JP4696434B2 - 血管挟持クリップ - Google Patents
血管挟持クリップ Download PDFInfo
- Publication number
- JP4696434B2 JP4696434B2 JP2001303770A JP2001303770A JP4696434B2 JP 4696434 B2 JP4696434 B2 JP 4696434B2 JP 2001303770 A JP2001303770 A JP 2001303770A JP 2001303770 A JP2001303770 A JP 2001303770A JP 4696434 B2 JP4696434 B2 JP 4696434B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- blade
- clip
- blood vessel
- clamping
- blades
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Images
Classifications
-
- A—HUMAN NECESSITIES
- A61—MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
- A61B—DIAGNOSIS; SURGERY; IDENTIFICATION
- A61B17/00—Surgical instruments, devices or methods, e.g. tourniquets
- A61B17/12—Surgical instruments, devices or methods, e.g. tourniquets for ligaturing or otherwise compressing tubular parts of the body, e.g. blood vessels, umbilical cord
- A61B17/122—Clamps or clips, e.g. for the umbilical cord
- A61B17/1227—Spring clips
Description
【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、外科手術の際に血流を止めるために用いる血管挟持クリップに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
血管挟持用クリップは、脳外科手術の際に動脈瘤に至る血管を挟持するため等に用いるが、手術の際の侵入路となる手術創は一般に極めて狭隘であり、特に脳内血管に形成された動脈瘤などの外科手術においては、半径15mm程度の開頭部から進入しなければならないため一層視野の確保が困難であり、クリップを所定の動脈瘤の位置に掛ける操作にも著しい制約があった。
従来用いられていた血管挟持用クリップ1は、例えば、図3(a)、(b)に示すように、平行な一対の相対する血管挟持ブレード2、交差部3、弧状の鉗子把持部4、ばね作用を有するコイル状連結部5とからなり、一対のブレードはコイル状連結部のばね作用により、交差部を経て相互に逆方向に戻る作用により血管を所定の閉鎖圧によって挟持する。
【0003】
使用に際しては、専用の鉗子(クリップサプライヤー)先端の把持部にクリップのコイル状連結部を収容して弧状の鉗子把持部を開いた鉗子把持部に嵌合し、鉗子のグリップを握り込むことによって、鉗子先端を閉じて、クリップのブレードを(c)に示すように所定の間隔に開いた状態で鉗子グリップのラッチ機構によりロックする。血管を挟持する際には、一対の開いたブレードの間に対象とする血管を入れ、鉗子のグリップを更に握り込むことにより、上記ラッチが解放され、鉗子グリップのばねにより鉗子先端が開いて血管を挟持した状態でクリップを解放することができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
血管挟持クリップが、上記した機能を達成するためには、ブレードは平行に閉じて挟持すると共に、ブレード全体に亘って均一に所定の閉鎖圧を維持しなけれならない。また、上記したとおり、術野は極めて狭く、しかも操作のための姿勢やスペースは限られているため、鉗子がクリップを把持した状態で視野を妨げないこと及びクリップが対象とする血管の種々の位置や方向に対応して、挟持操作ができる必要がある。
このため、クリップの形状・構造にも種々の工夫があり、例えば図4(a)のクリップはブレード基部を屈曲させて立上がり部Bを形成してブレード挟持部の位置をクリップ軸線から所定の間隔ずらしている。
これによって、所定の挟持個所を確認してクリップを掛ける操作を行うことができる。
【0005】
また、ブレードの基部を屈曲Cさせてその方向を血管の挟持部位に応じて変えたり(b)、或いはブレード基部から先端に向けて湾曲Dさせたもの(c)が使用されている。
しかしながら、これらブレードを屈曲させて立上がり部等を形成した場合、血管を挟持する一対のブレード間の閉鎖圧が低下するばかりか均一な閉鎖圧が保たれ難く、また、血管が太い場合や硬い組織の場合、血管の挟持部位でクリップのブレードがずれて外れるいわゆるシザーリングが生じ易くなる。
ブレードによる閉鎖圧が充分でなければ、動脈瘤などの血流を完全に止めることができないが、不均一な閉鎖圧の場合も同様に部分的な血流を残して目的が達成できないこととなり、滑り易い生体組織である血管がブレード挟持部から滑って逃げて挟持位置がズレたり、失敗の原因となる。
また、シザーリングを起こせば、血管挟持操作のやり直しとなるばかりでなく、ばね作用によって弾け飛んだクリップが柔らかい神経組織を損傷する虞があり、極めて危険である。これらの問題は、手術において大きな負担となることは避けられない。
【0006】
これらの原因は、クリップの構造から次のように考えられる。図3においてコイルばね5の中心Oを通る軸線に対象に一対のブレード、交差部、鉗子把持部全体が位置し、ブレードの開閉動作はこれら全体の撓みやコイルばねの働きを合わせたものとなるが、ばね5は相対的に太く、極めて剛性の高いばねとして作用するため、ブレード、交差部、鉗子把持部全体がコイルばねの中心Oよりも遠方の点Pと先端Aを結ぶアームのように中心Oの廻りに回動するような軌跡を描くこととなる。
このため一対のブレードの開閉動作は一様に行われ、特に閉じた状態では平行となって、閉鎖圧を均一一様に保つことができる。また、コイルばねの作用もその剛性が大きく、且つコイル径が相対的に大きいことから、閉鎖圧が大きく且つブレードに均一に負荷される。
これに対して、上記のようにブレードに立上がり部Bを形成すると、ブレードの全長が長くなり、それに伴って閉鎖圧が小さくなるばかりでなく、同時に全体の撓みや捩れの影響が表れ易くなる。
【0007】
即ち、閉鎖圧を挙げるために寸法を大きくすることは、上述の条件から術式を問わず困難であり、また材質上強化することも制約がある。これに対してばねを強化しても撓みや捩れが増すと、ブレードの先端と基部、或いは幅方向に亘って閉鎖圧に差が生じることは避けられない。
また、血管挟持クリップはその交差部の交差部材31,32の相対する面を平坦にしておき、逆に捩って交差させることにより1対のブレードの相対する挟持面を一致させており、この交差状態が外れずに維持されるように予めそれぞれ反対側に向けて捩っておき、或いは更にそれぞれコイルばねの上下位置に対して上下反対側において交差させてその相互の押圧力により、相互に外れないように保持させている。
【0008】
ところが、図5(a)に示すように、ブレード2の挟持面21に対して交差部3は上記したように交差部材31,32の相対する交差面を平坦にするためその断面の外側半ばでブレード及び後方の鉗子把持部と接続しており、閉鎖圧の反力は図の矢印mのようにブレード挟持面21に偏って作用することとなり、交差部、鉗子把持部全体に対してモーメントMとして交差部の係合が外れる方向に働く。この作用は、挟持された血管などの組織10が細く、柔らかい場合には左程影響しないが、ある程度太い場合や硬い場合など、図5(b)に示すようにブレードの間隔が開くとモーメントMの影響が大きくなり、これが交差部の相互に押圧している圧力に対して相対的に大きくなると、挟持している血管の挟持状態やクリップに触れたショックなどよって交差部が反転して外れる、いわゆるシザーリングを生じる。
【0009】
従って、上記のようにブレードが延長されてモーメントアームが長くなるに従い、撓み及び捩れが生じ易くなるため、上記モーメントMの影響が大きくなることとなる。
これらの現象は、上記の図4(a)の例によって説明したが、同図(b)、(c)の場合にように屈曲部Cや湾曲したカーブDを設ける場合であっても図に示すようにその形成部位はいずれもブレードの一部であってブレードを延長した構造となることには変わりはないのであって、いずれもこれらの影響が生じることは避けられない。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、血管を挟持する一対の相対向する挟持ブレード、該一対のブレードに続く交差部、弧状の鉗子把持部及びその後方のコイル状のループからなる連結部から構成される血管挟持クリップにおいて、
上記挟持ブレードの方向及び/又は位置をクリップ軸線に対して変更するため上記交差部を上記軸線方向に対して傾斜若しくは湾曲せしめてなることを特徴とする血管挟持クリップである。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明においては、クリップのブレードの軸線に対する角度及び/又は位置関係を変更する部位を交差部に形成するが、その動作を以下に説明する。
図1は、前述の図4(a)に対応する例で、血管挟持ブレード2、交差部3、鉗子把持部4及びコイルばねからなる連結部5の構成は、従来と変わらない。本発明においては、ブレードの軸線に対する角度や位置をずらすため、交差部3の交差部材31、32の交差点X(クロス線で示す。)の移動する範囲前後にそれぞれ屈曲部35,36を形成し、その間を傾斜した立上がり部とする。
従って、上記従来例のようにクリップのブレードに所定の角度や立上がりを設けても、ブレードからコイルばねに至る間隔が延長されることはなく、所要の閉鎖圧を均一、且つ一様に保つことができ、また、シザーリングを防止することができる。
【0012】
この動作を、模式的に図2(a)及び(b)で説明する。
図中A1Pはブレードから交差部を経て連結部までの動きを模式的に表し、交差点Xはブレード先端AをA1の方向に向けて開くに連れて図中の点Pの方向に移動し、最大開度となるA1に至るまでの間、屈曲部35、36の間で移動する。このときの線分A1Pは、ブレードの一方の軌跡を模式的に示すもので、厳密には上記したようにコイルばね中心Oの廻りを回動すると共に全体の撓みを伴ってその延長線上の点Pを中心とする回動などを複合したものとなると考えられるが、簡単にするため便宜的に図中の点Pを中心とする軌跡を描くとする。
ところで、図1(a)、(c)に示す平面内においては、Aを始めとして各交差部材上の点の軌跡は図2に示すように中心線両側に向かって円弧を描く。
交差点Xは、ほぼその中心線上にあって交差部材は同一平面内で交差摺動するので、ブレードの開度に拘わらず相互の位置関係は同じく保たれ、両者間の捩られて逆に交差された構成から、交差点Xで相互に押圧作用を維持しつつ中心線上を移動することができる。
【0013】
ところで、本発明においては交差点Xの前後に屈曲部を設けているため、交差部材はこの屈曲部の間の一定の角度で傾斜した面内で交差摺動することとなる。この関係を図2(b)に示す。
すなわち、交差部3はそれぞれ図の屈曲部35及び36を通る円弧の間の円弧上で交差することとなる。
従って,厳密にはこれらの円弧はその曲率が中心Pからの距離によって異なり、また交差部材も円弧状の軌跡を描かなければならないが、交差点Xは常に中心線上にあってその上を移動する間も交差部材31及び32の位置関係が一定であり、またこれらの寸法形状は対象であること、また、これらの円弧の半径に対して交差摺動部位の幅、長さは小さなものであるから、実際上その交差摺動には支障なく、平面におけると同様に円滑にブレードの開閉操作を行うことができる。
【0014】
以上の例は、クリップの交差部に立上がり部を設けたタイプの例であるが、図4(b)に示すようなブレードにクリップの軸線方向に角度を設けた場合でも、交差部基部を屈曲して交差部に所要の角度を付ければ同様にブレード長さを延長することなく、ブレードに所要の角度をつけることができる。この場合も上記実施例同様にブレードの閉鎖圧を充分大きく、且つ均一に保ち、且つシザリング防止効果を発揮することができる。
さらに、上記説明は、交差部3が傾斜面であって交差点Xが直線上にある場合であったが、交差点Xが円弧上を移動する場合も同様に交差部材31,32はその摺動しつつブレードを開閉する操作を行うことができる。
即ち、同図を参照すると上記傾斜面に替わって曲面であっても、その軸線に対して対象であり、比較的曲率が大きい場合には、交差点Xは上記と同じく、常に中心線上にあって交差部材31及び32の位置関係が一定であり、またこれらの寸法形状は対象であって曲面の曲率半径に対して交差部位の幅、長さは小さなものであるから、実際上交差摺動には差し支えないことが判る。
このような機構例は、構造・用途を相違するが、爪切りバサミにおいても見ることができ、これらの鋏の刃面は湾曲して形成されているが、相互に相接して円滑に開閉操作を行うことができる。
【0015】
従って、図4(c)に示すような湾曲したブレードにおいても、その湾曲部を交差部から開始することが可能であり、必要によりこのような構造とすることによって、上記例と同様の作用効果を発揮することができる。
また、これらの交差部に形成する傾斜部、若しくは湾曲部は単独に形成するのみではなく、屈曲して角度を付けてから所要の曲率で湾曲することも可能であり、必要により組み合わせることにより、効果的に所要の構造・形状のクリップを作成することができる。
本発明のクリップにおいては、これらクリップの材質には格別の制約はないが、生体組織との適合性を考慮するとチタン(純チタン)が望ましく、その使用状況が緊急を要する場合が多く、CTスキャンの使用を考慮すると純チタンが好適である。特に、脳内動脈瘤を形成した血管挟持用としては、生存中そのままその生体内にとどめておくものであるから、適合性の面から純チタンが最も適する。
【0016】
【発明の効果】
本発明の血管挟持クリップは、ブレード間に充分な閉鎖圧を保持することができ、閉鎖圧が均一一様であり、シザーリングを発生し難い効果を有しており、繊細且つ緻密でしかも緊急性を要する外科手術において、使い易く、安全である。
近年、これらの高度医療の著しい進歩により、種々のケースに対応する術式も開発され、応用されるに至っているが、本発明のクリップは、これら、特に脳外科領域において優れた医療効果を発揮することが望まれ、これらの分野の産業の発展に寄与することが大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の血管挟持クリップ
【図2】本発明の動作原理図
【図3】従来例(標準型)
【図4】従来例各種
【図5】従来例のシザーリング発生の説明図
【符号の説明】
1 血管挟持クリップ
2 血管挟持ブレード
3 交差部
4 鉗子把持部
5 コイル状連結部
10 血管挟持部
21 ブレード挟持面
31、32 交差部材
35,36 屈曲部
A、A1 ブレード先端
B 立上がり部
C ブレード屈曲部
D ブレード湾曲部
O ブレード回動中心
P ブレード延長点
X 交差点
【発明が属する技術分野】
本発明は、外科手術の際に血流を止めるために用いる血管挟持クリップに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
血管挟持用クリップは、脳外科手術の際に動脈瘤に至る血管を挟持するため等に用いるが、手術の際の侵入路となる手術創は一般に極めて狭隘であり、特に脳内血管に形成された動脈瘤などの外科手術においては、半径15mm程度の開頭部から進入しなければならないため一層視野の確保が困難であり、クリップを所定の動脈瘤の位置に掛ける操作にも著しい制約があった。
従来用いられていた血管挟持用クリップ1は、例えば、図3(a)、(b)に示すように、平行な一対の相対する血管挟持ブレード2、交差部3、弧状の鉗子把持部4、ばね作用を有するコイル状連結部5とからなり、一対のブレードはコイル状連結部のばね作用により、交差部を経て相互に逆方向に戻る作用により血管を所定の閉鎖圧によって挟持する。
【0003】
使用に際しては、専用の鉗子(クリップサプライヤー)先端の把持部にクリップのコイル状連結部を収容して弧状の鉗子把持部を開いた鉗子把持部に嵌合し、鉗子のグリップを握り込むことによって、鉗子先端を閉じて、クリップのブレードを(c)に示すように所定の間隔に開いた状態で鉗子グリップのラッチ機構によりロックする。血管を挟持する際には、一対の開いたブレードの間に対象とする血管を入れ、鉗子のグリップを更に握り込むことにより、上記ラッチが解放され、鉗子グリップのばねにより鉗子先端が開いて血管を挟持した状態でクリップを解放することができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
血管挟持クリップが、上記した機能を達成するためには、ブレードは平行に閉じて挟持すると共に、ブレード全体に亘って均一に所定の閉鎖圧を維持しなけれならない。また、上記したとおり、術野は極めて狭く、しかも操作のための姿勢やスペースは限られているため、鉗子がクリップを把持した状態で視野を妨げないこと及びクリップが対象とする血管の種々の位置や方向に対応して、挟持操作ができる必要がある。
このため、クリップの形状・構造にも種々の工夫があり、例えば図4(a)のクリップはブレード基部を屈曲させて立上がり部Bを形成してブレード挟持部の位置をクリップ軸線から所定の間隔ずらしている。
これによって、所定の挟持個所を確認してクリップを掛ける操作を行うことができる。
【0005】
また、ブレードの基部を屈曲Cさせてその方向を血管の挟持部位に応じて変えたり(b)、或いはブレード基部から先端に向けて湾曲Dさせたもの(c)が使用されている。
しかしながら、これらブレードを屈曲させて立上がり部等を形成した場合、血管を挟持する一対のブレード間の閉鎖圧が低下するばかりか均一な閉鎖圧が保たれ難く、また、血管が太い場合や硬い組織の場合、血管の挟持部位でクリップのブレードがずれて外れるいわゆるシザーリングが生じ易くなる。
ブレードによる閉鎖圧が充分でなければ、動脈瘤などの血流を完全に止めることができないが、不均一な閉鎖圧の場合も同様に部分的な血流を残して目的が達成できないこととなり、滑り易い生体組織である血管がブレード挟持部から滑って逃げて挟持位置がズレたり、失敗の原因となる。
また、シザーリングを起こせば、血管挟持操作のやり直しとなるばかりでなく、ばね作用によって弾け飛んだクリップが柔らかい神経組織を損傷する虞があり、極めて危険である。これらの問題は、手術において大きな負担となることは避けられない。
【0006】
これらの原因は、クリップの構造から次のように考えられる。図3においてコイルばね5の中心Oを通る軸線に対象に一対のブレード、交差部、鉗子把持部全体が位置し、ブレードの開閉動作はこれら全体の撓みやコイルばねの働きを合わせたものとなるが、ばね5は相対的に太く、極めて剛性の高いばねとして作用するため、ブレード、交差部、鉗子把持部全体がコイルばねの中心Oよりも遠方の点Pと先端Aを結ぶアームのように中心Oの廻りに回動するような軌跡を描くこととなる。
このため一対のブレードの開閉動作は一様に行われ、特に閉じた状態では平行となって、閉鎖圧を均一一様に保つことができる。また、コイルばねの作用もその剛性が大きく、且つコイル径が相対的に大きいことから、閉鎖圧が大きく且つブレードに均一に負荷される。
これに対して、上記のようにブレードに立上がり部Bを形成すると、ブレードの全長が長くなり、それに伴って閉鎖圧が小さくなるばかりでなく、同時に全体の撓みや捩れの影響が表れ易くなる。
【0007】
即ち、閉鎖圧を挙げるために寸法を大きくすることは、上述の条件から術式を問わず困難であり、また材質上強化することも制約がある。これに対してばねを強化しても撓みや捩れが増すと、ブレードの先端と基部、或いは幅方向に亘って閉鎖圧に差が生じることは避けられない。
また、血管挟持クリップはその交差部の交差部材31,32の相対する面を平坦にしておき、逆に捩って交差させることにより1対のブレードの相対する挟持面を一致させており、この交差状態が外れずに維持されるように予めそれぞれ反対側に向けて捩っておき、或いは更にそれぞれコイルばねの上下位置に対して上下反対側において交差させてその相互の押圧力により、相互に外れないように保持させている。
【0008】
ところが、図5(a)に示すように、ブレード2の挟持面21に対して交差部3は上記したように交差部材31,32の相対する交差面を平坦にするためその断面の外側半ばでブレード及び後方の鉗子把持部と接続しており、閉鎖圧の反力は図の矢印mのようにブレード挟持面21に偏って作用することとなり、交差部、鉗子把持部全体に対してモーメントMとして交差部の係合が外れる方向に働く。この作用は、挟持された血管などの組織10が細く、柔らかい場合には左程影響しないが、ある程度太い場合や硬い場合など、図5(b)に示すようにブレードの間隔が開くとモーメントMの影響が大きくなり、これが交差部の相互に押圧している圧力に対して相対的に大きくなると、挟持している血管の挟持状態やクリップに触れたショックなどよって交差部が反転して外れる、いわゆるシザーリングを生じる。
【0009】
従って、上記のようにブレードが延長されてモーメントアームが長くなるに従い、撓み及び捩れが生じ易くなるため、上記モーメントMの影響が大きくなることとなる。
これらの現象は、上記の図4(a)の例によって説明したが、同図(b)、(c)の場合にように屈曲部Cや湾曲したカーブDを設ける場合であっても図に示すようにその形成部位はいずれもブレードの一部であってブレードを延長した構造となることには変わりはないのであって、いずれもこれらの影響が生じることは避けられない。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、血管を挟持する一対の相対向する挟持ブレード、該一対のブレードに続く交差部、弧状の鉗子把持部及びその後方のコイル状のループからなる連結部から構成される血管挟持クリップにおいて、
上記挟持ブレードの方向及び/又は位置をクリップ軸線に対して変更するため上記交差部を上記軸線方向に対して傾斜若しくは湾曲せしめてなることを特徴とする血管挟持クリップである。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明においては、クリップのブレードの軸線に対する角度及び/又は位置関係を変更する部位を交差部に形成するが、その動作を以下に説明する。
図1は、前述の図4(a)に対応する例で、血管挟持ブレード2、交差部3、鉗子把持部4及びコイルばねからなる連結部5の構成は、従来と変わらない。本発明においては、ブレードの軸線に対する角度や位置をずらすため、交差部3の交差部材31、32の交差点X(クロス線で示す。)の移動する範囲前後にそれぞれ屈曲部35,36を形成し、その間を傾斜した立上がり部とする。
従って、上記従来例のようにクリップのブレードに所定の角度や立上がりを設けても、ブレードからコイルばねに至る間隔が延長されることはなく、所要の閉鎖圧を均一、且つ一様に保つことができ、また、シザーリングを防止することができる。
【0012】
この動作を、模式的に図2(a)及び(b)で説明する。
図中A1Pはブレードから交差部を経て連結部までの動きを模式的に表し、交差点Xはブレード先端AをA1の方向に向けて開くに連れて図中の点Pの方向に移動し、最大開度となるA1に至るまでの間、屈曲部35、36の間で移動する。このときの線分A1Pは、ブレードの一方の軌跡を模式的に示すもので、厳密には上記したようにコイルばね中心Oの廻りを回動すると共に全体の撓みを伴ってその延長線上の点Pを中心とする回動などを複合したものとなると考えられるが、簡単にするため便宜的に図中の点Pを中心とする軌跡を描くとする。
ところで、図1(a)、(c)に示す平面内においては、Aを始めとして各交差部材上の点の軌跡は図2に示すように中心線両側に向かって円弧を描く。
交差点Xは、ほぼその中心線上にあって交差部材は同一平面内で交差摺動するので、ブレードの開度に拘わらず相互の位置関係は同じく保たれ、両者間の捩られて逆に交差された構成から、交差点Xで相互に押圧作用を維持しつつ中心線上を移動することができる。
【0013】
ところで、本発明においては交差点Xの前後に屈曲部を設けているため、交差部材はこの屈曲部の間の一定の角度で傾斜した面内で交差摺動することとなる。この関係を図2(b)に示す。
すなわち、交差部3はそれぞれ図の屈曲部35及び36を通る円弧の間の円弧上で交差することとなる。
従って,厳密にはこれらの円弧はその曲率が中心Pからの距離によって異なり、また交差部材も円弧状の軌跡を描かなければならないが、交差点Xは常に中心線上にあってその上を移動する間も交差部材31及び32の位置関係が一定であり、またこれらの寸法形状は対象であること、また、これらの円弧の半径に対して交差摺動部位の幅、長さは小さなものであるから、実際上その交差摺動には支障なく、平面におけると同様に円滑にブレードの開閉操作を行うことができる。
【0014】
以上の例は、クリップの交差部に立上がり部を設けたタイプの例であるが、図4(b)に示すようなブレードにクリップの軸線方向に角度を設けた場合でも、交差部基部を屈曲して交差部に所要の角度を付ければ同様にブレード長さを延長することなく、ブレードに所要の角度をつけることができる。この場合も上記実施例同様にブレードの閉鎖圧を充分大きく、且つ均一に保ち、且つシザリング防止効果を発揮することができる。
さらに、上記説明は、交差部3が傾斜面であって交差点Xが直線上にある場合であったが、交差点Xが円弧上を移動する場合も同様に交差部材31,32はその摺動しつつブレードを開閉する操作を行うことができる。
即ち、同図を参照すると上記傾斜面に替わって曲面であっても、その軸線に対して対象であり、比較的曲率が大きい場合には、交差点Xは上記と同じく、常に中心線上にあって交差部材31及び32の位置関係が一定であり、またこれらの寸法形状は対象であって曲面の曲率半径に対して交差部位の幅、長さは小さなものであるから、実際上交差摺動には差し支えないことが判る。
このような機構例は、構造・用途を相違するが、爪切りバサミにおいても見ることができ、これらの鋏の刃面は湾曲して形成されているが、相互に相接して円滑に開閉操作を行うことができる。
【0015】
従って、図4(c)に示すような湾曲したブレードにおいても、その湾曲部を交差部から開始することが可能であり、必要によりこのような構造とすることによって、上記例と同様の作用効果を発揮することができる。
また、これらの交差部に形成する傾斜部、若しくは湾曲部は単独に形成するのみではなく、屈曲して角度を付けてから所要の曲率で湾曲することも可能であり、必要により組み合わせることにより、効果的に所要の構造・形状のクリップを作成することができる。
本発明のクリップにおいては、これらクリップの材質には格別の制約はないが、生体組織との適合性を考慮するとチタン(純チタン)が望ましく、その使用状況が緊急を要する場合が多く、CTスキャンの使用を考慮すると純チタンが好適である。特に、脳内動脈瘤を形成した血管挟持用としては、生存中そのままその生体内にとどめておくものであるから、適合性の面から純チタンが最も適する。
【0016】
【発明の効果】
本発明の血管挟持クリップは、ブレード間に充分な閉鎖圧を保持することができ、閉鎖圧が均一一様であり、シザーリングを発生し難い効果を有しており、繊細且つ緻密でしかも緊急性を要する外科手術において、使い易く、安全である。
近年、これらの高度医療の著しい進歩により、種々のケースに対応する術式も開発され、応用されるに至っているが、本発明のクリップは、これら、特に脳外科領域において優れた医療効果を発揮することが望まれ、これらの分野の産業の発展に寄与することが大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の血管挟持クリップ
【図2】本発明の動作原理図
【図3】従来例(標準型)
【図4】従来例各種
【図5】従来例のシザーリング発生の説明図
【符号の説明】
1 血管挟持クリップ
2 血管挟持ブレード
3 交差部
4 鉗子把持部
5 コイル状連結部
10 血管挟持部
21 ブレード挟持面
31、32 交差部材
35,36 屈曲部
A、A1 ブレード先端
B 立上がり部
C ブレード屈曲部
D ブレード湾曲部
O ブレード回動中心
P ブレード延長点
X 交差点
Claims (1)
- 血管を挟持する一対の相対向する挟持ブレード、該一対のブレードに続く交差部、弧状の鉗子把持部及びその後方のコイル状のループからなる連結部から構成される血管挟持クリップにおいて、
上記挟持ブレードの方向及び/又は位置をクリップ軸線に対して変更するため上記交差部を上記軸線方向に対して傾斜若しくは湾曲せしめてなることを特徴とする血管挟持クリップ。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2001303770A JP4696434B2 (ja) | 2001-09-28 | 2001-09-28 | 血管挟持クリップ |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2001303770A JP4696434B2 (ja) | 2001-09-28 | 2001-09-28 | 血管挟持クリップ |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2003102736A JP2003102736A (ja) | 2003-04-08 |
JP4696434B2 true JP4696434B2 (ja) | 2011-06-08 |
Family
ID=19123807
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2001303770A Expired - Fee Related JP4696434B2 (ja) | 2001-09-28 | 2001-09-28 | 血管挟持クリップ |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP4696434B2 (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
KR20180134144A (ko) * | 2017-06-08 | 2018-12-18 | 비앤알(주) | 외과용 클립 |
Families Citing this family (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US20100256668A1 (en) * | 2006-09-19 | 2010-10-07 | Echobio Llc | Devices for treating the exterior of anatomical structure, and methods using the same |
DE102017127290A1 (de) | 2017-11-20 | 2019-05-23 | Aesculap Ag | Chirurgischer clip mit bügellosem führungssystem |
DE102018103903A1 (de) * | 2018-02-21 | 2019-08-22 | Aesculap Ag | Chirurgischer Clip |
DE102018103904A1 (de) * | 2018-02-21 | 2019-08-22 | Aesculap Ag | Chirurgischer Clip |
KR102193428B1 (ko) * | 2018-04-23 | 2020-12-21 | 서울대학교병원 | 혈관 구멍 봉합용 클립 및 어플라이어 |
Citations (7)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US4269190A (en) * | 1979-07-23 | 1981-05-26 | Behney Charles A | Method of and clamp for applying pressure to a skin region |
JPS6072543A (ja) * | 1983-09-27 | 1985-04-24 | 船津 登 | クリップ把持鉗子 |
JPS6132647Y2 (ja) * | 1981-07-16 | 1986-09-24 | ||
US4765335A (en) * | 1987-03-16 | 1988-08-23 | Intermar, Inc. | Aneurysm clip |
JPH01310654A (ja) * | 1988-06-09 | 1989-12-14 | Shigekiyo Fujita | 脳動脈瘤クリップ |
JPH0467412U (ja) * | 1990-10-19 | 1992-06-15 | ||
US6251117B1 (en) * | 1998-03-04 | 2001-06-26 | Aesculap Ag & Co. Kg | Vascular clip |
-
2001
- 2001-09-28 JP JP2001303770A patent/JP4696434B2/ja not_active Expired - Fee Related
Patent Citations (7)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US4269190A (en) * | 1979-07-23 | 1981-05-26 | Behney Charles A | Method of and clamp for applying pressure to a skin region |
JPS6132647Y2 (ja) * | 1981-07-16 | 1986-09-24 | ||
JPS6072543A (ja) * | 1983-09-27 | 1985-04-24 | 船津 登 | クリップ把持鉗子 |
US4765335A (en) * | 1987-03-16 | 1988-08-23 | Intermar, Inc. | Aneurysm clip |
JPH01310654A (ja) * | 1988-06-09 | 1989-12-14 | Shigekiyo Fujita | 脳動脈瘤クリップ |
JPH0467412U (ja) * | 1990-10-19 | 1992-06-15 | ||
US6251117B1 (en) * | 1998-03-04 | 2001-06-26 | Aesculap Ag & Co. Kg | Vascular clip |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
KR20180134144A (ko) * | 2017-06-08 | 2018-12-18 | 비앤알(주) | 외과용 클립 |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2003102736A (ja) | 2003-04-08 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP6757488B2 (ja) | 閉塞クリップの製作方法 | |
US11045206B2 (en) | Non-invasive surgical ligation clip system and method of using | |
JP3068157B2 (ja) | 外科用止血クリツプ | |
CA1240581A (en) | Surgical clip and forceps for clamping the same | |
US8795302B2 (en) | Surgical clip | |
EP2275043B1 (en) | Surgical clip | |
US5593414A (en) | Method of applying a surgical ligation clip | |
US6226843B1 (en) | Ligating clip | |
EP2389878A1 (en) | Surgical hemostatic clip including work-hardened, movement-inhibiting structure | |
US20100198256A1 (en) | Hyper-Elastic Needle | |
JP4475229B2 (ja) | 内視鏡用クリップ | |
WO2019089440A1 (en) | Latching wire clip | |
JP2007097664A (ja) | 内視鏡用クリップ | |
US8721670B2 (en) | Laparoscopic scissors | |
JP4696434B2 (ja) | 血管挟持クリップ | |
WO2014103095A1 (ja) | 鉗子 | |
JP4935039B2 (ja) | 内視鏡用クリップ | |
JP2006305230A (ja) | 動脈瘤クリップおよびその製造方法 | |
US11944319B2 (en) | Tensionable surgical clamp | |
CN216962626U (zh) | 末端执行器、手术器械及手术机器人 | |
JP2001245893A (ja) | 手術用鉗子 | |
JPH06285077A (ja) | 血管挾持用クリップ | |
JPH0468943B2 (ja) | ||
JP2003199750A (ja) | 脳動脈瘤クリップ | |
JPS6220819B2 (ja) |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20080901 |
|
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20110113 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20110113 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20110214 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |