JP4691702B2 - トランス−1,1,2,2,3,4−ヘキサフルオロシクロブタンの製造方法 - Google Patents

トランス−1,1,2,2,3,4−ヘキサフルオロシクロブタンの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、本発明は、冷媒、洗浄剤、発泡剤の他、医薬、農薬、フッ素系高分子等の中間体としても有用な含フッ素化合物の製造方法に関する。
含フッ素化合物は高分子材料、冷媒、洗浄剤、発泡剤、医薬、農薬等、工業的に幅広く用いられている。特に、炭素、フッ素、水素原子から構成されるハイドロフルオロカーボン(HFC)はフロン代替物質として、冷媒、発泡剤、洗浄剤等の用途が非常に期待されている。本発明で対象とするトランス-1,1,2,2,3,4-ヘキサフルオロシクロブタンは、冷媒としての用途が期待されている(特許文献1)。
トランス-1,1,2,2,3,4-ヘキサフルオロシクロブタンの製造法として、1,2-ジクロロ-ヘキサフルオロシクロブタンの還元反応とトリフルオロエチレンの2量化反応の2つの方法が知られている。
前者の方法は還元剤として水素化リチウムアルミニウム、トリブチルスズヒドリドを用いるが、いずれの還元剤も反応性が非常に高いことから大量生産に適さず、これらの反応によるトランス-1,1,2,2,3,4-ヘキサフルオロシクロブタンの収率も40%程度と低いことが知られている。(非特許文献1、非特許文献2)
従来のトランス-1,1,2,2,3,4-ヘキサフルオロシクロブタンの製造方法は、次の化学式で示されている(非特許文献1)。
しかし、LiAlH4が工業生産に不向き。収率、選択性も低い。
さらに、
しかし、Bu3SnHが工業生産に不向きで、毒性があるという問題点が残されているうえ、収率、選択性も低い。
さらに、
という方法においてもトランス-1,1,2,2,3,4-ヘキサフルオロシクロブタンの収率は10%以下と非常に低い(非特許文献1)。
特開平05−78652号公報 J. Chem. Soc., 3198 (1961) J. Fluorine Chem., 71, 59 (1995)
本発明は、上記のような従来技術の問題点を克服するためになされたものであって、大量生産に適した安価な原料を用いて、効率良くトランス-1,1,2,2,3,4-ヘキサフルオロシクロブタンを製造する方法を提供する。
本発明者は前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、3,3,4,4-テトラフルオロシクロブテンとフッ素又は高原子価金属フッ化物との反応により、効率良くトランス-1,1,2,2,3,4-ヘキサフルオロシクロブタンが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
下記化学式(1)
で表わされる3,3,4,4-テトラフルオロシクロブテンを、フッ素ガス又は高原子価金属フッ化物でフッ素化することを特徴とする下記化学式(2)
で表わされるトランス-1,1,2,2,3,4-ヘキサフルオロシクロブタンの製造方法である。
また、本発明のトランス-1,1,2,2,3,4-ヘキサフルオロシクロブタンの製造方法では、高原子価金属フッ化物としてCoF3、MnF3 から選ばれる化合物を用い、その使用量は3,3,4,4-テトラフルオロシクロブテンに対して0.1〜10当量であることが好ましい。
本発明のプロセスによるトランス-1,1,2,2,3,4-ヘキサフルオロシクロブタン製造方法の長所として考えられる点は以下の通りである。
1)CoF3、MnF3は、従来の合成ルートのLiAlH4やBu3SnHと比較して工業生産向き。
2)従来法より、原料コストの面で有利である。
3)プロセストータルで考えて、目的物の収率が報告例より高い。
本発明で使用する高原子価金属フッ化物として、3フッ化コバルト、2フッ化銀から選ばれる化合物などを挙げることができるが、本発明者らが実施した結果、特に3フッ化コバルト、3フッ化マンガンが好適であることを見出している。その使用量は通常、3,3,4,4-テトラフルオロシクロブテンに対して0.1〜10当量、好ましくは、1〜5当量である。
反応温度は、使用する高原子価金属フッ化物の種類により異なるが、あまり低すぎる場合は反応速度が遅くなり、あまり高すぎる場合はトランス-1,1,2,2,3,4-ヘキサフルオロシクロブタンの選択性が低下するため、通常0℃〜500℃、好ましくは30℃〜300℃、更に好ましくは50℃〜200℃の範囲とするのがよい。
反応時間は、反応温度等により異なるが、通常0.01〜500時間、好ましくは0.1〜50時間の範囲である。
本反応は、溶媒を使用することなく実施することができるが、溶媒を用いて実施することも可能である。しかし、高原子価金属フッ化物は溶媒中の炭素−水素結合の水素をフッ素化する能力があるため、反応生成物の精製、高原子価金属フッ化物の使用量の増加等を考慮すると溶媒を使用しない方が好ましい。
また、本発明の反応はバッチ式に限らず、フロー式でも行うことができる。
内容量50 mlのステンレス製圧力反応器を乾燥させた後、3フッ化マンガン1.12gを秤量した。反応容器を液体窒素で冷やしながら系内を脱気した後、真空ラインを用いて3,3,4,4-テトラフルオロシクロブテン126mgを導入した。反応器を100℃に保ち24時間攪拌した。反応により得られた粗生成物を真空ラインにより精製し、1H-NMR、19F-NMRで分析した結果、反応により目的とするトランス-1,1,2,2,3,4-ヘキサフルオロシクロブタン92 mg (収率56%)を得ることができた。
実施例1と同様に、3フッ化マンガンと3,3,4,4-テトラフルオロシクロブテンの反応を150℃、1時間行った。実施例1と同様に分析を行った結果、反応により目的とするトランス-1,1,2,2,3,4-ヘキサフルオロシクロブタン97 mg (収率59%)を得ることができた。
3フッ化マンガンの代わりに3フッ化コバルト1.16gを用い、実施例1と同様に3,3,4,4-テトラフルオロシクロブテンとの反応を100℃、24時間行った。実施例1と同様に分析を行った結果、反応により目的とするトランス-1,1,2,2,3,4-ヘキサフルオロシクロブタン90 mg (収率55%)を得ることができた。
実施例3と同様に3フッ化コバルトと3,3,4,4-テトラフルオロシクロブテンの反応を150℃、1時間行った。実施例1と同様に分析を行った結果、反応により目的とするトランス-1,1,2,2,3,4-ヘキサフルオロシクロブタン87mg (収率53%)を得ることができた。
本発明の反応式は、次式で示され、3,3,4,4-テトラフルオロシクロブテン1をフッ素化して目的生成物のトランス-1,1,2,2,3,4-ヘキサフルオロシクロブタン2を得る。
比較例1
3フッ化マンガンの代わりに2フッ化銀1.46gを用い、実施例1と同様に3,3,4,4-テトラフルオロシクロブテンとの反応を100℃、1時間行った。実施例1と同様に分析を行った結果、3,3,4,4-テトラフルオロシクロブテンは検出されず、目的とするトランス-1,1,2,2,3,4-ヘキサフルオロシクロブタン13mg (収率8%)を得た。
比較例2
3フッ化マンガンの代わりに4フッ化カリウムコバルト1.74gを用い、実施例1と同様に3,3,4,4-テトラフルオロシクロブテンとの反応を250℃、1時間行った。実施例1と同様に分析を行った結果、3,3,4,4-テトラフルオロシクロブテン 83 mg (66%)を回収したものの、目的とするトランス-1,1,2,2,3,4-ヘキサフルオロシクロブタンを得ることは出来なかった。

比較例3
3フッ化マンガンの代わりに4フッ化セリウム2.16gを用い、実施例1と同様に3,3,4,4-テトラフルオロシクロブテンとの反応を250℃、1時間行った。実施例1と同様に分析を行った結果、3,3,4,4-テトラフルオロシクロブテン 112mg (89%)を回収したものの、目的とするトランス-1,1,2,2,3,4-ヘキサフルオロシクロブタンを得ることは出来なかった。
行ったトランス-1,1,2,2,3,4-ヘキサフルオロシクロブタンの製造の具体例の全てを、実施例、比較例を含めて表1に示す。
本発明によれば、前記化学式(1)で表される3,3,4,4-テトラフルオロシクロブテンと高原子価金属フッ化物を反応させることを特徴とする前記化学式(2)で表されるトランス-1,1,2,2,3,4-ヘキサフルオロシクロブタンを効率よく得ることができ、冷媒、洗浄剤、発泡剤の他、医薬、農薬、フッ素系高分子等の中間体としても有用な含フッ素化合物を安価に提供することが出来る。

Claims (2)

  1. 下記化学式(1)
    で表わされる3,3,4,4-テトラフルオロシクロブテンを、CoF 3 、MnF 3 、AgF 2 から選ばれる高原子価金属フッ化物でフッ素化することを特徴とする下記化学式(2)
    で表わされるトランス-1,1,2,2,3,4-ヘキサフルオロシクロブタンの製造方法。
  2. 高原子価金属フッ化物がCoF3、MnF3から選ばれる化合物であり、その使用量が3,3,4,4-テトラフルオロシクロブテンに対して0.1〜10当量である請求項1に記載したトランス-1,1,2,2,3,4-ヘキサフルオロシクロブタンの製造方法。
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