JP4706088B2 - 非水系電解液二次電池 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、非水系電解液二次電池に関する。詳しくは、特定の構造を有するスルホンを含む電解液を用いる非水系電解液二次電池の改良に関する。
本発明の電池は、充放電効率が高く、サイクル特性が優れているので、非水系電解液二次電池の小型化、高性能化に寄与することができる。
【0002】
【従来の技術】
近年の電気製品の軽量化、小型化に伴い、高いエネルギー密度を持つリチウム二次電池の開発が進められている。また、リチウム二次電池の適用分野の拡大に伴い電池特性の改善も要望されている。
金属リチウムを負極とする二次電池は高容量化を達成できる電池として古くから盛んに研究が行われているが、金属リチウムが充放電の繰り返しによりデンドライト状に成長し、最終的には正極に達して、電池内部において短絡が生じてしまうことが実用化を阻む最大の技術的な課題となっている。
そこで負極に、例えばコークス、人造黒鉛、天然黒鉛等のリチウムイオンを吸蔵・放出することが可能な炭素質材料を用いた非水系電解液二次電池が提案されている。このような非水系電解液二次電池では、リチウムが金属状態で存在しないためデンドライトの形成が抑制され、電池寿命と安全性を向上することができる。
【0003】
特に、人造黒鉛や天然黒鉛等の黒鉛系炭素材料は、単位体積当りのエネルギー密度を向上し得る材料として期待される。
しかしながら、黒鉛系の種々の電極材を単独で、或いは、リチウムを吸蔵・放出可能な他の負極材と混合して負極とした非水系電解液二次電池では、リチウム一次電池で一般に好んで使用されるプロピレンカーボネートを主溶媒とする電解液を用いると、黒鉛電極表面で溶媒の分解反応が激しく進行して、黒鉛電極への円滑なリチウムの吸蔵・放出が不可能になる。一方、エチレンカーボネートはこのような分解が少ないことから、黒鉛系負極を用いた非水系電解液二次電池の電解液ではエチレンカーボネートが主溶媒として多用されている。しかしながら、エチレンカーボネートを主溶媒としても、充放電過程において電極表面で電解液が分解するために充放電効率の低下、サイクル特性の低下等の問題があった。このため、黒鉛系負極を用いた場合であってもこれらの問題を生じない非水系電解液二次電池を提供することが求められている。
【0004】
黒鉛系負極については、特に電解液の種類により性能が大きく異なるため、電解液の組成を最適化することが必要とされ、従来からいろいろな電解液が検討されており、その一環として、スルホラン等の環状スルホンを含む非水溶媒を電解液として用いる電池が幾つか提案されている。
例えば、特開平8−78052号公報には、黒鉛を負極とした非水系電解液二次電池の非水溶媒としてエチレンカーボネートと鎖状カーボネートを含む混合非水溶媒にスルホランや3−メチルスルホランを含有させることが提案されており、含有量は5〜65容量%が好ましいとされている。また、特開平8−321312号公報には、電解液のエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート及びブチレンカーボネートから選ばれた1種以上の高誘電率溶媒、又はこれと1,2−ジメトキシエタンとの混合溶媒に、ブタジエンスルホンや3−メチルスルホレン、他を添加剤として1〜20体積%含有させることが提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、スルホラン等の環状スルホンを大量に含む前記公報の電解液については、電気伝導率が低くなる傾向にあり、十分な電池特性を発揮できないという問題点がある。また、エチレンカーボネートは室温で固体であるので、1,2−ジメトキシエタンとの混合溶媒で使用する場合には、二次電池の作動電位が大きくなると、1,2−ジメトキシエタンの耐電圧特性が充分でない場合もある。
本発明は、これらの従来技術の問題点を解決するものであり、黒鉛系負極を用いた非水系電解液二次電池における電解液の分解を最小限に抑えて、充放電効率が高く、サイクル特性の優れた高エネルギー密度の非水系電解液二次電池を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、かかる事情に鑑み鋭意検討した結果、黒鉛系負極を用いた非水系電解液二次電池の電解液として、環状カーボネートと鎖状カーボネートを含む混合非水溶媒にリチウム塩と所定量の特定の構造を有する環状スルホンを含有する電解液を用いることにより、充放電効率及びサイクル特性を向上させることができることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明の要旨は、リチウムを吸蔵・放出することが可能な負極材として黒鉛を含む負極、正極及び非水溶媒にリチウム塩を溶解してなる電解液から少なくとも構成される非水系電解液二次電池用電解液であって、非水溶媒が環状カーボネート及び鎖状カーボネートを含有する混合非水溶媒であり、且つ非水溶媒が2−スルホレン、3−メチル−2−スルホレン及び3−エチル−2−スルホレンからなる群から選ばれる環状スルホンを0.1容量%以上、4.5容量%以下含有することを特徴とする非水系電解液二次電池用電解液、及び、リチウムを吸蔵・放出することが可能な負極材として黒鉛を含む負極、正極及び非水溶媒にリチウム塩を溶解してなる電解液から少なくとも構成される非水系電解液二次電池であって、電解液が上記の電解液であることを特徴とする非水系電解液二次電池にある。
【0008】
なお、本発明の二次電池に用いられる非水溶媒は、環状カーボネート及び鎖状カーボネートを含む混合非水溶媒であるが、その70容量%以上がカーボネートであることが好ましい。特に、混合非水溶媒が、アルキレン基の炭素数が2〜4のアルキレンカーボネートからなる群から選ばれる環状カーボネートと、アルキル基の炭素数が1〜4であるジアルキルカーボネートからなる群から選ばれる鎖状カーボネートとをそれぞれ20容量%以上含有し、且つ混合非水溶媒の70容量%以上がこれらのカーボネートであることが好ましい。
【0009】
また、本発明の二次電池に用いられる負極材については、黒鉛のみからなる負極材、又はリチウムを吸蔵・放出することが可能な非黒鉛系炭素、リチウム、リチウム合金、及び金属酸化物からなる群から選ばれる少なくとも一種と黒鉛とを混合した負極材であることが好ましい。特に負極材が、X線回折における格子面(002面)のd値が0.335〜0.34nmであり、且つ結晶子サイズ(Lc)が30nm以上、好ましくは50nm以上、特には100nm以上の炭素材料を含むことが好ましい。
また、本発明の二次電池は、充電時の正極の電位が4.0V以上の充電電位を有する電池への適用がより好ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の二次電池は、リチウムを吸蔵・放出することが可能な負極材として黒鉛を含む負極、正極及び非水溶媒にリチウム塩を溶解してなる電解液から少なくとも構成される。そして、本発明においては、電解液の非水溶媒が環状カーボネート及び鎖状カーボネートを含む混合非水溶媒であり、且つ非水溶媒が0.1容量%以上、5容量%未満の環内に炭素−炭素二重結合を有する環状スルホンを含有することを特徴とする。
【0011】
本発明で用いられる環状カーボネートについては、特に限定されないが、アルキレンカーボネートが好ましく、アルキレン基の炭素数が2〜4のものが好適である。このようなアルキレンカーボネートの具体例として、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネートを挙げることができ、中でもエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートが好ましい。これらのアルキレン基は本発明の所期の効果を過度に阻害しない範囲で置換基を有していてもよい。
【0012】
本発明で用いられる鎖状カーボネートについても特に限定されないが、ジアルキルカーボネートが好ましく、アルキル基の炭素数が1〜4のものが好適である。このようなジアルキルカーボネートの具体例として、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−n−プロピルカーボネート、エチルメチルカーボネート、メチル−n−プロピルカーボネート、エチル−n−プロピルカーボネート等を挙げることができ、中でもジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネートが好ましい。これらのジアルキルカーボネートのアルキル基は本発明の所期の効果を過度に阻害しない範囲で置換基を有していてもよい。
【0013】
環状カーボネートと鎖状カーボネートの組み合わせは特に制限されない。好ましい組み合わせは、アルキレン基の炭素数が2〜4のアルキレンカーボネートからなる群から選ばれる環状カーボネートと、アルキル基の炭素数が1〜4であるジアルキルカーボネートからなる群から選ばれる鎖状カーボネートを含む混合非水溶媒である。より好ましい組み合わせは、環状カーボネートとしてエチレンカーボネート及び/又はプロピレンカーボネート、鎖状カーボネートとしてジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート及びエチルメチルカーボネートから選択される少なくとも一種を含む混合非水溶媒である。
混合非水溶媒における環状カーボネートと鎖状カーボネートの割合は、それぞれ20容量%以上あるのが好ましく、それぞれ25容量%以上であるのがより好ましい。また、混合非水溶媒における環状カーボネートと鎖状カーボネートの合計量は70容量%以上であるのが好ましく、80容量%以上であるのがより好ましく、90容量%以上であるのが特に好ましい。
【0014】
混合非水溶媒には、カーボネート以外の溶媒が含まれていてもよい。カーボネート以外の溶媒として、例えばγ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等の環状エステル類、酢酸メチル、プロピオン酸メチル等の鎖状エステル類、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等の環状エーテル類、ジメトキシエタン、ジメトキシメタン等の鎖状エーテル類が挙げられる。これらの溶媒は二種類以上を組み合わせて用いても良い。
これらの溶媒はカーボネート系溶媒の特性を損なわない量で混合非水溶媒に含有させることができる。具体的には、カーボネート以外の溶媒は、混合非水溶媒の30容量%以下にするのが好ましく、20容量%以下にするのがより好ましく、10容量%以下にするのが特に好ましい。
なお、本明細書における容量%とは、全て室温、即ち25℃で測定したものである。但し、25℃で固体のものについては、その融点迄加熱して溶融状態にて測定するものとする。
【0015】
本発明で使用する電解液は、環内に炭素−炭素二重結合を有する環状スルホンを含有する。本発明で使用する該環状スルホンは、環状構造の一部にスルホン構造を有し、環内に炭素−炭素二重結合を有する化合物であれば特にその種類は限定されない。本発明で使用する環内に炭素−炭素二重結合を有する環状スルホンの具体例としては、3−スルホレン、2−スルホレン、3−メチル−3−スルホレン、3−エチル−3−スルホレン、3−メチル−2−スルホレン、3−エチル−2−スルホレン、等を挙げることができる。中でも好ましいのは、3−スルホレンや3−メチル−3−スルホレンである。これらは二種以上混合して用いてもよい。
本発明で使用する電解液における環内に炭素−炭素二重結合を有する環状スルホンの含有量は、混合非水溶媒中0.1容量%以上、5容量%未満、好ましくは、0.5〜4.5容量%である。
【0016】
本発明で使用する電解液には、溶質としてリチウム塩を用いる。使用し得るリチウム塩は、電解液の溶質として使用し得るものであればその種類は特に制限されない。例えばLiClO4 、LiPF6 、LiBF4 から選ばれる無機リチウム塩やLiCF3 SO3 、LiN(CF3 SO2 )2 、LiN(CF3 CF2 SO2 )2 、LiN(CF3 SO2 )(C4 F9 SO2 )、LiC(CF3 SO2 )3 等の含フッ素有機リチウム塩を用いることができる。中でもLiPF6 、LiBF4 を用いることが好ましい。これらのリチウム塩は二種類以上混合して用いても良い。
電解液中の溶質のリチウム塩モル濃度は、0.5〜2モル/リットルであることが望ましい。0.5モル/リットル未満若しくは2モル/リットルを越えると、電解液の電気伝導率が低くなって、電池の性能が低下する傾向にある。
【0017】
本発明の非水系電解液二次電池を構成する負極は、その成分として黒鉛を含む。黒鉛はリチウムを吸蔵・放出することが可能なものであればその物理的性状は特に制限されない。好ましいのは種々の原料から得た易黒鉛性ピッチの高温熱処理によって製造された人造黒鉛及び精製天然黒鉛、或いはこれらの黒鉛にピッチを含む種々の表面処理を施した材料である。これらの黒鉛材料は学振法によるX線回折で求めた格子面(002面)のd値(層間距離)が0.335〜0.34nmであるものが好ましく、0.335〜0.337nmであるものがより好ましい。これら黒鉛材料は、灰分が1重量%以下であるのが好ましく、0.5重量%以下であるのがより好ましく、0.1重量%以下であるのが特に好ましい。また、学振法によるX線回折で求めた結晶子サイズ(Lc)が30nm以上であるのが好ましく、50nm以上であるのがより好ましく、100nm以上であるのが特に好ましい。
【0018】
また、レーザー回折・散乱法による黒鉛材料のメジアン径は、1〜100μmであるのが好ましく、3〜50μm以下であるのがより好ましく、5〜40μmであるのが更に好ましく、7〜30μmであるのが特に好ましい。黒鉛材料のBET法比表面積は、0.5〜25.0m2 /gであるのが好ましく、0.7〜20.0m2 /gであるのがより好ましく、1.0〜15.0m2 /gであるのが更に好ましく、1.5〜10.0m2 /gであるのが特に好ましい。また、アルゴンイオンレーザー光を用いたラマンスペクトル分析において、1580〜1620cm-1の範囲のピークPA (ピーク強度IA )及び1350〜1370cm-1の範囲のピークPB (ピーク強度IB )の強度比R=IB /IA が0〜1.4、好ましくは0〜1.2、特に好ましくは0〜0.5であり、1580〜1620cm-1の範囲のピークの半値幅が26cm-1以下、特に25cm-1以下であるのが好ましい。
【0019】
これらの黒鉛材料にリチウムを吸蔵・放出可能な負極材を更に混合して用いることもできる。黒鉛以外のリチウムを吸蔵・放出可能な負極材としては、難黒鉛性炭素又は低温焼成炭素等の非黒鉛系炭素材料、酸化錫、酸化珪素等の金属酸化物材料、更にはリチウム金属並びに種々のリチウム合金を例示することができる。これらの負極材料は二種類以上混合して用いても良い。
これらの負極材料を用いて負極を製造する方法については、特に限定されない。例えば、負極材料に、必要に応じて結着剤、増粘剤、導電材、溶媒等を加えてスラリー状とし、集電体の基板に塗布し、乾燥することにより負極を製造することができるし、また、該負極材料をそのままロール成形してシート電極としたり、圧縮成形によりペレット電極とすることもできる。
【0020】
電極の製造に用いられる結着剤については、電極製造時に使用する溶媒や電解液に対して安定な材料であれば、特に限定されない。その具体例としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、スチレン・ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム等を挙げることができる。
増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、酸化スターチ、リン酸化スターチ、カゼイン等が挙げられる。
導電材としては、銅やニッケル等の金属材料、グラファイト、カーボンブラック等のような炭素材料が挙げられる。
負極用集電体の材質は、銅、ニッケル、ステンレス等の金属が使用され、これらの中で薄膜に加工しやすいという点とコストの点から銅箔が好ましい。
【0021】
本発明の電池を構成する正極の材料としては、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムマンガン酸化物等のリチウム遷移金属複合酸化物材料等のリチウムを吸蔵及び放出可能な材料を使用することができる。本発明においては、LiCoO2 、LiNiO2 、LiMn2 O4 、等の充電時の正極の電位が4.0V以上となるリチウム遷移金属複合酸化物が好ましい。
正極の製造方法については、特に限定されず、上記の負極の製造方法に準じて製造することができる。また、その形状については、正極材料に必要に応じて結着剤、導電材、溶媒等を加えて混合後、集電体の基板に塗布してシート電極としたり、プレス成形を施してペレット電極とすることができる。
正極用集電体の材質は、アルミニウム、チタン、タンタル等の金属又はその合金が用いられる。これらの中で、特にアルミニウム又はその合金が軽量であるためエネルギー密度の点で望ましい。
【0022】
本発明の電池に使用するセパレーターの材質や形状については、特に限定されない。但し、電解液に対して安定で、保液性の優れた材料の中から選ぶのが好ましく、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンを原料とする多孔性シート又は不織布等を用いるのが好ましい。
負極、正極及び非水系電解液を少なくとも有する本発明の電池を製造する方法については、特に限定されず、通常採用されている方法の中から適宜選択することができる。
また、電池の形状については特に限定されず、シート電極及びセパレータをスパイラル状にしたシリンダータイプ、ペレット電極及びセパレータを組み合わせたインサイドアウト構造のシリンダータイプ、ペレット電極及びセパレータを積層したコインタイプ等が使用可能である。
【0023】
【実施例】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を越えない限り、これらの実施例に限定されるものではない。
(参考例1)
電解液については、乾燥アルゴン雰囲気下で、十分に乾燥を行った六フッ化リン酸リチウム(LiPF6 )を溶質として用い、プロピレンカーボネートとジエチルカーボネートの混合物(1:1容量比)97容量%に3−スルホレンを3容量%の割合で溶解し、更にLiPF6 を1モル/リットルの割合で溶解して調製した。
【0024】
X線回折における格子面(002面)のd値が0.336nm、晶子サイズ(Lc)が、100nm以上(264nm)、灰分が0.04重量%、レーザー回折・散乱法によるメジアン径が17μm、BET法比表面積が8.9m2 /g、アルゴンイオンレーザー光を用いたラマンスペクトル分析において1580〜1620cm-1の範囲のピークPA (ピーク強度IA )及び1350〜1370cm-1の範囲のピークPB (ピーク強度IB )の強度比R=IB /IA が0.15、1580〜1620cm-1の範囲のピークの半値幅が22.2cm-1である人造黒鉛粉末KS−44(ティムカル社製、商品名)94重量部に蒸留水で分散させたスチレン−ブタジエンゴム(SBR)を固形分で6重量部となるように加えディスパーザーで混合し、スラリー状としたものを集電体である厚さ18μmの銅箔上に均一に塗布し、乾燥後、直径12.5mmの円盤状に打ち抜いて電極を作製し作用極とし、電解液を含浸させたセパレーターを介してリチウム箔を対極として構成されたコイン型ハーフセルを作製した。
【0025】
(比較例1)
プロピレンカーボネートとジエチルカーボネートの混合物(1:1容量比)に、LiPF6 を1モル/リットルの割合で溶解して調製した電解液を用いたこと以外は参考例1と同様にしてコイン型ハーフセルを作製した。
次に、上記のようにして作製した参考例1及び比較例1のコイン型ハーフセルについて、25℃において、0.2mAの定電流で放電終止電圧0V、0.4mAの定電流で充電終止電圧1.5Vで充放電試験を行った。
参考例1の1サイクル目の脱ドープ容量(作用極からのリチウムの脱ドープ容量)は、223mAh/gであり、1サイクル目の効率(脱ドープ容量/ドープ容量)は、69%であった。
一方、比較例1においては、溶媒が分解し、電池として作動しなかった。
ここで容量とは、作用極として使用した黒鉛重量当りの容量を示す。
【0026】
(参考例2)
正極活物質としてLiCoO2 85重量部にカーボンブラック6重量部、ポリフッ化ビニリデンKF−1000(呉羽化学社製、商品名)9重量部を加え混合し、N−メチル−2−ピロリドンで分散し、スラリー状としたものを正極集電体である厚さ20μmのアルミニウム箔上に均一に塗布し、乾燥後、直径12.5mmの円盤状に打ち抜いて正極とした。
【0027】
負極活物質として、X線回折における格子面(002面)のd値が0.336nm、晶子サイズ(Lc)が、100nm以上(264nm)、灰分が0.04重量%、レーザー回折・散乱法によるメジアン径が17μm、BET法比表面積が8.9m2 /g、アルゴンイオンレーザー光を用いたラマンスペクトル分析において1580〜1620cm-1の範囲のピークPA (ピーク強度IA )及び1350〜1370cm-1の範囲のピークPB (ピーク強度IB )の強度比R=IB /IA が0.15、1580〜1620cm-1の範囲のピークの半値幅が22.2cm-1である人造黒鉛粉末KS−44(ティムカル社製、商品名)95重量部にポリフッ化ビニリデン5重量部を混合し、N−メチル−2−ピロリドンで分散させたスラリー状としたものを負極集電体である厚さ18μmの銅箔上に均一に塗布し、乾燥後、直径12.5mmの円盤状に打ち抜いて負極とした。
【0028】
電解液については、乾燥アルゴン雰囲気下で、十分に乾燥を行った六フッ化リン酸リチウム(LiPF6 )を溶質として用い、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートの混合物(1:1容量比)98容量%に3−スルホレンを2容量%の割合で溶解し、更にLiPF6 を1モル/リットルの割合で溶解して調製した。
これらの正極、負極、電解液を用いて、正極導電体を兼ねる内面をアルミニウムでコートしたステンレス鋼製の缶体に正極を収容し、その上に電解液を含浸させたポリエチレン製のセパレーターを介して負極を裁置した。この缶体と負極導電体を兼ねる封口板とを、絶縁用のガスケットを介してかしめて密封し、コイン型電池を作製した。
【0029】
(参考例3)
エチレンカーボネートとジエチルカーボネートの混合物(1:1容量比)98容量%に3−メチル−3−スルホレンを2容量%の割合で溶解し、更にLiPF6 を1モル/リットルの割合で溶解して調製した電解液を用いたこと以外は、参考例2と同様にしてコイン型電池を作製した。
(比較例2)
エチレンカーボネートとジエチルカーボネートの混合物(1:1容量比)に、LiPF6 を1モル/リットルの割合で溶解して調製した電解液を用いたこと以外は、参考例2と同様にしてコイン型電池を作製した。
【0030】
(参考例4)
プロピレンカーボネートとジエチルカーボネートの混合物(1:1容量比)98容量%に3−スルホレンを2容量%の割合で溶解し、更にLiPF6 を1モル/リットルの割合で溶解して調製した電解液を用いたこと以外は、参考例2と同様にしてコイン型電池を作製した。
(参考例5)
プロピレンカーボネートとジエチルカーボネートの混合物(1:1容量比)98容量%に3−メチル−3−スルホレンを2容量%の割合で溶解し、更にLiPF6 を1モル/リットルの割合で溶解して調製した電解液を用いたこと以外は、参考例2と同様にしてコイン型電池を作製した。
【0031】
(比較例3)
プロピレンカーボネートとジエチルカーボネートの混合物(1:1容量比)に、LiPF6 を1モル/リットルの割合で溶解して調製した電解液を用いたこと以外は、参考例2と同様にしてコイン型電池を作製した。
上述の参考例2〜5および比較例2、3で作製した電池を25℃において、0.5mAの定電流で充電終止電圧4.2V、放電終止電圧2.5Vで充放電試験を行った。
それぞれの電池における1サイクル目の負極重量あたりの放電容量と充放電効率、サイクル特性の目安としての容量維持率(%)を表1に示す。
ここで充放電効率及び容量維持率は、下記の式から求めたものである。
充放電効率(%)=〔(放電容量)/(充電容量)〕×100
容量維持率(%)=〔(100サイクル目放電容量)/(1サイクル目放
電容量)〕×100
【0032】
【表1】
【0033】
表1から、本参考例の電解液を用いた場合の方が、初期充放電効率が向上すると共に、容量維持率が向上し、サイクル特性が優れることが明らかである。また、比較例3のプロピレンカーボネート系の電解液の場合には、プロピレンカーボネートが負極の黒鉛材料表面で激しく分解し電池として作動しないが、環内に炭素−炭素二重結合を有する環状スルホンを含有することにより作動可能となり、放電容量、サイクル特性が著しく改善されている。
【0034】
【発明の効果】
黒鉛系負極を用いた非水系電解液二次電池の電解液の非水溶媒に、環状カーボネートと鎖状カーボネートを含む混合非水溶媒を使用し、更に非水溶媒中0.1容量%以上、5容量%未満の割合で環内に炭素−炭素二重結合を有する環状スルホンを含有させることにより、電解液と接する黒鉛表面に、環内に炭素−炭素二重結合を有する環状スルホンとカーボネート由来の、かなり安定なリチウムイオン透過性の複合保護被膜が生成すると考えられる。この被膜により過度の電解液の分解が抑制され、サイクル特性の優れた電池を作製することができ、非水系電解液二次電池の小型化、高性能化に寄与することができる。
Claims (9)
- リチウムを吸蔵・放出することが可能な負極材として黒鉛を含む負極、正極及び非水溶媒にリチウム塩を溶解してなる電解液から少なくとも構成される非水系電解液二次電池用電解液であって、非水溶媒が環状カーボネート及び鎖状カーボネートを含有する混合非水溶媒であり、且つ非水溶媒が2−スルホレン、3−メチル−2−スルホレン及び3−エチル−2−スルホレンからなる群から選ばれる環状スルホンを0.1容量%以上、4.5容量%以下含有することを特徴とする非水系電解液二次電池用電解液。
- 混合非水溶媒の70容量%以上がカーボネートであることを特徴とする請求項1に記載の非水系電解液二次電池用電解液。
- 混合非水溶媒が、アルキレン基の炭素数が2〜4のアルキレンカーボネートからなる群から選ばれる環状カーボネートとアルキル基の炭素数が1〜4であるジアルキルカーボネートからなる群から選ばれる鎖状カーボネートとをそれぞれ20容量%以上含有し、且つ混合非水溶媒の70容量%以上がこれらのカーボネートであることを特徴とする請求項1または2に記載の非水系電解液二次電池用電解液。
- 負極材が、黒鉛のみからなる負極材、又はリチウムを吸蔵・放出することが可能な非黒鉛系炭素、リチウム、リチウム合金、及び金属酸化物からなる群から選ばれる少なくとも一種と黒鉛とを混合してなる負極材であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の非水系電解液二次電池用電解液。
- 負極材が、X線回折における格子面(002面)のd値が0.335〜0.34nmであり、且つ結晶子サイズ(Lc)が30nm以上の炭素材料を含むことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の非水系電解液二次電池用電解液。
- 負極材が、X線回折における格子面(002面)のd値が0.335〜0.337nmであり、且つ結晶子サイズ(Lc)が50nm以上の炭素材料からなることを特徴とする請求項5に記載の非水系電解液二次電池用電解液。
- 負極材が、X線回折における格子面(002面)のd値が0.335〜0.337nmであり、且つ結晶子サイズ(Lc)が100nm以上の炭素材料からなることを特徴とする請求項6に記載の非水系電解液二次電池用電解液。
- 負極材が、レーザー回折・散乱法によるメジアン径が、7〜30μmである炭素材料からなることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の非水系電解液二次電池用電解液。
- リチウムを吸蔵・放出することが可能な負極材として黒鉛を含む負極、正極及び非水溶媒にリチウム塩を溶解してなる電解液から少なくとも構成される非水系電解液二次電池であって、電解液が請求項1ないし8のいずれかに記載の電解液であることを特徴とする非水系電解液二次電池。
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