JP4701079B2 - 塗膜形成装置 - Google Patents
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Description
しかしながら、被処理物に対してプライマー処理や塗装処理を行う場合、その乾燥、硬化のためには、被処理物を、スピンドルから一旦取り外して、別途準備した加熱炉内に収容して、プライマー層を形成しなければならなかった。次いで、被処理物に対して塗装処理を行う場合、プライマー層を形成した被処理物を、再びスピンドルに取り付けた後、当該スピンドルを回転させながら、塗装装置(図示せず)を用いて、装飾処理を行う必要があった。そして、硬化塗膜を得るためには、装飾処理した被処理物を、スピンドルから一旦取り外して、再び加熱炉内に収容しなければならなかった。
したがって、従来の塗膜形成装置および被処理物の装飾方法を用いた場合には、被処理物を、スピンドルに対して、何度も装着したり、取り外したりしなければならず、被処理物の生産効率(処理効率)が極めて低いという問題が見られた。
より具体的には、図14に示すように、被塗装物搬送用コンベヤ装置200は、一対の上下レール212a、212bと、搬送台車213と、この搬送台車213を走行させるための側面駆動用のコンベヤチェーン214とからなり、搬送台車213は上レール212a上を走行するように構成されている。また、コンベヤチェーン214は、上下レール212a、212bの側方に沿って、除塵室(P2)および塗装ブース(P3)を含む塗装ラインを矢印に沿って、周回走行する。そして、搬送台車213はコンベヤチェーン214に設けられた係合プレート(図示せず)が、横側方から係合することにより、押送されて進行する。すなわち、図示しないものの、二つの主車輪が前後に配置されており、下レール12bの両側面に接触するようにガイド部材であるガイドローラが前後に配置されている。
また、かかる被処理物搬送用コンベヤ装置200においては、コンベヤチェーン214と、搬送台車213と、が取り外し可能に構成されていないために、被処理物に対して複数処理を実行するためには、搬送台車213から被処理物を取り外したり、被処理物を再び載置したりする作業が、繰り返し必要であるという問題が見られた。
さらに、かかる被処理物搬送用コンベヤ装置200においては、被処理物を搬送台車213に載置するだけであって、被処理物の回転機構が備わっていないため、被処理物を回転させながら、均一に塗装等の表面処理を行なうことが困難であるという問題が見られた。
すなわち、本発明の目的は、所定の搬送装置と、赤外線照射装置と、紫外線照射装置と、を備えた塗膜形成装置であって、搬送装置が、複数の搬送装置(第1の搬送装置と、第2の搬送装置)を備えるとともに、それぞれにスピンドルを有する長尺物と、長尺台車と、移動手段と、をさらに備えることにより、簡易かつ小型な構造であっても、複数の被処理物に対して、同時かつ迅速に塗膜を形成できる塗膜形成装置を提供することにある。
すなわち、このように塗膜形成装置を構成することにより、簡易かつ小型な構造であっても、複数の被処理物に対して、紫外線硬化樹脂の乾燥工程および硬化工程を経て、同時かつ迅速に、紫外線硬化樹脂からなる塗膜を形成することができる、
また、被処理物を取り付けたスピンドルを有する長尺物が、長尺台車に対して取り外し可能に構成してあることから、被処理物に対して、次工程の処理を実施するたびに、長尺物と一緒に、被処理物を移動したり、処理したりすることができる。すなわち、被処理物を長尺物のスピンドルから取り外す工程が不要になるとともに、被処理物の取り扱いにおける損傷等のおそれも少なくなって、結果として、被処理物の生産効率を極めて高めることができる。
さらにまた、第1の搬送装置および第2の搬送装置の側方に、スピンドルを磁気回転させるための磁石を備えることにより、スピンドルを回転駆動させるためのモーターや電気配線等を備えることなく、磁力によって回転させることが可能となる。
このように構成することにより、塗膜形成装置をより簡易化および小型化できるとともに、複数の被処理物の処理速度を一致させることができる。
このように構成することにより、長尺台車が水平移動する際、及び長尺台車が反転する際において発生する振動及び揺れ等を効果的に防止することができる。
このように構成することにより、紫外線硬化樹脂が塗布された被処理物を効果的に加熱して、有機溶媒等を迅速に除去することができる。
このように構成することにより、被処理物の表面あるいは内面における紫外線硬化樹脂を効果的かつ安定的に紫外線硬化することができる。
このように構成することにより、長尺台車に対する、被処理物を取り付けたスピンドルを有する長尺物の取り付けが容易かつ迅速になるためである。すなわち、長尺台車が一つの場合であっても、被処理物を取り付けたスピンドルを有する複数の長尺物を、所定期間内に載置することができる。
第1の実施形態は、紫外線硬化樹脂が塗布された被処理物を搬送するための搬送装置と、被処理物における紫外線硬化樹脂を乾燥させるための赤外線照射装置と、被処理物における紫外線硬化樹脂を硬化させるための紫外線照射装置と、を備えた塗膜形成装置であって、搬送装置が、第1の搬送装置と、第2の搬送装置と、を含んでおり、それぞれ被処理物を回転支持するためのスピンドルを有する長尺物と、当該長尺物を取り外し可能に載置する長尺台車と、当該長尺台車を水平移動させるための移動手段と、を備え、第1の搬送装置および第2の搬送装置の側方に、スピンドルを磁気回転させるための磁石を備えてあり、第1の搬送装置および第2の搬送装置における移動手段が、縦回転の2つのコンベヤチェーンを進行方向に並列して配置したものであり、かつ、長尺台車がコンベヤチェーンに固定されているとともに、長尺物を第1の搬送装置および第2の搬送装置に載置する位置、並びに、長尺物を第1の搬送装置および第2の搬送装置から分離する位置において、長尺台車を反転させて方向転換することを特徴とする塗膜形成装置である。
以下、図1〜図12を適宜参照して、第1の実施形態の塗膜形成装置70について、具体的に説明する。
図1および図2に示すように、本発明の塗膜形成装置70は、紫外線硬化樹脂が塗布された被処理物30を搬送するための搬送装置1と、被処理物における紫外線硬化樹脂を乾燥させるための赤外線装置2と、被処理物30に塗布した紫外線硬化樹脂を硬化させるための紫外線照射装置3と、を備えた塗膜形成装置70である。すなわち、塗膜形成装置70において、搬送装置1が、所定の第1の搬送装置1aと、第2の搬送装置1bと、を含んでいることを特徴とする。
ここで、図1に示すように、塗膜形成装置70におけるA部は、被処理物30を回転支持するためのスピンドル18を備えた長尺物16を方向Eに水平移動させるための移動手段11に対して載置する工程が行われることを意味している。なお、移動手段11は、モーター等に対して直接的もしくは間接的に接続されたギア等から構成され、図1上、左右に配置された回転手段15a、15bによって、所定速度で移動している。
次いで、塗膜形成装置70におけるB部は、赤外線照射装置2によって、搬送されてきた被処理物の紫外線硬化樹脂における有機溶媒を乾燥させる工程が行われることを意味している。したがって、塗布した紫外線硬化樹脂から蒸発した有機溶媒や低分子量物を、塗膜形成装置70の系外に排気するための排気ポンプ5aおよび排気管5bからなる排気設備5が、塗膜形成装置70の上方に設けられている。なお、蒸発した有機溶媒や低分子量物の排気のための流れ方向を矢印Fで示している。
次いで、塗膜形成装置70におけるC部は、搬送されてきた被処理物の紫外線硬化樹脂を、紫外線照射装置3によって硬化させる工程が行われることを意味している。
最後に、塗膜形成装置70におけるD部は、紫外線照射装置3によって硬化されて、所定の塗膜が形成された被処理物30が載置された長尺物16を自動的に搬送装置1(1a、1b)から分離する工程が行われることを意味している。
以下、本発明の塗膜形成装置70に関して、構成要素ごとに説明する。
図3に示すように、搬送装置1は、長尺台車10と、当該長尺台車10に対して取り外し可能に載置された、被処理物30を回転支持するためのスピンドル18を有する長尺物16と、当該長尺台車10を水平移動させるための移動手段11とを備えている。
また、搬送装置1において、被処理物30を回転支持するためのスピンドル18を有する長尺物16を取り外し可能となるように、第1の長尺物載置部10cと、第2の長尺物載置部10c´´と、を含む長尺台車10を備えることが好ましい。
すなわち、図3に示すように、長尺物16に、それぞれ第1の長尺物載置部10cと、第2の長尺物載置部10c´´と係合するための先端部16aおよび後端部16bを備えることが好ましい。
この理由は、このように構成することにより、被処理物30を取り付けたスピンドル18を有する長尺物16を安定的に搬送することができる一方、当該長尺物16の取り外しについても容易になるためである。また、第1の長尺物載置部10cと、第2の長尺物載置部10c´´と、の間の距離を容易に可変とすることができ、各種態様の長尺物16に対応することができる。
したがって、長尺物16の先端部16aおよび後端部16bを、例えば溝状の第1の長尺物載置部10cと、第2の長尺物載置部10c´´にそれぞれ圧入するだけで、長尺物16を、長尺台車10から取り外し可能に載置することができる。よって、次工程の処理を実施するたびに、被処理物30を、スピンドル18から取り外す必要がなくなり、すなわち、被処理物30を長尺物16とともに安定的に移動等して、処理することができるのである。よって、被処理物30の取り扱いが容易になるとともに、被処理物30の生産効率を極めて高めることができる。
この理由は、このように構成することにより、塗膜形成装置をより簡易化および小型化できるとともに、複数の被処理物の処理速度を正確に一致させることができるためである。
すなわち、第1の搬送装置1aと、第2の搬送装置1bにおけるそれぞれの移動手段11を用いて共通の長尺台車10dを用いて移動させることとなるため、搬送装置1の構造を簡易化および小型化できるためである。
一方、第1の搬送装置1aおよび第2の搬送装置1bにおける振動等を有効に防止することができ、複数の被処理物30に対して安定して塗膜形成処理を施すことができるためである。
この理由は、このような構成にすることにより、第1の搬送装置1a´と、第2の搬送装置1b´において、それぞれ異なる塗膜の乾燥及び硬化条件が異なる被処理物を処理することができるためである。すなわち、第1の搬送装置1a´及び第2の搬送装置1b´における搬送速度や、後述する赤外線照射装置及び紫外線照射装置における露光エネルギーや当該装置の数及び配置等をそれぞれ調整することによって、同時に異なった形態の塗膜形成処理をすることができるためである。
この理由は、このように構成することにより、長尺台車10と、搬送安定化手段12とが相俟って動作し、搬送安定化手段12によって、長尺台車10が水平移動する際や反転する際において発生する振動及び揺れ等を効果的に防止することができるためである。また、長尺台車10の全体形状を考慮することにより、搬送安定化手段12と、当該長尺台車10との接触面積が大きくなって、搬送安定化手段12によって、長尺台車10が上下左右、及び前後に揺れたり、振動することを効果的に抑制したりすることができるためである。
すなわち、搬送安定化手段12が、長尺台車10が水平移動する際には、振動または移動手段における撓み等の影響を抑制し、安定的に水平移動できるためである。一方、搬送安定化手段12が、長尺台車10が反転する際には、反転後に水平移動に移行する際の反動による揺れ等の発生を防止することができるため、長尺物16を長尺台車10に対して、安定的に載置することができるためである。
また、図示しないものの、長尺台車10と、搬送安定化手段12との接触面において、長尺台車10または搬送安定化手段12の両方、あるいはいずれか一方に対して、フッ素樹脂やオレフィン樹脂等からなる滑層やボールベアリング等の滑部材を設けることも好ましい。
この理由は、長尺台車10、及び搬送安定化手段12がそれぞれ金属から構成されている場合、かかる金属同士の摩擦によって金属粉が飛散したり、振動が生じたりする場合があるためである。よって、ボールベアリング等によって、かかる長尺台車と搬送安定化手段との間の摩擦をさらに抑制することがより好ましい。
この理由は、このように構成することにより、被処理物30を取り付けたスピンドル18を有する長尺物16を搬送する際の安定性を向上させることができる一方、長尺台車を反転させる際における長尺物の取り外しについても容易になるためである。
すなわち、長尺台車10がコンベアチェーン等に固定されている場合であっても、長尺台車10が水平方向に移動している場合であれば、十分な安定性を確保できるためである。一方で、長尺台車10を反転させる際にも、コンベアチェーン等の可動範囲を狭めることなく、円滑に長尺台車10を反転させることができ、かつ、反転させる際の回転半径をより小さくすることで、塗膜形成装置の小型化にさらに寄与することができるためである。さらには、反転させる際の回転半径を十分に小さくすることができるため、反転速度を十分に大きくすることができるためである。よって、塗膜形成処理後の被処理物30が載置された長尺物16を、確実、かつ自動的に長尺台車10から分離することができる。
なお、長尺物16の先端部が係合する第1の長尺物載置部10cと、その前を走行する別の長尺物16の後端部が係合する第2の長尺物載置部10c´とが、実質的に連結するとは、直接または間接的に接触する状態を意味している。したがって、例えば、第1の長尺物載置部10cと、その前を走行する別の長尺物の後端部が係合する第2の長尺物載置部10c´とが圧接した状態であっても良く、あるいは連結部材によって強固に接触した状態であっても良い。
また、搬送装置において、図5に示すように、長尺物16は、被処理物30を取り付けるためのスピンドル18を有していることを特徴とする。
この理由は、図5に示すように、被処理物30、例えば、ガラス容器、樹脂成形品、キャップ類、携帯電話部品、携帯電話筐体等をスピンドル18およびその先端に設けた圧入部20を介して、長尺物16に強固に取り付けることができるためである。したがって、かかる長尺物16と、第1の長尺物載置部10cおよび第2の長尺物載置部10c´´において係合する長尺台車10とともに、移動手段11によって、所定方向に安定的に搬送することができる。
また、図5に示すような、複数枚の羽型からなる圧入部20であれば、被処理物30の間で内径等の相違があっても、長尺物16に対して、わずかな力で挿入することができる。一方、挿入した後は、複数枚の羽型の圧入部20が外側に向かって開き、加熱炉等において温度変化が生じたとしても、被処理物30を、ほぼ一定の力で長尺物16に対して押圧し、抜け防止を図ることができる。
なお、かかる長尺物16の形態は、棒状であっても、平板状であっても良いが、被処理物30を加熱等する際にも劣化しないように、鉄や銅等の金属や軽量セラミック、あるいは耐熱性樹脂等から構成してあることが好ましい。
この理由は、かかる長尺物の長さをこのような範囲内の値とすることにより、被処理物の搬送効率や処理速度とのバランスをさらに良好なものとすることができるためである。
すなわち、長尺物の長さ、すなわち、先端部16aと、後端部16bとの間の距離が20mm未満の値になると、設けられるスピンドルの数が減少し、そのために、一回の処理に適用できる被処理物の数が低下し、生産効率が低下する場合があるためである。
一方、長尺物の長さが2,000mm超になると、複数の長尺物を実質的に同時に取り扱うことが困難になる場合があるためである。
したがって、かかる長尺物の長さを40〜1,000mmの範囲内の値とすることがより好ましく、60〜800mmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
この理由は、スピンドル18に取り付けた被処理物30の表面に均一に塗膜形成するためである。
例えば、回転手段22を鉄等の容易に磁化する材料物質から構成することにより、スピンドル18に対して、特にモーター等の動力を備えることなく、磁力によって回転させることが可能になる。すなわち、かかるスピンドルの構造であれば、簡易であって、かつ軽量なためである。逆に、モーター等を備えた場合には、その重量が増加し、生産効率が低下するためである。また、モーター等を備えた場合には、紫外線照射によって、モーター等における可動部の潤滑剤が硬化しやすい等の不具合が生じ易いためである。
なお、モーター以外の別の回転手段として、図6(b)に示すように、磁石を含んだ回転手段22´を用いることもできる。
この理由は、このように構成することにより、一対のベルト24a、24bを、スピンドル18の回転手段22に対して所定圧力で接触させた状態で回転させ、それに対応させて被処理物を回転させながら、硬化塗膜の形成を均一かつ安定的に実施することができるためである。
また、一対のベルト24a、24bを介して、スピンドル18を間接的に回転させることにより、紫外線照射等の影響を排除して、紫外線を十分遮蔽することができ、その結果、駆動体としてのベルト24a、24bの耐久性を飛躍的に伸ばすことができるためである。
また、搬送装置を用いて搬送する被処理物としては、図8(a)〜(c)に示すような塗装処理したガラス容器40、50、50´や、樹脂成形品が典型的である。但し、図8(a)においては、塗装処理前のガラス容器の外形が明確になるように、塗膜を省略したガラス容器のみを示している。
したがって、塗装処理前のガラス容器の種類としては、例えば、塗装処理した化粧ビンや薬用ビン等のガラス容器の用途に対応させて、ボトルネック型のガラスビン、矩形状のガラスビン、円筒状のガラスビン、異形のガラスビン、矩形状のガラス箱、円筒状のガラス箱、異形のガラス箱、あるいは携帯用筐体、蓋類、さらには各種成形品等が挙げられる。
また、塗装処理前のガラス容器や樹脂成形品の形状に関して、外周部に沿って肉厚部を設けたり、あるいは外周部の一部に面取り部を設けたりすることも好ましい。
この理由は、このようなガラス容器や樹脂成形品であれば、硬化塗膜を部分的に形成した後にガラス容器を正面から眺めた場合に、外周部の肉厚部や面取り部において光が集光し、より鮮明かつ複雑な色を観察することができるためである。
(4)−1 形態
また、搬送装置1において、移動手段11の形態は特に制限されるものではないが、例えば、図1に示すように、コンベヤチェーン(ベルトコンベヤを含む。)であることが好ましい。
この理由は、かかるコンベヤチェーン11を周回動作させながら、長尺物16のスピンドル18に取り付けた被処理物30に対して、塗膜形成を行うことにより、塗膜形成装置1の小型化を図ることができるとともに、均一に塗装処理等を実施することができるためである。
また、かかるコンベヤチェーン11であれば、所定の耐久性も得ることができるためである。
また、かかるコンベヤチェーン11の回転方向としては、縦回転であることが好ましい。
この理由は、本発明が、第1の搬送装置1aと第2の搬送装置1bとを備えることを特徴とする塗膜形成装置1であることから、図2に示すように、かかる縦回転の2つのコンベヤチェーン11を進行方向(搬送方向)に並列して配置することが有効なためである。
すなわち、2つのコンベヤチェーン11の回転方向及び配置を考慮することによって、図2に示すように、第1の搬送装置1a及び第2の搬送装置1bにおけるそれぞれの長尺台車10が、共通した長尺台車10dを備えることが容易になるためである。さらに、コンベヤチェーン11の回転方向を縦回転とすることによって、長尺台車10が反転する際に、自動的、かつ確実に長尺物16を長尺台車10から取り外すことができるようになるためである。
この理由は、コンベヤチェーン11の可動部分における潤滑油が、照射される赤外線及び紫外線の影響で容易に劣化し、コンベヤチェーン11の安定的な動作を継続的に維持することが困難となる場合があるためである。
すなわち、コンベヤチェーン11に対する長尺台車10の配置を塗膜形成装置の中心方向ずらし、かつ遮光手段13を備えることによって、赤外線、及び紫外線が、コンベヤチェーン11に対して、直接的に照射されることを防止することができるため、コンベヤチェーン11における潤滑油の劣化を効果的に抑制することができるためである。
また、移動手段11としてのコンベヤチェーンの回転速度を2〜20m/minの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかるコンベヤチェーンの回転速度が2m/min未満の値となると、塗膜形成効率が低下するおそれがあるためである。また、赤外線及び紫外線の露光量を好適な範囲内に調整することが困難となり、安定して塗膜形成処理を実施することが困難となる場合があるためである。一方、かかるコンベヤチェーンの回転速度が20m/minを超えた値となると、赤外線及び紫外線の露光量を好適な範囲内に調整することが困難となる場合があるのみならず、コンベヤチェーンの移動により生じる空気の流れによる埃の飛散、及び振動等が起こり易くなる場合があるためである。
したがって、移動手段11としてのコンベヤチェーンの回転速度を5〜15m/minの範囲内の値とすることがより好ましく、8〜12m/minの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
また、塗膜形成装置70を構成するにあたり、図9(a)及び(b)に示すように、テーパ状の導入口61aを含む導入部材60を備えることが好ましい。すなわち、第1の搬送装置および第2の搬送装置の先端部と、それぞれに載置する長尺物との間の位置合わせを容易にするための、テーパ状の導入口61aを含む導入部材60を備えることが好ましい。
この理由は、かかるテーパ状の導入口61a及び直線部61bからなる導入部材60を設けることによって、手動であっても、長尺物を長尺台車における第1の長尺物載置部に対して、正確に載置することができるためである。
したがって、かかるテーパ状の導入口61aを含む導入部材60が備えられている場合、作業者は、長尺物をテーパ状の導入口の底面に対して接触させた状態で、テーパ状の側壁に沿って前方に挿入することができる。この時、長尺物の挿入方向が多少曲がっていたとしても、長尺物の先端部を確実に挿入することができる。次いで、進方向に沿って、実質的に直線状の直線部が設けてあるため、長尺物の挿入方向を修正して、反転後水平移動に移行した状態の第1の長尺物載置部における溝に対して、確実に長尺物を載置することができる。
一方、かかるテーパ状の導入口がない場合には、移動している第1の長尺物載置部における溝に対して、手動で長尺物の先端部分を載置することは、非常に注意力を要求される作業であり、長時間にわたって継続的に行うことが困難となる場合がある。
なお、図9(a)及び(b)に、直線部の長さ(l1)と、テーパ部の長さ(l2)と、導入部材60の長さ(l3)を示すが、一例ではあるが、l1は10〜75cm、l2は10〜75cm、l3は20〜150cmの範囲内の値であることがそれぞれ好ましい。
また、図10に示すように、赤外線照射装置2を備えることが好ましい。すなわち、赤外線照射装置2が、第1の搬送装置1aおよび第2の搬送装置1bの少なくとも側方に設けてあることが好ましい。ここで、図10(a)は、塗膜形成装置70を上方から見た概略平面図であり、図10(b)は、塗膜形成装置70の進行方向に沿って垂直方向に切断した場合の概略断面図である。
かかる赤外線照射装置2によれば、紫外線硬化樹脂が塗布された被処理物30を効果的に加熱して、有機溶媒等を迅速に除去することができる。
また、図10に示すように、搬送装置の進行方向に沿って、複数の赤外線照射装置2(2a、2b)を配置することが好ましい。また、塗膜形成装置の入り口から塗膜形成装置の内部に向かうにしたがって、段階的に赤外線の強度を強めるように配置することが好ましい。
この理由は、複数の赤外線照射装置2(2a、2b)によって、塗膜における有機溶媒等を段階的に蒸発させることによって、効率的に塗膜における有機溶媒等を除去することができるためである。
すなわち、塗膜に対して、最初から強い強度の赤外線を照射すると、塗膜表面に膜が形成され、塗膜内部に残留している有機溶媒等の蒸発が妨げられ、拡散律束となるおそれがあるためである。一方、最後まで弱い強度の赤外線を照射した場合には、塗膜における有機溶媒を蒸発させるために過度の時間が必要となり、効率的に被処理物に対して塗膜を形成することが困難となる場合があるためである。
なお、かかる赤外線照射装置2としては、遠赤外線照射装置であることがより好ましい。
この理由は、例えば、波長が4〜1000μmの遠赤外線を使用することにより、被処理物がガラス容器等であっても、ガラス容器等の表面まで届いて、塗膜内部に残留している有機溶媒等を確実に除去することができるためである。
また、図11〜12に示すように、紫外線照射装置3を備えることが好ましい。すなわち、かかる紫外線照射装置3が、進行方向に沿って、赤外線照射装置2の後方であって、第1の搬送装置1aおよび第2の搬送装置1bの側方及びこれらの上方に設けてあることが好ましい。
この理由は、このように構成することにより、被処理物30の表面あるいは内面における紫外線硬化樹脂を効果的かつ安定的に紫外線硬化することができるためである。
例えば、図11に示すような紫外線照射装置11の直列的配置であれば、比較的小さな被処理物における塗膜を効果的に硬化させることができるためである。すなわち、第1の搬送装置1a、及び第2の搬送装置1bのそれぞれにおいて搬送されている比較的小さな被処理物30に対して、均一に紫外線を照射することができる。
また、図12に示すような紫外線照射装置3の横断的配置であれば、幅が大きな被処理物30であっても、その表面に対して、塗膜を均一かつ効果的に形成させることができる。
(1)紫外線硬化樹脂の塗布工程
(1)−1 前処理工程
また、図8(b)〜(c)に示すように、ガラス容器40の表面に下地層(プライマー層)51、51´を、全面的または部分的に備えて、ガラス容器40と、硬化性組成物からなる硬化塗膜53との間の密着性を高めることが好ましい。
より具体的には、下地層の構成材料として、ポリシロキサン系樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、グアナミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、およびこれらの誘導体を含む熱硬化性組成物や紫外線硬化性組成物を用いることが好ましい。
特に、ポリシロキサン系の下地層を備えることにより、硬化塗膜の硬さを所望範囲内の値に容易に調整することができ、ガラス容器と、硬化塗膜との間の剥離を有効に防止することができる。
また、下地層の構成材料として、メラミン樹脂等に、ポリオール化合物、例えば、ヒドロキシル基含有アクリル樹脂、ヒドロキシル基含有エポキシ樹脂、ヒドロキシル基含有ポリエステル樹脂、ヒドロキシル基含有ウレタン樹脂等を反応させて構成したポリオール変性ホルムアルデヒド系樹脂を使用することも好ましい。
この理由は、このようなポリオール変性ホルムアルデヒド系樹脂を使用することにより、ガラスに対する密着力を向上させるとともに、硬化塗膜の平滑性や薄膜性をより向上させることができるためである。
塗装処理工程においては、図7に示すようにベルト24を用いて、スピンドル18を回転させながら、それに装着された被処理物であるガラス容器40を回転移動させながら、塗装処理等を実施することが好ましい。
すなわち、塗装装置を用いて、紫外線硬化性組成物からなる塗布液を、複数個のガラス容器に対して吹きつけ、同時塗布することが好ましい。
ここで、紫外線硬化性組成物の塗布方法は、特に限定されないものの、例えば、静電塗装法、電着塗装法、ロールコーター法、エアースプレー法、エアレススプレー法、カーテンフローコーター法等を挙げることができる。
そして、これらの塗布方法のうち、より薄膜化が可能で、ガラスの曲面にも均一に塗布することができる一方、塗布装置の構造も簡易であることから、静電塗装法やエアースプレー法を用いることがより好ましい。
特に、主剤として、ポリシロキサン系樹脂を含むことにより、硬化塗膜の硬さを所望範囲内の値に容易に調整することができるとともに、耐水性や耐熱性についても向上できることから好ましい樹脂である。
また、紫外線硬化性組成物として、メラミン樹脂等に、ポリオール化合物、例えば、ヒドロキシル基含有アクリル樹脂、ヒドロキシル基含有エポキシ樹脂、ヒドロキシル基含有ポリエステル樹脂、ヒドロキシル基含有ウレタン樹脂等を反応させて構成したポリオール変性ホルムアルデヒド系樹脂を含むことにより、ガラス容器に対する密着力を向上させるとともに、硬化塗膜の平滑性や薄膜性をより向上させることができる。より具体的には、メラミン樹脂100重量部に対して、アクリルポリオール化合物を50〜300重量部、ラクトンポリオール化合物を5〜100重量部の範囲でそれぞれ配合することが好ましい。
また、赤外線照射装置を用いた紫外線硬化樹脂の乾燥工程としては、通常、140℃〜250℃、30〜120秒の条件で行うことが好ましい。
この理由は、かかる条件であれば、均一かつ効率的に被処理物の塗膜における有機溶媒等を蒸発させることができるためである。より具体的には、移動手段としてのコンベヤチェーンにおける安定した運転が可能である回転速度、赤外線照射装置の配置、その配置数、照射エネルギー及び被処理物における表面積等と相俟って、好適に紫外線硬化樹脂の乾燥工程を実施することができるためである。
したがって、赤外線照射装置を用いた紫外線硬化樹脂の乾燥工程は、150℃〜230℃、45〜100秒の条件で行うことがより好ましく、160℃〜220℃、60〜80秒の条件で行うことがさらに好ましい。
また、紫外線硬化樹脂の硬化工程において、通常、紫外線の露光量を50〜1,000mJ/cm2の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる紫外線の露光量であれば、均一かつ効率的に被処理物の塗膜としての紫外線硬化樹脂を硬化することができるためである。より具体的には、上述してきたような、移動手段としてのコンベヤチェーンにおける、安定した運転が可能である回転速度、紫外線照射装置の配置、その配置数、及び一般的な被処理物における表面積等と相俟って、好適に紫外線硬化樹脂の硬化工程を実施することができるためである。
また、このような紫外線の露光量であれば、コンベヤチェーンにおける潤滑油や、長尺台車の下方に備えられた搬送安定化手段上に形成された樹脂層等が、かかる紫外線によって著しく劣化することを防止することができるためである。
したがって、かかる紫外線の露光量を100〜700mJ/cm2の範囲内の値とすることがより好ましく、200〜600mJ/cm2の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
この理由は、かかる硬化塗膜の厚さが1μm未満の値になると、強度が不足して、ガラス容器の表面から容易に剥離したり、均一に形成することが困難となったりする場合があるためである。一方、かかる硬化塗膜の厚さが100μmを超えると、その上の多層膜が剥離しやすくなる場合があるためである。
したがって、硬化塗膜の厚さを5〜50μmの範囲内の値とすることがより好ましく、10〜30μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
次いで、硬化塗膜上に、蒸着処理(スパタッリング処理を含む)として、例えば、真空蒸着法やスパタッリング法を用いて金属膜を形成することが好ましい。
すなわち、真空蒸着法やスパタッリング法を採用するとともに、加熱方式として、少なくとも1つの電子銃(EB銃)や、抵抗加熱、高周波誘導加熱、レーザービーム加熱等を備えることが好ましい。
より具体的には、TiO2、SiO2、Ta2O5、Al2O3、ZrO2、MgF2等を用いて多層膜を形成しても良い。また、基板にバイアス等を加えたり、基板温度を上昇させたり、あるいは冷却したりするなど、蒸着条件を変化させることも好ましい。
また、同一の電子銃で複数の蒸着源を加熱する場合には、電子ビームを走査して各蒸着源を時分割で加熱することが好ましい。
さらに、蒸着膜の組成や厚さの制御方法としては、同一の電子銃で加熱する場合、各蒸着源を走査する時間を制御することが好ましいし、一方、複数の電子銃で加熱する場合には、各蒸着源に対応させて、入力電力を制御する方法を採ることも好ましい。
また、長尺物のスピンドルに取り付けたまま、被処理物に対して硬化塗膜が形成できるため、塗膜形成が容易になるばかりか、その後の、長尺台車からの取り外しや蒸着処理等の表面処理についても、容易かつ迅速に行なえるようになった。
したがって、化粧用ガラス容器、包装用ガラス容器、装飾用ガラス容器、携帯電話の筐体、パーソナルコンピュータの周辺機器、その他各種電気製品等の高い装飾性が要求される被処理物を極めて安価かつ迅速に製造することができるようになった。
なお、二つの搬送装置を備えることによって、一つの搬送装置において不具合が生じた場合には、もう一方の搬送装置を用いて連続的に塗膜形成することができるし、さらには、二つの搬送装置にまたがるように長尺物を載置することもでき、極めて大型かつ大量の被処理物に対しても塗膜形成することができる。
1a:第1の搬送装置
1b:第2の搬送装置
1c:筐体
2:赤外線照射装置
3:紫外線照射装置
5:排気設備
5a:排気ポンプ
5b:排気管
10:長尺台車
10a:長尺台車の垂直部分
10b:長尺台車の水平部分
10c:第1の長尺物載置部
10c´:前方を走行する長尺台車における第2の長尺物載置部
10c´´:第2の長尺物載置部
10d:共通した長尺台車
11:移動手段
12:搬送安定化手段
15:回転手段
16:長尺物
16a:長尺物の先端部
16b:長尺物の後端部
18:スピンドル
22:回転手段
22´:磁石を含む回転手段
23:磁石
24、24a、24b:ベルト
24c、24d、24e、24f:ベルト回転手段
30:被処理物
40:塗装ガラス容器
50、50´:塗装ガラス容器
51、51´:下地層(プライマー層)
53:硬化塗膜
60:テーパ状導入口
61a:テーパ状の導入口
61b:直線部
70:塗膜形成装置
Claims (6)
- 紫外線硬化樹脂が塗布された被処理物を搬送するための搬送装置と、
前記被処理物における紫外線硬化樹脂を乾燥させるための赤外線照射装置と、
前記被処理物における紫外線硬化樹脂を硬化させるための紫外線照射装置と、を備えた塗膜形成装置であって、
前記搬送装置が、第1の搬送装置と、第2の搬送装置と、を含んでおり、それぞれ前記被処理物を回転支持するためのスピンドルを有する長尺物と、当該長尺物を取り外し可能に載置する長尺台車と、当該長尺台車を水平移動させるための移動手段と、を備え、
前記第1の搬送装置および第2の搬送装置の側方に、前記スピンドルを磁気回転させるための磁石を備えてあり、
前記第1の搬送装置および第2の搬送装置における移動手段が、縦回転の2つのコンベヤチェーンを進行方向に並列して配置したものであり、かつ、
前記長尺台車が、前記コンベヤチェーンに固定されているとともに、前記長尺物を前記第1の搬送装置および第2の搬送装置に載置する位置、並びに、前記長尺物を前記第1の搬送装置および第2の搬送装置から分離する位置において、前記長尺台車を反転させて方向転換することを特徴とする塗膜形成装置。 - 前記第1の搬送装置における長尺台車と、前記第2の搬送装置における長尺台車とが、連結部材によって、連結されていることを特徴とする請求項1に記載の塗膜形成装置。
- 前記長尺台車の下方に当該長尺台車の底部と接触し、かつ当該長尺台車の進行方向に沿って配置された搬送安定化手段を備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の塗膜形成装置。
- 前記赤外線照射装置が、前記第1の搬送装置および第2の搬送装置の少なくとも側方に設けてあることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の塗膜形成装置。
- 前記紫外線照射装置が、進行方向に沿って、前記赤外線照射装置の後方であって、前記第1の搬送装置および第2の搬送装置の側方及びこれらの上方に設けてあることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の塗膜形成装置。
- 前記第1の搬送装置および第2の搬送装置の先端部に、それぞれ長尺物の位置を定めるためのテーパ状の導入口を備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の塗膜形成装置。
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