JP4706246B2 - 多元系ターゲット材及びその製造方法 - Google Patents

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本発明は、多元系ターゲット材及びその製造方法に関し、さらに詳しくは、混合粉末の圧粉成形体の型鍛造により形成され、アークイオンプレーティング用などに好適に用いられる多元系ターゲット材及びその製造方法に関する。
従来例えば、アークイオンプレーティングに代表される物理蒸着法を用いて基板上に高硬度皮膜を形成する技術は、TiN皮膜、TiAlN皮膜、CrAlN皮膜等が開発されているが、最近、更に特性を向上させた皮膜を形成するために、第三の元素としてSiやBなどを添加する試みがされている。
アークイオンプレーティング法は、真空中で、金属ターゲット(蒸発源)を陰極としてアーク放電を起こし、それにより発生した電気エネルギーによりターゲット材が瞬時に蒸発すると同時に金属イオンとなって飛び出し、更に飛び出した金属イオンをイオナイザーで加速させ、反応ガス粒子とともに被コーティング物の表面に密着させることにより緻密な膜を形成する技術である。金属薄膜を形成させる技術として他にスパッタリング法もあるが、アークイオンプレーティング法は射突のエネルギーがより大きいため、より密着性の高い膜を形成することができる。この薄膜形成は、例えば工具寿命を延ばすために工具表面に耐摩耗性の硬い膜を形成する方法等として好適に用いられる。
アークイオンプレーティング法に用いられるターゲットは、従来、銅等のバッキングプレートと呼ばれる板に、インジウム等の低融点金属でロウ付けし、バッキングプレートを成膜装置に固定して使用される。
しかし、高出力で行うアークイオンプレーティングではターゲットの表面温度が上がり、ターゲットの固定に用いていたロウ材が溶けてターゲットがバッキングプレートから剥離することがある。また、ターゲットの温度上昇を抑えるためにバッキングプレートを、ターゲットの裏面から水により冷却しているが、その冷却不足によっても剥離が起こることがある。
そのため、アークイオンプレーティングにおいてはバッキングプレートを用いるよりも、ターゲット本体部の周辺に成膜装置への取り付け用の鍔部が一体的にはり出し形成されたターゲットを用いて成膜を行うことが好ましい。
しかし、バッキングプレートを用いないターゲットの場合、ターゲット本体部と、特に鍔部の機械的強度が必要とされる。粉末原料を用いた場合、ターゲットを作製する方法として、ターゲットを構成する複数種の混合粉末を反応を伴う焼結により圧密して焼結体を作る方法と、混合粉末を反応しない温度で圧密する方法(圧粉成形)がある。しかし、反応を伴う焼結材は非常に硬い化合物を生成してしまうため、ターゲットを得る最終工程での機械加工において加工性が悪くなり、コスト高に繋がる。一方、圧粉成形する方法は、加熱費も不要であり且つ硬質の化合物が生成しないため加工性に優れるのでコストを抑える事ができる。
例えばCrAl系など、Si等の第三元素を添加しない混合粉末の圧粉成形体の型鍛造ターゲットは、ターゲット本体部の周辺に成膜装置への取り付け用の鍔部が一体的にはり出し形成された構造であっても、アークイオンプレーティングによって鍔部が破損することなく十分な強度を有していたが、耐高温酸化特性などの皮膜自体の特性を向上させる場合においてはSiなどの第三元素を添加するために圧粉体の密着性が悪くなり、強度低下により鍔部が破損するといった問題が起こっている。
ところで特許文献1には、圧粉成形によりターゲットを作製する方法が示されており、具体的には、Zr、Ti、Ta、Hf、Mo、W、Nb、La、Si、Ni、Crなどの高融点物質の粉末と、In、Sn、Zn、Alなどの低融点金属の粉末とを混合し、加熱せずに加圧成形することを特徴とするものであり、均一で高密度のターゲットを作製する方法である。そして、スパッタリング製膜の際の放電状態の安定性確保のために相対密度90%以上であることが望ましいとするものである。しかし特許文献1ではバッキングプレートを用いない場合におけるターゲット及び装置への固定用の鍔部の機械的強度を課題とするものではなく、またバインダを含む2元系のターゲットについてのものであり、本発明のように特にSi、Bなどの第三元素を添加する場合についての記載はなく、その目的は異なるものである。
従来は、図7に示すような成形型を用いて型鍛造を行っている(捨てボス式鍛造法)。上面から圧粉体をプレスすることにより、外周上部にある空孔部(凸部)に圧粉体が塑性流動し、凸部が形成される。プレスによって圧粉体の密度を高めるためには圧粉体の塑性流動が必要であり、この凸部は圧粉体の塑性流動を促進させるためのものである。これにより圧粉体の外周上部周辺は密度が高まって機械的強度が上がることになる。反対に、プレス機が接触しているところは摩擦により圧粉体が流動しにくい。この凸部は上記のように塑性流動を促進するためだけに使われ、製品として使用されない部分である。
この方法では、凸部の機械的強度は非常に高められるものの、外周部の強度は凸部ほど高められない。成膜装置への固定に使われる鍔部は本体部と比べて厚みもないため、この鍛造方法ではアークイオンプレーティングにおける印加圧力に耐えることができていなかった。すなわち、ターゲット本体部の強度は得られるものの、鍔部は成膜時の熱応力に耐えられず破損するといった問題が起こっている。
特開平04−323366号公報
このように解決しようとする問題点は、SiやBなどの第三元素を添加した混合粉末の圧粉成形体の型鍛造ターゲット材であって、ターゲット本体部の周辺に成膜装置への取り付け用の鍔部が一体的にはり出し形成されたターゲット材の鍔部が、アークイオンプレーティングにおける印加圧力によって破損する点である。
本発明が解決しようとする課題は、特にアークイオンプレーティングにおける印加圧力によって鍔部及び本体部が破損することのない、ターゲット本体部の周辺に成膜装置への取り付け用の鍔部が一体的にはり出し形成された多元系型鍛造ターゲット材及びその製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するために本発明に係る多元系ターゲットは、請求項1に記載の発明のように、ターゲット材としての原料粉末がバインダと金属粉末の1種または2種以上と、化合物粉末の1種または2種以上とからなり、あるいは、バインダと、化合物粉末の1種または2種以上とからなり、前記バインダは、融点1300℃以下の低融点金属であり、前記金属粉末は、Zr,Ti,Ta,Hf,Mo,W,Nb,Ni,Crから選択される高融点金属の粉末であり、前記化合物粉末は、前記高融点金属と、Si,Bから選択される第三元素との化合物の粉末であり、ターゲット材組成物による圧粉成形体の型鍛造により形成されたものであって、ターゲット本体部の周辺に成膜装置への取り付け用の鍔部が一体的にはり出し形成され、かつ前記ターゲット本体部よりも鍔部にかけて密度が高くなっていることを要旨とする。
この場合、請求項2に記載のように、前記ターゲット材は、アルミニウムをバインダとし、チタン、クロムのうち選択された1種又は2種の金属粉末と、チタン、クロムのうち選択された1種又は2種の金属元素とシリコン、ボロンのうち選択された1種又は2種の元素からなる化合物の粉末を含むことが好例として挙げられる。
また、請求項3に記載のように、ターゲット材は、ターゲット全体の計算密度比が90%以上であり、機械的固定部の計算密度比が99%以上であることが望ましい。
また、請求項4に記載のように、このターゲット材はアークイオンプレーティング用に用いることができる。
また、本発明に係るアークイオンプレーティング用ターゲットの製造方法は、請求項5に記載のように、ターゲット材としての原料粉末がバインダと金属粉末の1種または2種以上と、化合物粉末の1種または2種以上とからなり、あるいは、バインダと、化合物粉末の1種または2種以上とからなり、前記バインダは、融点1300℃以下の低融点金属であり、前記金属粉末は、Zr,Ti,Ta,Hf,Mo,W,Nb,Ni,Crから選択される高融点金属の粉末であり、前記化合物粉末は、前記高融点金属と、Si,Bから選択される第三元素との化合物の粉末であり、ターゲット材組成物による圧粉成形体を形成し、該圧粉成形体を外周方向への塑性流動を促進するため型内周辺に逃がしフランジ部を設けた成形型を用いて型鍛造することによって、ターゲット本体部の周辺に成膜装置への取り付け用の鍔部が一体的にはり出し形成されかつ前記ターゲット本体部よりも鍔部にかけて密度が高くなっている多元系ターゲット材を製造するようにしたことを要旨とする。
この場合に請求項6に記載のように、前記ターゲット材は、アルミニウムをバインダとし、チタン、クロムのうち選択された1種又は2種の金属粉末と、チタン、クロムのうち選択された1種又は2種の金属元素とシリコン、ボロンのうち選択された1種又は2種の元素からなる化合物の粉末を含むものに好適に用いられる。
更に請求項7に記載のように、前記請求項5又は6に記載のターゲット材は、ターゲット全体の計算密度比が90%以上であり、機械的固定部の計算密度比が99%以上であることが望ましい。
本発明の請求項1に係る多元系ターゲット材によれば、バッキングプレートを用いることなく、ターゲットを成膜装置に取り付けることが可能となり、アークイオンプレーティングの印加圧力によってターゲットの鍔部が破損することなく、対象物に皮膜形成を行うことができる。
請求項2に係るSiやB元素を含む混合粉末を出発原料として用いた場合、圧粉成形体の強度が更に低くなるため本発明が特に有効となる。
また、請求項3に係るターゲット材の計算密度比にすることにより、従来法と比べて鍔部の機械的強度の向上が図られることになる。
そして、請求項4に記載のように、ターゲット材はアークイオンプレーティングに用いることができ、工具などに耐摩耗性、高硬度皮膜が形成され、工具などの寿命が延び、切れ味も向上させることができる。
また、請求項5に係る多元系ターゲット材の製造方法によれば、圧粉体が中心部から外周部方向へ塑性流動し、中心部から外周部にかけて密度が高められるようになる。これによって、鍛造品の外周部が特に機械的強度が高くなり、それによってアークイオンプレーティングの印加圧力によってターゲットの鍔部が破損することなく、対象物に皮膜形成を行うことができる。この場合に請求項6に記載のように、前記ターゲット材は、アルミニウムをバインダとし、チタン、クロムのうち選択された1種又は2種の金属粉末と、チタン、クロムのうち選択された1種又は2種の金属元素とシリコン、ボロンのうち選択された1種又は2種の元素からなる化合物の粉末を含むものに好適に用いられる。更に請求項7に記載のように、ターゲット全体の計算密度比が90%以上であり、機械的固定部の計算密度比が99%以上であることが望ましい。
以下に本発明の実施の形態について詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る多元系ターゲット材を上から見た図である。この図では、ターゲット材10は、ディスク状のターゲット本体12の周面側部4箇所に成膜装置への取り付け用の鍔部14を有する構造をしている。このターゲット材10は、特にアークイオンプレーティング用に適したCr:Al:Si=45at%:45at%:10at%の組成を有している。
図2は本実施形態における多元系ターゲットの製造の各工程を表している。まず、Cr粉末とAl粉末及びSi化合物を所定比率で混合して原料粉末(混合粉末)を得、図2の工程(イ)において冷間静水圧プレス(CIP)処理をして圧粉成形体(仮成形体)を得る。
CIP処理の後、図2の工程(ロ)において、切断、機械加工して成形型に合う形にする。
続いて図2の工程(ハ)の温間鍛造加工を施す。この温間鍛造加工では、図3に示すような逃がしフランジ式鍛造型を用いて鍛造する。この鍛造工程では、機械加工した圧粉成形体を予め400℃で加熱しておき、所定の圧力でプレス処理を施し、鍛造品を得る。尚、この圧粉成形体の加熱温度は、CrとAl及びSiが化学反応せず、従って金属間化合物を形成しない温度である。
次に、図2の工程(ニ)において機械加工を行い、外周部分その他を切り取って、図1に示す鍔付きのターゲットの形状にする。
また、従来の捨てボス式鍛造法は、図2の工程(ハ)における鍛造工程で、図7に示すような鍛造型を用いて鍛造をする。
図3は、本発明で実施される逃がしフランジ式型鍛造の成形金型である。この逃がしフランジ式の成形金型30において、上金型32と下金型34との間に圧粉成形体Sを挟んで加圧したときに、その圧粉成形体Sの周面にフランジ部Fが塑性変形によりはり出し形成されるものである。
図4は、製造したターゲットの機械的強度を調べる装置を示した図である。装置中央部にターゲットを逆さに配置した後、上面より油圧プレス機を用いて加圧し、ターゲットが塑性変形したときの荷重を測定する。
図6は、ターゲットの密度測定における測定位置を示す図である。ここでいう計算密度比とは、各測定密度の計算密度との比を表し、測定密度/計算密度で求める。計算密度とは、物質固有の密度から計算して求めた理論上の密度である。例えば成分A(密度ρ)及び成分B(密度ρ)がそれぞれavol%及びbvol%とした物の理論密度ρは、ρ=(aρ+bρ)/100で表される。測定に用いた素材の大きさはφ160×10tであり、測定サンプルは、図6に示すような1〜30の位置で10mm×10mm×10mm片を採取する。測定位置は、1〜16はターゲット外周部で17〜30は内部である。鍔の部分に当たる外周部4箇所において、直径を示す一点鎖線と直行する線の両側25mmを取り、50mmを4分割して1〜4、5〜8、9〜12、13〜16を標す。また、対向する15と6を結んだ直線を9分割し、17〜23を標す。14と7を結んだ直線も同様に9分割し、24〜30を標した位置とする。
本発明における圧粉成形体は、バインダと金属粉末または化合物粉末の1種または2種以上とからなる混合粉末を静水圧プレスする方法で得ることができる。この静水圧プレスは、冷間でも温間でも良い。ただし、混合粉末が反応してしまう温度で焼結させた場合、成形体が硬くなり加工性が悪くなる。好ましくは冷間静水圧プレス(CIP)を行うのが良い。この静水圧プレスによって仮成形し、90〜95%の成形密度の圧粉成形体を得る。
本発明における鍛造方法は、冷間鍛造でも温間鍛造でも良い。静水圧プレスと同様、圧粉体が反応しない温度で鍛造を行う。好ましくは室温〜500℃の範囲で鍛造を行うのが良い。また、ターゲットの機械的強度は鍛造時のプレス圧力の大きさによって増すため、90%以上の計算密度比が得られる圧力以上の圧力が必要であるが必要以上に大きな圧力は要しないので、最適な範囲でプレスを行う必要がある。プレス面圧の範囲は、2.5〜10トン/cm2、好ましくは5.0〜7.5トン/cm2の範囲で行うのが良い。プレス圧が低すぎても所望の強度がでないし、あまりプレス圧が高くても、強度の上昇に影響がなくなるためである。また鍛造工程前に、成形型に適合するように圧粉体を機械加工することもできる。
本発明においては、図2に示すような成形型に改良して型鍛造を行う。この成形型を用いて鍛造を行う場合(逃がしフランジ式鍛造法)、上面から圧粉体をプレスすることにより外周中央部周辺にある空孔部(フランジ部)に圧粉体が塑性流動する。捨てボス式鍛造法と同様、圧粉体の塑性流動によって密度が高められていく。このフランジ部を設けたことによって、圧粉体は中心部から外周部方向に塑性流動するため、中心部から外周部にかけて密度が高められる。これによって、ターゲットの鍔部にあたる外周部が特に強度が上がることになる。そのため、アークイオンプレーティングにおける印加圧力にも十分耐える鍔部を有するターゲットを作製することができるようになる。
ターゲット材を構成する混合粉末はバインダ及び金属粉末または化合物粉末の1種または2種以上とからなる。バインダ元素は、融点1300℃以下で例えばMg、Al、Zn、Ag、In、Sn、Cuであり、好ましくはAlである。バインダ元素は結合剤、充填剤として働くため、ターゲット材を構成する混合粉末中に原子%で20%以上含まれることが好ましい。化合物粉末は、添加元素と金属元素との合金であり、特に窒素を適用する場合は金属元素との化合物での添加が好ましい。そして型鍛造により得られるターゲット材組成は、例えば、Cr−Al−Si、Cr−Al−B、Ti−Al−Si、Ti−Al−B、(Cr−Ti)−Al−Si、(Cr−Ti)−Al−B、Cr−Al−(Si−B)、Ti−Al−(Si−B)、(Cr−Ti)−Al−(Si−B)などがある。
本発明を、Cr:Al:Si=45at%:45at%:10at%からなるターゲットの製造に適用した場合の一実施形態を以下に詳しく説明する。
ターゲットの機械的強度は鍛造時のプレス圧力の大きさによって増すため、各プレス面圧による降伏荷重を測定した。
(実施例1)
CIP処理後の圧粉成形体を、プレス面圧3.5トン/cm2で、逃がしフランジ式鍛造法によりターゲットを製造した。その後、製造したターゲットを図4に示す装置で強度テストを行った。図4に示す専用リング治具部分にターゲットの鍔部をのせ、本体部が中空に浮く状態で、ターゲット上から油圧プレスにて実体に加圧し、ターゲットの変位と荷重を測定し、弾性変形から塑性変形に変わる降伏点を求めた。その結果、降伏荷重は2.3トンであった。
(実施例2)
CIP処理後の圧粉成形体をプレス面圧5.0トン/cm2で、逃がしフランジ式鍛造法によりターゲットを製造した。その後、実施例1と同様に強度テストを行ったところ、降伏荷重は3.1トンであった。
(実施例3)
CIP処理後の圧粉成形体をプレス面圧7.0トン/cm2で、逃がしフランジ式鍛造法によりターゲットを製造した。その後、実施例1と同様に強度テストを行ったところ、降伏荷重は3.2トンであった。
(比較例1)
CIP処理後の圧粉成形体をプレス面圧8.0トン/cm2で、捨てボス式鍛造法によりターゲットを製造した。その後、実施例1と同様に強度テストを行ったところ、降伏荷重は1.2トンであった。
(比較例2)
CIP処理後の圧粉成形体をプレス面圧8.0トン/cm2で、捨てボス式鍛造法によりターゲットを製造した。その後、実施例1と同様に強度テストを行ったところ、降伏荷重は1.7トンであった。
(比較例3)
CIP処理後の圧粉成形体をプレス面圧6.5トン/cm2で、捨てボス式鍛造法によりターゲットを製造した。その後、実施例1と同様に強度テストを行ったところ、降伏荷重は1.6トンであった。
実施例1〜3及び比較例1〜3の結果を図5に示す。
図5は捨てボス式及び逃がしフランジ式によるターゲットの強度テスト結果である。プレス面圧と降伏荷重の関係について示しており、捨てボス式、逃がしフランジ式いずれの鍛造方法においてもプレス面圧の上昇に伴って降伏荷重が上がっているが、プレス面圧が6トン/cm2以上においてはほとんど変化しておらず、逃がしフランジ式ではターゲットの鍔が支えられる最大荷重が約3.2トン、捨てボス式では約1.7トンであった。従来の捨てボス式から逃がしフランジ式に鍛造方法を改良することによって、ターゲットの降伏荷重が2倍近く高くなり、ターゲットの強度が格段に向上した。
また、これら2つの鍛造方法により得られたターゲットの密度を測定し、計算密度比の比較を行った。
(実施例4)
CIP処理後の圧粉成形体を、6.0トン/cm2のプレス面圧で逃がしフランジ式鍛造法によりターゲットを製造した。このターゲット(φ160×10t)を、図6に示すような1〜30の位置で各サンプル(10mm×10mm×10mm片)を採取し、それぞれ密度を測定した。各測定密度の計算密度との比(計算密度比=測定密度/計算密度)の値を表1に示す。
(比較例4)
CIP処理後の圧粉成形体を、6.0トン/cm2のプレス面圧で捨てボス式鍛造法によりターゲットを製造した。実施例4と同様に密度を測定し、計算密度比の値を表1に示す。
Figure 0004706246
サンプル位置番号1〜16はターゲット外周部であり、機械的固定部に当たる。一方、サンプル位置番号17〜30はターゲットの内部に当たり、17から20にかけて及び24から27にかけて、外周部から内部へと向かっており、20から23にかけて及び27から30にかけて、内部から外周部へと向かっている。
本発明の実施形態である逃がしフランジ式の場合、ターゲット外周部1〜16は、内部17〜30に比べて全体的に計算密度比の値が高いが、さらに20から23にかけてと20から17にかけてと27から30にかけて及び27から24にかけて(つまりターゲット内部から外周部に向けて)計算密度比の値が大きくなっており、ターゲット本体部から鍔部にかけて機械的強度が高くなっていることがわかる。一方、従来法の捨てボス式の場合、このような傾向は見られず、外周部の計算密度比が内部より低いところもあり、機械的強度に劣っている。また、逃がしフランジ式の場合、ターゲット全体の計算密度比が90%以上であり、外周部の計算密度比が全て99%以上である。しかし、捨てボス式の場合、ターゲット全体の計算密度比が90%以上であるが、外周部はサンプル位置番号11〜16において計算密度比の値が99%以下であった。
(実施例5)
実施例4で製造したターゲット20枚を用いて成膜を行ったところ、20枚全部においてターゲットが破損することなく良好に皮膜形成された。
(比較例5)
比較例4で製造したターゲット20枚を用いて成膜を行ったところ、20枚のうち、18枚が成膜中に破損した。
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
本発明に係るターゲット材は、SiやBなどの第三元素を添加した混合粉末の圧粉成形体の型鍛造ターゲット材であって、ターゲット本体部の周辺に成膜装置への取り付け用の鍔部が一体的にはり出し形成されたターゲット材である。従来の製造法により得られるターゲット材と比べて鍔部の機械的強度が格段に向上したため、バッキングプレートを用いることなくアークイオンプレーティングに使用することができる。これにより、切削工具などの耐高温酸化特性が必要となる部分への表面処理に幅広く適用可能となる。
本発明の一実施形態に係る多元系ターゲット材の外観図である。 図1に示した多元系ターゲットの製造工程図である。 本発明のターゲットの製造に適用される逃がしフランジ式鍛造用の成形金型の図である。 製造したターゲットの機械強度を調べる装置を示した図である。 ターゲットの機械強度テストにおけるプレス面圧と降伏荷重の関係を表した図である。 ターゲットの密度測定における測定位置を示す図である。 従来一般に用いられている捨てボス式鍛造法に用いる成形金型の図である。
符号の説明
10 ターゲット材
12 ターゲット材本体部
14 ターゲット材鍔部
30 逃がしフランジ式成形型
32 上金型
34 下金型
40 油圧プレス機
42 専用リング治具
70 捨てボス式成形型
72 上金型
74 下金型
S 圧粉成形体
P 油圧プレス機による圧力
F 型鍛造により生じた鍛造品のフランジ部
T 凸部

Claims (7)

  1. ターゲット材としての原料粉末がバインダと金属粉末の1種または2種以上と、化合物粉末の1種または2種以上とからなり、あるいは、バインダと、化合物粉末の1種または2種以上とからなり、
    前記バインダは、融点1300℃以下の低融点金属であり、
    前記金属粉末は、Zr,Ti,Ta,Hf,Mo,W,Nb,Ni,Crから選択される高融点金属の粉末であり、
    前記化合物粉末は、前記高融点金属と、Si,Bから選択される第三元素との化合物の粉末であり、
    ターゲット材組成物による圧粉成形体の型鍛造により形成された多元系ターゲット材において、ターゲット本体部の周辺に成膜装置への取り付け用の鍔部が一体的にはり出し形成され、かつ前記ターゲット本体部よりも鍔部にかけて密度が高くなっていることを特徴とする多元系ターゲット材。
  2. 前記ターゲット材は、アルミニウムをバインダとし、チタン、クロムのうち選択された1種又は2種の金属粉末と、チタン、クロムのうち選択された1種又は2種の金属元素とシリコン、ボロンのうち選択された1種又は2種の元素からなる化合物の粉末を含むことを特徴とする請求項1に記載の多元系ターゲット材。
  3. 前記ターゲット材は、ターゲット全体の計算密度比が90%以上であり、機械的固定部の計算密度比が99%以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の多元系ターゲット材。
  4. 前記ターゲット材はアークイオンプレーティング用であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の多元系ターゲット材。
  5. ターゲット材としての原料粉末がバインダと金属粉末の1種または2種以上と、化合物粉末の1種または2種以上とからなり、あるいは、バインダと、化合物粉末の1種または2種以上とからなり、
    前記バインダは、融点1300℃以下の低融点金属であり、
    前記金属粉末は、Zr,Ti,Ta,Hf,Mo,W,Nb,Ni,Crから選択される高融点金属の粉末であり、
    前記化合物粉末は、前記高融点金属と、Si,Bから選択される第三元素との化合物の粉末であり、
    ターゲット材組成物による圧粉成形体を形成し、該圧粉成形体を外周方向への塑性流動を促進するため型内周辺に逃がしフランジ部を設けた成形型を用いて型鍛造することによって、ターゲット本体部の周辺に成膜装置への取り付け用の鍔部が一体的にはり出し形成されかつ前記ターゲット本体部よりも鍔部にかけて密度が高くなっている多元系ターゲット材を製造するようにしたことを特徴とする多元系ターゲット材の製造方法。
  6. 前記ターゲット材は、アルミニウムをバインダとし、チタン、クロムのうち選択された1種又は2種の金属粉末と、チタン、クロムのうち選択された1種又は2種の金属元素とシリコン、ボロンのうち選択された1種又は2種の元素からなる化合物の粉末を含むことを特徴とする請求項5に記載される多元系ターゲット材の製造方法。
  7. 前記ターゲット材は、ターゲット全体の計算密度比が90%以上であり、機械的固定部の計算密度比が99%以上であることを特徴とする請求項5又は6に記載される多元系ターゲット材の製造方法。
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