JP4705935B2 - アルミニウムろう付け用ブレージングシート及びその製造方法 - Google Patents
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すなわち、上記課題は以下の技術的手段によって解決された:
(1) アルミニウム合金からなる心材の片面、または両面にろう材がクラッドされたブレージングシートであって、フラックス含有層が、心材外部の板厚方向に2段以上の高さ位置に配設され、各フラックス含有層中のフラックス設置部が平面方向にずらして存在させることにより、真上方向からみて該ブレージングシートのいずれの部位においても内部にフラックス設置部が存在するようにしたことを特徴とするアルミニウムろう付け用ブレージングシート、
(2) フラックス含有層が心材とろう材の層間又はろう材内部に存在することを特徴とする(1)項に記載のアルミニウムろう付け用ブレージングシート、
(3) フラックス含有線材を上記フラックス含有層として用い、上記フラックス含有線材を板厚方向に2段以上に積み重ねて配設することを特徴とする(1)又は(2)項に記載のアルミニウムろう付け用ブレージングシート、
(4) 上記フラックス含有線材が、1穴の空孔を有する単穴管又は2穴以上の空孔を有する多穴管の空孔内部にフラックスを配置した線材であることを特徴とする(3)項に記載のアルミニウムろう付け用ブレージングシート、
(5) ブレージングシートが心材にろう材をクラッドした後に圧延処理がなされたものである、(1)〜(4)項のいずれか1項に記載のアルミニウムろう付け用ブレージングシート、
(6) アルミニウム合金からなる心材の片面、または両面にろう材がクラッドされたブレージングシートであって、アルミニウム又はアルミニウム合金製の箔材で包み込んで形成したフラックス含有線材を心材とろう材の層間に平面方向ブレージングシートの圧延方向と平行に並べてに配設し、この積層物を圧延してなることを特徴とするアルミニウムろう付け用ブレージングシート、
(7) アルミニウム合金からなる心材の片面、または両面にろう材がクラッドされたブレージングシートであって、心材またはろう材の表面であって、心材とろう材とを合わせる側の表面に圧延方向に一定間隔の溝を掘り、上記溝に、アルミニウム又はアルミニウム合金製の箔材でフラックスを包み込んで形成したフラックス含有線材を配置した積層物を圧延することを特徴とするアルミニウムろう付け用ブレージングシートの製造方法、及び
(8) アルミニウム合金からなる心材の片面、または両面にろう材がクラッドされたブレージングシートであって、心材またはろう材の表面であって、心材とろう材との合わせる側の表面に圧延方向に一定間隔の溝を掘り、上記溝にフラックスを充填した積層物を圧延することを特徴とするアルミニウムろう付け用ブレージングシートの製造方法
を提供するものである。
心材またはろう材表面に溝を形成することを特徴とする本発明のブレージングシートの製造方法によれば、密にフラックスを充填することができ、空隙の発生を大幅に低減することが可能である。
まず、図1に従い、上記の問題を解消したブレージングシートの一例を説明する。図1は、フラックス含有層を2段積み重ねて配設したブレージングシートの圧延前の構造の一例を示す斜視図である。
この例は、ブレージングシートの製品板厚に対して厚い段階、例えば、ろう材と心材の合わせ圧延前にフラックス設置を行う場合、最終板厚でろう付けに必要なフラックス量を確保するためにフラックス含有層を厚くしなくてはならないときに適する。
図2は、フラックス含有層の4段積み重ねて配設したブレージングシートの圧延前の構造の一例を示す斜視図である。
図2に示すように、フラックス含有層(3)を高さ方向に複数層配設することにより、フラックス含有量を多くすることができる。加えて、フラックス量を多くしても、心材(4)とフラックス含有層(3)、隣接するフラックス含有層(3)、およびフラックス含有層(3)とろう材(1)は、各々がスペーサー(6)を介して接しているため、密着性を損ねること無く、その後の圧延工程中における心材とろう材の剥がれを大幅に低減することができる。
フラックス含有層を板厚方向に2層以上配設する方法として、フラックス含有線材(7)を2段以上に積み重ねる方法が工業的にも適用しやすい。この例によれば、フラックスの設置間隔を狭くするためには、フラックス含有線材を引き抜き加工により細い管に加工することにより対応することができる。さらに、フラックス含有線材のサイズと積み重ねる段数により、フラックスの含有量を容易に調整することもできる。通常、上記線材の直径は0.5〜20mmであり、好ましくは1〜5mmである。また、フラックスを封入するための上記線材の内径としては0.5〜18mmであり、好ましくは0.5〜5mmである。
まず、図5に従い、本発明のアルミニウムろう付け用ブレージングシートの一実施態様を説明する。
心材の表面にろう材がクラッドされたブレージングシートにおいては、一般に心材とろう材の界面に空隙が存在しないことが重要である。もし、心材とろう材の界面に空隙が存在すると、空隙部で心材とろう材が剥がれてしまうことがある。このような剥がれが生じると、ブレージングシートの製造中の熱処理工程において空隙部に閉じ込められた気体が膨張して、ブレージングシートに膨れが発生する。さらに、ブレージングシートをろう付け製品に成型加工する際に、ろう材層が割れてしまうことがある。特に、心材とろう材の界面にろう付け用のフラックスを設置したブレージングシートにおいては、所定の箇所にフラックスが十分に充填されていないと空隙が発生しやすく、フラックスが配置されていない従来のブレージングシートに比べて、心材とろう材の界面に空隙が存在しやすい。たとえば、フラックスを封入した多穴押出しチューブを利用するにあたり、細かなチューブの穴部に空隙が存在しないようにフラックスを完全に充填させることは困難である。
本発明のこの態様においては、アルミニウムまたはアルミニウム合金製の箔材(9)を用意し、箔材の上に線状にフラックスを配置し、フラックスを包み込むように箔材を曲げて線材を作成することが好ましい。この方法であれば、箔材に包み込まれた線材の内部において、空隙の発生は大幅に低減することができる。工業的にこのような線材を製造するにあたっても、連続的にフラックスを包み込むようにすれば、長い寸法のフラックス含有線材を製造することができる。
図9(a)は、ブレージングシートの圧延処理後の構造の一例を示す斜視図であり、図9(b)は図9(a)中、サークルAで示す部分の拡大図である。
図9(a)に示すように、圧延処理後のブレージングシートは厚さ方向と圧延方向のみに変形し、図9(b)から明らかなようにフラックスはスペーサーで区切られたままの状態となっている。
フラックスが均一に分布したブレージングシートを製造するためには、フラックスの空隙を無くしてできるだけ密に充填することが必要である。
本発明の製造方法の一態様によれば、心材あるいはろう材の表面に溝を掘って、その溝にフラックスを充填させることにより、密にフラックスを充填することができ、空隙の発生を大幅に低減することが可能である。したがって、このような本発明の製造方法によれば、工業的に可能な方法でフラックスを均一に分布させたブレージングシートを製造することができる。
工業的には、心材あるいはろう材の表面に溝を形成する方法として、溝付きロールを用いることで生産性に優れ、容易にフラックス含有ブレージングシートを製造することができる。たとえば心材に溝を形成する場合は、ブレージングシートの心材を鋳造し、所定の厚さに面削した後に、溝付きロールで心材表面に溝を形成することができる。また、ろう材に溝を形成する場合は、ろう材を所定の厚さに熱間圧延する際に、溝付きロールを用いて熱間圧延すると工程の手間が省けて効率が良い。
参考例1
図3に従い、フラックス含有線材を2段積み重ねて用いたブレージングシートの製造について説明する。
ブレージングシートを構成する心材として、JIS−A3003合金を鋳造し、580℃の温度で均質化処理を行った後、両面を面削して、長さ200mm、幅150mm、厚さ45mmの面削鋳塊とした。ろう材としてはJIS−A4045合金を鋳造し、500℃の温度で均質化処理を行った後、面削し、熱間圧延して厚さ5mmとした。また、JIS−A1050合金製の直径50mm、長さ100mmのビレットに、直径25mmの穴をあけた。この穴部にノコロックろう付け用に使われているK−Al−F系からなるフラックスの粉体(森田化学工業社製)を充填させた後、引き抜き加工により直径2mmのフラックス含有線材を製造した。該フラックス含有線材を長さ200mmに切断し、図3に示すように心材となる面削鋳塊の上に幅100mmにわたって2段重ねで並べて敷き詰めた。なお、心材の幅の両端部25mmについては厚さ4mmのJIS−A1050のスペーサーを配置し、フラックス含有線材がずれないようにした。
図4に従い、フラックスを封入した多穴線材を積み重ねて用いたブレージングシートの製造について説明する。
ブレージングシートを構成する心材及びろう材として、参考例1と同様なJIS−A3003合金の心材面削鋳塊及びJIS−A4045合金のろう材熱延板をそれぞれ用意した。また、JIS−A1050合金製の直径50mm、長さ100mmのビレットに、直径10mmの穴を4箇所あけた。この空孔部に上記ノコロックろう付け用フラックスの粉体を充填させた後、引き抜き加工により直径3mmのフラックス含有多穴線材を製造した。このフラックス含有多穴線材を参考例1と同様に、長さ200mmに切断し、図4に示すように、心材となる面削鋳塊の上に幅100mmにわたって2段重ねで並べて敷き詰めた。さらに、熱間圧延と冷間圧延と最終焼鈍を行って、板厚0.5mm、O材のブレージングシートとした。
図5に従い、アルミニウム合金製の箔材でフラックスを包み込んだ線材を用いた本発明のブレージングシートの製造について説明する。
ブレージングシートを構成する心材及びろう材として、参考例1と同様なJIS−A3003合金の心材面削鋳塊及びJIS−A4045合金のろう材熱延板をそれぞれ用意した。また、JIS−A1050合金を圧延して厚さ0.1mmとした後、350℃で焼鈍して、さらに板幅8mmの箔材とした。上記ノコロックろう付け用フラックスの粉体を、箔材で連続的に包み込み、図5に示すような直径2mmの線材とした。フラックスを包み込んだ線材を長さ200mmに切断し、心材となる面削鋳塊の上に幅100mmにわたって並べて敷き詰めた。なお、心材の幅の両端部25mmについては、図7に示すように厚さ2mmのJIS−A1050のスペーサーを配置し、線材がずれないようにした。この上に熱間圧延したろう材を重ねて幅方向の両端部を溶接し、500℃の温度で熱間圧延を行い、厚さ3mmのブレージングシートとした。さらに、冷間圧延後380℃の温度で最終焼鈍を行って、板厚0.5mm、O材のブレージングシートとした。得られたブレージングシートはクラッド率10%の片面ろう材クラッドであり、ブレージングシート中のフラックスの含有量は約1g/mm2である。
溝付きロールを用いた本発明のブレージングシートの製造について説明する。
心材として、参考例1と同様にJIS−A3003合金の心材面削鋳塊(Aとする。)を用意した。さらに、面削鋳塊(A)について、ろう材との合わせ面側に溝付きロールにより溝を形成した心材鋳塊(Bとする。)を用意した。ろう材として、参考例1と同様にJIS−A4045合金のろう材熱延板(Cとする。)を用意した。さらに、心材との合わせ面側に溝付きロールにより溝を形成したろう材熱延板(Dとする。)を用意した。なお、溝の形状、溝幅、溝間隔、溝深さは表1に示すものとした。
比較例1として、従来法によるブレージングシートを製造について説明する。
参考例1と同様の面削鋳塊の上に、JIS−A1050合金製の高さ4mm、幅4mm、長さ200mmのスペーサーを4mm間隔で並べた。スペーサーの隙間部分には上記ノコロックろう付け用フラックスの粉体を配置した。この上に、参考例1と同様に、熱間圧延したろう材を重ねて溶接し、熱間圧延と冷間圧延と最終焼鈍を行って板厚0.5mm、O材のブレージングシートを製造した。
比較例2として、従来法によるブレージングシートを製造について説明する。
JIS−A1050合金製チューブ高さ3mm、チューブ幅25mm、肉厚0.5mm、穴高さ2mm、穴幅2mm、10穴の多穴押出しチューブを用意し、上記ろう付け用フラックスを穴の内部に充填した。フラックスの充填はフラックスをイソプロピルアルコール中に懸濁させ、チューブ内部に流し込んだ後、乾燥させてアルコールを蒸発させた。フラックスを封入した多穴押出しチューブを実施例と同様のサイズの面削後の心材と、熱間圧延後のろう材の間に挟みこんだ後、熱間圧延、冷間圧延、焼鈍処理を施し、実施例と同様のブレージングシートを作製した。
2 ろう材
3 フラックス含有層
4 心材
5 フラックス
6 スペーサー
7 フラックス含有線材
8 フラックスを封入した多穴線材
9 箔材
10 カップ形状に成形したブレージングシート
11 ろう付け部位
Claims (3)
- アルミニウム合金からなる心材の片面、または両面にろう材がクラッドされたブレージングシートであって、アルミニウム又はアルミニウム合金製の箔材で包み込んで形成したフラックス含有線材を心材とろう材の層間に平面方向にブレージングシートの圧延方向と平行に並べて配設し、この積層物を圧延してなることを特徴とするアルミニウムろう付け用ブレージングシート。
- アルミニウム合金からなる心材の片面、または両面にろう材がクラッドされたブレージングシートであって、心材またはろう材の表面であって、心材とろう材とを合わせる側の表面に圧延方向に一定間隔の溝を掘り、上記溝に、アルミニウム又はアルミニウム合金製の箔材でフラックスを包み込んで形成したフラックス含有線材を配置した積層物を圧延することを特徴とするアルミニウムろう付け用ブレージングシートの製造方法。
- アルミニウム合金からなる心材の片面、または両面にろう材がクラッドされたブレージングシートであって、心材またはろう材の表面であって、心材とろう材とを合わせる側の表面に圧延方向に一定間隔の溝を掘り、上記溝にフラックスを充填した積層物を圧延することを特徴とするアルミニウムろう付け用ブレージングシートの製造方法。
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