JP4701335B1 - 薄膜型光吸収膜 - Google Patents

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Abstract

【課題】光を吸収する薄膜の多層膜からなる薄膜型光吸収膜であって、高温環境下または高湿環境下において使用しても光吸収特性が劣化せず、簡単な製造プロセスによって製造することのできる薄膜型光吸収膜を提供する。
【解決手段】本発明の一態様による薄膜型光吸収膜は、基板(101)上に形成された多層膜からなる薄膜型光吸収膜であって、該多層膜は、四酸化三鉄からなる酸化鉄層(103)と、誘電体からなる誘電体層(105)と、を含み、該酸化鉄層の厚さは、40ナノメータ以上で100ナノメータよりも小さく、該酸化鉄層及び該誘電体層が、反射防止層を形成している。
【選択図】図6

Description

本発明は、光を吸収する薄膜の多層膜からなる薄膜型光吸収膜に関する。
撮像光学系において、レンズの有効径外の部分や鏡筒における反射光や透過光、いわゆる迷光が受光センサに受光されることによりフレアやゴーストなどが生じるという問題がある。このような迷光を防止するために、撮像光学系のレンズの有効径外の部分に光吸収材料を混入した部品を設け、鏡筒に光吸収材料を混入した材料を使用する対策が考えられる。しかし、この対策は、製造プロセスが複雑となり、製造コストが高くなる。
また、他の対策として、レンズの有効径外の部分や鏡筒に光を吸収する薄膜を備える対策が考えられる。従来、薄膜からなる薄膜型光吸収膜を作成するには、光吸収性の薄膜として、チタン、ニッケル、クロムなどの金属膜や、チタンなどの金属酸化物が使用されていた(特許文献1及び2)。
しかし、金属膜を吸収膜として使用した場合には、成膜後通常の使用環境下において、金属膜の酸化により、光吸収特性が経時的に劣化する。チタンなどの酸化物からなる金属酸化物膜を吸収膜として使用した場合にも、通常の使用環境化において、酸化などの経時変化により光吸収特性が劣化する。さらに、高温環境下または高湿環境下において、従来の金属膜や金属酸化物膜を薄膜型光吸収膜として使用した場合には、光吸収特性が経時的に大幅に劣化する。
金属材料を薄膜型光吸収膜に使用した場合の光吸収特性の経時的な劣化に対して、金属材料を含む膜を予め酸素を含んだ雰囲気において熱処理を施すことで、金属材料の酸化による光学特性の変化を強制的に飽和させる方法が提案されている(特許文献3)。しかし、このような方法による製造プロセスは複雑になる。
このように、光を吸収する薄膜の多層膜からなる薄膜型光吸収膜であって、高温環境下または高湿環境下において使用しても光吸収特性が劣化せず、簡単な製造プロセスによって製造することのできる薄膜型光吸収膜は開発されていない。
特開平5−93811号公報 特開2007−206136号公報 特開2003−43211号公報
したがって、光を吸収する薄膜の多層膜からなる薄膜型光吸収膜であって、高温環境下または高湿環境下において使用しても光吸収特性が劣化せず、簡単な製造プロセスによって製造することのできる薄膜型光吸収膜に対するニーズがある。
本発明の一態様による薄膜型光吸収膜は、基板上に形成された多層膜からなる薄膜型光吸収膜であって、該多層膜は、四酸化三鉄からなる酸化鉄層と、誘電体からなる誘電体層と、を含み、該酸化鉄層の厚さは、40ナノメータ以上で100ナノメータよりも小さく、該酸化鉄層及び該誘電体層が、反射防止層を形成している。
本態様によれば、四酸化三鉄からなる酸化鉄層が光を吸収し、酸化鉄層および誘電体層が反射防止層を形成して光の反射を防止する。四酸化三鉄は、黒錆と呼称される非常に緻密で化学的に安定した膜を形成するので、40ナノメータ以上で100ナノメータよりも小さい厚さの四酸化三鉄の膜を使用することによって、高温環境下または高湿環境下において使用しても光吸収特性が劣化せず、簡単な製造プロセスによって製造することのできる薄膜型光吸収膜が得られる。
本発明の実施形態による薄膜型光吸収膜は、400乃至2000ナノメータの波長の光に対して使用することができる。
本発明の他の態様による薄膜型光吸収膜は、基板上に形成された多層膜からなる薄膜型光吸収膜であって、該多層膜は、四酸化三鉄からなる酸化鉄層と、誘電体からなる誘電体層と、金属からなる金属層と、を含み、該酸化鉄層の厚さは、40ナノメータ以上で100ナノメータよりも小さく、該金属層は、該酸化鉄層より該基板側に配置され、該酸化鉄層及び該金属層の少なくとも一つと該誘電体層とが、反射防止層を形成する。
本態様によれば、四酸化三鉄からなる酸化鉄層及び金属層が光を吸収し、酸化鉄層及び金属層の少なくとも一つと誘電体層とが、反射防止層を形成し、光の反射を防止する。四酸化三鉄は、黒錆と呼称される非常に緻密で化学的に安定した膜を形成するので、40ナノメータ以上で100ナノメータよりも小さい厚さの四酸化三鉄の膜を使用することによって、高温環境下または高湿環境下において使用しても光吸収特性が劣化せず、簡単な製造プロセスによって製造することのできる薄膜型光吸収膜が得られる。また、光吸収機能を有する層として、酸化鉄層に加えて、消衰係数が、四酸化三鉄の消衰係数よりもはるかに大きい、金属の層を使用することによって、薄膜型光吸収膜全体の厚さを、四酸化三鉄からなる酸化鉄層のみを使用する場合よりも小さくすることができる。この場合に、金属層を酸化鉄層よりも基板側に配置することにより、金属層の経時変化を防止することができる。
本発明の実施形態による薄膜型光吸収膜は、400乃至1400ナノメータの波長の光に対して使用することができる。
撮像光学系に使用される、迷光防止用の薄膜型光吸収膜の一例を示す図である。 撮像光学系に使用される、従来の、薄膜型光吸収膜を使用しない迷光防止機構の一例を示す図である。 本発明による薄膜型光吸収膜を形成するための真空蒸着装置の構成の一例を示す図である。 四酸化三鉄からなる膜の波長と透過率との関係を示す図である。 膜の厚さが1マイクロメートルの場合について、図4の四酸化三鉄からなる膜の波長と透過率との関係、及び実際の膜の測定による波長と透過率との関係を示す図である。 実施例1の薄膜型光吸収膜の構成を示す図である。 実施例1の薄膜型光吸収膜の、可視光域の波長に対する透過率及び反射率の関係を示す図である。 実施例1の薄膜型光吸収膜の、可視光域及び赤外域の波長に対する透過率の関係を示す図である。 実施例1の薄膜型光吸収膜の、高温試験後及び高湿試験後における、波長に対する透過率及び反射率の関係を示す図である。 実施例2の薄膜型光吸収膜の構成を示す図である。 実施例2の薄膜型光吸収膜の、高湿試験前後における波長に対する透過率及び反射率を示す図である。 実施例2の薄膜型光吸収膜の、高温試験前後における波長に対する透過率及び反射率を示す図である。 実施例2の薄膜型光吸収膜の、より広い波長範囲の波長に対する透過率を示す図である。 四酸化三鉄からなる膜の膜厚の下限値を定める実験に使用された薄膜型光吸収膜の構成を示す図である。 波長650nmの光及び波長750nmの光に対して、四酸化三鉄からなる膜の膜厚と(吸収率変化量/初期の吸収率)との関係を示す図である。
図1は、撮像光学系に使用される、迷光防止用の薄膜型光吸収膜の一例を示す図である。薄膜型光吸収膜21は、撮像光学系のレンズ31、33及び35の有効径外の部分ならびに鏡筒11の内側面に設けられる。
図2は、撮像光学系に使用される、従来の、薄膜型光吸収膜を使用しない迷光防止機構の一例を示す図である。撮像光学系のレンズ31、33及び35の有効径外の部分には、光吸収材料を混入した部品41及び43などを設ける。また、鏡筒13には、光吸収材料を混入した材料を使用する。図2に示された迷光防止機構は、図1の薄膜型光吸収膜を使用した場合と比較して、部品数が多く、また部品の材料の制約があるので、製造プロセスが複雑となり、製造コストが高くなる。
一般的な迷光防止用の薄膜型光吸収膜に要求される性能は、以下の表1のとおりである。

Figure 0004701335
透過率及び反射率の上限値は、薄膜型光吸収膜が使用される撮像光学系の仕様によって異なる。一般的な撮像光学系においては、上記の上限値で十分である。高温環境及び高湿環境については、後で具体的に説明する。
本発明による薄膜型光吸収膜は、たとえば、真空蒸着法によって形成してもよい。
図3は、本発明による薄膜型光吸収膜を形成するための真空蒸着装置の構成の一例を示す図である。真空蒸着装置の真空チャンバ501内には、その上に薄膜型光吸収膜を形成する基板507を取り付けるための基板ホルダ505及び薄膜型光吸収膜を形成する物質を蒸発させる蒸発源503が備わる。真空チャンバ501には、ガス導入部509、真空制御部511及び排気部515が接続されている。真空制御部511は、真空チャンバ501内の真空度を検出し、真空度が目標値となるように、ガス導入部509によって真空チャンバ501に導入されるガスの量を調整する。
本発明においては、薄膜型光吸収膜の経時的な光吸収特性の変化を抑えるために、四酸化三鉄(Fe)からなる膜を使用する。四酸化三鉄は、黒錆として知られ非常に緻密な膜を構成し、化学的に安定している。
図4は、四酸化三鉄からなる膜について波長と透過率との関係を示す図である。上記の関係は、四酸化三鉄の屈折率及び消衰係数を実験から求め、市販の薄膜設計用プログラムによって求めたものである。
図5は、膜の厚さが1マイクロメートルの場合について、図4の四酸化三鉄からなる膜の波長と透過率との関係、及び実際の膜の測定による波長と透過率との関係を示す図である。図4の計算による関係は、測定による関係とよく一致している。
図4において、たとえば、四酸化三鉄からなる膜の厚さを750ナノメータ以上とすれば、400乃至1000ナノメータの波長域の光に対して、透過率は4パーセント以下となる。
以下において、本発明の実施例について説明する。
実施例1
図6は、実施例1の薄膜型光吸収膜の構成を示す図である。実施例1の薄膜型光吸収膜は、基板101上に四酸化三鉄(Fe)からなる膜103を形成し、さらにその上に二酸化ケイ素(SiO)からなる膜105を形成したものである。
表2は、実施例1の薄膜型光吸収膜のそれぞれの層の膜厚を示す表である。

Figure 0004701335
プラスチック基板の材料は、ZEONEX480R、ZEONEX340R、PC(いずれも商標名)などである。
表3は、実施例1の薄膜型光吸収膜の、真空蒸着法による製造条件を示す表である。

Figure 0004701335
表3においてE−03は、10の−3乗を示し、E−05は、10の−5乗を示す。
実施例1の薄膜型光吸収膜において、四酸化三鉄からなる膜103が光を吸収する。また、低屈折率の二酸化ケイ素(SiO)からなる膜105及び高屈折率の四酸化三鉄からなる膜103が反射防止層を形成し、光の反射を防止する。本実施例においては、膜105の側から光が入射する。ここで、二酸化ケイ素(SiO)からなる膜105は、一般的にフッ化マグネシウム(MgF)や酸化アルミニウム(Al)などの誘電体膜で置き換えてもよい。反射率を低下させるには、低屈折率の誘電体膜を、高屈折率の膜よりも光の入射側に配置するのが好ましい。本明細書及び特許請求の範囲において、誘電体膜または誘電体層とは、無機材料または有機材料またはそれらの混合材料からなる膜であり、金属酸化物膜を含む。
一般的に、高屈折率層及び低屈折率層を含む反射防止層は、特開2002−328201号公報及び特開2003−202405号公報などに開示されている。また、反射防止層の誘電体膜としてフッ化マグネシウム(MgF)や酸化アルミニウム(Al)を使用した多層膜は、たとえば、特開平5−93811号公報及び特開2007−206136号公報などに開示されている。
図7Aは、実施例1の薄膜型光吸収膜の、可視光域の波長に対する透過率及び反射率の関係を示す図である。400乃至700ナノメータの波長域の光に対して、透過率は1パーセント以下であり、反射率は、5パーセント以下である。
図7Bは、実施例1の薄膜型光吸収膜の、可視光域及び赤外域の波長に対する透過率の関係を示す図である。400乃至2000ナノメータの波長域の光に対して、透過率は1.2パーセント以下である。なお、若干の測定条件の相違により、図7A及び図7Bの測定値はわずかな差を生じている。
図8は、実施例1の薄膜型光吸収膜の、高温試験後及び高湿試験後における、波長に対する透過率及び反射率の関係を示す図である。ここで、高温試験は、温度85℃の環境に1週間設置するものである。また、高湿試験は、温度60℃及び湿度90パーセントの環境に1週間設置するものである。高温試験後及び高湿試験後の透過率の増加は、400乃至700ナノメータの波長域に置いて、0.3パーセントより小さい。このように、実施例1の薄膜型光吸収膜は、高温環境下または高湿環境下において使用しても光吸収特性が劣化しない。
上記のように、四酸化三鉄からなる膜103は、高温試験及び高湿試験に対して、透過率の経時的な変化をほとんど生じない。その理由は、四酸化三鉄が、上述のように、黒錆と呼称される非常に緻密で化学的に安定した膜を形成するためと考えられる。このように、本発明は、四酸化三鉄の膜を使用することによって、性能が経時的にほとんど変化しない薄膜型光吸収膜が得られるという新たな知見に基づいている。
実施例2
図9は、実施例2の薄膜型光吸収膜の構成を示す図である。実施例2の薄膜型光吸収膜は、基板201上に酸化チタン(Ti)からなる膜203、二酸化ケイ素(SiO)からなる膜205、酸化チタン(Ti)からなる膜207、二酸化ケイ素(SiO)からなる膜209、チタン(Ti)からなる膜211、四酸化三鉄(Fe)からなる膜213及び二酸化ケイ素(SiO)からなる膜215を形成したものである。
表4は、実施例2の薄膜型光吸収膜のそれぞれの層の膜厚を示す表である。

Figure 0004701335
プラスチック基板の材料は、ZEONEX480R、ZEONEX340R、PC(いずれも商標名)などである。
表5は、実施例2の薄膜型光吸収膜の、真空蒸着装置による製造条件を示す表である。

Figure 0004701335
表5においてE−02は、10の−2乗を示し、E−03は、10の−3乗を示す。
実施例2の薄膜型光吸収膜において、四酸化三鉄からなる膜213及びチタンからなる膜211が光を吸収する。ここで、チタンの消衰係数は、四酸化三鉄の消衰係数の10倍以上である。したがって、実施例2の膜213及び211の膜厚の合計(230ナノメータ)は、実施例1の膜103の膜厚(1000ナノメータ)よりも小さくすることができる。したがって、薄膜型光吸収膜全体の膜厚も小さくすることができる。
多層膜の設計に当たっては、金属を含む膜の屈折率及び消衰係数を実験から求め、金属を含む膜について波長と透過率との、図4に示すような関係を市販の薄膜設計用プログラムによって求めてもよい。
ここで、チタンの代わりにクロム、ニッケルなどの金属を使用することもできる。クロム及びニッケルの消衰係数も四酸化三鉄の消衰係数の10倍以上であるので、薄膜型光吸収膜全体の膜厚を小さくすることができる。
実施例2において光は、膜215の側から入射する。実施例2においては、金属を含む膜213、211、207及び203の中で、四酸化三鉄からなる膜213が基板201から最も離れた位置に配置されているので、基板201の反対側から進入する酸素が、四酸化三鉄からなる膜213によって遮断される。したがって、金属膜211の酸化が防止され、金属膜211の光吸収性の経時的な劣化が防止される。ここで、膜203、205、207及び209も若干の光吸収機能を有しているが、同様に光吸収性の経時的な劣化が防止される。
光吸収性の経時的な劣化を防止するために十分な四酸化三鉄膜の厚さは、当初の実験結果から、100ナノメータ以上であり、上記の値以下になると経時的な劣化を十分に防止できないという問題が生じると判断した。
また、低屈折率の二酸化ケイ素(SiO)からなる膜215及び高屈折率の四酸化三鉄からなる膜213が反射防止層を形成し、光の反射を防止する。本実施例においては、膜215の側から光が入射する。ここで、二酸化ケイ素(SiO)からなる膜105は、一般的に酸化アルミニウム(Al)やフッ化マグネシウム(MgF)などの誘電体膜で置き換えてもよい。反射率を低下させるには、低屈折率の誘電体膜を、高屈折率の膜よりも光の入射側に配置するのが好ましい。
本実施形態において、四酸化三鉄(Fe)からなる膜213と基板201との間に、誘電体膜(203,205,207,209)及び金属膜(211)を形成することで、四酸化三鉄(Fe)からなる膜213と基板201との密着性を高めることができる。
図10は、実施例2の薄膜型光吸収膜の、高湿試験前後における波長に対する透過率及び反射率を示す図である。ここで、高湿試験は、温度60℃及び湿度90パーセントの環境に1週間設置するものである。高湿試験前において、400乃至700ナノメータの波長域の光に対して、透過率は4パーセント以下である。高湿試験後の透過率の増加は0.5パーセント以下である。高湿試験前において、400乃至700ナノメータの波長域の光に対して、反射率は8パーセント以下である。高湿試験後の透過率の増加は1.0パーセント以下である。
図11は、実施例2の薄膜型光吸収膜の、高温試験前後における波長に対する透過率及び反射率を示す図である。ここで、高温試験は、温度85℃の環境に1週間設置するものである。高温試験前において、400乃至700ナノメータの波長域の光に対して、透過率は4パーセント以下である。高温試験後の透過率の増加は0.3パーセント以下である。高温試験前において、400乃至700ナノメータの波長域の光に対して、反射率は8パーセント以下である。高温試験後の透過率の増加は0.5パーセント以下である。
図12は、実施例2の薄膜型光吸収膜の、より広い波長範囲の波長に対する透過率を示す図である。400乃至1400ナノメータの波長域の光に対して、透過率は8パーセント以下である。なお、若干の測定条件の相違により、図10及び図11の測定値と図12の測定値とはわずかな差を生じている。
本実施例においては、光吸収機能を有する膜として、四酸化三鉄からなる膜213に加えて、別の金属膜211を使用することによって、薄膜型光吸収膜全体の厚さを、四酸化三鉄からなる膜のみを使用する場合よりも小さくすることができる。その理由は、金属の消衰係数が、四酸化三鉄の消衰係数よりもはるかに大きいからである。この場合に、金属膜211の経時変化を防止するために、金属膜211は、四酸化三鉄からなる膜213より基板201側に配置される。また、薄膜型光吸収膜の経時変化を防止するために必要な四酸化三鉄からなる膜213の厚さは、上述のように、当初の実験結果から、100ナノメータ以上であり、上記の値以下になると経時的な劣化を十分に防止できないという問題が生じると判断した。このように、実施例2に一例として示された態様の発明は、所定の厚さの四酸化三鉄からなる膜213及び金属膜211を使用することによって、性能が経時的にほとんど変化せず、かつ、四酸化三鉄からなる膜のみを使用する場合よりも薄い薄膜型光吸収膜が得られるという新たな知見に基づいている。
四酸化三鉄膜の厚さの下限値を定める実験
当初の実験結果から、100ナノメータと判断された、光吸収性の経時的な劣化を防止するために十分な四酸化三鉄膜の厚さの下限値をより正確に定めるための実験を行なった。
図13は、光吸収性の経時的な劣化を防止するために十分な四酸化三鉄膜の厚さの下限値を定める実験に使用された薄膜型光吸収膜の構成を示す図である。上記の薄膜型光吸収膜は、基板301上に四酸化三鉄(Fe)からなる膜303を形成したものである。
表6は、上記の薄膜型光吸収膜の膜厚を示す表である。

Figure 0004701335
プラスチック基板の材料は、ZEONEX480R、ZEONEX340R、PC(いずれも商標名)などである。
具体的に実験においては、ZEONEX480Rからなる基板上に50ナノメータよりも小さい種々の厚さの四酸化三鉄からなる膜を形成し、初期の吸収率を測定した。ここで、吸収率は、以下の式で定義される。

吸収率=100-透過率−反射率 (%)
つぎに、上記の薄膜型光吸収膜を温度85℃、湿度85%の高温・高湿環境に2週間保持した後、再び吸収率を測定した。ここで、吸収率変化量を以下の式で定義する。

吸収率変化量=初期の吸収率−高温・高湿環境に2週間保持した後の吸収率 (%)
図14は、波長650ナノメータの光及び波長750ナノメータの光に対して、四酸化三鉄からなる膜の膜厚と(吸収率変化量/初期の吸収率)との関係を示す図である。図14の横軸は四酸化三鉄からなる膜の膜厚(単位nm)を表し、図14の横軸は、(吸収率変化量/初期の吸収率)(単位%)を表す。
四酸化三鉄からなる膜の膜厚が約40ナノメータ以上であれば、(吸収率変化量/初期の吸収率)は0であり、高温・高湿環境に2週間保持した後の吸収率は、初期吸収率から低下しない。このことは、四酸化三鉄からなる膜の膜厚が約40ナノメータ以上であれば、高温・高湿環境化においても、四酸化三鉄からなる膜の光吸収特性が変化しないことを意味する。
そこで、膜厚が40ナノメータ以上の四酸化三鉄からなる膜(層)と、誘電体層と、必要に応じて金属層とを組み合わせることにより、光吸収特性が経時的に変化しない光吸収膜を形成することができる。

Claims (4)

  1. 基板上に形成された多層膜からなる薄膜型光吸収膜であって、該多層膜は、四酸化三鉄からなる酸化鉄層と、誘電体からなる誘電体層と、を含み、該酸化鉄層の厚さは、40ナノメータ以上で100ナノメータよりも小さく、該酸化鉄層及び該誘電体層が、反射防止層を形成する薄膜型光吸収膜。
  2. 400乃至2000ナノメータの波長の光に対して使用することのできる請求項1に記載の薄膜型光吸収膜。
  3. 基板上に形成された多層膜からなる薄膜型光吸収膜であって、該多層膜は、四酸化三鉄からなる酸化鉄層と、誘電体からなる誘電体層と、金属からなる金属層と、を含み、該酸化鉄層の厚さは、40ナノメータ以上で100ナノメータよりも小さく、該金属層は、該酸化鉄層より該基板側に配置され、該酸化鉄層及び該金属層の少なくとも一つと該誘電体層とが、反射防止層を形成する薄膜型光吸収膜。
  4. 400乃至1400ナノメータの波長の光に対して使用することのできる請求項3に記載の薄膜型光吸収膜。
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