JP6269665B2 - 光学フィルタ、光学フィルタの製造方法 - Google Patents

光学フィルタ、光学フィルタの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、光学フィルタ及び光学フィルタの製造方法に関し、特に、透明基板と、該透明基板上に形成された光学多層膜とを備える光学フィルタに関する。
デジタルカメラやデジタルビデオ等の撮像装置には、Charge Coupled Device(CCD)イメージセンサやComplementary Metal Oxide Semiconductor(CMOS)イメージセンサ等の固体撮像素子が設置されている。しかしながら、固体撮像素子の分光特性は、人間の視感度特性に比べて、赤外光に関して感度が高い。そこで、撮像装置では、近赤外線カットフィルタを設置することによって、分光補正を行っている。
近赤外線カットフィルタは、例えば、Cu2+イオンを着色成分として含有するフツリン酸系ガラス等のような、近赤外線吸収タイプの色ガラスフィルタである。しかしながら、色ガラスフィルタ単体では、近赤外域及び紫外域の光を十分にカットすることができない。このため、近赤外線を十分にカットするために、光学多層膜を併用することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特開平2−213803号公報
近赤外線カットフィルタは、耐候性(例えば、変形、変色、劣化等の変質を起こしにくい性質)について、さらなる向上が求められている。
本発明は、耐候性に優れる光学フィルタ、及び、その光学フィルタの製造方法を提供することを目的とする。
本発明の光学フィルタは、透明基板と、その透明基板の面に設けられている光学多層膜とを備える。光学多層膜では、酸化珪素(SiO)を含有する低屈折率膜と、その低屈折率膜よりも屈折率の高い高屈折率膜とを交互に積層している。低屈折率膜は、低屈折率膜と高屈折率膜との界面に近い部分の密度が、その界面に近い部分以外の部分の密度よりも低い。
本発明によれば、光学多層膜の耐候性を向上することができる。
実施形態に係る近赤外線カットフィルタの断面図である。 透明基板上に形成された光学多層膜の断面図である。 低屈折率膜の拡大断面図である。 低屈折率膜の拡大断面図である。 撮像装置の一部断面図である。 実施例1に係る近赤外線カットフィルタの分光特性を示す図である。 実施例2に係る近赤外線カットフィルタの分光特性を示す図である。 比較例1に係る近赤外線カットフィルタの分光特性を示す図である。 比較例2に係る近赤外線カットフィルタの分光特性を示す図である。 実施例2に係る近赤外線カットフィルタのSEM画像である。 比較例1に係る近赤外線カットフィルタのSEM画像である。
(実施形態)
図1は、実施形態に係る近赤外線カットフィルタ100(以下、IRCF100)の断面図である。図1に示すように、IRCF100は、透明基板110と、透明基板110の主面S1上に形成された光学多層膜120とを備える。
(透明基板110)
透明基板110の材料は、少なくとも可視波長域の光を透過するものであれば特に限定されない。透明基板110の材料は、例えば、ガラス、水晶、その他の結晶(ニオブ酸リチウム、サファイヤ等)、ポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等)、ポリオレフィン樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル共重合体等)、ノルボルネン樹脂、アクリル樹脂(ポリアクリレート、ポリメチルメタクリレート等)、ウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂等である。
透明基板110は、特に、近赤外波長域の光を吸収するものが好ましい。透明基板110が近赤外波長域の光を吸収するときには、人間の視感度特性に近い画質の画像を、撮像装置が撮像することができる。なお、近赤外波長域の光を吸収する透明基板110は、例えば、フツリン酸塩系ガラスやリン酸塩系ガラスにCu2+(イオン)が添加された吸収型ガラスである。また、樹脂材料中に近赤外線を吸収する吸収剤を添加したものを、上記の透明基板110として使用してもよい。吸収剤は、例えば、染料、顔料、金属錯体系化合物である。具体的には、吸収剤は、フタロシアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、ジチオール金属錯体系化合物である。
なお、フツリン酸塩系ガラスは、ガラス中にフッ素成分を含有することで高い耐候性を備える。そのため、光学多層膜120をフツリン酸塩系ガラスの透明基板110に形成することで、耐候性の高い光学フィルタ(IRCF100)を得ることができる。
(光学多層膜120)
光学多層膜120は、図1に示すように、透明基板110において第1の主面S1上に形成されている。光学多層膜120は、例えば、近赤外線(IR)をカットするフィルタである。光学多層膜120は、透過帯と阻止帯とを有する。光学多層膜120の透過帯は、400〜700nmの波長範囲において光の平均透過率が85%以上になる帯域である。これに対して、光学多層膜120の阻止帯は、透過帯の近赤外側に位置する750〜1100nmの波長範囲において光の平均透過率が10%以下である帯域であり、その帯域幅が100〜280nmである。
図2は、光学多層膜120の断面図である。図2に示すように、光学多層膜120は、高屈折率膜Hと低屈折率膜Lとを備える。
光学多層膜120において、高屈折率膜Hは、光の波長が500nmであるときの屈折率が、2.0以上である。そして、低屈折率膜Lは、光の波長が500nmであるときの屈折率が、1.6未満である。
高屈折率膜Hと低屈折率膜Lとのそれぞれは、以下の(1)式で表されるように、n回、交互に積層されている。
(HL)^n(nは、1以上の自然数)・・・(1)
光学多層膜120のうち、高屈折率膜Hは、光の波長が500nmであるときの屈折率が、2.0以上になる材料で形成されている。高屈折率膜Hは、例えば、酸化チタン(TiO)、酸化ニオブ(Nb)、酸化タンタル(Ta)、またはこれらの複合酸化物で形成されることが好適である。また、高屈折率膜Hは、上記の屈折率が2.0以上になるのであれば、上記の材料以外に、添加物を含有しても構わない。
光学多層膜120のうち、低屈折率膜Lは、酸化珪素(SiO)を含有する。低屈折率膜Lは、光の波長が500nmであるときの屈折率が、1.6未満になるのであれば、酸化珪素に加えて、他の添加物を含有しても構わない。なお、低屈折率膜Lに含有する酸化珪素は、酸素が一部欠損しているものであって、化学量論的に不完全な酸化珪素でもよい。これは、低屈折率膜Lを成膜する際に、酸化珪素の全てをSiOとして形成できない可能性があるためである。
本実施形態では、低屈折率膜Lは、高屈折率膜Hとの界面に近い部分の密度が、その界面に近い部分以外の部分の密度よりも低くなるように構成されている。
図3は、低屈折率膜Lの拡大断面図である。図3に示すように、低屈折率膜Lは、第1の低屈折率膜L1と、第2の低屈折率膜L2とを含み、両者が積層した構造である。
低屈折率膜Lにおいて、低屈折率膜Lとその上側に位置する高屈折率膜Hとの界面に近い側の部分には、第1の低屈折率膜L1が形成されている。これと共に、低屈折率膜Lとその下に位置する高屈折率膜Hとの界面に近い側の部分に、第1の低屈折率膜L1が形成成されている。つまり、第1の低屈折率膜L1は、低屈折率膜Lにおいて上側に位置する部分と下側に位置する部分との両者に形成されている。第1の低屈折率膜L1のそれぞれは、光学多層膜120において、高屈折率膜Hと第2の低屈折率膜L2との間に介在するように形成されている。
低屈折率膜Lにおいて、膜厚方向の中央部分には、第2の低屈折率膜L2が位置しておいる。第2の低屈折率膜L2は、上側部分に形成された第1の低屈折率膜L1と、下側部分に形成された第1の低屈折率膜L1との間に挟まれている。第2の低屈折率膜L2は、光学多層膜120において、高屈折率膜Hとの間に第1の低屈折率膜L1が介在するように形成されている。ここでは、第2の低屈折率膜L2は、第1の低屈折率膜L1よりも密度が高くなるように形成されている
なお、第1の低屈折率膜L1は、物理膜厚T1が3nm以上であり、かつ、低屈折率膜Lの物理膜厚T2の半分以下となっていることが好ましい。つまり、第1の低屈折率膜L1は、以下の(2)式を満たしていることが好ましい。第1の低屈折率膜L1の物理膜厚T1が3nm未満であるときには、高屈折率膜Hの全面に確実に第1の低屈折率膜L1を形成することができないおそれがある。また、第1の低屈折率膜L1の物理膜厚T1が、低屈折率膜Lの物理膜厚T2の半分を超えるときには、低屈折率膜Lにおいて第1の低屈折率膜L1が占める割合が大きくなりすぎる。このため、光学多層膜120の耐熱性が十分に向上しないおそれがある。なお、以下の(2)式において、T2は、光学多層膜120を構成する全ての低屈折率膜Lの物理膜厚の平均値である。
3nm≦T1≦T2/2・・・(2)
T1:第1の低屈折率膜L1の物理膜厚
T2:低屈折率膜Lの物理膜厚
高屈折率膜H及び低屈折率膜Lは、真空蒸着法により形成することができる。光学多層膜120において、透過帯は、CCD、CMOS等の固体撮像素子で受光に利用される波長帯域であるので、膜厚精度が重要になる。真空蒸着法は、薄膜を形成する際の膜厚制御に優れるので、高屈折率膜Hおよび低屈折率膜Lの膜厚を高い精度にすることができる。
また、第1の低屈折率膜L1および第2の低屈折率膜L2については、成膜チャンバ内の真空度を制御することによって、密度を調整して成膜することができる。具体的には、成膜チャンバ内の真空度を高くすることによって、密度が低い低屈折率膜を形成することができる。成膜チャンバ内の真空度を低くすることによって、密度が高い低屈折率膜を形成することができる。成膜チャンバ内の真空度は、成膜チャンバ内へ導入するガス(例えば、酸素(O)ガス)の流量を調整することで制御できる。
なお、図3では、低屈折率膜Lは、上記のように、第1の低屈折率膜L1と、第2の低屈折率膜L2とが積層された構造であるが、これに限らない。低屈折率膜Lは、透明基板110の主面S1,S2に対して垂直な方向(膜厚方向)において、低屈折率膜Lと高屈折率膜Hとの界面から離れるに従って、密度が徐々に高くなるように形成されてもよい。この場合、成膜チャンバ内の真空度を徐々に変化させて成膜を行うことによって、上記のように低屈折率膜Lを形成することができる。
また、図3では、低屈折率膜Lは、下側に位置する界面側、および、上側に位置する界面側のそれぞれに、第1の低屈折率膜L1が設けられているが、これに限らない。図4に示すように、第1の低屈折率膜L1については、低屈折率膜Lのうち、下側に位置する界面側に形成し、上側に位置する界面側には形成しなくてもよい。つまり、第1の低屈折率膜L1は、低屈折率膜Lにおいて上側に位置する部分と下側に位置する部分との少なくとも一方に形成すればよい。
以上のように、本実施形態において、IRCF100は、透明基板110と、その透明基板110の主面S1に設けられている光学多層膜120とを備えている。光学多層膜120は、酸化珪素(SiO)を含有する低屈折率膜Lと、低屈折率膜Lよりも屈折率が高い高屈折率膜Hとを含み、両者が積層している。そして、低屈折率膜Lは、高屈折率膜Hとの界面に近い部分の密度が、その界面に近い部分以外の部分の密度よりも低くなっている。
このため、本実施形態のIRCF100は、PCT(プレッシャークッカーテスト)の実施前後において、分光特性の変化が小さく、ヘイズの発生を防止できる。また、本実施形態のIRCF100は、耐熱性が高く、高温状態に曝された後も光学多層膜120に膜クラックが発生し難い。この理由は、研究結果から、次のように考えられる。
イオンアシストを用いた真空蒸着法やスパッタリング法により光学多層膜を形成する場合には、高屈折率膜の一部に酸素欠損を生じる場合がある。この現象は、特に、酸化チタン(TiO)や酸化ニオブ(Nd)などで形成された高屈折率膜Hの表面に、酸化珪素(SiO)膜を形成する場合に、顕著である。このため、活性が高い酸化珪素が、酸化チタンや酸化ニオブなどで形成された高屈折率膜Hから酸素を奪うことによって、上記の現象が生ずると考えられる。なお、上記の現象は、少なからず、イオンアシストを用いない加熱蒸着法により形成された光学多層膜においても起こっていると考えられる。
低屈折率膜Lである酸化珪素膜を形成する際に加熱蒸着装置(成膜チャンバ)内の成膜真空度が高い場合には、蒸着物質の平均自由工程が長くなり、エネルギー活性が高い状態で、酸化チタンなどで形成された高屈折率膜Hに低屈折率膜Lが接する。そのため、その酸化珪素の一部が、高屈折率膜Hから酸素を奪い、高屈折率膜Hに酸素欠損を生じると考えられる。また、高い真空状態で成膜を行う場合には、酸化珪素自体に酸素欠損を生じるために、上記現象を助長させると考えられる。
通常、酸素欠損が生じた高屈折率膜Hのほとんどは、耐水性が低く、PCT(プレッシャークッカーテスト)などの試験によって、脆性化し易い。このため、PCT(プレッシャークッカーテスト)の実施後には、光学多層膜120にヘイズが発生すると推測される。
したがって、PCT(プレッシャークッカーテスト)の実施によって光学多層膜120にヘイズが発生することを抑制するために、本実施形態では、低屈折率膜Lにおいて高屈折率膜Hとの界面側に形成する酸化珪素膜については、低い成膜真空度で成膜を行うことによって、高屈折率膜Hに酸素欠損を生じることを抑制している。具体的には、低屈折率膜Lにおいて高屈折率膜Hとの界面に酸化珪素膜を成膜するときには、加熱蒸着装置内に酸素ガスを導入して成膜真空度を低くすることによって、エネルギー活性が低い酸化珪素膜を形成している。
エネルギー活性が低い酸化珪素膜を形成するためには、成膜真空度の調整のほか、透明基板の温度を下げること、蒸着剤の加熱温度を下げることなどを行うことが可能である。しかしながら、透明基板110の温度を調整することは、第1の低屈折率膜L1よりも密度が高い第2の低屈折率膜L2を成膜するためには、適さない。また、蒸着剤の加熱温度を低下することは、成膜レートの低下を引き起こす。よって、加熱蒸着装置内へガスを導入することによって、成膜真空度の調整を行うことが好適である。
また、加熱蒸着装置内へガスを導入することによって成膜真空度を調整する方法では、酸素ガス以外に、アルゴンガスなどの他のガスを使用してもよい。しかし、上記で述べた酸素欠損を補てんするためには、酸素ガスを少なくとも一部用いることが好適である。
以上のことから、本実施形態のIRCF100では、低屈折率膜Lにおいて高屈折率膜Hとの界面に近い部分を、低い成膜真空度で成膜することによって、密度が低い第1の低屈折率膜L1を形成している。このため、本実施形態では、高屈折率膜Hに酸素欠損を生じることを抑制することができる。その結果、本実施形態のIRCF100では、PCT(プレッシャークッカーテスト)前後において、分光特性の変化が小さく、ヘイズの発生を抑制することができる。
加熱蒸着で形成された膜の殆どは、引っ張り応力が作用する場合が多く、本実施形態の高屈折率膜Hにおいても、これ同様に、引っ張り応力が作用する。これに対して、酸化珪素膜は、圧縮応力が作用する場合が多く、その圧縮応力は、酸化珪素膜が緻密である(密度が高い)方がより大きくなる。本実施形態において、IRCF100は、高屈折率膜Hと低屈折率膜Lとが積層された状態において圧縮応力が作用する。特に、本実施形態では、第2の低屈折率膜L2の割合が大きいため、より大きな圧縮応力が作用する。
光学多層膜120が形成された透明基板110が加熱されるときには、透明基板110が熱膨張によって大きくなって光学多層膜120が引き延ばされる。このため、光学多層膜120に膜クラックが発生する場合がある。しかしながら、光学多層膜120に作用する圧縮応力が大きい場合には、透明基板110が熱膨張によって大きくなる程度が軽減される。このため、本実施形態では、高温時に光学多層膜120に膜クラックが発生することが低減される。したがって、本実施形態において、第2の低屈折率膜L2の存在は、高温時の膜クラック耐性を大幅に向上させる効果がある。
第1の低屈折率膜L1および第2の低屈折率膜L2の密度がそれぞれ相違することは、以下の方法によって確認することができる。
まず、光学多層膜120が形成されたIRCF100を、光学多層膜120の断面が観察できるように切断する。例えば、透明基板110の第1の主面S1に対して垂直な方向にIRCF100を切断する。次いで、光学多層膜120の断面がフッ化水素(HF)液(濃度:0.25%)に浸漬するように、そのフッ化水素液にRCF100を15秒間浸漬する。次いで、光学多層膜120のうちフッ化水素液に浸漬した部分の断面を、SEM(scanning electron microscope)で観察する。
低屈折率膜Lにおいて密度が低い箇所は、フッ化水素液によって浸食され易いため、多くの空隙が生じる。本実施形態のIRCF100では、低屈折率膜Lにおいて高屈折率膜Hとの界面側の部分に空隙が選択的に発生することが、上記観察方法によって観察される。つまり、本実施形態では、低屈折率膜Lにおいて中心に位置する第2の低屈折率膜L2よりも、低屈折率膜Lにおいて高屈折率膜Hとの界面に近い側に位置する第1の低屈折率膜L1に、空隙が多く発生する。
なお、SEMの観察像では、空隙の部分は、空隙でない部分よりも濃色になるため、両者を識別することが可能である。そのため、空隙が発生する頻度は、SEMの観察像において空隙の面積に基づいて比較できる。比較方法としては、例えばSEMの観察像を2値化する画像処理を行って、その処理後の観察像において特定範囲の明部と暗部との面積を算出し比較する方法が挙げられる。その他、公知の方法を用いることができる。
低屈折率膜Lの全体を同一の密度で形成した場合には、上記のように選択的に空隙が発生することはなく、低屈折率膜Lの全面に同程度の空隙が発生する。
以上のように、本実施形態では、近赤外カットフィルタ等の光学フィルタの耐候性(例えば、変形、変色、劣化等の変質を起こしにくい性質)をさらに向上することができる。
光学フィルタの製造工程の一部において、光学フィルタは、100℃を超す高温にさらされることがあるため、光学多層膜120には高い耐熱性が要求される。本実施形態では、高温時に、光学多層膜120に膜クラックが発生することを抑制することができる。
また、湿度の高い状態において、光学多層膜120に白曇りが発生することを抑制することができる(PCT(プレッシャークッカーテスト)は高湿度環境下での耐候性を評価するための加速試験である)。
このように、本実施形態では、極めて高い耐候性を持つ光学フィルタを、イオンアシスト等を用いることなく、真空蒸着法により形成することができる。このため、既存の真空蒸着装置を高価なイオンアシスト付の蒸着装置に置き換える必要がないので、費用に対する効果が非常に高い。
また、イオンアシストなどでは、極端に高い圧縮応力が光学多層膜120に発生して、光学フィルタが大きく反るなどの変形が生じるおそれがある。しかし、本実施形態では、光学フィルタが変形することも抑えることが可能となる。
(実施形態の変形例)
以上のように、本発明の実施形態を上記の具体例に基づいて詳細に説明した。しかし、本発明の実施形態は上記具体例に限定されるものではなく、本発明の範疇を逸脱しない限りにおいて、あらゆる変形や変更が可能である。
上記の実施形態では、透明基板110の主面S1上に光学多層膜120を形成する場合について説明したが、これに限らない。たとえば、透明基板110の主面S1と、その主面S1に対して反対側に位置する主面S2との両者に、上記と同様に、光学多層膜120を形成してもよい。つまり、透明基板110の主面S1と、その主面S1に対して反対側に位置する主面S2との少なくとも一方に、上記と同様に、光学多層膜120を形成してもよい。
上記の他に、例えば、光学多層膜は、紫外線(UV)をカットするUVカットフィルタ、赤外線及び紫外線をカットするUV・IRカットフィルタ、反射防止膜等であってもよい。また、異なる構成の光学多層膜を透明基板の一方の主面に積層して設けてもよい。さらに、光学多層膜と透明基板との間に、付着力強化層(密着力強化層)をさらに設けてもよい。また、光学多層膜と透明基板との間に、リップルを抑制する膜を設けてもよい。また、光学多層膜のうち最も表面側に位置する層(空気側)に、帯電防止層をさらに設けてもよい。
(撮像装置200)
上記のIRCF100は、例えば、デジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラ、監視カメラ、車載用カメラ、ウェブカメラ等の撮像装置や自動露出計等における視感度補正フィルタとして用いられる。上記の撮像装置においては、IRCF100は、例えば、撮像レンズと固体撮像素子との間に配置される。自動露出計においては、IRCF100は、例えば受光素子の前面に配置される。
撮像装置では、固体撮像素子の前面から離れた位置にIRCF100を配置してもよい。また、固体撮像素子、または固体撮像素子のパッケージにIRCF100を直接貼着してもよい。また、固体撮像素子を保護するカバーをIRCF100として設けられてもよい。また、モアレや偽色を抑制するために、水晶やニオブ酸リチウム等の結晶を使用したローパスフィルタにIRCF100を直接貼り着てもよい。
次に、具体例を示す。図5は、撮像装置200の一部構成図である。
撮像装置200は、例えば、デジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラ、監視カメラ、車載用カメラ、ウェブカメラである。撮像装置200は、図5に示すように、固体撮像素子210、カバーガラス220、レンズ群230、絞り240、筐体250を備える。固体撮像素子210、カバーガラス220、レンズ群230及び絞り240は、光軸xに沿って配置されている。
固体撮像素子210は、例えば、Charge Coupled Device(CCD)イメージセンサやComplementary Metal Oxide Semiconductor(CMOS)イメージセンサである。固体撮像素子210は、入力される光を電気信号に変換して、その電気信号を画像信号処理回路(図示省略)へ出力する。
カバーガラス220は、固体撮像素子210の撮像面側(レンズ群230側)に配置されており、外部環境から固体撮像素子210を保護する。
レンズ群230は、固体撮像素子210の撮像面側に配置されている。レンズ群230は、第1から第4のレンズ231〜234を含み、その第1から第4のレンズ231〜234が、入射した光を固体撮像素子210の撮像面へと導く。
絞り240は、レンズ群230のうち、第3レンズ233と第4レンズ234との間に配置されている。絞り240は、通過する光の量を調整可能に構成されている。
筐体250は、固体撮像素子210、カバーガラス220、レンズ群230及び絞り240を収容している。
撮像装置200では、被写体側より入射した光は、第1レンズ231、第2レンズ232、第3レンズ233、絞り240、第4レンズ234、及びカバーガラス220を順次通って、固体撮像素子210に入射する。固体撮像素子210に入射した光は、固体撮像素子210で電気信号に変換され、その電気信号が画像信号として出力される。
IRCF100は、例えば、カバーガラス220、レンズ群230(第1レンズ231、第2レンズ232、第3レンズ233、もしくは第4レンズ234)として用いられる。言い換えれば、従来の撮像装置のカバーガラスやレンズ群を透明基板110とし、この透明基板110の表面に光学多層膜120が設けられる。もしくは、光学多層膜120は、第1レンズ231からカバーガラス220の何れかの空間に、単独の光学フィルタとして配置されてもよい。
撮像装置200においてカバーガラス220やレンズ群230にIRCF100を適用することによって、耐候性に優れる光学フィルタを得ることができる。
実施例を具体的に説明する。
ここでは、以下に示すように、実施例1,2および比較例1,2に係る近赤外線カットフィルタ(IRCF)を作成した。各例のIRCFにおいて、高屈折率膜については、酸化チタン(TiO)を用いて形成し、低屈折率膜については酸化珪素(SiO)を用いて形成した。また、透明基板については、厚みが0.3mmであるガラス基板(近赤外線カットガラス、NF−50、AGCテクノグラス社製)を用いた。
各例のIRCFを作成した後、PCT(プレッシャークッカーテスト、試験条件(温度:121℃、湿度:100%RH、時間:36時間、圧力:2.1気圧)を実施することによって、「分光特性」、「膜クラック」、および、「ヘイズ(曇り)」を検査した。
(分光特性)
各例のIRCFについて、上記条件でPCTを実施した。そして、各例のIRCFについて、PCTを実施する前と実施した後との間において、分光特性の変化を評価した。
(膜クラック)
各例のIRCFを、温度が250℃の状態に2分間放置した。その後、各例のIRCFについて、光学多層膜120にクラックの有無があるかどうかを、目視、もしくは顕微鏡を用いて評価した。
(ヘイズ(曇り))
各例のIRCFについて、上記条件でPCTを実施する前と実施した後とにおいて、光学多層膜にヘイズ(曇り)が発生したか否かを評価した。ここでは、ヘイズメーター(日本電色工業(株)社製、製品名:NDH5000)を用いて、評価を行った。
(実施例1)
実施例1では、透明基板の表面(主面S1)に高屈折率膜Hと低屈折率膜Lとを交互に積層した光学多層膜を設けると共に、透明基板の裏面(主面S2)に6層からなる反射防止膜(AR)を設けることによって、IRCFを作成した。
実施例1の成膜条件を以下に示す。
(成膜時の真空度)
高屈折率膜H(TiO):1.3×10−2Pa
第1の低屈折率膜L1(SiO):6.5×10−3Pa
第2の低屈折率膜L2(SiO):2.0×10−3Pa
(成膜時の透明基板温度)
透明基板の温度は、190℃とした。
(成膜速度)
高屈折率膜H(TiO):4Å/S(オングストローム/秒)
低屈折率膜L(SiO):6Å/S(オングストローム/秒)
表1に、実施例1において、透明基板の表面(主面S1)に形成した光学多層膜の膜条件(膜構成、膜材質、物理膜厚)を示す。なお、表1のうち、混合物αとは、アルミナ(Al)と酸化ジルコニウム(ZrO)との混合物を示す(表2,表3についても同じ)。
Figure 0006269665
表1に示すように、実施例1においては、透明基板に対する密着性を向上するために、混合物αからなる膜X1(密着力強化層)を透明基板の表面に加熱蒸着法で形成した。そして、リップルを抑制するために、TiO膜Y1とSiO膜Y2とのそれぞれを、混合物αからなる膜X1を介して、透明基板の表面に加熱蒸着法で順次形成した。その後、高屈折率膜Hと第1の低屈折率膜L1と第2の低屈折率膜L2との組み合わせを基本単位とし、この基本単位で繰り返し成膜を行うことによって、光学多層膜を透明基板の表面に形成した。つまり、実施例1では、低屈折率膜Lにおいて、上側に位置する界面に近い上側部分に第1の低屈折率膜L1を形成し、下側に位置する界面に近い下側部分には、第1の低屈折率膜L1を形成していない。
図6は、実施例1に係るIRCFの分光特性を示す図である。図6において、縦軸は透過率を示し、横軸は波長を示している。なお、図6のうち、鎖線はPCT前の分光特性を示しており、実線はPCT後の分光特性を示している。図6に示すように、実施例1では、PCTの実施前後において、分光特性がほとんど変化していない。また、実施例1では、膜クラックの発生がなく、ヘイズの発生も確認されなかった。
(実施例2)
実施例2では、透明基板の表面(主面S1)に高屈折率膜Hと低屈折率膜Lとを交互に積層した光学多層膜を設けると共に、透明基板の裏面(主面S2)に6層からなる反射防止膜(AR)を設けることによって、IRCFを作成した。
実施例2の成膜条件を以下に示す。
(成膜時の真空度)
高屈折率膜H(TiO):1.3×10−2Pa
第1の低屈折率膜L1(SiO):6.5×10−3Pa
第2の低屈折率膜L2(SiO):2.0×10−3Pa
(成膜時の透明基板温度)
透明基板の温度は、190℃とした。
(成膜速度)
高屈折率膜H(TiO):4Å/S(オングストローム/秒)
低屈折率膜L(SiO):6Å/S(オングストローム/秒)
表2に、実施例2において、透明基板の表面(主面S1)に形成した光学多層膜の膜条件(膜構成、膜材質、物理膜厚)を示す。
Figure 0006269665
表2に示すように、実施例2においては、透明基板に対する密着性を向上するために、混合物αからなる膜X1(密着力強化層)を透明基板の表面に加熱蒸着法で形成した。そして、リップルを抑制するために、TiO膜Y1とSiO膜Y2とSiO膜Y3とのそれぞれを、混合物αからなる膜X1を介して、透明基板の表面に加熱蒸着法で順次形成した。その後、高屈折率膜Hと第1の低屈折率膜L1と第2の低屈折率膜L2と第1の低屈折率膜L1との組み合わせを基本単位とし、この基本単位で繰り返し成膜を行うことによって光学多層膜を透明基板の表面に形成した。つまり、実施例2では、低屈折率膜Lにおいて上側に位置する界面に近い上側部分と、下側に位置する界面に近い下側部分との両者に、第1の低屈折率膜L1が形成されている。
図7は、実施例2に係るIRCFの分光特性の結果を示す図である。図7において、縦軸は透過率を示し、横軸は波長を示している。なお、図7のうち、鎖線はPCT前の分光特性を示し、実線はPCT後の分光特性を示している。図7に示すように、実施例2では、PCTの実施前後において、分光特性がほとんど変化していない。また、実施例2では、実施例1(図6参照)よりも分光特性の変化は小さい。さらに、実施例2では、膜クラックの発生がなく、ヘイズの発生も確認されなかった。
なお、この実施例2では、長波長側において、透過率が周期的に減少している。しかし、この現象は、実施例2のヘイズに起因するものではない。
加熱蒸着後に水が浸入することによって光学多層膜の屈折率が変化する場合がある。また、低屈折率膜LのうちPCT(プレッシャークッカーテスト)によって最も影響を受けやすい最外層(空気側)自体が、変質する場合がある。そして、これらに起因してリップルが発生する場合がある。上記のように長波長側において透過率が周期的に減少する現象は、このリップルの発生に起因すると考えられる。つまり、上記の現象は、高屈折率膜Hと低屈折率膜Lとの界面近傍においてPCT(プレッシャークッカーテスト)の影響によって生ずるヘイズに、起因しない。ヘイズが発生した場合には、波長が短い方が、PCT(プレッシャークッカーテスト)の影響がより大きい。しかし、その影響は比較的波長依存性が低く、透過帯域全体が均一に透過率の低下を引き起こす。このため、上記の現象は、ヘイズとまったく異なる原因によるものと考えられる。
(比較例1)
比較例1では、透明基板の表面(主面S1)に高屈折率膜Hと低屈折率膜Lとを交互に積層した光学多層膜を設けると共に、透明基板の裏面(主面S2)に6層からなる反射防止膜(AR)を設けることによって、IRCFを形成した。そして、そのIRCFについて、PCT(プレッシャークッカーテスト)後の分光特性を測定した。
比較例1の成膜条件を以下に示す。
(成膜時の真空度)
高屈折率膜H(TiO):1.3×10−2Pa
低屈折率膜L(SiO):4.0×10−3Pa
(成膜時の透明基板温度)
透明基板の温度は、190℃とした。
(成膜速度)
高屈折率膜H(TiO):4Å/S(オングストローム/秒)
低屈折率膜L(SiO):6Å/S(オングストローム/秒)
表3に、比較例1において、透明基板の表面(主面S1)に形成した光学多層膜の膜条件(膜構成、膜材質、物理膜厚)を示す。
Figure 0006269665
表3に示すように、比較例1においては、透明基板に対する密着性を向上するために、混合物αからなる膜X1(密着力強化層)を透明基板の表面に加熱蒸着法で形成した。そして、リップルを抑制するために、TiO膜Y1とSiO膜Y2とのそれぞれを、混合物αからなる膜X1を介して、透明基板の表面に加熱蒸着法で順次形成した。その後、高屈折率膜Hと低屈折率膜Lとの組み合わせを基本単位とし、この基本単位で繰り返し成膜を行うことによって光学多層膜を透明基板の表面に形成した。つまり、比較例1では、低屈折率膜Lのうち、低屈折率膜Lと高屈折率膜Hとの界面に近い部分には、密度が低い部分が形成されておらず、低屈折率膜L全体が同じ密度になるように形成されている。
図8は、比較例1に係るIRCFの分光特性の結果を示す図である。図8において、縦軸は透過率を示し、横軸は波長を示している。なお、図8のうち、鎖線はPCT前の分光特性を示し、実線はPCT後の分光特性を示している。図8に示すように、比較例1では、PCTの実施前後において、分光特性がかなり変化している。また、比較例1では、PCT後の透過率がPCT前の透過率よりも減少しているので、PCT後にヘイズが発生している。なお、比較例1では、高温加熱によって、膜クラックが発生することは、確認されなかった。
(比較例2)
比較例2では、透明基板の表面(主面S1)に高屈折率膜Hと低屈折率膜Lとを交互に積層した光学多層膜を設けると共に、透明基板の裏面(主面S2)に6層からなる反射防止膜(AR)を設けることによって、IRCFを形成した。そして、そのIRCFについて、PCT(プレッシャークッカーテスト)後の分光特性を測定した。
比較例2の成膜条件を以下に示す。
(成膜時の真空度)
高屈折率膜H(TiO):1.3×10−2Pa
低屈折率膜L(SiO):6.5×10−3Pa
(成膜時の透明基板温度)
透明基板の温度は、190℃とした。
(成膜速度)
高屈折率膜H(TiO):4Å/S(オングストローム/秒)
低屈折率膜L(SiO):6Å/S(オングストローム/秒)
なお、比較例2の膜条件は、低屈折率膜Lの成膜時の真空度以外、比較例1の膜条件と同じである。
比較例2において、光学多層膜は、比較例1と同様に、高屈折率膜Hと低屈折率膜Lとの組み合わせを基本単位とし、この基本単位を繰り返すことによって構成されている。つまり、比較例2では、低屈折率膜Lのうち低屈折率膜Lと高屈折率膜Hとの界面に近い部分には、密度が低い部分が形成されていない。低屈折率膜Lは、実施例1に示した第1の低屈折率膜L1と同様に、密度が低い膜のみで構成されている。
図9は、比較例2に係るIRCFの分光特性を示す図である。図9において、縦軸は透過率を示し、横軸は波長を示している。なお、図9のうち、鎖線はPCT前の分光特性を示し、実線はPCT後の分光特性を示している。図9に示すように、比較例2では、PCTの実施前後において、分光特性がほとんど変化していない。また、比較例2では、ヘイズの発生も確認されなかった。しかしながら、比較例2では、高温加熱時に、光学多層膜に膜クラックが発生した。
(エッチングによる浸食の評価)
実施例2及び比較例1の場合と構成が同じ光学多層膜について、断面をフッ素でエッチングした。そして、その断面において、エッチングによって低屈折率膜L(SiO)が浸食されたか否かの確認を行った。具体的には、上記の光学多層膜について純水で超音波洗浄を30秒行った後、濃度が0.25%であるHF(フッ化水素)溶液に、15秒浸すことによって、上記のエッチングを行った。
図10は、実施例2の場合と構成が同じ光学多層膜について、エッチングを行った後に撮影されたSEM画像を示している。図10に示すように、実施例2の場合と構成が同じ光学多層膜では、低屈折率膜Lのうち、高屈折率膜Hとの界面に近い部分が集中的に浸食している。これから判るように、実施例2において、低屈折率膜Lは、中心部領域に比べて、高屈折率膜Hとの界面に近い部分の方が、密度が低くなっている。
なお、実施例1では、実施例2と同一の成膜条件で、第1の低屈折率膜L1と第2の低屈折率膜L2と高屈折率膜Hとを形成している。そのため、実施例2と同様に、実施例1では、低屈折率膜Lは、中心部領域に比べて、高屈折率膜Hとの界面に近い部分の方が、密度が低くなると考えられる。
図11は、比較例1の場合と構成が同じ光学多層膜について、エッチングを行った後に撮影されたSEM画像を示している。図11に示すように、比較例1の場合と構成が同じ光学多層膜では、低屈折率膜L全体が略均一にエッチングされている。これから判るように、低屈折率膜Lの中心部領域と、低屈折率膜Lと高屈折率膜Hとの界面に近い部分との間においては、密度が同様であって、違いがほとんどない。
なお、比較例2では、比較例1と同一の成膜条件で低屈折率膜Lを形成している。そのため、比較例1と同様に、比較例2では、低屈折率膜Lの中心部領域と、低屈折率膜Lと高屈折率膜Hとの界面に近い部分との間においては、密度が同様であって、違いがほとんどないと考えられる。
以上のように、低屈折率膜のうち高屈折率膜との界面に近い部分の密度が、他の部分よりも密度が低くすることによって、PCTの実施で光学多層膜の分光特性が劣化することを抑制可能である。これと共に、ヘイズの発生および膜クラックの発生を低減することができる。すなわち、耐候性に優れる光学フィルタ及びその光学フィルタの製造方法を提供できる。
上記のように、上記の光学フィルタ及び光学フィルタの製造方法は、PCTの実施で光学多層膜の分光特性が劣化することを低減できると共に、ヘイズおよび膜クラックの発生を低減できる。このため、上記の光学フィルタは、耐候性が要求される用途で好適に使用できる。例えば、上記の光学フィルタは、デジタルカメラやデジタルビデオ等の固体撮像素子(例えば、CCDイメージセンサやCMOSイメージセンサ等)において、分光を補正する用途で好適に使用できる。
100…近赤外線カットフィルタ、110…透明基板、120…光学多層膜、200…撮像装置、210…固体撮像素子、220…カバーガラス、230…レンズ群、231〜234…レンズ、250…筐体、H…高屈折率膜、L…低屈折率膜、L1…第1の低屈折率膜、L2…第2の低屈折率膜、S1,S2…主面。

Claims (14)

  1. 透明基板と、
    前記透明基板の面に設けられている光学多層膜と
    を備え、
    前記光学多層膜では、酸化珪素(SiO)を含有する低屈折率膜と、前記低屈折率膜よりも屈折率の高い高屈折率膜とが交互に積層しており、
    前記低屈折率膜は、前記低屈折率膜と前記高屈折率膜との界面に近い部分の密度が、前記界面に近い部分以外の部分の密度よりも低いことを特徴とする光学フィルタ。
  2. 前記低屈折率膜は、
    前記高屈折率膜上に積層された第1の低屈折率膜と、
    前記第1の低屈折率膜上に積層され、前記第1の低屈折率膜よりも密度が高い第2の低屈折率膜と
    を有することを特徴とする請求項1に記載の光学フィルタ。
  3. 前記低屈折率膜は、前記透明基板の面に対して垂直な方向において、前記高屈折率膜との界面から離れるに従い密度が高くなっていることを特徴とする
    請求項1に記載の光学フィルタ。
  4. 前記第1の低屈折率膜は、物理膜厚が3nm以上であり、かつ、前記低屈折率膜の物理膜厚の半分以下であることを特徴とする請求項2に記載の光学フィルタ。
  5. 前記高屈折率膜は、チタン(Ti)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)からなる群から選択される材料の酸化物を含むことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の光学フィルタ。
  6. 前記光学多層膜は、真空蒸着により形成されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の光学フィルタ。
  7. 近赤外線カットフィルタであることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の光学フィルタ。
  8. 前記透明基板は、フツリン酸ガラスであることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の光学フィルタ。
  9. 透明基板の面に、酸化珪素(SiO)を含有する低屈折率膜と、前記低屈折率膜よりも屈折率が高い高屈折率膜とを交互に積層することによって、光学多層膜を形成する工程
    を有し、
    前記光学多層膜を形成する工程では、前記低屈折率膜のうち前記低屈折率膜と前記高屈折率膜との界面に近い部分の密度が、前記界面に近い部分以外の部分の密度よりも低くなるように、前記低屈折率膜を形成することを特徴とする光学フィルタの製造方法。
  10. 前記光学多層膜を形成する工程では、
    前記高屈折率膜上に第1の低屈折率膜を積層する工程と、
    前記第1の低屈折率膜上に前記第1の低屈折率膜よりも密度が高い第2の低屈折率膜を積層する工程と
    を行うことによって、前記低屈折率膜を形成することを特徴とする請求項9に記載の光学フィルタの製造方法。
  11. 前記光学多層膜を形成する工程では、
    前記透明基板の面に対して垂直な方向において前記低屈折率膜が前記高屈折率膜との界面から離れるに従って前記低屈折率膜の密度が高くなるように、前記低屈折率膜を形成することを特徴とする請求項9に記載の光学フィルタの製造方法。
  12. 前記光学多層膜を形成する工程では、
    成膜チャンバ内の真空度を制御することで、前記低屈折率膜の密度を制御することを特徴とする請求項9から請求項11のいずれか1項に記載の光学フィルタの製造方法。
  13. 前記光学多層膜を形成する工程では、
    前記成膜チャンバ内へ導入する酸素ガスの流量を制御することで、前記低屈折率膜の密度を制御することを特徴とする請求項12に記載の光学フィルタの製造方法。
  14. 前記光学多層膜を形成する工程では、
    前記光学多層膜を真空蒸着によって形成することを特徴とする請求項9から請求項13のいずれか1項に記載の光学フィルタの製造方法。
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