JP4700545B2 - 布帛の裏打層形成用樹脂組成物及びこれを用いた布帛並びに自動車用内装材 - Google Patents

布帛の裏打層形成用樹脂組成物及びこれを用いた布帛並びに自動車用内装材 Download PDF

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Description

この発明は、例えば、自動車用内装材の表皮材の裏面に塗布されて裏打層を構成するのに用いられる樹脂組成物に関する。
なお、この明細書及び特許請求の範囲において、「メルトフローレート」の語は、JIS K7210に準拠して試験温度190℃、試験荷重21.2Nで測定されたメルトフローレートを意味する。
近年、石油等の化石資源の枯渇化の問題がクローズアップされている状況の中、プラスチック材料としては、植物資源由来のポリ乳酸樹脂が注目されている。このポリ乳酸樹脂の原料である乳酸モノマーは、トウモロコシやサツマイモ等の植物資源から微生物を利用した発酵法等により安価に製造できることから、ポリ乳酸樹脂は、従来の石油系プラスチック材料の代替材料としての利用が期待されている。また、このポリ乳酸樹脂は、植物資源を原材料としていることから、地球温暖化の要因として考えられる二酸化炭素の削減に有効であるし、自然の物質循環サイクルに適合していて、地球環境にやさしい素材として注目されている。
このような状況の中、環境保護に貢献し得るカーペットとして、上面にパイルが植設された基布の裏面にポリ乳酸樹脂からなる裏打樹脂層を形成してなるカーペットが公知である(特許文献1参照)。
特開2002−248047号公報(請求項3、請求項4、段落0024、段落0025)
しかしながら、上記特許文献1に記載のカーペットでは、基布の裏面にポリ乳酸樹脂が裏打ちされているので、カーペットが硬くなって柔軟性や風合いが損なわれるという問題があった。また、このようなポリ乳酸樹脂からなる裏打樹脂層では、パイル抜糸強度も十分に得られないという問題もあった。
この発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、布帛の柔軟性や風合いを損なうことがなく、かつ十分な接着性を確保できる、布帛の裏打層形成用樹脂組成物、及び良好な柔軟性や風合いを備え、かつ十分な接着性を備えた布帛と自動車用内装材を提供することを目的とする。
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
[1]ポリオレフィン系樹脂と、
ポリ乳酸樹脂と、
下記(A)、(B)及び(C)からなる群より選ばれる少なくとも1種の相溶化剤とを溶融混練して得られたことを特徴とする布帛の裏打層形成用樹脂組成物。
(A)エポキシ基含有エチレン系共重合体
(B)アイオノマー樹脂
(C)疎水性主鎖を有すると共に活性水素原子を含む官能基を有する化合物及びビスオキサゾリン化合物からなる相溶化剤。
[2]前記ポリオレフィン系樹脂として、ポリエチレン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂及びポリプロピレン系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂であってメルトフローレートが10〜50g/10分である樹脂が用いられ、該樹脂のJIS K7113に規定の引張試験方法に準拠して測定された破断伸度が100%以上である前項1に記載の布帛の裏打層形成用樹脂組成物。
[3]前記ポリオレフィン系樹脂として、メルトフローレートが10〜50g/10分であるポリエチレン系樹脂が用いられ、該樹脂のJIS K7113に規定の引張試験方法に準拠して測定された破断伸度が100%以上である前項1に記載の布帛の裏打層形成用樹脂組成物。
[4]前記ポリ乳酸樹脂の相対粘度(RV)が2.5〜4.0であり、前記ポリ乳酸樹脂は、L−乳酸を90質量%以上含有してなる乳酸モノマーを重合して得られた樹脂である前項1〜3のいずれか1項に記載の布帛の裏打層形成用樹脂組成物。
[5]前記ポリオレフィン系樹脂/前記ポリ乳酸樹脂の質量比が20/80〜95/5の範囲である前項1〜4のいずれか1項に記載の布帛の裏打層形成用樹脂組成物。
[6]前記ポリオレフィン系樹脂と前記ポリ乳酸樹脂の合計量100質量部に対して前記相溶化剤を3〜20質量部含有する前項1〜5のいずれか1項に記載の布帛の裏打層形成用樹脂組成物。
[7]前項1〜6のいずれか1項に記載の樹脂組成物が、基布の裏面に積層されてなることを特徴とする布帛。
[8]前項1〜6のいずれか1項に記載の樹脂組成物が、基布の裏面に積層されてなることを特徴とする自動車用内装材。
[1]の発明は、(A)エポキシ基含有エチレン系共重合体、(B)アイオノマー樹脂および(C)疎水性主鎖を有すると共に活性水素原子を含む官能基を有する化合物及びビスオキサゾリン化合物からなる相溶化剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の相溶化剤と、ポリオレフィン系樹脂と、ポリ乳酸樹脂とを溶融混練してなる樹脂組成物であるので、このような特定の相溶化剤が含有されていることでポリオレフィン系樹脂とポリ乳酸樹脂とが十分に相溶するものとなり、十分な強度及び十分な接着力を備えた裏打層の形成が可能となる。また、ポリ乳酸樹脂単独系ではなく、ポリ乳酸樹脂と共にポリオレフィン系樹脂を含有せしめているから、例えば自動車用内装材として良好な柔軟性及び風合いを付与することができる。また、ポリ乳酸樹脂が植物由来原料から製造されたものである場合には、植物度の向上した樹脂組成物となし得て、環境保護に貢献できる。
[2]の発明では、ポリオレフィン系樹脂として、ポリエチレン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂及びポリプロピレン系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂が用いられているから、樹脂組成物の接着強度をより向上させることができる。また、樹脂のメルトフローレートが10〜50g/10分であるから、裏打層を形成する際の塗布性を向上させることができる。更に、該樹脂のJIS K7113に規定の引張試験方法に準拠して測定された破断伸度が100%以上であるから、十分な接着強度を確保することができる。
[3]の発明では、ポリオレフィン系樹脂として、ポリエチレン系樹脂が用いられているから、樹脂組成物の接着強度をより一層向上させることができる。また、樹脂のメルトフローレートが10〜50g/10分であるから、裏打層を形成する際の塗布性を向上させることができる。更に、該樹脂のJIS K7113に規定の引張試験方法に準拠して測定された破断伸度が100%以上であるから、十分な接着強度を確保することができる。
[4]の発明では、ポリ乳酸樹脂の相対粘度(RV)が2.5〜4.0であるから、ポリオレフィン系樹脂とポリ乳酸樹脂との混練性を向上させることができる。また、ポリ乳酸樹脂は、L−乳酸を90質量%以上含有してなる乳酸モノマーを重合して得られた樹脂であるので、樹脂の結晶性が向上して十分な物性を備えた樹脂組成物が提供される。
[5]の発明では、ポリオレフィン系樹脂/ポリ乳酸樹脂の質量比が20/80〜95/5であるから、樹脂の植物度を向上させつつ、より十分な強度を備えた裏打層の形成が可能となる。
[6]の発明では、ポリオレフィン系樹脂とポリ乳酸樹脂の合計量100質量部に対して相溶化剤を3〜20質量部含有する構成であるから、より十分な強度及び接着力を確保できると共に成形加工性も良好なものとなる。
[7]の発明では、十分な強度及び十分な接着力を有した裏打樹脂層が形成された布帛が提供される。また、この布帛は、良好な柔軟性及び風合いを備えると共に高いスティフネスを有している。また、ポリ乳酸樹脂が植物由来原料から製造されたものである場合には、裏打樹脂層の植物度が向上しているので地球環境にやさしい布帛が提供される。
[8]の発明では、裏面に十分な強度及び十分な接着力を有した裏打樹脂層が形成された自動車用内装材が提供される。また、この自動車用内装材は、良好な柔軟性及び風合いを備えると共に高いスティフネスを有している。また、ポリ乳酸樹脂が植物由来原料から製造されたものである場合には、裏打樹脂層の植物度が向上しているので、地球環境にやさしい自動車用内装材が提供される。
この発明に係る裏打層形成用樹脂組成物は、布帛の裏打樹脂層を形成するのに用いられる樹脂組成物であって、ポリオレフィン系樹脂と、ポリ乳酸樹脂と、下記(A)、(B)及び(C)からなる群より選ばれる少なくとも1種の相溶化剤とを溶融混練して得られた樹脂組成物である。
(A)エポキシ基含有エチレン系共重合体
(B)アイオノマー樹脂
(C)疎水性主鎖を有すると共に活性水素原子を含む官能基を有する化合物及びビスオキサゾリン化合物からなる相溶化剤。
この樹脂組成物では、前記特定の相溶化剤を含有せしめているので、ポリオレフィン系樹脂とポリ乳酸樹脂とが十分に相溶するものとなり、これにより十分な強度及び十分な接着力を備えた裏打樹脂層(3)の形成が可能となる。
前記ポリオレフィン系樹脂としては、特に限定されるものではないが、ポリエチレン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂及びポリプロピレン系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂を用いるのが好ましい。この場合には、樹脂組成物の接着強度をより向上させることができる。
中でも、前記ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂及びポリプロピレン系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂であってメルトフローレートが10〜50g/10分である樹脂を用いるのがより好ましい。メルトフローレートがこのような範囲にある樹脂を用いれば、裏打樹脂層(3)を形成する際の塗布性を向上させることができる。中でも、ポリエチレン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂及びポリプロピレン系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂であってメルトフローレートが15〜40g/10分である樹脂を用いるのがさらに好ましい。特に好ましいのはメルトフローレートが20〜30g/10分である樹脂である。なお、前記ポリエチレン系樹脂としては、特に限定されるものではないが、低密度ポリエチレン(LDPE)を用いるのが好ましい。
また、前記ポリオレフィン系樹脂としては、該樹脂のJIS K7113に規定の引張試験方法に準拠して測定された破断伸度が100%以上であるものを用いるのが好ましい。この場合には、裏打樹脂層(3)の接着強度を十分に向上させることができる。中でも、前記ポリオレフィン系樹脂としては、該樹脂のJIS K7113に規定の引張試験方法に準拠して測定された破断伸度が150%以上であるものを用いるのがより好ましい。この破断伸度の測定方法は、後述の<破断伸度測定法>と同一である。
また、この発明の樹脂組成物を構成するポリ乳酸樹脂は、L−乳酸を主成分とする乳酸モノマーを重合してなるポリ乳酸である。前記乳酸モノマー中の90質量%以上がL−乳酸からなる構成を採用するのが好ましい。即ち、前記乳酸モノマー中に10質量%を超えない範囲でD−乳酸を含有していても良い。使用する乳酸モノマーの光学純度(L体の光学純度)が90%以上であれば、そのポリマー(ポリ乳酸)は結晶性となり好ましく、使用する乳酸モノマーの光学純度(L体の光学純度)が97%以上であれば、融点が170℃前後となり、より一層好ましい。また、この発明の効果を阻害しない範囲であれば、乳酸以外の成分を共重合したものを用いても良い。乳酸以外の成分を共重合した場合、ポリマー分子鎖の全繰り返し単位の70質量%以上100質量%未満、好ましくは80質量%以上100質量%未満、より好ましくは90質量%以上100質量%未満を乳酸単位とする。
前記ポリ乳酸樹脂の原料となる乳酸モノマーとしては、トウモロコシやサツマイモ等の植物資源から微生物を利用した発酵法等により製造されたものを用いるのが好ましい、即ち前記ポリ乳酸樹脂は植物由来原料から製造されたものであるのが好ましい。この場合には、植物資源を原料としていることで、地球温暖化の要因である二酸化炭素の発生量を削減できて地球環境保護に貢献できる。
また、前記ポリ乳酸樹脂の相対粘度(RV)は2.5〜4.0であるのが好ましい。ここで、前記相対粘度は、20℃、フェノール/テトラクロロエタン=60/40(質量比)の混合溶液で測定した値である。前記相対粘度が2.5未満では得られる樹脂組成物の物性を発現させることができない。一方、前記相対粘度が4.0を超える場合は、溶融粘度が高くなり過ぎる結果、ポリオレフィン系樹脂との混練性が不十分となるので、好ましくない。中でも、前記ポリ乳酸樹脂の相対粘度は2.8〜3.6であるのがより好ましい。
前記相溶化剤としては、(A)エポキシ基含有エチレン系共重合体、(B)アイオノマー樹脂、(C)疎水性主鎖を有すると共に活性水素原子を含む官能基を有する化合物及びビスオキサゾリン化合物からなる相溶化剤、の少なくともいずれか1種の化合物を用いる。これら相溶化剤の少なくとも1種を含有せしめて溶融混練することで、ポリオレフィン系樹脂とポリ乳酸樹脂とを十分に相溶させることができる。
前記エポキシ基含有エチレン系共重合体としては、特に限定されるものではないが、例えば、エチレン単位及びエポキシ基含有モノマー単位を必須成分とし、エチレン系不飽和エステル化合物単位を任意成分とする共重合体等が挙げられる。具体的には、特に限定されるものではないが、例えば、エチレン−グリシジルメタアクリレート共重合体(E−GMA)、エチレン−グリシジルメタアクリレート−酢酸ビニル共重合体(E−GMA−VA)、エチレン−グリシジルメタアクリレート−アクリル酸メチル共重合体(E−GMA−MA)等が挙げられる。これらの中でも、エチレン−グリシジルメタアクリレート共重合体(E−GMA)を用いるのが特に好ましい。
前記アイオノマー樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、エチレン−メタクリル酸共重合体アイオノマー、エチレン−アクリル酸共重合体アイオノマー、スチレン−メタクリル酸共重合体アイオノマー、スルホン化ポリスチレンアイオノマー、スルホン化エチレン−プロピレン−ジエン共重合体アイオノマー、ポリ(ビニルピリジウム塩)アイオノマー、ポリ(ビニルトリメチルアンモニウム塩)アイオノマー、ポリウレタンアイオノマー等が挙げられる。これらの中でも、エチレン−メタクリル酸共重合体アイオノマーを用いるのが特に好ましい。
前記疎水性主鎖を有すると共に活性水素原子を含む官能基を有する化合物について説明すると、前記疎水性主鎖としては、特に限定されるものではないが、例えば炭化水素基等が挙げられ、これらの中でも、メチレン、エチレン、プロピレン、ブタジエン等の脂肪族炭化水素基が好ましい。また、活性水素原子を含む官能基としては、特に限定されるものではないが、例えばフェノール性であってもよいヒドロキシル基、メルカプト基、カルボキシル基、アミノ基等が挙げられ、これらの中でもカルボキシル基やアミノ基が好ましい。前記疎水性主鎖を有すると共に活性水素原子を含む官能基を有する化合物の具体例としては、特に限定されるものではないが、例えばラウリルアルコール等の脂肪族アルコール、1,4−ブタンジオール等の脂肪族ジオール、アルキルフェノール、ラウリン酸等の飽和脂肪酸、オレイン酸等の不飽和脂肪酸、コハク酸等の飽和多価カルボン酸、フマル酸等の不飽和多価カルボン酸、カプリルアミン等の1級アミン、ジデシルアミン等の2級アミン、ヘキサメチレンジアミン等のジアミン、アミノカプロン酸等のアミノカルボン酸の他、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、プロピレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−無水マレイン酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸−無水マレイン酸共重合体などが挙げられる。なお、前記「疎水性主鎖を有すると共に活性水素原子を含む官能基を有する化合物」の語は、前記エポキシ基含有エチレン系共重合体及び前記アイオノマー樹脂を包含しないものとする(これら両化合物を除く意味で用いている)。
前記ビスオキサゾリン化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、2,2’−(1,3−フェニレン)−ビス(2−オキサゾリン)、2,2’−(1,4−フェニレン)−ビス(2−オキサゾリン)、2,2’−(1,2−フェニレン)−ビス(2−オキサゾリン)、2,2’−(1,3−フェニレン)−ビス(4−メチル−2−オキサゾリン)等が挙げられる。これらの中でも、2,2’−(1,3−フェニレン)−ビス(2−オキサゾリン)を用いるのが特に好ましい。
この発明の樹脂組成物において、前記ポリオレフィン系樹脂/前記ポリ乳酸樹脂の質量比は20/80〜95/5の範囲であるのが好ましい。ポリオレフィン系樹脂の含有比率が上記好適範囲の下限を超えて小さくなると、裏打樹脂層(3)として十分な強度及び伸度が得られ難くなるので、好ましくない。一方、ポリオレフィン系樹脂の含有比率が上記好適範囲の上限を超えて大きくなると、裏打樹脂層(3)の植物度が低下するので、好ましくない。中でも、前記ポリオレフィン系樹脂/前記ポリ乳酸樹脂の質量比は30/70〜75/25の範囲であるのがより好ましい。
また、前記樹脂組成物における相溶化剤の配合量に関しては、前記ポリオレフィン系樹脂と前記ポリ乳酸樹脂の合計量100質量部に対して相溶化剤を3〜20質量部の割合で配合せしめる。3質量部未満では十分な相溶化効果が得られず十分な強度が得られないし、布帛としてのスティフネスも不十分となる。また20質量部を超えると樹脂組成物の溶融粘度が増大し押出成形等の成形時に成形不良(例えば樹脂組成物シートの厚みムラ等)が生じて布帛への裏打ちを良好状態に行うことが困難になる。中でも、前記ポリオレフィン系樹脂と前記ポリ乳酸樹脂の合計量100質量部に対して相溶化剤を3〜12質量部の割合で配合せしめるのが好ましい。
なお、この発明の効果を阻害しない範囲であれば、前記樹脂組成物に、ポリ乳酸樹脂以外の他のポリマー(ポリマー粒子を含む)の他、艶消し剤、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤、消臭剤、抗菌剤、抗酸化剤、耐熱剤、耐光剤、紫外線吸収剤等の各種添加剤を必要に応じて含有せしめても良い。
この発明に係る布帛(1)は、基布(2)の裏面に上記裏打層形成用樹脂組成物からなる裏打樹脂層(3)が積層されてなるものである。具体的には、例えば図1に示すように、上面にパイル(4)が植設された基布(2)の裏面に上記樹脂組成物からなる裏打樹脂層(3)が積層されてなる自動車用内装材(1)等を例示できる。換言すれば、図1に示す自動車用内装材(1)は、基布(2)の上面にパイル(4)が植設されてなる表皮材(10)の裏面に上記樹脂組成物からなる裏打樹脂層(3)が積層された構成である。或いは、図2に示すように、上面にパイル(4)が植設された基布(2)の裏面に上記樹脂組成物からなる裏打樹脂層(3)が積層され、該裏打樹脂層(3)の裏面にさらに不織布層(5)が積層されてなる自動車用内装材(1)等を例示できる。
前記布帛(1)を構成する基布(2)としては、特に限定されるものではないが、例えば、織布、編布、不織布等が挙げられる。
また、前記基布(2)を構成する繊維は、ポリ乳酸繊維であるのが好ましく、この場合には地球温暖化の要因である二酸化炭素を削減できると共に使用後廃棄された際に布帛(1)が微生物等により分解され得るので、地球環境保護に十分に貢献することができる。また、前記布帛(1)の構成部材としてパイル(4)を用いる場合には、同様に環境保護の観点から、ポリ乳酸繊維からなるパイル糸を用いるのが好ましい。
次に、この発明の具体的実施例について説明するが、本発明はこれら実施例のものに特に限定されるものではない。
<実施例1>
低密度ポリエチレン(住友化学株式会社製「CX5501」、メルトフローレート30g/10分、この樹脂のJIS K7113に規定の引張試験方法に準拠して測定された破断伸度は730%)66質量部、ポリ乳酸樹脂(L−乳酸98質量%及びD−乳酸2質量%からなる乳酸モノマーの重合体、重量平均分子量140000、相対粘度3.2、ガラス転移温度Tg:57℃、融点Tm:170℃)30質量部、及びエポキシ基含有エチレン系共重合体(住友化学株式会社製「ボンドファーストE」、エチレン−グリシジルメタアクリレート共重合体)4質量部をドライブレンドした後、φ30mmの2軸押出機(L/D=42)に供給し、225℃の温度条件下、スクリュー回転数200rpmで溶融混練することによって、ペレット状の樹脂組成物を得た。この樹脂組成物をベント付き2軸Tダイ押出機を用いて押出温度220℃でシート状に押出してそのまま表皮材の裏面に積層した後、一対のロール間で挟圧して接着一体化することによって、前記表皮材(10)の裏面に裏打樹脂層(3)を積層してなるカーペットを得た。このカーペットを加熱した後、成型機で型押しすることによってモールディング加工して、自動車用フロアーカーペット(1)を得た(図1参照)。
なお、前記表皮材(10)としては、目付120g/m2 のPET(ポリエチレンテレフタレート)繊維製スパンボンド不織布からなる基布(2)にPET糸からなる目付1500g/m2 のパイル(4)がタフトされたものを用いた。
<実施例2〜4>
低密度ポリエチレン、ポリ乳酸樹脂、エポキシ基含有エチレン系共重合体の配合割合を表1に示す割合に設定した以外は、実施例1と同様にして自動車用フロアーカーペットを得た。
<実施例5>
ポリ乳酸樹脂として、L−乳酸95質量%及びD−乳酸5質量%からなる乳酸モノマーの重合体(重量平均分子量200000、相対粘度3.8、ガラス転移温度Tg:58℃、融点Tm:172℃)を用いた以外は、実施例1と同様にして自動車用フロアーカーペットを得た。
<比較例1、2>
表2に示す組成からなる樹脂組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして自動車用フロアーカーペットを得た。
<比較例3>
表2に示す組成からなる樹脂組成物をベント付き2軸Tダイ押出機を用いて押出温度220℃でシート状に押出してそのまま表皮材の裏面への積層を試みたが、押出成形不良により、表皮材の裏面に良好状態に裏打樹脂層を積層一体化することはできなかった。
Figure 0004700545
Figure 0004700545
上記のようにして得られた自動車用フロアーカーペットの折り曲げ性及びスティフネスを下記評価法に基づいて評価した。なお、ポリ乳酸樹脂の特性は下記測定法に基づいて測定した。また、得られた樹脂組成物の特性は下記測定法に基づいて測定した。これらの結果を表1、2に示す。
<相対粘度測定法>
フェノール/テトラクロロエタン=60/40(質量比)の混合溶液に試料を1g/dLの濃度となるよう溶解せしめ、20℃でウベローデ粘度管を用いて相対粘度(RV)を測定した。
<重量平均分子量測定法>
試料を10mg/mLの濃度になるようクロロホルムに溶解せしめ、クロロホルムを溶媒として、東ソー製HLC8120GPCによりGPC分析を行い、重量平均分子量Mwを測定した。検出器はRI(赤外分光器)を用い、分子量の標準物質としてはポリスチレンを使用した。
<L−乳酸の比率測定法>
ポリ乳酸を加水分解し、メタノール性水酸化ナトリウム溶液(濃度1.0N)を溶媒として高速液体クロマトグラフィー(HPLC:島津製作所LC10AD型)を使用してL−乳酸の比率を求めた。
<メルトフローレートの測定法>
JIS K7210に準拠して試験温度190℃、試験荷重21.2Nで樹脂組成物のメルトフローレート(g/10分)を測定した。
<外観評価法>
樹脂組成物を目視して、均一であるものを「○」、分散不良で不均一であるものを「×」とした。
<破断強度測定法および破断伸度測定法>
各実施例、比較例で得られたペレット状の樹脂組成物を真空乾燥機内で115℃で6時間乾燥した後、射出成形機を用いて成形温度220℃、金型温度55℃の条件で射出成形し、得られた射出成形シートを打ち抜いて3号形ダンベル試験片を得た。この3号形ダンベル試験片の破断強度及び破断伸度をJIS K7113−1995に規定の引張試験方法(プラスチックの引張試験方法)に準拠して測定した。なお、引張試験速度は200mm/分に設定した。
<折り曲げ性評価法>
上記射出成形シートから幅25mm、長さ75mm、厚さ2mmの試験片を切り出し、該試験片を長さ方向の中央位置で180度折り曲げた後、元に戻して試験片の外観状態を目視により評価した。割れがないものを「○」、一部に割れが認められるものを「△」、破断されてしまったものを「×」とした。
<スティフネス評価法>
上記射出成形シートから試験片を切り出し、ASTM D747に規定された測定法に準拠してスティフネス(MPa)を測定した。
更に、60℃、90%RH条件下で10日間加熱促進試験を行った後に、樹脂組成物のメルトフローレート、3号形ダンベル試験片の破断強度及び破断伸度、自動車用フロアーカーペットの折り曲げ性及びスティフネスを評価した。これらの加熱促進試験の結果を表1、2に示す。
これらの表から明らかなように、この発明の実施例1〜5の樹脂組成物を用いて裏打ちされた自動車用フロアーカーペットは、十分な強度を有すると共に折り曲げ性が良好で(良好な柔軟性を有し)且つ高いスティフネスを備えていた。更に、実施例1〜5では、加熱促進試験(60℃、90%RH、10日間)を行っても、樹脂組成物のメルトフローレート、試験片の破断強度及び破断伸度、自動車用フロアーカーペットの折り曲げ性及びスティフネスは殆ど低下することがなく経時劣化が少ないことがわかった。
これに対し、相溶化剤を含有せしめていない比較例1及び相溶化剤の含有割合が少ない比較例2では、強度が十分に得られなかったし、カーペットとしてのスティフネスも不十分であった。また、相溶化剤の含有割合が多過ぎる比較例3では、押出成形不良により、表皮材の裏面に良好な状態で裏打樹脂層を積層一体化することはできなかった。
この発明に係る樹脂組成物は、例えば、自動車用内装材の表皮材の裏面に塗布されて裏打樹脂層を構成するのに好適に用いられる。また、自動車用内装材以外にも、例えばカーペット、モケットの裏打樹脂層を形成するのに用いられる。
この発明に係る自動車用内装材の一実施形態を示す断面図である。 この発明に係る自動車用内装材の他の実施形態を示す断面図である。
符号の説明
1…布帛(自動車用内装材等)
2…基布
3…裏打樹脂層

Claims (10)

  1. ポリエチレン系樹脂と、ポリ乳酸樹脂と、相溶化剤としてのエポキシ基含有エチレン系共重合体とを溶融混練して得られた裏打層形成用樹脂組成物が、基布の裏面に積層されてなり、
    前記ポリエチレン系樹脂/前記ポリ乳酸樹脂の質量比が20/80〜95/5の範囲であり、
    前記ポリエチレン系樹脂と前記ポリ乳酸樹脂の合計量100質量部に対して前記エポキシ基含有エチレン系共重合体を3〜20質量部含有することを特徴とする布帛。
  2. 前記ポリエチレン系樹脂として、メルトフローレートが10〜50g/10分であるポリエチレン系樹脂が用いられ、該樹脂のJIS K7113に規定の引張試験方法に準拠して測定された破断伸度が150%以上である請求項1に記載の布帛
  3. 前記ポリエチレン系樹脂として、メルトフローレートが10〜50g/10分である低密度ポリエチレン(LDPE)が用いられ、該低密度ポリエチレンのJIS K7113に規定の引張試験方法に準拠して測定された破断伸度が150%以上である請求項1に記載の布帛。
  4. 前記ポリ乳酸樹脂の相対粘度(RV)が2.5〜4.0であり、前記ポリ乳酸樹脂は、L−乳酸を90質量%以上含有してなる乳酸モノマーを重合して得られた樹脂である請求項1〜3のいずれか1項に記載の布帛
  5. 前記エポキシ基含有エチレン系共重合体が、エチレン−グリシジルメタアクリレート共重合体である請求項1〜4のいずれか1項に記載の布帛。
  6. 前記ポリエチレン系樹脂/前記ポリ乳酸樹脂の質量比が20/80〜75/25の範囲である請求項1〜5のいずれか1項に記載の布帛。
  7. 前記ポリエチレン系樹脂と前記ポリ乳酸樹脂の合計量100質量部に対して前記エポキシ基含有エチレン系共重合体を3〜12質量部含有する請求項1〜6のいずれか1項に記載の布帛。
  8. 前記裏打層形成用樹脂組成物は、これを射出成形機を用いて成形温度220℃、金型温度55℃の条件で射出成形して得られた射出成形シートを打ち抜いて得られた3号形ダンベル試験片の、JIS K7113−1995に規定の引張試験方法に準拠して測定した破断強度が4.3MPa以上であり、前記射出成形シートの、ASTM D747に規定された測定法に準拠して測定したスティフネスが59MPa以上である請求項1〜7のいずれか1項に記載の布帛。
  9. 前記裏打層形成用樹脂組成物は、これを射出成形機を用いて成形温度220℃、金型温度55℃の条件で射出成形して得られた射出成形シートを打ち抜いて得られた3号形ダンベル試験片に、60℃、90%RH条件下で10日間加熱促進試験を行った後に、該3号形ダンベル試験片の、JIS K7113−1995に規定の引張試験方法に準拠して測定した破断強度が4.7MPa以上であり、前記加熱促進試験後の射出成形シートの、ASTM D747に規定された測定法に準拠して測定したスティフネスが67MPa以上である請求項1〜8のいずれか1項に記載の布帛。
  10. 自動車用内装材として用いられることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の布帛。
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