JP4691771B2 - 高純度1,2−ジクロルエタンの回収方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、1,2−ジクロルエタンの回収方法に関し、さらに詳しくは、1,2−ジクロルエタンの熱分解での未分解の1,2−ジクロルエタンを低沸物分離塔で蒸留して得られる塔頂留出液から、高純度の1,2−ジクロルエタンを回収する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
1,2−ジクロルエタン(以下、1,2−EDCという)を高温で熱分解して、塩化ビニルモノマーを製造する方法は工業的に大規模に実施されている。この1,2−EDCの熱分解反応において、1,2−EDCの分解率を高くするとクロロプレンやベンゼン等の副生が増加して塩化ビニルモノマーの選択率が低下すると共に、コーキング速度が速くなって短いインターバルでデコーキングが必要になる。このため、1,2−EDCの分解率は通常、50〜65%である。
【0003】
この1,2−EDCの熱分解反応での未分解の1,2−EDCは、生成した塩化水素と塩化ビニルモノマーを分離した後、低沸物分離塔で蒸留して、1,2−EDCより低沸点の成分が蒸留分離される。尚、該低沸物分離塔の塔頂留出液中には1,2−EDCが通常、50〜60重量%含有されている。該塔頂留出液には1,2−EDCがこのように高濃度で含有されているが、1,2−EDCを経済的に回収することが困難であった。
【0004】
該塔頂留出液からの1,2−EDCの回収に於ける技術的課題は、含有されるベンゼン及び1,1,2−トリクロルエチレン(以下、1,1,2−TCEという)の分離である。すなわち、ベンゼン、1,2−EDC、1,1,2−TCEの沸点は、それぞれ、80.1℃、83.5℃、87.2℃であり、従って、ベンゼン及び1,1,2−TCEは1,2−EDCとの沸点差が極めて小さく、1,1,2−TCEは1,2−EDCと沸点の近接した共沸混合物(共沸温度82.1℃)を形成する。このため、蒸留により1,2−EDC中のベンゼン及び1,1,2−TCEを分離除去して高純度の1,2−EDCを回収することは極めて困難である。さらに、塔頂留出液に含まれるクロロプレンは重合性が高く、その重合物は蒸留塔の塔頂部やコンデンサー等に付着して、蒸留塔の圧損上昇、閉塞の原因となる。また、従来より、ベンゼン及び1,1,2−TCEは、1,2−EDCの熱分解反応におけるインヒビターであることが知られており、回収した1,2−EDCを熱分解原料として再使用するためには、これらを極めて高い除去率で分離除去する必要があった。
【0005】
このような問題を解決する方法として、例えば、特公昭42−19444号公報、特公平2−47968号公報、特開平4−225929号公報には、1,2−EDC中のクロロプレン、ベンゼン、1,1,2−TCEを塩素化して高沸化した後、分離除去する方法が提案されている。これらの方法は、高沸化することにより通常の蒸留による分離が可能となるものの、大量の塩素を必要とする上に、工程数が多いために設備費が嵩んでしまうという課題があった。
【0006】
特公昭46−22003号公報には、無水塩化アルミニウム触媒を使用して、共存するクロロプレン類とベンゼンとを反応させて高沸化した後、分離除去する方法が提案されている。この方法は塩素を必要とせず、クロロプレン類とベンゼンを一段の反応で高沸化して除去することが可能であるが、ベンゼンの転化率が低く、ベンゼンを十分に除去することができないという課題があった。
【0007】
米国特許第4145367号明細書には、Pd触媒を使用してクロロプレン類を水素化して除去する方法が提案されている。しかしながら、この方法は、水素化で生成したクロルブテン類が分解して塩化水素が発生するために、反応器の材質を耐食性のものにする必要があり、設備費が嵩んでしまうという課題があった。
【0008】
米国特許第4333799号明細書には、テトラクロルエチレン等の高沸点の塩素化炭化水素溶媒を使用して、1,2−EDC中のベンゼン及び1,1,2−TCEを抽出蒸留により蒸留分離する方法が提案されている。この方法は1,2−EDC中のベンゼンと1,1,2−TCEを一段の操作で分離除去することが可能であるが、溶媒の使用量が多く、溶媒回収に要するエネルギー消費が大きいことなど経済性の面での課題があった。
【0009】
重合性のクロロプレンを除去した後、1,2−EDCに混在しているベンゼン及び1,1,2−TCEを蒸留により分離除去する場合、高段数の蒸留塔と高還流比とを必要とし、高純度の1,2−EDCを高回収率で得ることは困難であった。
【0010】
このように、従来技術では、1,2−EDC中に含有されるベンゼン及び1,1,2−TCE、クロロプレン、その他の低沸点成分を効率的かつ経済的に有利に分離除去して、高純度の1,2−EDCを回収することは困難であった。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、1,2−EDCの熱分解における未分解の1,2−EDCの低沸物分離塔の塔頂留出液から、混在する1,1−ジクロルエタン、1−クロルブタジエン、クロロホルム、四塩化炭素等の1,2−EDCより低沸点の成分、並びに重合性の高いクロロプレン、さらに、1,2−EDCとの沸点差が小さく、蒸留分離が困難なベンゼン及び1,1,2−TCEを効率良く分離除去して、経済的に有利に熱分解原料として使用可能な高純度の1,2−EDCを高回収率で得る方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、1,2−EDCの熱分解における未分解1,2−EDCの低沸物分離塔の塔頂留出液から高純度の1,2−EDCを高回収率で得る方法について鋭意検討を行った。
【0013】
すなわち、本発明者らは、蒸留におけるクロロプレンの重合の抑制と1,2−EDCとの沸点差が小さいために、蒸留による分離が困難なベンゼン及び1,1,2−TCEの効率的な蒸留分離について、鋭意検討を実施した。クロロプレンは1,2−EDCよりかなり低沸点であり、蒸留での分離性は良いが、重合性が高く蒸留塔の圧損上昇、閉塞の原因となる。本発明者らはクロロプレンの重合性試験を実施して、重合速度に対するクロロプレンの濃度、温度、雰囲気等の影響を検討した。その結果、重合速度はクロロプレンの濃度に一次であり、重合の活性化エネルギーは、約15kcal/molであることが分った。即ち、重合速度は、クロロプレンの濃度に比例して増加するが、温度を10℃低くすれば重合速度は約1/2となる。この結果より、蒸留塔の留出液温度が74℃の場合、留出液中のクロロプレンの濃度を6重量%以下にすればクロロプレンの重合を問題ない程度に抑制できることを見出した。
【0014】
さらに本発明者らは、1,2−EDC中のベンゼン及び1,1,2−TCEを蒸留により分離する場合に、フィード液中に、ジクロルエチレン、1,1−ジクロルエタン、クロロホルムをある濃度以上含有させると、極めて高いベンゼン及び1,1,2−TCEの分離性が得られることを見出した。例えば、ベンゼン及び1,1,2−TCEを各々5重量%含有する約90重量%の濃度の1,2−EDCを蒸留する場合に、塔頂へのベンゼンの留出率90%以上、1,1,2−TCEの塔頂への留出率98%以上を得るためには、理論段数約60段の蒸留塔では、還流比30以上が必要になる。また、この場合の蒸留塔の塔頂留出液温度は82℃付近である。これに対して、フィード液中にジクロルエチレン、1,1−ジクロルエタン、クロロホルムを合計で10重量%以上含有させた場合には、同じ理論段数約60段の蒸留塔の場合、還流比は10付近で十分である。また、この場合の留出液温度は74℃以下であり、上記の場合より8℃以上低くなる。このように、ベンゼン及び1,1,2−TCEを含有する1,2−EDCを蒸留する場合に、低い留出液温度でかつ低還流比でベンゼン及び1,1,2−TCEの高い分離性が得られることを見出した。
【0015】
本発明者らは上記の知見をもとに、塔頂留出液に、1,2−ジクロルエチレン、1,1−ジクロルエタン、クロロホルムの内の1又は2以上を合計で10重量%以上含有させ、塔頂留出液の温度が74℃以下となり、塔頂留出液中のクロロプレン濃度が6重量%以下となる条件で蒸留することで、98重量%以上という高純度の1,2−ジクロルエタンを回収率60%以上で得ることができることを見出し、ついに本発明を完成するに至った。
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0017】
本発明において、原料に供される粗1,2−EDCは、1,2−EDCを熱分解し、生成した塩化水素と塩化ビニルモノマーを分離した後の、未分解の1,2−EDCを低沸物分離塔で蒸留して得られる塔頂留出液である。該塔頂留出液中には、1,2−EDCの熱分解で副生した1,1−ジクロルエタン、クロロプレン、1−クロルブタジエン、ジクロルエチレン、ベンゼン、並びにエチレンのオキシクロリネーション反応で副生し、熱分解原料1,2−EDC中に含有されて熱分解でそのまま残留したクロロホルム、四塩化炭素、1,1,2−TCE等が含有される。従って、塔頂留出液中のこれらの成分や1,2−EDCの濃度は、圧力、温度、滞在時間等1,2−EDCの熱分解条件、低沸物分離塔の操作条件に大きく依存する。さらに、同一プラントでも変動があり一定ではないが、該塔頂留出液中の1,2−EDCの濃度は通常50〜60重量%であり、クロロプレンの濃度は2〜5重量%、ベンゼンの濃度は1〜5重量%、1,1,2−TCEの濃度は1〜5重量%である。また、ジクロルエチレンの濃度は通常1〜3重量%、1,1−ジクロルエタンの濃度は1〜10重量%、クロロホルムの濃度は1〜10重量%である。
【0018】
本発明においては、蒸留に供される未分解の1,2−EDCの低沸物分離塔の塔頂留出液に、1,2−ジクロルエチレン、1,1−ジクロルエタン、クロロホルムの内の1の成分、これらの内の任意の2つの成分、あるいはこれら全てが、合計で10重量%以上となるように含有される。これらの成分の濃度が合計で10重量%に満たない場合には、これらの少なくとも一成分を添加して含有される。また、エチレンのオキシクロリネーション反応により得られた1,2−EDCの低沸物分離塔の塔頂留出液中には、オキシクロリネーション反応で副生した1,2−ジクロルエチレン及びクロロホルムが含有されるので、これを添加混合して含有させることもできる。1,2−ジクロルエチレン、1,1−ジクロルエタン、クロロホルムの含有量は、これらの合計で10重量%以上であることが好ましく、さらに15重量%以上、特に20重量%以上であれば、その効果を一層奏することができる。
【0019】
本発明で使用される蒸留塔の段数は、理論段数で30〜70段が好ましく、40〜60段のものがさらに好ましい。還流比は重量基準で5〜30が好ましく、さらに、10〜20の範囲が好ましい。蒸留塔の段数及び還流比を大きくすればする程、ベンゼン及び1,1,2−TCEの分離性は向上するが、設備費や蒸留における蒸気原単位がアップするので、上記範囲とするのがよい。蒸留塔へのフィード液の供給位置は、蒸留塔の上段あるいは下段からフィードしてもよいが中央付近の段からフィードするのが好ましい。
【0020】
さらに、フィード液としてエチレンのオキシクロリネーション反応により得られた1,2−EDCの低沸物分離塔の塔頂留出液を用いることが、効率化の面からも好ましい。さらに、フィード方法としてバッチ式、連続式のいずれでもよいが、効率化の面から連続法が好ましい。
【0021】
本発明においては、留出液温度が74℃以下となり、留出液中のクロロプレン濃度が6重量%以下となる条件で蒸留される。この条件で蒸留されることで、クロロプレンの重合は問題ない程度にまで抑制でき、ヘビー分の生成も実質的になくなる。上記の条件範囲にするためには、蒸留塔フィード液組成にもよるが、留出/缶出液量比等の条件を選定することにより実現できる。蒸留塔の留出液温度が74℃以下であっても、塔頂留出液中のクロロプレン濃度が6重量%を越える場合、あるいは塔頂留出液中のクロロプレン濃度が6重量%以下であっても留出液温度が74℃を越える場合には、クロロプレンの重合速度が速く、蒸留塔の閉塞トラブルを回避することが困難となる。さらに、留出液中のクロロプレン濃度は重合抑制の観点から4重量%以下であることが好ましく、2重量%以下であることが特に好ましい。
【0022】
さらに、塔頂へのベンゼンの留出率が90%以上で、かつ塔頂への1,1,2−TCEの留出率が98%以上であることが、回収1,2−EDCを熱分解原料として使用する上で特に好ましい。
【0023】
本発明により、塔頂より、クロロプレン、ベンゼン及び1,1,2−TCEをその他の低沸点成分と共に留出させて、純度98重量%以上の高純度の1,2−EDCを高回収率で得ることができる。塔底の缶出液への1,2−EDCの回収率は、少なくとも60%以上、通常70%以上が得られる。回収された1,2−EDCは高純度であり、熱分解の原料として再使用することができる。
【0024】
【実施例】
以下、本発明を実施例を用いてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0025】
なお、以下の実施例中、ベンゼンの塔頂への留出率(%)は(塔頂留出液中のベンゼン量/フィード液中のベンゼン量)×100により、1,1,2−TCEの留出率(%)は(塔頂留出液中の1,1,2−TCE量/フィード液中の1,1,2−TCE量)×100により、1,2−EDCの回収率(%)は(缶出液中の1,2−EDC量/フィード液中の1,2−EDC量)×100により求められる。
【0026】
実施例1
1,2−EDCを熱分解し、生成した塩化水素及び塩化ビニルモノマーを分離した後の未分解1,2−EDCの低沸物分離塔の塔頂留出液に、エチレンのオキシクロリネーション反応により得られた1,2−EDCの低沸物分離塔の塔頂留出液を添加、混合したものを原料に使用して連続蒸留を実施した。蒸留塔には、内径32mm、実段数80段(推定理論段数約60段)のオルダーショウ蒸留塔を使用した。この蒸留塔に、上記原料液を蒸留塔の中央の40段からフィードした。フィード液組成は、表1に示す通りである。フィード液中のジクロルエチレン、1,1−ジクロルエタン及びクロロホルムの濃度は、合計で23.6重量%であった。フィード液温度は70℃、フィード液速度は108.6g/Hr、還流比は10であった。留出液温度は69〜70℃、缶出液温度は87〜88℃であった。塔頂への留出液量は58.2g/Hr、塔底への缶出液量は50.4g/Hrで、留出液及び缶出液の組成は表1に示す通りであった。留出液中のクロロプレン濃度は5.0重量%であった。ベンゼンの塔頂への留出率は92.4%、1,1,2−TCEの留出率は99.0%、缶出液の回収1,2−EDCの純度は99.4重量%、1,2−EDCの回収率は74.6%であった。また、長時間の連続蒸留に於いてクロロプレンの重合によるヘビー分の生成は見られなかった。
【0027】
【表1】
【0028】
比較例1
1,2−EDCを熱分解し、生成した塩化水素及び塩化ビニルモノマーを分離した後の未分解1,2−EDCの低沸物分離塔の塔頂留出液をフィードして蒸留を実施した。蒸留塔には、実施例1と同一の内径32mm、実段数80段のオルダーショウ蒸留塔を使用した。この蒸留塔に、上記原料液を蒸留塔中央の40段からフィードして連続蒸留を実施した。フィード液組成は表2に示す通りであり、フィード液中のジクロルエチレン、1,1−ジクロルエタン及びクロロホルムの濃度は、合計で20.4重量%であった。フィード液温度70℃、フィード液速度101.3g/Hr、還流比は10であった。留出液温度は69〜70℃、缶出液温度は87〜88℃であった。塔頂への留出液量は55.7g/Hr、塔底への缶出液量は45.6g/Hrで、留出液及び缶出液の組成は表2に示す通りであった。ベンゼンの留出率は88.6%、1,1,2−TCEの留出率は97.8%、缶出液の1,2−EDCの純度は98.5重量%、1,2−EDCの回収率は76.2%であった。塔頂留出液中のクロロプレンの濃度は7.8重量%であり、長時間連続蒸留の缶出液中にクロロプレンの重合によるヘビー分が微量検出された。
【0029】
【表2】
【0030】
実施例2
1,2−EDCを熱分解し、生成した塩化水素及び塩化ビニルモノマーを分離した後の未分解1,2−EDCの低沸物分離塔の塔頂留出液を実段数20段の蒸留塔を使用して、還流比2で蒸留した。この蒸留で得られた缶出液に、クロロホルムを20重量%添加混合した。この液を実施例1と同一の実段数80段の蒸留塔に、中央の40段からフィードして還流比10.6で連続蒸留を実施した。フィード液組成は、表3に示す通りで、フィード液中のジクロルエチレン、1,1−ジクロルエタン及びクロロホルムの濃度は、合計で21.0重量%であった。フィード液温度は70℃、フィード液速度は104.5g/Hr、留出液温度は71〜72℃、缶出液温度は87〜88℃であった。塔頂への留出液量は54.8g/Hr、塔底への缶出液量は49.7g/Hrであり、留出液及び缶出液の組成は表3に示す通りであった。留出液中のクロロプレン濃度は0.8重量%、缶出液の1,2−EDCの純度は99.1重量%であった。ベンゼンの塔頂への留出率は91.0%、1,1,2−TCEの留出率は98.6%、1,2−EDCの回収率は73.1%であった。
【0031】
【表3】
【0032】
実施例3
実施例2のクロロホルムの代わりに1,1−ジクロルエタンを20重量%添加する外は、実施例2と全く同一の方法で連続蒸留を実施した。フィード液組成は表4に示す通りで、フィード液中のジクロルエチレン、1,1−ジクロルエタン及びクロロホルムの濃度は、合計で22.0重量%であった。フィード液温度は70℃、フィード液速度は104.7g/Hr、留出液温度は69〜70℃、缶出液温度は87〜88℃であった。塔頂への留出液量は54.5g/Hr、塔底への缶出液量は50.2g/Hrであり、留出液及び缶出液の組成は表4に示す通りであった。留出液中のクロロプレンの濃度は0.8重量%、缶出液の1,2−EDCの純度は99.2重量%であった。ベンゼンの留出率は91.4%、1,1,2−TCEの留出率は98.4%、1,2−EDCの回収率は74.8%であった。
【0033】
【表4】
【0034】
比較例2
クロロホルムを添加しない外は実施例2と全く同一の方法で、未分解1,2−EDCの低沸物分離塔の塔頂留出液を蒸留し、低沸分をカットして得られた蒸留塔の缶出液を蒸留塔にフィードして、連続蒸留を実施した。蒸留塔には実施例2と同一の内径32mm、実段数80段のオルダーショウ蒸留塔を使用した。この蒸留塔に原料液を蒸留塔の中央の40段からフィードして蒸留を実施した。フィード液組成は表5に示す通りで、フィード液中のジクロルエチレン、1,1−ジクロルエタン及びクロロホルムの濃度は、合計で5.2重量%であった。フィード液温度は70℃、フィード液速度は149.2g/Hr、還流比は10であった。留出液温度は81〜82℃、缶出液温度は88〜89℃であった。塔頂への留出液量は52.7g/Hr、塔底への缶出液量96.5g/Hr、留出液及び缶出液組成は表5に示す通りであった。塔頂へのベンゼンの留出率60.4%、1,1,2−TCEの留出率74.6%、缶出液の回収1,2−EDCの純度は95.5重量%であり、1,2−EDCの回収率は79.8%であった。
【0035】
【表5】
【0036】
比較例3
比較例2と全く同一の方法で、実段数80段のオルダーショウ蒸留塔を使用して連続蒸留を実施した。フィード液組成は表6に示す通りで、フィード液中のジクロルエチレン、1,1−ジクロルエタン及びクロロホルムの濃度は、合計で5.2重量%であった。フィード液温度は80℃、フィード速度は95.3g/Hr、還流比は10.2であった。留出液温度は82〜83℃、缶出液温度は88〜89℃、留出液量は53.7g/Hr、缶出液量は41.6g/Hr、留出液及び缶出液組成は表6に示す通りであった。ベンゼンの留出率は82.8%、1,1,2−TCEの留出率は89.4%、回収1,2−EDCの純度は97.1重量%であり、1,2−EDCの回収率は54.8%であった。
【0037】
【表6】
【0038】
実施例4
1,2−EDCを熱分解し、生成した塩化水素及び塩化ビニルモノマーを分離した後の未分解1,2−EDCの低沸物分離塔の塔頂留出液に、トランス1,2−ジクロルエチレンを添加した液をフィードして連続蒸留を実施した。実段数80段のオルダーショウ蒸留塔に、上記混合液を蒸留塔の上部から30段目にフィードした。フィード液組成は、表7に示す通りであり、フィード液中のジクロルエチレン、1,1−ジクロルエタン及びクロロホルムの濃度は、合計で31.2重量%であった。フィード液温度は70℃、フィード液速度は106.0g/Hr、還流比は10.4であった。塔頂への留出液量は65.8g/Hr、塔底への缶出液量は40.2g/Hrであり、留出液及び缶出液の組成は、表7に示す通りであった。缶出液の回収EDCの純度は99.1重量%、EDCの回収率は74.3%、ベンゼンの塔頂への留出率は93.1%、1,1,2−TCEの塔頂への留出率は99.2%であった。塔頂留出液の温度は64〜65℃、留出液中のクロロプレン濃度は5.6重量%であり、長時間の連続蒸留において、クロロプレンの重合によるヘビー分の生成は全く見られなかった。
【0039】
【表7】
【0040】
【発明の効果】
本発明によれば、1,2−EDCの熱分解における未分解の1,2−EDCの低沸物分離塔の塔頂留出液から、混在する種々の不純物を効率よく分離除去して、経済的に有利に熱分解原料として使用可能な高純度の1,2−EDCを高回収率で得ることができる。
Claims (3)
- 1,2−ジクロルエタンの熱分解により生成する塩化水素と塩化ビニルモノマーを分離した後の未分解1,2−ジクロルエタンの低沸物分離塔の塔頂留出液から1,2−ジクロルエタンを回収する方法であって、前記塔頂留出液に、1,2−ジクロルエチレン、1,1−ジクロルエタン及びクロロホルムからなる群より選ばれる1又は2以上を合計で10重量%以上含有させ、塔頂留出液の温度が74℃以下となり、塔頂留出液中のクロロプレン濃度が6重量%以下となる条件で蒸留して、98重量%以上の純度の1,2−ジクロルエタンを回収率60%以上で得ることを特徴とする高純度1,2−ジクロルエタンの回収方法。
- エチレンのオキシクロリネーション反応により得られた1,2−ジクロルエタンの低沸物分離塔の塔頂留出液を蒸留塔フィード液に含有させることを特徴とする請求項1に記載の高純度1,2−ジクロルエタンの回収方法。
- 1,2−ジクロルエタンの熱分解により生成する塩化水素と塩化ビニルモノマーを分離した後の未分解1,2−ジクロルエタンの低沸物分離塔の塔頂へのベンゼンの留出率が90%以上で、かつ1,1,2−トリクロルエチレンの留出率が98%以上であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の高純度1,2−ジクロルエタンの回収方法。
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