JP4704506B2 - 有機無機複合ヒドロゲルおよびその製造方法 - Google Patents

有機無機複合ヒドロゲルおよびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、有機高分子と粘土鉱物が三次元網目を形成してなる有機・無機複合ヒドロゲル、及び水中や生体内などで分解性を示す有機無機複合ヒドロゲルに関する。
高分子ヒドロゲルは有機高分子の三次元架橋物が水を含んで膨潤したものであり、膨潤性やゴム状弾性を有するソフトマテリアルとして、医療・医薬、食品、土木、バイオエンジニアリング、スポーツ関連などの分野で広く用いられている(例えば、非特許文献1参照)。
これまでに本発明者らは、水溶性有機高分子と層状粘土鉱物とが複合化して形成された三次元網目を有する高分子ヒドロゲルが、優れた吸水性や極めて高い伸張性などの特徴を有することについて報告した(例えば特許文献1参照)。しかし、この方法においては、主にアミド結合を有する水溶性有機モノマーの重合体が用いられ、生体適合性などに優れた高分子であるポリエチレングリコールに適用することは困難であった。一方、近年、ポリエチレングリコールヒドロゲルの合成を、規則的な化学架橋が形成されるように構造設計したマクロマーを用いて行うことにより、従来のランダムに化学架橋した高分子ヒドロゲルと比べて、力学物性を大きく向上させたポリエチレングリコールヒドロゲルが得られることが報告されている(例えば、非特許文献2参照)。得られたポリエチレングリコールヒドロゲルは、120mg/mlのポリマー濃度において、約280%の延伸および約50kPaの強度を示した(比較例1参照)。これは、2種の反応性4本鎖ポリエチレングリコールを混合により反応させ、架橋点間分子量のそろった化学架橋型ポリエチレングリコールヒドロゲルとすることにより達成されたものである。しかし、得られたポリエチレングリコールヒドロゲルの力学物性は、実用上、まだ十分に高いものとなっておらず、延伸倍率や引っ張り強度を更に向上させることや広い範囲で力学物性を制御することが望まれていた。
一方、所定の雰囲気に保持することにより徐々に分解していく高分子材料に関する要求が近年高まっている。例えば、生体内において埋め込んだ後、徐々に分解して代謝される材料、土中で一定期間使用後に分解していく材料、高温または高湿度雰囲気におくことにより徐々に分解する材料、一定時間使用後に分解のため形状または力学強度が失われ、使用終了の合図となる材料、雰囲気が変化した場合、それに対応して分解が促進される材料、などがあげられる。いずれの場合も、分解する前の高分子材料は目的に応じた優れた性能を有することが必要であり、特に、高い力学物性、柔軟性、透明性、安全性、種々の形状への加工性などを併せ持つことが望まれる。一方、分解条件は高温・高圧などの厳しい条件ではなく、出来るだけ穏和な条件で行えることが好ましく、例えば、水中、生理食塩水中、海水中、7前後のpH雰囲気、室温〜数十℃、低〜高湿度などの条件下で分解することがあげられる。
これまで、多くの構造・組成の異なる高分子が分解性材料として提案され使用されてきた。例えば、微生物により分解される生分解性高分子や水中または高湿度で分解する加水分解性高分子があり、具体的には、ポリ乳酸、ポリカプトラクトン、ポリグリコール酸、ポリジオキサノン、変性ポリビニルアルコール、ポリブチレンサクシネート、グリコール酸/乳酸共重合体、ラクチド/カプロラクトン共重合体、セルロース、ヒアルロン酸、酢酸セルロース、デンプン、カゼインなどが用いられている(例えば、非特許文献3)。一方、高分子ゲルに関しては、上記高分子を用いたものや、生体由来で生体に吸収されていくコラーゲン、キトサン、タンパク質などからなる高分子ゲルが知られている。しかし、穏和な条件での分解性と共に、前記したような高い透明性、広い範囲で制御された力学物性、柔軟性、安全性、生体適合性、種々の形状への加工性などを満足し、且つ、分解後も毒性のないといった全ての条件を満足したものはなく、その開発が強く求められていた。
本発明者らは、これまでかかる高い透明性、広い範囲で制御された力学物性、柔軟性、安全性、生体適合性、種々の形状への加工性を満足した高分子ゲルとして、水溶性有機モノマーの重合体と層状剥離可能な無機粘土鉱物からなる有機・無機複合ゲルを報告している(特許文献2,非特許文献4)。しかし、得られたゲルは優れた特性を有するが、水中や生体内での分解性は有していなかった。また、その他に報告されている優れた力学物性、柔軟性および透明性を有する高分子ゲルおよび有機・無機複合ゲルにおいても分解性を有するものは知られていなかった(非特許文献2、5〜7)。
特開2002−53629号公報 特許文献2 USP676710B2
「ゲルハンドブック」p226〜727、長田義仁、梶原莞爾編:エヌ・ティー・エヌ株式会社、1997年 Takamasa Sakai, Takuro Matsunaga, Yuji Yamamoto, Chika Ito, Ryo Yoshida, Shigeki Suzuki, Nobuo Sasaki, Mitsuhiro Shibayama, Ung-il Chung, Macromolecules, 41, 5379-5384 (2008). 「生分解性高分子の基礎と応用」筏 義人編、アイシーピー社 K. Haraguchi, T. Takehisa, Adv. Mater. 2002, 14, 1120-1124. Y. Okumura, K. Ito, Adv. Mater. 2001, 13, 485-487. J.P.Gong, Y. Katsuyama, T. Kurokawa, Y. Osada, Adv.Mater.2003, 15, 1155-1158. M. Fukasawa, T. Sakai, U.I. Chung, K. Haraguchi, Macromolecules,doi.10.1021/ma100419c(2010)
本発明が解決しようとする課題は、優れた力学物性、柔軟性、透明性、安全性を有し、特に、引っ張り強度や延伸倍率を大きく向上した、又は広い範囲で制御したポリエチレングリコールを有機成分とする高分子ヒドロゲル及びその製造方法を提供することにある。
また、本発明の他の課題は、上記課題を解決すると共に、穏和な雰囲気で分解可能な特性を有し、且つ、分解後の成分も毒性のないという、全ての条件を満たす分解性の有機無機複合ヒドロゲル及びその製造方法、並びにそれを用いた生体埋め込み材料を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究に取り組んだ結果、架橋されたポリエチレングリコール中に、層状剥離した粘土鉱物を均一に微細分散し、それらが三次元網目を形成するように複合化させる方法により、均一性を保持しつつ、引っ張り強度や延伸倍率などの力学物性に優れ、広い範囲でそれらが制御された有機・無機複合ヒドロゲルが得られることを見いだし、本発明を完成するに至った。
即ち本発明は、複数のポリエチレングリコール鎖が化学的に架橋された分岐構造又は網目構造を有する高分子化合物(A)と層状剥離した粘土鉱物(B)とが複合化していることを特徴とする有機無機複合ヒドロゲルを提供する。
また、本発明は、粘土鉱物(B)を水媒体中で層状剥離させることにより該粘土鉱物(B)の水分散液を製造し、
その層状剥離した粘土鉱物の存在下で、同一分子中にポリエチレングリコール鎖と複数の反応性官能基(Q1)とを有する化合物(a1)と、
該反応性官能基(Q1)と反応しうる複数の反応性官能基(Q2)を有する化合物(a2)とを反応させる、
ことを特徴とする上記の有機無機複合ヒドロゲルを製造する方法を提供する。
本発明により得られる有機・無機複合ヒドロゲルは、層状に剥離した粘土鉱物とポリエチレングリコールが三次元網目を形成することで、均一性および延伸力学物性に優れた有機・無機複合ヒドロゲルが提供される。特に、調製条件の最適化により、透明性・均一性、延伸強度や伸びに優れたポリエチレングリコールを有機成分とする有機・無機複合ヒドロゲルが得られる。
また、高分子化合物(A)として、少なくとも一部にエステル基を有し、且つポリエチレングリコール鎖がアミド結合により化学的に架橋された化合物を用いることにより、本発明の有機無機複合ヒドロゲルを分解性のゲルとすることができる。このゲルは分解後の生成物が生物学的試験において安全であることを確認している。この場合、粘土鉱物やエステル基の含有率などの組成変化により、生体内での分解に適した分解性ゲルを得ることができる。
以上の様な特徴を有する有機・無機複合ヒドロゲルは、円柱状、棒状、フィルム状、糸状を初めとして各種形状で得られ、医療・医薬品分野、特に、生体適合性、柔軟性に優れた人工弁、人工血管、人工軟骨などの人工臓器用材料や、カテーテルなどの治療用材料、更に、単独またはその他の生体適合性材料や生分解性材料と複合化して、分解後安全性に優れた生体埋め込み材料として有効に用いられる。また、伸縮性に優れた各種工業材料として農業・工業・電子材料・土木建築・包装資材などの分野でも用いられる。
実施例1〜4および比較例1で得られた有機・無機複合ヒドロゲルの引っ張り試験における応力-歪み曲線を示す図である。 実施例9および比較例4で得られたヒドロゲルの分解液の細胞毒性試験結果を示す図である。 実施例12、13で得られた分解実験を行ったゲルおよび分解前のゲルの延伸試験による応力−歪み曲線を示す図である。
本発明で用いる高分子化合物(A)としては、複数のポリエチレングリコール鎖が化学的に架橋された分岐構造、又は網目構造を有する高分子化合物であり、複数の直鎖状ポリエチレングリコールが複数の架橋点、又は分岐点により結ばれた構造を有する。このような構造であれば、本発明の効果を損なわない限り特に限定なく使用可能である。特に、好ましくは、その高分子鎖の一部に、粘土鉱物との相互作用を生じる官能基、例えば、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、スルホン酸基、アミド基、エステル基や、4級アンモニウムイオン基などのイオン性基の一種または複数種を導入したものが用いられる。
中でも、高分子化合物(A)の化学的架橋がアミド結合によるものであり、分子鎖の一部にエステル基を有する構造の化合物は分解性に優れているため好ましい。より具体的には、少なくとも一部にエステル基を含むポリエチレングリコール鎖がアミド結合により化学的に架橋された分岐構造、又は網目構造を有する高分子化合物であり、複数の直鎖状ポリエチレングリコールが複数の架橋点、又は分岐点により結ばれた構造を有する化合物である。
更に、本発明で用いる高分子化合物(A)としては、同一分子中にポリエチレングリコール鎖と複数の反応性官能基(Q1)とを有する化合物(a1)と、該反応性官能基(Q1)と反応しうる複数の反応性官能基(Q2)を有する化合物(a2)とを反応させることにより製造することができる。
上記化合物(a1)又は化合物(a2)として、例えば、下記式(4)又は式(5)で表される化合物を用いることができる。
Figure 0004704506
Figure 0004704506
上記式(4)及び式(5)中、Rは下記式(3)、式(6)〜式(11)で表される基であり、nは1以上の整数である。また、1分子中の4つのnの合計は、50〜1000が好ましく、100〜800がより好ましく、150〜500が特に好ましい。
Figure 0004704506
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Figure 0004704506
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上記式(4)及び式(5)で表される化合物の重量平均分子量は1000〜100000であることが好ましく、5000〜50000であることがより好ましく、5000〜40000であることが特に好ましい。
そのような化合物の市販品としては、
(1)Rが上記式(3)のタイプ
SUNBRIGHT PTE−050GS(重量平均分子量5000)、PTE−100GS(重量平均分子量10000)、PTE−150GS(重量平均分子量15000)、PTE−200GS(重量平均分子量20000)、PTE−400GS(重量平均分子量40000)
(2)Rが上記式(6)のタイプ
PTE−100HS(重量平均分子量10000)、PTE−200HS(重量平均分子量20000)、PTE−400HS(重量平均分子量40000)
(3)Rが上記式(8)のタイプ
PTE−100MA(重量平均分子量10000)、PTE−200MA(重量平均分子量20000)、PTE−400MA(重量平均分子量40000)
(4)Rが上記式(9)のタイプ
PTE−100PA(重量平均分子量10000)、PTE−150PA(重量平均分子量15000)、PTE−200PA(重量平均分子量20000)、PTE−400PA(重量平均分子量40000)
(5)Rが上記式(11)のタイプ
PTE−050SH(重量平均分子量5000)、PTE−100SH(重量平均分子量10000)、PTE−200SH(重量平均分子量20000)
等がある。
上記式(3)、式(6)〜式(11)で表される基の中からいずれかの基を反応性官能基(Q1)として選択し、この反応性官能基(Q1)と反応可能な反応性官能基(Q2)を選択する。そして、これらの反応性官能基(Q1)及び(Q2)を有する化合物をそれぞれ化合物(a1)、化合物(a2)として反応させれば本発明で使用可能な高分子化合物(A)を製造することができる。
また、上記式(4)及び式(5)で表される化合物の中から、いずれかの化合物を選択し、これを反応性官能基(Q1)を有する化合物(a1)として用い、上記式(4)及び式(5)で表される化合物以外であり、この反応性官能基(Q1)と反応可能な複数の反応性官能基(Q2)を有する公知の化合物(C)を化合物(a2)として用いても本発明で使用可能な高分子化合物(A)を製造することができる。
このような化合物(C)としては、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、フェニレンジアミン、ブタンジアミン、ペンタンジアミン、またアルギニン、アスパラギン、リジンなどのアミノ酸およびこれらを含有するタンパク質等が用いられる。
本発明で使用する高分子化合物(A)としては、より好ましくは、架橋点間分子量が均一になるように化学架橋されているものが有効に用いられる。架橋点間分子量が均一になるように化学架橋されたポリエチレングリコールの例としては、例えば、非特許文献2、7に記載の2種の反応性4本鎖ポリエチレングリコール(末端にアミンを有するアミン末端4本鎖ポリエチレングリコール(TAPEG)および末端にN−ヒドロキシサクシイミドグルタレイト末端を有するポリエチレングリコール(TNPEG))を混合し反応させて得られるポリエチレングリコールがあげられる。この場合、ポリエチレングリコール鎖中には、アミド基やエステル基が存在する。また、化学架橋の架橋点間分子量は4本鎖ポリエチレングリコールの分子量の1/2となるが、その値は好ましくは1000〜50000、より好ましくは2000〜30000、特に好ましくは3000〜20000である。架橋点間分子量の値が1000より小さいと柔軟性が不足したり、延伸倍率が小さくなる。また、50000より大きいと、弾性率が低すぎたり、取り扱い性が悪くなったりする。
本発明では、非特許文献2、7に記載のポリエチレングリコールの如く、化合物(a1)として下記式(1)で表される化合物であり、化合物(a2)として下記式(2)で表される化合物であり、共に重量平均分子量が1000〜100000である化合物を使用することが特に好ましい。
Figure 0004704506
(式中、Xは下記式(3)
Figure 0004704506
で表される基であり、nは整数である。)
Figure 0004704506
(式中、Yは-CH2CH2CH2NH2で表される基であり、nは整数である。)
上記式(1)で表される化合物と式(2)で表される化合物の架橋反応を下記の反応式で示した。
Figure 0004704506
本発明で用いられる粘土鉱物(B)としては、層状に剥離可能な膨潤性粘土鉱物が用いられ、特に好ましくは水中で分子状(単一層)又は1〜10層以内に層状剥離して均一分散可能な粘土鉱物が用いられる。例えば、水膨潤性スメクタイトや水膨潤性雲母などが用いられ、具体的には、ナトリウムを層間イオンとして含む水膨潤性ヘクトライト、水膨潤性モンモリロナイト、水膨潤性サポナイト、水膨潤性合成雲母などが挙げられる。
本発明においては、層状剥離した粘土鉱物(B)と前記高分子化合物(A)が相互作用して三次元網目を形成していることが好ましい。粘土鉱物と高分子化合物(A)間の相互作用は、効果的な三次元網目を形成できれば、イオン結合、水素結合、疎水結合、配位結合、共有結合などのいずれか一つまたは複数であって良い。特に好ましくは、高分子化合物(A)の有するアミド基および/またはエステル基と粘土鉱物(B)が水素結合により三次元網目を形成しているものである。
なお、かかる三次元網目形成を妨げない限り、または物性を向上させ、または制御する目的で、有機または無機の各種機能性分子や粒子を添加しておくことは可能である。例えば無機粒子としては、シリカ、チタニア、ジルコニア、パラジウム、銀、金、白金などのナノ粒子を共存させることは有効に用いられる。
本発明における有機・無機複合ヒドロゲルは、高分子化合物(A)に対する粘土鉱物(B)の質量比(B/A)が0.03〜3であることが好ましく、より好ましくは0.04〜1.5、特に好ましくは0.05〜0.5である。質量比が0.03以下では機械的性質の向上が不十分となりやすく、3以上では粘土鉱物の均一微細分散が困難となってくる場合が多い。
本発明における有機・無機複合ヒドロゲルは、無機含有率によらず均一で、透明性を有し、粘土鉱物の凝集は観測されなかった。最終的な粘土鉱物の含有率は熱重量分析(TGA)により、また微細分散性は透過型電子顕微鏡(TEM)観察により測定される。本発明では、用いた粘土の全量が複合体に含まれていることがTGAにより確認され、且つ1層または2〜10層以内の層状剥離した粘土層が均一に分散しているのがTEMにより確認された。
本発明で得られた有機・無機複合ヒドロゲルは、優れた力学物性を示すだけでなく、その力学物性を広い範囲で制御できることが特徴である。例えば図1(クレイ濃度を変化させた場合の有機・無機複合ヒドロゲルの引っ張り試験における応力・歪み曲線変化)に示すように、有機・無機複合ヒドロゲルはほとんどの場合500%以上の破断伸びを示し、粘土鉱物との複合化を行っていないポリエチレングリコールヒドロゲルに比べて大きな伸張性を示した。また、引っ張り強度や弾性率については、ポリエチレングリコールヒドロゲルより高い引っ張り強度や弾性率を示すものを含め、広い範囲で物性が制御された。
また、上記の通り、高分子化合物(A)として、少なくとも一部にエステル基を有し、且つポリエチレングリコール鎖がアミド結合により化学的に架橋された化合物を用いて、本発明の有機無機複合ヒドロゲルを分解性ゲルとすることができる。この分解性ゲルは、水中、生理食塩水などの無機塩水溶液中、タンパク質などの有機化合物を含有する水溶液中、および高湿度や生体内などの雰囲気において分解する性質を有する。分解速度は保持される雰囲気の条件(例えば、雰囲気組成、pH、温度および保持時間)により変化するほか、ゲルの組成(例:高分子化合物組成、粘土鉱物量、含液率、媒体組成)により変化する。雰囲気の条件としては、一般的に温度が高いほど、時間が長いほど分解性が高くなる。また、水よりも生理食塩水を用いると分解性が高い場合が多い。雰囲気のpHは強酸性(例えば、pH3以下)および強アルカリ(pH10以上)とした場合に特に分解性が高くなるが、この間のpH7を中心とした穏和な条件でも分解が生じることが本発明の分解性ゲルの特徴である。一方、本発明における分解性ゲルの組成に関しては、一般的傾向として、粘土鉱物量が大きいほど分解性が高く、含液率が大きいほど分解性が高い。また、本発明では、エステル基を含まないゲルは分解性がないか極めて低く、好ましくは、アミド結合に対するエステル基のモル比が0.1〜2である。アミド結合に対するエステル基のモル比が0.1以下では分解性が不十分となる場合が多く、また、その比が2以上では均一で高力学物性のゲルが形成しにくくなる場合が多い。一方、ゲルの媒体組成としては、水または水溶液が用いられるが、例えば、分解性を高めるためにはリン酸やピロリン酸を含むものが好ましく用いられる。しかし、分解生成物の生物学的安全性(例:細胞毒性)を重要視する用途に対しては、ピロリン酸は不適な場合があり、水またはリン酸を含む水溶液が好ましく、特に水が好ましい。
本発明における分解性ゲルの分解機構としては、必ずしも限定されないが、エステル基および/またはアミド基の所での分解、特にエステル基での分解が主たる機構として推定される。また、粘土鉱物(B)を含まない場合は、分解性がないか極めて低いため、これらの官能基と粘土鉱物との相互作用が分解性に効果的に働いていると推定される。
本発明における有機・無機複合ヒドロゲルは、好ましくは、同一分子中にポリエチレングリコール鎖と複数の反応性官能基とを有する化合物の水溶液と層状剥離した粘土鉱物水分散液を予め混合し、次いで、該化合物の架橋反応を進める複合化手法が用いられる。より好ましくは、優れた均一性・機械的性質を有する有機・無機複合ヒドロゲルを得るために、従来報告されているポリエチレングリコールヒドロゲルの合成法(非特許文献2参照)と異なる以下のことを行う。
(1)ピロリン酸ナトリウムに塩酸を添加してpHを調整した液をバッファーとして用いること。
(2)予め層状剥離させた粘土鉱物水分散液に上記の化合物(a1)及び化合物(a2)のいずれか片方を添加し、その後、他方の化合物を溶解させること。
(3)層状剥離した粘土鉱物を粘土鉱物の質量/化合物(a1)及び化合物(a2)の合計質量が0.03〜3となるようにすること。
更に好ましくは、
(4)有機・無機複合ヒドロゲルを合成後に洗浄によりピロリン酸を除くことを行う。
ここでバッファーとしては、ピロリン酸を用いたものが、一般的に使われるリン酸バッファーより有効に用いられる。具体的には、ピロリン酸ナトリウム(別名:二リン酸ナトリウム)に塩酸を添加してpHを調整したものがバッファーとして用いられる。ピロリン酸は、一般に用いられるリン酸の二量体であるが、粘土鉱物を安定して層状剥離させるため、また得られるポリエチレングリコールヒドロゲル及び有機・無機複合ヒドロゲルの力学物性を向上させるために、リン酸より有効に働く。最終的に有機・無機複合ヒドロゲルが得られた後は、ピロリン酸は必ずしも必要でなく、特に、分解生成物の安全性を重要視する場合は、水洗浄により除去することが好ましい。
ポリエチレングリコールと層状剥離した粘土鉱物を複合化する手法としては、好ましくは高分子化合物(A)と層状剥離した粘土鉱物を予め混合して用いること、より好ましくは層状剥離した粘土鉱物がより安定に存在する片方の反応性4本鎖ポリエチレングリコール(非特許文献2の場合は、アミン末端ポリエチレングリコール)と混合させ、次いで、もう一種の反応性4本鎖ポリエチレングリコールを混合して、反応させることが用いられる。且つ、上記反応において、ピロリン酸をバッファーとすること、粘土鉱物/ポリエチレングリコールの質量比を0.03〜3とすることが併せて用いられ、優れた均一性と機械的性質を併せ持つ有機・無機複合ヒドロゲルが得られる。
更に、本発明で得られる分解性ゲルは、生体内における安全性、生体適合性を有するものが多く、分解性生体埋め込み材料として用いることが可能である。本発明における分解性ゲルは、埋め込みに際して円柱状、棒状、フィルム状、糸状を初めとして目的に応じた種々の形状で用いることが可能であり、その埋め込み初期における力学物性もゲル組成(高分子化合物や粘土鉱物の濃度、含液率)によって広範囲に制御することが可能である。また、本発明で得られた分解性ゲルは、単独で用いられるほか、他の粒子、繊維、フィルム、メッシュ、被覆などの形態を有する、合成または天然の生体適合性材料や生分解性材料と複合化して、取り扱い性、力学物性、生体適合性、生体内分解性、分解後安全性に優れた生体埋め込み材料として有効に用いられる。更に、本発明における分解性ゲルでは、生体にとって有意な化合物を分解性ゲル中に含ませておき、分解と共にそれらを徐放することも可能である。一方、生体埋め込み以外分野における医療・医薬品分野、および他の産業分野(例えば、農業・工業・電子材料・土木建築・包装資材などの分野)で分解性を生かした材料として有効に用いられる。
次いで本発明を実施例により、より具体的に説明するが、もとより本発明は、以下に示す実施例にのみ限定されるものではない。
(実施例1)
粘土鉱物には、[Mg5.34Li0.66Si20(OH)]Na 0.66の組成を有する水膨潤性合成ヘクトライト(商標ラポナイトXLG、ロックウッド社製)を洗浄後、凍結乾燥して用いた。反応性4本鎖ポリエチレングリコールは、重量平均分子量20000の、SUNBRIGHT PTE200GS(以下、PTE200GSと略す)、およびSUNBRIGHT PTE200PA(重量平均分子量20000、以下、PTE200PAと略す)(共に日本油脂株式会社製)を用いた。100mMのピロリン酸ナトリウム(無水)(別名:二リン酸ナトリウム)に塩酸を添加することでpHを7.4に調整した水溶液3mlにラポナイトXLG0.064gを分散させた。次いで、PTE200PA240mgを加え、均一に混合した。別途、100mMのピロリン酸ナトリウムに塩酸を添加し、pHを7.2に調整した水溶液1mlにPTE200GS240mgを溶解した。次いで、得られたPTE200PA/クレイ水溶液とPTE200GS水溶液を氷浴中で冷却後、混合し、15秒間強く攪拌した。混合した溶液を80×50×1mmのガラス容器に充填し、25℃で2時間反応させた。その結果、透明・均質なヒドロゲルが得られた。
得られたヒドロゲルを800mlの水中(20℃)で、途中4回水を換えながら洗浄を行った。蛍光X線測定の結果、洗浄過程でポリエチレングリコールおよび粘土鉱物の流出は観測されなかった。また、ヒドロゲルを乾燥後、800℃までの熱質量分析(セイコー電子工業株式会社製TG−DTA220:空気流通下、昇温:10℃/分)を行い、粘土含有率を求めた。粘土含有率(粘土鉱物/全固形分量)は12.8質量%で反応溶液組成からの計算値(11.8質量%)とほぼ一致した。またKBr法によるフーリエ変換赤外線吸収スペクトル(FT−IR)の測定において、ポリエチレングリコールと粘土鉱物の特性ピークが確認された。乾燥したヒドロゲルをエポキシ樹脂中に包埋後、厚さ約50mmの超薄切片を作製し、透過型電子顕微鏡観察を行った(日本電子株式会社製JEM−2200FSを使用)ところ、1〜数nmの厚みの層状粘土が微細且つ均一に分散しているのが観察された。乾燥物のX線回折測定(理学電機社製RX−7を使用:CuKα線)を行ったところ、低角側に大きなピークは観測されなかった。以上の結果より、本実施例で得られたヒドロゲルは、ポリエチレングリコールと層状剥離した粘土鉱物が複合化された有機・無機複合ヒドロゲル(ポリエチレングリコール量=120mg/mL−HO、粘土鉱物量=16mg/mL−HO、(粘土鉱物/ポリエチレングリコール)の質量比=0.13)であると結論された。更に、得られた有機・無機複合ヒドロゲルを80×10×2mmに切断して、引っ張り試験を卓上型万能試験機AGS−H(島津製作所製)を用い、評点間距離=30mm、引っ張り速度=100mm/分にて行った。結果を図1に示す。有機・無機複合ヒドロゲルは、優れた力学物性(弾性率=30kPa、強度=300kPa、破断伸び=950%)を示した。これは比較例1で示した、ポリエチレングリコールヒドロゲルの値(弾性率=20kPa、強度=52kPa、破断伸び=280%)に比べて大きく向上しているのが確認された。
(実施例2〜4)
粘土鉱物(ラポナイトXLG)を0.032g(実施例2)、0.32g(実施例3)および0.64g(実施例4)用いる以外は実施例1と同様な方法で合成を行った。その結果、いずれも反応溶液組成からの計算値と同じ組成で、粘土鉱物/ポリエチレングリコールの質量比が0.067(実施例2)、0.67(実施例3)、 1.34 (実施例4)である、均一、透明な有機・無機複合ヒドロゲルが得られた。但し、実施例4は半透明。実施例1と同様にして測定した引っ張り試験の結果を図1に併せて示す。破断伸びは700〜1020%、破断強度は50〜170kPa、弾性率は28〜12kPaまでの広い範囲で制御された。
(実施例5)
200mMのピロリン酸水溶液に塩酸を添加してpHを7.4に調整した水溶液1mlにPTE200PA240mgを加え溶解させた後、ラポナイトXLG0.16gをHO2mlに分散させた水溶液を加え、混合したことを除くと実施例1と同様にして有機・無機複合ヒドロゲルを調製した。得られた有機・無機複合ヒドロゲルは半透明で、実施例1と同様にして測定した力学物性は、弾性率=14kPa、強度=90kPa、破断伸び=820%であった。
(実施例6)
100mMのピロリン酸水溶液に塩酸を添加してpHを7.2に調整した水溶液3mlにラポナイトXLG0.064gを分散させた。次いで、PTE200GS240mgを添加してPTE200GS/粘土鉱物水溶液を調製した。別途、PTE200PA240mgをpH7.4に調整した100mMのピロリン酸水溶液1mlに溶解した。両液を用いて実施例1と同様にしてヒドロゲルを合成した結果、均一・半透明の有機・無機複合ヒドロゲルが得られた。実施例1と同様にして測定した力学物性は、弾性率=18kPa、強度=120kPa、破断伸び=730%であった。
(実施例7)
バッファーとしてピロリン酸の代わりにリン酸を用いることを除くと実施例1と同様にして、有機・無機複合ヒドロゲルを調製した。得られたヒドロゲルは、均一だが半透明(薄白濁)であった。実施例1と同様にして測定した力学物性は、弾性率=24kPa、強度=80kPa、破断伸び=550%であった。
(実施例8)
粘土鉱物と共に、シリカのナノ粒子(スノーテックス、日産化学社製)を0.08g用いることを除くと実施例2と同様にして、有機・無機複合ヒドロゲルを調製した。得られたヒドロゲルは、均一・透明であった。実施例1と同様にして測定した力学物性は、弾性率=27kPa、強度=220kPa、破断伸び=810%であった。
(実施例9)
粘土鉱物には、[Mg5.34Li0.66Si20(OH)]Na 0.66の組成を有する水膨潤性合成ヘクトライト(商標ラポナイトXLG、ロックウッド社製)を洗浄後、凍結乾燥して用いた。反応性4本鎖ポリエチレングリコールは、重量平均分子量20000の、SUNBRIGHT PTE200GS(以下、PTE200GSと略す)、およびSUNBRIGHT PTE200PA(重量平均分子量20000、以下、PTE200PAと略す)(共に日本油脂株式会社製)を用いた。なお、PTE200GSには、一本鎖に一個のエステル基を含んでいる。100mMのピロリン酸ナトリウム(無水)(別名:二リン酸ナトリウム)に塩酸を添加することでpHを7.4に調整した水溶液30mlにラポナイトXLG0.64gを分散させた。次いで、PTE200PA2.4gを加え、均一に混合した。別途、100mMのピロリン酸ナトリウムに塩酸を添加し、pHを7.2に調整した水溶液10mlにPTE200GS2.4gを溶解した。次いで、得られたPTE200PA/クレイ水溶液とPTE200GS水溶液を氷浴中で冷却後、混合し、15秒間強く攪拌した。混合した溶液を80×50×2mmのガラス容器数個に充填し、25℃で2時間反応させた。その結果、二つの反応性4本鎖ポリエチレングリコールがアミド結合により化学的に架橋され、透明・均質なヒドロゲルが得られた。得られた有機・無機複合ヒドロゲルを80×10×2mmに切断して、引っ張り試験を卓上型万能試験機AGS−H(島津製作所製)を用い、評点間距離=30mm、引っ張り速度=100mm/分にて行った。有機・無機複合ヒドロゲルは、優れた力学物性(弾性率=30kPa、強度=300kPa、破断伸び=950%)を示した。これは比較例1で示した、ポリエチレングリコールヒドロゲルの値(弾性率=20kPa、強度=52kPa、破断伸び=280%)に比べて大きく向上しているのが確認された。
得られたヒドロゲルを800mlの水中(20℃)で、途中4回水を換えながら20時間、洗浄を行った。蛍光X線測定の結果、洗浄過程でポリエチレングリコールおよび粘土鉱物の流出は観測されなかった。また、ヒドロゲルを乾燥後、800℃までの熱質量分析(セイコー電子工業株式会社製TG−DTA220:空気流通下、昇温:10℃/分)を行い、粘土含有率を求めた。粘土含有率(粘土鉱物/高分子)は13.0質量%で反応溶液組成からの計算値(13.4質量%)とほぼ一致した。またKBr法によるフーリエ変換赤外線吸収スペクトル(FT−IR)の測定において、ポリエチレングリコールとエステル基とアミド結合と粘土鉱物の特性ピークが確認された。乾燥したヒドロゲルをエポキシ樹脂中に包埋後、厚さ約50mmの超薄切片を作製し、透過型電子顕微鏡観察を行った(日本電子株式会社製JEM−2200FSを使用)ところ、1〜数nmの厚みの層状粘土が微細且つ均一に分散しているのが観察された。乾燥物のX線回折測定(理学電機社製RX−7を使用:CuKα線)を行ったところ、低角側に大きなピークは観測されなかった。以上の結果より、本実施例で得られたヒドロゲルは、エステル基を含有するポリエチレングリコール鎖がアミド結合により化学的に架橋された高分子化合物と層状剥離した粘土鉱物が複合化された有機・無機複合ヒドロゲル(ポリエチレングリコール量=120mg/mL−HO、粘土鉱物量=16mg/mL−HO、(粘土鉱物/ポリエチレングリコール)の質量比=0.13)であると結論された。また、アミド結合に対するエステル基のモル比は1である。
得られた有機・無機複合ゲルの洗浄物を5×5×2mmの大きさに切断し、20℃(実施例9)、37℃(実施例10)、60℃(実施例11)の水中(100g水/1gゲル)に保持して、一定時間後、SUSフィルター(メッシュ#400)でろ過して、最初のゲルの固形分に対する回収したゲルの固形分の質量分率(パーセント)からゲルの分解性を評価した。その結果、実施例9では125日、実施例10では16日、実施例11では4日で回収されたゲルの質量分率がほぼ0%となり、有機・無機複合ゲルがこれらの条件で分解するのが確認された。また、ゲルが分解して得られた液体を培地中に含まれるゲル成分が0〜1000ppmとなるように培地(5%FBS、1%ピルビン酸Na、1%P/S、MEM)に添加し、V79細胞(125セル/5ml/ヂィッシュ)を用いて細胞毒性試験を行った。実施例9〜11のいずれの場合も、細胞毒性は示さなかった(実施例9の細胞毒性評価結果を図2に示す)。
(実施例12、13)
ラポナイトXLGを0.48g用いる以外は実施例9と同様な方法で合成して得られた有機・無機複合ゲルを80×10×2mmに切断した後、ガラス密閉容器(50ml)に入れ、60℃で5時間(実施例12)および24時間(実施例13)、恒温器中で保持した後、取りだして実施例9と同様な方法で延伸試験を行った。その結果、図3に示すように、60℃密閉容器中で保持しなかったゲルに比べて、実施例12では強度および弾性率が低下し、実施例13では、ゲルの形状が崩れ始めており、また、弱くて延伸試験が出来なかった。
(実施例14〜16)
ラポナイトXLGを1.6g(実施例14、15)、または3.2g(実施例16)用いる以外は実施例9と同様にし、水で洗浄した有機・無機複合ゲルを得た。その後、実施例9と同様な方法で、実施例14と実施例16では37℃、実施例15では60℃の水中に保持して、回収されたゲルの質量分率を測定した。その結果、実施例14では12.5日、実施例15では2.4日、実施例16では9日で、回収されたゲルの質量分率が0%となり、ゲルがほぼ分解されているのが観測された。
(実施例17)
実施例9で合成し、水で洗浄して得られた有機・無機複合ゲルを、水中の代わりに37℃の生理食塩水中に保持して、実施例9と同様な方法でゲルの分解性を評価した。その結果、7.5日後に、回収されたゲルの質量分率が0%となった。
(実施例18、19)
実施例9で合成して得られた有機・無機複合ゲルを、水中で20時間洗浄した後、実施例18では100mMのリン酸バッファー水溶液(pH7.4)中、実施例19では100mMのピロリン酸バッファー水溶液(pH7.4)中に4時間、浸漬した。得られたゲルを、実施例10と同様な方法で、37℃水中に保持してゲルの分解性を評価した。その結果、実施例18では14日後、実施例19では13日後に回収されたゲルの質量分率が0%となって、水洗浄のみの場合(実施例10)より早い分解性が確認された。
(比較例1〜3)
粘土鉱物を用いないこと、バッファーとしてリン酸を等量だけ用いることを除くと、実施例9と同様にして、エステル基を含むポリエチレングリコールヒドロゲルを調製した。得られたヒドロゲルは透明・均一であった。引っ張り試験測定の結果、弾性率=20kPa、強度=52kPa、破断伸び=280%であった。比較例1では実施例9、比較例2では実施例10、比較例3では実施例11と同様にして、ゲルの分解性を評価した。その結果、比較例1および比較例2ではいずれも一ヶ月間の評価で分解はほとんど確認できなかった。一方、比較例3では、10日後にゲルが分解しているのが観測されたが、得られた分解液の細胞毒性試験を実施例11と同様にして行った結果、細胞毒性が観測された。比較例3での細胞毒性試験結果を図2に示す。
(実施例20)
一本のエチレングリコール鎖中にエステル基を1個ずつ含んでいるSUNBRIGHT PTE200GSの代わりに、同じ分子量でエステル基を含まないSUNRIGHT PTE200HS(日本油脂株式会社製)を用いる以外は実施例9と同様にして有機・無機複合ゲルを調製し、実施例20の有機・無機複合ゲルを製造した。実施例1と同様にして得られた有機・無機複合ヒドロゲルの力学物性を測定した。その結果、優れた力学物性(弾性率=22kPa、強度=125kPa、破断伸び=800%)を示した。
その後、実施例9と同様にして、洗浄された有機・無機複合ゲルの水中での分解性を評価した。その結果、実施例20のゲルは一ヶ月間の評価で分解は確認できなかった。
(実施例21、比較例7)
実施例21では、実施例9で合成し、水で洗浄して得られた有機・無機複合ゲルを、比較例7では、比較例1で合成し、水で洗浄して得られたゲルを用い、やぎの皮下に埋め込んで1ヶ月後の取りだした所、実施例21では、わずかのゲル残渣が見られる程度に分解していたのに対し、比較例7では、埋め込み初期の同等の形のしっかりとしたゲルが得られた。

Claims (11)

  1. 複数のポリエチレングリコール鎖が化学的に架橋された分岐構造又は網目構造を有する高分子化合物(A)と層状剥離した粘土鉱物(B)とが複合化していることを特徴とする有機無機複合ヒドロゲル。
  2. 前記高分子化合物(A)と層状剥離した粘土鉱物(B)の質量比((B)/(A))が0.03〜3である請求項1記載の有機無機複合ヒドロゲル。
  3. 前記層状剥離した粘土鉱物(B)が水膨潤性無機粘土鉱物である請求項1又は2に記載の有機無機複合ヒドロゲル。
  4. 前記高分子化合物(A)の化学的架橋がアミド結合によるものであり、且つ、(A)と(B)が三次元網目を形成している請求項1〜3のいずれかに記載の有機無機複合ヒドロゲル。
  5. 前記高分子化合物(A)がエステル基を有し、前記アミド結合に対するエステル基のモル比が、0.1〜2である請求項4記載の有機無機複合ヒドロゲル。
  6. 前記高分子化合物(A)が、同一分子中にポリエチレングリコール鎖と複数の反応性官能基(Q1)とを有する化合物(a1)と、該反応性官能基(Q1)と反応しうる複数の反応性官能基(Q2)を有する化合物(a2)とを反応させた化合物である請求項1、2又は3記載の有機無機複合ヒドロゲル。
  7. 前記化合物(a1)が下記式(1)で表される化合物であり、化合物(a2)が下記式(2)で表される化合物であり、共に重量平均分子量が1000〜100000である請求項6記載の有機無機複合ヒドロゲル。
    Figure 0004704506
    (式中、Xは下記式(3)
    Figure 0004704506
    で表される基であり、nは整数である。)
    Figure 0004704506
    (式中、Yは-CH2CH2CH2NH2で表される基であり、nは整数である。)
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載の有機無機複合ヒドロゲルを用いた生体埋め込み材料。
  9. 粘土鉱物(B)を水媒体中で層状剥離させることにより該粘土鉱物(B)の水分散液を製造し、その層状剥離した粘土鉱物の存在下で、同一分子中にポリエチレングリコール鎖と複数の反応性官能基(Q1)とを有する化合物(a1)と、
    該反応性官能基(Q1)と反応しうる複数の反応性官能基(Q2)を有する化合物(a2)とを反応させる、ことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の有機無機複合ヒドロゲルの製造方法。
  10. 前記化合物(a1)と化合物(a2)の反応をピロリン酸の存在下で行なう請求項9記載の有機無機複合ヒドロゲルの製造方法。
  11. 前記粘土鉱物(B)の水分散液に前記化合物(a1)及び化合物(a2)のいずれか片方を添加し、その後、他方の化合物を添加して反応させる請求項9又は10記載の有機無機複合ヒドロゲルの製造方法。
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