JP4706578B2 - 静電型超音波トランスデューサ、静電型超音波トランスデューサの設計方法、静電型超音波トランスデューサの設計装置、静電型超音波トランスデューサの設計プログラム、製造方法及び表示装置 - Google Patents

静電型超音波トランスデューサ、静電型超音波トランスデューサの設計方法、静電型超音波トランスデューサの設計装置、静電型超音波トランスデューサの設計プログラム、製造方法及び表示装置 Download PDF

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Description

本発明は、プッシュプル(Push−Pull)型の静電型超音波トランスデューサに関し、従来より少ないエネルギーで同じ音圧を発生させることを可能とし、低電圧化(低パワー化)を実現できる、静電型超音波トランスデューサ、これを用いた超音波スピーカ、静電型超音波トランスデューサの設計方法、静電型超音波トランスデューサによる音声信号再生方法、静電型超音波トランスデューサの設計装置、静電型超音波トランスデューサの設計プログラム、静電型超音波トランスデューサの固定電極の製造方法、超指向性音響システム、および表示装置に関する。
従来より静電方式の超音波トランスデューサは高周波数帯域にわたって高い音圧を発生可能な広帯域発振型超音波トランスデューサとして知られている。図7に広帯域発振型超音波トランスデューサの構成例を示す。この静電型の超音波ト ランスデューサは、振動膜が固定電極側に引き付けられる方向のみ働くことからPull型と呼ばれている。
図7に示す静電型の超音波トランスデューサは、振動体(振動膜)として3〜10μm程度の厚さのPET(ポリエチレンテレフタレート樹脂)等の誘電体131(絶縁体)を用いている。誘電体131に対しては、アルミ等の金属箔として形成される上電極132がその上面部に蒸着等の処理によって一体形成されるとともに、真鍮で形成された下電極133が誘電体131の下面部に接触するように設けられている。この下電極133は、リード152が接続されるとともに、ベークライト等からなるベース板135に国定されている。
また、上電極132は、リード153が接続されており、このリード153は直流バイアス電源150に接続されている。この直流バイアス電源150により上電極132には50〜150V程度の上電極吸着用の直流バイアス電圧が常時印加され、上電極132が下電極133側に吸着されるようになっている。151は信号源である。
誘電体131および上電極132ならびにベース板135は、メタルリング136、137、および138、ならびにメッシュ139とともに、ケース130によってかしめられている。
下電極133の誘電体131側の面には不均一な形状を有する数十〜数百μm程度の微小な溝が複数形成されている。この微小な溝は、下電極133と誘電体131との間の空隙となるので、上電極132および下電極133間の静電容量の分布が微小に変化する。このランダムな微小な溝は、下電極133の表面を手作業でヤスリにより荒らすことで形成されている。静電方式の超音波トランスデューサでは、このようにして空隙の大きさや深さの異なる無数のコンデンサを形成することによって、周波数特性が広帯域となっている(例えば、特許文献1、2参照)。
上述したように、図7に示す静電方式の超音波トランスデューサは従来から広周波数帯に渡って比較的高い音圧を発生させることが可能な広帯域超音波トランスデューサ(Pull型)として知られている。
しかしながら、音圧の最大値はやや低く、例えば、120dB以下と音圧が低く、超音波スピーカとして利用するには若干音圧が不足していた。超音波スピーカにおけるパラメトリック効果が十分現れるためには120dB以上の超音波音圧が必要であるが、静電型の超音波トランスデューサ(プル型)ではこの数値を達成することが難しく、もっぱらPZTなどのセラミック圧電素子やPVDFなどの高分子圧電素子が超音波発信体として用いられてきた。しかし、圧電素子はその材質を問わず鋭い共振点を有しており、その共振周波数で駆動して超音波スピーカとして実用化しているため、高い音圧を確保出来る周波数領域が極めて狭い。すなわち狭帯域であるといえる。
このような問題を解決するために、図1に示すような、本発明の設計方法が適用される静電型超音波トランスデューサが現在提案されている(特願2004−173946号)。このような構造は一般にプッシュプル(Push−Pull)型と呼ばれており、その構造と動作の詳細については後述するが、図1に示す超音波トランスデューサにおいては、プル(Pull)型の静電型超音波トランスデューサに比して、広帯域性と高音圧を同時に満たす能力を持っている。
ところで、図1に示すプッシュプル型の静電型超音波トランスデューサにおいては、特に、固定電極10A、10Bの凸部の高さt(段付穴の段高さ)をいくらにするかが重要な問題となる。この、固定電極10A、10Bの凸部の高さt(段付穴の段高さ)については、従来は、例えば、経験的にその余裕を見て10〜20μmにするなど多めに設定していた。このように、凸部高さtを高くすると、その分、高い駆動交流電圧が必要となり、また余分なエネルギーを消費し、問題となっていた。このため、所望音圧と駆動周波数の値から最適な凸部高さtを定量的に設計する方法の提供が求められていた。
最適な凸部高さtを定量的に求めることができれば、少ない駆動電圧で所望の音圧が得られる効率の良い構成を実現できることになる。換言すれば、より少ないエネルギーで同じ音圧を発生させることが可能となり、静電型超音波トランスデューサの低電圧化(低パワー化)を実現することができる。
特開2000−50387号公報 特開2000−50392号公報
上述したように、図1に示すようなプッシュプル型の静電型超音波トランスデューサにおいては、固定電極10A、10Bの凸部の高さt(段付穴の段高さ)を定量的に設計する方法の提供が求められていた。最適な凸部高さtを定量的に求めることができれば、少ない駆動電圧で所望の音圧が得られる効率の良い構成を実現できることになり、より少ないエネルギーで同じ音圧を発生させることが可能となる。すなわち、静電型超音波トランスデューサの低電圧化(低パワー化)を実現することができるためである。
本発明はこのような問題を解決するためになされたものであり、プッシュプル型の静電型超音波トランスデューサにおいて、固定電極の凸部の高さを定量的に求め、従来より少ないエネルギーで同じ音圧を発生させることを可能とし、低電圧化(低パワー化)を図った静電型超音波トランスデューサを提供することを第1の目的とする。
また、本発明は、上記プッシュプル型の静電型超音波トランスデューサを用いた超音波スピーカ、静電型超音波トラ0ンスデューサの設計方法、静電型超音波トランスデューサの設計装置、静電型超音波トランスデューサの設計プログラム、音声信号再生方法、製造方法、超指向性音響システム及びプロジェクタを提供することを第2の目的とする。
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の超音波トランスデューサは、貫通穴が形成された第1の電極と、前記第1の電極の貫通穴と対をなす貫通穴が形成され、前記第1の電極との間に交流信号が印加される第2の電極と、前記一対の電極に挟まれると共に、導電層を有し、該導電層に直流バイアス電圧が印加される振動膜と、前記一対の電極と前記振動膜とを保持する保持部材とを有し、
出力される所望音圧をP(dB)、駆動周波数をf(Hz)としたときに、前記振動膜が駆動された際の該振動膜における膜振動の片側振幅値をa(m)すると、膜振動の片側振幅値aを、次式、
a=(1/πf)√{(I・10P/10)/2ρc}、
ここで、Io:基準音響インテンシティーで0.96×10−12(W/m)、ρo:空気の密度で1.2(kg/m)、c:空気中の音速で約340(m/S)、
により求め、
前記一対の電極の各々の振動膜側における貫通穴外周に段部を有し、該段部の前記振動膜側方向の高さを、前記片側振幅値aを超え、かつ前記片側振幅値aの近傍の値に設定したことを特徴とする。
このような構成により、例えば、図1に示すプッシュプル型の静電型超音波トランスデューサにおいて、所望音圧と駆動周波数が与えられたとき、段付穴の段高さtを最適に設定するための数式を定式化する。この数式は、所望音圧をP(dB)、駆動周波数をf(Hz)、膜振動の片側振幅a(m)としたとき、次式で与えられる。
a=(1/πf)√{t(I・10P/10)/2ρc}、
ここで、Io:基準音響インテンシティーで0.96×10−12(W/m)、ρo:空気の密度で1.2(kg/m)、c:空気中の音速で約340(m/S)、である。
そして、上記計算式で求めた膜振動振幅の値を超え、かつその振幅値に極力近い値(少なくとも膜振動により振動膜が電極に接触しない範囲で)を固定電極の段付穴の段高さtとして設計し、固定電極が前記方法により設計された超音波トランスデューサを製作する。
これにより、所望音圧と駆動周波数の値から最適な凸部高さtが設計できるようになり、その結果、静電型超音波トランスデューサが効率の良い構成となるため、より少ない駆動電圧で所望の音圧が得られる。換言すれば、より少ないエネルギーで従来技術と同じ音圧を発生させることが可能となり、静電型超音波トランスデューサの低電圧化(低パワー化)を実現できる。
また、本発明の超音波トランスデューサの設計方法は、貫通穴が形成された第1の電極と、前記第1の電極の貫通穴と対をなす貫通穴が形成され、前記第1の電極との間に交流信号が印加される第2の電極と、前記一対の電極に挟まれると共に、導電層を有し、該導電層に直流バイアス電圧が印加される振動膜と、前記一対の固定電極と前記振動膜とを保持する保持部材とを有し、
出力される所望音圧をP(dB)、駆動周波数をf(Hz)としたときに、前記振動膜が駆動された際の該振動膜における膜振動の片側振幅値をa(m)すると、膜振動の片側振幅値aを、次式、
a=(1/πf)√{(I・10P/10)/2ρc}、
ここで、Io:基準音響インテンシティーで0.96×10−12(W/m)、ρo:空気の密度で1.2(kg/m)、c:空気中の音速で約340(m/S)、
により算出し、
前記一対の電極の各々の振動膜側における貫通穴外周に段部を有し、該段部の前記振動膜側方向の高さを、前記片側振幅値aを超え、かつ前記片側振幅値aの近傍の値に設定することを特徴とする。
このような手順により、例えば、図1に示すプッシュプル型の静電型超音波トランスデューサにおいて、所望音圧と駆動周波数が与えられたとき、段付穴の段高さtを最適に設定するための数式を定式化する。この数式は、所望音圧をP(dB)、駆動周波数をf(Hz)、膜振動の片側振幅a(m)としたとき、次式で与えられる。
a=(1/πf)√{t(I・10P/10)/2ρc}、
ここで、Io:基準音響インテンシティーで0.96×10−12(W/m)、ρo:空気の密度で1.2(kg/m)、c:空気中の音速で約340(m/S)、である。
そして、上記計算式で求めた膜振動振幅の値を超え、かつその振幅値に極力近い値(少なくとも膜振動により振動膜が電極に接触しない範囲で)を固定電極の段付穴の段高さtとして設計し、固定電極が前記方法により設計された超音波トランスデューサを製作する。
これにより、所望音圧と駆動周波数の値から最適な凸部(段部)高さtが設計できるようになり、その結果、静電型超音波トランスデューサが効率の良い構成となるため、より少ない駆動電圧で所望の音圧が得られる。換言すれば、より少ないエネルギーで従来技術と同じ音圧を発生させることが可能となり、静電型超音波トランスデューサの低電圧化(低パワー化)を実現できる。
また、本発明の静電型超音波トランスデューサの設計装置は、貫通穴が形成された第1の電極と、前記第1の電極の貫通穴と対をなす貫通穴が形成され、前記第1の電極との間に交流信号が印加される第2の電極と、前記一対の電極に挟まれると共に、導電層を有し、該導電層に直流バイアス電圧が印加される振動膜と、前記一対の固定電極と前記振動膜とを保持する保持部材とを有し、
出力される所望音圧をP(dB)、駆動周波数をf(Hz)としたときに、前記振動膜が駆動された際の該振動膜における膜振動の片側振幅値をa(m)すると、膜振動の片側振幅値aを、次式、
a=(1/πf)√{(I・10P/10)/2ρc}、
ここで、Io:基準音響インテンシティーで0.96×10−12(W/m)、ρo:空気の密度で1.2(kg/m)、c:空気中の音速で約340(m/S)、
により算出する演算手段と、
前記一対の電極の各々の振動膜側における貫通穴外周に振動膜挟持部としての段部を有し、該段部の前記振動膜側方向の高さを、前記片側振幅値aを超え、かつ前記片側振幅値aの近傍の値に設定する設定手段と、
を有することを特徴とする。
上記構成により、演算手段は、出力される所望音圧をP(dB)、駆動周波数をf(Hz)としたときに、前記振動膜が駆動された際の該振動膜における膜振動の片側振幅値をa(m)すると、膜振動の片側振幅値aを、次式、a=(1/πf)√{(I・10P/10)/2ρc}、ここで、Io:基準音響インテンシティーで0.96×10−12(W/m)、ρo:空気の密度で1.2(kg/m)、c:空気中の音速で約340(m/S)、により算出し、設定手段は、前記一対の電極の各々の振動膜側における貫通穴外周に振動膜挟持部としての段部を有し、該段部の前記振動膜側方向の高さを、前記片側振幅値aを超え、かつ前記片側振幅値aの近傍の値(少なくとも膜振動により振動膜が電極に接触しない範囲で)に設定する。
これにより、所望音圧と駆動周波数の値から最適な凸部(段部)高さtが設計できるようになり、その結果、静電型超音波トランスデューサが効率の良い構成となるため、より少ない駆動電圧で所望の音圧が得られる。換言すれば、より少ないエネルギーで従来技術と同じ音圧を発生させることが可能となり、静電型超音波トランスデューサの低電圧化(低パワー化)を実現できる。
また、本発明の静電型超音波トランスデューサの設計プログラムは、貫通穴が形成された第1の電極と、前記第1の電極の貫通穴と対をなす貫通穴が形成され、前記第1の電極との間に交流信号が印加される第2の電極と、前記一対の電極に挟まれると共に、導電層を有し、該導電層に直流バイアス電圧が印加される振動膜と、前記一対の固定電極と前記振動膜とを保持する保持部材とを有し、
出力される所望音圧をP(dB)、駆動周波数をf(Hz)としたときに、前記振動膜が駆動された際の該振動膜における膜振動の片側振幅値をa(m)すると、膜振動の片側振幅値aを、次式、 a=(1/πf)√{(I・10P/10)/2ρc}、ここで、Io:基準音響インテンシティーで0.96×10−12(W/m)、ρo:空気の密度で1.2(kg/m)、c:空気中の音速で約340(m/S)、により算出する第1のステップと、前記一対の電極の各々の振動膜側における貫通穴外周に段部を有し、該段部の前記振動膜側方向の高さを、前記片側振幅値aを超え、かつ前記片側振幅値aの近傍の値に設定する第2のステップとをコンピュータに実行させることを要旨とする。
上記構成において、出力される所望音圧をP(dB)、駆動周波数をf(Hz)としたときに、前記振動膜が駆動された際の該振動膜における膜振動の片側振幅値をa(m)すると、膜振動の片側振幅値aを、次式、a=(1/πf)√{(I・10P/10)/2ρc}、ここで、Io:基準音響インテンシティーで0.96×10−12(W/m)、ρo:空気の密度で1.2(kg/m)、c:空気中の音速で約340(m/S)、により算出する第1のステップと、前記一対の電極の各々の振動膜側における貫通穴外周に振動膜挟持部としての段部を有し、該段部の前記振動膜側方向の高さを、前記片側振幅値aを超え、かつ前記片側振幅値aの近傍の値(少なくとも膜振動により振動膜が電極に接触しない範囲で)に設定する第2のステップとをコンピュータに実行させるための電型超音波トランスデューサの設計プログラムをコンピュータに実行させることにより、所望音圧と駆動周波数の値から最適な凸部(段部)高さtが設計できるようになり、その結果、静電型超音波トランスデューサが効率の良い構成となるため、より少ない駆動電圧で所望の音圧が得られる。換言すれば、より少ないエネルギーで従来技術と同じ音圧を発生させることが可能となり、静電型超音波トランスデューサの低電圧化(低パワー化)を実現できる。
また、本発明の超音波スピーカは、貫通穴が形成された第1の電極と、前記第1の電極の貫通穴と対をなす貫通穴が形成され、前記第1の電極との間に交流信号が印加される第2の電極と、前記一対の電極に挟まれると共に、導電層を有し、該導電層に直流バイアス電圧が印加される振動膜と、前記一対の電極と前記振動膜とを保持する保持部材とを有し、
出力される所望音圧をP(dB)、駆動周波数をf(Hz)としたときに、前記振動膜が駆動された際の該振動膜における膜振動の片側振幅値をa(m)すると、膜振動の片側振幅値aを、次式、a=(1/πf)√{(I・10P/10)/2ρc}、ここで、Io:基準音響インテンシティーで0.96×10−12(W/m)、ρo:空気の密度で1.2(kg/m)、c:空気中の音速で約340(m/S)、により求め、前記一対の電極の各々の振動膜側における貫通穴外周に段部を有し、該段部の前記振動膜側方向の高さを、前記片側振幅値aを超え、かつ前記片側振幅値aの近傍の値に設定したこと を特徴とする。
これにより、超音波スピーカが効率の良い構成となるため、より少ない電圧で所望音圧が得られる。すなわち、従来技術の超音波スピーカと同じ音圧を、より少ないエネルギーで発生させることが可能となり、超音波スピーカの低電圧化(低パワー化)を実現できる。
また、本発明の静電型超音波トランスデューサの音声信号再生方法は、貫通穴が形成された第1の電極と、前記第1の電極の貫通穴と対をなす貫通穴が形成され、前記第1の電極との間に交流信号が印加される第2の電極と、前記一対の電極に挟まれると共に、導電層を有し、該導電層に直流バイアス電圧が印加される振動膜と、前記一対の電極と前記振動膜とを保持する保持部材とを有し、出力される所望音圧をP(dB)、駆動周波数をf(Hz)としたときに、前記振動膜が駆動された際の該振動膜における膜振動の片側振幅値をa(m)すると、膜振動の片側振幅値aを、次式、a=(1/πf)√{(I・10P/10)/2ρc}、ここで、Io:基準音響インテンシティーで0.96×10−12(W/m)、ρo:空気の密度で1.2(kg/m)、c:空気中の音速で約340(m/S)、により求め、前記一対の電極の各々の振動膜側における貫通穴外周に段部を有し、該段部の前記振動膜側方向の高さを、前記片側振幅値aを超え、かつ前記片側振幅値aの近傍の値に設定したことを特徴とする静電型超音波トランスデューサを使用する共に、信号源により可聴周波数帯の信号波を生成する手順と、キャリア波供給源により超音波周波数帯のキャリア波を生成する手順と、前記キャリア波を前記可聴周波数帯の信号波により変調した変調信号を生成する手順と、前記固定電極と前記振動膜の電極層との間に前記変調信号を印加することにより前記静電型超音波トランスデューサを駆動する手順と、を含むことを特徴とする。
このような手順を含む静電型超音波トランスデューサの音声信号再生方法では、信号源により可聴周波数帯の信号波が生成され、またキャリア波供給源により超音波周波数帯のキャリア波が生成され、出力される。そして、キャリア波が前記可聴周波数帯の信号波により変調され、この変調信号が固定電極と振動膜の電極層との間に印加され、静電型超音波トランスデューサが駆動される。
これにより、上記構成の静電型超音波トランスデューサにより、広周波数帯域にわたってパラメトリックアレイ効果を得るのに十分高い音圧レベルの音響信号を出力し、音声信号を再生することが可能になる。
また、本発明の静電型超音波トランスデューサの製造方法は、貫通穴が形成された第1の電極と、前記第1の電極の貫通穴と対をなす貫通穴が形成され、前記第1の電極との間に交流信号が印加される第2の電極と、前記一対の電極に挟まれると共に、導電層を有し、該導電層に直流バイアス電圧が印加される振動膜と、前記一対の電極と前記振動膜とを保持する保持部材とを有し、前記一対の電極の固定電極部を形成するための導電体板上に貫通穴のパターンを形成したマスク部材を被覆し、エッチング処理により前記導電体板に貫通穴を形成する第1の工程と、前記静電型超音波トランスデューサにより出力される所望音圧をP(dB)、駆動周波数をf(Hz)としたときに、前記振動膜が駆動された際の該振動膜における膜振動の片側振幅値をa(m)すると、膜振動の片側振幅値aを、次式、a=(1/πf)√{(I・10P/10)/2ρc}、ここで、Io:基準音響インテンシティーで0.96×10−12(W/m)、ρo:空気の密度で1.2(kg/m)、c:空気中の音速で約340(m/S)、により求め、前記一対の電極の各々の振動膜側における貫通穴外周に段部を有し、該段部の前記振動膜側方向の高さを、前記片側振幅値aを超え、かつ前記片側振幅値aの近傍の値になるように形成する第2の工程と、
を有することを特徴とする。
上記工程からなる本発明の静電型超音波トランスデューサの製造方法では、一対の固定電極の固定電極部を形成するための導電体板上に複数の貫通穴のパターンを形成したマスク部材を被覆し、エッチング処理により前記導電体板に複数の貫通穴を形成する。そして、前記静電型超音波トランスデューサにより出力される所望音圧をP(dB)、駆動周波数をf(Hz)としたときに、前記振動膜が駆動された際の該振動膜における膜振動の片側振幅値をa(m)すると、膜振動の片側振幅値aを、次式、a=(1/πf)√{(I・10P/10)/2ρc}(ここで、Io:基準音響インテンシティーで0.96×10−12(W/m)、ρo:空気の密度で1.2(kg/m)、c:空気中の音速で約340(m/S))により求め、前記一対の固定電極の各々の振動膜側における貫通穴外周に設ける振動膜挟持部である段部の高さを、前記片側振幅値aを超え、かつ前記片側振幅値aの近傍の値(少なくとも膜振動により振動膜が電極に接触しない範囲で)になるように形成する。
これにより、固定電極の凸部の高さを定量的に求め、従来より少ないエネルギーで同じ音圧を発生させることが可能となり、低電圧化(低パワー化)を図った静電型超音波トランスデューサが得られる。
また、本発明の静電型超音波トランスデューサの製造方法は、前記貫通穴が形成された導電体板に振動膜挟持部形成材としての非導電性の感光性レジストを所定の厚さに形成する第3の工程と、前記非導電性の感光性レジスト表面に前記振動膜挟持部のパターンが形成された振動膜挟持部形成用マスク部材を被覆し、露光する第4の工程と、前記振動膜挟持部形成用マスク部材を剥離し、現像により不要な前記感光性レジストを除去する第5の工程と、を有することを特徴とする。
上記工程からなる本発明の静電型超音波トランスデューサの製造方法では、貫通穴が形成された導電体板に振動膜挟持部形成材としての非導電性の感光性レジストを所定の厚さに形成する第3の工程と、前記非導電性の感光性レジスト表面に前記振動膜挟持部のパターンが形成された振動膜挟持部形成用マスク部材を被覆し、露光する第4の工程と、前記振動膜挟持部形成用マスク部材を剥離し、現像により不要な前記感光性レジストを除去する第5の工程とを有するので、従来必要とされた金属電鋳以降の工程が不要にできるため製造工程が短縮され、かつ製造コストを削減できる。また、残留レジストの剥離工程で使用する溶剤等(主に強アルカリ溶剤)が不要となり、環境面でも改善できる。
また、本発明の静電型超音波トランスデューサの製造方法は、前記貫通穴が形成された導電体板表面に前記振動膜挟持部形成材を形成するためのマスク部材が配列されてなるスクリーン印刷版及び液状の振動膜挟持部形成材をセットする第3の工程と、前記貫通穴が形成された導電体板表面に前記スクリーン印刷板及び前記液状の振動膜挟持部形成材をセットした後、スキージを移動させながら前記振動膜挟持部形成材をマスク部材がかかっていない部分に塗布する第4の工程と、前記振動膜挟持部形成材をマスク部材がかかっていない部分に塗布した後、前記スクリーン印刷版を外し、前記導電板表面に残存する前記振動膜挟持部形成材を乾燥させる第5の工程とを有することを特徴とする。
上記工程からなる本発明の静電型超音波トランスデューサの製造方法では、貫通穴が形成された導電体板表面に前記振動膜挟持部を形成するためのマスク部材が配列されてなるスクリーン印刷板及び液状の前記振動膜挟持部形成材をセットする第3の工程と、前記複数の貫通穴が形成された導電体板表面に前記スクリーン印刷板及び液状の振動膜挟持部形成部材をセットした後、スキージを移動させながら前記振動膜挟持部形成部材をマスク部材がかかっていない部分に塗布する第4の工程と、前記振動膜挟持部形成材をマスク部材がかかっていない部分に塗布した後、前記スクリーン印刷版を外し、前記導電板表面に残存する前記振動膜挟持部形成材を乾燥させる第5の工程とを有するので、従来必要とされた金属電鋳以降の工程が不要にでき、さらにフォトリソグラフィー法で行う現像といった工程も全く必要ないため、製造工程が大幅に短縮され、かつ製造コストを大幅に削減できる。
また、本発明の超指向性音響システムは、貫通穴が形成された第1の電極と、前記第1の電極の貫通穴と対をなす貫通穴が形成され、前記第1の電極との間に交流信号が印加される第2の電極と、前記一対の電極に挟まれると共に、導電層を有し、該導電層に直流バイアス電圧が印加される振動膜と、前記一対の電極と前記振動膜とを保持する保持部材とを有し、出力される所望音圧をP(dB)、駆動周波数をf(Hz)としたときに、前記振動膜が駆動された際の該振動膜における膜振動の片側振幅値をa(m)すると、膜振動の片側振幅値aを、次式、a=(1/πf)√{(I・10P/10)/2ρc}、ここで、Io:基準音響インテンシティーで0.96×10−12(W/m)、ρo:空気の密度で1.2(kg/m)、c:空気中の音速で約340(m/S)、により求め、前記一対の電極の各々の振動膜側における貫通穴外周に段部を有し、該段部の前記振動膜側方向の高さを、前記片側振幅値aを超え、かつ前記片側振幅値aの近傍の値に設定したことを特徴とする静電型超音波トランスデューサを用いて構成された超音波スピーカにより、音響ソースから供給される音声信号を再生し、スクリーン等の音波反射面近傍に仮想音源を形成する超指向性音響システムであって、前記音響ソースから供給される音声信号のうち中高音域の信号を再生する超音波スピーカと、前記音響ソースから供給される音声信号のうち低音域の音声を再生する低音再生用スピーカとを有することを特徴とする。
上記構成の超指向性音響システムでは、静電型超音波トランスデューサにより出力される所望音圧をP(dB)、駆動周波数をf(Hz)としたときに、前記振動膜が駆動された際の該振動膜における膜振動の片側振幅値をa(m)すると、膜振動の片側振幅値aを、次式、a=(1/πf)√{(I・10P/10)/2ρc}、ここで、Io:基準音響インテンシティーで0.96×10−12(W/m)、ρo:空気の密度で1.2(kg/m)、c:空気中の音速で約340(m/S)、により求め、前記一対の固定電極の各々の振動膜側における貫通穴外周に設けた振動膜挟持部である段部の高さを、前記片側振幅値aを超え、かつ前記片側振幅値aの近傍の値(少なくとも膜振動により振動膜が電極に接触しない範囲で)に設定された静電型超音波トランスデューサで構成される超音波スピーカを使用する。そして、この超音波スピーカにより、音響ソースから供給される音声信号のうち中高音域の音声信号を再生する。また、音響ソースから供給される音声信号のうち低音域の音声信号は低音再生用スピーカにより再生する。
したがって、中高音域の音響を十分な音圧と広帯域特性を持って、スクリーン等の音波反射面近傍に形成される仮想音源から発せられるように再生できる。また、低音域の音響は、音響システムに備えられた低音再生用スピーカから直接出力されるので、低音域の補強ができ、より臨場感の高い音場環境を創生できる。
また、本発明の表示装置は、貫通穴が形成された第1の電極と、前記第1の電極の貫通穴と対をなす貫通穴が形成され、前記第1の電極との間に交流信号が印加される第2の電極と、前記一対の電極に挟まれると共に、導電層を有し、該導電層に直流バイアス電圧が印加される振動膜と、前記一対の電極と前記振動膜とを保持する保持部材とを有し、出力される所望音圧をP(dB)、駆動周波数をf(Hz)としたときに、前記振動膜が駆動された際の該振動膜における膜振動の片側振幅値をa(m)すると、膜振動の片側振幅値aを、次式、a=(1/πf)√{(I・10P/10)/2ρc}、ここで、Io:基準音響インテンシティーで0.96×10−12(W/m)、ρo:空気の密度で1.2(kg/m)、c:空気中の音速で約340(m/S)、により求め、前記一対の電極の各々の振動膜側における貫通穴外周に段部を有し、該段部の前記振動膜側方向の高さを、前記片側振幅値aを超え、かつ前記片側振幅値aの近傍の値に設定したことを特徴とする静電型超音波トランスデューサを含んで構成され、音響ソースから供給される音声信号から可聴周波数帯の信号音を再生する超音波スピーカと、映像を投影面に投影する投影光学系とを有することを特徴とする。
上記構成の表示装置では、静電型超音波トランスデューサにより出力される所望音圧をP(dB)、駆動周波数をf(Hz)としたときに、前記振動膜が駆動された際の該振動膜における膜振動の片側振幅値をa(m)すると、膜振動の片側振幅値aを、次式、a=(1/πf)√{(I・10P/10)/2ρc}、ここで、Io:基準音響インテンシティーで0.96×10−12(W/m)、ρo:空気の密度で1.2(kg/m)、c:空気中の音速で約340(m/S)、により求め、前記一対の固定電極の各々の振動膜側における貫通穴外周に設けた振動膜挟持部である段部の高さを、前記片側振幅値aを超え、かつ前記片側振幅値aの近傍の値(少なくとも膜振動により振動膜が電極に接触しない範囲で)に設定された静電型超音波トランスデューサで構成される超音波スピーカを使用する。そして、この超音波スピーカにより、音響ソースから供給される音声信号を再生する。
これにより、音響信号を十分な音圧と広帯域特性を持って、スクリーン等の音波反射面近傍に形成される仮想音源から発せられるように再生できる。このため、音響信号の再生範囲の制御も容易に行えるようになる。
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
[発明の概要]
本発明においては、図1に示すプッシュプル型の静電型超音波トランスデューサにおいて、所望音圧と駆動周波数が与えられたとき、段付穴の段(振動膜挟持部に相当する。)高さtを最適に設定するための数式を定式化する。この数式は、所望音圧をP(dB)、駆動周波数をf(Hz)としたときの膜振動の片側振幅値a(m)は次式で与えられる。
Figure 0004706578
ここで、Io:基準音響インテンシティーで0.96×10−12(W/m)、
ρo:空気の密度で1.2(kg/m)、c:空気中の音速で約340(m/S)、
そして、上記計算式で求めた膜振動の片側振幅値aを超え、かつその振幅値aに極力近い値(少なくとも膜振動により振動膜が電極に接触しない範囲で)を固定電極の段付穴の段高さtとして設計し、超音波トランスデューサを製作する。また、同定電極が前記方法により設計された超音波トランスデューサを超音波スピーカに使用する。
[本発明の設計方法が適用される超音波トランスデューサの例についての説明]
図1は、本発明による設計方法が適用されるプッシュプル型の静電型超音波トランスデューサの概略構成図である。
図1において、本発明の設計方法が適用されるプッシュプル型の静電型超音波トランスデューサ1は、電極として機能する導電性材料で形成された導電部材を含む一対の固定電極10A、10Bと、一対の固定電極に挟持され、電極層(導電層)121を有する振動膜12と、一対の固定電極10A、10Bと振動膜を保持する部材(図示せず)とを有している。
振動膜12は、絶縁体120で形成され、導電性材料で形成された電極層121を有しており、該電極層121には、直流バイアス電源16により単一極性(正極性でも負極性のいずれでもよい)の直流バイアス電圧が印加されるようになっており、さらに、この直流バイアス電圧に重畳して一対の固定電極10A、10B間には、信号源18から出力される相互に位相反転した交流信18A,18Bが印加されるようになっている。
また、一対の固定電極10A、10Bは振動膜12を介して対向する位置に同数かつ複数の貫通穴(段付きの貫通穴)14を有しており、一対の固定電極10A、10Bの導電部材間には信号源18により相互に位相反転した交流信18A,18Bが印加されるようになっている。固定電極10Aと電極層121、固定電極10Bと電極層121は、それぞれコンデンサが形成されている。
上記構成において、超音波トランスデューサ1は、振動膜12の電極層121に、直流バイアス電源16により単一極性の(本例では正極性の)直流バイアス電圧に信号源18から出力される相互に位相反転した交流信18A,18Bが重畳された状態で印加される。
一方、一対の固定電極10A、10Bには、信号源18より交流信号が印加される。この結果、信号源18から出力される交流信号18Aの正の半サイクルでは、固定電極10Aに正の電圧が印加されるために、振動膜12の固定電極で挟持されていない表面部分12Aには、静電反発力が作用し、表面部分12Aは、図1上、下方に引っ張られる。
また、このとき、交流信号18Bが負のサイクルとなり、対向する固定電極10Bには、負の電圧が印加されるために、振動膜12の前記表面部分12Aの裏面側である裏面部分12Bには、静電吸引力が作用し、裏面部分12Bは、図1上、さらに下方に引っ張られる。
したがって、振動膜12の一対の固定電極10A、10Bにより挟持されていない膜部分は、同方向に静電反発力と静電斥力を受ける。これは、信号源18から出力される交流信号の負の半サイクルについても同様に、振動膜12の表面部分12Aには図1上、上方に静電吸引力が、また裏面部分12Bには、図1上、上方に静電反発力が作用し、振動膜12の一対の固定電極10A、10Bにより挟持されていない膜部分は、同方向に静電反発力と静電斥力を受ける。このようにして、交流信号の極性の変化に応じて振動膜12が同方向に静電反発力と静電斥力を受けながら、交互に静電力が働く方向が変化するので、大きな膜振動、すなわち、パラメトリックアレイ効果を得るのに十分な音圧レベルの音響信号を発生することができる。
このように超音波トランスデューサ1は、振動膜12が一対の固定電極10A、10Bから力を受けて振動することからプッシュプル(Push−Pull)型と呼ばれている。プッシュプル型超音波トランスデューサ1は、振動膜に静電吸引力のみしか作用しないプル型(Pull)型の静電型超音波トランスデューサに比して、広帯域性と高音圧を同時に満たす能力を持っている。
図1に示す超音波トランスデューサにおいて、固定電極10A、10Bは、その材質が導電性であればよく、例えば、SUSや真鍮、鉄、ニッケルの単体構成も可能である。また、軽量化をはかる必要があるため、回路基板などで一般的に用いられるガラスエポシキ基板や紙フェノール基板に所望の穴加工を施した後、ニッケルや金、銀、銅などでメッキ処理をすることなども可能である。またこの場合成型後のソリを防止するために基板へのメッキ加工は両面に施すなどの工夫も有効である。ただし絶縁性を考慮すると、各々の固定電極の振動膜側には何らかの絶縁処理が施される事が望ましい。例えば、液状ソルダーレジスト、感光性フイルム、感光性コート材、非導電性塗料、電着材料などで絶縁された凸部を形成する。
ところで、図1に示す静電超音波トランスデューサの固定電極の凸部の拡大図を図2に示す。図2に示すように、凸部の段高さtが振動膜12の膜振幅以上でないと振動膜12が固定電極に接触する可能性があることがわかる。したがって、凸部高さ(段付き穴の段高さ)tを設計するには振動膜12の膜振幅を算出すればよいことが分かる。換言すると、凸部高さ(段付き穴の段高さ)tを膜振幅に近い値(少なくとも膜振動により振動膜が電極に接触しない範囲で)にすれば、最適設計となり、より少ないエネルギーで所望の音圧を発生させることが可能となり、低電圧化(低パワー化)を実現できることがわかる。以下、振動膜12の膜振幅の算出方法について説明する。
[振動膜の膜振幅の算出(波動方程式の算出)]
振動膜の膜振幅を算出するための第1番目の手順として、波動方程式の導出(空中音響に関する)を行う。膜振幅と音圧の関係とは直接関係ないが、今後頻繁に使う重要な変数の定義を理解する上で重要な式の導出であるので、まずは音響に関する波動方程式を導く(出典:音響工学原論(上巻)、伊藤毅 著、コロナ社、P158〜159)。
図3に示すように、平面xと平面x+δxとの間に挟まれている気体の体積は、変化の生じた後のtなる時刻には平面(x+ξ)と(x+ξ+δx+δξ)との間に挟まれることになるから、この体額を囲む二面間の距離はδxからδx+δξに変化する。したがってδξは、
Figure 0004706578
と考えることができるので、層の厚さ変化は、
Figure 0004706578
となる。よってこの部分の膨張率(無次元量)は、
Figure 0004706578
したがって凝縮率(無次元量)は、
Figure 0004706578
次に圧力を凝縮率s、すなわちξの項で表しておくと便利なので、
Figure 0004706578
であることを利用して、
Figure 0004706578
ここで、平面xとx+δxとの間の気体の質量に対する運動方程式を立てる。この平面の単位面積に作用する力の平衡の式は、
Figure 0004706578
ここでδpは平面の前面における圧力増大の大きさである。(6)、(5)、(3)式より、
Figure 0004706578
(7)式が音響に関する平面波動方程式である。
[振動膜の膜振幅の算出(平面波の音響インテンシティーの導出)]
振動膜の膜振幅を算出するための、第2番目の手順として、平面波の波頭面の単位面積を貫いて流れるエネルギー流を求める。それには図4に示すように、断面積がSなる筒を想定し、その中の空気が一端にあるピストンで振動させられる堤合について考え、音響インテンシティーを導出する。
図4においてピストンの運動を(8)式で表す。
Figure 0004706578
xの正の側にある空気は、
Figure 0004706578
なる変位をすると考えられる。この場合ピストンが空気に対してする仕事量は毎秒、
Figure 0004706578
となり、時間平均を取ると、(10)式の第1項はなくなり、
Figure 0004706578
となる。この値はcSなる体積内に含まれる音波のエネルギーに等しく、これだけのエネルギーが毎秒ピストンから空中に放出される。しかし、音波は毎秒cだけの距離を伝播するので波頭面は毎秒cだけ前進し、毎秒cSなる体積内の空気は静止していたものが新たに振動させられる。このようにして音波の波頭面は(11)式に示す割合でエネルギーを伝播させていく。これをエネルギー流と呼ぶ。よって波頭面の単位面積が運ぶエネルギーは毎秒、
Figure 0004706578
で表され、これを音響ではパワー密度または音響インテンシティーと呼びIで表す。一方、音圧P(dB)と音響インテンシティーI(W/m)は次式で関係づけられる。
Figure 0004706578
ここで、Ioは基準音響インテンシティーで0.96×10−12(W/m)。
(12)、(13)式から膜振幅値aは次式で表される。
Figure 0004706578
(14)式が設計に必要な膜振幅を算出する式である。
さて、超音波スピーカの場合、音圧は130dB以上必要であるので式(14)中の音圧Pが130、140、150(dB)の場合について考える。キャリア超音波の周波数を40、50、60(kHz)とすると振幅値aは、図5に示すようになる。
例えば、50kHzで駆動して140(dB)の音圧を得たいときは膜振幅は、2.18μmの振幅が必要である。したがって膜振動が固定電極に接触することなく、かつ静電力が効率よく働くようにするには、固定電極凸部の高さtを2.18μm以上かつ極力2.18μmに近く設定することが望ましい。
[超音波スピーカの構成例の説明]
図6に上記設計方法による超音波トランスデューサを使用した超音波スピーカの一般的構成例を示す。超音波スピーカは、キャリア波と呼ばれる超音波にオーディオ信号(可聴領域信号)でAM変調をかけ、これを空中に放出すると空気の非線形により、空中で元のオーディオ信号が自己再生される、というものである。
つまり、音波は空気を媒体として伝挿する粗密波であるので、変調された超音波が伝播する過程で、空気の密な部分と疎な部分とが顕著に表れ、密な部分は音速が速く、疎な部分は音速が遅くなるので変調波自身に歪が生じ、その結果キャリア波(超音波)と可聴波(元オーディオ信号)に波形分離され、我々人間は20kHz以下の可聴音(元オーディオ信号)のみを聴くことができるという原理であり、一般にはバラメトリックアレイ効果と呼ばれている。
図6において、超音波スピーカ40は、可聴波周波数帯の信号波を生成する可聴周波数波信号発振源(オーディオ信号源)41と、超音波周波数帯のキャリア波を生成し、出力するキャリア波信号源42と、変調器43と、パワーアンプ44と、超音波トランスデューサ45とを有している。ここで、本実施形態では、「可聴周波数帯域」とは、20kHz以下の周波数帯域をいい、「超音波周波数帯域」とは、20kHzを超える周波数帯域をいうものとする。
変調器43は、キャリア波信号源42から出力されるキャリア波を可聴周波数波信号発振源41から出力される可聴波周波数帯の信号波により変調し、パワーアンプ44を介して超音波トランスデューサ45に供給する。
上記構成において、可聴周波数波信号発振源41より出力されるオーディオ信号波によってキャリア波信号源42から出力される超音波周波数帯のキャリア波を変調器43により変調し、パワーアンプ44で増幅した変調信号により超音波トランスデューサ45を駆動する。この結果、上記変調信号が超音波トランスデューサ45により有限振幅レベルの音波に変換され、この音波は媒質中(空気中)に放射されて媒質(空気)の非線形効果によって元の可聴周波数帯の信号音が自己再生される。すなわち、音波は空気を媒休として伝播する粗密波であるので、変調された超音波が伝播する過程で、空気の密な部分と疎な部分な顕著に表れ、密な部分は音速が速く、疎な部分は音速が遅くなるので変調波自身に歪が生じ、その結果キャリア波(超音波周波数帯)とに波形分離され、可聴波周波数帯の信号波(信号音)が再生される。
以上説明したように、図1に示すプッシュプル型の静電型超音波トランスデューサにおいて、駆動周波数と所望音圧とが与えられたときの膜振幅を定式化することで、画定電極の良好な表面形状(凸部形状の振動膜挟持部)を定量的に設計できるようになる。従来、固定電極の凸部高さは10〜20μmであったため高い駆動交流電圧を必要としていた。しかし本発明の設計方法を用いれば、所望音圧と駆動周波数が決まれば膜振幅が決定し、その値から最適な凸部高さtが設計でき、その結果効率の良い構成とすることができる。このため、より少ない電圧で所望音圧が得られる。換言すれば、より少ないエネルギーで従来技術と同じ音圧を発生させることを可能とし、低電圧化(低パワー化)を実現できる。
[本発明の静電型超音波トランスデューサの固定電極の製造方法につての説明]
次に、本発明のPush−Pull型の静電型超音波トランスデューサの固定電極部分の製造方法について説明する。
最初に、超音波トランスデューサの固定電極部分をフォトリソグラフィー法により、従来の手法で製造する場合の製造工程について図15を参照して説明する。同図において、まず、導電体板(銅、ステンレスが用いられるが、ニッケル電鋳に対しては銅が適している。)10に複数の貫通穴のパターンが形成されたマスク部材11を被せ、エッチング処理により導電体板10Cに貫通穴14を形成する(図15(a),(b))。
次いで、導電体板10Cに貫通穴14が形成された後にマスク部材11を剥離して、貫通穴14の空いた導電体板10Cが得られる(図15(c))。
ここでエッチングによって導電体板10Cに空けられる貫通穴14の口径には、導電体板10Cの厚みとの関係で制約がある。例えば、本発明の実施形態に係る超音波トランスデューサで使用している貫通穴14の最小口径は0.25mmとすると、この径の貫通穴14が空けられる板厚みは0.25mm以下とされている。よって、0.25mm以上の厚みの固定電極を必要とする場合には、厚み0.25mmの金属板にエッチングで貫通穴14を空けたものを予め数枚用意しておき、これらを必要枚数重ねて熱圧着または拡散接合により金属結合させ積層し、所望の厚みの固定電極を製作する。
次に、貫通穴14の空いた導電体板10C(または積層された導電体板)に、固定電極を構成する振動膜挟持部(段差部)を形成するため、前処理材としての感光性レジスト(液体の場合はコーティング、フィルムの場合はラミネート)23を付けた後、振動膜挟持部形成用マスク部材21を被せて露光する(図15(d))。
感光性レジスト23としては、一般的にエッチングやメッキ等で一時的な中間構造体を形成するために使用される液体レジストやドライフィルムを用いるが、本構成品では貫通穴14を封止する事を目的とするため、ドライフィルムを用いる方がより有効である。
現像により不要なレジストを除去すると、固定電極の振動膜挟持部(段部)を形成させる部分の導電体板10C表面のみが露出する(図15(e))。
次いで、導電体板10Cの上記露出面に対し、電鋳法により金属(例えばニッケル)を所望の高さまで積層させる(図15(f))。この場合に、固定電極の振動膜挟持部、すなわち貫通穴外周に設ける段部の高さは、次の様に設定される。
すなわち、静電型超音波トランスデューサにより出力される所望音圧をP(dB)、駆動周波数をf(Hz)としたときに、前記振動膜が駆動された際の該振動膜における膜振動の片側振幅値をa(m)すると、膜振動の片側振幅値aを、次式、a=(1/πf)√{(I・10P/10)/2ρc}、ここで、Io:基準音響インテンシティーで0.96×10−12(W/m)、ρo:空気の密度で1.2(kg/m)、c:空気中の音速で約340(m/S)、により求め、前記一対の固定電極の各々の振動膜側における貫通穴外周に設けた振動膜挟持部である段部の高さを、前記片側振幅値aを超え、かつ前記片側振幅値aの近傍の値(少なくとも膜振動により振動膜が電極に接触しない範囲で)に設定される。
電鋳処理が完了後、残留レジスト24を剥離すると、所望の固定電極が出来上がる(図15(g))。
以上の従来の製造工程により製造した場合の固定電極の問題点を以下に示す。
(1)振動膜に薄いフィルムが使えない
上述した従来の製造工程で固定電極を製造する場合、すなわち固定電極の振動膜挟持部を導電材で構成する場合、振動膜の金属蒸着層(=導電層)と固定電極の最大クリアランスは、振動膜の絶縁層の厚みとなる。
ここで、本発明の実施形態に係る超音波トランスデューサで使用する振動電極膜の絶縁層はポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンサルファイド(PPS)、ポリプロピレン(PP)、ポリイミド(PI)などで構成される。
ここで各材料の絶縁破壊強度は下記の通りである。
PET、PPS、PI:200V/μm
PP:300V/μm
また、本トランスデューサに印加する電圧は、固定電極、振動電極膜ともに、数100V〜数kVである。
よって、従来の構成において、例えば振動膜の絶縁層にPETを用いた場合、2kVの電圧を印加するためには少なくとも10μmの膜厚が必要となり、振動膜としてこれより薄いフィルムは使えない事になる。
(2)絶縁破壊を起こし易い。
エッチング処理により成形された固定電極のエッジ部は非常に鋭利である。また追加工(機械加工)を行った箇所には、数〜10数ミクロンのバリ等が発生する。また、エッチング処理した金属には歪みが起こり易く、熱圧着または拡散接合を行っても、少なくとも10数μmの反りが残る事が確認されている。
このように、固定電極に反りがある状態で振動電極膜を確実に挟持させようとすると、図16に示すように固定電極における振動膜挟持部20のエッジ部が振動膜12の絶縁層120に食い込む。
従来構成では、振動膜挟持部20が導電材料で形成されているため、振動膜12の電極層121と固定電極の導電部との最小ギャップは図中d1となり、食い込んだ分だけギャップが狭くなり、絶縁破壊強度が低下する。
例えば、絶縁層120がPETであった場合、d1が1μm程度まで小さくなると、200V以上の電圧を印加する事は困難となる。
(3)静電容量が大きく、無駄にエネルギーが消費される。
投入電力は静電容量で決まり、振動膜12の電極層121と固定電極間のギャップが狭くなるほど、すなわち振動電極膜の絶縁層120が薄くなるほど静電容量は大きくなり、投入電力が増加する。
一方、超音波トランスデューサの主特性(=音圧)に最も寄与する振動膜12に作用する静電力は、振動膜挟持部として露出している固定電極の金属面の面積と振動膜挟持部の段差(=導電体と振動膜間のギャップ)によって決まる。
よって、絶縁層の薄い振動膜を用いれば静電力は増えるが、同時に静電容量も大幅に増えるため、エネルギー効率が良くない。
以上説明したように、従来の製造工程により超音波トランスデューサの固定電極を製造した場合には、(1)振動膜に薄いフィルムが使えない、(2)固定電極と振動膜の導電層との間で絶縁破壊を起こし易い、(3)振動膜の導電層と固定電極との間で形成される静電容量が大きく、無駄にエネルギーが消費される、という問題がある。
これらの問題は、以下に説明する超音波トランスデューサの製造方法により解決される。
(本発明の静電型超音波トランスデューサの固定電極の製造方法の第1の実施形態(フォトリソグラフィー法))
本発明による静電型超音波トランスデューサの固定電極の製造方法の第1実施形態を図8に示す。
図8において、まず、導電体板(銅、ステンレスが用いられるが、ニッケル電鋳に対しては銅が適している。)10に複数の貫通穴のパターンが形成されたマスク部材11を被せ、エッチング処理により導電体板10Cに貫通穴14を形成する(図8(a),(b))。
次いで、導電体板10Cに貫通穴14が形成された後にマスク部材11を剥離して、貫通穴14の空いた導電体板10Cが得られる(図8(c))。次に、導電体板10Cを積層して、厚さを所望の厚みとする。もちろん、1枚の導電体板10Cで上記所望の厚みが得られる場合は、導電体板10Cを積層する必要はない。
次に貫通穴14の空いた導電体板10C(又は積層された導電体板)に、振動膜挟持部を構成する段差を形成するための感光性レジスト(液体の場合はコーティング処理、フィルムの場合はラミネート処理)22を付けた後、振動膜挟持部形成用マスク部材21を被せて露光する(図8(d))。
ここで使用する振動膜挟持部形成材としての感光性レジスト22は、永久的に振動膜挟持部として構成でき、かつ非導電性の物でなければならない。有効と考えられる材料には、液体の場合では感光性ポリイミドコーティング材(=半導体製造で使用される感光性のコーティング材で、スピンコート法により金属板をコーティングして使用)、フィルムの場合では回路基板のパッケージ用に使用される感光性ソルダーレジストフィルムや感光性ポリイミドフィルムなどがある。
振動膜挟持部形成用マスク部材21を剥離し、現像により不要な感光性レジスト22を除去すると固定電極部となる導電体板10Cの表面のみが露出し、その他の部分に非導電性の感光性レジスト22が残り、所望の固定電極が出来上がる(図8(e))。
上記工程からなる超音波トランスデューサの固定電極の製造方法では、振動膜を挟持する固定電極における振動膜挟持部をフォトリソグラフィー法により絶縁材料で形成するようにしたので、従来必要とされた金属電鋳以降の工程が不要にできるため製造工程が短縮され、かつ製造コストを削減できる。また、残留レジストの剥離工程で使用する溶剤等(主に強アルカリ溶剤)が不要となり、環境面でも改善できる。
(本発明の静電型超音波トランスデューサの固定電極の製造方法の第2の実施形態(スクリーン印刷法))
次に、本発明による静電型超音波トランスデューサの固定電極の製造方法(製造工程)の第2実施形態を図9に示す。
図9において、まず、導電体板(銅、ステンレスが用いられるが、ニッケル電鋳に対しては銅が適している。)10に複数の貫通穴のパターンが形成されたマスク部材11を被せ、エッチング処理により導電体板10Cに貫通穴14を形成する(図9(a),(b))。
次いで、導電体板10Cに貫通穴14が形成された後にマスク部材11を剥離して、貫通穴14の空いた導電体板10Cが得られる(図9(c))。
次に、導電体板10Cを積層して、厚さを所望の厚みとする。もちろん、1枚の導電体板10Cで上記所望の厚みが得られる場合は、導電体板10Cを積層する必要はない。
貫通穴14の空いた導電体板10C(または積層された導電体板)の上に、固定電極における振動膜挟持部を形成するためのスクリーン印刷版30および液状の振動膜挟持部形成材32をセットし、スキージ31を移動させて振動膜挟持部形成材32をスクリーン印刷版30におけるマスク部材のかかっていない部分に塗り込む(図9(d))。
ここで、有効と考えられる振動膜挟持部形成材32は、永久的に振動膜挟持部として構成でき、かつ非導電性のもので、例えば回路基板で一般的に使用されるパッケージ用の液状ソルダーレジストやサンドブラスト用レジストとして使用されるマスキングインクなどである。特にフレキシブルプリント基板用のソルダーレジストは比較的柔らかい(鉛筆の硬さでHB〜3H程度)ため、振動電極膜をしっかりと挟持するには有効である。
振動膜挟持部形成材32をスクリーン印刷版30におけるマスク部材のかかっていない部分への塗布完了後にスクリーン印刷版30を外すと、導電体板10C上における振動膜挟持部に非導電性の層(=振動膜挟持部形成材32)が残り、これを乾燥させて所望の固定電極が出来上がる(図9(e))。
このように、固定電極における振動膜挟持部をスクリーン印刷法により絶縁材料で形成すると、従来必要とされた金属電鋳以降の工程が不要にでき、さらにフォトリソグラフィー法で行う現像といった工程も全く必要ないため、製造工程が大幅に短縮され、かつ製造コストを大幅に削減できる。
また、その他の超音波トランスデューサの製造方法としては、予めコーティングすべき部分のみ導電部が露出するようにレジストを形成しておき、非導電性インク(非導電性塗料)をインクジェットヘッドで飛ばして塗布する、あるいは電着ポリイミド材に浸して電着コーティングして、塗布あるいは電着後にレジストを剥離する方法でも可能である。
以上説明したように、静電型超音波トランスデューサの固定電極における振動膜挟持部を非導電性材料(絶縁材料)で形成したことにより、以下の効果が得られる。
(1)振動膜を形成するフィルム厚みの選択範囲が拡がる。
非導電性材料にて形成した固定電極における振動膜挟持部の段差分(数μm〜数十μm)だけ、絶縁層の厚みが増大された事になり、振動膜として10μm以下の薄肉フィルムでも問題なく高電圧で使用可能となる。
例えば、振動電極膜の絶縁層に3μmのPETフィルムを用いた場合、従来の固定電極の構成(固定電極全体を導電性材料で形成)では600Vが印加できる電圧の上限値となるが、非導電性材料を適用する事により、例えば振動膜挟持部の段差を3μmとした場合でも、固定電極面と振動膜の導電層とのクリアランスが6μmになるため、1kV以上の電圧を印加する事が可能となる。
また、例えば固定電極における振動膜挟持部の段差を20μmとして、3kVの電圧を印加したい場合、従来の固定電極の構成では15μmの絶縁層(PET)が必要となるが、固定電極の振動膜挟持部を形成するのに非導電性材料を用いると1μmのPETフィルム(クリアランス:21μm)で十分となる。
(2)振動膜の破損による固定電極と振動膜の導電層との間における絶縁破壊が生じるのを回避できる。
すなわち、固定電極10A,10Bの振動膜挟持部20を非導電性材料にて構成した場合、図16において、振動膜挟持部20の段差d2(数μm〜数十μm)分が絶縁層として上乗せされるため、振動膜12の電極層121と固定電極の固定電極部(導電部)10との最小ギャップは(d1+d2)となるため、エッジ部が振動膜12の絶縁層120に深く食い込んでも絶縁破壊強度が十分確保され、従来のような不具合が発生する事は無く、薄い振動電極膜でも問題なく扱う事が可能となる。
また、固定電極10Aまたは10Bの一部が完全に振動膜12の電極層121に接触する、あるいは完全に振動膜12を突き破り、反対側の固定電極と接触した場合でも、導電部同士が接触する事は無く、固定電極の構造的歪みによる絶縁強度の低下および短絡を完全に防ぐ事ができる。
(3)静電容量の低減によるエネルギー効率の改善が図れる。
従来のように固定電極を全て導電材料で構成した場合に比べ、非導電性材料で振動膜挟持部を形成すると、振動膜に作用する静電力を全く変えずに、固定電極の導電部(固定電極部10)との間における静電容量のみを低減する事ができる。
例えば、本発明のトランスデューサの構造(図17)において、振動膜12の絶縁層120をPET(比誘電率3.2)とし、その厚みをt1、また振動膜挟持部20をポリイミド(比誘電率3.5)とし、その厚み(=振動膜挟持部20の段差)をt2、振動膜挟持部20の外径をφD1、内径は外径の半分とした場合の、従来の固定電極の構成に対する静電容量の比を図10(a),(b)に示す。
同図から明らかなように振動膜12の絶縁層120の厚みt1が薄くなるほど、振動膜挟持部20を絶縁材料で形成することによる静電容量の低減効果は大きく、また振動膜挟持部20の厚みt2が厚くなるほど、静電容量の低減効果がおおきい。
以上のことから静電力を変えずに投入電力のみを低減できるため、エネルギー効率の改善された超音波トランスデューサを実現できる。
[本発明による超指向性音響システムまたは表示装置の構成例の説明]
次に、本発明の静電型超音波トランスデューサ、すなわち、静電型超音波トランスデューサにより出力される所望音圧をP(dB)、駆動周波数をf(Hz)としたときに、前記振動膜が駆動された際の該振動膜における膜振動の片側振幅値をa(m)すると、膜振動の片側振幅値aを、次式、a=(1/πf)√{(I・10P/10)/2ρc}、ここで、Io:基準音響インテンシティーで0.96×10−12(W/m)、ρo:空気の密度で1.2(kg/m)、c:空気中の音速で約340(m/S)、により求め、前記一対の固定電極の各々の振動膜側における貫通穴外周に設けた振動膜挟持部である段部の高さを、前記片側振幅値aを超え、かつ前記片側振幅値aの近傍の値(少なくとも膜振動により振動膜が電極に接触しない範囲で)に設定したPush−Pull型の静電型超音波トランスデューサを用いて構成される超音波スピーカを使用した超指向性音響システムについて説明する。
以下、本発明に係る超指向性音響システムまたは表示装置の一例としてプロジェクタを例に採り説明する。図11は本発明に係るプロジェクタの使用状態を示している。同図に示すように、プロジェクタ301は視聴者303の後方に設置され、視聴者303の前方に設置されたスクリーン302に映像を投影するとともに、プロジェクタ301に搭載されている超音波スピーカによりスクリーン302の投影面に仮想音源を形成し、音声を再生するようになっている。
プロジェクタ301の外観構成を図12に示す。プロジェクタ301は、映像をスクリーン等の投影面に投影する投影光学系を含むプロジェクタ本体320と、超音波周波数帯の音波を発振できる超音波トランスデューサ324A,324Bを含んで構成され、音響ソースから供給される音声信号から可聴周波数帯の信号音を再生する超音波スピーカとが一体的に構成されている。本実施形態では、ステレオ音声信号を再生するために、投影光学系を構成するプロジェクタレンズ331を挟んで左右に超音波スピーカを構成する超音波トランスデューサ324A,324Bがプロジェクタ本体に搭載されている。
さらに、プロジェクタ本体320の底面には低音再生用スピーカ323が設けられている。また、325は、プロジェクタ本体320の高さ調整を行うための高さ調節ねじ、326は、空冷フアン用の排気口である。
また、プロジェクタ301では、超音波スピーカを構成する超音波トランスデューサとして本発明によるPush−Pull型の静電型超音波トランスデューサを使用しており、広周波数帯域の音響信号(超音波周波数帯の音波)を高音圧で発振することができる。このため、キャリア波の周波数を変更することにより可聴周波数帯の再生信号の空間的な再生範囲を制御することにより、ステレオサラウンドシステムや5.1chサラウンドシステム等で得られるような音響効果を従来必要であった大掛かりな音響システムを必要とすることなく実現でき、かつ持ち運びが容易なプロジェクタを実現することができる。
次に、プロジェクタ301の電気的構成を図13に示す。プロジェクタ301は、操作入力部310と、再生範囲設定部312、再生範囲制御処理部313、音声/映像信号再生部314、キャリア波発振源316、変調器318A,318B、パワーアンプ322A,322B及び静電型超音波トランスデューサ324A,324Bからなる超音波スピーカと、ハイパスフィルタ317A,317Bと、ローパスフィルタ319と、加算器321と、パワーアンプ322Cと、低音再生用スピーカ323と、プロジェクタ本体320とを有している。なお、静電型超音波トランスデューサ324A,324Bは本発明によるPush−Pull型の静電型超音波トランスデューサである。
プロジェクタ本体320は、映像を生成する映像生成部332と、生成された映像を投影面に投影する投影光学系333とを有している。プロジェクタ301は、超音波スピーカ及び低音再生用スピーカ323と、プロジェクタ本体320とが一体化されて構成されている。
操作入力部310は、テンキー、数字キー、電源のオン、オフをおこなうための電源キーを含む各種機能キーを有している。再生範囲設定部312は、ユーザが操作入力部310をキー操作することにより再生信号(信号音)の再生範囲を指定するデータを入力できるようになっており、該データが入力されると、再生信号の再生範囲を規定するキャリア波の周波数が設定され、保持されるようになっている。再生信号の再生範囲の設定は、超音波トランスデューサ324A,324Bの音波放射面から放射軸方向に再生信号が到達する距離を指定することにより行われる。
また、再生範囲設定部312は、音声/映像信号再生部314より映像内容に応じて出力される制御信号によりキャリア波の周波数が設定できるようになっている。
また、再生範囲制御処理部313は、再生範囲設定部312の設定内容を参照し、設定された再生範囲となるようキャリア波発振源316により生成されるキャリア波の周波数を変更するようにキャリア波発振源316を制御する機能を有する。
例えば、再生範囲設定部312の内部情報として、キャリア波周波数が50kHzに対応する上記距離が設定されている場合、キャリア波発振源316に対して50kHzで発振するように制御する。
再生範囲制御処理部313は、再生範囲を規定する超音波トランスデューサ324A,324Bの音波放射面から放射軸方向に再生信号が到達する距離とキャリア波の周波数との関係を示すテーブルが予め記憶されている記憶部を有している。このテーブルのデータは、キャリア波の周波数と上記再生信号の到達距離との関係を実際に計測することにより得られる。
再生範囲制御処理部313は、再生範囲設定部312の設定内容に基づいて、上記テーブルを参照して設定された距離情報に対応するキャリア波の周波数を求め、該周波数となるようにキャリア波発振源316を制御する。
音声/映像信号再生部314は、例えば、映像媒体としてDVDを用いるDVDプレーヤーであり、再生した音声信号のうちRチャンネルの音声信号は、ハイパスフィルタ317Aを介して変調器318Aに、Lチャンネルの音声信号はハイパスフィルタ317Bを介して変調器318Bに、映像信号はプロジェクタ本体320の映像生成部332にそれぞれ、出力されるようになっている。
また、音声/映像信号再生部314より出力されるRチャンネルの音声信号とLチャンネルの音声信号は、加算器321により合成され、ローパスフィルタ319を介してパワーアンプ322Cに入力されるようになっている。音声/映像信号再生部314は、音響ソースに相当する。
ハイパスフィルタ317A,317Bは、それぞれ、Rチャンネル、Lチャンネルの音声信号における中高音域の周波数成分のみを通過させる特性を有しており、またローパスフィルタは、Rチャンネル、Lチャンネルの音声信号における低音域の周波数成分のみを通過させる特性を有している。
したがって、上記Rチャンネル、Lチャンネルの音声信号のうち中高音域の音声信号は
、それぞれ超音波トランスデューサ324A、324Bにより再生され、上記Rチャンネル、Lチャンネルの音声信号のうち低音域の音声信号は低音再生用スピーカ323により再生されることとなる。
なお、音声/映像信号再生部314はDVDプレーヤーに限らず、外部から入力されるビデオ信号を再生する再生装置であってもよい。また、音声/映像信号再生部314は、再生される映像のシーンに応じた音響効果を出すために再生音の再生範囲を動的に変更するように、再生範囲設定部312に再生範囲を指示する制御信号を出力する機能を有している。
キャリア波発振源316は、再生範囲設定部312より指示された超音波周波数帯の周波数のキャリア波を生成し、変調器318A,318Bに出力する機能を有している。
変調器318A,318Bは、キャリア波発振源316から供給されるキャリア波を音声/映像信号再生部314から出力される可聴周波数帯の音声信号でAM変調し、該変調信号を、それぞれパワーアンプ322A,322Bに出力する機能を有する。
超音波トランスデューサ324A,324Bは、それぞれ、変調器318A,318Bからパワーアンプ322A,322Bを介して出力される変調信号により駆動され、該変調信号を有限振幅レベルの音波に変換して媒質中に放射し、可聴周波数帯の信号音(再生信号)を再生する機能を有する。
映像生成部332は、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイパネル(PDP)等のディスプレイと、該ディスプレイを音声/映像信号再生部314から出力される映像信号に基づいて駆動する駆動回路等を有しており、音声/映像信号再生部314から出力される映像信号から得られる映像を生成する。
投影光学系333は、ディスプレイに表示された映像をプロジェクタ本体320の前方に設置されたスクリーン等の投影面に投影する機能を有している。
次に、上記構成からなるプロジェクタ301の動作について説明する。まず、ユーザのキー操作により操作入力部310から再生信号の再生範囲を指示するデータ(距離情報)が再生範囲設定部312に設定され、音声/映像信号再生部314に再生指示がなされる。
この結果、再生範囲設定部312には、再生範囲を規定する距離情報が設定され、再生範囲制御処理部313は、再生範囲設定部312に設定された距離情報を取り込み、内蔵する記憶部に記憶されているテーブルを参照し、上記設定された距離情報に対応するキャリア波の周波数を求め、該周波数のキャリア波を生成するようにキャリア波発振源316を制御する。
この結果、キャリア波発振源316は、再生範囲設定部312に設定された距離情報に対応する周波数のキャリア波を生成し、変調器318A,318Bに出力する。
一方、音声/映像信号再生部314は、再生した音声信号のうちRチャンネルの音声信号を、ハイパスフィルタ317Aを介して変調器318Aに、Lチャンネルの音声信号をハイパスフィルタ317Bを介して変調器318Bに、Rチャンネルの音声信号及びLチャンネルの音声信号を加算器321に出力し、映像信号をプロジェクタ本体320の映像生成部332にそれぞれ、出力する。
したがって、ハイパスフィルタ317Aにより上記Rチャンネルの音声信号のうち中高音域の音声信号が変調器318に入力され、ハイパスフィルタ317Bにより上記Lチャンネルの音声信号のうち中高音域の音声信号が変調器318Bに入力される。
また、上記Rチャンネルの音声信号及びLチャンネルの音声信号は加算器321により合成され、ローパスフィルタ319により上記Rチャンネルの音声信号及びLチャンネルの音声信号のうち低音域の音声信号がパワーアンプ322Cに入力される。
映像生成部332では、入力された映像信号に基づいてディスプレイを駆動して映像を生成し、表示する。このディスプレイに表示された映像は、投影光学系333により、投影面、例えば、図11に示すスクリーン302に投影される。
他方、変調器318Aは、キャリア波発振源316から出力されるキャリア波をハイパスフィルタ317Aから出力される上記Rチャンネルの音声信号における中高音域の音声信号でAM変調し、パワーアンプ322Aに出力する。
また、変調器318Bは、キャリア波発振源316から出力されるキャリア波をハイパスフィルタ317Bから出力される上記Lチャンネルの音声信号における中高音域の音声信号でAM変調し、パワーアンプ322Bに出力する。
パワーアンプ322A,322Bにより増幅された変調信号は、それぞれ、超音波トランスデューサ324A,324Bの上電極10Aと下電極10B(図1参照)との間に印加され、該変調信号は、有限振幅レベルの音波(音響信号)に変換され、媒質(空気中)に放射され、超音波トランスデューサ324Aからは、上記Rチャンネルの音声信号における中高音域の音声信号が再生され、超音波トランスデューサ324Bからは、上記Lチャンネルの音声信号における中高音域の音声信号が再生される。
また、パワーアンプ322Cで増幅された上記Rチャンネル及びLチャンネルにおける低音域の音声信号は低音再生用スピーカ323により再生される。
前述したように、超音波トランスデューサにより媒質中(空気中)に放射された超音波の伝播においては、その伝播に伴い音圧の高い部分では音速が高くなり、音圧の低い部分では音速は遅くなる。この結果、波形の歪みが発生する。
放射する超音波帯域の信号(キャリア波)を可聴周波数帯の信号で変調(AM変調)しておいた場合には、上記波形歪みの結果により、変調時に用いた可聴周波数帯の信号波が超音波周波数帯のキャリア波と分離して自己復調する形で形成される。その際、再生信号の広がりは超音波の特性からビーム状となり、通常のスピーカとは全く異なる特定方向のみに音が再生される。
超音波スピーカを構成する超音波トランスデューサ324から出力されるビーム状の再生信号は、投影光学系333により映像が投影される投影面(スクリーン)に向けて放射され、投影面で反射され拡散する。この場合に、再生範囲設定部312に設定されるキャリア波の周波数に応じて、超音波トランスデューサ324の音波放射面からその放射軸方向(法線方向)においてキャリア波から再生信号が分離されるまでの距離、キャリア波のビーム幅(ビームの拡がり角)が異なるために、再生範囲は、変化する。
プロジェクタ301における超音波トランスデューサ324A,324Bを含んで構成される超音波スピーカによる再生信号の再生時の状態を図15に示す。プロジェクタ301において、キャリア波が音声信号により変調された変調信号により超音波トランスデューサが駆動される際に、再生範囲設定部312により設定されたキャリア周波数が低い場合は、超音波トランスデューサ324の音波放射面からその放射軸方向(音波放射面の法線方向においてキャリア波から再生信号が分離されるまでの距離、すなわち、再生地点までの距離が長くなる。
したがって、再生された可聴周波数帯の再生信号のビームは、比較的拡がらずに投影面(スクリーン)302に到達することとなり、この状態で投影面302において反射するので、再生範囲は、図14において点線の矢印で示す可聴範囲Aとなり、投影面302から比較的に遠くかつ狭い範囲でのみ再生信号(再生音)が聞こえる状態となる。
これに対して、再生範囲設定部312により設定されたキャリア周波数が上述した場合より高い場合は、超音波トランスデューサ324の音波放射面から放射される音波は、キャリア周波数が低い場合より絞られているが、超音波トランスデューサ324の音波放射面からその放射軸方向(音波放射面の法線方向)においてキャリア波から再生信号が分離されるまでの距離、すなわち、再生地点までの距離が短くなる。
したがって、再生された可聴周波数帯の再生信号のビームは、投影面302に到達する前に拡がって投影面302に到達することとなり、この状態で投影面302において反射するので、再生範囲は、図14において実線の矢印で示す可聴範囲Bとなり、投影面302から比較的に近くかつ広い範囲でのみ再生信号(再生音)が聞こえる状態となる。
以上説明したように、本発明のプロジェクタでは、本発明によるPush−Pull型の静電型超音波トランスデューサを用いた超音波スピーカを使用しており、音響信号を十分な音圧と広帯域特性を持って、スクリーン等の音波反射面近傍に形成される仮想音源から発せられるように再生できる。このため、その再生範囲の制御も容易に行えるようになる。
[本発明による静電型超音波トランスデューサの設計装置の構成例の説明]
次に既述した本発明に係る静電型超音波トランスデューサの設計装置について説明する。本発明の実施形態に係る静電型超音波トランスデューサの設計装置の構成を図18に示す。同図において、本発明の実施形態に係る静電型超音波トランスデューサの設計装置は、入力装置401と、処理装置402と、静電型超音波トランスデューサの設計プログラムが記憶されている記憶装置403と、表示装置404と、出力装置405とを有している。入力装置401、処理装置402、記憶装置403、表示装置404及び出力装置405は、バス400を介して相互に接続されている。
入力装置401は、キーボード、マウスなどの入力手段を有しており、静電型超音波トランスデューサを設計するために必要な各種パラメータの値を入力するために使用される。
記憶装置403には、静電型超音波トランスデューサの設計プログラムが記憶されている。この設計プログラムは、複数の貫通穴が形成された第1の電極と、前記第1の電極と対をなす複数の貫通穴が形成された第2の電極と、前記一対の電極に挟まれると共に、導電層を有し、該導電層に直流バイアス電圧が印加される振動膜と、前記一対の固定電極と前記振動膜とを保持する保持部材とを有し、前記一対の電極間には交流信号が印加される静電型超音波トランスデューサのプログラムであって、出力される所望音圧をP(dB)、駆動周波数をf(Hz)としたときに、前記振動膜が駆動された際の該振動膜における膜振動の片側振幅値をa(m)すると、膜振動の片側振幅値aを、次式、a=(1/πf)√{(I・10P/10)/2ρc}、ここで、Io:基準音響インテンシティーで0.96×10−12(W/m)、ρo:空気の密度で1.2(kg/m)、c:空気中の音速で約340(m/S)、により算出する第1のステップと、前記一対の電極の各々の振動膜側における貫通穴外周に振動膜挟持部としての段部を有し、該段部の前記振動膜側方向の高さを、前記片側振幅値aを超え、かつ前記片側振幅値aの近傍の値に設定する第2のステップとをコンピュータに実行させることを特徴としている。この設計プログラムの内容を図19に示す。
処理装置402は、記憶装置403に記憶されている静電型超音波トランスデューサの設計プログラムを読み出し、該設計プログラムを実行する。処理装置402は、本発明の演算手段及び設定手段に想到する。
表示装置404は、各種データ及び設計処理過程の内容を表示する。
出力装置は、例えば、プリンタであり、出力指示に基づいて各種データ及び設計処理過程の内容をプリントアウトする。
上記構成からなる本発明の実施形態に係る静電型超音波トランスデューサの設計装置の動作を図19に示すフローチャートを参照して説明する。図19において、設計プログラムが起動された後、図1に示す静電型超音波トランスデューサを設計するのに必要な各種パラメータの値が入力装置401により入力される(ステップ501)。次いで、処理装置402は、静電型超音波トランスデューサから出力される所望音圧をP(dB)、駆動周波数をf(Hz)としたときに、前記振動膜が駆動された際の該振動膜における膜振動の片側振幅値をa(m)すると、膜振動の片側振幅値aを、次式、a=(1/πf)√{(I・10P/10)/2ρc}、ここで、Io:基準音響インテンシティーで0.96×10−12(W/m)、ρo:空気の密度で1.2(kg/m)、c:空気中の音速で約340(m/S)、により算出する(ステップ502)。
さらに、処理装置402は、前記一対の電極の各々の振動膜側における貫通穴外周に振動膜挟持部としての段部を有し、該段部の前記振動膜側方向の高さを、前記片側振幅値aを超え、かつ前記片側振幅値aの近傍の値に設定する(ステップ503)。このようにして設計処理して得られた設計データは、処理装置402より表示装置404、出力装置405に出力され、表示装置404の表示画面に表示されると共に、出力装置405としてのプリンタよりプリントアウトされる。
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の静電型超音波トランスデューサ、静電型超音波トランスデューサによる音声信号再生方法、静電型超音波トランスデューサの製造方法、超音波スピーカ、超指向性音響システム、表示装置、静電型超音波トランスデューサの設計方法、静電型超音波トランスデューサの設計装置、静電型超音波トランスデューサの設計プログラムは、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
本発明の実施形態に係る超音波トランスデューサは、各種センサ、例えば、測距センサ等に利用可能であり、また、既述したように、指向性スピーカ用の音源や、理想的なインパルス信号発生源等に利用可能である。また、超指向性音響システムや、プロジェクタ等の表示装置にも有用である。
本発明の設計方法が適用される超音波トランスデューサの概略構成図。 図1に示す静電超音波トランスデューサの固定電極の凸部の拡大図。 波動方程式導出概念図。 音響インテンシティー導出概念図。 膜振幅の計算例を示す図。 超音波スピーカの構成例を示す図。 プル型の静電型超音波トランスデューサの構成例を示す図。 超音波トランスデューサの製造方法の第1の実施の形態を示す図。 超音波トランスデューサの製造方法の第2の実施の形態を示す図。 振動膜の絶縁層の厚みと振動膜挟持部の厚みと静電容量の関係を示す図。 本発明の実施形態に係るプロジェクタの使用状態を示す図。 図11に示したプロジェクタの外観構成を示す図。 図12に示したプロジェクタの電気的構成を示すブロック図。 超音波トランスデューサによる再生信号の再生状態の説明図。 超音波トランスデューサの従来の製造方法を示す製造工程図。 従来の製造方法による超音波トランスデューサの構造上の問題を示す図。 本発明の製造方法による特性改善を示す説明図。 本発明の実施形態に係る静電型超音波トランスデューサの設計装置の構成を示すブロック図。 本発明の実施形態に係る静電型超音波トランスデューサの設計プログラムの内容を示すフローチャート。
符号の説明
1…プッシュプル型の静電型超音波トランスデューサ、10…固定電極部、10A、10B…固定電極、10C…導電体板、11…マスク部材、12…振動膜、12A…表面部分、12B…裏面部分、14…貫通穴(段付き貫通穴)、16…直流バイアス電源、18…信号源、20…振動膜挟持部、21…振動膜挟持部形成用マスク部材、22、23…感光性レジスト、24…残留レジスト、30…スクリーン印刷版、31…スキージ、32…振動膜挟持部形成材、40…超音波スピーカ、41…可聴周波数波信号発振源、42…キャリア波信号源、43…変調器、44…パワーアンプ、45…静電型超音波トランスデューサ、120…絶縁体、121…電極層、301…プロジェクタ、302…スクリーン(投影面)、303…視聴者、310…操作入力部、312…再生範囲設定部、313…再生範囲制御処理部、314…音声/映像信号再生部、316…キャリア波発振源、317A,317B…ハイパスフィルタ、318A,318B…変調器、319…ローパスフィルタ、320…プロジェクタ本体、321…加算器、322A,322B,322C…パワーアンプ、323…低音再生用スピーカ、324A,324B…静電型超音波トランスデューサ、331…プロジェクタレンズ、332…映像生成部、333…投影光学系、400…バス、401…入力装置、402…処理装置、403…記憶装置、404…表示装置、405…出力装置

Claims (8)

  1. 貫通穴が形成された第1の電極と、前記第1の電極の貫通穴と対をなす貫通穴が形成され、前記第1の電極との間に交流信号が印加される第2の電極と、前記一対の電極に挟まれると共に、導電層を有し、該導電層に直流バイアス電圧が印加される振動膜と、前記一対の電極と前記振動膜とを保持する保持部材とを有し、
    出力される所望音圧をP(dB)、駆動周波数をf(Hz)としたときに、前記振動膜が駆動された際の該振動膜における膜振動の片側振幅値をa(m)すると、膜振動の片側振幅値aを、次式、
    a=(1/πf)√{(I・10P/10)/2ρc}、
    ここで、Io:基準音響インテンシティーで0.96×10−12(W/m)、ρo:空気の密度で1.2(kg/m)、c:空気中の音速で約340(m/S)、
    により求め、
    前記一対の電極の各々の振動膜側における貫通穴外周に段部を有し、該段部の前記振動膜側方向の高さを、前記片側振幅値aを超え、かつ前記片側振幅値aの近傍の値に設定したこと
    を特徴とする静電型超音波トランスデューサ。
  2. 貫通穴が形成された第1の電極と、前記第1の電極の貫通穴と対をなす貫通穴が形成され、前記第1の電極との間に交流信号が印加される第2の電極と、前記一対の電極に挟まれると共に、導電層を有し、該導電層に直流バイアス電圧が印加される振動膜と、前記一対の固定電極と前記振動膜とを保持する保持部材とを有し、
    出力される所望音圧をP(dB)、駆動周波数をf(Hz)としたときに、前記振動膜が駆動された際の該振動膜における膜振動の片側振幅値をa(m)すると、膜振動の片側振幅値aを、次式、
    a=(1/πf)√{(I・10P/10)/2ρc}、
    ここで、Io:基準音響インテンシティーで0.96×10−12(W/m)、ρo:空気の密度で1.2(kg/m)、c:空気中の音速で約340(m/S)、
    により算出し、
    前記一対の電極の各々の振動膜側における貫通穴外周に段部を有し、該段部の前記振動膜側方向の高さを、前記片側振幅値aを超え、かつ前記片側振幅値aの近傍の値に設定すること
    を特徴とする静電型超音波トランスデューサの設計方法。
  3. 貫通穴が形成された第1の電極と、前記第1の電極の貫通穴と対をなす貫通穴が形成され、前記第1の電極との間に交流信号が印加される第2の電極と、前記一対の電極に挟まれると共に、導電層を有し、該導電層に直流バイアス電圧が印加される振動膜と、前記一対の固定電極と前記振動膜とを保持する保持部材とを有し、
    出力される所望音圧をP(dB)、駆動周波数をf(Hz)としたときに、前記振動膜が駆動された際の該振動膜における膜振動の片側振幅値をa(m)すると、膜振動の片側振幅値aを、次式、
    a=(1/πf)√{(I・10P/10)/2ρc}、
    ここで、Io:基準音響インテンシティーで0.96×10−12(W/m)、ρo:空気の密度で1.2(kg/m)、c:空気中の音速で約340(m/S)、
    により算出する演算手段と、
    前記一対の電極の各々の振動膜側における貫通穴外周に振動膜挟持部としての段部を有し、該段部の前記振動膜側方向の高さを、前記片側振幅値aを超え、かつ前記片側振幅値aの近傍の値に設定する設定手段と、
    を有することを特徴とする静電型超音波トランスデューサの設計装置。
  4. 貫通穴が形成された第1の電極と、前記第1の電極の貫通穴と対をなす貫通穴が形成され、前記第1の電極との間に交流信号が印加される第2の電極と、前記一対の電極に挟まれると共に、導電層を有し、該導電層に直流バイアス電圧が印加される振動膜と、前記一対の固定電極と前記振動膜とを保持する保持部材とを有し、
    出力される所望音圧をP(dB)、駆動周波数をf(Hz)としたときに、前記振動膜が駆動された際の該振動膜における膜振動の片側振幅値をa(m)すると、膜振動の片側振幅値aを、次式、
    a=(1/πf)√{(I・10P/10)/2ρc}、
    ここで、Io:基準音響インテンシティーで0.96×10−12(W/m)、ρo:空気の密度で1.2(kg/m)、c:空気中の音速で約340(m/S)、
    により算出する第1のステップと、
    前記一対の電極の各々の振動膜側における貫通穴外周に段部を有し、該段部の前記振動膜側方向の高さを、前記片側振幅値aを超え、かつ前記片側振幅値aの近傍の値に設定する第2のステップと、
    をコンピュータに実行させるための静電型超音波トランスデューサの設計プログラム。
  5. 貫通穴が形成された第1の電極と、前記第1の電極の貫通穴と対をなす貫通穴が形成され、前記第1の電極との間に交流信号が印加される第2の電極と、前記一対の電極に挟まれると共に、導電層を有し、該導電層に直流バイアス電圧が印加される振動膜と、前記一対の電極と前記振動膜とを保持する保持部材とを有し、
    前記一対の電極の固定電極部を形成するための導電体板上に貫通穴のパターンを形成したマスク部材を被覆し、エッチング処理により前記導電体板に貫通穴を形成する第1の工程と、
    前記静電型超音波トランスデューサにより出力される所望音圧をP(dB)、駆動周波数をf(Hz)としたときに、前記振動膜が駆動された際の該振動膜における膜振動の片側振幅値をa(m)すると、膜振動の片側振幅値aを、次式、
    a=(1/πf)√{(I・10P/10)/2ρc}、
    ここで、Io:基準音響インテンシティーで0.96×10−12(W/m)、ρo:空気の密度で1.2(kg/m)、c:空気中の音速で約340(m/S)、により求め、前記一対の電極の各々の振動膜側における貫通穴外周に段部を有し、該段部の前記振動膜側方向の高さを、前記片側振幅値aを超え、かつ前記片側振幅値aの近傍の値になるように形成する第2の工程と、
    を有することを特徴とする静電型超音波トランスデューサの製造方法。
  6. 前記貫通穴が形成された導電体板に振動膜挟持部形成材としての非導電性の感光性レジストを所定の厚さに形成する第3の工程と、
    前記非導電性の感光性レジスト表面に前記振動膜挟持部のパターンが形成された振動膜挟持部形成用マスク部材を被覆し、露光する第4の工程と、
    前記振動膜挟持部形成用マスク部材を剥離し、現像により不要な前記感光性レジストを除去する第5の工程と、
    を有することを特徴とする請求項に記載の静電型超音波トランスデューサの製造方法。
  7. 前記貫通穴が形成された導電体板表面に前記振動膜挟持部形成材を形成するためのマスク部材が配列されてなるスクリーン印刷版及び液状の振動膜挟持部形成材をセットする第3の工程と、
    前記貫通穴が形成された導電体板表面に前記スクリーン印刷板及び前記液状の振動膜挟持部形成材をセットした後、スキージを移動させながら前記振動膜挟持部形成材をマスク部材がかかっていない部分に塗布する第4の工程と、
    前記振動膜挟持部形成材をマスク部材がかかっていない部分に塗布した後、前記スクリーン印刷版を外し、前記導電板表面に残存する前記振動膜挟持部形成材を乾燥させる第5の工程と、
    を有することを特徴とする請求項に記載の静電型超音波トランスデューサの製造方法。
  8. 貫通穴が形成された第1の電極と、前記第1の電極の貫通穴と対をなす貫通穴が形成され、前記第1の電極との間に交流信号が印加される第2の電極と、前記一対の電極に挟まれると共に、導電層を有し、該導電層に直流バイアス電圧が印加される振動膜と、前記一対の電極と前記振動膜とを保持する保持部材とを有し、
    出力される所望音圧をP(dB)、駆動周波数をf(Hz)としたときに、前記振動膜が駆動された際の該振動膜における膜振動の片側振幅値をa(m)すると、膜振動の片側振幅値aを、次式、
    a=(1/πf)√{(I・10P/10)/2ρc}、
    ここで、Io:基準音響インテンシティーで0.96×10−12(W/m)、ρo:空気の密度で1.2(kg/m)、c:空気中の音速で約340(m/S)、
    により求め、
    前記一対の電極の各々の振動膜側における貫通穴外周に段部を有し、該段部の前記振動膜側方向の高さを、前記片側振幅値aを超え、かつ前記片側振幅値aの近傍の値に設定したことを特徴とする静電型超音波トランスデューサを含んで構成され、音響ソースから供給される音声信号から可聴周波数帯の信号音を再生する超音波スピーカと、
    映像を投影面に投影する投影光学系と、
    を有することを特徴とする表示装置。
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