JP4699238B2 - 強化繊維基材及び繊維強化プラスチック - Google Patents
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Description
したがって、特にFRP部材を工業的に生産する現場では、成形時に、樹脂を強化繊維基材に確実に含浸させるための工夫がなされている。このような工夫の一つとして、強化繊維基材を型上に配置し、これをバッグ材で覆った後、バッグ材と型で囲まれた空間を真空ポンプ等で吸引して減圧(負圧)し、この空間に樹脂を導入する、真空バッグ法が知られている(例えば、特許文献1)。
FRP部材の機械的強度には、繊維基材を構成する繊維の「うねり」が影響しており、この「うねり」が大きいほど、FRPの機械的強度が低下するとされていた。そこで、この「うねり」を小さくするために、繊維束を編み込んだ織物に替わり、繊維束を引き揃えて一平面となるように束ねた、ステッチ・ファブリックが開発されている(例えば、特許文献2参照)。ところが、特許文献2に開示されたステッチ・ファブリックにおいても、繊維束を束ねる「止め糸」(又は「横糸」)が繊維束を横切るように配置されている。このように、止め糸が繊維束を横切るように配置されているため、繊維束は、これを横切るように配置された止め糸で押し込まれてしまい、この部分において繊維束が湾曲して「うねり」が発生していた。
そこで、本発明者等は、特許文献3において、繊維束の「うねり」を最小限にした、強化繊維基材を提案した。この強化繊維基材は、ステッチ方向を繊維束の引き揃え方向(以下、「主方向」と称す)と平行にしたものである。
ところが、FRP部材の用途によっては、等方的な強度よりも一方向の強度が高いことが要求されることがある。例えば、大型風車翼をFRP部材で構成する場合には、翼長方向の機械的強度が特に重視される。一方向(翼長方向)の機械的強度を重視する場合には、主方向の繊維配向を多くした強化繊維基材を使用することになるが、それのみでは機械的強度の向上には限界がある。
本発明は以上の背景に鑑み、主方向の機械的強度が向上された繊維強化基材を提供することを目的とする。
本発明の強化繊維基材は、主繊維群における多数本の繊維は密に配設されており、副繊維群における多数本の繊維は、主繊維群における多数本の繊維よりも粗に配設されている。主繊維群における繊維を密に配設するのは、単位体積当たりの繊維量を増やして、主方向における機械的強度を向上するためである。また、副繊維群における繊維を主繊維群における繊維よりも粗に配設するのは、強化繊維基材への樹脂の含浸を容易にするためである。具体的には、副繊維群の繊維は1〜5mmの間隔をおいて配設することが好ましい。
本発明における強化繊維基材において、主繊維群における繊維の引き揃え方向と、副繊維群における繊維の引き揃え方向の角度の絶対値が10〜25°であることが本発明にとって好ましい。
また、本発明の強化繊維基材を用いたFRPは、主方向の機械的強度が向上されているため、大型風車翼等のように一方向の機械的強度が要求される用途に適している。
図1は本発明による強化繊維基材10を示す平面図である。
この強化繊維基材10は、多数本の繊維1aが所定方向に引き揃えて配設された主繊維群1と、主繊維群1に積層される、多数本の繊維2aが所定方向に引き揃えて構成された第1の副繊維群2と、多数本の繊維3aが所定方向に引き揃えて構成された第2の副繊維群3と、主繊維群1と第1の副繊維群2、主繊維群1と第2の副繊維群3とを縫い合わせる止め糸4とを備えている。主繊維群1を構成する繊維1aの引き揃え方向を主方向という。止め糸4は、繊維ずれを防ぐ機能を有していればよく、チェーステッチやトリコットなど種々のステッチングを使用することができる。
繊維1aは、多数本の繊維を平行に引き揃え、かつ結束した繊維束から構成することもできる。繊維1aは、ガラス繊維、炭素繊維、ケイ素系繊維、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、芳香族ポリアミド系繊維、全芳香族ポリエステル系繊維、その他公知の補強繊維から構成することができる。繊維1aは、上記各種繊維の単一種とすることができるが、複数種の繊維を組合わせて用いることもできる。
繊維1aと同様の材料で構成することができる。つまり、繊維2a、繊維3aは、ガラス繊維、炭素繊維、ケイ素系繊維、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、芳香族ポリアミド系繊維、全芳香族ポリエステル系繊維、その他公知の補強繊維から構成することができる。
第1の副繊維群2を構成する多数本の繊維2a、第2の副繊維群3を構成する多数本の繊維3aとは、同一の材料から構成することができるし、異なる材料から構成することができる。例えば、繊維2aと繊維3aとをともにガラス繊維から構成することができる。また、繊維2aを炭素繊維から構成し、繊維3aをガラス繊維から構成することもできる。
さらに、主繊維群1を構成する繊維1aと、繊維2a、繊維3aは、同一の材料から構成することができるし、異なる材料から構成することもできる。例えば、繊維1aをガラス繊維から構成し、繊維2a及び繊維3aもガラス繊維から構成することができる。また、繊維1aをガラス繊維から構成し、繊維2a及び繊維3aを炭素繊維から構成することもできる。
ガラス繊維と炭素繊維とを比べると、強度、剛性の点では炭素繊維が優れるが、靭性の点ではガラス繊維が優れる。また、コストの点では、ガラス繊維が優位である。したがって、これらの特徴を考慮して、繊維1a、繊維2a及び繊維3aの材質を適宜設定することができる。
繊維2a、3aは、その番手が50g/m2程度のものを用いることができる。
<第1の実施例>
図1に示す形態の強化繊維基材10において、主繊維群1を構成する繊維1a、第1の副繊維群2を構成する繊維2a及び第2の副繊維群3を構成する繊維3aを以下の仕様とし、真空バッグ法によりFRP部材を作製した。この際、繊維2aの引き揃え方向と主方向とがなす角度θ1、繊維3aの引き揃え方向と主方向とがなす角度θ2を変動させて、FRP部材の主方向における引張り強さを測定した。その結果を表1に示す。
繊維1a:ガラス繊維 線径;23μm、番手;600g/m2
繊維2a、繊維3a:ガラス繊維 線径;23μm、番手;600g/m2 繊維間;1mm
使用樹脂:ポリエステル樹脂
図1に示す形態の強化繊維基材10において、主繊維群1を構成する繊維1a、第1の副繊維群2を構成する繊維2a及び第2の副繊維群3を構成する繊維3aを以下の仕様とし、真空バッグ法によりFRP部材を作製した。この際、繊維2aの引き揃え方向と主方向とがなす角度θ1、繊維3aの引き揃え方向と主方向とがなす角度θ2を変動させて、FRP部材の主方向における引張り強さを測定した。その結果を表2に示す。
繊維1a:炭素繊維 線径;7μm、番手;230g/m2
繊維2a、繊維3a:炭素繊維 線径;7μm、番手;170g/m2 繊維間;1mm
使用樹脂:エポキシ樹脂
図1に示す形態の強化繊維基材10において、主繊維群1を構成する繊維1a、第1の副繊維群2を構成する繊維2a及び第2の副繊維群3を構成する繊維3aを以下の仕様とし、真空バッグ法によりFRP部材を作製した。この際、繊維2aの引き揃え方向と主方向とがなす角度θ1、繊維3aの引き揃え方向と主方向とがなす角度θ2を各々20°、−20°とし、FRP部材の主方向における引張り強さ、破壊靱性値を測定した。その結果を表3に示す。
繊維1a:炭素繊維 線径;7μm、番手;230g/m2
繊維2a、繊維3a:ガラス繊維又は炭素繊維 線径;13μm、番手;60g/m2 繊維間;1mm
使用樹脂:エポキシ樹脂
図1に示す形態の強化繊維基材10において、主繊維群1を構成する繊維1a、第1の副繊維群2を構成する繊維2a及び第2の副繊維群3を構成する繊維3aを以下の仕様とし、真空バッグ法によりFRP部材を作製した。この際、繊維2aの引き揃え方向と主方向とがなす角度θ1、繊維3aの引き揃え方向と主方向とがなす角度θ2を、各々20°、−20°とした。真空バッグ法による樹脂の含浸状況を確認するとともに、FRP部材の主方向における引張り強さを測定した。その結果を表4に示す。
繊維1a:炭素繊維 線径;7μm、番手;170g/m2
繊維2a、繊維3a:炭素繊維 線径;13μm、番手;30〜170g/m2 繊維間;1mm
使用樹脂:エポキシ樹脂
Claims (5)
- 多数本の繊維が所定方向に引き揃えて構成された主繊維群と、
前記主繊維群に積層される、多数本の繊維が所定方向に引き揃えて構成された副繊維群と、
前記主繊維群と前記副繊維群を縫い合わせる止め糸と、を備え、
前記主繊維群における前記繊維の引き揃え方向と、前記副繊維群における前記繊維の引き揃え方向とがなす角度の絶対値が2〜25°であり、
前記主繊維群における多数本の前記繊維は密に配設されており、
前記副繊維群における多数本の前記繊維は、前記主繊維群における多数本の前記繊維よりも粗に配設されていることを特徴とする強化繊維基材。 - 前記主繊維群における前記繊維の引き揃え方向と、前記副繊維群における前記繊維の引き揃え方向とがなす角度の絶対値が10〜25°であることを特徴とする請求項1に記載の強化繊維基材。
- 前記副繊維群における多数本の前記繊維は、1〜5mmの間隔をおいて配設されることを特徴とする請求項2に記載の強化繊維基材。
- 前記主繊維群を挟んでその表裏両面又は前記主繊維群の表裏面のいずれか一面側に、一対の前記副繊維群が積層され、一方の前記副繊維群の前記繊維の引き揃え方向と前記主繊維群の前記繊維の引き揃え方向とがなす角度と、他方の前記副繊維群の前記繊維の引き揃え方向と前記主繊維群の前記繊維の引き揃え方向とがなす角度とが、逆向きであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の強化繊維基材。
- 樹脂組成物をマトリックスとし、強化繊維基材を強化材とする繊維強化プラスチックであって、
前記強化繊維基材は、
多数本の繊維が所定方向に引き揃えて構成された主繊維群と、
前記主繊維群に積層される、多数本の繊維が所定方向に引き揃えて構成された副繊維群と、
前記主繊維群と前記副繊維群を縫い合わせる止め糸と、を備え、
前記主繊維群における前記繊維の引き揃え方向と、前記副繊維群における前記繊維の引き揃え方向とがなす角度の絶対値が2〜25°であり、
前記主繊維群における多数本の前記繊維は密に配設されており、
前記副繊維群における多数本の前記繊維は、前記主繊維群における多数本の前記繊維よりも粗に配設されていることを特徴とする繊維強化プラスチック。
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