JP4705702B2 - エチレン系共重合体の製造方法及びエチレン系共重合体並びに成形品 - Google Patents

エチレン系共重合体の製造方法及びエチレン系共重合体並びに成形品 Download PDF

Info

Publication number
JP4705702B2
JP4705702B2 JP2004324603A JP2004324603A JP4705702B2 JP 4705702 B2 JP4705702 B2 JP 4705702B2 JP 2004324603 A JP2004324603 A JP 2004324603A JP 2004324603 A JP2004324603 A JP 2004324603A JP 4705702 B2 JP4705702 B2 JP 4705702B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
molecular weight
polymerization
weight component
high molecular
ethylene
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2004324603A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2006131814A (ja
Inventor
茂樹 斎藤
弘樹 荒井
晴彦 近藤
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Japan Polyethylene Corp
Original Assignee
Japan Polyethylene Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Japan Polyethylene Corp filed Critical Japan Polyethylene Corp
Priority to JP2004324603A priority Critical patent/JP4705702B2/ja
Publication of JP2006131814A publication Critical patent/JP2006131814A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4705702B2 publication Critical patent/JP4705702B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Description

本発明は、エチレンとα−オレフィンとのエチレン系共重合体の製造方法に関し、詳しくは、幅広い分子量分布又はバイモーダルな(双峰性)分子量分布を有して、成形加工性及び機械的物性のバランスに優れ、しかも均質性が良好であるため、成形品のゲルやフィッシュアイ及びブツなどが少なくて、フィルムやブロー成形品としての容器及びパイプ製品など幅広い分野に好適なエチレン系共重合体の重合方法であって、少なくとも2基の直列に連結した重合反応器を用いて実質的に同一の高分子量成分を重合し、次いで他の重合反応器において低分子量成分を重合する、エチレン系共重合体の製造方法に係わるものである。
エチレン系重合体は、産業分野における基幹資材であり各種の成形品の樹脂材料として汎用されており、その優れた物性や成形容易性及び経済性や環境問題適応性などにより、他の樹脂材料を凌いでいるが、その用途や成形方法によって要求される特性が個々に広範囲に異なっている。例えば、射出成形法によって成形する製品には、樹脂の溶融流動性などからして、分子量が比較的低く狭い分子量分布を有する重合体が適しているが、一方、ブロー成形法やインフレーション成形法などによって成形する製品では、成形安定性や肉厚均質形成性などの観点から、分子量が比較的高く分子量分布の広い重合体が適している。
このような広範囲な特性の必要性に対処するために、二段重合方法の開発、他のオレフィンとの共重合及び重合体組成物化などの手法が採用されている。
以前から、溶融粘度が比較的低く成形加工性が良好であり中空成形(ブロー成形)や押出成形などに適した、分子量分布が広いエチレン系重合体の需要は非常に高いが、かかるエチレン系重合体は、通常は、二段重合などの多段重合法により製造されている。しかし、二段重合法では分子量分布が広い重合体が得られても、成形加工性と機械的物性とのバランスに優れた重合体を得るのは容易ではない。
従来から知られている二段重合法には、先にエチレンとα−オレフィンとを共重合してなる高分子量成分を製造した後、エチレンを単独又はエチレンと少量のα−オレフィンとを(共)重合してなる低分子量成分を製造する順二段重合法とその逆に、低分子量成分を製造後、高分子量成分を製造する逆二段重合法がある。このうち、1段目の重合反応器で高分子量成分を製造し、次いで高分子量成分を含む重合反応液をそのまま2段目の重合反応器に移送して低分子量成分を製造する順二段重合法(例えば、特許文献1及び特許文献2を参照)では、1段目と2段目の間に設けられる分子量調節剤である水素などのパージ設備などが不要であり、高分子量成分、次いで低分子量成分の順に製造するため、ゲルやフィッシュアイの原因になる高分子量成分が重合パウダー中に細かく分散しやすいという特長を有しているが、α−オレフィンを共重合する場合には、1段目で短鎖分岐が多く導入された高分子量成分を製造するために多量のα−オレフィンコモノマーを重合反応器に供給するため、未反応のコモノマーが2段目に流れ込むことにより低分子量成分にもコモノマーがかなりの量で導入されるという不都合が生ずる。機械的物性の改良は高分子量成分に短鎖分岐を多く導入することによって達成されるが、そのため本来は高分子量成分に導入することにより機械的物性の改良効果をもたらすべき短鎖分岐が有効に利用されていない。
また、二段重合法を改良する方法として、極限粘度が異なる三種のポリエチレンを組成物とすることにより、溶融物性と成形加工性を向上する三成分ブレンド法(特許文献3を参照)、各段階に特定の重合条件を設定した三段階の液相重合により高−中−低分子量の三成分重合体として、均質性や流動特性などの各種物性のバランスに優れたエチレン系共重合体を製造する三段重合法(特許文献4を参照)、各段階の極限粘度やα−オレフィンの割合などを特定した三段階の重合により、中空成形性及び剛性と耐環境応力亀裂性に優れたエチレン系共重合体を製造する三段重合法(特許文献5を参照)、各段階において分子量の異なる重合体を製造し、最も高い分子量を粘度平均分子量で100万以上とする三段階の重合により、成形性と剛性及び耐環境応力亀裂性に優れたエチレン系共重合体を高い生産性で製造する三段重合法(特許文献6を参照)、各段階の極限粘度や重合量などを特定した三段階の重合により、溶融性及び衝撃強度と耐環境応力亀裂性などに優れたエチレン系共重合体を製造する三段重合法(特許文献7を参照)、などが開示されているが、これらのエチレン系(共)重合体は分子量の異なる三成分からなるため、各成分の混ざりが均一になり難く、成形品のゲルやフィッシュアイなどが多くなるなどの問題を有している。
一方、α−オレフィン含有量が異なる高分子量成分二成分と低分子量成分一成分からなり極限粘度と密度が規定され、成形性と剛性及び耐環境応力亀裂性に優れた三成分組成物又は三段重合法も提案されているが(特許文献8を参照)、α−オレフィン含有量の多い高分子量成分の製造が難しく、また、組成物中の高分子量成分の組成分布が広いため、長期寿命が必ずしも改良されないという欠点を内在している。
特開昭54−7488号公報(特許請求の範囲(1)) 特表平8−504883号公報(要約) 特開平2−235947号公報(特許請求の範囲(1)及び第1頁右下欄) 特開平9−87328号公報(要約) 特開平5−255440号公報(要約) 特開昭56−32506号公報(特許請求の範囲1.〜3.及び第3頁右上欄) 特開昭58−138719号公報(特許請求の範囲(1)及び第2頁左上欄) 特開2003−49027号公報(要約及び段落0060)
本発明の課題は、従来の逆二段重合法に比較して、1段目と2段目の間にパージ設備などが不要であり、高分子量成分次いで低分子量成分の順に製造するためゲルやフィッシュアイの原因になる高分子量成分が重合パウダー中に細かく分散しやすいという特長を有する前記の順二段重合において、高分子量成分を製造後の未反応コモノマーが多量に低分子量成分を重合する反応器に流れ込むため、α−オレフィンの機械的物性改良効果が有効に利用されていない問題点を解消して、成形加工性と機械的物性とのバランスに優れ、しかも均質性に優れるため、成形品のゲル、フィッシュアイ、ブツなどが少なくフィルム、ブロー成形品及びパイプ成形品など幅広い分野に適したエチレン系重合体を製造するための連続多段重合法を提供するものである。
本発明者らは、上記の課題を解決するために、分子量分布の広いエチレン系重合体を得るための従来の多段重合法を詳細に検討して、エチレンとα−オレフィンとの順二段重合法において、高分子量成分を製造後の未反応α−オレフィンコモノマーが多量に、低分子量成分を重合する重合反応器に流れ込むため、α−オレフィンの機械的物性改良作用が有効に利用されていない問題点に着目し、この問題点を解消すれば、成形加工性と機械的物性とのバランスに優れ、しかも均質性に優れるため成形品のゲルやフィッシュアイなどが殆どなくフィルムやブロー成形容器及びパイプ類製品など幅広い分野に適した、分子量分布の広いエチレン系共重合体を効率よく製造し得るのではと認識した。
そして、上記の問題点を解消するために、エチレンとα−オレフィンを多段重合する際の、重合触媒の種類や重合反応条件及び重合装置あるいは共重合プロセスなどについて検討して、特定の共重合プロセスを採用すればα−オレフィンの機械的物性改良作用が多段重合において有効に利用され得ることを見い出した。
すなわち、本発明者らは、チーグラー系触媒などの遷移金属触媒を用いて、エチレンとα−オレフィンを共重合し高分子量成分と低分子量成分からなるエチレン系共重合体を多段重合するに際して、先ず高分子量成分を製造し、次いで高分子量成分を含む重合反応液をそのまま次の重合反応器に移送して低分子量成分を製造するにあたり、少なくとも2基の直列に連結した重合反応器を用いて実質的に同一の高分子量成分を製造し、次いで低分子量成分を製造する、新規な連続多段重合法の採用によって上記の問題が解消され、成形加工性と機械的物性とのバランスに優れて、しかも均質性に優れるため成形品のゲルやフィッシュアイなどが殆どない、高分子量成分と低分子量成分からなる分子量分布の広いエチレン系共重合体を効率よく製造し得ることを知見することができた。
その結果、未反応のα−オレフィンコモノマーが低分子量成分の重合反応器に流れ込むことにより低分子量成分にもコモノマーがかなりの量で導入されるという不都合が生じず、高分子量成分に短鎖分岐を多く導入することによって機械的物性の改良が充分に達成され、そのため高分子量成分に導入することにより機械的物性改良効果をもたらすべきα−オレフィンの短鎖分岐が有効に利用される。
その結果として、フィルム成形品や中空成形品や押出成形品の衝撃強度及び耐環境応力亀裂性などの諸特性に優れた向上結果が得られる。また、直列に連結した重合反応器を用いて実質的に同一の高分子量成分を製造するので、これらの成分の混ざりがよく、均質な製品が得られる。
本発明は、さらに重合成分の流動性をハイロードメルトフローレート(HLMFR)により規定し、重合成分の重量割合やコモノマーの供給プロセス、さらには高分子量成分に機械的物性改良効果をもたらすべきα−オレフィンの短鎖分岐を多く導入するように重合されたエチレン系共重合体などを特定するものでもある。
本発明は、段落0004〜0005に記載した先行技術の多段重合法を改良して、特定の共重合プロセスを採用することにより、α−オレフィンの機械的物性改良作用が多段重合において有効に利用され得ることを基本的な特徴として、併せて成形加工性と機械的物性とのバランスに優れ、しかも均質性に優れるため成形品のゲルやフィッシュアイなどが殆どない、高分子量成分と低分子量成分からなる分子量分布の広いエチレン系重合体を効率よく製造し得る発明である。
本発明を各先行技術と対比しても、特許文献1には、1段目の重合反応器で高分子量成分を製造し、次いで高分子量成分を含む重合反応液をそのまま2段目の重合反応器に移送して低分子量成分を製造する二段重合法において、実質同一反応条件で運転される2個以上の反応器を直列に結合するという記載があるが(第5頁右上欄)、α−オレフィンを共重合するものではなく、段落0009に記載した本発明の特定の共重合プロセスを示唆するものでもない。特許文献6は、三段重合法により高剛性と高ESCRを実現し、α−オレフィンを共重合するものでもあるが(第3頁右上欄及び第4頁左上欄)、各段階で分子量の異なるポリマーを製造するものであり、本発明の特定の共重合プロセスを示唆するものではない。
以上においては、本発明が創作される技術的背景及び開発の経緯と、本発明の基本的な構成及び特徴、さらには先行技術との差異などについて概括的に記述したので、ここで本発明の全体を俯瞰すると、本発明は次の発明単位群から構成されるものであって、[1]及び[7]の発明を基本的発明として、その他の発明は基本的発明を具体化ないしは実施態様化するものである。なお、[1]〜[9]の発明群全体をまとめて「本発明」という。
[1]少なくとも3基以上の重合反応器を用いて、遷移金属触媒の存在下でエチレンとα−オレフィンを重合し、高分子量成分と低分子量成分からなるエチレン系共重合体を製造する方法において、先ず少なくとも2基の直列に連結した重合反応器の各々において実質的に同一の高分子量成分を製造し、次いで該高分子量成分を含む重合反応液をそのまま次の重合反応器に移送して低分子量成分を製造することを特徴とするエチレン系共重合体の製造方法。
[2]高分子量成分量を100(質量%)、高分子量成分の重合反応器数をNとした場合に、低分子量成分の直前の重合反応器1基で製造される重合体の重合割合Xが、100/N−5≦X≦60(質量%)であることを特徴とする[1]におけるエチレン系共重合体の製造方法。
[3]3基の重合反応器のうち、実質的に同一の高分子量成分を製造する直列に連結した重合反応器が2基であることを特徴とする、[1]又は[2]におけるエチレン系共重合体の製造方法。
[4]α−オレフィンが炭素数3〜12のα−オレフィンであり、かつ該α−オレフィンを実質的に高分子量成分の重合反応器にのみに供給することを特徴とする、[1]〜[3]のいずれかにおけるエチレン系共重合体の製造方法。
[5]ハイロードメルトフローレートが0.01〜10g/10min及びα−オレフィンの含量(Da)が10モル%以下の高分子量成分を重合量比(Xa)10〜60質量%の割合で製造し、ハイロードメルトフローレートが10g/10minを超えα−オレフィンの含量(Db)が5モル%以下の低分子量成分を重合量比(Xb)40〜90質量%の割合で製造する(但し、Da>Db、Xa+Xb=100質量%である。)ことを特徴とする、[1]〜[4]のいずれかにおけるエチレン系共重合体の製造方法。
[6]遷移金属触媒が少なくともチタン及びマグネシウムを含有する固体チーグラー系触媒並びに有機アルミニウム化合物とから形成されることを特徴とする、[1]〜[5]のいずれかにおけるエチレン系共重合体の製造方法。
[7][1]〜[6]のいずれかにおける製造方法によって得られるエチレン系共重合体であって、ハイロードメルトフローレートが0.01〜10g/10min及びα−オレフィンの含量(Da)が10モル%以下である高分子量成分を10〜60質量%含有し、ハイロードメルトフローレートが10g/10minを超えα−オレフィンの含量(Db)が5モル%以下である低分子量成分を40〜90質量%含有し、Da>Dbであることを特徴とする、エチレンと炭素数3〜12のα−オレフィンとのエチレン系共重合体。
[8]高分子量成分の密度が890〜950kg/mの範囲、低分子量成分の密度が910〜980kg/mの範囲であることを特徴とする[7]におけるエチレン系共重合体。
[9][7]又は[8]におけるエチレン系共重合体を成形してなる、フィルム及びシートあるいは容器ないしはパイプ類。
本発明においては、エチレン系共重合体の多段重合法において特定の共重合プロセスなどの構成を採用することによって、多段重合における未反応のα−オレフィンコモノマーが低分子量成分の重合反応器に流れ込むことにより低分子量成分にもコモノマーがかなりの量で導入されるという不都合が生じず、高分子量成分に短鎖分岐をより多く導入することによる機械的物性の改良が充分に達成されて、機械的物性改良効果をもたらすべきα−オレフィンによる短鎖分岐が有効に利用される。
その結果、フィルム成形品や中空成形品や押出成形品の衝撃強度及び耐環境応力亀裂性などに優れた向上結果が得られ、成形加工性と機械的物性とのバランスに優れ、しかも均質性に優れるため、成形品のゲルやフィッシュアイなどが殆どなく、フィルムやシート、ブロー成形容器及びパイプ類製品など幅広い分野に適した、高分子量成分と低分子量成分からなる分子量分布の広いエチレン系共重合体を効率よく製造することができる。
本発明については、その課題を解決する手段として、本発明の基本的な構成に沿って概括的に前述したが、以下においては、前述した本発明群の発明の実施の形態を具体的に詳しく説明する。
1.本発明の基本構成とその特徴
本発明は、少なくとも3基以上の重合反応器を用いて、遷移金属触媒の存在下でエチレンとα−オレフィンを重合し、高分子量成分と低分子量成分からなるエチレン系共重合体を製造するにおいて、先ず少なくとも2基の直列に連結した重合反応器の各々において実質的に同一の高分子量成分を製造し、次いで該高分子量成分を含む重合反応液をそのまま次の重合反応器に移送して低分子量成分を製造することを特徴とするエチレン系共重合体の製造方法である。
高分子量成分を製造する反応器を1基から直列に連結した2基以上とし、併せて直列に連結した重合反応器の各々において実質的に同一の高分子量成分を製造することにより、高分子量成分の製造が複数の重合反応器に分割され、その結果、高分子量成分を製造する最後の重合反応器におけるα−オレフィンコモノマー量が少なくなり、最終的に低分子量成分を製造する重合反応器へ流れ込む未反応α−オレフィン量が従来の順二段重合法の場合より本質的に少なくなることが達成される。
それによって、未反応のα−オレフィンコモノマーが低分子量成分の重合反応器に流れ込むことにより低分子量成分にもコモノマーがかなりの量で導入されるという不都合が生じず、高分子量成分に短鎖分岐を多く導入することによって機械的物性の改良が充分に達成され、そのため高分子量成分に導入することにより機械的物性改良効果をもたらすべきα−オレフィンの短鎖分岐が有効に利用される。α−オレフィンの短鎖分岐が充分に高分子量成分に導入されることにより、幅広い分子量分布を有しながら、機械的物性が改良される。また、直列に連結した重合反応器を用いて実質的に同一の高分子量成分を製造するので、これらの成分の混ざりがよく、均質な製品が得られる。
なお、本発明においては、幅広い分子量分布とは、バイモーダルな(双峰性)分子量分布を有する場合を包含する。
なお、本発明で製造される高分子量成分の「実質的に同一」とは、密度及び分子量がそれぞれ実質的に、あるいはほぼ実質的に等しい値であることをいう。ただし、製造上のコントロール範囲内及び測定精度の範囲内で異なる値であってもよい。
例えば、具体的には各段での重合後の高分子量成分に関して、各物性の目標値に対する振幅範囲(いわゆる誤差範囲)は、密度では±2kg/m以内、分子量(HLMFR)では±20%以内の範囲である(即ち、目標値がHLMFR=1.0g/10minの場合は、各段での重合後のHLMFRの範囲は下限が0.8g/10min、上限が1.2g/10minとなる)。
2.本発明の付帯的要件
(1)ハイロードメルトフローレート
高分子量成分の重合反応器においてハイロードメルトフローレート(HLMFR)が0.01〜10g/minの高分子量成分を製造し、低分子量成分の重合反応器においてハイロードメルトフローレートが10g/minを超える低分子量成分を製造する。
ハイロードメルトフローレートとは、溶融流動性を示す指標であり、温度190℃で荷重211.82NにおけるMFR測定値である。
本発明において製造される高分子量成分とは、ハイロードメルトフローレート(HLa)が0.01〜10g/10min、好ましくは0.05〜7g/10minの範囲である。高分子量成分のHLaが10g/10minを超えると充分な機械的特性や溶融弾性が得られず、HLaが0.01未満では成形品にブツやゲルを生じ、均質性が損なわれる惧れが生じる。
本発明において製造される低分子量成分とは、ハイロードメルトフローレート(HLb)が10g/10minを超え、好ましくは20g/10min以上、より好ましくは30g/10min以上である。低分子量成分のHLbが10g/10min以下では流動特性が損なわれる惧れが生じる。
ここで低分子量成分のHLMFR(HLb)は、高分子量成分のHLMFR(HLa)と低分子量成分重合後(パウダー)のHLMFR(HLc)、そして高分子量成分の重合量比(Xa(質量%))を使い、以下の式から求められる。
logHLc=(Xa/100)*logHLa+((100−Xa)/100)*logHLb (logは常用対数)
(2)α−オレフィン
i)α−オレフィンの種類
本発明で使用されるα―オレフィンは、エチレンと共重合可能なα−オレフィンであれば特に制限はないが、炭素数が3〜12のものが好ましく、代表例としては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテンなどが挙げられる。これらは複数種使用してもよい。
ii)α−オレフィンの含量
本発明で製造されるエチレン系共重合体の高分子量成分のα−オレフィン含量(Da)は、10モル%以下、好ましくは5モル%以下であり、低分子量成分のα−オレフィン含量(Db)は、5モル%以下、好ましくは3モル%以下であり、また、Da>Dbの条件にて製造される。
高分子量成分のα−オレフィン含量(Da)が、10モル%を超える場合には得られた共重合体の剛性が著しく低下するばかりでなく、ポリマーのベタツキのために製造自体が困難となる惧れが生じる。低分子量成分のα−オレフィン単位の含量(Db)が5モル%を超えると得られた共重合体の剛性が低下するなどの不都合を生じる惧れがある。
ここで低分子量成分のα−オレフィンの含量(Cb、質量%)は、高分子量成分のα−オレフィンの含量(Ca、質量%)と低分子量成分重合後(パウダー)のα−オレフィンの含量(Cc、質量%)、そして高分子量成分の重合量比(Xa(質量%))を使い、以下の式から求められる。
Cc=(Xa/100)*Ca+((100−Xa)/100)*Cb
この際、α−オレフィンの含量(質量%)とα−オレフィンの含量(モル%)はエチレンとα−オレフィンの分子量を使い、互いに変換される。
高分子量成分及び低分子量成分のα−オレフィン単位の含量は、Da>Dbの関係を満たすことが必要である。これにより最終的に得られる共重合体の機械的特性を充分に満足できるレベルまで向上することが可能となる。すなわち高分子量成分中により多くの分岐を導入することによりESCRに代表される長期寿命や引張衝撃値などの機械的特性を向上することができる。
α−オレフィンの含量は、重合触媒との関連におけるα−オレフィンの供給量の調整により制御され、実際には実験的に適宜に制御しえる。
なお、低分子量成分を製造する重合反応器に実質的にα−オレフィンを供給しない場合でもα−オレフィンの含量(Db)が0モル%にならないのは、高分子量成分を製造する時の未反応α−オレフィンが低分子量成分を製造する重合反応器に多少あるいは僅かに流れ込むことによるものである。
iii)α−オレフィンの供給
高分子量成分により多くの分岐を導入するためには、α−オレフィンコモノマーの供給は、実質的に高分子量成分を製造する重合反応器にのみに行うのが好ましい。これによりα−オレフィンは高分子量成分の重合反応器でより多く共重合される。
(3)重合成分の重合量比
重合成分の重合量比については、高分子量成分の合計重合量比(Xa)が10〜60質量%であり、低分子量成分の重合量比(Xb)が40〜90質量%の割合(但し、Xa+Xb=100質量%である)で製造される。この割合は、各重合反応器の反応条件や供給モノマー量などの調整により制御される。
高分子量成分の合計重合量比(Xa)が60質量%を超える場合には、得られた共重合体の剛性が著しく低下するばかりでなく、ポリマーのベタツキのため製造自体が困難となる。低分子量成分の重合量比(Xb)が90質量%を超える場合には、成形品のESCRなどの性能が低下する惧れが生じる。これらの重合量比から各々の重合量比の下限(10及び40質量%)も設定される。
3.重合方法
(1)各段の重合
高分子量成分は、少なくとも2基の直列に連結した重合反応器の各々において、実質的に同一の密度及び分子量の重合体として製造される。「実質的に同一」については段落0019に前記されている。なお、高分子量成分の密度は890−950kg/cmの範囲、低分子量成分の密度は910−980kg/cmの範囲で選択される。
ここで低分子量成分の密度(Mb)は、高分子量成分の密度(Ma)と低分子量成分重合後(パウダー)の密度(Mc)、そして高分子量成分の重合量比(Xa(質量%))を使い、以下の式から求められる。
1/Mc=(Xa/100)/Ma+((100−Xa)/100)/Mb
各高分子量成分の重合量比は特に限定されないが、高分子量成分量を100(質量%)、高分子量成分の重合反応器数をNとした場合に、低分子量成分の直前の重合反応器1基で製造される重合体の重合割合Xは、100/N−5≦ X ≦60(質量%)の範囲で選択される。
上記の下限量未満では運転条件が難しく、かつ生産性が低下して経済性に劣るものとなる。上限の60質量%を超える場合には、低分子量成分への未反応コモノマーの流れ込みが多くなり共重合体の剛性の低下などが生じ、本発明の効果が発現しない惧れが生じる。
また、例えば2基の直列に連結した重合反応器を用いた場合は、第2工程の重合反応器において製造される高分子量成分の重合量(Xa2)は第1工程の重合反応器において製造される高分子量成分の重合量(Xa1)と同等以上(Xa2≧Xa1)であることが好ましい。
本発明では少なくとも3基の重合反応器を用いて、高分子量成分の複数の重合反応器の次に、1基又は2基以上の低分子量成分の重合反応器が直結され、高分子量成分を含む重合反応液をそのまま次の重合反応器に移送して低分子量成分を製造するが、実施例でも示されるように、設備費などの経済性やポリマーの製造条件、製造効率などを考慮すると、3基の重合反応器を用いて、2基の直列に連結した重合反応器で実質同一の高分子量成分を製造し、次いで低分子量成分を製造することが好ましい。
(2)重合条件
本発明では、それぞれの重合反応器における重合条件は目的とする成分を製造することができる限り、特に限定されるものではないが、通常は50℃〜110℃の重合温度で、20分〜6時間、その圧力は使用する溶媒の種類にも因るが、0.2〜10MPaで実施される。
(3)重合方法
高分子量成分を製造する重合反応器においては、エチレンとα−オレフィンとの共重合を、水素濃度のエチレン濃度に対する重量比又は分圧比、重合温度あるいは双方により分子量を調節しながら、さらにα−オレフィン濃度のエチレン濃度に対する重量比又は分圧比により密度を調節しながら重合反応を行なう。
第1工程で製造される重合反応器と実質的に同一の高分子量成分を製造する第2工程の重合反応器では、第1工程の重合反応器から流れ込む重合反応液(混合物)中に水素及びα−オレフィンが存在するが、エチレン以外に必要に応じてそれぞれ新たな水素とα−オレフィンを加えることができる。
低分子量成分を製造する重合反応器においては、高分子量成分を製造する重合反応器から流れ込む重合反応液(混合物)中に水素及びα−オレフィンが存在するが、エチレン以外に必要に応じて新たな水素を加えることができる。上記水素濃度は、高分子量成分の製造時の水素濃度より低分子量成分の製造時の水素濃度を高くして運転される。
本発明の製造方法では、例えば、第1工程の重合反応器内で重合して得られた高分子量成分の重合反応液(混合物)は連絡管を通して、次の第2工程の高分子量成分の重合反応器に差圧により移送される。さらに該第2工程の高分子量成分の重合反応器から、低分子量成分の重合反応器への移送も同様に差圧によって行われる。このように、さらに複数の重合反応器が追加された場合においても順次同様に連絡管を通して差圧によって移送される。
本発明の重合法は、重合したポリマー粒子が溶媒中に分散したスラリー重合法、ポリマー粒子が溶媒中に溶解した溶液重合法あるいはポリマー粒子が気相中に分散した気相重合法など任意の方法が適用できる。スラリー重合法及び溶液重合法の場合に用いられる炭化水素溶媒としては、プロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの不活性炭化水素の単独又は混合物が用いられる。スラリー重合の場合は重合温度を上げても、生成したエチレン系重合体が溶媒に溶解しにくくスラリー状態を保つために、プロパン、n−ブタン、イソブタンが溶媒として好ましい。
分子量を調節するためのいわゆる連鎖移動剤としては、通常の水素を使用する。水素圧力は、特に限定されないが、通常は液相中の水素濃度として1.0×10−5〜1.0×10−1質量%、好ましくは5.0×10−4〜5.0×10−2質量%の範囲である。
(4)重合触媒
本発明において用いる遷移金属触媒としては、チーグラー系触媒及びメタロセン系触媒などが挙げられるが、広い分子量分布を得るためにチーグラー系触媒が好ましく、特に、チタン及びマグネシウムを含有する固体チーグラー触媒と有機アルミニウム化合物とからなる触媒系が代表的に例示される。
チタン及びマグネシウムを含有する固体チーグラー触媒としては、汎用されており、例えば、特開昭53−78287号公報、特開昭54−21483号公報、特開昭55−71707号公報、特開昭58−225105号公報などに記載された触媒系が挙げられる。
特に好ましいチーグラー系触媒としては、具体的には、トリハロゲン化アルミニウムとSi−O結合を有する有機珪素化合物及びマグネシウムアルコラートを共粉砕することによって得られる共粉砕生成物に四価のチタン化合物を接触することによって得られる固体触媒成分と、有機アルミニウム化合物からなる触媒系が挙げられる。
固体触媒成分中にはチタン原子が1〜15重量%含まれるのが好ましい。有機珪素化合物としてはフェニル基、アラルキル基を有するもの、例えば、ジフェニルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、トリフェニルエトキシシラン、トリフェニルメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシランなどが好ましい。
共粉砕生成物を製造するにあたり、マグネシウムアルコラート1モル当りのトリハロゲン化アルミニウム及び有機珪素化合物の使用割合は、いずれも一般に0.02〜1.0モルであり、特に0.05〜0.20モルが好ましい。また、有機珪素化合物の珪素原子に対するトリハロゲン化アルミニウムのアルミニウム原子の割合は0.5〜2.0モル比が好適である。
共粉砕生成物を製造するためには、この種の固体触媒成分を製造する際に一般に使われている回転ボールミルや振動ボールミル及びコロイドミルなどの粉砕機を用いて、通常行われている方法を適用すればよい。
得られる共粉砕生成物の平均粒径は通常50〜200μmであり、比表面積は20〜200m/gである。
以上のようにして得られた共粉砕生成物と四価のチタン化合物とを液相にて接触させることによって、固体触媒成分が得られる。
上記の固体触媒成分と組み合わせて使用される有機アルミニウム化合物はトリアルキルアルミニウム化合物が好ましく、例えば、トリエチルアルミニウム、トリn−プロピルアルミニウム、トリn−ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどが挙げられる。
4.エチレン系共重合体
本発明の特定の重合方法により製造されるエチレン系共重合体は、新規な共重合体であり、各重合段階の重合体の組成物といえるものであって、分子量分布が広く、従来の順二段重合物より、高分子量成分に効率よくコモノマーが入ることにより段落0015に前記したとおりの特性を有している。
すなわち、本発明のエチレン系共重合体は、少なくとも2基の直列に連結した重合反応器の各々において実質的に同一の高分子量成分を製造し、次いで該高分子量成分を含む重合反応液をそのまま次の重合反応器に移送して低分子量成分を製造してなるエチレン系共重合体であって、ハイロードメルトフローレートが0.01〜10g/10min及びα−オレフィンの含量(Da)が10モル%以下である高分子量成分を10〜60質量%含有し、ハイロードメルトフローレートが10g/10minを超えα−オレフィンの含量(Db)が5モル%以下である低分子量成分を40〜90質量%含有し、Da>Dbであることを特徴とする、エチレンと炭素数3〜12のα−オレフィンとのエチレン系共重合体である。
また、高分子量成分の密度は、890〜950kg/mの範囲であり、低分子量成分の密度は910〜980kg/mの範囲で調製される。
5.その他
(1)添加剤
本発明の多段重合法によって得られたエチレン系共重合体には、必要に応じて、酸化防止剤、熱安定剤、酸吸収剤、耐候剤、滑剤、抗ブロック剤、防曇剤、帯電防止剤、造核剤、難燃剤、顔料などの各種添加剤を添加して使用することができる。
通常は、重合後のパウダーに必要な添加剤を添加後、単軸押出機や二軸押出機などの押出機で造粒される。その際、過酸化物を添加し変性することも可能である。
(2)用途
本発明の多段重合法によって得られたエチレン系共重合体は、ブロー成形や押出成形などの成形加工性及び機械的物性のバランスに優れ、しかも均質性、耐環境応力亀裂性(ESCR)などにも優れるため、フィルム、シート、ブロー成形による小型や大型容器などの容器類、配水パイプ、ガスパイプなどのパイプ類さらには各種被覆材料などに好適に使用される。
以下においては、本発明をさらに具体的に詳細に説明するために、実施例及び対照する比較例を掲げて記述し、本発明の構成及び効果をより明確にして、本発明の構成の有意性と卓越性を実証する。
なお、エチレン系共重合体に対して、実施例及び比較例において使用した測定方法は以下の通りである。
a)メルトフローレート(MFR):
JIS K−7210(1996年版)の表1−条件4に従い、温度190℃、荷重21.18Nにおける測定値をMFRとして示した。
b)ハイロードメルトフローレート(HLMFR):
JIS K−7210(1996年版)の表1−条件7に従い、温度190℃、荷重211.82Nにおける測定値をHLMFRとして示した。
c)密度:
JIS K−7112(1996年版)に従い測定した。
d)α−オレフィン含量:
13C−NMRにより、以下の条件で測定した。
装置:日本電子(株)製JNM−GSX400
パルス幅:8.0μsec(フリップ角=40°)
パルス繰り返し時間:5秒
積算回数:5,000回以上
溶媒および内部標準:1,2,4−トリクロロベンゼン/ベンゼン−d6/ヘキサメチルジシロキサン(混合比:30/10/1)
測定温度:120℃
試料濃度:0.3g/ml
測定で得られたスペクトルを(1)エチレン/1−ブテン共重合体については
、「Macromolecules,15,353−360(1982)(Eric T.Hsieh and James C.Randall)、(2)エチレン/1−ヘキセン共重合体については、「Macromolecules,15,1402−1406(1982)(Eric T.Hsieh and James C.Randall)の文献に従い、観測ピークの帰属後、α−オレフィン含量を求めた。
e)剛性:
JIS K−7203(1996年版)に従って測定した曲げ弾性率を剛性の値とした。
f)耐環境応力亀裂(ボトルESCR):
ベクム(株)製の90mmφ押出機付き中空成形機を用い、シリンダー設定温度170℃、ダイ設定温度200℃、金型温度20℃にて、図1(a)に正面断面図、(b)に側面断面図を示す380ml容量の偏平型ボトル(重量30g)を成形した。この成形ボトルはピンチオフ長さ(H)40mm〜43mm、下バリ長さ45mm〜49mm、ボトルの底面角部(C)の厚みが400〜600μmである。この成形ボトル5本の各々にノニオン系界面活性剤(日本油脂(株)製NS210)33%の水溶液100mlを充填し密栓して、60℃のオーブンに入れ、ボトル内部に0.35kgf/cmの圧力をかけた状態で、ボトルにクラックが入るまでの時間を測定し、5本の平均値をとった。
g)フィルムインパクト:
造粒ペレットを用い、以下の条件でインフレーションフィルム成形を行い、厚さ20μmのフィルムを得た。
押出機:(株)プラコーENF−75
設定温度:190℃ スクリュー回転数:約40rpm
ダイ:トミー機械工業(株)120φ SPNL
ダイ径:120mm リップギャップ:0.7mm
引取速度:60m/min フロストライン高さ:1150mm
フィルム折径:450mm 安定体:90mm
成形フィルムをJIS P−8134(1998年版)に従って、孔開け強さを
測定し、フィルムインパクトとした。
h)外観:
成形品の表面を目視観察した
[実施例1]
(1)触媒調製
直径10mmの磁製ボールを約700個充填した内容積1Lの粉砕用ポットを充分に窒素置換した後、市販のマグネシウムエチラート20g(17.5mmol)、粒状の三塩化アルミニウム1.66g(17.5mmol)及びジフェニルジエトキシシラン2.72g(10mmmol)を入れた。このポットを振動ボールミルに取り付け、振幅が6mm及び振動数が30Hz/分の条件で3時間共粉砕を行った。粉砕後に内容物を窒素雰囲気下で取り出し、約20gの共粉砕物を得た。
充分に窒素置換した200mlの三ツ口フラスコに、上記で得られた共粉砕物5g及びn−ヘプタン20mlを加え、攪拌しながら室温で10mlの四塩化チタンを滴下した。滴下が終了後、反応系を90℃まで昇温し、90分間攪拌を続けた。次いで反応系を室温まで冷却後、n−ヘキサンを用いたデカンテーションを繰り返すことにより、未反応の四塩化チタンなどを除去した後、50℃にて減圧乾燥することにより、7.2gの固体触媒成分を得た。この固体触媒成分は元素分析の結果、10.1重量%のチタン原子を含んでいた。
(2)重合
内容積100Lの第1の重合液体充填ループ型反応器に脱水精製したイソブタンを190L/hr、トリイソブチルアルミニウムを33g/hrの速度で、前記固体触媒を4.5g/hrの速度で、さらにエチレンを41kg/hr、水素を2.5g/hr、コモノマーとして1−ヘキセンを1.6kg/hrの速度で連続的に供給し、80℃、重合圧力4.3MPa、平均滞留時間0.5hrの条件下でエチレンと1−ヘキセンとの共重合を行った。重合反応生成物の一部を採取し物性を測定した結果、HLMFRは1.37g/10min、密度は932.3kg/m、1−ヘキセン含有量は0.57モル%であった。
次いで、第一工程重合生成物を含むイソブタンスラリーをそのまま内容積200Lの第二工程反応器に全量導入し、触媒を追加することなく、イソブタンを120L/hr、エチレンを40kg/hr、水素を1.5g/hr、1−ヘキセンを1.1kg/hrの速度で連続的に供給し、80℃、重合圧力4.2MPa、平均滞留時間0.5hrの条件下で第二工程の重合を行った。重合反応生成物の一部を採取し物性を測定した結果、HLMFRは1.36、密度は932.0kg/m、1−ヘキセン含有量は0.55モル%であった。
次いで、第二工程重合生成物を含むイソブタンスラリーをそのまま内容積400Lの第三工程反応器に全量導入し、トリイソブチルアルミニウムを160g/hr、イソブタンを80L/hr、エチレンを90kg/hr、水素を140g/hrの速度で連続的に供給し、90℃、重合圧力4.1MPa、平均滞留時間0.5hrの条件下で第三工程の重合を行った。第三工程反応器から排出されたエチレン系重合体のMFRは0.70、HLMFRは41.2g/10min、密度は950.6kg/m、1−ヘキセン含有量は0.36モル%であった。なお、高分子量成分(第一工程および第二工程で製造された重合体の総計)の割合は47質量%であった。
(3)造粒
得られた重合体に、酸化防止剤としてチバガイギー社製のイルガノックスB225を0.2phr、酸吸収剤としてステアリン酸カルシウムを0.1phr加えて、(株)神戸製鋼所製のKTX−37mmφ同方向噛み合い型二軸押出機(L/D=32)にて、設定温度190℃、スクリュー回転数200rpmの条件で造粒した。
(4)測定
造粒後物性測定を行うと共に、上述の方法に従いブロー成形後ボトルESCRを測定した。
各工程後のパウダー、造粒ペレット、ブロー成形品の結果は表2に示す。曲げ弾性率が1160MPa、ボトルESCRは200hrであり、ピンチオフ部の融着状態は良好であった。
[実施例2]
実施例1と同じ触媒及び重合装置を用いて、重合条件を表1に示すように変えた他は、実施例1と全く同様に重合を行った。重合後の造粒、ブロー成形は実施例1と同様に行った。結果は表2に示す。
[実施例3]
実施例1と同じ触媒及び重合装置を用いて、重合条件を表1に示すように変えた他は、実施例1と全く同様に重合を行った。重合後の造粒は、有機過酸化物として、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンを40ppmさらに加えた以外は実施例1と同様に行った。造粒後物性測定を行うとともに、上述の方法に従いインフレーションフィルム成形後フィルムインパクトを測定した。
[実施例4]
実施例1と同じ触媒及び重合装置を用いて、重合条件を表1に示すように変えた他は、実施例1と全く同様に重合を行った。重合後の造粒、ブロー成形は実施例1と同様に行った。結果は表2に示す。
[比較例1]
内容積200Lの第1の重合液体充填ループ型反応器に脱水精製したイソブタンを270L/hr、トリイソブチルアルミニウムを224g/hrの速度で、前記固体触媒を5.2g/hrの速度で、さらにエチレンを87kg/hr、水素を5.4g/hr、コモノマーとして1−ヘキセンを2.7kg/hrの速度で連続的に供給し、80℃、重合圧力4.2MPa、平均滞留時間0.55hrの条件下でエチレンと1−ヘキセンとの共重合を行った。
重合反応生成物の一部を採取し物性を測定した結果、HLMFRは1.30g/10min、密度は934.6kg/m、1−ヘキセン含有量は0.45モル%であった。
次いで、第一工程重合生成物を含むイソブタンスラリーをそのまま内容積400Lの第二工程反応器に全量導入し、触媒を追加することなく、イソブタンを120L/hr、エチレンを98kg/hr、水素を150g/hrの速度で連続的に供給し、90℃、重合圧力4.1MPa、平均滞留時間0.6hrの条件下で第二工程の重合を行った。第二工程反応器から排出されたエチレン系重合体のMFRは0.68、HLMFRは42g/10min.、密度は950.9kg/m、1−ヘキセン含有量は0.35モル%であった。なお、高分子量成分(第一工程で製造された重合体)の割合は47質量%であった。
重合後の造粒、ブロー成形は実施例1と同様に行った。造粒ペレット、ブロー成形品の結果は表2に示す。曲げ弾性率が1200MPa、ボトルESCRは90hrであり、ピンチオフ部の融着状態は良好であった。
[比較例2〜4]
比較例1と同じ触媒及び重合装置を用いて、実施例2〜4に対応する二段重合条件を、表1に示すように変えた他は比較例1と全く同様に行った。重合後の造粒、成形も実施例2〜4に対応して行った。結果は表2に示す。
Figure 0004705702
Figure 0004705702
[実施例と比較例との対照による考察]
表2における各実施例と対応する各比較例は、本発明と従来の順二段重合品で、高分子量成分と低分子量成分重合後のHLMFRや低分子量成分重合後の密度とがほぼ同等のエチレン系共重合体における、ブロー成形による容器及びインフレーションフィルムの性能を評価した結果を示すものであり、本発明の成形品は、外観が良好(ブツ、フィッシュアイ)で、かつボトルESCR、フィルムインパクトが格段に向上していることが判る。
このように広い分子量分布又はバイモーダルな(双峰性)分子量分布を有すエチレン系共重合体を特定の多段重合法により製造する本発明においては、従来の順二段重合法の特性を保持し、かつ表2の低分子量成分のα−オレフィン量/高分子量成分のα−オレフィン量比に見られるように高分子量成分にα−オレフィンの短鎖分岐をより多く導入することにより、均質性が良好(成形品のブツやフィッシュアイなどの発生がない)で、ESCRが優れ、フィルムの耐衝撃強度の機械的物性の改良が充分に達成されていることが理解される。
一方、各比較例はエチレン系共重合体を従来の順二段重合法にて製造しているので、α−オレフィンが低分子量成分にも多く共重合され、ESCRや耐衝撃強度などの機械的物性に劣るものであることが示されている。
ESCRを測定するために用いる、扁平型ボトルの正面断面図(a)及び側面断面図(b)である。
符号の説明
C:ボトルの底面角部
H:ピンチオフの長さ

Claims (5)

  1. 少なくとも3基以上の重合反応器を用いて、遷移金属触媒の存在下でエチレンとα−オレフィンを重合し、高分子量成分と低分子量成分からなるエチレン系共重合体を製造する方法において、α−オレフィンが炭素数3〜12のα−オレフィンであり、かつ該α−オレフィンを実質的に高分子量成分の重合反応器にのみに供給し、先ず少なくとも2基の直列に連結した重合反応器の各々において実質的に同一の高分子量成分を製造し、次いで該高分子量成分を含む重合反応液をそのまま次の重合反応器に移送して低分子量成分を製造することを特徴とするエチレン系共重合体の製造方法。
  2. 高分子量成分量を100(質量%)、高分子量成分の重合反応器数をNとした場合に、低分子量成分を製造する直前の重合反応器1基で製造される重合体の重合割合Xが、100/N−5≦X≦60(質量%)であることを特徴とする請求項1に記載されたエチレン系共重合体の製造方法。
  3. 3基の重合反応器のうち、実質的に同一の高分子量成分を製造する直列に連結した重合反応器が2基であることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載されたエチレン系共重合体の製造方法。
  4. ハイロードメルトフローレートが0.01〜10g/10min及びα−オレフィンの含量(Da)が10モル%以下の高分子量成分を重合量比(Xa)10〜60質量%の割合で製造し、ハイロードメルトフローレートが10g/10minを超えα−オレフィンの含量(Db)が5モル%以下の低分子量成分を重合量比(Xb)40〜90質量%の割合で製造する(但し、Da>Db、Xa+Xb=100質量%である。)ことを特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれかに記載されたエチレン系共重合体の製造方法。
  5. 遷移金属触媒が少なくともチタン及びマグネシウムを含有する固体チーグラー系触媒並びに有機アルミニウム化合物とから形成されることを特徴とする、請求項1〜請求項4のいずれかに記載されたエチレン系共重合体の製造方法。
JP2004324603A 2004-11-09 2004-11-09 エチレン系共重合体の製造方法及びエチレン系共重合体並びに成形品 Active JP4705702B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004324603A JP4705702B2 (ja) 2004-11-09 2004-11-09 エチレン系共重合体の製造方法及びエチレン系共重合体並びに成形品

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004324603A JP4705702B2 (ja) 2004-11-09 2004-11-09 エチレン系共重合体の製造方法及びエチレン系共重合体並びに成形品

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2006131814A JP2006131814A (ja) 2006-05-25
JP4705702B2 true JP4705702B2 (ja) 2011-06-22

Family

ID=36725647

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2004324603A Active JP4705702B2 (ja) 2004-11-09 2004-11-09 エチレン系共重合体の製造方法及びエチレン系共重合体並びに成形品

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4705702B2 (ja)

Families Citing this family (15)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP5016258B2 (ja) * 2005-05-23 2012-09-05 日本ポリエチレン株式会社 ポリエチレン樹脂・その製造方法並びにその樹脂を用いたパイプおよび継手
US7847042B2 (en) * 2006-03-30 2010-12-07 Total Petrochemicals Research Feluy Slurry polymerisation process of ethylene in the presence of low amount of scavenger
JP4810340B2 (ja) * 2006-07-19 2011-11-09 日本ポリエチレン株式会社 プラスチック燃料タンク用溶着材料
JP5054946B2 (ja) * 2006-08-30 2012-10-24 日本ポリエチレン株式会社 中空成形用ポリエチレン系樹脂成形材料の製造方法
JP5054947B2 (ja) * 2006-08-30 2012-10-24 日本ポリエチレン株式会社 中空成形用ポリエチレン系樹脂成形材料及びそれからなる中空成形体
BRPI0621929B1 (pt) * 2006-09-21 2018-12-04 Union Carbide Chem Plastic método para controlar um processo para produzir um polímero de olefina em pelo menos um reator
US20090182100A1 (en) * 2008-01-14 2009-07-16 Guenther Gerhard K Process for the production of polyethylene resin
EP2570455A1 (en) * 2011-09-16 2013-03-20 Borealis AG Polyethylene composition with broad molecular weight distribution and improved homogeneity
EP2818509A1 (en) * 2013-06-25 2014-12-31 Basell Polyolefine GmbH Polyethylene composition for blow molding having high stress cracking resistance
JP6128032B2 (ja) * 2014-03-27 2017-05-17 日本ポリエチレン株式会社 容器蓋用ポリエチレン系樹脂組成物
EP3161017B1 (en) * 2014-06-25 2017-09-27 Basell Polyolefine GmbH Process for controlling an ethylene polymerization process
JP6519415B2 (ja) * 2014-09-05 2019-05-29 日本ポリエチレン株式会社 エチレン系重合体組成物及びそれよりなる成形体
JP6519414B2 (ja) * 2014-09-05 2019-05-29 日本ポリエチレン株式会社 エチレン系重合体組成物及びそれよりなる成形体
CN111902467B (zh) 2018-02-05 2022-11-11 埃克森美孚化学专利公司 通过添加超高分子量高密度聚乙烯增强的lldpe的加工性
CN114133489B (zh) * 2021-12-28 2024-02-02 中国石油天然气股份有限公司 中空容器吹塑材料及其制备方法和应用

Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2003096127A (ja) * 2001-07-16 2003-04-03 Japan Polyolefins Co Ltd エチレン系重合体の製造方法
JP2003313225A (ja) * 2002-04-25 2003-11-06 Japan Polyolefins Co Ltd エチレン系重合体の製造方法およびエチレン系重合体

Patent Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2003096127A (ja) * 2001-07-16 2003-04-03 Japan Polyolefins Co Ltd エチレン系重合体の製造方法
JP2003313225A (ja) * 2002-04-25 2003-11-06 Japan Polyolefins Co Ltd エチレン系重合体の製造方法およびエチレン系重合体

Also Published As

Publication number Publication date
JP2006131814A (ja) 2006-05-25

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP3846193B2 (ja) プロピレン系共重合体およびその製造方法
EP2046846B1 (en) Gas-phase process for preparing heterophasic propylene copolymers
JP5283292B2 (ja) 多頂性ポリエチレンの製造
JP4705702B2 (ja) エチレン系共重合体の製造方法及びエチレン系共重合体並びに成形品
JP4386923B2 (ja) 超高分子量エチレン系共重合体パウダー
US11859040B2 (en) Catalyst for olefin polymerization
EP1773892B2 (en) Multistage process for producing ethylene polymer compositions
EP1576049B1 (en) Polyethylene composition for producing l-ring drums
KR20190079656A (ko) 폴리올레핀 필름 조성물의 제조 방법 및 그로부터 제조된 필름
JP4749725B2 (ja) ポリエチレン系樹脂材料及びそれを用いた中空成形体
KR20050088310A (ko) 소형 콘테이너 생산을 위한 폴리에틸렌 취입 성형 조성물
JP5016258B2 (ja) ポリエチレン樹脂・その製造方法並びにその樹脂を用いたパイプおよび継手
EP1884527B1 (en) Polyethylene resin, process for producing the same, and a pipe and joint comprising the resin
CN113166318B (zh) 烯烃聚合物
JP5054946B2 (ja) 中空成形用ポリエチレン系樹脂成形材料の製造方法
EP1805224B1 (en) Catalyst component comprising three or more bridged bisindenyl metallocene components
JP2003165873A (ja) ポリエチレン樹脂組成物及び成形体
US10377886B2 (en) Polyethylene for pipe and joint, and molded body thereof
JPH11138618A (ja) ブロー成形体
JP6252311B2 (ja) 容器用ポリエチレン及びそれよりなる成形体
JP2004168817A (ja) ポリエチレン組成物
JP2018165356A (ja) ポリエチレン樹脂用改質材、並びにそれを用いたポリエチレン樹脂組成物及び成形体
JP2005239750A (ja) パイプ用エチレン系重合体及び該エチレン系重合体からなるパイプ
KR102511906B1 (ko) 이차전지 분리막용 폴리에틸렌 수지, 그 제조방법, 및 이를 적용한 분리막
JP3686456B2 (ja) プロピレン系重合体および該重合体を用いた中空成形体

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20070608

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20090522

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20101122

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20110121

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20110304

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20110313

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 4705702

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140318

Year of fee payment: 3

S531 Written request for registration of change of domicile

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313531

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140318

Year of fee payment: 3

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140318

Year of fee payment: 3

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250