JP4695314B2 - 滑りネット - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、物品を滑らせて移送する用途に好ましく使用される滑りネットに関する。
【０００２】
【従来の技術】
従来より、ダンボール詰めした荷物などを滑らせて移送する場合には、良好な滑性を有する滑りパイプや摩擦係数の低い樹脂板などが下敷き材や支持材として使用されている。
【０００３】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、良好な滑性を有する滑りパイプは、荷物の滑りが良くスムーズに移送できるという利点を有する反面、移送設備に多数の滑りパイプを取付ける作業が面倒で、コスト高になるという問題があった。
【０００４】
一方、摩擦係数の低い樹脂板は、一般的な樹脂板に比べると滑りは良いが、移送する荷物との接触面積が大きいため、上記の滑りパイプほど滑性が良好ではなく、荷物の移送性がやや劣るという問題があった。
【０００５】
本発明は上記の問題に対処すべくなされたもので、その目的とするところは、摩擦係数の低い樹脂板よりも滑性が優れ、下敷き材として移送設備に敷設するだけで荷物をスムーズに滑らせて移送できる有用な滑りネットを提供することにある。
【０００６】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の請求項１に係る滑りネットは、合成樹脂の縦糸と横糸が交点で融着され、滑剤が縦糸と横糸に含有されて成ることを特徴とする。
【０００７】
この滑りネットは、合成樹脂の縦糸と横糸が交点で融着されたネットであるから、樹脂板に比べて移送荷物との接触面積が小さく、しかも、縦糸と横糸に含有されている滑剤により滑性が高められて、高い自己潤滑性と低い動摩擦力を有するため、荷物をスムーズに滑らせて移送することができる。そして、この滑りネットは、移送台などの移送設備に敷設するだけでよいから、従来の滑りパイプのように移送設備に取付ける面倒さがなくなり、コストの低減も可能となる。
【０００８】
次に、本発明の請求項２に係る滑りネットは、上記請求項１の滑りネットにおいて、その縦糸と横糸のいずれか一方が他方よりも表面側へ偏位していることを特徴とする。
【０００９】
このような滑りネットは、表面側へ偏位している縦糸又は横糸のみが移送荷物と線接触するので、接触面積が更に減少し、滑性が一層向上する。従って、表面側へ偏位している縦糸又は横糸が荷物の移送方向と平行になるように滑りネットを敷設すると、荷物を一層スムーズに滑らせて移送することができる。
【００１０】
次に、本発明の請求項３に係る滑りネットは、上記請求項１の滑りネットにおいて、その縦糸と横糸の交点が隆起し、この隆起した交点の頂部が丸くなっていることを特徴とする。
【００１１】
このような滑りネットは、縦糸と横糸の隆起した交点のみが移送荷物と点接触するため、上記請求項２の滑りネットよりも接触面積が減少し、しかも、隆起した交点の頂部が丸くなっているので、滑性が更に向上する。従って、この滑りネットを敷設すると、荷物を更にスムーズに滑らせて移送することができる。
【００１２】
次に、本発明の請求項４に係る滑りネットは、上記請求項１〜３のいずれかの滑りネットにおいて、その縦糸と横糸に含有されている滑剤がシリコン系滑剤であることを特徴とする。
【００１３】
滑剤の中でもシリコン系滑剤は特に滑性に優れ、縦糸及び横糸の合成樹脂との馴染みも良いため、このようなシリコン系滑剤を縦糸と横糸に含有させた滑りネットは優れた滑性を有する。従って、この滑りネットを敷設すると、荷物を極めてスムーズに滑らせて移送することができる。
【００１４】
次に、本発明の請求項５に係る滑りネットは、上記請求項１〜４のいずれかの滑りネットにおいて、その縦糸と横糸の合成樹脂がポリエチレンであることを特徴とする。
【００１５】
このようなポリエチレンの縦糸と横糸が交点で融着された滑りネットは、ポリエチレン自体が軽量で滑性に富む樹脂であるため、軽くて持ち運びしやすく、滑剤との相乗作用によって優れた滑性を発揮することができる。
【００１６】
次に、本発明の請求項６に係る滑りネットは、上記請求項１〜５のいずれかの滑りネットにおいて、導電性を有することを特徴とする。
【００１７】
このような導電性を有する滑りネットは、移送荷物の摺動摩擦によって生じる静電気を逃がして帯電を防止することができる。
【００１８】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の具体的な実施形態を詳述する。
【００１９】
図１は本発明の一実施形態に係る滑りネットの部分平面図、図２は図１のＡ−Ａ線拡大断面図である。
【００２０】
この滑りネット１０は、図１に示すように、合成樹脂の縦糸１と横糸２が各交点３で融着された方形の網目を有するネットであって、各交点３が表面側と裏面側に向かって隆起しており、この交点３の頂部が丸くなっている。そして、このネット１０の縦糸１と横糸２には、滑剤が含有されている。尚、交点３は必ずしも表裏両面側へ隆起する必要がなく、少なくとも荷物等が載置される表面側に向かって隆起していればよい。
【００２１】
縦糸１及び横糸２の合成樹脂としては、滑性に劣る塩化ビニル樹脂等を除いて殆ど全ての汎用熱可塑性樹脂が使用可能であるが、その中でも滑性に富むオレフィン系樹脂やポリエステル樹脂が好適であり、特に、ポリエチレンは軽量で滑性に優れるため極めて好適に使用される。
【００２２】
また、滑剤としては、シリコン系やフッ素系のもの、或は、ポリエチレンワックス、層状結晶物質（例えば黒鉛、二硫化モリブデン等）、軟質金属（例えば鉛、錫等）などが好適に使用され、特に、シリコン系の滑剤は滑性に優れ、縦糸１及び横糸２の合成樹脂との馴染みも良いため極めて好適に使用される。このような滑剤を含有させると、縦糸１及び横糸２の滑性が高められ、高い自己潤滑性と低い動摩擦力を有する滑りネット１０が得られる。
【００２３】
滑剤の含有率は５〜２０重量％とすることが好ましく、これよりも少ない場合は、滑りネット１０の滑性を十分に高めることが難しくなり、また、これより多く含有させても、それに見合った滑性向上効果を得ることができない。
【００２４】
縦糸１や横糸２の相互間隔（ピッチ間隔）は、３〜２０ｍｍ程度とするのが適当である。そして、糸の太さは、糸の相互間隔が例えば３ｍｍの場合、糸一本の降伏点強度（温度２０℃、引張速度２００ｍｍ／ｍｉｎの条件での降伏点強度、以下同じ）が１０Ｎ以上となる太さとするのが適当であり、また、糸の相互間隔が例えば７．５ｍｍの場合、降伏点強度が３５Ｎ以上となる太さとするのが適当であり、また、糸の相互間隔が例えば１０ｍｍの場合、降伏点強度が７０Ｎ以上となる太さとするのが適当である。縦糸１及び横糸２の相互間隔や太さを上記のように設定すれば、十分な強度を有し、容易に破損する心配のない滑りネット１０を得ることができる。
【００２５】
上記の滑りネット１０は、ネット製造用の押出機を用いて、滑剤を含有させた熱可塑性の溶融樹脂を連続押出して縦糸１を形成する一方、滑剤を含有させた該溶融樹脂を縦糸１と直交するように間歇的に押出して横糸２を形成すると同時に縦糸１との交点を融着させる方法等によって、容易に製造することができる。
【００２６】
図３は上記滑りネット１０の一使用例を示す斜視図であって、これによれば、ベルトコンベア２０で送り込まれる荷物２１を滑らせて移送する傾斜付きの移送台２２（滑り台）の表面に、上記の滑りネット１０が敷設され、接着剤等で貼付けられている。
【００２７】
このように滑りネット１０を移送台２２に敷設すると、滑りネット１０の縦糸１と横糸２に含まれる滑剤によって滑りネット１０の滑性が高められていることに加えて、縦糸１と横糸２の隆起した交点３のみが移送荷物２１の底面と点接触するため接触面積が極端に減少すると共に、隆起した交点３の頂部が丸くなっていることから、滑り性能が大幅に向上するようになり、荷物２１をその自重でスムーズに滑らせて移送すること可能となる。また、この滑りネット１０は、移送台２２などに敷設するだけでよいから、従来の滑りパイプのように移送台などに取付ける面倒さがなくなり、コストの低減も可能となる。
【００２８】
本発明の滑りネット１０は、上記のように優れた滑り性能を有するため、上記の移送台２２（滑り台）やその他の移送設備に使用される他、電気配線等の滑り用下敷き材、ラックや棚の滑り用下敷き材、機械類や装置類のシュート部材やガイド部材、或は、迷惑な張紙防止材など、種々の用途に使用される。
【００２９】
図４は、本発明の他の実施形態に係る滑りネットの拡大部分断面図である。
【００３０】
この滑りネット１１は、滑剤を含有した合成樹脂の縦糸１と横糸２がそれぞれの交点３で融着された方形の網目を有するネットであって、その縦糸１が横糸２よりも表面側（図４では上側）へ偏位している。
【００３１】
このような滑りネット１１は、表面側へ偏位している縦糸１のみが移送荷物と線接触するので、接触面積が減少して滑性が一層向上する。従って、この表面側へ偏位している縦糸１が荷物の移送方向と平行になるように滑りネット１１を敷設すると、荷物を一層スムーズに滑らせて移送することができる。
【００３２】
尚、図４に示す実施形態では縦糸１を偏位させているが、横糸２を縦糸１より表面側へ偏位させてもよく、その場合は、横糸２が荷物の移送方向と平行になるように滑りネット１１を敷設すればよい。
【００３３】
以上の滑りネット１０，１１においては、導電材を縦糸１及び横糸２に含有させるか、又は、縦糸１及び横糸２の合成樹脂として導電性樹脂を使用することにより、導電性を滑りネット１０，１１に付与することが好ましい。このように導電性を付与すると、移送荷物２１の摺動摩擦により生じる静電気を逃がして帯電を防止できる利点がある。
【００３４】
導電材としては、導電性カーボンの粉体やフィラー等が好適に使用され、その含有率は５〜４０重量％程度とすることが好ましい。また、導電性樹脂としては導電性ポリオレフィン等が好適に使用される。
【００３５】
次に、本発明の滑りネットについて行った滑り試験について説明する。
【００３６】
［滑り試験］
ネット製造用の押出機を用いて、シリコン系滑剤を含有させた溶融ポリエチレンを連続押出して縦糸を形成する一方、この縦糸と直交するように上記の溶融ポリエチレンを間歇的に押出して横糸を形成すると同時に縦糸との交点を融着させることにより、縦糸及び横糸の相互間隔が３ｍｍの滑りネット(ａ)を作製した。そして、同様の方法により、縦糸及び横糸の相互間隔が７．５ｍｍの滑りネット(ｂ)と、縦糸及び横糸の相互間隔が１０ｍｍの滑りネット(ｃ)を更に作製した。
【００３７】
これらの滑りネット(ａ)，(ｂ)，(ｃ)の上に、重量５ｋｇのダンボール箱を載置し、１００ｍｍ／ｍｉｎの引張り速度で引張ったときの動摩擦力を測定した。その結果、滑りネット(ａ)の動摩擦力は３５０ｇｆ、滑りネット(ｂ)の動摩擦力は４１６ｇｆ、滑りネット(ｂ)の動摩擦力は３８３ｇｆであり、動摩擦力が極めて小さいことが分かった。
【００３８】
比較のために、摩擦係数の小さな超高分子ポリエチレンの板の上に上記のダンボール箱を載置し、同じ条件で動摩擦力を測定した。その結果、超高分子ポリエチレン板の動摩擦力は５１６ｇｆであり、本発明の滑りネット(ａ)，(ｂ)，(ｃ)よりも動摩擦力が１００〜１６６ｇｆほど大きかった。
【００３９】
この試験結果より、本発明の滑りネットは優れた滑り性能を有するものであることが立証された。
【００４０】
【発明の効果】
以上の説明及び試験結果から明らかなように、本発明の滑りネットは、摩擦係数の低い超高分子ポリエチレン等の樹脂板よりも優れた滑り性能を有し、移送設備等に敷設するだけで荷物をスムーズに滑らせて移送することができ、移送設備等への取付けが容易でコストの低減を図ることもできるといった効果を奏する。
【００４１】
特に、縦糸と横糸のいずれか一方が他方よりも表面側へ偏位している滑りネットや、縦糸と横糸の交点が隆起しその頂部が丸くなっている滑りネットは荷物との接触面積が極めて小さいため滑り性能が高く、また、導電性を有する滑りネットは帯電を防止できるといった効果を併せて奏する。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明の一実施形態に係る滑りネットの部分平面図である。
【図２】図１のＡ−Ａ線拡大断面図である。
【図３】同滑りネットの一使用例を示す斜視図である。
【図４】本発明の他の実施形態に係る滑りネットの拡大部分断面図である。
【符号の説明】
１ 縦糸
２ 横糸
３ 交点
１０，１１ 滑りネット
２１ 荷物
２２ 傾斜付きの移送台（滑り台）

Claims (6)

1. 合成樹脂の縦糸と横糸が交点で融着され、滑剤が縦糸と横糸に含有されて成る滑りネット。
2. 縦糸と横糸のいずれか一方が他方よりも表面側へ偏位している請求項１に記載の滑りネット。
3. 縦糸と横糸の交点が隆起し、この隆起した交点の頂部が丸くなっている請求項１に記載の滑りネット。
4. 縦糸と横糸に含有されている滑剤がシリコン系滑剤である請求項１ないし請求項３のいずれかに記載の滑りネット。
5. 縦糸と横糸の合成樹脂がポリエチレンである請求項１ないし請求項４のいずれかに記載の滑りネット。
6. 導電性を有する請求項１ないし請求項５に記載の滑りネット。

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