JP4700530B2 - インクジェット記録用水系インク - Google Patents
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Description
その中でも、印字物の耐候性や耐水性の観点から、着色剤に顔料系インクを用いるものが主流となってきている。(例えば、特許文献1〜3参照)
特許文献1には、ビニルポリマーに顔料を含有させた水系インクが開示されている。
特許文献2には、カラーブリーディングを抑制するために、水不溶性樹脂を溶解してなる油膜形成成分が含まれている水性インクが開示されているが、溶解させるために水不溶性樹脂の含有量が少く、十分な機能が発揮されていない。
特許文献3には、光沢性を有する画像を形成するために、フタル酸ジエステル10〜1000ppmとラッテクスを含有するインクが開示されているが、フタル酸ジエステルの含有量が少なく、十分な機能が発揮されていない。
特許文献4には、ウレタン粒子に疎水性色素と疎水性ポリマーと高沸点有機溶媒とを含むマイクロカプセル含有着色微粒子分散物が開示されている。
特許文献5には、顔料インク中の脂肪酸誘導体の総含有量が1.0質量%以下であり、該顔料粒子が水不溶性ポリマーで被覆されているインクジェット用顔料インクが開示されている。
しかしながら、上記のインクは、光沢性と保存安定性において満足できるものではない。
(1)着色剤を含有するポリマー粒子、及びLogP値が7.0〜9.0である下記一般 式(1)で表される水不溶性有機化合物を含有する、インクジェット記録用水分散 体。
(2)前記(1)の水分散体を含有するインクジェット記録用水系インク。
本発明で用いられる水不溶性有機化合物は、少なくともその一部がポリマー粒子に含有されてその柔軟性を改良すると考えられる。水不溶性有機化合物がポリマー粒子の柔軟性を改良することで、インクジェット記録装置のノズルから吐出されたポリマー粒子同士の融着性が高まり、ポリマー粒子が記録紙上に均一に拡散して、印字面が平滑になることにより、印字物の光沢性が向上すると考えられる。
水100gに対する水不溶性有機化合物の溶解量(20℃)は、好ましくは5g以下、より好ましくは3g以下、更に好ましくは1g以下、特に好ましくは0.5g以下である。
水不溶性有機化合物は、専用紙に印字した際の印字物の光沢度を向上させると共に、水不溶性化合物を含有する水分散体の保存安定性を向上させる観点から、LogP値が7.0〜9.0であり、好ましくは7.3〜8.7、より好ましくは7.5〜8.5である。
また、水不溶性有機化合物とポリマー粒子との相互作用による光沢性を向上させる観点から、[水不溶性有機化合物のLogP値]と[ポリマーのLogP値]との差の絶対値は、好ましくは6以下、より好ましくは5.5以下、更に好ましくは5以下であり、0であってもよい。
これらの中では、1価カルボン酸又はその塩と多価アルコールから得られるエステル、多価酸(多価カルボン酸、リン酸)又はその塩と1価アルコールから得られるエステル、又は多価アルコールのエーテル化合物が好ましく、脂肪族又は芳香族カルボン酸エステル基を2つ又はリン酸エステル基を3つ有することが更に好ましい。塩としては、アルカリ金属塩、アルカノールアミン塩、アンモニウム塩等が挙げられる。
1価アルコールとしては、炭素数1〜18、好ましくは炭素数2〜10の直鎖又は分岐鎖の脂肪族アルコール(例えば、エチルアルコール、ブチルアルコール、ヘキシルアルコール、オクチルアルコール、デシルアルコール、ドデシルアルコール)、炭素数6〜12の芳香族アルコール(例えば、フェノール)が挙げられる。多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセリン等の炭素数2〜12の多価アルコールが挙げられる。脂肪酸やアルコールとしては飽和又は不飽和のいずれのものも使用できる。
R3は、2価の脂肪族炭化水素基、環式炭化水素基又は芳香族炭化水素基が好ましく、好ましくは炭素数2〜15、更に好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8のアルカンジイル基(アルキレン基)又はアルケニレン基あるいは、炭素数6〜10のアリーレン基、更に好ましくはフェニレン基、炭素数3〜8の環式飽和又は不飽和炭化水素基である。具体的には、エチレン基、トリメチレン基、プロパン−1,2−ジイル基、テトラメチレン基、ヘプタメチレン基、ヘキサメチレン基、ペンタン−1,5−ジイル基、オクタメチレン基、ドデカメチレン基、フェニレン基等が挙げられる。以下の式においても同様である。
m及びnは、それぞれ独立に、好ましくは0〜20、より好ましくは0〜15、更に好ましくは1〜15、特に好ましくは2〜14、最も好ましくは2〜12である。
R1〜R3が有していてもよい置換基としては、例えば、フッ素、塩素、臭素原子等のハロゲン原子、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ基等の炭素数1〜12のアルコキシ基、フェニルオキシ基等のアリールオキシ基、メトキシカルボニル基等のオキシカルボニル基、アセチル、ベンゾイル基等のアシル基、アセチルオキシ基等のアシルオキシ基、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシル基、カルボキシ基、オキソ基、エポキシ基、エーテル基、エステル基等が例示できる(これらを総称して本発明の置換基という)。これら置換基は1つであっても2つ以上を組み合わせてもよい。
(1)脂肪族カルボン酸エステルの具体例としては、ジメチルアジペート、ジエチルアジペート、ジブチルアジペート、ジイソブチルアジペート、ビス(2−エチルヘキシル)アジペート、ジイソノニルアジペート、ジイソデシルアジペート、ビス(ブチルジエチレングリコール)アジペート、ジメチルセバケート、ジエチルセバケート、ジブチルセバケート、ビス(2−エチルヘキシル)セバケート、ジエチルサクシネート、ビス(2−エチルヘキシル)アゼレート等の脂肪族二塩基酸エステル等が挙げられる。これらの中でも、ジエチルアジペート、ジブチルアジペート、ジイソブチルアジペート、ビス(ブチルジエチレングリコール)アジペート、ビス(オクトキシポリエチレングリコール)アジペート(R1及びR2は共に2-エチルヘキシル、EOの各平均付加モル数m及びn=1〜4)、ビス(オクトキシポリプロピレングリコール)アジペート(R1及びR2は共に2-エチルヘキシル、POの各平均付加モル数m及びn=1〜6)、ビス(オクトキシポリエチレングリコール・ポロプロピレングリコール)アジペート(R1及びR2は共に2-エチルヘキシル、EO及びPOの各合計平均付加モル数m及びn=4〜12、ブロック付加)、ビス[オクトキシポリ(エチレングリコール・プロピレングリコール)]アジペート(R1及びR2は共に2-エチルヘキシル、EO及びPOの各合計平均付加モル数m及びn=4〜12、ランダム付加)、ジエチルセバケート、ジブチルセバケート、ジイソブチルセバケート等の炭素数6〜14の脂肪族二塩基酸のジエステルが特に好ましい。
(3)シクロアルカン(ケン)カルボン酸エステルの具体例としては、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジブチルエステル、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステル等のシクロヘキサンエステル類、3,4−シクロヘキセンジカルボン酸ジブチルエステル、3,4−シクロヘキセンカルボン酸ジイソノニルエステル等のシクロヘキセンエステル等が挙げられる。
(4)リン酸エステルは下記式(4)で表される化合物が好ましい。
(5)オキシ酸エステルの具体例としては、アセチルクエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリブチル、アセチルリシノール酸メチル等が挙げられる。
(6)グリコールエステルの具体例としては、ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジ(2−エチルヘキソエート)等が挙げられる。
(7)エポキシ系エステルの具体例としては、エポキシステアリン酸ブチル、エポキシステアリン酸オクチル等が挙げられる。
(8)スルホンアミドの具体例としては、o−及びp−トルエンスルホンアミド、N−ブチルベンゼンスルホンアミド等が挙げられる。
(9)ポリエステルの具体例としては、ポリ(1,2−ブタンジオールアジペート)、ポリ(1,3−ブタンジオールアジペート)等が挙げられる。
(10)グリセリルアルキルエーテルの具体例としては、グリセリルモノエーテル、グリセリルジエーテル、グリセリルトリエーテルが挙げられる。これらの中では、炭素数8〜30の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を有するグリセリルモノエーテルが好ましい。アルキル基の炭素数は8〜30であるが、好ましくは8〜22、更に好ましくは8〜14である。
アルキル基として、例えば2−エチルヘキシル、(イソ)オクチル、(イソ)デシル、(イソ)ドデシル、(イソ)ミリスチル、(イソ)セチル、(イソ)ステアリル、(イソ)ベヘニル基が挙げられる。
アルキル基の位置については、特に制限はなく、1−アルキルグリセリルモノエーテル、2−アルキルグリセリルモノエーテルいずれであってもよい。
(11)グリセリルアルキルエステルの具体例としては、グリセリルモノアルキルエステル、グリセリルジアルキルエステル、グリセリルトリアルキルエステルが挙げられる。
これらの中では、炭素数1〜18、好ましくは炭素数2〜10の直鎖又は分岐鎖の脂肪族カルボン酸(例えば、酢酸、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、パルミチン酸等の直鎖脂肪族カルボン酸、ピバリン酸等の分岐脂肪族カルボン酸)エステルが好ましい。アルキル基の総炭素数は、6以上が好ましく、8以上が更に好ましい。
より具体的には、グリセリルトリアセテート、グリセリルジアセテート、グリセリルモノアセテート等が挙げられる。
(12)グリコールアルキルエーテルの具体例としては、グリコールモノアルキルエーテル、グリコールジアルキルエーテルが挙げられる。
(13)グリコールアルキルエステルの具体例としては、グリコールモノアルキルエステル、グリコールジアルキルエステルが挙げられる。
(12)及び(13)のグリコールとしては、エチレングリコール、ネオペンチルグリコールなどが挙げられ、アルキル基としては、炭素数1〜22の直鎖又は分岐鎖のアルキル基が挙げられる。アルキル基の総炭素数は、6以上が好ましく、8以上が更に好ましい。
上記の水不溶性有機化合物(1)〜(15)は、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。これらの中でも、水不溶性有機化合物は前記式(1)で表される化合物が光沢性の観点から好ましい。
本発明において、ポリマー粒子は、水不溶性有機化合物との相互作用により、印字濃度、光沢性を向上させるために用いられる。
ポリマー粒子のポリマーは、水不溶性有機化合物を含有しやすくするために、水不溶性ポリマーであることが好ましい。ここで、水不溶性ポリマーとは、ポリマーを105℃で2時間乾燥させた後、25℃の水100gに溶解させたときに、その溶解量が10g以下、好ましくは5g以下、更に好ましくは1g以下であるポリマーをいう。溶解量は、ポリマーが塩生成基を有する場合は、その種類に応じて、ポリマーの塩生成基を酢酸又は水酸化ナトリウムで100%中和した時の溶解量である。
1.ポリマーを構成する各構成単位が由来する各モノマーのLogP値を前記SRC's LOGKOW / KOWWIN Programにより求める。なお、連鎖移動剤、開始剤由来のポリマー構成は除外する。
2.各モノマーのLogP値に、ポリマー鎖中のそのモノマー由来の構成単位のモル比率(M)を乗じて、各モノマーの(LogP×M)を求める。
3.上記2で得られた、各モノマーの(LogP×M)を全て合計することで、ポリマーのLogP値を算出する。
なお、塩生成基含有モノマーは、中和する前の該モノマーのLogP値に基づいて計算を行う。
ポリマー粒子は、ポリエステル粒子、ポリウレタン粒子、ビニルポリマー粒子などが挙げられるが、その分散安定性の観点から、ビニル単量体(ビニル化合物、ビニリデン化合物、ビニレン化合物)の付加重合により得られるビニルポリマー粒子が好ましい。
ビニルポリマーとしては、(a)塩生成基含有モノマー(以下「(a)成分」ということがある)と、(b)マクロマー(以下「(b)成分」ということがある)及び/又は(c)疎水性モノマー(以下「(c)成分」ということがある)とを含むモノマー混合物(以下「モノマー混合物」ということがある)を共重合させてなる水不溶性ビニルポリマーが好ましい。この水不溶性ビニルポリマーは、(a)成分由来の構成単位と、(b)成分由来の構成単位及び/又は(c)成分由来の構成単位を有する。
塩生成基含有モノマーとしては、カチオン性モノマー、アニオン性モノマー等が挙げられる。その例として、特開平9−286939号公報5頁7欄24行〜8欄29行に記載されているもの等が挙げられる。
カチオン性モノマーの代表例としては、不飽和アミン含有モノマー、不飽和アンモニウム塩含有モノマー等が挙げられる。これらの中では、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−(N',N'−ジメチルアミノプロピル)(メタ)アクリルアミド及びビニルピロリドンが好ましい。
不飽和カルボン酸モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、2−メタクリロイルオキシメチルコハク酸等が挙げられる。不飽和スルホン酸モノマーとしては、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−スルホプロピル(メタ)アクリレート、ビス−(3−スルホプロピル)−イタコン酸エステル等が挙げられる。不飽和リン酸モノマーとしては、ビニルホスホン酸、ビニルホスフェート、ビス(メタクリロキシエチル)ホスフェート、ジフェニル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイロキシエチルホスフェート、ジブチル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート等が挙げられる。
上記アニオン性モノマーの中では、分散安定性、吐出安定性の観点から、不飽和カルボン酸モノマーが好ましく、アクリル酸及びメタクリル酸がより好ましい。
(b)マクロマーの中では、ポリマー粒子の分散安定性等の観点から、片末端に重合性官能基を有する、スチレン系マクロマー及び芳香族基含有(メタ)アクリレート系マクロマーが好ましい。
スチレン系マクロマーとしては、スチレン系モノマー単独重合体、又はスチレン系モノマーと他のモノマーとの共重合体が挙げられる。スチレン系モノマーとしては、スチレン、2−メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、ビニルナフタレン、クロロスチレン等が挙げられる。
また、それらのマクロマーの片末端に存在する重合性官能基としては、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基が好ましく、共重合される他のモノマーとしては、アクリロニトリル等が好ましい。
スチレン系マクロマー中におけるスチレン系モノマー、又は芳香族基含有(メタ)アクリレート系マクロマー中における芳香族基含有(メタ)アクリレートの含有量は、顔料との親和性を高める観点から、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上である。
CH2=C(CH3)−COOC3H6−〔Si(CH3)2O〕t−Si(CH3)3 (10)
(式中、tは8〜40の数を示す。)。
(b)成分として商業的に入手しうるスチレン系マクロマーとしては、例えば、東亜合成株式会社の商品名、AS−6(S)、AN−6(S)、HS−6(S)等が挙げられる。
アルキル(メタ)アクリレートとしては、炭素数1〜22、好ましくは炭素数6〜18のアルキル基を有するものが好ましく、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、(イソ)プロピル(メタ)アクリレート、(イソ又はターシャリー)ブチル(メタ)アクリレート、(イソ)アミル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、(イソ)オクチル(メタ)アクリレート、(イソ)デシル(メタ)アクリレート、(イソ)ドデシル(メタ)アクリレート、(イソ)ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
なお、本明細書において、「(イソ又はターシャリー)」及び「(イソ)」は、これらの基が存在する場合としない場合の双方を意味し、これらの基が存在しない場合には、ノルマルを示す。また、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート、メタクリレート又はそれらの両方を示す。
(c)成分の中では、光沢性、印字濃度向上の観点から、スチレン系モノマー(c−1成分)が好ましく、スチレン系モノマーとしては特にスチレン及び2−メチルスチレンが好ましい。(c)成分中の(c−1)成分の含有量は、印字濃度及び光沢性向上の観点から、好ましくは10〜100重量%、より好ましくは20〜80重量%である。
また、芳香族基含有(メタ)アクリレート(c−2)成分としては、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等が好ましい。(c)成分中の(c−2)成分の含有量は、光沢性の向上の観点から、好ましくは10〜100重量%、より好ましくは20〜80重量%である。また、(c−1)成分と(c−2)成分を併用することも好ましい。
(d)成分としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(n=2〜30、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す。以下同じ。)(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(n=2〜30)(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール(n=1〜15)・プロピレングリコール(n=1〜15))(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中では、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールメタクリレートが好ましい。
CH2=C(R7)COO(R8O)qR9 (11)
(式中、R7は、水素原子又は炭素数1〜5の低級アルキル基、R8は、ヘテロ原子を有していてもよい炭素数1〜30の2価の炭化水素基、R9は、ヘテロ原子を有していてもよい炭素数1〜30の1価の炭化水素基、qは、平均付加モル数を意味し、1〜60の数、好ましくは1〜30の数を示す。)
(e)成分は、インクの印字濃度、光沢性を向上するという優れた効果を発現する。
式(11)において、ヘテロ原子としては、例えば、窒素原子、酸素原子、ハロゲン原子及び硫黄原子が挙げられる。
R7の好適例としては、メチル基、エチル基、(イソ)プロピル基等が挙げられる。
R8O基の好適例としては、オキシエチレン基、オキシトリメチレン墓、オキシプロパン−1,2−ジイル基、オキシテトラメチレン基、オキシヘプタメチレン基、オキシヘキサメチレン基及びこれらの2種以上の組合せからなる炭素数2〜7のオキシアルカンジイル基(オキシアルキレン基)が挙げられる。
R9の好適例としては、炭素数1〜30、好ましくは炭素数1〜20の脂肪族アルキル基、芳香族環を有する炭素数7〜30のアルキル基及びヘテロ環を有する炭素数4〜30のアルキル基が挙げられる。
上記(a)〜(e)成分は、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
(a)成分の含有量は、得られる分散体の分散安定性の観点から、好ましくは2〜40重量%、より好ましくは2〜30重量%、特に好ましくは3〜20重量%である。
(b)成分の含有量は、特に着色剤との相互作用を高める観点から、好ましくは1〜25重量%、より好ましくは5〜20重量%である。
(c)成分の含有量は、光沢性の観点から、好ましくは5〜98重量%、より好ましくは10〜60重量%である。
(d)成分の含有量は、得られる分散体の分散安定性の観点から、好ましくは5〜40重量%、より好ましくは7〜20重量%である。
(e)成分の含有量は、得られる分散体の分散安定性の観点から、好ましくは5〜50重量%、より好ましくは10〜40重量%である。
モノマー混合物中における〔(a)成分+(d)成分〕の合計含有量は、得られる分散体の分散安定性の観点から、好ましくは6〜60重量%、より好ましくは10〜50重量%である。〔(a)成分+(e)成分〕の合計含有量は、得られる分散体の分散安定性の観点から、好ましくは6〜75重量%、より好ましくは13〜50重量%である。また、〔(a)成分+(d)成分+(e)成分〕の合計含有量は、得られる分散体の分散安定性の観点から、好ましくは6〜60重量%、より好ましくは7〜50重量%である。
また、〔(a)成分/[(b)成分+(c)成分]〕の重量比は、光沢性の観点から、好ましくは0.01〜1、より好ましくは0.02〜0.67、更に好ましくは0.03〜0.50である。
本発明で用いられるポリマーは、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の公知の重合法により、モノマー混合物を共重合させることによって製造される。これらの重合法の中では、溶液重合法が好ましい。
溶液重合法で用いる溶媒としては、特に限定されないが、極性有機溶媒が好ましい。極性有機溶媒が水混和性を有する場合には、水と混合して用いることもできる。極性有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等の炭素数1〜3の脂肪族アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸エチル等のエステル類等が挙げられる。これらの中では、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン又はこれらの1種以上と水との混合溶媒が好ましい。
重合の際には、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物や、t−ブチルペルオキシオクトエート、ジベンゾイルオキシド等の有機過酸化物等の公知のラジカル重合開始剤を用いることができる。
ラジカル重合開始剤の量は、モノマー混合物1モルあたり、好ましくは0.001〜5モル、より好ましくは0.01〜2モルである。
重合の際には、さらに、オクチルメルカプタン、2−メルカプトエタノール等のメルカプタン類、チウラムジスルフィド類等の公知の重合連鎖移動剤を添加してもよい。
重合反応の終了後、反応溶液から再沈澱、溶媒留去等の公知の方法により、生成したポリマーを単離することができる。また、得られたポリマーは、再沈澱を繰り返したり、膜分離、クロマトグラフ法、抽出法等により、未反応のモノマー等を除去して精製することができる。
なお、ポリマーの重量平均分子量は、溶媒として、60mmol/Lのリン酸と50mmol/Lのリチウムブロマイドを含有するジメチルホルムアミドを用いたゲルクロマトグラフィー法により、標準物質としてポリスチレンを用いて測定される。
ここで中和度は、塩生成基がアニオン性基である場合、下記式によって求めることができる。
{[中和剤の重量(g)/中和剤の当量]/[ポリマーの酸価 (KOHmg/g)×ポリマーの重量(g)/(56×1000)]}×100
塩生成基がカチオン性基である場合は、下記式によって求めることができる。
{[中和剤の重量(g)/中和剤の当量]/[ポリマーのアミン価 (HCLmg/g)×ポリマーの重量(g)/(36.5×1000)]}×100
酸価やアミン価は、ポリマーの構成単位から、計算で算出することができる。または、適当な溶剤(例えばメチルエチルケトン)にポリマーを溶解して、滴定する方法でも求めることができる。
着色剤は、本発明の光沢性の効果を発揮するために用いられる。着色剤としては特に制限はなく、顔料、疎水性染料、水溶性染料(酸性染料、反応染料、直接染料等)等を用いることができるが、耐水性、分散安定性及び耐擦過性の観点から、顔料及び疎水性染料が好ましい。中でも、近年要求が強い高耐候性を発現させるためには、顔料を用いることが好ましい。
顔料及び疎水性染料は、水系インクに使用する場合には、界面活性剤、ポリマーを用いて、インク中で安定な微粒子にする必要がある。特に、耐滲み性、耐水性等の観点から、ポリマーの粒子中に顔料及び/又は疎水性染料を含有させることが好ましい。
顔料は、無機顔料及び有機顔料のいずれであってもよい。また、必要に応じて、それらと体質顔料を併用することもできる。
無機顔料としては、例えば、カーボンブラック、金属酸化物、金属硫化物、金属塩化物等が挙げられる。これらの中では、特に黒色水系インクにおいては、カーボンブラックが好ましい。カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、サーマルランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等が挙げられる。
有機顔料としては、例えば、アゾ顔料、ジアゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、チオインジゴ顔料、アンソラキノン顔料、キノフタロン顔料等が挙げられる。
好ましい有機顔料の具体例としては、C.I.ピグメント・イエロー、C.I.ピグメント・レッド、C.I.ピグメント・バイオレット、C.I.ピグメント・ブルー、及びC.I.ピグメント・グリーンからなる群から選ばれる1種以上の各品番製品が挙げられる。
体質顔料としては、シリカ、炭酸カルシウム、タルク等が挙げられる。
疎水性染料としては、油溶性染料、分散染料等が挙げられ、これらの中では油溶性染料が好ましい。
油溶性染料としては、例えば、C.I.ソルベント・ブラック、C.I.ソルベント・イエロー、C.I.ソルベント・レッド、C.I.ソルベント・バイオレット、C.I.ソルベント・ブルー、C.I.ソルベント・グリーン、及びC.I.ソルベント・オレンジからなる群から選ばれる1種以上の各品番製品が挙げられ、オリエント化学株式会社、BASF社等から市販されている。
分散染料としては、例えば、C.I.ディスパーズ・イエロー、C.I.ディスパーズ・オレンジ、C.I.ディスパーズ・レッド、C.I.ディスパーズ・バイオレット、C.I.ディスパーズ・ブルー、C.I.ディスパーズ・グリーンからなる群から選ばれる1種以上の各品番製品が挙げられる。これらの中では、イエローとしてC.I.ソルベント・イエロー29及び30、シアンとしてC.I.ソルベント・ブルー70、マゼンタとしてC.I.ソルベント・レッド18及び49、ブラックとしてC.I.ソルベント・ブラック3及び7、及びニグロシン系の黒色染料が好ましい。
これらの中でも、白色と黒色及びその中間色である灰色を除く有彩色の着色剤が好ましい。上記の着色剤は、単独で又は2種以上を任意の割合で混合して用いることができる。
本発明の水分散体又は水系インク中の各成分の含有量及びそれらの割合は次のとおりである。
水不溶性有機化合物の含有量は、光沢性向上の観点から、下限は、好ましくは0.1重量%以上、更に好ましくは0.15重量%以上、特に好ましくは0.3重量%以上、最も好ましくは0.5重量%以上であり、上限は、好ましくは10重量%以下、更に好ましくは5重量%以下、特に好ましくは3重量%以下、最も好ましくは2重量%以下である。これらの観点から、水不溶性有機化合物の含有量は、0.1〜10重量%が好ましく、0.15〜5重量%が更に好ましく、0.3〜3重量%が特に好ましく、0.5〜2重量%が最も好ましい。
ポリマー粒子の含有量(水不溶性有機化合物、着色剤を除いた固形分量。以下同じ。)は、印字濃度、光沢性向上の観点から、0.5〜30重量%が好ましく、1〜20重量%が更に好ましく、1〜15重量%が特に好ましい。
着色剤の含有量は、印字濃度の観点から、1〜30重量%が好ましく、2〜25重量%が更に好ましく、2〜20重量%が特に好ましい。
〔水不溶性有機化合物/ポリマー粒子〕の重量比は、光沢性向上の観点から、1/100〜5/1が好ましく、1/50〜2/1がより好ましく、1/50〜1/1が更に好ましく、1/30〜1/1が更に好ましく、1/10〜1/1が特に好ましく、1/6〜1/2が最も好ましい。
〔水不溶性有機化合物/着色剤〕の重量比は、光沢性向上の観点から、1/40〜5/1であることが好ましく、1/30〜1/1であることが更に好ましく、1/10〜1/1が特に好ましい。
〔ポリマー粒子/着色剤〕の重量比は、ポリマー粒子の分散安定性の観点から、5/95〜90/10であることが好ましく、10/90〜75/25であることが更に好ましく、20/80〜50/50が特に好ましい。
本発明の水分散体の表面張力(20℃)は、好ましくは30〜65mN/m、更に好ましくは35〜60mN/mである。また、水系インクの表面張力(25℃)は、インクノズルからの良好な吐出性を確保する観点から、好ましくは20〜35mN/m、更に好ましくは25〜35mN/mである。
本発明の水分散体の10重量%の粘度(20℃)は、水系インクとした際に好ましい粘度とするために、2〜6mPa・sが好ましく、2〜5mPa・sが更に好ましい。また、本発明の水系インクの粘度(20℃)は、良好な吐出性を維持するために、2〜12mPa・sが好ましく、2.5〜10mPa・sが更に好ましい。
着色剤が、疎水性染料又は顔料の場合は、疎水性染料又は顔料が水不溶性ポリマー粒子に含有されてなるものが、分散安定性及び耐擦過性などの観点から好ましい。
工程(1):水不溶性ポリマー、有機溶媒、着色剤、水、及び必要なら中和剤を含有する混合物を得る工程
工程(2):工程(1)で得られた混合物を分散処理して、着色剤を含有する水不溶性ポリマー粒子の分散体を得る工程
工程(3):工程(2)得られた分散体から前記有機溶媒を除去して、着色剤を含有する水不溶性ポリマー粒子の水分散体を得る工程
工程(1)では、まず、前記水不溶性ポリマーを有機溶媒に溶解させ、次に着色剤、水、及び必要に応じて中和剤、界面活性剤等を、得られた有機溶媒溶液に加えて混合し、水中油型の分散体を得る方法が好ましい。混合物中、着色剤は、5〜50重量%が好ましく、10〜40重量%が更に好ましく、有機溶媒は、10〜70重量%が好ましく、10〜50重量%が更に好ましく、水不溶性ポリマーは、2〜40重量%が好ましく、3〜20重量%が更に好ましく、水は、10〜70重量%が好ましく、20〜70重量%が更に好ましい。
水不溶性ポリマーが塩生成基を有する場合、中和剤を用いることが好ましいが、中和度には、特に限定がない。通常、最終的に得られる水分散体の液性が中性、例えば、pHが4.5〜10であることが好ましい。前記水不溶性ポリマーの望まれる中和度により、pHを決めることもできる。中和剤としては、前記のものが挙げられる。また、水不溶性ポリマーを予め中和しておいてもよい。
有機溶媒としては、エタノール、イソプロパノール、イソブタノール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン系溶媒及びジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒が挙げられる。好ましくは、水に対する溶解度が20℃において、50重量%以下でかつ10重量%以上のものであり、特に、メチルエチルケトンが好ましい。
混合物を予備分散させる際には、アンカー翼等の一般に用いられている混合撹拌装置を用いることができる。混合撹拌装置の中では、ウルトラディスパー〔浅田鉄鋼株式会社、商品名〕、エバラマイルダー〔荏原製作所株式会社、商品名〕、TKホモミクサー、TKパイプラインミクサー、TKホモジェッター、TKホモミックラインフロー、フィルミックス〔以上、プライミクス株式会社、商品名〕、クリアミックス〔エム・テクニック株式会社、商品名〕、ケイディーミル〔キネティック・ディスパージョン社、商品名〕等の高速攪拌混合装置が好ましい。
本分散の剪断応力を与える手段としては、例えば、ロールミル、ビーズミル、ニーダー、エクストルーダ等の混練機、高圧ホモゲナイザー〔株式会社イズミフードマシナリ、商品名〕、ミニラボ8.3H型〔Rannie社、商品名〕に代表されるホモバルブ式の高圧ホモジナイザー、マイクロフルイダイザー〔Microfluidics 社、商品名〕、ナノマイザー〔ナノマイザー株式会社、商品名〕、アルティマイザー〔スギノマシン株式会社、商品名〕、ジーナスPY〔白水化学株式会社、商品名〕、DeBEE2000 〔日本ビーイーイー株式会社、商品名〕等のチャンバー式の高圧ホモジナイザー等が挙げられる。これらの装置は複数を組み合わせることもできる。これらの中では、顔料を用いる場合に、顔料の小粒子径化の観点から、高圧ホモジナイザーが好ましい。
得られた着色剤を含有するポリマー粒子の水分散体は、着色剤を含有するポリマーの固体分が水を主溶媒とする中に分散しているものである。ここで、ポリマー粒子の形態は特に制限はなく、少なくとも着色剤とポリマーにより粒子が形成されていればよい。例えば、ポリマーに着色剤が内包された粒子形態、ポリマー中に着色剤が均一に分散された粒子形態、ポリマー粒子表面に着色剤が露出された粒子形態等が含まれる。
本発明のインクジェット記録用水分散体は、前記工程(1)〜(3)を含み、前記工程(1)〜(3)の少なくともいずれかの工程中又は工程後に、水不溶性有機化合物を存在させることにより、得ることができる。
好ましくは、工程(3)で得られた着色剤を含有するポリマー粒子の水分散体と水不溶性有機化合物とを混合して得られるものが好ましい。
得られる水分散体は、水不溶性有機化合物の少なくともその一部がポリマー粒子に含有されており、水不溶性有機化合物と着色剤とを含有する水不溶性ポリマー粒子の水分散体である。
得られる水分散体及び水系インクにおける、ポリマー粒子の平均粒径は、プリンターのノズルの目詰まり防止及び分散安定性の観点から、好ましくは0.01〜0.5μm、より好ましくは0.03〜0.3μm、特に好ましくは0.05〜0.2μmである。なお、平均粒径は、大塚電子株式会社のレーザー粒子解析システムELS−8000(キュムラント解析)で測定することができる。測定条件は、温度25℃、入射光と検出器との角度90°、積算回数100回であり、分散溶媒の屈折率として水の屈折率(1.333) を入力する。測定濃度は、通常5×10-3重量%程度で行う。
なお、ポリマー粒子に水不溶性有機化合物及び/又は着色剤が更に含有されても、ポリマー粒子の平均粒径は前記と同じ範囲であることが好ましい。
本発明で得られる印字物の20°光沢度は、通常20〜130であり、好ましくは30〜130である。
本発明の水系インクを適用するインクジェットの方式は制限されないが、特にピエゾ方式のインクジェットプリンターに好適である。
製造例1
反応容器内に、メチルエチルケトン20部及び重合連鎖移動剤(2−メルカプトエタノール)0.03部、表1に示す各モノマーの200部の10%を入れて混合し、窒素ガス置換を十分に行い、混合溶液を得た。
一方、滴下ロートに、表1に示すモノマーの残りの90%を仕込み、前記重合連鎖移動剤0.27部、メチルエチルケトン60部及びラジカル重合開始剤(2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル))1.2部を入れて混合し、十分に窒素ガス置換を行い、混合溶液を得た。
窒素雰囲気下、反応容器内の混合溶液を攪拌しながら65℃まで昇温し、滴下ロート中の混合溶液を3時間かけて徐々に滴下した。滴下終了から65℃で2時間経過後、前記ラジカル重合開始剤0.3部をメチルエチルケトン5部に溶解した溶液を加え、更に65℃で2時間、70℃で2時間熟成させ、さらにメチルエチルケトン115部加え、30分間攪拌し、固形分含有量(有効分含有量)50%のポリマー溶液を得た。
得られたポリマーの重量平均分子量を前記方法により測定した。結果を表1に示す。
なお、表1に示す化合物の詳細は、以下のとおりである。
(b)スチレンマクロマー
東亜合成株式会社製、商品名:AS−6S、数平均分子量:6000、重合性官能基:メタクロイルオキシ基
(d)M−90G
ポリエチレングリコールモノメタクリレート(エチレンオキシド平均付加モル数=9):新中村化学工業株式会社製、商品名:NKエステルM−90G
(d)PP−500
ポリプロピレングリコールモノメタクリレート(プロピレンオキシド平均付加モル数=9):日本油脂株式会社製、商品名:ブレンマーPP−500
製造例1で合成されたポリマー(メタクリル酸/ベンジルメタクリレート/スチレンマクロマー/スチレン/M−90G/PP−500=10部/40部/15部/10部/5部/20部)(有効分重量比)のLogP値は、以下のように計算される。
メタクリル酸のLogP値は0.99(分子量:86)、ベンジルメタクリレートのLogP値は2.98(分子量:176)、スチレンのLogP値は2.89(分子量:104)であり、スチレンマクロマーは、メタクリル酸を基本構造に、スチレンが約57モル付加していることから、そのLogP値は165.72(=0.99+57×2.89)となる。
M−90G
ポリエチレングリコールモノメタクリレート(エチレンオキシド平均付加モル数=9): メタクリロイルオキシ基を有しており、エチレンオキサイドが9モル付加しており、末端がメチル基であることから、メタクリル酸を基本構造に、エチレンオキサイドを9モル有していることになる。エチレンオキサイドのLogP値が−0.27であり、メタクリル酸のLogP値は0.99であることから、M−90GのLogP値は−0.89(=0.99−0.27×9+0.55、分子量:496)と計算される。
PP−500
ポリプロピレングリコールモノメタクリレート(プロピレンオキシド平均付加モル数=9):メタクリロイルオキシ基を有しており、プロピレンオキサイドが9モル付加しており、末端が水素原子であることから、メタクリル酸を基本構造に、プロピレンオキサイドを9モル有していることになる。プロピレンオキサイドのLogP値は0.14であり、メタクリル酸のLogP値は0.99であることから、PP−500のLogP値は2.25(=0.99+0.14×9、分子量:608)と計算される。
また、各モノマーの合計モル数は、0.485(=10/86+15/6000+40/176+10/104+5/496+20/608)である。
製造例1で合成されたポリマーのLogP値は、各モノマーのLogP値に、各モノマーのモル%を乗じた値の合計値であるから、3.20[=0.99×10/86/0.485+2.98×40/176/0.485+165.72×15/6000/0.485+2.89×10/104/0.485+(−0.89)×5/496/0.485+2.25×20/608/0.485]となる。
水不溶性有機化合物(1)
アジピン酸を基本構造にエチレンオキサイドが4モル、プロピレンオキサイドが4モル付加しており、両末端に2−エチルヘキシル基を有している。アジピン酸のLogP値は0.29であり、エチレンオキサイドのLogP値は−0.27、プロピレンオキサイドのLogP値は0.14、2−エチルヘキシル基のLogP値は3.91であることから、水不溶性有機化合物(1)のLogP値は7.59(0.29−0.27×4+0.14×4+3.91×2)と計算される。
水不溶性有機化合物(2)
アジピン酸を基本構造にエチレンオキサイドが6モル、プロピレンオキサイドが12モル付加しており、両末端に2−エチルヘキシル基を有している。アジピン酸のLogP値は0.29であり、エチレンオキサイドのLogP値は−0.27、プロピレンオキサイドのLogP値は0.14、2−エチルヘキシル基のLogP値は3.91であることから、水不溶性有機化合物(2)のLogP値は8.17(0.29−0.27×6+0.14×12+3.91×2)と計算される。
水不溶性有機化合物(3)
フタル酸を基本構造にエチレンオキサイドが8モル付加しており、両末端に2−エチルヘキシル基を有している。フタル酸のLogP値は0.57であり、エチレンオキサイドのLogP値は−0.27、2−エチルヘキシル基のLogP値は3.91であることから、水不溶性有機化合物(3)のLogP値は6.23(0.57−0.27×8+3.91×2)と計算される。
水不溶性有機化合物(4)
アジピン酸を基本構造にプロピレンオキサイドが8モル付加しており、両末端に2−エチルヘキシル基を有している。アジピン酸のLogP値は0.29であり、エチレンオキサイドのLogP値は0.14、2−エチルヘキシル基のLogP値は3.91であることから、水不溶性有機化合物(4)のLogP値は9.23(0.29+0.14×8+3.91×2)と計算される。
水不溶性有機化合物のlogP値の計算結果を、表2に纏めて示す。
[水分散体の製造]
製造例1で得られたポリマー溶液81.00部、有機溶媒として、メチルエチルケトン(沸点(101325Pa):79℃)50部、5mol/L NaOH水溶液6.68部、25重量%アンモニア水3.2部を加え混合し、更に顔料としてキナクリドン顔料(C.I.ピグメント・バイオレット19〔P.V.19〕、クラリアントジャパン株式会社製、商品名:HostapermRed E5B02)139.50部を加えて、十分に混合した後3本ロールミル〔株式会社ノリタケカンパニー製、商品名:NR‐84A〕を用いて約0.5〜1時間、約20℃で混練してペーストを得た。混練中、有機溶媒が蒸散するにつれて、イオン交換水150部を徐々に添加した。得られたペーストの一部をイオン交換水400部に投入し、十分に攪拌した後、マイクロフルイダイザー(Microfluidics社製、商品名)で200MPaの圧力で15パス分散処理し、得られた分散液を減圧下で、60℃で有機溶媒を含有量が0.01%以下になるまで、有機溶媒または一部の水を除去し、日立工機株式会社製、高速冷却遠心分離機(MODEL:CR22G)を用い116000RPM,10分間の遠心分離処理を行った後、5μmのフィルター(アセチルセルロース膜、外径:2.5cm、富士写真フイルム株式会社製)を取り付けた容量25mLの針なしシリンジ(テルモ株式会社製)で濾過し、粗大粒子を除去した後、イオン交換水で濃度調整を行い固形分濃度が25質量%の顔料を含有するポリマー粒子の水分散体を得た。
前記分散体450部、水不溶性有機化合物として、水不溶性有機化合物(1)10.89部、イオン交換水26.98部を加え、ディスパー翼で15℃、6000RPMで2時間混合した後、5μmのフィルター(アセチルセルロース膜、外径:2.5cm、富士写真フイルム株式会社製)を取り付けた容量25mLの針なしシリンジ(テルモ株式会社製)で濾過した後、イオン交換水で濃度調整を行い固形分濃度が20%の水不溶性有機化合物を含有する、顔料を含有するポリマー粒子の水分散体を得た。
得られた顔料分散体39.65部、グリセリン10部、トリエチレングリコールモノブチルエーテル(TEGMBE)7部、サーフィノール465(日信化学工業株式会社製)1部、プロキセルXL2(アビシア株式会社製)0.3部及びイオン交換水42.05部を混合し、得られた混合液を1.2μmのフィルター(アセチルセルロース膜、外径:2.5cm、富士写真フイルム株式会社製)を取り付けた容量25mLの針なしシリンジで濾過し、粗大粒子を除去することにより、表3に示す水系インクを得た。
水分散体の製造工程で水不溶性有機化合物(1)に替えて、水不溶性有機化合物(2)を同量用いた以外は、実施例1と同様に水系インクを得た。
比較例1
水分散体の製造工程で水不溶性有機化合物(1)に替えて、水不溶性有機化合物(3)を同量用いた以外は、実施例1同様に水系インクを得た。
比較例2
水分散体の製造工程で水不溶性有機化合物(1)替えて、水不溶性有機化合物(4)を同量用いた以外は、実施例1と同様に水系インクを得た。
(1)光沢度
セイコーエプソン株式会社製プリンター(型番:EM−930C、ピエゾ方式)を用い、市販の専用紙(写真用紙<光沢>セイコーエプソン株式会社製、商品名:KA450PSK)にベタ印字し〔印字条件=用紙種類:フォトプリント紙、モード設定:フォト〕、25℃で24時間放置後、20°の光沢度を光沢計(日本電色工業株式会社製、商品名:HANDY GLOSSMETER PG-1)で5回測定し、その平均値を求めた。数値が大きい方が、光沢度が高い。
(2)保存安定性
表2記載のインクをガラス製密閉容器に充填し、70℃、1週間保存後の平均粒径を粒径測定器(大塚電子株式会社製、商品名:ELS−8000)を用いて前記条件で測定し、下記式より粒径増加率を求めた。数値が100に近い方が、保存安定性が良い。
粒径増加率=[保存後の平均粒径(70℃、1週間保存後の粒径)/保存前の平均粒径(保存前の粒径)]×100
Claims (6)
- 着色剤を含有するポリマー粒子、及びLogP値が7.0〜9.0である下記一般式(1)で表される水不溶性有機化合物を含有する、インクジェット記録用水分散体。
- 水分散体中における、〔水不溶性有機化合物の含有量/ポリマー粒子の含有量(水不溶性有機化合物、着色剤を除いた固形分量)〕の重量比が1/100〜5/1である、請求項1に記載のインクジェット記録用水分散体。
- 水分散体中における、〔ポリマー粒子/着色剤〕の重量比が、5/95〜90/10である、請求項1又は2に記載のインクジェット記録用水分散体。
- 水分散体中、水不溶性有機化合物の含有量が、0.1〜10重量%である、請求項1〜3のいずれかに記載のインクジェット記録用水分散体。
- ポリマー粒子のポリマーが、(a)塩生成基含有モノマー、(b)マクロマー及び/又は(c)疎水性モノマーを含むモノマー混合物を共重合させてなる水不溶性ビニルポリマーである、請求項1〜4のいずれかに記載のインクジェット記録用水分散体。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の水分散体を含有するインクジェット記録用水系インク。
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