切り換えられて基板処理反応室5に供給される。この切り換え制御は、コントローラ42により行われる。一方、パージガスとしてのヘリウム(He)、アルゴン(Ar)、クリプトンガス(Kr)、キセノンガス(Xe)又は窒素(N2)が、50〜400sccmの流量で、後述するエッチング工程(第1の工程)、保護膜生成工程(第2の工程)およびパージ工程(第3の工程)を通じて常時連続して供給される。なお、本発明において、各ガスの具体的な成分はこれらに限られない。
基板処理反応室5内に導入されたエッチングガスが高周波電源7およびアンテナコイル6からのエネルギーによって励起されることにより、プラズマが発生する。これにより、エッチングガス内には、イオン(SFx)および励起反応種Fラジカルが発生する。また、保護膜生成ガス内には、基板表面に付着してパッシベーション層としての保護膜を形成するポリマーイオン(CxFy)が発生する。さらに、パージガス内には、該ガスの活性種やイオンが発生する。
基板処理反応室5内の下部には、被処理物であるシリコン基板12を保持するための基板ホルダー11が配置されており、その内部には電極13が設けられている。電極13と基板処理反応室5との間には、インピーダンスマッチング回路15を経由してバイアス用高周波電源14から、例えば13.56MHzでピーク電力が5〜500wの高周波電力が印加される。これにより、基板処理反応室5の上部空間にて発生し、該反応室5のほぼ全体に拡散しているイオンや活性種が基板12側に加速運動する。
そして、それらのイオンや活性種は、最終的に基板12の表面に到達し、基板12をエッチングしたり、エッチングされた溝や穴等のエッチング部の側壁やボトムに保護膜を生成したりする。
エッチング部に保護膜が生成された後に処理室5内に存在するパージガスは、該エッチング部内から残留した保護膜生成ガスを排除したり減少させたりする作用を持つ。これにより、保護膜に欠陥や変質が発生するのを抑制できる。
ここで、本実施例で説明するエッチング方法は、それぞれ数秒間のエッチング工程と保護膜生成工程とを繰り返しながら異方性エッチング形成するものである。このようなエッチング方法では、エッチングされた溝や穴の側壁に、波状の繰り返し模様(通称、スキャロップと称される)が深さ方向に現れる。
このような模様は、細かければ細かいほど好ましく、無くすることが理想的である。スキャロップを細かくするため若しくは無くするためには、エッチング工程と保護膜工程のそれぞれの時間を短くすればよい。例えば、エッチング工程を3秒、保護膜生成工程を1秒、パージ工程を0.5秒というように設定すればよい。
しかしながら、ガス流量を一定量に制御する手段として一般に使用される流量制御機能付き電磁弁(マスフローコントローラ)では、1秒以下の短い時間での正確な流量制御は難しい。したがって、パージ工程でのパージガス流量が不安定になるおそれがある。そして。パージガス流量が不安定であると、エッチング部の側壁に形成される保護膜に生じる欠陥や変質を低減させるパージ効果が十分に得られない。
このため、本実施例では、エッチング工程、保護膜生成工程およびパージ工程を通じて一定の流量のパージガスを常時、基板処理反応室5に供給する。この方法によれば、パージ工程を1秒以下の短い時間に設定しても、パージガス流量自体の不安定さが生じない。これにより、パージ工程でのみパージガスを供給する場合に比較して、パージ効果を低下させることなく、スキャロップを細かくすることができる。
さらに、本実施例によれは、エッチング速度の低下も回避できる。パージ工程を1秒以上に設定すればパージガス流量を安定させることができるので、十分なパージ効果を得ることは可能である。しかし、エッチング工程、保護膜生成工程およびパージ工程からなるエッチング処理内でのパージ工程の時間比率が上昇する。言い換えれば、該エッチング処理内でのエッチング工程の時間比率が下降する。例えば、前述したように、エッチング工程が3秒、保護膜生成工程が1秒、パージ工程が0.5秒である場合には、エッチング工程の時間比率が67%であるのに対して、パージ工程が1秒になると、エッチング工程の時間比率が60%まで下降する。したがって、全体としてのエッチング速度(加工速度、つまりはスループット)を7%も低下させてしまうことになる。
この点、本実施例によれば、パージガス流量の不安定さを生じさせずにパージ工程を例えば0.5秒に設定することができるので、全体としてのエッチング速度の低下を回避できる。本実施例では、エッチングガスおよび保護膜生成ガスの圧力を、常時供給するパージガスの圧力分だけ高めに設定する。
図1Bには、上述した本実施例のエッチング装置における1枚の基板12(但し、複数の基板を同時に処理してもよい)に対する一連のエッチング処理の流れを示している。
ステップ(図では「S」と略す:他のフローチャートについても同じ)1では、基板12を基板ホルダー11上に配置し、その後で基板処理反応室5内からの真空排気を行い、上述したように10−5Pa程度の真空状態とする。
ステップ2では、エッチング工程、保護膜生成工程およびパージ工程を通じて連続して供給するパージガスの供給を開始し、不図示の圧力センサの出力をモニターしながらパージガスの圧力を所定値に維持する。
次に、ステップ3では、基板処理反応室5内にエッチングガスを導入し、ステップ2と同様に圧力センサの出力をモニターしながらパージガス圧とエッチングガス圧が重合された圧力を所定値に維持した状態で上述したようにプラズマを発生させ、所定時間、基板12に対するエッチングを行う(第1の工程であるエッチング工程)。
エッチング工程が終了すると、エッチングガスの供給を遮断し、次にステップ4にて、基板処理反応室5内に保護膜生成ガスを導入して、パージガス圧と保護膜生成ガス圧が重合された圧力を所定値に維持した状態で、基板12におけるエッチング部に保護膜を生成する(第2の工程である保護膜生成工程)。
所定時間の保護膜生成工程が終了すると、保護膜生成ガスの供給を遮断し、次にステップ5にて、基板処理反応室5内に常時連続して供給されているパージガスによってエッチング部内に残留した保護膜生成ガスを除去又は減少させる(第3の工程であるパージ工程)。
そして、所定時間のパージ工程が終了すると、ステップ6にて今回のプロセスサイクル(1回のエッチング工程〜パージ工程までを1プロセスサイクルとする)が所定のn回目であったか否かを判別し、まだn回目でなければステップ2に戻り、次回のプロセスサイクルを繰り返す。
一方、n回目のプロセスサイクルが終了した場合は、ステップ7へ進み、パージガスの供給を停止する。
次に、ステップ8に進み、基板処理反応室5内において気化したエッチング生成物や余分なガスが基板処理反応室5の下部に設けられたガス排出口10から外部へ排出される。こうして一連のエッチング処理を終了する。
図2には、コントローラ42の制御による、基板処理反応室5内に導入されるガスの時間的な切り換えの様子を示している。図2の縦軸は導入される各ガスの基板処理反応室5内での圧力(以下、これを導入圧力といい、供給圧力と同義である)を示し、横軸は時間を示している。
図2において、1はエッチングガスの導入圧力(本実施例では、設定圧をP1とする)と導入タイミングを示している。2は保護膜生成ガスの導入圧力(本実施例では、設定圧をP2とする)と導入タイミングを示している。3はパージガスの導入圧力(本実施例では、設定圧をP3とする)と導入タイミングを示している。具体的な圧力値は、加工の寸法や形状により異なるが、例えば、エッチングガスについては1〜30Pa、保護膜生成ガス2については0.5〜18Pa、パージガスについては0.5〜17Paを使用する。但し、保護膜生成ガスの圧力をエッチングガスの圧力よりも低く、パージガスの圧力を保護膜生成ガスの圧力よりも低く設定するのが望ましい。
さらに、4は基板処理反応室5内でのエッチングガス、保護膜生成ガスおよびパージガスの合成圧力の変化を示している。エッチング工程中の圧力はP1+P2、保護膜生成工程中の圧力はP2+P3、パージ工程中の圧力はP3に変化する。
本実施例では、時間(期間)t1であるエッチングガスの導入時間の後であって、時間t2である保護膜生成ガスの導入時間の完了直後に、該t1,t2に比較して短い時間t3の間エッチンガスおよび保護膜生成ガスの両方とも供給しない時間を設ける。言い換えれば、時間t1でのエッチング工程が終了した後の時間t2での保護膜生成工程の後、次のエッチング工程の前に時間t3でパージ効果が発揮されるパージ工程を設ける。
具体的なガス導入時間およびパージ工程の時間は、t1については1〜12秒、t2については1〜3秒、t3については0.5〜3秒の範囲に設定する。なお、導入時間は供給時間と同義である。
ここで、経験的に、20μm以上あるいはアスペクト比が5以上の深い溝あるいは穴を加工する場合に、保護膜生成ガスが該溝又は穴内の空間に残っている状態でエッチングガスが導入されると、該空間で必要以上のフッ素ラジカルが生じる期待しない反応(異常反応と同義)が発生し、保護膜の形状や質を著しく悪化させることが分かっている。図6には、保護膜生成ガスが溝内空間に残っている状態でエッチングガスが導入された場合に、溝の側壁に発生した欠陥を示すSEM(Scanning Electron Microscopy)写真を示している。図中にいくつか黒い斑点状に見えるものDが、保護膜に生じた欠陥である。
本実施例では、ヘリウムガス、アルゴンガス、キセノンガス、クリプトンガスあるいは窒素ガスをパージガスとして導入することで、これらのパージガスはプラズマ下でイオンあるいは活性種を発生し得るが、エッチング部内の空間に残留する保護膜生成ガスを取り除く又は減少させる作用を有し、結果として上記異常反応の発生を抑制できる。特に、エッチング深さが20μm以上あるいはアスペクト比が5以上の深い溝あるいは穴等を加工する場合に、本実施例(および後述する他の実施例)は有効である。
なお、酸素ガスについても同様なパージ効果を有するが、その反面、プラズマ下で発生する酸素ラジカルの保護膜へのエッチング(除去)効果が高い。このため、エッチング部の側壁に形成した保護膜を除去し過ぎて、シリコン基材を露出させてしまう可能性がある。この結果、望まずして露出したシリコン側壁が次のエッチング工程で削られ、エッチング部の溝や穴の形状が垂直形状にならず、途中が膨らんだ樽状等の異形状になるおそれがある。特に、深さが100μmを超えるアスペクト比20以上の深い溝或いは穴を加工する場合に、このような異形状が発生し易い。したがって、本実施例において、酸素ガスをパージガスとして用いる場合は注意が必要である。図3のフローチャートには、本実施例のエッチング方法(処理)を実行するためのコントローラ42によるガス供給制御の手順を示している。該制御は、コントローラ42に格納された制御用コンピュータプログラムに従って実行される。このことは以下の実施例でも同様である。
まず、ステップ1201では、コントローラ42は、エッチング処理のプロセスサイクル数Cycleを1に初期設定する。次に、ステップ1202では、ガス供給部41を制御してパージガスの導入を開始(オン)する。ステップ1203では、1プロセスサイクル内でのプロセスステップ数(エッチング工程を1、保護膜生成工程を2、パージ工程を3とし、3に達すると1に戻る)を0に初期設定する。
次に、ステップ1204では、プロセスステップ数を1インクリメントし、さらにステップ1205では、該ステップ数を判別する。該ステップ数が1である場合はステップ1211に、ステップ数が2である場合はステップ1221に、ステップ数が3である場合はステップ1231に進む。
ステップ1211では、エッチング工程を行うためにガス供給部41からのエッチングガスの導入を開始(オン)する。そして、ステップ1212において、エッチングガスの導入時間タイマーを時間t1に設定し、ステップ1213,1214で該導入時間が時間t1に達する(すなわち、エッチング工程が終了する)と、ステップ1215に進み、ガス供給部41からのエッチングガスの導入を遮断(オフ)する。そして、ステップ1204に戻る。
ここで、ステップ1214においてはタイマーを所定時間ずつデクリメントし、ステップ1213でタイマーが0になったときにステップ1215に進むが、デクリメントする所定時間は、整数秒単位でもよいし、小数点以下の秒を含む単位でもよい。このことは、他のガスの導入時間タイマーにおいても同様である。ステップ1221では、保護膜生成工程を行うためにガス供給部41からの保護膜生成ガスの導入を開始(オン)する。そして、ステップ1222において、保護膜生成ガスの導入時間タイマーを時間t2に設定する。ステップ1223、1224で該導入時間が時間t2に達する(すなわち、保護膜生成工程が終了する)と、ステップ1215に進み、ガス供給部41からの保護膜生成ガスの導入を遮断(オフ)する。この時点から、常時供給されているパージガスの分圧が上昇し始める。
ステップ1231では、エッチングガスと保護膜生成ガスの両方の導入を遮断しておくパージ工程時間のタイマーを時間t3に設定する。これにより、パージ工程が開始され、該エッチング部近傍に残留している保護膜生成ガスに対するパージ効果が出始める。
ステップ1232とステップ1233でパージ工程時間が時間t3に達すると、ステップ1206に進む。ステップ1206では、プロセスサイクル数を1インクリメントし、ステップ1207においてプロセスサイクル数が所定数nに達していない場合は、ステップ1203に戻る。このとき、次のステップ1204でプロセスステップ数は1となるので、ステップ1205からステップ1211に進み、再びエッチングガスの導入をオンして次のプロセスサイクルのエッチング工程を開始する。
こうしてステップ1207においてプロセスサイクル数が所定数nに達すると、ステップ1208に進み、パージガスをオフして、一連のエッチング処理を終了する。
エッチング工程、保護膜生成工程およびパージ工程からなる1プロセスサイクルの時間は、概ね2〜15秒である。また、基板1枚に対する全エッチング加工時間は、その材料や形状若しくはエッチング深さによって異なるが、例えばシリコン基板に100μmの深さの溝又は穴をエッチングする場合は、5〜10分である。
ここで、図4は、パージガスを使用しない場合のガス圧力を示している。すなわち、基板処理反応室5からの排気のみで保護膜生成ガスの残留分をエッチング部内から取り除く従来の方法を実施した場合の基板処理反応室5内の圧力を示している。21はエッチングガスの導入圧力と導入タイミングを、22は保護膜生成ガスの導入圧力と導入タイミングを、23はこれらの合成圧力を示している。具体的な各ガスの圧力値は、図2と同様に、エッチングガスについては1〜30Pa、保護膜生成ガスについては0.5〜18Paである。
この従来方法でも、保護膜生成ガスの排気時間を十分長くすることにより、エッチング部の側壁に形成された保護膜の欠陥を回避することは可能である。しかし、保護膜生成ガスの排気時間が長くなることによりスループットが低下したり、基板処理反応室5内のプラズマが一旦消失してしまうことによりエッチングや保護膜生成プロセスの不安定さを招くおそれが生じたりするので好ましくない。したがって、スループットを向上させ、プラズマの消失を防止するために、プラズマ発生に必要なガスが常に基板処理反応室5内に存在し、連続してプラズマソース用高周波電力による励起を行う必要がある。
この点、本実施例では、この従来方法と異なり、一連のエッチング処理中は基板処理反応室5内に常時パージガスが導入されているので、プラズマが不安定になることがない。
また、別の方法を図5に示す。これは一連のエッチング処理で、パージガスを切れ目なく連続して導入するのではなく、パージ工程においてのみパージガスを導入する方法である。24はエッチングガスの導入圧力と導入タイミングを示している。25は保護膜生成ガスの導入圧力と導入タイミングを示している。26はパージガスの導入圧力と導入タイミングを示している。さらに、27は基板処理反応室5内でのエッチングガス、保護膜生成ガスおよびパージガスの合成圧力の変化を示している。
本方法によれば、短時間のパージ工程を設けることにより、スループットを低下させることなく十分なパージ効果を得ることができる。但し、前述したように、1秒以下での正確なパージガス流量制御が現状の流量制御機能付き電磁弁では難しく、また3種類のガスの順次オン・オフを制御するプロセスレシピを組む必要があり、プロセスが煩雑になるという課題が残る。
この点、本実施例の方法では、パージガスは一連のエッチング処理開始時にオンし、終了時にオフするだけなので、1秒以下での正確なパージガス流量制御が不要となり、また2種類のガスの順次オン・オフを制御するだけで済み、プロセスレシピが簡単で最適化調整もし易いというメリットがある。
さらに、本実施例のメリットについて説明する。エッチング部の側壁に発生するスキャロップを細かくするために、図5の方法における3つの工程時間を短縮する。図13は、特に、パージ工程が1秒以下と短くなった場合の基板処理反応室内のガス圧とガス制御信号との関係を表している。30はエッチングガスのオン・オフ制御信号で、31はエッチングガス圧を示す。32は保護膜生成ガスのオン・オフ制御信号で、33は保護膜生成ガス圧を示す。34はパージガスのオン・オフ制御信号で、35はパージガス圧を示している。36は基板処理反応室内の合成ガス圧を示している。
実際のガスフローによるガス圧は図13中の31,33,35,36に示すように、過渡的な挙動を示す。このため、それぞれのガスの切り換わりタイミングでは混合ガス状態となり、切り換わり前後で何れのガス分圧が大きいかによってどちらの工程になるかが定まる。その様子を合成ガス圧に基づいて示すと、時間t10がパージ工程、時間t11がエッチング工程、時間t12が保護膜生成工程となり、各工程と制御の切り換わりタイミングとの間に若干のずれが生じる。
ここで、パージ工程に着目すると、Aで示す保護膜生成ガスがオフとなった後の過渡的領域と、Bで示すパージガスがオンとなった後の過渡的領域との重なりにより、保護膜生成工程からパージ工程へ移行するが、双方のガス圧が過渡的に変化する非安定領域であるため、t10およびパージガス圧p10の不安定さを免れ得ない。
一方、図14は、本実施例の方法なよりパージ工程が1秒以下となった場合の基板処理反応室内のガス圧とガス制御信号との関係を表している。40はエッチングガスのオン・オフ制御信号で、41はエッチングガス圧を示し、42は保護膜生成ガスのオン・オフ制御信号で、43は保護膜生成ガス圧を示している。また、44はパージガス圧を示している。43は基板処理反応室内の合成ガス圧を示している。また、図13と同様に、t20がパージ工程の時間、t21がエッチング工程の時間、t22が保護膜生成工程の時間を示している。
図14においてパージ工程に着目すると、保護膜生成ガスのオフ直後の過渡的領域(非安定領域)Cがパージ工程に重なるが、パージガス圧自体は安定しているので、パージ工程の時間t20とパージガス圧p20は、図13の場合に比較して安定している。すなわち、短いパージ工程時間を設定しても、安定したパージ効果を得ることができる。
また、本実施例では、エッチングプロセスにおいては、プラズマからの熱放射、イオンによるスパッタリング若しくはエッチングによる化学反応熱などによって、基板自体が表面から加熱されてその温度が上昇する。一例として、レジストマスクを加工する場合は、120℃を超えると急速に劣化や焼失が生じ、エッチング形状が悪くなったり保護膜の強度が低下して欠陥が発生したりする。このため、基板ホルダー11には、エッチング中に基板12に発生する熱を取り除き、該基板12の温度を略一定に保って良好なエッチング又は保護膜の生成を維持するための冷却機構が内蔵されている。
図1Aにおいて、Aは該冷却機構を構成する温調媒体の基板ホルダー11への入力、Bはその出力を示している。特に保護膜においては、経験的に概ね30℃を超えると、溝や穴の側壁の表面側(表面側の方がより高温になるため)に欠陥を生じ易くなり、その下地の形状にまで悪影響を与える。つまり、エッチング加工中の基板12の温度制御は敏感に加工品質に影響を与える。
本実施例では、上記冷却機構による基板12の冷却に加えて、パージ工程を設けることで、その温度制御を容易にするという効果をもたらす。さらに、従来では許容レベルを超えるような温度上昇があった場合でも保護膜の欠陥の発生を抑制でき、また従来の許容レベルの温度に対しても保護膜の強度が増すので、基板の温度上昇の許容レベルを上げることができる。
保護膜を生成する化学的蒸着時間を長くしても保護膜の強化を図れるが、エッチングレートが小さくなるという弊害があるので好ましくない。
エッチング部の空間にエッチングガスと保護膜生成ガスとが混在する場合、前述した異常反応はエッチングガスの導入が完了して保護膜生成ガスが導入される直前にも発生する可能性がある。このため、エッチングガスの導入(エッチング工程)完了後、保護膜生成ガスの導入(保護膜生成工程)直前に、前パージ工程を設けてもよい。この場合、図1Bに示したステップ2とステップ3の間に前パージ工程を設けるとともに、ステップ4を本パージ工程とする。
図7には、本発明の実施例2であるエッチング方法(処理)において、コントローラ42の制御により基板処理反応室5内に導入されるガスの時間的な切り換えの様子を示している。図7の縦軸は導入される各ガスの基板処理反応室5内での圧力を示し、横軸は時間を示している。
図7において、17はエッチングガスの導入圧力(本実施例では、設定圧をP4とする)と導入タイミングを、18は保護膜生成ガスの導入圧力(本実施例では、設定圧をP5とする)と導入タイミングを、19はパージガスの導入圧力(本実施例では、設定圧をP6とする)と導入タイミングを示している。具体的なガスの圧力値は、実施例1と同様に、エッチングガスについては1〜30Pa、保護膜生成ガスについては0.5〜18Pa、パージガスについては0.5〜17Paであり、保護膜生成ガスの圧力をエッチングガスの圧力よりも低く、パージガスの圧力を保護膜生成ガスの圧力よりも低く設定するのが望ましい。20は基板処理反応室5内の合成ガス圧力を示している。そして、本実施例では、1プロセスサイクル中において、t4で示すエッチングガス導入時間(エッチング工程)の直後に時間t6で示すパージ工程(前パージ工程PP)、すなわちエッチングガスと保護膜生成ガスの両方の導入を遮断する時間を設け、その後に時間t5で示す保護膜生成ガス導入時間(保護膜生成工程)を設け、その直後に再び時間t6で示すパージ工程(本パージ工程PM)を設けている。なお、前パージ工程と本パージ工程とで時間を異ならせてもよい。
図8には、本実施例2のエッチング方法(処理)を実行するためのコントローラ42によるガス供給制御の手順を示している。なお、本実施例におけるエッチング装置の構成は実施例1と同様である。
まず、ステップ901では、コントローラ42は、エッチング処理のプロセスサイクル数Cycleを1に初期設定する。次に、ステップ902では、ガス供給部41を制御して、後続する一連のエッチング処理中連続して供給するパージガスの導入を開始(オン)する。次に、ステップ903では、1プロセスサイクル内でのプロセスステップ数(エッチング工程を1、前パージ工程を2、保護膜生成工程を3、本パージ工程を4とし、4に達すると1に戻る)を0に初期設定する。
次に、ステップ904では、プロセスステップ数を1インクリメントし、さらにステップ905では、該ステップ数を判別する。該ステップ数が1である場合はステップ911に、ステップ数が2である場合はステップ921に、ステップ数が3である場合はステップ931に、ステップ数が4である場合はステップ941に進む。
ステップ911では、エッチング工程を行うためにガス供給部41からのエッチングガスの導入を開始(オン)する。そして、ステップ912において、エッチングガスの導入時間タイマーを時間t4に設定する。ステップ913,914で該導入時間が時間t4に達すると(すなわち、エッチング工程が終了する)と、ステップ915に進み、エッチングガスの導入を遮断(オフ)し、ステップ904に戻る。
ステップ921では、エッチングガスと保護膜生成ガスの両方の導入を遮断しておく前パージ時間タイマーを時間t6に設定する。そして、ステップ922、923で前パージ工程時間が時間t6に達するタイマーが0になる(すなわち、前パージ工程が終了する)と、ステップ904に戻る。
また、ステップ931では、保護膜生成工程を行うためにガス供給部41からの保護膜生成ガスの導入を開始(オン)する。そして、ステップ932において、保護膜生成ガスの導入時間タイマーを時間t5に設定する。ステップ933,934で該導入時間が時間t5に達する(すなわち、保護膜生成工程が終了する)と、ステップ915に進み、ガス供給部41からの保護膜生成ガスの導入を遮断(オフ)し、ステップ904に戻る。
さらに、ステップ941では、本パージ工程を行うために、エッチングガスと保護膜生成ガスの両方の導入を遮断している本パージ工程時間タイマーを時間t6に設定する。ステップ942,943で該本パージ工程時間が時間t6に達する(すなわち、本パージ工程が終了する)と、ステップ906に進む。
ステップ906では、サイクル数を1インクリメントし、ステップ907においてプロセスサイクル数が所定数nに達していない場合は、ステップ903に戻る。このとき、次のステップ904でプロセスステップ数は1となるので、ステップ905からステップ911に進んでエッチングガスの導入をオンし、次のプロセスサイクルのエッチング工程を開始する。
こうしてステップ907においてプロセスサイクル数が所定数nに達すると、ステップ908に進み、パージガスをオフして、一連のエッチング処理を終了する。
上記実施例1,2では、1枚の基板に対する一連のエッチング処理(所定数nのプロセスサイクル)中における各プロセスサイクルでのパージ工程の時間を一定とした場合について説明したが、図9に示すように、一連のエッチング処理中において各プロセスサイクルでのパージ工程時間t31〜tnを変化させてもよい。具体的には、エッチング部の深さが深くなるに従って、例えば0.5〜3秒の間で連続的に又は段階的に増加させてもよい。エッチング深さが浅い場合は短い時間のパージ工程時間で残留した保護膜生成ガスを良好に除去又は減少させることができるが、エッチング深さが深くなるほど(例えば、100μmを超えるような深さになると)、それに対応して長いパージ工程時間が必要となる。
図9において、28はエッチングガスの導入圧力と導入タイミングを、29は保護膜生成ガスの導入圧力と導入タイミングを、30はパージガスの導入圧力と導入タイミングを示している。また、31は基板処理反応室5内の合成圧力を示している。
一連のエッチング処理中において、はじめは短いパージ工程時間t31を設定し、プロセスサイクルが進むに従ってパージ工程時間t32〜tnを漸次長くしていく制御を行うことで、1枚の基板の全体に要する処理時間を、経験的には5〜10%短縮し、スループットを向上させることができる。はじめから長いパージ工程時間を設定すると、エッチング深さが浅い段階では無駄な時間が大きくなり、スループットが低下するので好ましくない。
図10のフローチャートには、本実施例のエッチング方法(処理)を実行するためのコントローラ42によるガス供給制御の手順を示している。なお、本実施例におけるエッチング装置の構成は実施例1と同様であり、ガス供給制御の手順も基本的に実施例1と同様とする。
まず、ステップ1001では、コントローラ42は、エッチング処理のプロセスサイクル数Cycleとパージ時間設定用カウンタjとを1に初期設定する。
次に、ステップ1002では、ガス供給部41を制御し、後続する一連のエッチング処理中、連続して供給するパージガスの導入を開始(オン)する。次に、ステップ1003では、1プロセスサイクル内でのプロセスステップ数(エッチング工程を1、保護膜生成工程を2、パージ工程を3とし、3に達すると1に戻る)を0に初期設定する。
次に、ステップ1004では、プロセスステップ数を1インクリメントし、さらにステップ1005では、該ステップ数を判別する。該ステップ数が1である場合はステップ1011に、ステップ数が2である場合はステップ1021に、ステップ数が3である場合はステップ1031に進む。
ステップ1011では、エッチング工程を行うためにガス供給部41からのエッチングガスの導入を開始(オン)する。そして、ステップ1012において、エッチングガスの導入時間タイマーを時間t1に設定し、ステップ1013,1014で該導入時間が時間t1に達する(すなわち、エッチング工程が終了する)と、ステップ1015に進み、エッチングガスの導入を遮断(オフ)し、ステップ1004に戻る。
ステップ1021では、保護膜生成工程を行うためにガス供給部41からの保護膜生成ガスの導入を開始(オン)する。そして、ステップ1022において、保護膜生成ガスの導入時間タイマーを時間t2に設定する。ステップ1023,1024で該導入時間が時間t2に達する(すなわち、保護膜生成工程が終了する)と、ステップ1015で保護膜生成ガスの導入を遮断(オフ)し、ステップ1004に戻る。
ステップ1031では、パージ工程を行うために、ガス供給部41からのエッチングガスと保護膜生成ガスの両方の導入を遮断しているパージ工程時間タイマーを時間t3j(t31,t32,t33…tn)に設定する。ステップ1032,1033で該パージ工程時間が時間t3jに達する(すなわち、パージ工程が終了する)と、ステップ1006に進む。ステップ1006では、パージ時間設定用カウンタjを1インクリメントし、次のステップ1007では、プロセスサイクル数を1インクリメントする。
次にステップ1008においてプロセスサイクル数が所定数nに達していない場合は、ステップ1003に戻る。このとき、次のステップ1004でプロセスステップ数は1となるので、ステップ1005からステップ1011に進んでエッチングガスの導入をオンし、次のプロセスサイクルのエッチング工程を開始する。
こうしてステップ1007においてプロセスサイクル数が所定数nに達すると、ステップ1009に進み、パージガスをオフして、一連のエッチング処理を終了する。
なお、上記実施例1から3では、一連のエッチング処理中、常時供給するパージガスを一定圧とする場合について説明したが、本発明はこれに限られない。例えば、パージ工程以外の時間にはパージガス圧を第1の所定圧とし、パージ工程においてはパージガス圧を該第1の所定圧より高い第2の所定圧とするようにしてもよい。この場合、パージ工程時間を流量制御機能付き電磁弁でパージガスの流量制御が可能な時間に設定する必要はあるが、図5に示すようにパージガス圧が0から立ち上がる場合に比べてパージガス圧の不安定さは少なく、パージ工程においてパージガス圧を高めることで良好なパージ効果が得られる。
上記実施例1,2において、1枚の基板に対する一連のエッチング処理(所定数nのプロセスサイクル)中の各プロセスサイクルでのパージガスの導入流量を変化させてもよい。具体的には、パージガスの導入流量を0.5〜17sccmの間で連続的に又は段階的に増加させてもよい。このことは、言い換えれば、パージガスの導入圧力(パージ圧)を連続的に又は段階的に変化(増加)させることと等価である。なお、導入流量は供給流量と同義である。
エッチング深さが浅い間は少ない流量(低圧)とし、エッチング深さが深くなるにしたがって流量(圧力)を漸次増加させるよう流量(圧力)制御を行うことで、パージ工程時間を各プロセスサイクルで最短時間に設定することができる。これにより、実施例3のようにパージ工程時間を変化させる場合に比べて、更に全体の処理時間を短くしてスループットを短縮することができる。経験的には、実施例3に比べて5〜10%短縮することができる。
図11において、32はエッチングガスの導入圧力と導入タイミングを、33は保護膜生成ガスの導入圧力と導入タイミングを、34はパージガスの導入圧力と導入タイミングおよび圧力増加タイミングを示している。また、35は基板処理反応室5内の合成圧力を示している。
本実施例では、図11に示すように、パージ工程時間をエッチング深さが浅い段階での短い時間t3に固定したまま、エッチング深さが深くなるにしたがってパージガスの導入圧力がP7,P8,P9,P10,…Pnと漸次増加していくように、導入流量を制御する。
図12のフローチャートには、本実施例のエッチング方法(処理)を実行するためのコントローラ42によるガス供給制御の手順を示している。なお、本実施例におけるエッチング装置の構成は実施例1と同様であり、ガス供給制御の手順も基本的に実施例1と同様とする。
まず、ステップ1101では、コントローラ42は、エッチング処理のプロセスサイクル数Cycleとパージ圧力設定用カウンタkとを1に初期設定する。
次に、ステップ1102では、ガス供給部41を制御し、後続する一連のエッチング処理中、連続して供給するパージガスの導入を開始(オン)する。はじめてステップ1102を実行する場合は、k=1に対応する圧力P7でパージガスの導入を開始する。
次に、ステップ1103では、1プロセスサイクル内でのプロセスステップ数(エッチング工程を1、保護膜生成工程を2、パージ工程を3とし、3に達すると1に戻る)を0に初期設定する。
次に、ステップ1104では、プロセスステップ数を1インクリメントし、さらにステップ1105では、該ステップ数を判別する。該ステップ数が1である場合はステップ1111に、ステップ数が2である場合はステップ1121に、ステップ数が3である場合はステップ1131に進む。
ステップ1111では、エッチング工程を行うためにガス供給部41からのエッチングガスの導入を開始(オン)する。そして、ステップ1112において、エッチングガスの導入時間タイマーを時間t1に設定し、ステップ1113,1114で該導入時間が時間t1に達する(すなわち、エッチング工程が終了する)と、ステップ1115に進み、ガス供給部41からのエッチングガスの導入を遮断(オフ)し、ステップ1104に戻る。
また、ステップ1121では、保護膜生成工程を行うためにガス供給部41からの保護膜生成ガスの導入を開始(オン)する。そして、ステップ1122において、保護膜生成ガスの導入時間タイマーを時間t2に設定し、ステップ1123,1124で該導入時間が時間t2に達する(すなわち、保護膜生成工程が終了する)と、ステップ1115に進み、ガス供給部41からの保護膜生成ガスの導入を遮断(オフ)し、ステップ1104に戻る。
さらに、ステップ1131では、パージ工程を行うために、ガス供給部41からのエッチングガスと保護膜生成ガスの両方の導入を遮断しているパージ工程時間タイマーを時間t3に設定する。ステップ1132,1134で該パージ工程時間が時間t3に達する(すなわち、パージ工程が終了する)と、ステップ1106に進む。
ステップ1106では、パージ圧設定用カウンタkを1インクリメントし、次のステップ1107では、プロセスサイクル数を1インクリメントする。
次にステップ1108においてプロセスサイクル数が所定数nに達していない場合は、ステップ1102に戻る。ステップ1102では、圧力Pk(P8,P9,P10…Pn)でのパージガス導入が開始される。
次のステップ1105でプロセスステップ数は1となるので、ステップ1111に進んでエッチングガスの導入をオンして、次のプロセスサイクルのエッチング工程を開始する。
こうしてステップ1108においてプロセスサイクル数が所定数nに達すると、ステップ1109に進み、パージガスの導入をオフして、一連のエッチング処理を終了する。
なお、上記実施例3,4では、パージ工程時間とパージガスの導入流量(導入圧力)を個別に変化させる場合について説明したが、これらの両方を変化させるようにしてもよい。
さらに、このようなパージ工程時間とパージガス導入流量(導入圧力)に加えて、エッチング工程や保護膜生成工程の時間、導入ガス圧(流量)等のパラメータをエッチング深さに応じて総合的に制御することで、20μm以上のエッチング深さや5以上のアスペクト比の溝や穴の加工をより良好な形状精度かつ高スループットで行うことができる。経験的には、200μm以上あるいはアスペクト比20以上の深い溝や穴でも、保護膜を損傷することなく加工できる。
以上説明したように、上記各実施例によれば、第2の工程(保護膜生成工程)の後、第1の工程(エッチング工程)の前に、基板処理反応室5へのエッチングガスおよび保護膜生成ガスの両方の供給を遮断する第3の工程を設け、第1、第2および第3の工程を通じて常時連続してパージガスを供給することにより、第3の工程がパージ工程となり、パッシベーション層(保護膜)に不規則な欠陥が発生するのを抑制できる。この結果、エッチングガスやパッシベーションガス(保護膜生成ガス)の流量や圧力を増加させて、エッチングレートを大きくすることができる。さらに、エッチング部のボトムの形状を平坦に保つ効果も得られる。
特に、20μm以上もしくはアスペクト比5以上の深い溝や穴をエッチングする場合に、エッチング深さに応じたパージガス導入時間や導入圧力(導入流量)を設定することにより、1基板あたりのエッチング処理時間が長くなることを回避できる。