JP4691874B2 - 液滴吐出装置及びカラーフィルター製造装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、液滴吐出装置、カラーフィルター製造装置、カラーフィルター及びその製造方法、液晶装置、電子機器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、コンピュータディスプレイや大型テレビジョン等の電子機器の発達に伴い、液晶表示装置、特にカラー液晶表示装置の使用が増加している。この種の液晶表示装置には、通常、表示画像をカラー化するためにカラーフィルターが用いられている。カラーフィルターには、例えばガラス基板に対してR(赤)、G(緑)、B(青)のインクを所定のパターンで吐出させ、このインクを基板上で乾燥させることで着色層を形成するものがある。このような基板に対してインクを吐出する方式としては、例えばインクジェット方式の液滴吐出装置が採用されている。
【0003】
インクジェット方式の液滴吐出装置を採用した場合、インクジェットヘッドからガラス基板に対して所定量のインクを吐出して着弾させる。この場合、例えば直交する2方向(X方向、Y方向)に移動可能、および任意の回転軸を中心として回転可能とされたXYθステージにガラス基板を搭載し、インクジェットヘッドを固定したタイプの装置を用いることができる。このタイプの装置は、XYθステージの駆動によりインクジェットヘッドに対してガラス基板を所定の位置に位置決めした後、ガラス基板をX方向、Y方向に走査しながらインクジェットヘッドからインクを吐出することで、ガラス基板の所定の位置にインクを着弾させる構成となっている。
【0004】
この種の液滴吐出装置を用いたカラーフィルター製造装置の例が、下記の特許文献1に開示されている。この文献に開示されたカラーフィルター製造装置は、前工程から後工程に被処理基板を搬送するメイン搬送ラインの側方に、各々がR、G、Bの3色の着色層の描画が可能な3台の着色装置(液滴吐出装置)を備えている。さらに、各着色装置とメイン搬送ラインとの間には各着色装置に未着色のガラス基板を供給するための供給コンベア、および着色済みのガラス基板を各着色装置から排出するための排出コンベアが備えられ、メイン搬送ラインと供給コンベアおよび排出コンベアとの間にはこれらコンベア間でガラス基板を移載するためのロボットが備えられている。
【0005】
【特許文献1】
特開2001−33614号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記特許文献1に開示されたカラーフィルター製造装置には、以下のような問題点があった。
すなわち、上記のカラーフィルター製造装置は、メイン搬送ラインの側方に着色装置を有しており、前工程側から後工程側に搬送されるガラス基板をメイン搬送ラインから各着色装置内に引き込んで描画を行い、描画後に再度メイン搬送ラインに戻す構成である。そのため、描画時に各着色装置内には1枚のガラス基板しか存在できず、メイン搬送ラインには描画後のガラス基板を戻す場所も必要となる。よって、各着色装置内で描画を行っている間、描画前のガラス基板は描画後のガラス基板と干渉しない位置で待機しなければならず、描画後のガラス基板がメイン搬送ラインに戻った時点で初めて描画前のガラス基板を着色装置に引き込む動作が開始される。結果的に、このカラーフィルター製造装置は1枚のガラス基板を処理するのに必要なタクトタイムが長く、生産性に劣るものとなる。
【0007】
この装置は根本的にこの欠点を持っているがために、3台の着色装置を備え、これら着色装置で並行して描画を行うことで上記の欠点をカバーしている。しかしながら、メイン搬送ラインの側方に3台の着色装置を配置した構成のため、カラーフィルター生産ラインにおいてこの装置の占有スペースが極めて大きなものとなり、生産ラインの装置レイアウト等にも支障を来す。処理効率を上げるために着色装置の台数を増やせば増やす程、当然ながら占有スペースが大きくなり、この問題が大きくなる。また近年、30〜60インチといった大型の液晶テレビジョンが市場に提供されつつあり、これに適応するような大型のカラーフィルター製造装置にとっては特にこの問題が顕著になる。
【0008】
また、上記の装置においては、メイン搬送ラインと、メイン搬送ラインと各着色装置との間を結ぶ搬送ラインとはガラス基板の搬送方向が90°異なり、メイン搬送ラインと各着色装置との間に供給コンベア、排出コンベア、ロボット等の各種搬送装置が必要となる。そのため、装置構成が複雑になるとともに、これら搬送装置の駆動制御が複雑になる。さらに、メイン搬送ライン上を描画前のガラス基板と描画後のガラス基板とが混在して流れることから、これらの基板を振り分ける制御も必要となっていた。
【0009】
近年、カラーフィルターのみならず、インクジェット方式の液滴吐出装置を用いた有機EL(Electro-Luminescence)素子等のデバイス形成技術、あるいは配線形成技術が検討されている。上ではカラーフィルター製造装置を例に挙げ、従来の技術とその問題点を説明したが、上記の問題点はこれらデバイス形成技術、配線形成技術にも共通の問題点であり、より生産性に優れた製造装置、ひいては当該製造装置を構成する液滴吐出装置の実現が望まれている。
【0010】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、生産性に優れるとともに装置構成が比較的簡単で占有スペースをむやみに費やすことのない、生産ラインに好適な液滴吐出装置、これを用いたカラーフィルター製造装置、カラーフィルター及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明の液滴吐出装置は、被処理基材上にパターン形成用材料を含有する液状体を吐出することにより所望形状のパターンを形成する液滴吐出装置であって、ヘッドユニットを備えた描画部と、描画前の被処理基材を前記描画部に向けて供給する給材部と、描画後の被処理基材を前記描画部から排出する除材部とを備え、前記給材部、前記描画部、および前記除材部が一方向に沿って配列されており前記ヘッドユニットは、前記一方向と交差する方向に配列された複数の液滴吐出ヘッドを備え、前記複数の液滴吐出ヘッドから前記液状体を吐出させる際に、前記ヘッドユニットは、前記一方向と交差する方向に前記被処理基材に対して架設された状態で固定されて配置され、前記被処理基材は、前記給材部側から前記除材部側に向けて前記一方向に搬送される。また、前記ヘッドユニットにおいて、前記複数の液滴吐出ヘッドは、前記一方向に並ぶ列が複数設けられており、各列間で前記一方向と交差する方向にずれた位置に配置されていることを特徴とする。また、前記描画部は前記被処理基板を前記一方向の上流側及び下流側へ搬送可能なステージを備え、前記ヘッドユニットの上流側に、前記被処理基板の不良箇所を補修する補修用ヘッドが設けられたことを特徴とする。前記描画部と前記除材部との間に、描画後の前記被処理基材上の描画状態を検査する検査部が設けられ、前記補修用ヘッドは前記液滴吐出ヘッドに対して前記一方向の上流側に配置されたことを特徴とする。また前記液滴吐出ヘッドの各々は小型基準プレートに固定され、該小型基準プレートは1枚の大型基準プレートに対して前記液滴吐出ヘッドの個数分が固定されていることを特徴とする。なお、ここでの「被処理基材が内部を一方向に流れ」との表現は、被処理基材が直線状に流れることのみを意味しており、流れの向きは問わない。したがって、場合によっては被処理基材が直線上を逆送することも含めた表現である。
【0012】
すなわち、本発明の液滴吐出装置は、被処理基材が内部を一方向に移動する描画部と給材部と除材部とを被処理基材の移動方向に沿って配列したものである。換言すると、本発明の液滴吐出装置は、給材部と除材部とを結ぶ直線状の被処理基材搬送ラインの途中に描画部を備えた構成となっている。そして、複数の液滴吐出ヘッドの配列方向と交差する方向であってかつ前記一方向(給材部、描画部、および除材部の配列方向)に、複数の液滴吐出ヘッドに対して被処理基材を給材部側から除材部側に相対移動させつつ液滴吐出ヘッドから液状体を吐出することで所望形状のパターンを形成する。つまり、描画前の被処理基材を描画部の一端から供給し、描画後の被処理基材を描画部の他端から排出する構成であるから、被処理基材を描画部内に連続的に流すことができ、複数の液滴吐出ヘッドを用いて一方向のみの搬送中に一気に描画を行うことができる。そのため、被処理基材を搬送ラインから着色装置内に1枚ずつ引き込む従来の装置のように、描画前の被処理基材を描画後の被処理基材と干渉しない位置で待機させるようなシーケンスが不要となる。したがって、1枚の被処理基材を処理するのに必要なタクトタイムを短縮でき、生産性に優れた装置を実現することができる。
また、給材部、描画部、除材部が直線状に配列されており、いわば描画部が搬送ライン上に配置されているため、搬送ラインの側方に着色装置が配置された従来の装置に比べて装置の占有スペースを縮小することができる。
さらに、従来装置のような被処理基材の搬送方向を変える機能を持つ搬送装置が不要となるので、装置構成を簡略化することができる。
【0013】
本発明の液滴吐出装置においては、複数の液滴吐出ヘッドと被処理基材とが前記一方向に相対移動しさえすれば描画が可能であるから、液滴吐出ヘッドと被処理基材のいずれか一方が移動してもよいし、双方ともに移動する構成でもよい。
しかしながら、各構成を比較すると、描画時には液滴吐出ヘッドが装置本体に対して固定された状態にある方が望ましい。
液滴吐出ヘッドには液状体をヘッドに供給するための配管やヘッド駆動用配線が多数接続されているため、液滴吐出ヘッド側を移動させるよりも被処理基材側を移動させる方が装置構成が簡単になるからである。
【0014】
前記給材部と前記描画部との間には、描画前の前記被処理基材を洗浄する洗浄部を設けることが望ましい。
この構成によれば、洗浄後の清浄な被処理基材を描画部に供給できるので、被処理基材に付着した異物等に起因する描画不良の発生が抑えられ、歩留りを向上することができる。
【0015】
前記給材部と前記描画部との間には、描画前の前記被処理基材に前記液状体に対する濡れ性を改善する表面改質を施す表面改質部を設けることが望ましい。ここで言う「液状体に対する濡れ性を改善する表面改質」には、被処理基材上の液状体を吐出すべき領域に施す親液処理や、液状体を吐出すべきでない領域に施す撥液処理が含まれる。
この構成によれば、被処理基材上の所望の領域に液状体を確実に吐出することができ、所望の領域以外の領域に液状体が塗布されたり、所望の領域内に液状体が濡れ広がらない等の描画不良の発生が抑えられ、歩留りを向上することができる。
【0016】
前記描画部と前記除材部との間には、前記被処理基材上に吐出された液状体を加熱する加熱部を設けることが望ましい。
この構成によれば、描画後に被処理基材上に吐出された液状体を加熱することにより、液状体に含まれる溶媒を揮発させ、液状体を焼成することができる。これにより、例えば次工程で異なる種類の液状体を吐出する際の液状体同士の混在を防止することができる。
【0017】
前記描画部と前記除材部との間には、描画後の前記被処理基材上の描画状態を検査する検査部を設けることが望ましい。
この構成によれば、描画後に被処理基材上の描画状態を検査することにより、描画不良の有無を判定し、液状体が吐出された被処理基材の良/不良を選別することができる。場合によっては、不良の被処理基材を修復作業に回すこともできる。
【0018】
本発明のカラーフィルター製造装置は、異なる色の着色層を備えたカラーフィルターを製造するカラーフィルター製造装置であって、上記本発明の液滴吐出装置が複数備えられ、各液滴吐出装置で用いる前記液状体がそれぞれ異なる色の色素を含み、各液滴吐出装置が異なる色の着色層をそれぞれ形成することを特徴とする。
すなわち、本発明のカラーフィルター製造装置は、異なる色の着色層、例えばR、G、Bの着色層をそれぞれ形成する複数の液滴吐出装置を備え、この液滴吐出装置を上記本発明の液滴吐出装置で構成したものである。この構成によれば、生産性に優れ、装置構成が簡単で装置の占有スペースが比較的小さいカラーフィルター製造装置を実現することができる。
【0019】
前記複数の液滴吐出装置の後段に、各液滴吐出装置により形成された異なる色の着色層を一括して加熱する加熱装置を備えることが望ましい。
この構成によれば、カラーフィルターの着色層をなす液状体に含まれる溶媒を揮発させ、液状体の焼成を行うことができる。例えば各液滴吐出装置毎に液状体を加熱する加熱部を設けた場合、この加熱部による加熱を仮焼成とし、上記加熱装置における加熱を本焼成として加熱条件をそれぞれ最適化すると良い。その場合、各着色層個別の特性に合わせた焼成が可能となり、品質の良いカラーフィルターが得られる。
【0020】
本発明のカラーフィルターの製造方法は、異なる色の着色層を備えたカラーフィルターの製造方法であって、上記本発明のカラーフィルター製造装置を用いて前記着色層を形成することを特徴とする。
この構成によれば、生産性良くカラーフィルターを製造することが可能となり、製造コスト低減を図ることができる。
【0021】
本発明のカラーフィルターは、異なる色の着色層を備えたカラーフィルターであって、上記本発明のカラーフィルターの製造方法により製造されたことを特徴とする。
この構成によれば、安価で品質の良いカラーフィルターを提供することができる。
【0022】
本発明の液晶装置は、一対の基板間に液晶が挟持された液晶装置であって、上記本発明のカラーフィルターを備えたことを特徴とする。
この構成によれば、安価で品質の良いカラー液晶表示装置を提供することができる。
【0023】
本発明の電子機器は、上記本発明の液晶装置を備えたことを特徴とする。
この構成によれば、安価で品質の良いカラー液晶表示部を備えた電子機器を実現することができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を図面を参照して説明する。
図1は本実施形態のカラーフィルター製造装置の概略構成図であり、R、G、Bの3色の着色層を備えたカラーフィルターを製造するための装置である。
本実施形態のカラーフィルター製造装置1は、図1に示すように、基板の搬送方向上流側からインク受容層形成装置2、R着色層形成装置3、G着色層形成装置4、B着色層形成装置5、本焼成装置6(加熱装置)が配置され、これらの装置が任意の搬送装置(図示略)を介して連結されたものである。このカラーフィルター製造装置1には、R、G、Bの各着色層のパターンを区画する隔壁(バンクとも言う)が形成されたガラス、プラスチック等からなる透明基板(被処理基材)が供給される。インク受容層形成装置2は、隔壁で区画された領域内に樹脂組成物からなるインク受容層を下地層として形成するための装置である。R着色層形成装置3、G着色層形成装置4、B着色層形成装置5は、それぞれ後で着色層となるR、G、Bのインクからなる液状体を塗布するための装置である。本焼成装置6は、塗布後のR、G、Bのインクからなる液状体を一括して加熱、焼成するための装置である。これらの装置のうち、インク受容層形成装置2、R着色層形成装置3、G着色層形成装置4、B着色層形成装置5の4台には、本発明の液滴吐出装置(インクジェット装置)が用いられている。
【0025】
図2は、本実施形態のカラーフィルター製造装置1の要部である液滴吐出装置の部分のみを示す概略構成斜視図である。液滴吐出装置が用いられるインク受容層形成装置2、R着色層形成装置3、G着色層形成装置4、B着色層形成装置5の基本構成は全て同様であるため、ここではR着色層形成装置3を一例として説明する。
R着色層形成装置3は、図2に示すように、上流側から下流側(図2における右側から左側)に向けて給材部61、表面改質部62、描画部63、検査部64、仮焼成部65、除材部66が備えられている。大まかな処理の流れとしては、給材部61から供給された描画前の基板Sに対し、表面改質部62において親液処理、撥液処理が施され、描画部63において隔壁で区画された所定の領域にRのインクが吐出、描画される。次いで、検査部64において描画状態が検査され、仮焼成部65でインクの仮焼成が施された後、描画後の基板が除材部66により排出される。本装置において、これら各部61〜66は基板Sの流れ方向に沿って直線状に配置されている。なお、本装置3は大型の基板を処理可能な大規模な装置であるため、作業者が後述するヘッドユニットのメンテナンスを行うための通路67が設けられている。
【0026】
給材部61および除材部66は任意の基板搬送手段で構成することができ、例えばローラコンベア、ベルトコンベア等が用いられる。表面改質部62は、プラズマ処理室を備えており、親液処理としては大気雰囲気中で酸素を反応ガスとするプラズマ処理(Oプラズマ処理)が行われ、基板Sの表面及び隔壁の側面が親液化される。撥液処理としては大気雰囲気中でテトラフルオロメタン(四フッ化炭素)を反応ガスとするプラズマ処理(CFプラズマ処理)が行われ、隔壁の上面が撥液化される。
【0027】
図3は、描画部63の近傍のみを示す概略構成斜視図である。描画部63は、図3に示すように、一方向に移動可能なステージ70上に基板Sを吸着保持し、その状態で基板Sを一方向(図3における右側から左側)に搬送する構成となっており、基板Sの搬送方向と直交して延びるヘッドユニット71が装置本体に架設されている。すなわち、本実施形態の液滴吐出装置72は、液滴吐出ヘッド側が移動せず、基板側のみが移動する構成である。ヘッドユニット71は、基板Sの搬送方向と直交する方向に配列された複数個の液滴吐出ヘッド34が固定された大型基準プレート74を備えている。
【0028】
図4(a)は、大型基準プレート74を液滴吐出ヘッド34のノズル側から見た斜視図、図4(b)は1個の液滴吐出ヘッド34の拡大図(図4(a)の符号Hの円内の拡大図)である。これらの図に示すように、1枚の小型基準プレート73に対して1個の液滴吐出ヘッド34が固定され、1枚の大型基準プレート74に対してヘッドの個数分の小型基準プレート73が固定されている。本実施形態の場合、複数個の液滴吐出ヘッド34は複数個ずつ3列に配列されており、各列間で大型基準プレート74の長手方向にずれた位置に配置されている。また、各液滴吐出ヘッド34は、複数のノズル(吐出口、図4では図示せず)を有している。この構成により、このヘッドユニット71は、大型基準プレート74の長手方向、すなわち基板Sの搬送方向と直交する方向で例えば数mという長い寸法にわたって所定のピッチでインク滴を吐出可能となっている。そして、液滴吐出ヘッド34の配列方向と直交する方向に基板Sを搬送しつつインク滴を吐出することで、基板Sの全面にわたって所望のパターン形状でRのインクを描画することができる。また、図3における符号76はインクタンクである。インクタンク76はインクを貯留するものであり、配管(図示せず)を介してインクを液滴吐出ヘッド34に供給するものとなっている。
【0029】
液滴吐出ヘッド34は、例えばピエゾ素子によって液室を圧縮してその圧力波で液体を吐出させるもので、上述したように、一列または複数列に配列された複数のノズルを有している。この液滴吐出ヘッド34の構造の一例を説明すると、液滴吐出ヘッド34は、図5(a)に示すように、例えばステンレス製のノズルプレート12と振動板13とを備え、両者を仕切部材(リザーバプレート)14を介して接合したものである。ノズルプレート12と振動板13との間には、仕切部材14によって複数の空間15と液溜まり16とが形成されている。各空間15と液溜まり16の内部はインクで満たされており、各空間15と液溜まり16とは供給口17を介して連通したものとなっている。また、ノズルプレート12には、空間15からインクを噴射するためのノズル18が形成されている。一方、振動板13には、液溜まり16にインクを供給するための孔19が形成されている。
【0030】
また、振動板13の空間15に対向する面と反対側の面上には、図5(b)に示すように、圧電素子(ピエゾ素子)20が接合されている。この圧電素子20は、一対の電極21の間に位置し、通電するとこれが外側に突出するようにして撓曲するよう構成されたものである。そして、このような構成のもとに圧電素子20が接合されている振動板13は、圧電素子20と一体になって同時に外側へ撓曲するようになっており、これによって空間15の容積が増大するようになっている。したがって、空間15内に増大した容積分に相当するインクが、液溜まり16から供給口17を介して流入する。また、このような状態から圧電素子20への通電を解除すると、圧電素子20と振動板13はともに元の形状に戻る。したがって、空間15も元の容積に戻ることから、空間15内部のインクの圧力が上昇し、ノズル18から基板に向けてインクの液滴Lが吐出される。
なお、液滴吐出ヘッド2のインクジェット方式としては、前記の圧電素子20を用いたピエゾジェットタイプ以外の方式でもよく、例えば、エネルギー発生素子として電気熱変換体を用いた方式を採用してもよい。
【0031】
図3に示すように、ヘッドユニット71の長手方向の側方には、吸引・クリーニング部80が設けられている。吸引・クリーニング部80は、各液滴吐出ヘッド34の詰まり等による吐出不良を防止すべく所定の頻度で各液滴吐出ヘッド34の吸引・クリーニング作業を行うためのものである。具体的な構成としては、吸引・クリーニング部80には、吸引時に各液滴吐出ヘッド34のノズルを塞ぐためのキャッピングユニット81や、ノズルとその周囲を拭うためのワイパー82が備えられている。また、ヘッドユニット71の下流側には、描画後の基板Sの描画状態、すなわち所定の位置にインク滴が確実に吐出されているか否かを検査する検査部64が設けられている。検査部85は、例えばCCD等を用いたラインセンサにより構成されている。
【0032】
さらに本実施形態の場合、検査部85により所定の位置にインクが吐出されていない不良箇所が発見された時にその箇所にのみ再度インクを吐出して不良箇所を補修するための補修用ヘッド86がヘッドユニット71の上流側に設置されている。補修用ヘッド86がヘッドユニット71の上流側に位置しているため、補修時のみはステージ70が逆方向(図3における左側から右側)に移動するようになっている。補修用ヘッド86は1個の液滴吐出ヘッド34のみを有しており、基板Sの搬送方向と直交する方向に移動可能となっている。もしくは、補修用ヘッド86はヘッドユニット71の下流側に位置していてもよく、その場合にはステージ70が逆方向に移動する必要はない。また、検査部85の下流側には、例えばレーザー乾燥方式による仮焼成部65が設けられている。仮焼成部の焼成条件は、R、G、Bの各色によってそれぞれ最適化される。
【0033】
以上、液滴吐出装置の構成をR着色層形成装置3の例を挙げて説明したが、カラーフィルター製造装置1の初段にあるインク受容層形成装置2のみは、表面改質部62の上流側に洗浄部90を備えている。インク受容層形成装置2には隔壁が形成された基板Sが供給されるが、この洗浄部90において、基板Sの表面改質を行う前にウェット洗浄、オゾン洗浄等の方法により基板Sを洗浄し、清浄になった基板Sを表面改質部62に供給する構成となっている。この構成により、基板Sに付着した異物等に起因する描画不良の発生が抑えられ、歩留りを向上することができる。
【0034】
次に、本実施形態のカラーフィルター製造装置1を用いたカラーフィルターの製造方法の一例を説明する。上記カラーフィルター製造装置1を用いたカラーフィルターの製造方法は、図6に示すように、生産性を高める観点から長方形状の基板S上に、複数個のカラーフィルター領域51をマトリクス状に形成する際に適用することができる。これらのカラーフィルター領域51は、後で基板Sを切断することにより、液晶表示装置に適合する個々のカラーフィルターとして用いることができる。なお、各カラーフィルター領域51においては、図6に示したように、Rのインク、Gのインク、およびBのインクをそれぞれ所定のパターン、本例では従来公知のストライプ型で形成して配置する。なお、この形成パターンとしては、ストライプ型のほかに、モザイク型やデルタ型あるいはスクウェアー型等としてもよい。
【0035】
このようなカラーフィルター領域51を形成するには、まず、図7(a)に示すように、透明の基板Sの一方の面に対し、ブラックマトリクス52を形成する。このブラックマトリクス52を形成する際には、光透過性のない樹脂(好ましくは黒色樹脂)を、スピンコート等の方法で所定の厚さ(例えば2μm程度)に塗布し、フォトリソグラフィー技術を用いてパターニングする。このブラックマトリクス52の格子で囲まれる最小の表示要素、すなわちフィルターエレメント53については、例えばX軸方向の幅を30μm、Y軸方向の長さを100μm程度とする。このブラックマトリクスは充分な高さを有しており、インク吐出時の隔壁として機能する。
【0036】
次に、図7(b)に示すように、本実施形態のカラーフィルター製造装置1におけるインク受容層形成装置2の液滴吐出ヘッド34からインク受容層となる樹脂組成物を含有するインク滴54(液状体)を吐出し、これを基板S上に着弾させる。吐出するインク滴54の量については、加熱工程におけるインクの体積減少を考慮した十分な量とする。次いで、インク受容層形成装置2の焼成部においてインク滴の焼成を行い、図7(c)に示すようなインク受容層60とする。
【0037】
次に、図7(d)に示すように、R着色層形成装置3の液滴吐出ヘッド34からRのインク滴54R(液状体)を吐出し、これを基板S上に着弾させる。吐出するインク滴54Rの量については、加熱工程におけるインクの体積減少を考慮した十分な量とする。次いで、R着色層形成装置3の仮焼成部65においてインクの仮焼成を行い、図7(e)に示すようなR着色層34Rとする。以上の工程を、G着色層形成装置4、B着色層形成装置5においても繰り返し、図7(f)に示すように、G着色層34G、B着色層34Bを順次形成する。R着色層34R、G着色層34G、B着色層34Bを全て形成した後、本焼成装置6においてこれら着色層34R,34G,34Bを一括して焼成する。
【0038】
次いで、基板Sを平坦化し、かつ着色層34R,34G,34Bを保護するため、図7(g)に示すように各着色層34R,34G,34Bやブラックマトリクス52を覆うオーバーコート膜(保護膜)56を形成する。このオーバーコート膜56の形成にあたっては、スピンコート法、ロールコート法、リッピング法等の方法を採用することもできるが、着色層34R,34G,34Bの場合と同様に液滴吐出装置を用いることもできる。
【0039】
本実施形態のカラーフィルター製造装置1を構成する液滴吐出装置72は、給材部61と除材部66とを結ぶ直線状の基板搬送ラインの途中に描画部63を備え、複数の液滴吐出ヘッド34の配列方向と交差する方向に、基板Sを移動させつつ液滴吐出ヘッド34からインクを吐出することで所望形状のパターンを形成するものである。つまり、描画前の基板Sを描画部63の一端から供給し、描画後の基板Sを描画部63の他端から排出する構成であるから、基板Sを描画部63内に連続的に流すことができ、一方向のみの搬送中に複数の液滴吐出ヘッド34を用いて一気に描画を行うことができる。そのため、基板Sを搬送ラインから着色装置内に1枚ずつ引き込む従来の装置に比べて、1枚の基板を処理するのに必要なタクトタイムを短縮でき、生産性に優れた装置を実現することができる。また、給材部61、描画部63、および除材部66が直線状に配列されているため、搬送ラインの側方に着色装置が配置された従来の装置に比べて装置の占有スペースを縮小することができる。さらに、従来装置のような被処理基材の搬送方向を変える機能を持つ搬送装置が不要となるので、装置構成を簡略化することができる。
【0040】
また、各液滴吐出装置72に表面改質部62が設けられているので、インクを吐出する前に基板表面に親液処理や撥液処理を施すことができ、基板上の所望の領域にインクを確実に吐出することができる。したがって、所望の領域以外の領域にインクが塗布されたり、所望の領域内にインクが濡れ広がらない等の描画不良の発生が抑えられ、歩留りを向上することができる。また、描画部63の下流側に仮焼成部65が設けられているので、描画後に基板上に吐出されたインクを仮焼成することができる。これにより、次工程で異なる種類のインクを吐出する際のインク同士の混在を防止することができる。さらに、カラーフィルター製造装置1の最下流側に本焼成装置6が設けられているので、R、G、Bのインクを一括して本焼成することができる。この構成により、仮焼成、本焼成の加熱条件をそれぞれ最適化することでR、G、Bの各着色層個別の特性に合わせた焼成が可能となり、品質の良いカラーフィルターが得られる。また、描画状態を検査する検査部64が設けられているので、描画不良の有無を判定し、インクが吐出された基板の良/不良を選別することができる。場合によっては、不良の基板を修復作業に回すこともできる。
【0041】
次に、上記カラーフィルターを備えた液晶装置(電気光学装置)の一実施形態を示す。図8はパッシブマトリクス型の液晶装置を示す図であり、図8中の符号30は液晶装置である。この液晶装置30は透過型のもので、一対のガラス基板31、32の間にSTN(Super Twisted Nematic)液晶等からなる液晶層33が挟持されてなるものである。
一方のガラス基板31には、その内面に上記カラーフィルター55が形成されている。カラーフィルター55は、R、G、Bの各色からなる着色層34R、34G、34Bが規則的に配列されて構成されたものである。なお、これらの色素層34R(34G、34B)間には、ブラックマトリクス52が形成されている。そして、これらカラーフィルター55およびブラックマトリクス52の上には、カラーフィルター55やブラックマトリクス52によって形成される段差をなくしてこれを平坦化するため、オーバーコート膜(保護膜)56が形成されている。オーバーコート膜56の上には複数の電極37がストライプ状に形成され、さらにその上には配向膜38が形成されている。
【0042】
他方のガラス基板32には、その内面に、カラーフィルター55側の電極と直交するようにして、複数の電極39がストライプ状に形成されており、これら電極39上には、配向膜40が形成されている。なお、前記カラーフィルター55の各着色層34R、34G、34Bは、それぞれ各ガラス基板32上の電極39、37の交差する位置に配置されている。また、電極37、39は、ITO(Indium Tin Oxide)などの透明導電材料によって形成されている。さらに、ガラス基板32とカラーフィルター55の外面側にはそれぞれ偏光板(図示せず)が設けられ、ガラス基板31、32間にはこれら基板31、32間の間隔(セルギャップ)を一定に保持するためスペーサ41が設けられている。さらに、これらガラス基板31、32間には液晶33を封入するためのシール材42が設けられている。
【0043】
本実施形態の液晶装置30では、上記カラーフィルター製造装置1を用いて製造されるカラーフィルター55を適用しているため、安価で品質の良いカラー液晶表示装置を実現することができる。
【0044】
次に、上記液晶装置からなる表示手段を備えた電子機器の具体例について説明する。
図9は、液晶テレビジョンの一例を示した斜視図である。図9において、符号500は液晶テレビジョン本体を示し、符号501は上記実施形態の液晶装置を備えた液晶表示部を示している。このように、図9に示す電子機器は、上記実施形態の液晶装置を備えたものであるから、安価で表示品位に優れたカラー液晶表示を有する電子機器を実現することができる。
【0045】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば上記実施形態のカラーフィルター製造装置の細部の具体的な構成等に関しては適宜変更が可能である。また、上記実施形態では本発明の液滴吐出装置をカラーフィルターの製造に応用する例を挙げたが、カラーフィルターのみならず、有機EL素子等のデバイス形成技術、あるいは各種配線形成技術に適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態のカラーフィルター製造装置の概略構成図。
【図2】 同、カラーフィルター製造装置の液滴吐出装置を示す斜視図。
【図3】 同、液滴吐出装置の描画部を示す斜視図。
【図4】 液滴吐出ヘッドの配置を示す斜視図。
【図5】 液滴吐出ヘッドの内部構成を示す斜視図。
【図6】 カラーフィルター形成用基板を示す斜視図。
【図7】 カラーフィルターの製造方法を順を追って示す工程断面図。
【図8】 本発明の一実施形態の液晶装置の断面図。
【図9】 本発明の電子機器の一実施形態の液晶テレビジョンの斜視図。
【符号の説明】
1…カラーフィルター製造装置、2…インク受容層形成装置、3…R着色層形成装置、4…G着色層形成装置、5…B着色層形成装置、6…本焼成装置(加熱装置)、34…液滴吐出ヘッド、61…給材部、62…表面改質部、63…描画部、64…検査部、65…仮焼成部(加熱部)、66…除材部、72…液滴吐出装置、S…基板(非処理基材)

Claims (7)

  1. 被処理基材上にパターン形成用材料を含有する液状体を吐出することにより所望形状のパターンを形成する液滴吐出装置であって、
    ヘッドユニットを備えた描画部と、描画前の被処理基材を前記描画部に向けて供給する給材部と、描画後の被処理基材を前記描画部から排出する除材部とを備え、
    前記給材部、前記描画部、および前記除材部が一方向に沿って配列されており、
    前記ヘッドユニットは、前記一方向と交差する方向に配列された複数の液滴吐出ヘッドを備え、
    前記複数の液滴吐出ヘッドから前記液状体を吐出させる際に、前記ヘッドユニットは、前記一方向と交差する方向に前記被処理基材に対して架設された状態で固定されて配置され、
    前記被処理基材を、前記給材部側から前記除材部側に向けて前記一方向のみに搬送する間に、前記被処理基材上に前記所望パターンを形成する、液滴吐出装置。
  2. 前記ヘッドユニットにおいて、前記複数の液滴吐出ヘッドは、前記一方向に並ぶ列が複数設けられており、各列間で前記一方向と交差する方向にずれた位置に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の液滴吐出装置。
  3. 前記描画部は前記被処理基板を前記一方向の上流側及び下流側へ搬送可能なステージを備え、
    前記ヘッドユニットの上流側に、前記被処理基板の不良箇所を補修する補修用ヘッドが設けられたことを特徴とする請求項1または2に記載の液滴吐出装置。
  4. 前記描画部と前記除材部との間に、描画後の前記被処理基材上の描画状態を検査する検査部が設けられ、
    前記補修用ヘッドは前記液滴吐出ヘッドに対して前記一方向の上流側に配置されたことを特徴とする請求項3に記載の液滴吐出装置。
  5. 前記液滴吐出ヘッドの各々は小型基準プレートに固定され、該小型基準プレートは1枚の大型基準プレートに対して前記液滴吐出ヘッドの個数分が固定されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の液滴吐出装置。
  6. 異なる色の着色層を備えたカラーフィルターを製造するカラーフィルター製造装置であって、
    請求項1ないし5のいずれか一項に記載の液滴吐出装置が複数備えられ、各液滴吐出装置で用いる前記液状体がそれぞれ異なる色の色素を含み、各液滴吐出装置が異なる色の着色層をそれぞれ形成することを特徴とするカラーフィルター製造装置。
  7. 前記複数の液滴吐出装置の後段に、各液滴吐出装置により形成された異なる色の着色層を一括して加熱する加熱装置が備えられたことを特徴とする請求項6に記載のカラーフィルター製造装置。
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