以下、適宜図面が参照されて本発明の実施形態が説明される。なお、本実施の形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。
図1は、本発明の実施の形態に係る画像読取装置の外観構成を示す斜視図である。図2は、読取載置台12の内部構成を示す平面図である。図3は、読取載置台12の主要構成を示す縦断面図である。図4は、イメージセンサユニット52の構成を示す斜視図である。図5は、イメージセンサユニット52の要部分解拡大図である。図6は、ローラユニット94の要部分解拡大図である。図7は、イメージセンサユニット52の要部拡大図である。図8は、イメージセンサユニット52の上面拡大図である。図9は、図8におけるIX−IX断面図である。
<画像読取装置10の全体構成>
画像読取装置10は、例えば、プリンタ機能とスキャナ機能とを一体的に備えた多機能装置(MFD:Multi Function Device)のスキャナ部として用いられたり、複写機の画像読取部として用いられたりする。ただし、プリンタ機能等は本発明において任意の機構であり、例えば、スキャナ機能のみを有するフラットベッドスキャナ(FBS:Flatbed Scanner)として画像読取装置10が実現されてもよい。
図1に示されるように、画像読取装置10は、FBSとして機能する読取載置台12に対して、自動原稿搬送装置(ADF:Auto Document Feeder)13を備えた原稿押さえカバー14が開閉自在に取り付けられてなる。読取載置台12は、略直方体の筐体20の上面にプラテンガラス21が配設され、この筐体20内に画像読取ユニット15が内蔵されてなる。プラテンガラス21が、本発明における透明部材に相当する。
プラテンガラス21は画像読取領域を有する平板形状であり、その上面が原稿載置面、つまり画像読取領域である。プラテンガラス21は、静止原稿読取用の原稿載置面として機能する。画像読取装置10をFBSとして用いる場合には、まずプラテンガラス21上に被読取媒体である原稿が載置され、原稿押さえカバー14が閉じられることにより原稿が固定される。つづいて、イメージセンサユニット52がプラテンガラス21の下方を走査することにより、この原稿の画像読み取りが行われる。
プラテンガラス21と隣り合って、筐体20の上面にプラテンガラス23が配設されている。プラテンガラス23は、ADF13により搬送される原稿の画像読取りを行う移動原稿読取用である。プラテンガラス21,23間には、区画板16が設けられている。区画板16は、プラテンガラス21の奥行き方向(イメージセンサ50の主走査方向)を長手方向とする略平板である。区画板16は、プラテンガラス21,23を区画すると共に、プラテンガラス21上に載置される原稿の端を位置決めするガイドとして機能する。区画板16の上面には、プラテンガラス21の奥行き方向の中央を基準として原稿を載置する際に目安となる原稿基準位置が記されている。
読取載置台12の正面側には、操作パネル22が設けられている。操作パネル22は各種操作ボタン22Aや液晶表示部等22Bから構成されている。画像読取装置10は、この操作パネル22からの指示によって動作する。なお、本画像読取装置10をMFDとして実現する場合には、操作パネル22による指示のほか、接続されたコンピュータからスキャナドライバ等を介して送信される指示によっても画像読取装置10が動作する。
原稿押さえカバー14には、原稿トレイから排紙トレイへ原稿を連続搬送するADF13が備えられている。ADF13による搬送過程において、原稿がプラテンガラス23を通過し、プラテンガラス23の下方に待機されたイメージセンサユニット52が、この原稿の画像を読み取る。なお、本発明においてADF13は任意の構成である。
図2及び図3に示されるように、読取載置台12の筐体20は、上面が開口した容器状の下フレーム20Aと、中央にプラテンガラス21,23を露出するための開口が形成された上カバー20Bとからなる。なお、図2においては、上カバー20Bは省略されている。図2に示されるように、下フレーム20A内に画像読取ユニット15が配設されている。下フレーム20A及び上カバー20Bは共に合成樹脂製のものである。下フレーム20Aは、底板を構成するベース部24と、ベース部24の周囲から起立した側壁25と、画像読取ユニット15が配設される部分と操作パネル22の基板等が配設される部分とを区画する区画板26とが一体的に成形されたものである。なお、下フレーム20Aには、さらに、プラテンガラス21を支持するための支持リブや、各種部材をネジ止めするためのボス部、電気配線等のための貫通孔等が設けられているが、これらは読取載置台12の実施態様に応じて適宜設計されるものなので、ここでは詳細な説明が省略される。
<画像読取ユニット15>
図2に示されるように、画像読取ユニット15は、イメージセンサユニット52、ローラユニット94、ガイドシャフト62、及びベルト駆動機構30から構成されている。ローラユニットが、本発明における位置決め部材に相当する。イメージセンサユニット52は、イメージセンサ50とキャリッジ51とが組み合わされて構成される。イメージセンサ50は、被読取媒体である原稿に光を照射し、この原稿からの反射光を光電変換して電気信号を出力する密着型のイメージセンサであり、一般にCIS(Contact Image Sensor)と呼ばれる。イメージセンサ50が、本発明におけるラインセンサに相当する。
イメージセンサ50は、キャリッジ51に搭載される筐体49を有し、筐体49の長手方向を主走査方向、短手方向を副走査方向として、プラテンガラス21,23の下方を往復動可能に配設される(図4参照)。キャリッジ51は、下フレーム20Aの幅方向に渡って架設されたガイドシャフト62と嵌合し、ベルト駆動機構30により駆動されて、ガイドシャフト62上を摺動して移動する。キャリッジ51がイメージセンサ50をプラテンガラス21,23に密着させるように搭載してガイドシャフト62上を移動することにより、イメージセンサ50がプラテンガラス21,23の下面に平行に往復動される。
図3に示されるように、キャリッジ51は、その上側に担持するようにしてイメージセンサ50を搭載する。キャリッジ51の下面には、ガイドシャフト62を上方から跨ぐようにして嵌合するシャフト受け部54が形成されている。シャフト受け部54とガイドシャフト62とが嵌合することにより、キャリッジ51がガイドシャフト62に担持されながらガイドシャフト62の軸方向に摺動自在となる。
図3に示されるように、シャフト受け部54の側方には、ベルト掴持部55が下方へ突設されている。ベルト掴持部55は、ベルト駆動機構30のタイミングベルト61を掴むことにより、タイミングベルト61とキャリッジ51とを連結する。この連結により、ベルト駆動機構30からキャリッジ51に駆動力が伝達されて、ガイドシャフト62上をキャリッジ51が往復動する。ベルト駆動機構30は周知であって本発明に直接関係しないので、ここでは詳細な説明が省略される。また、図3においては、ベルト駆動機構30が省略されている。
図5に示されるように、イメージセンサ50が搭載されるキャリッジ51の底部71には、キャリッジ51の主走査方向の左右2箇所にバネ受け部56が形成されている。コイルバネ57は、バネ受け部56により位置決めされて、イメージセンサ50とキャリッジ51との間に設けられている。コイルバネ57の付勢力によって、キャリッジ51に搭載されたイメージセンサ50がローラユニット94を介してプラテンガラス21,23の下面に密着される。
イメージセンサ50の両端側には、ローラユニット94がそれぞれ設けられている。ローラユニット94については、後に詳述される。前述されたように、イメージセンサ50は、ローラユニット94を介してプラテンガラス21,23の下面に押圧されながら、キャリッジ51の移動に伴ってプラテンガラス21,23に沿って移動する。ローラユニット94は、イメージセンサ50の円滑な移動を支援するものである。また、ローラユニット94は、イメージセンサ50とプラテンガラス21,23との距離を一定に維持する位置決め部材としての役割も果たしている。
前述されたように、イメージセンサユニット52は、イメージセンサ50とキャリッジ51とが組み合わされて構成される。図4に示されるように、イメージセンサ50は、その上面63が平面視で細長矩形である直方体形状の筐体49を有する。筐体49の上面63には、筐体49に内蔵されたLED(Light Emitting Diode:図示せず)の光を導く導光体64が筐体49の長手方向に連続して配設されている。導光体64により、LEDの光がイメージセンサ50の筐体49の上面63と対向配置されるプラテンガラス21,23に向けて出射される。筐体49の上面63には、複数の集光レンズ65が導光体64と平行するように筐体49の長手方向に一列に配設されている。
筐体49の内部には、集光レンズ65の直下に複数の光電変換素子(図示せず)が集光レンズ65と同方向に列設されている。この光電変換素子は、筐体49の長手方向の一部となる所定のブロック毎に構成されており、各光電変換素子のブロックが筐体49の長手方向に一列に並べられている。LEDから出射された光はプラテンガラス21上に載置された原稿(被読取媒体)又はプラテンガラス23上を移動する原稿(被読取媒体)に照射され、その反射光が集光レンズ65により光電変換素子に集光される。光電変換素子は反射光の強度に応じた電気信号を出力する。このようにして、イメージセンサ50は、筐体49の長手方向を読取りラインとして、原稿(被読取媒体)の画像を電気信号として出力する。
イメージセンサ50の筐体49の底面であって、筐体49の長手方向の一方の端部側にはコネクタ部(図示せず)が設けられている。コネクタ部は、イメージセンサ50のLEDや光電変換素子と電気的に接続されて、制御部と信号等の入出力を行う。コネクタ部には電気ケーブル(図示せず)が接続され、この電気ケーブルにより、イメージセンサ50と画像読取装置10の制御部とが電気的に接続される。画像読取装置10の制御部は、例えば、各種演算を行うためのCPU、各種制御プログラムが格納されたROM、データを一時格納するためのRAM、駆動回路や各種インタフェース等を駆動するためのASIC等からなるものである。上記電気ケーブルにより、イメージセンサ50と制御部との間に電気信号路が形成される。
イメージセンサ50の筐体49の長手方向は、画像読み取りにおける主走査方向である。この主走査方向の長さ、すなわちイメージセンサ50の筐体49の長手方向の長さは、イメージセンサ50が読み取り可能な最大サイズの被読取媒体に対応した長さである。本実施形態では、イメージセンサ50は、A4サイズの被読取媒体に対応した長さを有している。
<ローラユニット94>
図5に示されるように、筐体49の長手方向の両端部にはローラユニット保持部90A,90Bが設けられている。ローラユニット保持部90A,90Bは、筐体49の長手方向の上端角部が一部切り欠かれることにより形成された段部から構成されている。具体的には、この段部は、筐体49の上面63に対して直交する垂直面150と、これに連続するとともに垂直面150と直交する載置面151とによって、上面63から段落ちした形状に形成されている。垂直面150は、筐体49の上面63から下方に延びる面である。載置面151は、垂直面150の下端から筐体49の長手方向の外向きに延びる面であって、上面63と平行な面である。
ローラユニット94は、前述された垂直面150と載置面151とから形成される段部であるローラユニット保持部90A,90Bにそれぞれ載置される。載置面151は、ローラユニット94及び後述されるスペーサ110を位置決め固定するための一対の位置決め突起105A,105Bを有する。一対の位置決め突起105A,105Bが、後述されるローラユニット94の一対の位置決め孔106A、106Bに嵌合されることにより、ローラユニット94がローラユニット保持部90A,90Bの所定位置に位置決め固定される。
図5及び図6に示されるように、ローラユニット94は、フレーム91と一対のローラ92,93とを備えている。フレーム91は、ローラ92,93を支持する支持体として構成されている。フレーム91は、全体形状が概ね直方体であり、一対の側板95,96と、側板95,96を連結する一対の連結板97A,97Bと、底板107とを備えている。側板95,96、連結板97A,97B、及び底板107は、例えば合成樹脂により一体的に形成されている。側板95,96及び連結板97A,97Bにより形成される空間がローラ収容部97,98である。各ローラ収容部97,98には、ローラ92,93がそれぞれ収容される。
底板107には、前述された一対の位置決め突起105A,105Bと嵌合可能な一対の位置決め孔106A、106Bが設けられている。図6に示されるように、位置決め孔106Aは円孔であり、位置決め孔106Bは、側板95,96に沿った方向に長い長孔である。位置決め孔106Bの長孔は、一対の位置決め突起105A,105Bとの寸法公差を考慮して形成される。また、側板95,96には、軸受部100,101が設けられている。軸受部100,101は、各側板95,96の対向位置にそれぞれ設けられた切欠凹部であり、ローラ92,93に設けられた支持軸102,103を回転自在に支持する。
ローラ92は、円盤形状であり、その中心を貫通するようにして両側方へ突出する支持軸102を有する。支持軸102の両端部が軸受部100にそれぞれ支持されて、ローラ92がローラ保持部90内に回転自在な状態で配置される。軸受部100に支持された支持軸102は、イメージセンサ50の筐体49の長手方向と平行な方向へ延出される。なお、ローラ93は、ローラ92と同様の構成であるから、ここでは説明が省略される。
ローラユニット94がローラユニット保持部90A,90Bに位置決め固定される際に、必要に応じて、載置面151と底板107との間にスペーサ110が配置される。スペーサ110は、イメージセンサ50の焦点をプラテンガラス21に対して所定の位置に合わせるために、イメージセンサ50とプラテンガラス21,23との離間距離を調整するためのものである。スペーサ110は、例えばPET(Polyethylene Terephthalate)等の素材からなる薄片である。スペーサ110には、一対の挿通孔111A,111Bが厚み方向に貫通されている。図5に示されるように、挿通孔111Aは円孔であり、挿通孔111Bは、イメージセンサ50の筐体49の短手方向に沿った方向に長い長孔である。挿通孔111Bも、位置決め突起105A,105Bとの寸法公差を考慮したものである。
ローラユニット94がイメージセンサ50の筐体49に位置決め固定されるに先だって、各ローラユニット94と筐体49との間に設けられるスペーサ110の枚数が決定される。このスペーサ110の枚数の決定方法は後述される。そして、所定の枚数のスペーサ110が、その挿通孔111A,111Bを一対の位置決め突起105にそれぞれ挿通させて、ローラユニット保持部90A,90Bにそれぞれ位置決め固定される。
つぎに、一対のローラ92,93がフレーム91に支持された状態で、フレーム91が、一対の位置決め穴106A,106Bを一対の位置決め突起105A,105Bにそれぞれ挿通させて、スペーサ110を挟んだ状態でローラユニット保持部90A,90Bにそれぞれ位置決め固定される。この状態のイメージセンサ50がキャリッジ51に搭載されることにより、図3に示されるように、ローラユニット94のローラ92,93が、プラテンガラス21の裏面27に当接する。そして、キャリッジ51の往復動に際して、各ローラ92,93が支持軸92、93を中心に回転することにより、イメージセンサ50がプラテンガラス21の裏面27に沿って円滑に移動する。プラテンガラス21の表面28には原稿が載置されているので、この原稿に対してイメージセンサ50が走査されることにより、原稿の画像が読み取られる。
図4から図9に示されるように、イメージセンサ50の筐体49の両端部には、筐体49の側壁から外側へ突出する軸部68A,68Bが設けられている。軸部68A,68Bは、キャリッジ51に対して、イメージセンサ50の副走査方向の位置決めを行うものである。軸部68A,68Bは、軸心から等しい距離を隔てられた一対のほぼ平行な平面部70が上下にそれぞれ形成された小判形状の軸である。一対の軸部68A,68Bのうち、一方の軸部68Aの起端部には当接部67が形成され、先端部には突出部66が形成されている。
図4及び図5に示されるように、キャリッジ51は、イメージセンサ50を搭載可能に上面が開放された容器状のものである。キャリッジ51は、底部71と、底部71の副走査方向側の両端から上方へ立設された一対の壁72と、底部71の主走査方向の両端から上方へ立設された一対の壁73A,73Bとを有する。一対の壁73A,73Bは、底部71の主走査方向に対向されている。一対の壁73A,73Bには、上方へ向かって開口したU字形状の切欠溝75A,75Bがそれぞれ形成されている。切欠溝75A,75Bの開放端は、その溝幅が狭められて抜け止め部が形成されている。
イメージセンサ50がキャリッジ51に組み付けられる際には、まず、イメージセンサ50とキャリッジ51の主走査方向の左右端とが揃うように、イメージセンサ50の上面63とキャリッジ51の底部71とがほぼ直交するように配置される。そして、軸部68A,68Bの平面部70が、切欠溝75A,75Bの延出方向に沿うようにして、軸部68A,68Bが切欠溝75A,75Bにそれぞれ挿入される。
その後、イメージセンサ50の下面(図示せず)とキャリッジ51の底部71とが対向配置されるように、切欠溝75A,75Bに挿入された軸部68A,68Bを中心として、イメージセンサ50を回転させる。これにより、イメージセンサ50の下面は、キャリッジ51の底部71に設けられたバネ受け部56によって位置決めされたコイルバネ57に当接する。このコイルバネ57によって、イメージセンサ50とキャリッジ51とは互いに離間する方向に付勢される。
この状態で、イメージセンサ50はキャリッジ51に対して副走査方向に位置決めされる。また、イメージセンサ50のキャリッジ51に対する主走査方向における位置決めは、キャリッジ51の壁72Aを、軸部68Aの突出部66及び当接部67が狭持することによって行われる。一方、切欠溝75A,75Bは、軸部68A,68Bが切欠溝75A,75Bに沿って移動することを許容すると共に、上記抜け止め部によって軸部68A,68Bが切欠溝75A,75Bから抜けることを禁止する。これにより、イメージセンサ50は、軸部68A,68Bが切欠溝75A,75B内を移動する範囲で、コイルバネ57の伸縮に応じて、キャリッジ51に対してプラテンガラス21,23と接離する方向へ移動可能である。
<画像読取装置調整用治具120>
以下に、前述されたスペーサ110の枚数を決定するための画像読取装置調整方法に用いられる画像読取装置調整用治具(以下、単に調整用治具とも称される。)120が説明される。図10は、調整用治具120の外観構成を示す斜視図である。図11は、図10におけるXI−XI断面図である。図12は、図11における領域XIIを拡大した拡大断面図である。図13は、第2MTFチャート162の一部を示す図である。図14は、第1MTFチャート161の一部を示す図である。
調整用治具120は、前述されたイメージセンサ50とプラテンガラス21,23との離間距離を調整するために用いられる治具であり、後述される画像読取装置調整方法において用いられる。この画像読取装置調整方法については後述される。
図10に示されるように、調整用治具120は、平面視において矩形の平板である本体121と、本体121の上面における略中央から突出された持ち手122とを有する。本体121は、その奥行き方向において寸法L1であり、その幅方向において寸法L2である。本体121は、画像読取装置10のプラテンガラス21上に載置可能な大きさであり、プラテンガラス21の奥行き寸法(イメージセンサ50の主走査方向)に対して寸法L1が対応しており、プラテンガラス21の幅寸法(イメージセンサ50の副走査方向)に対して寸法L2が対応している。
寸法L1は、プラテンガラス21の奥行き寸法より若干小さく設定される。したがって、プラテンガラス21上に載置された本体121は、イメージセンサ50の主走査方向のほぼ全域に渡ることとなる。寸法L2は、プラテンガラス21の幅寸法より大きくならない範囲で適宜設定される。したがって、プラテンガラス21上に載置された本体121は、必ずしもイメージセンサ50の副走査方向の全域に渡る必要はない。もちろん、本体121がイメージセンサ50の副走査方向の全域に渡っていてもよい。
本体121の上面は平面をなしており、その中央付近から持ち手122が上方へ突出されている。持ち手122は、本体121をプラテンガラス21上に載置又は除去する際に作業者に掴まれる部分であり、調整用治具120の操作性を向上させるものである。この持ち手122の形状は特に限定されず、本体121の大きさや重量を考慮して作業者が持ちやすい形状が適宜採用される。
本体121の下面側には、第1階段部123及び第2階段部124が設けられている。これらの構成については後述されるが、本体121の側壁125には、第1階段部123及び第2階段部124の各階断面に通ずる開口126が形成されている。一方、側壁125と対向する側壁127には、開口が設けられていない。つまり、側壁127には、第1階段部123及び第2階段部124へ通ずる開口がない。側壁125,127は、第1階段部123及び第2階段部124において各階断面が延出される方向の両端側に位置する。つまり、開口126が設けられた側壁125は、上記各階断面が延出される方向の一方端である。
本体121の上面には、平面視において矩形の上面の1辺128の略中央を指し示す矢印129が記されている。矢印129は、本発明におけるマークの一例であって、プラテンガラス21上に調整用治具120が載置された状態において、上方から視認可能である。矢印129は、側壁125,127とを繋ぐ1辺128に沿って記されている。1辺128は、第1階段部123及び第2階段124の各階断面が延出される方向と平行である。つまり、矢印129によって、第1階段部123及び第2階段124の各階断面が延出される方向が直ちに認識できる。また、後述されるように、1辺128と近い側に第1階段部123が形成され、1辺128と遠い側に第2階段部124が形成されている。したがって、矢印129によって、第1階段部123と第2階段部124との位置関係を直ちに把握することができる。もっとも、作業者が調整用治具120を使用する場合には、矢印129を前述された区画板16における原稿基準位置に一致させて、調整用治具120をプラテンガラス21上に載置すればよい。なお、矢印129は、本発明におけるマークの一例であり、マークの形状や位置が適宜変更できることは言うまでもない。
本体121の下面は、基準面130である。詳細には、基準面130は、本体121の下面であって第1階段部123及び第2階段部124以外の部分により構成されている。基準面130は、1つの平面をなしており、調整用治具120がプラテンガラス21に載置された際にプラテンガラス21の表面28と接する。この基準面130により、本体121がプラテンガラス21上に載置される。
<第1階段部123及び第2階段部124>
本体121の下面側には、第1階段部123及び第2階段部124が形成されている。図11に示されるように、第1階段部123及び第2階段部124は、基準面130に対して本体121の厚み方向(図11における上下方向)に凹設されている。第1階段部123は、本体121の1辺128と近い側に形成されており、第2階段部124は、本体121の1辺128と遠い側に形成されている。つまり、第1階段部123及び第2階段部124は、本体121の幅方向(図11における左右方向)に並べられて形成されている。
第1階段部123は、基準面130から本体121の厚み方向に凹陥する7つの溝131〜137を有する。第2階段部124は、基準面130から本体121の厚み方向に凹陥する7つの溝141〜147を有する。各溝131〜137,141〜147は、本体121の側壁125,127側を長手方向の両端とする細長形状であり、その長手方向と直交する断面形状が矩形である。各溝131〜137,141〜147において基準面130と平行な各奥面が本発明における各階段面であり、各奥面は、基準面130からの鉛直方向の距離が異なる。なお、本発明において階段形状とは、図11に示される断面視において、上記各奥面が階段形状に高さが順次異なる形状をいい、後述される第2仕切壁又は第3仕切壁の有無は考慮されない。各溝131〜137における各奥面は、後述される第1MTFチャート161が貼り付けられる貼付け面であり、各溝141〜147における各奥面は、後述される第2MTFチャート162が貼り付けられる貼付け面である。
第1階段部123を構成する各溝131〜137における各奥面は、基準面130からの鉛直方向の距離が段階的に変化する。詳細には、溝131における奥面と基準面130との距離をA1、溝132における奥面と基準面130との距離をA2、溝133における奥面と基準面130との距離をA3、溝134における奥面と基準面130との距離をA4、溝135における奥面と基準面130との距離をA5、溝136における奥面と基準面130との距離をA6、溝137における奥面と基準面130との距離をA7とすると、A1<A2<A3<A4<A5<A6<A7の関係が成立する。つまり、各溝131〜137は、本体121の1辺128から離れるにつれて、鉛直上方向の深さが深くなる。また、隣接する各溝131〜137間における各距離A1〜A7間のピッチは均等であり、前述されたスペーサ110の厚みと同等である。
第2階段部124を構成する各溝141〜147における各奥面は、基準面130からの鉛直方向の距離が段階的に変化する。詳細には、溝141における奥面と基準面130との距離をB1、溝142における奥面と基準面130との距離をB2、溝143における奥面と基準面130との距離をB3、溝144における奥面と基準面130との距離をB4、溝145における奥面と基準面130との距離をB5、溝146における奥面と基準面130との距離をB6、溝147における奥面と基準面130との距離をB7とすると、B1<B2<B3<B4<B5<B6<B7の関係が成立する。つまり、各溝141〜147は、本体121の1辺128から離れるにつれて、鉛直上方向の深さが深くなる。また、隣接する各溝141〜147間における各距離B1〜B7間のピッチは均等であり、前述されたスペーサ110の厚みと同等である。
なお、第1階段部123における距離A1と第2階段部124における距離B1とは一致している必要はない。つまり、第1階段部123における各距離A1〜A7間のピッチと、第2階段部124における各距離B1〜B7間のピッチとは、スペーサ110の厚みと同等であるから一致するが、各距離A1〜A7と各距離B1〜B7との絶対値は一致していなくてもよい。
図11に示されるように、第1階段部123と第2階段部124とは、その境界に第1仕切壁138が設けられている。第1仕切壁138は、第1階段部123の溝137と第2階段部124の溝141との間において、各溝137,141の長手方向(図11における紙面と垂直な方向)に渡って設けられており、溝137の奥面から基準面130へ至るように垂下されている。第1仕切壁138は遮光性を有し、第1仕切壁138によって、第1階段部123と第2階段部124とが光学的に区画されている。つまり、第1階段部123に照射された光が第2階段部124へ進入したり、第2階段部124に照射された光が第1階段部123へ進入することがない。
また、第1階段部123において互いに隣接する各溝131〜137間において第2仕切壁がそれぞれ設けられて、各溝131〜137間が光学的に区画され、第2階段部において互いに隣接する各溝141〜147間において第3仕切壁がそれぞれ設けられて、各溝141〜147間が光学的に区画されているが、各第2仕切壁及び各第3仕切壁は、各溝131〜137,141〜147の奥面に対応して高さが異なる他は同様の構成なので、以下に、溝146,147間の第3仕切壁139を例として説明がなされ、その他の第2仕切壁及び第3仕切壁については説明が省略される。
図12に示されるように、溝146と溝147との境界に第3仕切壁139が設けられている。第3仕切壁139は、溝146と溝147との間において、各溝146,147の長手方向(図12における紙面と垂直な方向)に渡って設けられており、溝147の奥面140から下方へ垂下されて、その下面が基準面130へ至っている。第3仕切壁139は遮光性を有し、第3仕切壁139によって、溝146と溝147とが光学的に区画されている。つまり、溝146に照射された光が溝147へ進入したり、溝147に照射された光が溝146へ進入したりすることがない。
図12に示されるように、溝147は、第3仕切壁139と、本体121において側壁128と対向する側壁148と、溝147の長手方向の一方端を封止する側壁127とによって構成されている。なお、前述されたように、側壁125側は開口126となっている(図10参照)。第3仕切壁139、側壁148、及び側壁127において溝147の内面となる各面は黒色に着色されている。ここで、黒色には、イメージセンサ50から照射される光を黒色とほぼ同等に吸収する領域の明度範囲が含まれる。なお、奥面140は、黒色に着色されていてもいなくても、いずれでもよい。その他の溝131〜137,141〜146については詳細に説明がされないが、溝147と同様に、その内面が黒色に着色されている。
図12に示されるように、溝147の奥面140には、第2解像度用の第2MTFチャート162が貼り付けられている。第2MTFチャート162は、奥面140の全域に渡って貼り付けられている。第2MTFチャート162は、奥面140とほぼ同幅及び同長さの矩形のシートの表面に所定のパターンが記されたものであり、その表面を下側へ向けて奥面140に貼り付けられている。奥面140への第2MTFチャート162の貼付け手段は特に限定されないが、例えば両面テープを用いて貼り付け固定すればよい。なお、第2MTFチャート162は、汚れや退色などを考慮して定期的に交換されるものなので、交換作業が容易な貼付け手段が採用されることが好ましい。
図13に示されるように、第2MTFチャート162は、白と黒の縞パターンが75lpi(line per inch)のピッチで記録されたものである。第2MTFチャート162におけるパターンの配列方向(図13における左右方向、矢印163)が、奥面140の延出方向である。つまり、第2MTFチャート162において、図13に示されるパターンが矢印163の方向へ繰り返されて、第2MTFチャート162が、奥面140の長手方向へ一方向に延出されている。なお、本実施形態では、白黒パターンのピッチが75lpiとされているが、これは一例であり白黒パターンのピッチが適宜変更可能であることは言うまでもない。
第2MTFチャート162が交換される際には、調整用治具120を表裏反転させて本体121の下面を上方へ向け、溝140に対して開口126から作業者が指を挿入して、第2MTFチャート162の一方端を捲り上げる。そして、第2MTFチャート162の一方端を摘んだ状態で、その一方端から他方端へ向かって第2MTFチャート162を奥面140から引き剥がすことにより、奥面140から第2MTFチャート162が剥がされる。ついで、奥面140に予め両面テープを貼り付けた状態で、新しい第2MTFチャート162が開口126を通じて溝140へ挿入される。溝140へ挿入された第2MTFチャート162は、その長手方向の一端が側壁127の内面に当接することによって長手方向の位置決めがなされる。そして、位置決めされた第2MTFチャート162を奥面140に押し付けることによって、両面テープの接着力により第2MTFチャート162が奥面140に貼り付けられる。
なお、詳細な説明が省略されるが、第2階段部124の他の溝141〜146の奥面にも、溝147と同様にして第2MTFチャート162が貼り付けられている。
また、第1階段部123の各溝131〜137の奥面には、溝147と同様にして、第1MTFチャート161が貼り付けられている。図14に示されるように、第1MTFチャート161は、白と黒の縞パターンが150lpi(line per inch)のピッチで記録されたものである。このパターンの違いは、イメージセンサ50による読取解像度の違いによるものである。第1MTFチャート161は、第1解像度でイメージセンサ50により読み取られ、第2MTFチャート162は、第2解像度でイメージセンサ50により読み取られる。第2解像度は、第1解像度より低い解像度である。
第1MTFチャート161におけるパターンの配列方向(図14における左右方向、矢印164)が、各溝131〜137の奥面の延出方向である。つまり、第1MTFチャート161において、図14に示されるパターンが矢印164の方向へ繰り返されて、第1MTFチャート161が、上記各奥面の長手方向へ一方向に延出されている。なお、本実施形態では、白黒パターンのピッチが150lpiとされているが、これは一例であり白黒パターンのピッチが適宜変更可能であることは言うまでもない。
なお、本実施形態では、第1階段部123の各溝131〜137を区画する第2仕切壁、及び第2階段部124の各溝141〜147を区画する第3仕切壁は、各溝の奥面から鉛直方向へ垂下されているが、図15に示されるように、溝146と溝147とを区画する第3仕切壁139及び側壁148の内面を、イメージセンサ50から照射される光の出射角度θに沿って傾斜させてもよい。つまり、イメージセンサ50から照射される光は、必ずしも筐体49の上面63(図4参照)から鉛直上方に出射されるとは限らず、図15に矢印165で示されるように、水平線166に対して角度θで傾斜されて出射されることがある。そのようなイメージセンサ50に対して、溝147における第3仕切壁139の内面及び側壁148の内面を基準面130に対して同じ角度θで傾斜させることにより、イメージセンサ50から出射される光が溝147内において乱反射することなく第2MTFチャート162に照射される。なお、基準面130は、前述された水平線166と平行にプラテンガラス21上に載置されるものとする。
<画像読取装置調整方法>
以下に、本発明にかかる画像読取装置の調整方法(以下、単に調整方法とも称される。)が説明される。図16は、画像読取装置の調整方法を示すフローチャートである。図17は、第1MTF値群及び第2MTF値群を示すグラフである。
本実施形態における調整方法は、主に8つのステップからなる。第1ステップでは、作業者が、画像読取装置10のプラテンガラス21を所定の高さに仮留めして、そのプラテンガラス21上に調整用治具120を載置する。第2ステップでは、画像読取装置10を動作させて調整用治具120の第1MTFチャート161から第1MTF値群を得る。第3ステップでは、調整用治具120の第2MTFチャート162から第2MTF値群を得る。第4ステップでは、第1MTF値群から第1位置を選定する。第5ステップでは、第1位置に基づいて第2MTF値群から第2位置を選定する。第6ステップでは、第2位置に基づいて第1MTF値群から第3位置を選定する。第7ステップでは、第3位置に基づいてイメージセンサ50とプラテンガラス21との離間距離を決定する。第8ステップでは、決定された離間距離に基づいて、スペーサ110の枚数を決定する。
各ステップについて詳細に説明するに、第1ステップとして、作業者が、画像読取装置10のプラテンガラス21を所定の高さ位置に仮留めして、そのプラテンガラス21上に調整用治具120を載置する。本調整方法を実施する際に、プラテンガラス21は、前述された読取載置台12の構成の如く、所定の高さ位置に仮留めされている必要がある。所定の高さ位置は予め定められており、例えば、スペーサ110を介さずにイメージセンサ50にローラユニット94を組み付けることにより定められるイメージセンサ50とプラテンガラス21との離間距離であってよい。このとき、筐体21の上カバー21Bは必ずしも下フレーム20Aに対して完全に固定されていなくてもよく、適宜仮留めされていればよい。
そして、仮留めされたプラテンガラス21に対して調整用治具120を載置する。前述されたように、調整用治具120の本体121の上面には矢印129(図10参照)が記されているので、作業者は、矢印129を区画板16における原稿基準位置に一致させて、調整用治具120をプラテンガラス21上に載置すればよい。これにより、第1階段部123に設けられた各第1MTFチャート161及び第2階段部124に設けられた各第2MTFチャート162の長手方向をイメージセンサ50の読取りライン方向に一致させて、区画板16と近い側に第1階段部123を配置させ、区画板16と遠い側に第2階段部124を配置させることができる。調整用実120がプラテンガラス21上に載置されると、調整用治具120の本体121の基準面130がプラテンガラス21の表面28と当接する。
つづいて、第2ステップが行われる(S1)。第2ステップから第7ステップまでは、例えば画像読取装置10の制御部にインストールされたソフトウェアによって、或いは画像読取装置10と接続されたコンピュータにインストールされたソフトウェアによって実行させることができる。もちろん、各ステップ毎に、作業者が画像読取装置10に対して所定の指令を入力したり、作業者が得られた値の演算を行ったりすることによって、各ステップが実行されてもよい。
第2ステップにおいて、画像読取装置10のイメージセンサユニット52がプラテンガラス21の下方へ移動されて、調整用治具120の第1階段部123における最も低い位置(距離A1)の第1MTFチャート161を読取り可能な位置に待機される。そして、所定の読取解像度で第1MTFチャート161を読み取る。設定される読取解像度は任意であるが、例えば、画像読取装置10において設定可能な高解像度が設定される。イメージセンサ50から、その第1MTFチャート161に光が照射されて、第1MTFチャート161の反射光が光電素子により光電変換されて電気信号として出力される。得られた電気信号は、第1MTFチャート161の長手方向、すなわちイメージセンサ50の読取りライン方向にパターン配置された白色と黒色とに対応するものである。ここで、白色に対応する電気信号をVwとし、黒色に対応する電気信号をVbとする。この2種類の電気信号からMTF値が演算される。MTF値は、次の(式1)に基づいて演算される。
MTF(%)=(Vw−Vb)/(Vw+Vb)×100 ・・・(式1)
なお、MTF値は、必ずしも1ライン分の電気信号から演算されなくてもよい。例えば、イメージセンサ50に、1つの第1MTFチャート161に対して複数ライン分の読取りを行わせ、得られた複数のVw及びVbから所定の方法により平均値を求めて、上記(式1)により演算されるVw及びVbとしてもよい。また、Vw及びVbを、イメージセンサ50から出力された電気信号から、イメージセンサ50が消灯の状態において光電素子から出力される電気信号を差し引いた値としてもよい。また、仮留めされたプラテンガラス21から読取載置台12の内部に外光が進入する場合には、プラテンガラス21に調整用治具120を載置した状態で、外光を斜行可能な幕により調整用治具120及びプラテンガラス21を覆ってもよい。
このようにして、第1階段部123において基準面130から所定の距離A1〜A7に設けられた各第1MTFチャート161をイメージセンサ50により読み取って、7つのMTF値を得る。この7つのMTF値が第1MTF値群である。図17(A)には、第1MTF値群を、横軸を基準面130からの距離A1〜A7とし、縦軸をMTF値として、各MTF値をプロットしたグラフが示されている。ここでは、0.1〜0.7mmまで0.1mm間隔として、距離A1〜A7が設定されている。
つづいて、第3ステップが行われる(S2)。第3ステップでは、読取解像度を第2ステップより低く設定し、その他は第2ステップと同様にして、第2階段部124において基準面130から所定の距離B1〜B7に設けられた各第2MTFチャート162をイメージセンサ50により読み取って、7つのMTF値を得る。この7つのMTF値が第2MTF値群である。図17(B)には、第2MTF値群を、横軸を基準面130からの距離B1〜B7とし、縦軸をMTF値として、各MTF値をプロットしたグラフが示されている。ここでは、0.1〜0.7mmまで0.1mm間隔として、距離B1〜B7が設定されている。なお、第3ステップにおいて設定される読取解像度は第2ステップにおける読取解像度より低ければ任意であるが、例えば、画像読取装置10において設定可能な低解像度が設定される。
つづいて、第4ステップが行われる(S3)。第4ステップでは、第1MTF値群のうち、最も高いMTF値を示した第1MTFチャート161から基準位置130までの距離を第1位置に選定する。具体的には、調整用治具120の第1階段部123において基準位置130からの距離が7段階(A1〜A7)に変化する各第1MTFチャート161に対するMTF値は、図17(A)に示される結果となる。これらのうち、最も高いMTF値を示す距離A3(0.3mm)を第1位置と選定する。
つづいて、第5ステップが行われる(S4〜S9)。第5ステップでは、前述された第1位置に基づいて第2MTF値群から第2位置を選定する。第2位置の選定にあたり、まず、仮第2位置が決められる(S4)。この仮第2位置は、前述された第1位置から所定の第1距離だけ大きい位置である。第1距離は予め設定された距離であり、ここでは0.4mmとする。したがって、基準面130から0.7mmの距離B7が仮第2位置となる。
そして、仮第2位置である距離B7におけるMTF値が第1閾値以上であるかが判断される(S5)。第1閾値は予め定められており、ここでは30%とする。図17(B)に示されるように、距離B7におけるMTF値は約20%であるので、距離B7におけるMTF値は第1閾値未満であると判定される(S5:No)。
すると、仮第2位置を1段階下げる(S6)。1段階下げることにより、第2階段部134における基準面130からの距離が距離B7から1段階少ない距離B6を、新たに仮第2位置とする。そして、新たな仮第2位置である距離B6が、第2階段部134において基準面130からの最低距離以上であるかが判断される(S7)。第2階段部134における最低距離は距離B1なので、ここでは最低距離でないと判断される(S7:No)。仮に、仮第2位置を1段階下げると距離B1未満となれば(S7:Yes)、この調整方法はエラー終了となる(S8)。したがって、これ以下のステップは実行されない。
つづいて、1段階下げられた新たな仮第2位置が、第1閾値以上であるかが判断される(S5)。図17(B)に示されるように、距離B6におけるMTF値は約40%であるので、第1閾値以上であると判定される(S5:Yes)。そうすると、距離B6を第2位置と選定する(S9)。本実施形態においては、第2位置となる距離B6が本発明における第3距離に相当する。仮に、距離B6におけるMTF値が第1閾値未満であれば、再び仮第2位置を1段階下げて、距離B5を仮第2位置として前述されたステップを繰り返す。
つづいて第6ステップが行われる(S11〜S13)。第6ステップでは、前述された第2位置に基づいて第1MTF値群から第3位置を選定する。第3位置の選定にあたり、まず、仮第3位置が決められる(S10)。この仮第3位置は、前述された第2位置から所定の第1距離だけ小さい位置である。第1位置は予め設定された距離であり、前述されたように、ここでは0.4mmである。距離B6は基準面130から0.6mmであるから、基準面130から0.2mmの距離A2が仮第3位置となる。
そして、仮第3位置である距離A2におけるMTF値が第2閾値以上であるかが判断される(S11)。第2閾値は予め定められており、ここでは50%とする。図17(A)に示されるように、距離A2におけるMTF値は約60%であるので、距離A2におけるMTF値は第2閾値以上であると判定される(S11:Yes)。そうすると、仮第3位置を第3位置と選定する(S13)。本実施形態においては、第3位置となる距離A2が本発明における第4距離に相当する。仮に、仮第3位置におけるMTF値が50%未満であれば(S11:No)、この調整方法はエラー終了となる(S12)。したがって、これ以下のステップは実行されない。
そして、第7ステップにおいて、第3位置と選定された距離A2(0.2mm)に基づいて、イメージセンサ50とプラテンガラス21との離間距離とする。前述されたように、仮留めされたプラテンガラス21は、ローラユニット94によってイメージセンサ50との離間距離が定められている。したがって、仮留めにおける離間距離から0.2mm加えた距離が最終的な離間距離として決定される。
第8ステップでは、第7ステップで決定された離間距離に基づいてスペーサ110の枚数を決定する。前述されたように、第1階段部123における各距離A1〜A7の間隔はスペーサ110の厚みに対応されている。つまり、1枚のスペーサ110の厚みは0.1mmである。前述されたように、最終的な離間距離が、ローラユニット94によりイメージセンサ50とプラテンガラス21とが離間される距離より0.2mm加えた距離とされるので、スペーサ110の枚数が2枚と決定される。
画像読取装置10の制御部にインストールされたソフトウェアによって、上述された各ステップが実行された場合には、決定されたスペーサ110の枚数が操作パネル22上の液晶表示部22Bに表示されることが望ましい。また、画像読取装置10と接続されたコンピュータにインストールされたソフトウェアによって、上述された各ステップが実行された場合には、決定されたスペーサ110の枚数がコンピュータの表示画面上に表示されることが望ましい。そして、作業者は、決定された枚数のスペーサ110をイメージセンサ50の両端側の各ローラユニット94と筐体49との間に挿入するのである。
<本実施形態における作用効果>
このように、本調整方法によれば、第1解像度によるイメージセンサ50の画像読取りにおいて所定の読取り品質が確保されると共に、第2解像度によるイメージセンサ50の画像読取りにおいて、被読取媒体がプラテンガラス21から第1距離(0.4mm)まで浮いた場合にも所定の読取り品質を確保できるイメージセンサ50とプラテンガラス21とのとの距離を容易かつ客観的に定めることができる。
また、第1MTFチャート161又は第2MTFチャート162が基準面130から段階的に変化される1段当たりの距離がスペーサ110の厚みとされることにより、スペーサ110の枚数を容易に決定できる。
また、本スキャナ調整方法において調整用治具120が用いられることにより、本調整方法を容易且つ迅速に行うことができる。
調整用治具120において、第1階段部123における各階段面及び各第1MTFチャート161、並びに第2階段部124における各階段面及び各第2MTFチャート162は一方向に延出されているので、各第1MTFチャート161及び各第2MTFチャート162とイメージセンサ50の読取ラインとを合致させることが容易である。
また、第1階段部123と第2階段部124とを光学的に区画する第1仕切壁138が設けられているので、イメージセンサ50が照射する光が第1階段部123及び第2階段部124において相互に影響せず、正確なMTF値を得ることができる。
また、第1階段部123において、各階段面を隣接する他の階段面と光学的に区画する第2仕切壁と、第2階段部124において、各階段面を隣接する他の階段面と光学的に区画する第3仕切壁139とを有するので、イメージセンサ50が照射する光が第1階段部123の各階段面及び第2階段部124の各階段面において相互に影響せず、正確なMTF値を得ることができる。
また、第1階段部123及び第2階段部124において、各第1MTFチャート161及び各第2MTFチャート162を除く各面が黒色に着色されているので、イメージセンサ50の照射光が第1階段部123内又は第2階段部124内において乱反射することが防止される。
また、第1階段部123及び第2階段部124において、各階段面が延出される方向の一方端に、第1MTFチャート161又は第2MTFチャート162を挿抜可能な開口126が設けられたので、開口126を通じて第1MTFチャート161又は第2MTFチャート162が挿抜可能であり、これらの交換作業や容易である。
また、調整用治具120の本体121は、プラテンガラス21に載置された状態において視認可能であって、第1階段部123及び第2階段部124の位置と第1MTFチャート161及び第2MTFチャート161の延出方向とを認識可能な矢印129を有するので、調整用治具120をプラテンガラス21上に載置する際に、第1階段部123及び第2階段部124の位置と第1MTFチャート161及び第2MTFチャート162の延出方向とを容易に認識することができる。
なお、前述された調整方法では、スペーサ110の枚数が、イメージセンサ50の長手方向の両端において同一とされているが、スペーサ110の枚数をイメージセンサ50の両端において異ならせてもよい。
詳細には、前述された第2ステップ及び第3ステップにおいて、イメージセンサ50の読取りライン方向に複数のブロックに分割して、各ブロックごとに第1MTF値群及び第2MTF値群を得ることとする。例えば、複数のブロックとして8ブロックが設定される。そして、この8つのブロックごとに前述された第4ステップから第6ステップを行う。そうすると、8つの各ブロックごとに8つの第3位置(第4距離)が得られる。この8つの第3位置における離間距離(第4距離)に基づいて、イメージセンサ50の読取りライン方向に対して8つのスペーサ枚数を決定する。
そして、得られた8つのスペーサ枚数に対して重み付けを行って、イメージセンサ50の長手方向の両端それぞれにおけるスペーサ枚数を求める。この重み付けは、例えば、次の方法により行う。ここで、得られた8つのスペーサ枚数をK(1)〜K(8)とする。K(1)〜K(8)は、イメージセンサ50の読取りライン方向へ一端から他端へ向かう8つのブロックに順次対応するものであり、イメージセンサ50の装置手前側をK(1)とし、イメージセンサ50の装置奥側をK(8)とする。
イメージセンサ50の装置手前側のスペーサ枚数は、つぎの(式2)により求められる。
(手前側スペーサ枚数)={8×K(1)+7×K(2)+6×K(3)+5×K(4)+4×K(5)+3×K(6)+2×K(7)+1×K(8)} ・・・(式2)
イメージセンサ50の装置奥側のスペーサ枚数は、つぎの(式3)により求められる。
(奥側スペーサ枚数)={8×K(8)+7×K(7)+6×K(6)+5×K(5)+4×K(4)+3×K(3)+2×K(2)+1×K(1)} ・・・(式3)
ここで、(式2)及び(式3)において、K(1)〜K(8)にそれぞれ乗じられている1〜8の係数は重み付けの係数である。また、(式2)及び(式3)により得られた各スペーサ枚数において、小数点以下は四捨五入又は切り捨てられる。
イメージセンサ50における個体差により、イメージセンサ50の読取ライン方向に固有の焦点距離が一定とは限らないが、このように、イメージセンサ50の読取りライン方向に複数のブロックに分割して、各ブロックごとに第3位置(第4距離)を求め、これに対して読取ライン方向に対応した重み付けが行われることにより、イメージセンサ50の両端において適当な離間距離及びスペーサ110の枚数が決定される。