以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。なお、図中の矢印Uの方向を上方とする。図1には、本発明に係る筒内直噴型内燃機関の燃料噴射装置を備えたエンジンEの断面図を示している。このエンジンEは、ディーゼルエンジンであり、シリンダヘッド1と、シリンダブロック2と、クランクケース3とから構成されている。これら各部材1〜3が上下に結合されるとともに上部をヘッドカバー1aで覆うことにより、エンジンEのハウジングHが形成される。
シリンダブロック2は内部にシリンダ室2aが形成されており、このシリンダ室2aにピストン4が摺動自在に配設されている。クランクケース3は、左右のケース半体3R,3Lを接合して一体化され、内部にクランク室3aが形成される。クランク室3aには、ベアリング6,6が設けられており、クランクシャフト5がこのベアリング6,6に回転自在に支持された状態で収容されている。クランクシャフト5は、左右のシャフト部5a,5bがクランクピン5cにより結合されて一体化されている。ピストン4およびクランクシャフト5はコンロッド7を介して連結されており、ピストン4の往復動とクランクシャフト5の回転とが連動するようになっている。なお、コンロッド7はクランクピン5cに枢結されている。クランクシャフト5には、ACジェネレータ8が取り付けられている。クランクシャフト5が回転すると、ACジェネレータ8が駆動されて発電し、電気系に電力が供給される。
シリンダヘッド1は、シリンダブロック2の上部に結合されており、ピストン4の上面、シリンダ室2aの内周面およびシリンダヘッド1の内壁面により囲まれて燃焼室10が形成されている。また、燃焼室10はシリンダヘッド1により形成される副燃焼室10aが連通される。シリンダヘッド1には、燃料噴射装置40が取り付けられており、燃料噴射装置40により、燃料ポンプ30から圧送された燃料が所定のタイミングで燃焼室10に噴射される。噴射された燃料は、吸気と混合されてピストン7の上動により圧縮され、自着火燃焼する。
エンジンEの燃料系は、燃料ポンプ30と、燃料噴射装置40と、燃料ポンプ30および燃料噴射装置40を接続する燃料通路配管45を備えて構成される。
燃料ポンプ30は、内部に通路が形成されたハウジング35と、ハウジング35の内部通路を上下摺動自在に配設されて常にはポンプスプリング36aにより下方(クランクシャフト5側)に付勢されたプランジャ36とから構成され、右クランクケース3Rに結合されたポンプケース9の外方に固定されている。クランクシャフト5の右シャフト部5bには、ポンプ駆動カム37が一体に成形されており、このポンプ駆動カム37がポンプスプリング36aの一端を保持するタペット36bに当接している。これにより、クランクシャフト5の回転に伴ってプランジャ36が上下動する。プランジャ36が下動すると、図示しない燃料タンクからハウジング35の内部通路に燃料が供給され、プランジャ36が上動すると、ハウジング35内の燃料がハウジング35に取り付けられた燃料通路配管45に排出される。
図2に示すように、燃料噴射装置40は、インジェクタ50と、油圧切替弁60とを結合して構成される。インジェクタ50および油圧切替弁60は、インジェクタ50の上端部に形成された雄ねじ部51aと、油圧切替弁60の下端部に形成された雌ねじ部72eとの螺合により、上下に結合される。
インジェクタ50は、インジェクタ本体51と、下部ハウジング52と、ニードル弁55とからなる。インジェクタ本体51の上端部には雄ねじ部51aが形成されている。また、雄ねじ部51aの上端面から下方に延びる燃料供給路51bが形成されており、インジェクタ本体51の下端部において内部に形成された燃料溜まり51cに連通している。またインジェクタ本体51の下端には燃料溜まり51cと外部とを連通する燃料噴射孔51dが形成されている。
ニードル弁55は、インジェクタ本体51の下方内部に上下に延びて形成されたニードル弁収容部51eに上下移動自在に配設されたプランジャ56と、プランジャ56の着座部56aとニードル弁収容部51eの上端壁面51fとの間に跨設されて常にはプランジャ56の着座部56aを上方に臨む着座面51gに着座させるニードルスプリング57とを有して構成され、プランジャ56が着座面51gに着座した状態では、プランジャ56の下端部56bが燃料噴射孔51dを閉塞するようになっている。
このようなインジェクタ50は、燃料供給路51bに燃料が供給され、燃料溜まり51cに蓄えられた燃料の圧力が所定値を超えると、ニードルスプリング57の付勢力に抗してプランジャ56が上動して燃路噴射孔51dが開放される。すなわち、ニードル弁55が開弁した状態となり、燃料噴射孔51dから所定値以上の噴射圧で燃料が噴射される。ニードル弁55の開弁圧は、ニードルスプリング57の付勢力に応じて適宜設定され、本構成例ではエンジンEがアイドルに近い状態において適切な燃料噴射圧となるように設定されている(例えば、10MPa)。
図3に示すように、油圧切替弁60は、外殻を形成するバルブハウジング70と、バルブハウジング70の内部に設けられたバルブ保持部材75と、バルブ保持部材75により保持される第1変圧バルブ80および第2変圧バルブ90と、バルブハウジング70の内部に設けられて両変圧バルブ80,90をそれぞれ所定の方向に付勢する第1スプリング100および第2スプリング105とから構成される。
バルブハウジング70は、第1ハウジング71と第2ハウジング72とを結合し、内部にバルブ保持部材75を収容して構成される。両ハウジング71,72は、第1ハウジング71の下端部に形成された雌ねじ部71aと、第2ハウジング12の上端部に形成された雄ねじ部72aとの螺合により結合される。
第1ハウジング71は、下端部に形成された雌ねじ部(雄ねじ収容部)71aから上方に向けて円筒状の収容溝71bが凹設されている。また、収容溝71bの上端面の中心部から第1ハウジング71bの内部を上方に延びる長孔71cが形成されている。また、第1ハウジング71の上端部には雄ねじ部71eが形成されており、この雄ねじ部71dの上壁部の中心部に、上下に貫通して長孔71cに連通する油流入孔71dが形成されている。第1ハウジング71は、内部で油流入孔71dと、長孔71cと、収容溝71bとが連通され、上下方向に貫通されている。
第2ハウジング72は、上端部に形成された雄ねじ部72aに下方に向けて円筒状の収容溝72bが凹設されている。さらに、この収容溝72bの下面中心部から下方に延びて収容溝72bより小径の長孔72cが形成されている。この長孔72cの下壁部の中心部には、上下に貫通して長孔72cよりも小径の油流出孔72dが形成されている。第2ハウジング72は、内部で収容溝72bと、長孔72cと、油流出孔72dとが連通され、上下方向に貫通されている。
このように成形される両ハウジング71,72が組み付けられると、両ハウジング71,72の収容溝71b,72bが上下に連通し、上方に第1ハウジングの長孔71cが連通して下方に第2ハウジング72の長孔72cが連通する。
バルブ保持部材75は、第1ハウジング71の収容溝71bの深さと同じ高さを有するとともに収容溝71bと同径の円筒状に成形された上部円筒部75aと、第2ハウジング72の収容溝72bの深さと同じ高さを有するとともに収容溝72bと同径の円筒状に成形された下部円筒部75bとからなり、両円筒部75a,75bの中心部を上下に貫通してバルブ収容空間75cが形成されている。上部円筒部75aは第1ハウジング71の収容溝71b内に嵌着され、下部円筒部75bは第2ハウジング72の収容溝72b内に嵌着される。上部円筒部75aの上下両面にはシール部材76,76が設けられる。上面に設けられたシール部材76により第1ハウジング71とバルブ保持部材75とが密着され、下面に設けられたシール部材76により第2ハウジング72とバルブ保持部材75とが密着される。
これにより、ハウジング70の内部に、油流入孔71dからバルブ収容空間75cを介して油流出孔72cに向けて、上下方向に延びる燃料通過空間70aが形成される。両変圧バルブ80,90はそれぞれ、この燃料通過空間70aにおいてバルブ収容空間75cの内部に収容されており、バルブ収容空間75cを上下に摺動自在になっている。
第1変圧バルブ80は、外径がバルブ収容空間75cの内径にほぼ等しい円筒状に形成された本体部81と、外径が本体部81の外径よりも小さい円筒状に形成されて本体部81の上端面から上方に延びる突設部82とからなる。本体部81および突設部82は一体になっている。突設部82には、所定径の突設部中心孔82aが中心部を上下に貫通して形成されている。本体部81には、突設部中心孔82aよりも径の大きい本体部中心孔81aが中心部を上下に延びて形成され、突設部中心孔82aと連通されている。これにより、上下に延びる一体の中心連通孔80aが形成される(図5参照)。
また、本体部81は、外側面の一部が内方に向けて平断面視略半円状にえぐられており、外側面を上下に延びる切欠部81bが形成されている。本体部81にはこのような切欠部81bが4つ形成されている。4つの切欠部81bは、本体部の周方向に等間隔をおいて形成されている。第1変圧バルブ80がバルブ収容空間75cに収容されると、切欠部81bの形成面およびバルブ収容空間75cの内周面とにより囲まれた4つの外縁連通孔80b,80b,…が上下に延びて形成される(図5参照)。
第2変圧バルブ90は、外径がバルブ収容空間75cの内径にほぼ等しい円筒状に形成された本体部91と、外径が本体部91の外径よりも小さい円筒状に形成されて本体部91の下端面から下方に延びる括れ部92と、括れ部92の下端に設けられて括れ部92の下端から下方に向かうに従って拡開する円錐状に形成された円錐部93とからなる。本体部91、括れ部92および円錐部93は一体になっている。
第2変圧バルブ90は、本体部91および括れ部92がバルブ収容空間75cに収容され、円錐部93はバルブ収容空間75cに上端部のみが収容され、円錐面93aをバルブ収容空間75cの下端開口に当接させる。バルブ収容部材75は、バルブ収容空間75cの下端開口部が面取りされており、円錐部93の円錐面93aと勾配が等しいテーパ面75dが形成されている。円錐部93は、円錐面93aがこのテーパ面75dと当接することにより、バルブ収容部材75に対して面接触するようになっている。
また、第2変圧バルブ90には、一体の本体部91、括れ部92および円錐部93の中心を上下に貫通して、第1変圧バルブ80の本体部中心孔81aと同径の中心連通路90aが形成されている。また、本体部91の外側面の一部が内方に向けて平断面視半円状にえぐられており、外側面を上下に延びる切欠部91bが本体部の周方向に等間隔をおいて4つ形成されている。第2変圧バルブ90がバルブ収容空間75cに収容されると、切欠部91bの形成面とバルブ収容空間75cの内周面とにより囲まれた4つの外縁連通路90b,90b,…が上下に延びて形成される(図6参照)。
第2変圧バルブ90は、本体部91がバルブ収容空間75cの内周面に摺接される。このため、第2変圧バルブ90がバルブ収容空間75cに収容されると、括れ部92の外周面と、円錐部93の円錐面93aと、バルブ収容空間75cの内周面とにより囲まれた燃料溜め空間94が形成される。4つの外縁連通路90b,90b,…は下端がこの燃料溜め空間94に開口し、円錐部93の円錐面93aにより下部が閉塞される。
第1スプリング100は、第1ハウジング71の長孔71cの上壁面と第1変圧バルブ80の本体部81の上端面との間に跨設されており、第1変圧バルブ81を下方に向けて付勢する。第2スプリング105は、第2ハウジング72の長孔72cの下壁面と第2変圧バルブ90の下端面との間に跨設されており、第2変圧バルブ90を上方に向けて付勢する。なお、第2スプリング105の付勢力は、第1スプリング100の付勢力よりも大きく設定されている。
第2変圧バルブ90は、第2スプリング105による付勢により、常には円錐面93aをバルブ保持部材75のテーパ面75dに着座させた状態とされる。これにより、通常時における第2変圧バルブはバルブ収容空間75cの内部で、この着座位置に固定される。第1変圧バルブ80は、第1スプリング100による付勢により、常には下端面を第2変圧バルブ90の上端面に当接させた状態とされる。
このような油圧切替弁60においては、両変圧バルブ80,90がバルブ収容空間75c内で当接し、中心連通孔80aと中心連通路90aとが連通し、両変圧バルブ80,90の中心を貫通して延びる第1供給路60aが形成される。
また、図4に両変圧バルブ80,90の当接部分を示すように、第2変圧バルブ90の本体部91の上端面には、外周縁部に上端切欠部91cが形成されている。このため、バルブ収容空間75c内で第1変圧バルブ80の本体部81の下端面と第2変圧バルブ90の本体部91の上端面とが当接すると、上端切欠部91cの形成面と、第1変圧バルブ80の本体部81の下端面と、バルブ収容空間75cの内周面とにより囲まれた燃料連通空間95が形成される。
第1変圧バルブ80の外縁連通孔80bおよび第2変圧バルブ90の外縁連通路90bは、この燃料連通空間95を介して連通し、両変圧バルブ80,90の外周縁部を上下に延びる第2供給路60bが形成される。第1および第2供給路60a,60bは、上方には長孔71cを介して油流入孔71dに連通し、下方には長孔72cを介して油流出孔72dに連通する。
そして、第2ハウジング72の下端部に形成された雌ねじ部72eが、インジェクタ本体51の雄ねじ部51aと螺合し、インジェクタ50と油圧切替弁60とが上下に連通されて燃料噴射装置40が構成される。また、これにより、油圧切替弁60の油流出孔72dがインジェクタ50の燃料供給路51bと連通される。
エンジンEが始動してクランクシャフト5が回転すると、燃料ポンプ30が駆動され、燃料ポンプ30からの燃料が燃料供給配管45を介して燃料噴射装置40に供給される。燃料は、油圧切替弁60の油流入孔71dから供給される。
図7(a)に示すように、エンジンEがアイドルに近い状態であり、燃料ポンプ30からの燃料供給量が少ない場合、この燃料が油流入孔71dから油圧切替弁60に供給されると、第1変圧バルブ80の突設部中心孔82aに流入して第1供給路60aを通過し、油流出孔72dから流出する。これにより、インジェクタ50には、低圧の燃料が供給され、インジェクタ50のニードル弁55の開弁圧を超えると、燃料が渦流室11に噴射されて燃料室10に供給される。なお、ニードル弁55の開弁圧は、上記の通りアイドル状態に合わせて設定されており、エンジンEの作動時において供給された燃料が開弁圧に満たないことはない。
一方、油流出孔72dは、長孔72cおよび第2供給路60bを介して燃料溜め空間94とも連通されており、この燃料溜め空間94にも油流出孔72dからの燃料が流入する。ここで、燃料ポンプ30からの燃料の油圧Pが所定圧力値(例えば20MPa)未満である場合、第2スプリング105の上方への付勢力Fspg2は、第1スプリング100の下方への付勢力Fspg1と、燃料溜め空間94を形成する円錐部93の円錐面93aを燃料の受圧面として第2変圧バルブ90に作用する下方押圧力Fpとの合力よりも大きくなるように設定されている。このため、第2変圧バルブ90は、第2スプリング105の付勢力を受けて円錐部93の円錐面93aをバルブ保持部材75のテーパ面75dに当接させた状態で保持される。
エンジンEが高回転状態となって、図7(b)に示すように、燃料ポンプ30からの燃料供給量が多い場合、燃料が油流入孔71dから油圧切替弁60に供給されると、一部の燃料は、上記と同様にして、第1変圧バルブ80の突設部中心孔82aに流入して第1供給路60aを通過して油流出孔72dから流出される。ただし、この突設部中心孔82aは径が細く設定されているため、供給された燃料の全量がこの突設部中心孔82aを通過することができない。このため、第1変圧バルブ80の突設部82の上端面に達した燃料のうち多くは、第2供給路60b(外縁連通孔80b)に流入して燃料溜め空間94へと流入する。
上記とは逆に燃料ポンプ30からの燃料の油圧Pが上記所定圧力値(例えば20MPa)を超える場合、第1スプリング100の下方への付勢力Fspg1と、第2変圧バルブ90に作用する下方押圧力Fpとの合力が、第2スプリング105の上方への付勢力Fspg2よりも大きくなる。このため、第2変圧バルブ90は第2スプリング105の付勢力に抗して下動し、円錐部93の円錐面93aがテーパ面75dから離間し、燃料溜め空間94が第2ハウジング72の長孔72cと連通される。この第2変圧バルブ90の下動に伴い、第1変圧バルブ80は、第1スプリング100の付勢力を受け、下端面を第2変圧バルブ90の上端面と当接させた状態を保持して下動する。
図7(c)に示すように、インジェクタ50が噴射を終了し、ニードル弁55が閉弁されると、そのときに生じる圧力波がインジェクタ50から油圧切替弁60に伝播することがある。このインジェクタ50からの圧力波が生じると、燃料が油流出孔72dから逆流するようにして油圧切替弁60に流入する。このとき、第2変圧バルブ90の中心連通路90aに下端開口から上方に向けて流入し、第1変圧バルブ80の本体部中心孔81aに流入する。ここで、圧力波が小さい場合には、燃料が突設部中心孔81bに流入し、第1ハウジング71の長孔71cを通って油流入孔71dから油圧切替弁60の外部へと流出する。また、圧力波が大きい場合には、突設部中心孔82aの径が、本体部中心孔81aよりも小さく設定されていることから、全量が突設部中心孔82aを通過できなくなる。このため、本体部中心孔81aの上壁面を燃料の受圧面として第1変圧バルブ80に作用する上方押圧力により、第1変圧バルブ80が第1スプリング100の付勢力に抗して上動する。このとき、第2変圧バルブ90は、円錐部93の円錐面93aをテーパ面75dに当接させた着座位置で保持されており、第1変圧バルブ80が第2変圧バルブ90から離間する。これにより、反射波が第1変圧バルブ80により形成される外縁連通孔80bに流入する。
このように、第2変圧バルブ90を形成する円錐部93は、本構成例の油圧切替弁60において、常には燃料溜め空間94を閉塞し、油流入孔71dから燃料が供給されたときに第2供給路60bおよび燃料溜め空間94を所定の開弁圧で開放する開閉バルブとして機能するとともに、油流入孔71dから油流出孔72dに向けての流れに対しては燃料溜め空間94の開放を許容し、油流出孔72dから油流入孔71dに向けての流れに対しては、常にテーパ面75dに着座して第2供給路60bおよび燃料溜め空間94を遮断するワンウェイバルブとして機能する。
このように構成される本構成例の燃料噴射装置40においては、油圧切替弁60により、アイドルに近い状態など燃料ポンプ30からの燃料供給量が少ないときには、変圧バルブ80,90を着座位置に保持して摺動させることなく第1供給路60aを通過させ、油流出孔71dから流出させることができる。一方、高回転時など、燃料供給量が多くなると、第2変圧バルブ90に作用する押圧力が大きくなり、第2スプリング105の付勢力に抗して変圧バルブ80,90が摺動して円錐部93がテーパ面75dから離間して第2供給路60bを開放させ、燃料を第1および第2供給路60a,60bを通過させて油流出孔72dから流出させることができる。このとき、燃料には、第2スプリング105の付勢力に抗するだけの圧力が保持され、高圧になってインジェクタ50に供給される。
このように、本構成例の燃料噴射装置40においては、燃料供給量に応じて噴射圧を2段階に調整することができる。このとき、低圧燃料供給時においては、変圧バルブ80,90の位置が移動せず、高圧燃料供給時において変圧バルブ80,90を一体に下動させるようになっている。これにより、高圧の燃料を供給する必要があるときに、従来よりも作動量を小さくすることができ、作動時間を短縮させ、適切な噴射期間で燃料を燃焼室10に供給することができる。
また、第1変圧バルブ80の突設部中心孔82aが本体部中心孔81aよりも径が細くなっている。このため、インジェクタ50からの圧力波により逆流方向に燃料が流れる場合、小径部分を通過できない燃料があると第1変圧バルブ80を押圧し、第2供給路60bを通過させるようになっている。このように、圧力波が生じた場合であっても、第1および第2供給路60a,60bを通過させてスムーズに油流入孔71d側に逃がすことができる。また、この圧力波を逃がすときにおいても、第1変圧バルブ80を上動させるだけで通路断面積を増加させることができ、作動性のよい燃料噴射装置40を提供することができる。
また、本構成例においては、第2変圧バルブ90の本体部91の上端面の外周縁部に上端切欠部91cを形成し、第1変圧バルブ80により形成される外縁連通孔80b,80b,…と第2変圧バルブ90により形成される外縁連通路90b,90b,…とを、この上端切欠部91cにより形成される燃料連通空間95を介して連通させている。したがって、両変圧バルブ80,90に切欠部81b,91bを形成するときに加工を高精度で行わなくても、また、両変圧バルブ80,90をバルブ収容空間75cに収容するときに周方向の位置決めを高精度に行わなくても、外縁連通孔80bおよび外縁連通路90bを連通させることができる。このように、上端切欠部91cを形成することにより、加工作業や組付作業の容易化が図られる。また、作動中に第1および第2変圧バルブ80,90が相対回転しても、第2供給路60bを遮断させることがない。なお、第1変圧バルブ80の本体部81の下端面の外周縁部にこのような切欠部を形成しても、同様の燃料連通空間94が形成され、同様の効果が得られる。
続いて、図8〜図11を参照して本発明に関係しない参考としての燃料噴射装置110の構成例について説明する。この燃料噴射装置110は、上記構成例と同様に、インジェクタ50の上部に油圧切替弁120が結合されて構成され、筒内直噴型内燃機関であるディーゼルエンジンEの燃焼室10にインジェクタ50の燃料噴射孔51dを臨ませるようにしてシリンダヘッド1に取り付けられている。本構成例は、油圧切替弁120の構成が上記構成例と異なり、他は上記構成例と同様に構成されている。以下、上記構成例と同様部分については同一符号を付して重複説明を省略する。
図8に示すように、本構成例の油圧切替弁120は、上記構成例の油圧切替弁60を上下に逆にした構成になっている。すなわち、外殻を形成するバルブハウジング130と、バルブハウジング130の内部に設けられたバルブ保持部材135と、バルブ保持部材135により保持される第1および第2変圧バルブ140,150と、バルブハウジング130の内部に設けられて両変圧バルブ140,150をそれぞれ所定の方向に付勢する第1および第2スプリング160,165とから構成されている。
バルブハウジング130は、第1および第2ハウジング131,132が結合されて一体化されている。両ハウジング131,132は、上方に位置する第2ハウジング132の下端部に形成された雄ねじ部132aと、下方に位置する第1ハウジング131の上端部に形成された雌ねじ部131aとの螺合により結合される。
第1ハウジング131は、上端部に形成された雌ねじ部(雄ねじ収容部)131aから下方に向けて円筒状の収容溝131bが凹設されている。また、収容溝131bの下端面の中心部から第1ハウジング131の内部を上下に延びて収容溝131bよりも小径の長孔131cが形成されている。長孔131cの下壁部の中心部には、上下に貫通して長孔131bよりも小径の油流出孔131dが形成されている。第1ハウジング131は、内部で収容溝131bと、長孔131cと、油流出孔131dとが連通され、上下方向に貫通されている。
第2ハウジング132は、下端部に形成された雄ねじ部132aに上方に向けて円筒状の収容溝132bが凹設されている。さらに、この収容溝132bの上面中心部から上方に延びて収容溝132bより小径の長孔132cが形成されている。また、第2ハウジング132の上端部には雄ねじ部132eが形成されており、この雄ねじ部132eの上壁部の中心部には上下に貫通して長孔に連通する油流入孔132dが形成されている。第2ハウジング132は、内部で油流入孔132dと、長孔132cと、収容溝132bとが連通され、上下方向に貫通されている。
バルブ保持部材135は、第2ハウジング132の収容溝132bの深さと同じ高さを有するとともにこの収容溝132bと同径の円筒状に成形された上部円筒部135aと、第1ハウジング131の収容溝131bの深さと同じ高さを有するとともに収容溝131bと同径の円筒状に成形された下部円筒部135bとからなり、両円筒部135a,135bの中心部を上下に貫通してバルブ収容空間135cが形成されている。上部円筒部135aは、第2ハウジング132の収容溝132b内に嵌着され、下部円筒部135bが第1ハウジング131の収容溝131b内に嵌着される。下部円筒部135bの上下両面にはシール部材136,136が設けられ、バルブ保持部材135が、両ハウジング131,132に対して密着した状態で取り付けられる。
これにより、ハウジング130の内部に、油流入孔132dからバルブ収容空間135cを介して油流出孔131dに向けて、上下方向に延びる燃料通過空間130aが形成される。
第1および第2変圧バルブ140,150はそれぞれ、燃料通過空間130aを形成するバルブ収容空間135c内に収容され、バルブ収容空間135c内を上下に摺動自在になっている。上記構成例では第1変圧バルブ140,150が上方に配置され、第2変圧バルブ150が下方に配置されたが、本構成例では上下の配置が逆になっている。
第1変圧バルブ140は、上記構成例と同様の本体部141と、突設部142とからなり、突設部142が下方に延びるように配設される。突設部142には所定径の突設部中心孔142aが上下に貫通して形成されており、本体部141には突設部中心孔142aよりも径の大きい本体部中心孔141aが中心部を上下に延びて形成される。これにより、図10に示すように、第1変圧バルブ140の中心を上下に貫通して延びる一体の中心連通孔140aが形成される。さらに、上記構成例と同様に切欠部141bが4つ形成されており、第1変圧バルブ140がバルブ収容空間135cに収容された状態において、切欠部141b,141bの形成面およびバルブ収容空間135cの内周面とにより囲まれた4つの外縁連通孔140b,140b,…が上下に延びて形成される。
第2変圧バルブ150は、上記構成例と同様の本体部151と、括れ部152と、円錐部153とからなり、円錐部153が上方に位置して配設されている。第2変圧バルブ150は、図9に示すように、上記構成例と同様の中心連通路150aが形成されている。また切欠部151bが形成されており、第2変圧バルブ150がバルブ収容空間135cに収容された状態においては、切欠部151bの形成面とバルブ収容空間135cの内周面とにより囲まれて4つの外縁連通路150b,150b,…が上下に延びて形成される。
また、本体部151および括れ部152がバルブ収容空間75cに収容される一方、円錐部153は下端部のみがバルブ収容空間135cに収容され、円錐面153aをバルブ収容空間135cの上端開口に当接させている。バルブ収容部材135は、バルブ収容空間135cの上端開口部が面取りされてテーパ面135dが形成されている。円錐部153は、円錐面153aがこのテーパ面135dと当接される。これにより、括れ部152の外周面と、円錐部153の円錐面153aと、バルブ収容空間135cの内周面とにより囲まれた燃料溜め空間154が形成される。4つの外縁連通路150b,150b,…は、上端が燃料溜め空間154に開口し、燃料溜め空間154を介して上端が円錐面153aにより閉塞される。
第1スプリング160は、第1ハウジング131の長孔131cの下壁面と第1変圧バルブ140の本体部141の下壁面との間に跨設されており、第1変圧バルブ140を上方に向けて付勢する。第2スプリング165は、第2ハウジング132の長孔132cの上壁面と第2変圧バルブ150の上端面との間に跨設されており、第2変圧バルブ150を下方に向けて付勢する。
第2変圧バルブ150は、第2スプリング165による付勢により、常には円錐面153をバルブ保持部材135のテーパ面135dに着座させた状態になる。これにより、通常時において、第2変圧バルブ150はバルブ収容空間135c内で所定の着座位置に保持される。第1変圧バルブ140は、第1スプリング160による付勢により、常には着座位置に保持された第2変圧バルブ150の上端面に下端面を当接させた状態とされる。
本構成例の油圧切替弁120においては、両変圧バルブ140,150がバルブ収容空間135c内で当接し、第1変圧バルブ140の中心連通孔140aと、第2変圧バルブ150の中心連通路150aとが連通し、両変圧バルブ140,150の中心部を上下に貫通して延びる第1供給路120aが形成される。
また、同様にして両変圧バルブ140,150の当接部分において、第2変圧バルブ150の本体部の下端面には下端切欠部151cが形成されており、両変圧バルブ140,150によりそれぞれ形成される外縁連通孔140bおよび外縁連通路150bが、燃料連通空間155により連通され、両変圧バルブ140,150の外周縁部を上下に延びる第2供給路120bが形成される。第1および第2供給路120a,120bは、それぞれ油流入孔132dおよび油流出孔131dに連通される。なお、第2供給路120bは常には円錐部193により閉塞されている。
エンジンEが始動され、燃料ポンプ30が駆動され、燃料噴射装置110に燃料ポンプ30からの燃料が供給されると、油圧切替弁120の油流入孔132dから燃料が供給される。
図11(a)に示すように、燃料ポンプ30からの燃料供給量が少ない場合、油流入孔132dから燃料が供給されると、第2変圧バルブ150の中心孔150aに流入して第1供給路120aを通過し、第1ハウジング131の長孔131cに達して油流出孔131dから流出する。これにより、燃料ポンプ30からの燃料がインジェクタ50に供給される。
図11(b)に示すように、燃料ポンプ30からの燃料供給量が多くなると、第1供給路120aに流入した燃料は、流入側に対して径の小さい突設部中心孔142aを通過できなくなり、第1変圧バルブ140を下方に押圧する。これにより、第1変圧バルブ140が第1スプリング160の付勢力に抗して下方に押圧されると、第2変圧バルブ150は円錐部193をテーパ面135dに当接させて着座位置に保持されているため、第1および第2変圧バルブ140,150が上下に離間する。これにより、突設部中心孔142aを通過できない燃料は第2供給路120b(外縁孔140b)を通過して油流出孔131dに流れる。
また、図11(c)に示すように、インジェクタ50の噴射後に反射波が生じ、油流出孔131dから反射波が流入した場合においては、反射波は、下方に開放される第1および第2供給路120a,120bに流入する。第1供給路120aに流入した燃料は第2変圧バルブ150の中心孔150aの上方開口端から流出させることができる。第2供給路120bに流入した燃料は、燃料溜め空間124まで流入して第2変圧バルブ150を上方に押圧する。圧力波が大きいと、この押圧力が大きくなり、第2スプリング165の付勢力に抗して第2変圧バルブ150を着座位置から上方に移動させる。これにより、第2供給路120bが上下に開放され、第2供給路120bに流入した反射波を油流入孔132d側に逃がすことができる。なお、このとき、第1変圧バルブ140は第1スプリング160の付勢により第2変圧バルブ150とともに上動し、両変圧バルブ140,150は当接した状態が保持される。
このように、第2変圧バルブ150の円錐部153は、第2供給路120bを開閉する開閉バルブとして機能し、油流入孔132dから油流出孔131dに向けての流れに対しては第2供給路120bを常に閉塞して第2変圧バルブ150のバルブ収容空間135c内での上下位置を所定の着座位置に保持させるとともに、逆の流れに対しては所定圧力が作用すると第2供給路120bを開放するワンウェイバルブとして機能する。なお、第2供給路120bを開放させる圧力の設定は、第2スプリング165の付勢力の設定により行うことができる。
このように構成される本構成例の燃料噴射装置110においては、油圧切替弁120により、アイドルに近い状態など燃料ポンプ30からの燃料供給量が少ないときには、変圧バルブ140,150を着座位置に保持して摺動させることなく第1供給路120aを通過させ、油流出孔131dから流出させることができる。一方、高回転時など、燃料供給量が多くなると、燃料の全量が第1供給路120bの小径部分を通過できなくなり、第1変圧バルブ140を下方に押圧する。このように、着座位置から第1スプリング160の付勢力に抗して第1変圧バルブ140を摺動させるだけで、高圧の燃料を供給することができ、作動性がよく噴射期間を短縮することができ、適切な噴射期間で燃料を噴射させることができる。
インジェクタ50からの圧力波が生じたときには、反射波が第1供給路120aに流入して油流入孔132d側に逃がすことができる。また、この圧力波が大きいときには、第2供給路120bに流入して円錐部153を上方に押圧する。第2のスプリング165による付勢力に抗して押圧されると、第2供給路120bが開放される。これにより、圧力波が大きくても、油流入孔132d側にスムーズに逃がすことができる。
本発明に係る筒内直噴型内燃機関の燃料噴射装置を説明したが、必ずしも上記構成に限られない。本発明に係る筒内直噴型内燃機関をディーゼルエンジンとして説明したが、ディーゼルエンジンに限らず、燃焼室に供給する燃料の噴射圧を可変であることが好ましい内燃機関であれば、同様に適用して同様の効果が得られる。なお、副燃焼室10aに燃料を供給する形態としてもよい。