JP4688205B2 - クランク軸成形方法 - Google Patents

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Description

本発明は、クランク軸の外周面に歯切り加工をしてギヤ等を成形するとき、切削油を用いないで上記歯切り加工(ドライカット)を行なうようにしたクランク軸成形方法に関するものである。
上記クランク軸成形方法には、従来、下記特許文献1に示されるものがある。この公報のものによれば、ワークが、その軸心を縦向きとして回転テーブルが有するチャックに支持される。そして、この回転テーブルの回転駆動により、上記ワークがその軸心回りに回転駆動させられる。また、上記回転テーブルに対し相対移動可能とされるホブヘッドにホブカッタが支持され、上記ワークの軸方向における一部の外周面が、上記ホブカッタにより切削油を用いることなく歯切り加工される。
ここで、上記歯切り加工により生じる切削屑が、上記ホブカッタの刃溝に滞留したとする。すると、この切削屑が上記ホブカッタとワークの被加工部との間に噛み込むなどして、歯切り加工の円滑な進行が阻害されたり、加工精度が阻害されたりするおそれを生じる。
そこで、上記ホブカッタの刃溝に向かって圧縮空気が噴射可能とされている。そして、この噴射によれば、切削屑が吹き飛ばされて、上記ホブカッタの刃溝への切削屑の滞留が防止され、もって、良好な歯切り加工が達成されるようになっている。
特開平11−309622号公報
ところで、上記ワークがクランク軸である場合には、次のような問題点が生じてくる。
即ち、クランク軸は、その軸心上に位置するクランク主軸と、このクランク主軸の端部から径方向外方に突出する複数のクランクウェブと、クランク軸の軸方向で隣り合う両クランクウェブに架設されるクランクピンとを備えている。
ここで、一般に、上記クランクウェブの上面はほぼ水平に延びて、大きい面積を有している。このため、上記クランク軸の軸心を縦向きとして、このクランク軸を上記軸心周りに回転させながら歯切り加工し、また、この際、上記圧縮空気を噴射させたとする。すると、上記歯切り加工に伴い飛散した切削屑と、上記噴射により吹き飛ばされた切削屑との各一部が、一旦、上方に向かって飛散した後、それぞれ上記クランクウェブの上面に落下して付着し、ここに残留するおそれを生じる。
そして、上記切削屑が残留した状態から、歯切り加工後のクランク軸を次工程に向かわせようとして、上記チャックを緩め、クランク軸を上記回転テーブルから離脱させ、かつ、移動させるとする。すると、この際、上記クランクウェブの上面に付着していた切削屑が上記チャック上に落下するおそれを生じる。そして、この場合には、落下した切削屑により、上記チャックに対する後続のクランク軸の取り付けが不正確になり、この結果、このクランク軸の加工精度が阻害されるおそれを生じる。
そこで、上記歯切り加工後、上記チャックからクランク軸を離脱させる毎に、上記チャックを含む回転テーブルを清浄にすることが要求される。しかし、このような作業は煩雑であり、この結果、上記クランク軸の成形作業が煩雑となっている。
本発明は、上記のような事情に注目してなされたもので、本発明の目的は、クランク軸に対し歯切り加工を含む成形作業をするとき、加工精度のよい成形作業が容易にかつ効率よくできるようすることである。
請求項1の発明は、クランク軸2の軸心3を縦向きとして、このクランク軸2を回転テーブル13に支持させ、この回転テーブル13の回転駆動Aにより、上記クランク軸2をその軸心3回りに回転駆動Aさせ、上記回転テーブル13に対し相対移動可能とされるホブヘッド20にホブカッタ22を支持させ、上記クランク軸2の軸方向における一部の外周面を、切削油を用いることなく上記ホブカッタ22により歯切り加工をするようにしたクランク軸成形方法において、
上記歯切り加工後に、上記クランク軸2からホブカッタ22を離脱駆動Cさせ始めた後、上記クランク軸2を回転させた状態で、注液口29から排出される洗浄液26を、上記クランク軸2の上部側からこのクランク軸2に注液Hするようにしたものである。
請求項2の発明は、請求項1の発明に加えて、上記クランク軸2に洗浄液26を注液した状態で、このクランク軸2を少なくとも1回転させるようにしたものである。
請求項3の発明は、請求項1、もしくは2の発明に加えて、平面視で、上記注液口29から外方に向かうこの注液口29の孔芯42の延長線43を、上記クランク軸2から離脱駆動Cさせ始めてからこの離脱駆動が完了するまでのホブカッタ22の移動軌跡の外方に位置させたものである。
請求項4の発明は、請求項1から3のうちいずれか1つの発明に加えて、圧縮空気34を噴射可能とする複数の噴射ノズル35を形成したブロック36を上記ホブヘッド20に支持させ、上記各噴射ノズル35の噴射口35aを上記ホブカッタ22の各切刃22bの近傍に位置させると共に、上記各噴射口35aから噴射される圧縮空気34を上記ホブカッタ22の各切刃22bに向かわせるようにしたものである。
なお、この項において、上記各用語に付記した符号は、本発明の技術的範囲を後述の「実施例」の項や図面の内容に限定解釈するものではない。
本発明による効果は、次の如くである。
請求項1の発明は、クランク軸の軸心を縦向きとして、このクランク軸を回転テーブルに支持させ、この回転テーブルの回転駆動により、上記クランク軸をその軸心回りに回転駆動させ、上記回転テーブルに対し相対移動可能とされるホブヘッドにホブカッタを支持させ、上記クランク軸の軸方向における一部の外周面を、切削油を用いることなく上記ホブカッタにより歯切り加工をするようにしたクランク軸成形方法において、
上記歯切り加工後に、上記クランク軸からホブカッタを離脱駆動させ始めた後、上記クランク軸を回転させた状態で、注液口から排出される洗浄液を、上記クランク軸の上部側からこのクランク軸に注液するようにしている。
このため、上記クランク軸の一部の歯切り加工時に生じた切削屑が、上記クランク軸のクランクウェブの上面などに落下して付着し、ここに一旦残留したとしても、この切削屑は上記注液口から排出される洗浄液によって洗浄され、除去される。
よって、クランク軸に対し歯切り加工を含む成形作業した後に、このクランク軸を上記回転テーブルから離脱させ、かつ、次工程に向かって移動させたとしても、上記クランク軸側から上記回転テーブルに向かって切削屑が落下することは防止される。これにより、上記回転テーブルからクランク軸を離脱させる毎に上記回転テーブルを清浄にする、という作業は不要、もしくは簡単にできる。この結果、上記回転テーブルに対する後続のクランク軸の取り付けは、上記切削屑に邪魔されることなく、正確にでき、加工精度のよいクランク軸の成形作業が容易にできる。
また、上記したように、クランク軸への洗浄液の注液は、上記クランク軸からホブカッタを離脱させ始めた後に行なわれる。
このため、前記したように、切削油を用いないで歯切り加工をした場合には、ホブカッタは高温となるが、このホブカッタに対し、上記洗浄液が直接に注液されることは防止される。よって、上記ホブカッタが上記洗浄液を注液されることにより急冷されて変質する、ということが防止される。この結果、上記ホブカッタの寿命が良好に保たれることから、このホブカッタについての保守、点検作業が簡素化され、よって、加工精度のよいクランク軸の成形作業が、より容易にできる。
また、仮に、上記クランク軸への洗浄液の注液を、上記クランク軸からホブカッタを離脱させ始めた直後から行なうとすると、上記クランク軸の成形作業の所要時間を延長させることなく、上記洗浄時間を、より長く採ることができる。よって、上記洗浄に基づく加工精度のよいクランク軸の成形作業が、効率よくできる。
請求項2の発明は、上記クランク軸に洗浄液を注液した状態で、このクランク軸を少なくとも1回転させるようにしている。
このため、上記クランク軸に付着して残留しようとする切削屑は、このクランク軸の全体からより確実に除去される。よって、加工精度のよいクランク軸の成形作業が更に容易にできる。
請求項3の発明は、平面視で、上記注液口から外方に向かうこの注液口の孔芯の延長線を、上記クランク軸から離脱駆動させ始めてからこの離脱駆動が完了するまでのホブカッタの移動軌跡の外方に位置させている。
このため、切削油を用いないで歯切り加工をすることにより、高温となっているホブカッタに対し、上記洗浄液が直接に注液されることは、より確実に防止される。よって、上記ホブカッタの寿命が、より確実に良好に保たれることから、このホブカッタについての保守、点検作業が更に簡素化され、よって、精度のよいクランク軸の成形作業が更に容易にできる。
請求項4の発明は、圧縮空気を噴射可能とする複数の噴射ノズルを形成したブロックを上記ホブヘッドに支持させ、上記各噴射ノズルの噴射口を上記ホブカッタの各切刃の近傍に位置させると共に、上記各噴射口から噴射される圧縮空気を上記ホブカッタの各切刃に向かわせるようにしている。
このため、上記のように噴射された圧縮空気により、上記ホブカッタの特に刃溝に滞留しようとする切削屑は吹き飛ばされて除去される。よって、上記切削屑が上記ホブカッタとクランク軸の被加工部との間に噛み込むなどして、上記歯切り加工の円滑な進行が阻害されたり、加工精度が阻害されたりする、ということは防止される。この結果、加工精度のよいクランク軸の成形作業が、更に効率よくできる。
本発明のクランク軸成形方法に関し、クランク軸に対し歯切り加工を含む成形作業をするとき、加工精度のよい成形作業が容易にかつ効率よくできるようする、という目的を実現するため、本発明を実施するための最良の形態は、次の如くである。
即ち、クランク軸の軸心を縦向きとして、このクランク軸を回転テーブルに支持させ、この回転テーブルの回転駆動により、上記クランク軸をその軸心回りに回転駆動させる。上記回転テーブルに対し相対移動可能とされるホブヘッドにホブカッタを支持させ、上記クランク軸の軸方向における一部の外周面を、切削油を用いることなく上記ホブカッタにより歯切り加工をする。この歯切り加工後に、上記クランク軸の径方向外方に向かってこのクランク軸から上記ホブカッタを離脱駆動させた後、上記クランク軸を回転させ始めた状態で、注液口から排出される洗浄液を、上記クランク軸の上部側からこのクランク軸に注液する。
本発明をより詳細に説明するために、その実施例を添付の図に従って説明する。
図において、符号1は、ワークであるエンジン用クランク軸2を歯切り加工するための成形装置であり、より具体的には、この成形装置1はホブ盤である。
上記クランク軸2は、その軸心3上に位置するクランク主軸4と、このクランク主軸4の端部から径方向外方に向かって突出する複数のクランクウェブ5と、上記クランク軸2の軸方向で隣り合う両クランクウェブ5に架設されるクランクピン6と、上記クランク軸2の一端部側(下端部側)に位置するクランクウェブ5の外周部に形成されるギヤ7とを備えている。
上記成形装置1は、固定側部材であるベッド11と、鉛直方向に延びる軸心12周りの一方向に回転駆動Aするよう上記ベッド11に支持されチャックを有する回転テーブル13と、上記ベッド11に突設されるコラム14と、センタ15が上記軸心12上に位置して、上記コラム14に上下に移動可能に固定される芯押台16とを備えている。上記回転テーブル13はその軸心12上に不図示のチャックを有している。このチャックにより、上記軸心12上に上記クランク軸2の下端部のクランク主軸4が着脱可能に支持される。また、上記センタ15により、上記クランク軸2の上端部が上記回転テーブル13の軸心12上に位置決めされる。これにより、上記両軸心3,12は互いに同軸上に位置させられる。
また、上記成形装置1は、水平方向で、上記回転テーブル13に向かって接近駆動B、離脱駆動Cするよう上記ベッド11に突設される他のコラム19と、鉛直方向で、上昇駆動D、下降駆動Eするよう上記コラム19に支持されるホブヘッド20と、水平な軸心21回りの一方向に回転駆動Fするよう上記ホブヘッド20に支持され、上記ギヤ7の各歯を成形するよう歯切り加工するホブカッタ22とを備えている。上記各駆動の駆動源はそれぞれサーボモータで構成される。
上記ホブカッタ22は、上記軸心21上に位置するボス部22aと、このボス部22aの外周面に一体的に突設され、ウォームのねじすじ上で周方向等間隔に配置される多数の切刃22bとを備えている。上記ホブカッタ22の回転駆動Aの方向における上記各切刃22bの前面がすくい面22cとされ、後面が刃裏面22dとされている。また、上記周方向で隣り合う両切刃22bの間には、それぞれ刃溝22eが形成されている。
上記成形装置1は、上記ギヤ7が上記ホブカッタ22により歯切り加工により成形されたとき、上記クランク軸2に付着して残留しようとする切削屑を洗浄可能とする洗浄装置25を備えている。この洗浄装置25は、洗浄液26を貯留するタンク27と、上記タンク27の洗浄液26を吸入する一方、吐出する液ポンプ28と、液ポンプ28により吐出された洗浄液26を上記回転テーブル13側に導いて、その下流端の注液口29から上記洗浄液26を排出させる液チューブ30と、この液チューブ30の中途部に設けられ、上記注液口29を通して上記洗浄液26を排出、停止可能とさせるソレノイドバルブ31と、上記液チューブ30の下流端部を上記芯押台16側に支持させるブラケット32とを備えている。上記洗浄液26には切削油が用いられる。
また、上記成形装置1は、不図示のコンプレッサで加圧された高圧力の圧縮空気34を噴射可能とする複数の噴射ノズル35が形成された剛性のある金属製ブロック36と、このブロック36を上記ホブヘッド20に強固に支持させる剛性のある板金製ブラケット37と、上記噴射ノズル35の上流端へ圧縮空気34を供給、停止可能とさせるソレノイドバルブとを備えている。
上記噴射ノズル35は互いに平行に、かつ、上記軸心21に沿って列状に配置されている。上記軸心21の軸方向で、上記ホブカッタ22の切刃22b群と上記噴射ノズル35の噴射口35a群とは互いに同じところに配置され、かつ、上記切刃22b群の幅寸法に噴射口35a群の幅寸法がほぼ合致させられている。
上記各噴射ノズル35の噴射口35aは、上記ホブカッタ22の回転駆動Fにおいて、上記クランク軸2の被加工部41に達する直前の上記ホブカッタ22の各切刃22bの近傍に位置させられている。上記各噴射口35aから上記各切刃22bまでの距離は、30−50mmと極めて接近させられている。また、上記各噴射口35aから噴射される圧縮空気34の一部は、上記ホブカッタ22の接線方向、かつ、斜め下方で、上記各切刃22bの刃裏面22dに向かわされる。また、上記噴射される圧縮空気34の他部は、上記軸心21の軸方向で互いに隣り合う両切刃22bの間の谷部を通り、クランク軸2の被加工部41に向かわされる。
上記成形装置1を用いて、クランク軸2の一部40につきギヤ7を成形する方法につき、説明する。
まず、上記クランク軸2の軸心3を縦向きとして、このクランク軸2の下端部のクランク主軸4を回転テーブル13のチャックによりこの回転テーブル13に支持させる。また、上記クランク軸2の上端部は、上記芯押台16により位置決めさせる。これにより、上記クランク軸2の軸心3を、上記回転テーブル13の軸心12に合致させる。上記回転テーブル13の回転駆動Aにより、上記クランク軸2をその軸心3回りに回転駆動Aさせる。
一方、上記ホブカッタ22を上記クランク軸2の径方向外方域、かつ、上記一部40よりも少し下側の加工開始基点Gに位置させ、ここで、回転駆動Fさせる。そして、上記コラム19の接近駆動Bにより、上記ホブヘッド20とホブカッタ22とを上記ギヤ7を成形する以前のクランク軸2の一部40に速い送りで接近駆動Bさせる。そして、上記ホブカッタ22により、上記一部40の歯切り加工を開始可能な状態にする(図1中、三点鎖線)。
次に、上記ホブヘッド20の上昇駆動Dにより、上記ホブカッタ22を上昇駆動Dさせて、上記一部40の歯切り加工を続けることにより、上記ギヤ7を成形する(図1,2中、二点鎖線)。ここで、例えば、ギヤ7の歯数がm枚(例えば、48枚)であるとし、上記回転テーブル13の軸心12回りの回転数がn回転(例えば、1回転/分)であるとする。この場合、上記ホブカッタ22の軸心21回りの回転数はm・n(48×1=48回転/分)とされる。
上記ギヤ7の成形時、上記クランク軸2の被加工部41に達する直前の上記ホブカッタ22の切刃22bに向かって、上記ブロック36の各噴射ノズル35を通し大量の圧縮空気34が高圧かつ連続で噴射される。すると、この噴射された圧縮空気34により、上記ホブカッタ22の切刃22bの刃裏面22dに付着しようとする切削屑や、刃溝22e、および被加工部41の周りに滞留しようとする切削屑は吹き飛ばされて、除去される。
このため、切削屑が刃裏面22dに付着したり刃溝22eに滞留したりしないよう、予め、これら刃裏面22dや刃溝22eの内面を研磨したりコーティングを施したりするということは不要である。よって、その分、上記ギヤ7の成形作業が容易にできる。
次に、上記コラム19の離脱駆動Cにより、上記ホブヘッド20とホブカッタ22とを離脱駆動Cさせる。その後、上記ホブヘッド20の下降駆動Eにより、上記ホブカッタ22を下降駆動Eさせる。これにより、上記ホブカッタ22は、上記加工開始基点Gに戻される。そして、この加工開始基点Gで、ホブカッタ22の回転駆動Fが一旦停止させられ、また、上記圧縮空気34の噴射が停止させられるなどして、次のギヤ7の加工に備えられる。
なお、上記クランク軸2の一部40の歯切り加工において、いわゆる2度切りをする場合には、まず、上記したように、ホブカッタ22を加工開始基点Gから、順次、接近駆動B、上昇駆動D、離脱駆動C、および下降駆動Eさせて、ギヤ7の粗成形をする。次に、上記順序とは逆にホブカッタ22を駆動させて、仕上げ成形をすればよい。
上記ホブカッタ22によるギヤ7の歯切り加工後には、上記クランク軸2の径方向外方に向かってこのクランク軸2から上記ホブカッタ22を離脱駆動Cさせる。そして、このようにホブカッタ22を離脱駆動Cさせ始めた後、上記回転テーブル13の回転駆動Aにより、クランク軸2を回転駆動Aさせた状態で、上記注液口29から排出される洗浄液26を上記クランク軸2の上部側からこのクランク軸2の全体にわたるよう大量に注液Hさせる。
ここで、上記したように、クランク軸2の一部40を切削油を用いることなく、しかも、上記ホブカッタ22の切刃22bとクランク軸2の被加工部41とに圧縮空気34を噴射させながら歯切り加工をする場合には、切削屑は、上方を含めて周囲に広く飛散しがちとなる。そして、このように飛散した切削屑の一部は上記クランク軸2のクランクウェブ5の上面などに落下して付着し、ここに残留しがちとなる。
しかし、上記注液口29から排出される洗浄液26は、大量かつ連続的であって、縦向きのクランク軸2の上方からクランク軸2の全体にわたるよう注液Hされ、クランク軸2の外面に沿って滝のように流下する。このため、上記歯切り加工時に生じた切削屑が、上記クランク軸2のクランクウェブ5の上面などに一旦残留したとしても、この切削屑は、上記洗浄液26によって、より確実に洗浄され、除去される。
よって、クランク軸2に対し歯切り加工を含む成形作業をした後に、このクランク軸2を上記回転テーブル13のチャックから離脱させ、かつ、次工程に向かって移動させたとしても、上記クランク軸2側から上記回転テーブル13に向かって切削屑が落下することは防止される。これにより、上記回転テーブル13からクランク軸2を離脱させる毎に上記回転テーブル13を清浄にする、という作業は不要、もしくは簡単にできる。この結果、上記回転テーブル13に対する後続のクランク軸2の取り付けは、上記切削屑に邪魔されることなく、正確にでき、加工精度のよいクランク軸2の成形作業が容易にできる。
また、上記したように、クランク軸2への洗浄液26の注液Hは、上記クランク軸2からホブカッタ22を離脱させ始めた後に行なわれる。
このため、前記したように、切削油を用いないで歯切り加工した場合には、ホブカッタ22は高温となるが、このホブカッタ22に対し、上記洗浄液26が直接に注液Hされることは防止される。よって、上記ホブカッタ22が上記洗浄液26を注液Hされることにより急冷されて変質する、ということが防止される。この結果、上記ホブカッタ22の寿命が良好に保たれることから、このホブカッタ22についての保守、点検作業が簡素化され、よって、加工精度のよいクランク軸2の成形作業が更に容易にできる。
また、仮に、上記クランク軸2への洗浄液26の注液Hを、上記クランク軸2からホブカッタ22を離脱させ始めた直後から行なうとすると、上記クランク軸2の成形作業の所要時間を延長させることなく、上記洗浄時間を、より長く採ることができる。よって、上記洗浄に基づく加工精度のよいクランク軸2の成形作業が、効率よくできる。
また、上記クランク軸2に洗浄液26を注液した状態で、このクランク軸2を少なくとも1回転させるようにしている。
このため、上記クランク軸2に付着して残留しようとする切削屑は、このクランク軸2の全体からより確実に除去される。よって、加工精度のよいクランク軸2の成形作業が更に容易にできる。
また、平面視で、上記注液口29から外方に向かうこの注液口29の孔芯42の延長線43を、上記クランク軸2から離脱駆動Cさせ始めてからこの離脱駆動が完了するまでのホブカッタ22の移動軌跡の外方に位置させている。具体的には、上記ホブカッタ22の移動軌跡は、上記加工開始基点Gから、順次、接近駆動B、上昇駆動D、離脱駆動C、および下降駆動Eして上記加工開始基点Gに戻る間のものである。
このため、切削油を用いないで歯切り加工をすることにより、高温となっているホブカッタ22に対し、上記洗浄液26が直接に注液Hされることは、より確実に防止される。よって、上記ホブカッタ22の寿命が、より確実に良好に保たれることから、このホブカッタ22についての保守、点検作業が更に簡素化され、よって、精度のよいクランク軸2の成形作業が更に容易にできる。
また、前記したように、圧縮空気34を噴射可能とする複数の噴射ノズル35を形成したブロック36を上記ホブヘッド20に支持させ、上記各噴射ノズル35の噴射口35aを上記ホブカッタ22の各切刃22bの近傍に位置させると共に、上記各噴射口35aから噴射される圧縮空気34を上記ホブカッタ22の各切刃22bに向かわせるようにしている。
このため、上記のように噴射された圧縮空気34により、上記ホブカッタ22の特に刃溝22eに滞留しようとする切削屑は吹き飛ばされて除去される。よって、上記切削屑が上記ホブカッタ22とクランク軸2の被加工部41との間に噛み込むなどして、上記歯切り加工の円滑な進行が阻害されたり、加工精度が阻害されたりする、ということは防止される。この結果、加工精度のよいクランク軸2の成形作業が、更に効率よくできる。
なお、以上は図示の例によるが、上記ギヤ7はスプラインであってもよい。
図2の部分拡大部分破断部分断面図である。 成形装置の全体側面図である。 図1のIII−III線矢視部分断面図である。 図1のIV−IV線矢視図である。 図1の部分拡大図である。
符号の説明
1 成形装置
2 クランク軸
3 軸心
4 クランク主軸
5 クランクウェブ
6 クランクピン
7 ギヤ
12 軸心
13 回転テーブル
19 コラム
20 ホブヘッド
21 軸心
22 ホブカッタ
22a ボス部
22b 切刃
22c すくい面
22d 刃裏面
22e 刃溝
25 洗浄装置
26 洗浄液
29 注液口
34 圧縮空気
35 噴射ノズル
35a 噴射口
36 ブロック
37 ブラケット
40 一部
41 被加工部
42 孔芯
43 延長線
A 回転駆動
B 接近駆動
C 離脱駆動
D 上昇駆動
E 下降駆動
F 回転駆動
G 加工開始基点
H 注液

Claims (4)

  1. クランク軸の軸心を縦向きとして、このクランク軸を回転テーブルに支持させ、この回転テーブルの回転駆動により、上記クランク軸をその軸心回りに回転駆動させ、上記回転テーブルに対し相対移動可能とされるホブヘッドにホブカッタを支持させ、上記クランク軸の軸方向における一部の外周面を、切削油を用いることなく上記ホブカッタにより歯切り加工をするようにしたクランク軸成形方法において、
    上記歯切り加工後に、上記クランク軸からホブカッタを離脱駆動させ始めた後、上記クランク軸を回転させた状態で、注液口から排出される洗浄液を、上記クランク軸の上部側からこのクランク軸に注液するようにしたことを特徴とするクランク軸成形方法。
  2. 上記クランク軸に洗浄液を注液した状態で、このクランク軸を少なくとも1回転させるようにしたことを特徴とする請求項1に記載のクランク軸成形方法。
  3. 平面視で、上記注液口から外方に向かうこの注液口の孔芯の延長線を、上記クランク軸から離脱駆動させ始めてからこの離脱駆動が完了するまでのホブカッタの移動軌跡の外方に位置させたことを特徴とする請求項1、もしくは2に記載のクランク軸成形方法。
  4. 圧縮空気を噴射可能とする複数の噴射ノズルを形成したブロックを上記ホブヘッドに支持させ、上記各噴射ノズルの噴射口を上記ホブカッタの各切刃の近傍に位置させると共に、上記各噴射口から噴射される圧縮空気を上記ホブカッタの各切刃に向かわせるようにしたことを特徴とする請求項1から3のうちいずれか1つに記載のクランク軸成形方法。
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