JP4685228B2 - スパッタリング装置および成膜方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、スパッタリング装置および成膜方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
スパッタリング装置は、スパッタターゲットと、スパッタターゲットのエロージョン面に対面するように設けられたウエハ支持台と、スパッタターゲットの裏面に面して設けらたマグネトロンユニットと、を備える。このようなスパッタリング装置では、プロセスガスを真空チャンバ内に導入し、スパッタターゲットの近傍においてプラズマを発生させることによってスパッタターゲットからスパッタ粒子を生じさせる。このスパッタ粒子がウエハに到達し、これによって成膜が進行する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
半導体デバイスにおける設計ルールの微細化に伴い、高アスペクト比のコンタクト孔、ビア孔といった接続孔の底部において十分なボトムカバリッジを達成するという要求が高まってきている。このような要求に応じるために、発明者は、スパッタリング装置において、ボトムカバリッジを改善する方法を検討してきた。
【0004】
そこで、本発明の目的は、ボトムカバリッジを改善可能なスパッタリング装置および成膜方法を提供することとした。
【0005】
【課題を解決するための手段】
このような技術的な課題を解決するために、発明者は、さらに検討を進めた。その結果、例えば高アスペクト比の接続孔の底部においてカバリッジを改善するといった場合、スパッタリング装置に導入されるプロセスガスを低圧化することが有効であることを見出した。
【0006】
しかしながら、この実験によって、単にプロセスガスを低圧化しただけでは、スパッタリングを発生させるためのプラズマが維持できないことが分かった。この実験結果に基づいて、発明者はさらに検討を行った。プロセスガスが低圧のときにプラズマが維持されない理由として、低圧化に伴ってプラズマを維持するために必要とされる電子密度も低くなり、またプラズマ中の電子はいずれかの導電部分に逃げていったしまうと考えた。電子密度を低くしないためには、(a)新たな電子供給源を加える方法、(b)発生した電子が逃げないようにする方法、が考えられる。
【0007】
電子をさらに追加するためには、結局、電子供給源として何らかのガスを導入することが必要であるので、低圧化に反する。そこで、発生した電子が逃げないようにする方法が重要である。そこで、電子の逃げ道を探すために、スパッタリング装置の構造を十分に検討した。その結果、プラズマ中の電子は、接地されているシールドに流れていると考えた。つまり、シールドに流れる電子の数を少なくすれば、電子密度を上げることができる。
【0008】
シールドへ流れる電子流を小さくするために、電磁場中に電子の運動の観点から検討を進めた。一般には、電磁場中における電子の運動は、電界の向きに力を受けると共に、電子の速度および磁場の向きに関連した方向にも力を受けており、電子は電界および磁場中において曲線を描きながら運動する。
【0009】
スパッタリング装置のマグネトロンユニットは、プラズマを閉じ込めるために磁場を発生する。しかしながら、磁場が電子に与える力は、電子の速度(運動方向)との関連しているので、磁場による電子の閉じ込め作用が十分に発揮されないときがあることを見出した。
【0010】
つまり、たとえ磁場の大きさが大きく変化しなくても閉じ込め磁場の外形(つまり、ターゲットに平行な平面と等磁場面との交線である等磁場線の形状)が大きく変化する場合には、電子を閉じ込め作用が十分に発揮されていないのである。例えば、磁場の外形が大きく変化しているところでは、電子が磁場によって曲げられて到達する領域には、マグネトロンユニットによって十分な大きさの磁場が発生されていない。このため、このような領域に達した電子には、もはや、マグネトロンユニットの磁場は電子を閉じ込めるように作用せずその運動方向を変えことができない。このような電子は、電界に引かれてシールドに流れ込むことになる。
【0011】
したがって、電子の速度(電子の運動方向および電子の速さ)を考慮した上で、磁場を発生させるマグネットの配置を検討する必要がある。しかしながら、電子運動をすべて考慮することは必ずしも容易ではない。そこで、マグネトロンユニットによって発生される磁場の外形を空間的に大きく変化させないような構成が求められるとの結論に達した。
【0012】
そこで、発明者は、このような様々な試行錯誤の末に、以下のような本発明をするに至った。
【0013】
本発明に係わるスパッタリング装置は、(1)真空チャンバと、(2)チャンバを減圧するための減圧手段と、(3)真空チャンバ内にプロセスガスを供給するためのガス供給手段と、(4)真空チャンバ内において基板を支持するための基板支持部と、(5)スパッタターゲットと、(6)マグネトロンユニットと、を備える。
【0014】
スパッタターゲットは、基板支持部にエロージョン面が対面するように設けられている。マグネトロンユニットは、真空チャンバ内に磁場を発生するように設けられた第1のマグネット部および第2のマグネット部を有し、ターゲットに関して基板支持部と反対側に設けられている。第1のマグネット部は、第1の磁極をスパッタターゲットに向けるように配置されている。第2のマグネット部は、第2の磁極をスパッタターゲットに向けるように配置されている。
【0015】
マグネトロンユニットでは、第1のマグネット部は、所定の閉曲線上に設けられている。第2のマグネット部は、第1のマグネット部の内側に設けられている。閉曲線の最小曲率半径が最大曲率半径の0.8倍以上であることが好適であると、発明者は考えている。所定の閉曲線に沿って第1のマグネット部を配置すれば、プラズマの発生に寄与する磁場の形状はこの閉曲線によって規定される。等磁場線は上記の曲率半径の範囲で屈曲されるので、等磁場曲線の曲がりによって生じうるプラズマ中からの電子の洩れ出しが低減される。
【0016】
本発明に係わる成膜方法は、(1)スパッタターゲットに磁場を提供するように設けられた第1および第2のマグネット部を有し、第2のマグネット部は第1のマグネット部の内側に設けられ、第1のマグネット部は所定の閉曲線の外周上に設けられると共に、閉曲線の最小曲率半径は最大曲率半径の0.8倍以上であるマグネトロンユニットを有するスパッタリング装置を準備する工程と、(2)前記スパッタターゲットに対面するように基板を配置する工程と、(3)スパッタターゲットのエロージョン面の近傍にプラズマを生成する工程と、(4)スパッタリング粒子を生成し前記基板上に膜を形成する工程と、を備える。
【0017】
上記のようなマグネトロンユニットを用いると、プラズマ中の電子を効率的に閉じ込めることができる。このため、プロセスガスの圧力を低くしてもプラズマが維持される。スパッタリング中におけるプロセスガスの低圧化が達成される。これによって電子密度を高めることができるので、被スパッタ粒子のイオン化が生じやすくなる。イオン化されたスパッタ粒子は、基板支持部へ向かって引かれる。このため、ターゲットから基板へ向かう方向の速度成分が大きいスパッタリング粒子が増える。
【0018】
また、マグネトロンユニットでは、第1のマグネット部は、マグネトロンユニット上において所定の凸図形の外周線上に設けられると、プラズマの発生に寄与する磁場の形状はこの凸図形によって規定される。凸図形の外周に沿う外周線に第1のマグネット部を配置すれば、凸図形の外周線である閉凸曲線に基づく等磁場線の屈曲の変化範囲は、閉曲線の屈曲の変化範囲に比べてさらに小さくできる。これによって、プラズマ中からの電子の洩れ出しが低減され、効率的に電子が閉じ込められる。
【0019】
電子密度が高まるとスパッタ粒子のイオン化が促進される。イオン化されたスパッタ粒子は基板方向に加速されるので、この方向の速度成分が大きくなる。また、プラズマ中の電子密度が高まると、プロセスガスの低圧化が可能になる。低圧化によって、スパッタ粒子とプロセスガス原子との衝突確率が低くなるので、基板に垂直方向の速度成分を持ったスパッタ粒子が増加する。これらの理由によって、ボトムカバリッジが改善される。
【0020】
本発明に係わるスパッタリング装置および成膜方法では、エロージョン面上の所定の点を通過する軸を回転中心としてマグネトロンユニットおよびスパッタターゲットを相対的に回転するための駆動手段を更に備えることができる。マグネトロンユニットは、軸を含む平面によって分離される第1および第2の領域を有し、第2のマグネット部は第1の領域に設けられると共に、第1のマグネット部は第1および第2の領域の境界上および第1の領域の少なくともいずれかに設けらることができる。
【0021】
上記の境界上および第1の領域の少なくともいずれかに第1のマグネット部を設けるようにすれば、磁場により電子が閉じ込められる領域が限定される。このため、所定のパワーを限定された領域に集中的に与えることができる。また、ターゲットの中心領域および周辺領域にそれぞれ発生すべき磁場を規定するようにマグネット部を設けることができるので、ターゲットの中心部分から外縁部分へ向けてエロージョン面からのスパッタ量と基板への成膜量とを制御可能になる。故に、磁場が形成されるべき領域の形状を複雑にすることなく、膜厚を均一性を確保できる。
【0022】
このような第1のマグネット部および第2のマグネット部は、以下のような様々な形態をとることができる。
【0023】
本発明に係わるスパッタリング装置および成膜方法では、第1のマグネット部の総磁気量は第2のマグネット部の総磁気量より大きくすることができる。
【0024】
第1のマグネット部の内側に総磁気量の小さい第2のマグネット部を配置したので、真空チャンバの外側に伸びるような磁束が少なくなるので、さらに電子の閉じ込めが向上する。
【0025】
本発明に係わるスパッタリング装置および成膜方法では、第1のマグネット部は、複数の第1のマグネットを有し、第2のマグネット部は複数の第2のマグネットを有することができる。各第1のマグネットは、第1の磁極を前記ターゲットに向けて配置されており、各第2のマグネットは第2の磁極をターゲットに向けて配置されている。
【0026】
各マグネットの配置に応じて、凸図形の外周、閉じた凸曲線、閉曲線、または所定の範囲の曲率半径を有する図形の外周といった閉じた線に沿ったマグネット部を実現できる。このため、マグネット部が発生する磁場の形状をマグネットの配置位置に応じて調整できる。
【0027】
本発明に係わるスパッタリング装置および成膜方法では、マグネットトロンユニットは、複数の第1の磁性部材を有することができる。各第1の磁性部材は、各第1のマグネットの第2の磁極の部分と各第2のマグネットの第1の磁極の部分を磁気的に結合するように設けられている。
【0028】
第1の磁性部材の各々は、第1のマグネットと第2のマグネットとを磁気的に結合し磁気回路を構成する。このため、電子を閉じ込めるために好適な磁場が磁気回路を用いて形成できる。
【0029】
本発明に係わるスパッタリング装置および成膜方法では、マグネットトロンユニットは第2の磁性部材を有することができる。第2の磁性部材は、複数の第1のマグネットの第2の磁極の部分と複数の第2のマグネットの第1の磁極の部分とを磁気的に結合している。
【0030】
第2の磁性部材は、すべての第1のマグネットとすべての第2のマグネットとを磁気的に結合し磁気回路を構成する。このため、全マグネットを磁気的に結合する磁気回路が形成できる。
【0031】
本発明に係わるスパッタリング装置および成膜方法では、マグネトロンユニットは、第3の磁性部材および第4の磁性部材を含むことができる。第3の磁性部材は、複数の第1のマグネットとターゲットとの間に設けられ複数の第1のマグネットの第1の磁極を磁気的に結合する。第4の磁性部材は、複数の第2のマグネットとターゲットとの間に設けられ複数の第2のマグネットの第2の磁極を磁気的に結合する。
【0032】
第2および第3の磁性部材は、隣接マグネットを磁気的にそれぞれ結合するように設けられているので、マグネットが配置されていない各マグネット間にも磁束を導く。このため、各マグネットからの磁束はこれらの磁性部材によって平均化され、スパッタターゲットに与えられる。また、隣接するマグネット間の磁気量のばらつき(マグネットの個体差)も平均化される。
【0033】
また、第1、第3および第4の磁性部材を合わせて用いると、各マグネットはこれらの磁性部材によって磁気的に結合される。また、第2、第3および第4の磁性部材は、各マグネットはこれらの磁性部材によって一体に磁気的に結合される。このような磁気回路によって磁場の形状を調整すれば、等磁場面(線)の形状を制御できる。故に、プラズマ中の電子の閉じ込め効率が向上する。
【0034】
なお、第1のマグネット部は、最外周の配置されたマグネットからなることが好ましい。これによって、最外周マグネット部の内側に電子を閉じ込めることができる。また、第2のマグネット部に対しても、上記の形態を適用することができ、これによってさらに好適な効果を得ることができる。
【0035】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。可能な場合には、同一の部分には同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0036】
本発明に係るスパッタリング装置について説明する。図1は、本発明の実施の形態に従うマグネトロン式スパッタリング装置の概略構成図である。
【0037】
スパッタリング装置10は、内部に真空チャンバ12を形成するハウジング14と、ハウジング14の上部開口部を閉じるように配置されたターゲット16を備えている。ハウジング14およびターゲット16は両方とも導電性材料から作られているので、ハウジング14とターゲット16との間には絶縁部材13aが挟まれている。図1に示す実施の形態では、ハウジング14は円形状の底面と、この円形状の底面の周辺から所定の距離だけ延び出した管状部を有し、例えば管状部は円柱殻形状を有する。ターゲット16の形状は円盤形である。ターゲット16の円形状の一表面16a(以下、下面という)は、スパッタリングによってエロージョンを受けるエロージョン面となっている。
【0038】
真空チャンバ12内には、基板支持手段(基板支持部ともいう)としてペディスタル18が配置されている。ペディスタル18は、真空チャンバ12内において基板15を支持する。このため、ペディスタル18は、処理されるべき基板15、例えば半導体ウエハWまたはガラス基板、をその一表面(以下、上面という)18a上において保持する。ペディスタル18の上面18aは、ターゲット16の下面(エロージョン面)16aに対面するように設けられている。ペディスタル18上の所定の位置に保持された基板15(ウエハW)の堆積されるべき面15aは、ターゲット16の下面16aに対して略平行に配置される。
【0039】
基板15は、その中心がターゲット16の中心に合うように、つまり同軸に配置されている。この中心は、形成された膜の面内均一性を向上させるために、マグネトロンユニットの回転中心(回転軸38)と一致していることが好ましい。本実施の形態では、ペディスタル18とターゲット16との間隔は、スパッタされた粒子が被着される基板の直径の約0.95倍が望ましい。
【0040】
スパッタリング装置10は、被スパッタ粒子から真空チャンバ12の内壁面を保護するために、被スパッタ粒子が内壁面に到達することを防止するシールド26を有している。シールド26の一辺の縁部は、ハウジング14と絶縁部材13aを介して絶縁されている。シールド26の一辺は、ハウジングの上部開口部の縁端において固定されている。シールド26の別の辺は、ペディスタル18の側面に至る。別辺の縁部はペディスタル18の側面に沿って絶縁部材13bを介して絶縁されている。このため、シールド26は、ペディスタル18と電気的に絶縁されている。ペディスタル18は、キャパシタ19を介して基準電位、例えば接地電位に接続されている。シールド26は、所定の基準電位に接続されている。キャパシタ19が設けられているので、ペデスタル18は、プラズマによって与えられる電子によってセルフバイアス状態で使用することもできる。また、キャパシタ19を介して高周波を加え、RFバイアス状態で使用することもできる。この場合、キャパシタ19と基準電位源との間にRFバイアス印加手段といったバイアス手段を備えている。いずれの場合においても、ペデスタル18は、プラズマ電位に対して負にバイアスされていることが好ましく、ターゲット16に対して負電位になっていることが好ましい。
【0041】
ハウジング14には排気ポート20が形成されている。本実施の形態の場合には、排気ポート20には、クライオポンプ等の真空ポンプ21が接続されている。この真空ポンプ21を作動させることによって、真空チャンバ12内を減圧することができる。排気ポート20および真空ポンプ21は減圧手段を構成する。アルゴンガスまたは窒素ガスといったプロセスガスが、プロセスガス供給源25から供給ポート22を通して真空チャンバ12内に供給される。供給ポート22は、バルブ23によって開閉可能である。このバルブ23を開閉すると、プロセスガスの供給の有無および供給量並びに供給タイミングを制御できる。供給ポート22およびプロセスガス供給源25は、プロセスガス供給手段を構成する。
【0042】
ターゲット16とシールド26との間に電圧を印加するために、プラズマ化手段のうちの1つとして電源24が接続されいる。真空チャンバ12内にプロセスガス、例えばアルゴンガスを導入して、ターゲット16とシールド18との間に電圧を加えると、グロー放電が起こりプラズマ状態となる。この放電によって発生したアルゴンイオンがターゲット16の下面16aに衝突すると、ターゲット16を構成する原子がはじき出され被スパッタ粒子が生成される。このターゲット原子がウエハW上に到達して堆積されると、ウエハW上に膜が形成される。
【0043】
ターゲット16の下面16aに対向する面、つまりターゲット16の上面16bには、ターゲット16のエロージョン面近傍の空間におけるプラズマ密度を高めるためのマグネトロンユニット30が配置されている。
【0044】
スパッタリング装置10は、制御器29を備えることができる。制御器29はマイクロコンピュータ、タイマ等を有しているので、電流のオン及びオフの制御、電流値の変更等を時間的な制御も含めて行うことができる。制御器29は、バルブ23、加速用電源24、および駆動用モータ36にも制御線29aを介して接続されている。制御器29は、これらの機器を相互に関連させながら制御することができる。このため、プロセスガスの供給、プロセスガスのプラズマ発生、等を所定のタイミングに対して同期して制御することができる。
【0045】
図2は、各マグネトロンユニット上のマグネットの位置を示す平面図である。図2は、図1のI−I断面における断面を示している。
【0046】
図1および図2を参照すると、マグネトロンユニット30は、円形のベースプレート32と、ベースプレート32の搭載面32a上に所定の配列で固定された複数のサブユニット34と、を備える。ベースプレート32は、ターゲット16に関して、基板支持部18と反対側に配置され、その上面の中心には駆動用モータ36の回転軸38が接続されている。したがって、駆動モータ36を作動させてベースプレート32を回転させると、各サブユニット(マグネットアセンブリともいう)34はターゲット16の上面に沿って旋回して、サブユニット34によって発生される磁界が一カ所に静止することを防止することができる。
【0047】
図2を参照すると、複数のマグネットアセンブリ34が環状に配置されている。各マグネットアセンブリ34は、一方の磁極(図2の例ではN極)を配列の外側へ向け、他方の磁極(図2の例ではS極)を配列の内側に向けている。各マグネットアセンブリの同一磁極の端部は、それぞれポールピースといった磁性部材48、50を介して磁気的に結合されている。磁性部材48、50(図2においては、マグネットと重なるため破線で描かれている)は、各マグネットアセンブリの同一の磁極を有する端部に接する帯形状の部材であって環状に設けられている。この帯状の部材部材からの磁場に対応して、それぞれエロージョン面上において外側の環状の領域および内側の領域が形成される。外側の環状領域では、例えば最外周のマグネット群(マグネットアセンブリ34のマグネットのN極)によって発生された磁力線が真空チャンバ内に伸び出す。これらの磁力線は内側に向かって伸び、その一部は内側の環状の磁場領域を通して内側のマグネット群(マグネットアセンブリのマグネットのS極)に到達する。
【0048】
磁性部材48、50は、マグネットアセンブリ34とスパッタターゲット16との間に設けられているので、隣接マグネットを磁気的に結合することができる。このため、マグネットが存在しない各マグネット間の領域にも磁束を導く。これらの磁性部材によって、各マグネットからの磁束は平均化されスパッタターゲットに与えられる。また、これらの磁性部材48、50によって、マグネットが離散的に配置されていても所定の強度の磁場が連続するように形成される。故に、磁場によるプラズマの閉じ込め性が向上する。さらに、隣接するマグネット間の磁気量の不均一さおよびマグネット自体の個体差も平均化される。この要因も電子閉じ込めに有利に作用する。
【0049】
また、マグネトロンユニット30は、1個以上の第1のマグネットアセンブリ34aおよび1個以上の第2のマグネットアセンブリ34bを有することができる。第1のマグネットアセンブリ34aは、回転中心となる回転軸38の近傍に形成されるべき磁場を規定するように設けられている。
【0050】
このためのマグネットアセンブリの配置形態としては、後ほど図4〜図7を参照しながら説明するが、ここでは概略的に説明する。回転軸38を含む面によって、ベースプレート32の搭載面32aを2つの領域に分割し、一方を第1の領域と呼び、他方を第2の領域と呼ぶ。マグネットアセンブリの配置形態では、(i)第1のマグネットアセンブリ34aが、第1の領域に配置されている場合、(ii)第1のマグネットアセンブリ34aが、回転軸38を含む面とマグネトロンユニット30の搭載面とが交差する線上および第1の領域にわたって配置されている場合、(iii)第1のマグネットアセンブリ34aの外側マグネットが、第1および第2の領域に配置され、第2のマグネットアセンブリ34bが第1の領域に配置されている場合、が考えられる。いずれの場合においても、第2のマグネットアセンブリ34bの各々は、第1のマグネットアセンブリ34aと一緒になって環状配列を成すように設けられている。発明者の行った実験によれば、図4、図6および図7に示された形態で特に好適な結果が得られた。
【0051】
また、マグネトロンユニット30は、第1の磁極(図2の例ではN極)をエロージョン面に向けて設けられた外周マグネット部および第2の磁極(図2の例ではS極)をエロージョン面に向けて設けられた内側マグネット部を有する。内側マグネット部は、外周マグネット部の内側に設けられた全マグネットを含むことができる。外周マグネット部は、例えば最外周のマグネット群からなり、また内側マグネット部は、例えば、最外周のマグネットより内側のマグネット群からなることができる。外周マグネット部の総磁気量は、内側マグネット部の総磁気量より大きくなるように、各マグネット部または各マグネットの強度が規定されていることができる。
【0052】
総磁気量が大きい方の外周マグネット部の内側に総磁気量の小さい方の内側マグネット部を配置した。このため、外周マグネット部の磁束の一部分は、内側マグネット部に到達し、内側マグネット部内を通過して外周マグネット部において閉じる。また、外周マグネット部の磁束の残りの部分は、磁束ループを形成して外周マグネット部において閉じる。故に、真空チャンバの外側に伸びるような磁束が、プラズマが生成されるエロージョン面の近傍において低減される。このため、電子の閉じ込め性が向上する。
【0053】
図3は、スパッタリング装置10に適用可能なマグネットアセンブリを例示的に示している断面図である。各マグネットアセンブリ34は、図3に明示するように、磁性部材40および棒磁石として構成されるマグネット42、44を備える。磁性部材40は、磁性体から成る平板状のヨーク部材である。マグネット42、44の各々は、一端にS極および他端にN極を有する。マグネット42はN極を示す一端をターゲット16に向けて配置され、マグネット44はS極を示す一端をターゲットに向けて配置されている。マグネット42はS極を示す他端を磁性部材40に接触させ、またマグネット44はN極を示す他端を磁性部材40に接触させて、磁性部材40の各端部に固着されている。2本のマグネット42、44は同一方向に延び、マグネットアセンブリ34の全体形状は略U字状となっている。一方のマグネット42の自由端はN極、他方のマグネット44の自由端はS極となっている。また、マグネット42、44および磁性部材40は磁気回路を構成するので、これらは、異なる磁極が同一方向に向けられた一体の磁性体として機能する磁石手段を構成する。これによって、真空チャンバ12内に電子の閉じ込めに好適なように制御された磁場を与える。
【0054】
マグネットアセンブリ34では、外周マグネット部に含まれる各マグネット42の自由端N極には磁性部材48が設けられ、また内側マグネット部に含まれる各マグネット44の自由端S極には磁性部材50が設けられている。これらの磁性部材48は、既に説明したように各マグネトロンユニット内のマグネット42を相互に結合するように取り付けられ、また磁性部材50はマグネット44を相互に結合するように取り付けられている。
【0055】
図2および図3の実施例では、各マグネット部が複数のマグネットを備える場合を示したけれども、外周マグネット部および内側マグネット部のそれぞれに代えて、または何れか一方に代えて、単一のマグネットを備えることもできる。この場合においても、外周マグネット部(マグネット42)の磁気量は、内側マグネット部(マグネット44)の磁気量より大きい。
【0056】
なお、図3のを参照しながらマグネットアセンブリ34を説明したけれども、アセンブリ34の形態はこれに限られるものではなく、マグネットアセンブリ34は、さらに多くの磁石、磁性部材を備えることができる。また、各マグネットアセンブリ34内に使用される磁石の磁気量は、そのマグネットアセンブリ34の配置位置に与えるべき磁場に応じて決定される。このため、それぞれの磁石の強度は異なることがあり得る。
【0057】
図3のマグネットアセンブリ34では、各マグネット42,44の自由端が、エロージョン面16aに対向する面16bに、それぞれ対面するように配置されている。このようなマグネット34は、ヨーク部材40の背面をベースプレート32に接触させた状態で適当な固定手段、例えばねじ46、または各マグネット42、44の磁気力によってベースプレート32に固定されている。かかる形態を採用すれば、マグネットアセンブリ34の固定位置を自由に変更することが可能になるので、マグネットアセンブリ34の配置位置によって磁場形状を調整できる。
【0058】
図4から図7は、スパッタリング装置10に好適なマグネットアセンブリ配置を示すための図面である。なお、図4におけるII-II線が、図1に示された断面に対応する。それぞれの図面では、複数のマグネットアセンブリの個別の配置位置を示すために外周マグネット部52および内側マグネット部54を用いる。図4から図7は、外周マグネット部52に関連する磁性部材48および内部マグネット部54に関連する磁性部材50がそれぞれエロージョン面上に射影された領域を示している。その領域は、マグネトロンユニット30が回転しているので、ある時刻における各マグネット部52,54とターゲット16との相対的な位置関係を示している。
【0059】
図4〜図7を参照すると、外周マグネット部52は、所定の凸図形の外周上に設けられている。この凸形状に応じて、プラズマの閉じ込めに寄与する磁場の形状が規定される。このため、同じ磁場の値を示す等磁場面(この面と、エロージョン面に平行な平面との交線である等磁場線)の変化が抑えられるので、プラズマ中の電子の洩れ出しが抑制される。
【0060】
なお、ここで凸図形とは、平面上においてその形状を規定する閉じた外形線上に存在する任意の2点を結ぶ線分が常にその外形線の一方の側またはその線上にあるような図形であって、直線および曲線並びに曲線の少なくともいすれかから構成される図形をいう。特に、閉曲線からなるものを凸曲線という。凸図形において、その図形を構成する曲線と直線との接続点では、直線は曲線に対する接線になっている。本明細書では、このような直線と曲線との接続を滑らかな接続という。
【0061】
このように、等磁場面(線)の形状を電子の閉じ込めに好適なように調整すると、プラズマ中の電子密度を高めることが可能になる。このため、スパッタ粒子のイオン化が促進される。イオン化された被スパッタ粒子は基板方向に加速されるので、この方向の速度成分が大きくなる。また、プロセスガスを低圧化すれば、スパッタ粒子とプロセスガス原子との衝突確率が低くできる。これらの作用は共に、基板に垂直方向の速度成分を持ったスパッタ粒子が増加するように作用する。このため、電子密度が高まると、ボトムカバリッジが改善される。
【0062】
さらに、図4〜図7に示された外周マグネット部52は、所定の閉曲線の沿って設けられている。このようなマグネトロンユニット30では、閉曲線の最小曲率半径が最大曲率半径の0.8倍以上であることが好適であり、また凸曲線の最小曲率半径が最大曲率半径の0.8倍以上であることが好適であると、発明者は考えている。これは、シールドへ流れる電子流を小さくするために、電磁場中に電子の運動の観点から検討した結果から導かれた。
【0063】
図4〜図7に示されたマグネトロンユニット30では、電子の速度(電子の運動方向および電子の速さ)を考慮した上で、磁場を発生させるマグネットの配置を考慮すべきことを明らかにし、マグネトロンユニットによって発生される磁場の外形を空間的に大きく変化させないような構成を実現している。
【0064】
また、図4から図7を参照すると、外周マグネット部52は、所定の凸図形の外周上に設けられている。この凸図形に応じて、プラズマの閉じ込めに寄与する磁場の形状が規定される。このため、同じ磁場の値を示す等磁場面(換言すれば、この面と、基板の表面に平行な平面との交線である等磁場線)の変化が抑えられるので、プラズマ中の電子の洩れ出しが抑制される。このための凸図形としては、円、略円、楕円、略楕円であることが好ましい。
【0065】
また、図4〜図7を参照すると、内側マグネット部54は、回転軸38を含む面によって分離されるマグネトロンユニット30のいずれかの領域(図4〜図7の実施例では、一点鎖線56で分離される領域の上側の領域)内に設けられている。外周マグネット部52は内側マグネット部54を囲むように設けられている。各マグネットは回転中心を通過し、一点鎖線56と直交する軸に関して対象である。
【0066】
図4から図7を参照すると、内側マグネット部54は、回転軸38を含む面によって分離されるマグネトロンユニット30のいずれかの領域(図4〜図7の実施例では、一点鎖線56で分離される領域の上側の領域)内に設けられている。外周マグネット部52は内側マグネット部54を囲むように設けられている。
【0067】
外周マグネット部52は、回転中心となる回転軸38近傍に磁場を提供するために、回転軸38またはその近傍を通過するように設けられている。このために、図4および図7に示された実施例では、外周マグネット部52の位置と回転中心となる回転軸38の位置とは重なっている。図6に示された実施例では、外周マグネット部52および内側マグネット部54の両方が、一点鎖線56によって分離される領域の一方に設けられている。このときも、外周マグネット部52は、回転中心(回転軸38)に対応するエロージョン面上の位置に所望の磁場を与えるように配置されている。図5では、外周マグネット部52は、回転軸38をその内側に含むように位置決めされている。図4および図7の実施例におけるマグネットの配置形態が最も好適な結果となる。また、図5、図6および図7の実施例は、プラズマが発生される領域が図5に示されたマグネットの配置形態より小さい点で好適である。
【0068】
図4および図6に示された外周マグネット部52および内側マグネット部54では、軸56に沿う方向に関する外形の幅が、この軸56と直交する方向に関する外形の長さに比べて長い。図7に示された外周マグネット部52および内側マグネット部54では、軸56に沿う方向に関する外形の幅が、この軸56と直交する方向に関する外形の幅に比べて短い。なお、図7に示された配置のマグネット部に対して、図7に示されるようなマグネット部52と回転軸38との位置関係を同様に適用できる。
【0069】
図4から図7において外周マグネット部52および内側マグネット部54が発生する磁場は、回転中心を含む領域に磁場を形成する少なくとも1個の第1のマグネットアセンブリ(図2の34a)と、このマグネットと一緒になって環状配置されこの領域の外側領域に磁場を形成する複数の第2のマグネットアセンブリ(図2の34b)とを用いて実現されることができる。第2のマグネットアセンブリは、回転軸38を含む面によって分離されるマグネトロンユニット30上の一方の領域に配置されている。このようなマグネトロンユニット30は、外周マグネット部52、内部マグネット部54、およびその間の領域58に加えて、さらに各マグネット部52,54のや外側まで磁場を提供するので、これらの領域にプラズマが閉じ込められる。
【0070】
外周マグネット部52の総磁気量を内側マグネット部54の総磁気量に比べて大きくすれば、プラズマの閉じ込め性がさらに向上する。このため、プロセスガスの低圧化してもプラズマを維持できる。しかしながら、両者の総磁気量をほぼ等しく、または上記の設定とは逆に小さくすることを排除するものではない。
【0071】
また、プラズマ閉じ込め性が向上されると、プラズマ中の電子密度も増加する。この閉じ込め電子の密度が高くなると、被スパッタ粒子のイオン化が促進される。イオン化された被スパッタ粒子は、電位勾配に従って基板支持部18の方向に引かれるので、この方向の速度成分が増加する。故に、膜厚均一性およびボトムカバリッジが向上する。
【0072】
加えて、スパッタターゲットの半分の領域にマグネットが配置されるので、その位置を調整してプラズマ形成領域を小さくすることが可能になる。このように縮小された領域に電力を投入できるので、投入電力を上げることなくプラズマ密度を高めることができる。プラズマ密度が高まると電子密度もまた増加するので、被スパッタ粒子のイオン化が促進される。イオン化された被スパッタ粒子は基板表面に向かって加速されるので、基板表面に向いた速度成分を持つ被スパッタ粒子が多数生成される。このため、主にプラズマ領域の直下に被スパッタ粒子が到達し、この到達領域で成膜が進行する。このため、膜厚均一性が向上する。
【0073】
次に他の実施形態について説明する。
【0074】
図8に、別の実施形態にかかるのスパッタリング装置11を示す。なお、図1に示したスパッタリング装置10と同様な機能を有する部材には、同一の符号を付して示す。図8では、図1におけるマグネトロンユニット30に代えて、マグネトロンユニット31を配設している。
【0075】
ここで図9(a)及び図14に、マグネトロンユニット31及びスパッタターゲット16を取り出して示す。
【0076】
マグネトロンユニット31は、磁性材料によって形成したベースプレート33、複数のマグネット43、各マグネット43の配列位置の位置決めを行うインナーベルトBin、アウターベルトBout、及び、環状に配列された各マグネットの先端部に固着される磁性部材49、47などによって構成している。
【0077】
ベースプレート33は円形領域と矩形領域とを接合させた形状を呈しており、各マグネット43は円形領域側に配列され、円形領域と矩形領域との接合領域付近に、ベースプレート33を回転駆動する回転軸38の一端部が固着されている。
【0078】
インナーベルトBin及びアウターベルトBoutは、マグネット43の位置決め部材として用いられ、非磁性材料によって形成しており、それぞれのベルト部にはマグネット43の外径に等しい開口を所定の間隔で形成している。各開口内にマグネット43を挿入することで、各マグネット43は、同心的に配置されたインナーベルトBin及びアウターベルトBoutに沿って、2列の環状に点在する状態で配列される。ここでは一例として、インナーベルトBin側のマグネット43はS極が、またアウターベルトBout側のマグネット43はN極が、それぞれスパッタターゲット16に向くようにして配列している。また、ベースプレート33とインナーベルトBin及びアウターベルトBoutとの間には、非磁性材料によるスペーサSが介在しており、これによりインナーベルトBin及びアウターベルトBoutは、ベースプレート33から離間した状態となっている。
【0079】
このように環状に配列されたマグネット43のうち、インナーベルトBinによって配列された各マグネット43の端面(スパッタターゲット16側に対向する端面)には、ポールピース或いはヨークなどによって形成された環状の磁性部材49が磁力によって固着されており、これにより、隣り合う各マグネット43のS極は互いに接続され、リング状のS極が形成される状態となる。また、同様に、アウターベルトBoutによって配列された各マグネット43の端面(スパッタターゲット16側に対向する端面)にも、磁性材料によって形成された磁性部材47が磁力によって固着されており、これにより、隣り合う各マグネット43のN極は互いに接続され、リング状のN極が形成される状態となる。そして、磁性部材49及びインナーベルトBinは、これらを貫通する、非磁性材料の固定ピン(図示せず)によってベースプレート33に対して固定されており、また同様に、磁性部材47及びアウターベルトBoutは、これらを貫通する、非磁性材料の固定ピン(図示せず)によってベースプレート33に対して固定されている。
【0080】
このようにしてインナー側に配列された全マグネット43と、アウター側に配列された全マグネット43によって、ドーナツ状に閉じた磁気回路が形成される。
【0081】
つまり、各磁性部材47、49は、内側列に含まれる複数の第1のマグネット43のS磁極(第1の磁極)と、外側列に含まれる複数の第2のマグネット43のN磁極(第2の磁極)とを磁気的に結合し、内側列に含まれる複数の第1のマグネット43のN磁極の各々を磁気的に結合すると共に、外側列に含まれる複数の第2のマグネット43のS磁極の各々を磁気的に結合するための磁気結合手段として機能する。つまり、この磁気結合手段は、複数の第1のマグネットのS磁極と複数の第2のマグネットのN磁極とを磁気的に結合するための手段、複数の第1のマグネットのN磁極の各々を磁気的に結合するための手段、複数の第2のマグネットのS磁極の各々を磁気的に結合するための手段のいずれかを有する。
【0082】
なお、図9(a)では、マグネット43を楕円の円周上に沿って配列した場合について図示したが、この例に限定するものではなく、例えば、図9(b)に示すように、より真円に近い円周上に沿ってマグネット43を配列する構成を採用することもできる。この場合、インナーベルトBin、アウターベルトBout、磁性部材49、47などの対応する部材を、円環状に形成すればよい。
【0083】
また、マグネトロンユニットを図15に示すように構成することもできる。このマグネトロンユニット100は、磁性材料によって形成されたベースプレート33の表面に、直径が異なる円柱型の2種のマグネットを磁力によって固着している。例えば直径が大きい方の大径マグネットの直径は約1.7cm、直径が小さい方の小径マグネットの直径は約1.4cm程度である。2種のマグネットとも高さは同一であり、例えば約3.3cm程度である。大径マグネットから発せされる磁力は、大径マグネットの一端から2cm離れた空間で、150〜200ガウス程度であり、小径マグネットから発せされる磁力は、大径マグネットの60〜70%程度である。
【0084】
図15に示すように、スパッタターゲット16の中心部から最も離れた部位となる、ベースプレート33の外縁部に、6個の大径マグネット110Nを円周上沿って配列させ、さらにこの6個の大径マグネット110Nを挟むように、その左右両側にそれぞれ9個の小径マグネット120Nを同一の円周上に沿って配列させている。従って、これらの大径マグネット110N及び小径マグネット120Nの全体によって、ベースプレート33の円形領域が囲まれるような状態となっている。図15の例では、これら大径マグネット110N及び小径マグネット120Nは、N極をスパッタターゲット16に向けて配列させており、大径マグネット110N及び小径マグネット120Nの端面(スパッタターゲット16に対向する端面)には、この配列に沿うようにリング状に形成した、ヨークなどによる磁性部材130を磁力によって固着している。
【0085】
これに対し、ベースプレート33の中央部には、10個の大径マグネット110Sを集合させた状態に配列させており、各大径マグネット110SはS極をスパッタターゲット16に向けた状態となっている。そして、各大径マグネット110Sの端面(スパッタターゲット16に対向する端面)には、磁性部材130と同じ材質で形成され、大径マグネット110Sの集合領域を覆うような円板状を呈する磁性部材140を、磁力によって固着している。
【0086】
図15に示す実施形態においても、各マグネット110N、110S、120Nの配列には、すでにインナーベルトBin等として例示した、非磁性材料による位置決め部材(図示せず)が用いられており、この位置決め部材によって位置決めされた状態でベースプレート33の表面に配列されている。
【0087】
マグネトロンユニットを図15に示すように構成することにより、ベースプレート33の外縁部に配列した全マグネットで発生される磁気量は、ベースプレート33の中央部に配列した全マグネットで発生される磁気量に比べて大きくなる。この結果、スパッタによってスパッタターゲット16から出る高いエネルギーを持った電子(2次電子)のうち、エロージョン面16aに表出する磁場に捕集された電子が、真空チャンバ12の側壁側に位置するシールド26へ流出してしまう現象を十分に抑制することができ、スパッタターゲット近傍の領域内に電子を効果的に閉じ込めることができる。
【0088】
また、このようにベースプレート33の中央部に比べて外縁部の磁力線が大となるので、スパッタターゲット16からウエハW方向に延びる磁力線が、スパッタターゲット16から離れるに連れて広がらないように作用するため、スパッタターゲット16とウエハWとの間に形成されるスパッタリング空間内に、電子を有効に閉じ込めることができる。
【0089】
さらに、ベースプレート33上の、スパッタターゲット16の中心部から最も離れた部位、すなわち真空チャンバ12の側壁側に、磁力の大きい6個の大径マグネット110Nを配列させたことにより、ベースプレート33が回転軸38を中心に回転駆動された場合にも、この6個の大径マグネット110Nは、常に真空チャンバ12の側壁側に位置する状態となる。従って、真空チャンバ12の側壁側となるスパッタターゲット16の外縁部から、ウエハW側に延びる磁力線は、ウエハW側に進むに連れて、真空チャンバ12の中央に向かうように延びる状態となり、真空チャンバ12の側壁側に位置するシールド26へ流れ出てしまう電子流を低減し、電子の閉じ込め性向上に寄与する。
【0090】
また、ベースプレート33上の、スパッタターゲット16の中心部から最も離れた部位に磁力の大きい6個の大径マグネット110Nを配列させたことにより、発生するプラズマが、スパッタターゲット16の表面に沿って、真空チャンバ12の側壁側へ引き延ばされるようになり、その結果、エロージョン領域がスパッタターゲット16の中央部に集中する傾向を抑制することができる。
【0091】
加えて、スパッタターゲット16の半分の領域にマグネットが配置されるので、その位置を調整してプラズマ形成領域を小さくすることが可能になる。このように縮小された領域に電力を投入できるので、投入電力を上げることなくプラズマ密度を高めることができる。
【0092】
スパッタリング装置11においても、図4、図6および図7に示されたマグネットの配置形態を適用することができる。これによって、所望の効果を得ることができる。それぞれの図面では、第1の磁性部材47に沿って配列される外側のマグネット43は、外周マグネット部52に対応し、第2の磁性部材49に沿って配列される内側のマグネット43は、内側マグネット部54に対応している。
【0093】
スパッタリング装置11では、複数の第1および第2の磁性部材47、49に沿って配置されるマグネット43の各々には、所定の磁気量を有する単位マグネットを適用することができる。単位マグネットを採用すると、第1の環状からなるマグネット部と第2の環状からなるマグネット部の各総磁気量をマグネット数により把握きるようになり、磁気総量比の設定が容易になる。
【0094】
マグネトロンユニット31、例えばベースプレート33の搭載面32aは、回転の回転軸38を含む平面によって分離される第1および第2の領域を有し、内側マグネット部は第1の領域に設けられると共に、外側マグネット部は第1および第2の領域の境界上および第1の領域の少なくともいずれかに設けられている。
【0095】
マグネトロンユニット31では、内側マグネット部は第1の領域に設けられると共に、外側マグネット部は第1および第2の領域の境界上を通過すると共に第1の領域に設けられることが好ましい。また、外側マグネット部は回転中心(回転軸38)に対応する位置を通過することができる。特に、図9に示した形態では、外側マグネットのための磁性部材47と、内側マグネットのために磁性部材49との間の領域は、第1の領域とのみ重なっている。
【0096】
このようなマグネット形態のよれば、プラズマが形成されるエロージョン面16a上の領域を小さくすることが可能になる。このように縮小された領域に電力を投入できるので、投入電力を上げることなくプラズマ密度を高めることができる。プラズマ密度が高まると電子密度もまた増加するので、被スパッタ粒子のイオン化が促進される。イオン化された被スパッタ粒子は基板表面に向かって加速されるので、基板表面に向いた速度成分を持つ被スパッタ粒子が多数生成される。このため、主にプラズマ領域の直下に被スパッタ粒子が到達し、この到達領域で成膜が進行する。このため、膜厚均一性が向上すると共に、ボトムカバリッジも改善される。
【0097】
スパッタリング装置11では、それぞれのマグネット部は、それぞれの閉じた線上に沿って磁場を提供するように配置されることができる。エロージョン面16a近傍においては、上記の閉じた線の挟まれた領域にプラズマが生成される。つまり、2つの閉じた線によって、プラズマが生成される領域の形状および面積が規定される。閉じた線は、閉曲線であることができる。また、閉じた線は凸曲線であることができる。これらの曲線は、マグネトロンユニットの第1の領域内に規定することができ、また、回転中心(回転軸38)を通過することもできる。
【0098】
また、マグネトロンユニット31では、外側マグネット部は、マグネトロンユニット31上において所定の凸図形の外周線上に設けられると、プラズマの発生に寄与する磁場の形状はこの凸図形によって規定される。凸図形の外周線である閉凸曲線に基づく等磁場線の屈曲の変化範囲は、閉曲線の屈曲の変化範囲に比べてさらに小さくできる。これによって、プラズマ中からの電子の洩れ出しが低減され、効率的に電子が閉じ込められる。
【0099】
電子密度が高まるとスパッタ粒子のイオン化が促進されるイオン化されたスパッタ粒子は基板方向に加速されるので、この方向の速度成分が大きくなる。また、プラズマ中の電子密度が高まると、プロセスガスの低圧化が可能になる。低圧化によって、スパッタ粒子とプロセスガス原子との衝突確率が低くなるので、基板に垂直方向の速度成分を持ったスパッタ粒子が増加する。これらの理由によって、ボトムカバリッジが改善される。外側マグネット部は、最外周の配置されたマグネットからなることが好ましい。これによって、最外周マグネット部の内側に電子を閉じ込めることができる。
【0100】
図10は、内周マグネット部の総磁気量が外周マグネット部の総磁気量より小さい場合にマグネトロンユニット31によって発生される磁場を概略的に示している。図11は、図10における総磁気量の関係が逆である場合にマグネトロンユニット31によってによって発生される磁場を概略的に示している。図10および図11では、マグネトロンユニット31が有する各マグネットによって発生される磁場を破線で示している。
【0101】
図10のスパッタリング装置では、外周マグネット部(図4、図6および図7における52)に含まれるマグネット43のN極からの磁力線(図中に破線で示す)は、マグネトロンユニット31の中心方向に向かって伸びる。磁場の一部は、マグネット43のS極に到達して、磁気回路を構成する磁性部材内41を通過して閉じる。残りの磁場は、マグネトロンユニット31の中心方向に向かって中心軸附近まで伸びた後、この軸方向に向きを変えて、マグネトロンユニット31と反対側へ伸びる。このため、外周マグネットからの磁場は、エロージョン面16aの近傍ではマグネトロンユニット31の内側に向いている。磁場の曲がりに応じて、電子の運動方向はマグネトロンユニット30の内側に向けられる。このため、シールド26へ流れる電子流を小さくすることができる。
【0102】
一方、図11に概略的に例示するように、内側に設けた内側マグネット部80(S極)の総磁気量が、その外側に設けた外側マグネット部81(N極)の総磁気量よりも大きい場合を想定すると、内側マグネット部80から延びる磁力線(図中に破線で示す)は、外側マグネット部81で囲まれた範囲外に向かって延びる状態となる。このため、このような磁場がプラズマを閉じ込める作用は弱い。
【0103】
以上説明してきたようなスパッタリング装置では、マグネトロンユニット30、31は、およびエロージョン面16aとペディスタル18の上面18aとの間にある真空チャンバ12内の空間(以下、スパッタリング空間という)に形成される磁場Hの形状をそれぞれ支配する。マグネットロユニット30、31によれば、スパッタリング空間に電子の閉じ込めに好適な磁場が発生される。マグネトロンユニット30、31は、駆動モータ36によって回転されるので、各マグネットによって発生される磁場は実際のスパッタリング装置10、11では駆動軸となる回転軸38の周りに、例えば毎分60〜100回程度の頻度で回転している。
【0104】
マグネトロンユニット30、31からのプロセスガスがエロージョン面16aの近傍においてプラズマ化されると、ターゲット16のエロージョン面16aから被スパッタ粒子が生成される。図2、図4、図6、図7、図9(a)および図9(b)に対応するようなマグネトロンユニットの形態を採用すれば、プラズマを維持するために必要な圧力を下げることができる。また、プラズマが発生される領域を小さくすれば、プラズマ密度を上げることができる。これによって、電子電流密度が大きくできる。このため、被スパッタ粒子のイオン化か促進される。イオン化したスパッタ粒子は、基板支持部18の方向に加速される。故に、基板Wに交差する軸に沿った方向の速度成分がこれと直交する方向の速度成分に対して相対的に大きくなり、ボトムカバリッジが改善される。また、基板Wに垂直な速度成分が大きくなると、回転するマグネトロンユニット30、31が通過している直下において成膜が進行して、ボトムカバリッジが良好な膜は形成される。
【0105】
このようなスパッタリング装置において、発明者が行った実験結果によれば、従来の装置における膜厚均一性が10%以上あったものが、本発明の適用によって、5%以下に抑えられるようになった。ここで、膜厚均一性とは、
(膜厚の最も厚い点での測定値−
膜厚の最も薄い点での測定値)/(膜厚の平均値)/2×100
で定義される。
【0106】
以上説明したスパッタリング装置において発明者が行った実験によれば、実用的には、外周マグネット部の総磁気量は内側マグネット部の総磁気量の1.5倍以上に設定することが好適であることが分かっている。
【0107】
図12は、横軸に総磁気量比、縦軸にシート抵抗Rsの一様性を示した測定結果を示す。
【0108】
この測定は、以下の条件
ターゲット:Ti
パワー :12kW
圧力 :6.67×10-2Pa(0.5mT)
膜厚 :100nm
にて行われた。
【0109】
図12によれば、総磁気量比が1.5より小さいとRs一様性が悪化する傾向にある一方で、総磁気量比が1.5以上では磁気総量比が大きくなるに従ってRs一様性が改善されている。
【0110】
上記のようなマグネトロンユニットを準備すれば、磁場による電子閉じ込め作用のため、プラズマ中の電子を効率的に閉じ込めることができる。このため、電子密度を高めることができる。電子密度が高まると、被スパッタ粒子がイオン化されるようになる。イオン化された被スパッタ粒子は電界によって加速されるので、ターゲットから基板への方向に運動する被スパッタ粒子の数が増加する。また、プラズマ中において電子密度を高めることができるので、プラズマを低圧でも維持することができる。
【0111】
既に説明したように、図2、図4、図6、図7、図9(a)および図9(b)には、第1および第2の実施の形態に適用可能なマグネット配置の形態が示されている。これらの形態では、マグネット部、例えばアウターベルトBoutによってマグネット43を配列させたマグネット部52は、所定の閉曲線の沿って、例えばポールピースに形状に沿って設けられている。このようなマグネトロンユニットでは、閉曲線の最小曲率半径が最大曲率半径の0.8倍以上であることが好適であり、また凸曲線の最小曲率半径が最大曲率半径の0.8倍以上であることが好適であると、発明者は考えている。
【0112】
図13は、横軸に上記の半径比、縦軸にmT単位で示めされたプラズマ維持圧力の測定結果を示している。この測定は、以下の条件
ターゲット:Ti
パワー :12kW
にて行われた。
なお、図13では、特性図に見やすさのために圧力の単位としてmTおよびSI単位系のPaを併記しています。図13によれば、最小曲率半径をRminと置き、最大曲率半径をRmaxと置くとき、Rmin/Rmaxが0.8倍以上であるときに好適であると考えられる。
【0113】
発明者による実験によれば、例えば遠距離スパッタ(ロングスロースパッタ)の場合、スパッタ粒子の平均自由行程を190mm以上にすることにより、良好なボトムカバリッジが得られる。この平均自由行程を達成するためのチャンバ内圧力を見積もると、約4×10-2(0.3mT)となった。図13によれば、この圧力は、曲率半径を0.8以上にすることにより達成させる。
【0114】
このようなスパッタリング装置において好適に適用できる成膜方法は、以下の手順に従うことができる。つまり、(1)スパッタターゲットに磁場を提供するように設けられた第1および第2のマグネット部を有し、第2のマグネット部は第1のマグネット部の内側に設けられ、第1のマグネット部は所定の閉曲線の外周上に設けられると共に、閉曲線の最小曲率半径は最大曲率半径の0.8倍以上であるマグネトロンユニットを有するスパッタリング装置を準備する工程と、(2)前記スパッタターゲットに対面するように基板を配置する工程と、(3)スパッタターゲットのエロージョン面の近傍にプラズマを生成する工程と、(4)スパッタリング粒子を生成し前記基板上に膜を形成する工程と、を備える。このようなマグネトロンユニットを用いると、プラズマ中の電子を効率的に閉じ込めることができる。
【0115】
また、成膜方法は、以下の手順によることもできる。(1)前記スパッタターゲットに対面するように基板を配置する工程と、(2)スパッタターゲットに磁場を提供するように設けられた第1および第2のマグネット部を有し、第2のマグネット部は第1のマグネット部の内側に設けられ、第1のマグネット部は所定の閉曲線の外周上に設けられると共に、閉曲線の最小曲率半径は最大曲率半径の0.8倍以上であるマグネトロンユニットを用いてエロージョン面の近傍にプラズマを生成する工程と、(3)スパッタリング粒子を生成し前記基板上に膜を形成する工程と、を備える。
【0116】
上記のようなマグネトロンユニットを用いて磁場を用いてプラズマを発生すれば、プラズマ中の電子を効率的に閉じ込めることができる。このため、プラズマ中において電子密度を高めることができる。電子密度が高くなると、プラズマを低圧でも維持することができる。また、電子密度が高まると、被スパッタ粒子がイオン化されるようになる。イオン化された被スパッタ粒子は電界によって加速されるので、ターゲットから基板への方向に運動する被スパッタ粒子の数が増加する。
【0117】
また、従来のスパッタリング装置では、発明者の知る範囲において、プロセスガスの圧力を0.05Pa(0.375mTorr)以下にするとプラズマを維持できなかった。しかしながら、以上説明したようなスパッタリング装置では、最低放電維持電圧を0.02Pa(0.15mTorr)まで下げることができた。このような低圧力においてボトムカバリッジが従来に比べて1.5倍以上に向上できるようになった。
【0118】
また、プロセスガスの低圧化を図ることができるので、、プロセスガスの粒子がスパッタリング粒子と衝突することが頻度が減るので、ボトムカバリッジ率が更に向上する。
【0119】
本発明を実施の形態に基づいて説明したが、本発明はこのような実施の形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、本実施の形態のスパッタリング装置10、11が適用可能なターゲット材料は、銅(Cu)に限られるものではなく、このほかの元素、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、およびこれらの合金等でも適用可能である。以上説明した実施の形態は、閉曲線の最小曲率半径Rmin、最大曲率半径Rmaxとするとき、絶対値|Rmin/Rmax|が0.8倍以上である場合にも適用される。
【0120】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明に係わるスパッタリング装置では、マグネトロンユニットでは、第1のマグネット部は、所定の閉曲線上に設けられている。第2のマグネット部は、第1のマグネット部の内側に設けられている。閉曲線の最小曲率半径が最大曲率半径の0.8倍以上であることが好適である。所定の閉曲線に沿って第1のマグネット部を配置すれば、プラズマの発生に寄与する磁場の形状はこの閉曲線によって規定される。等磁場線は上記の曲率半径の範囲で屈曲されるので、等磁場線の曲がりによって生じうるプラズマ中からの電子の洩れ出しが低減される。
【0121】
このため、等磁場線の形状の改善によって、プラズマ中の電子の洩れ出しが抑制され、効率的に電子が閉じ込められる。
【0122】
また、本発明に係わる成膜方法によれば、スパッタターゲットに磁場を提供するように設けられた第1および第2のマグネット部を有し、第2のマグネット部は第1のマグネット部の内側に設けられ、第1のマグネット部は所定の閉曲線の外周上に設けられると共に、閉曲線の最小曲率半径は最大曲率半径の0.8倍以上であるマグネトロンユニットを用いてスパッタリングを制御しているので、電子の閉じ込め効率が向上された状態で成膜を行うことができる。
【0123】
したがって、ボトムカバリッジを改善可能なスパッタリング装置および成膜方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、第1の実施の形態に従うマグネトロン式スパッタリング装置の概略構成図である。
【図2】図2は、第1の実施の形態におけるサブユニットの配置位置を示すための平面図である。
【図3】図3は、サブユニット部分を拡大したマグネトロンユニットの拡大図である。
【図4】図4は、サブユニットが発生する磁場を説明するマグネット配置を示した平面図である。
【図5】図5は、サブユニットが発生する磁場を説明するマグネット配置を示した平面図である。
【図6】図6は、サブユニットが発生する磁場を説明するマグネット配置を示した平面図である。
【図7】図7は、サブユニットが発生する磁場を説明するマグネット配置を示した平面図である。
【図8】図8は、第2の実施の形態に従うマグネトロン式スパッタリング装置の概略構成図である。
【図9】図9(a) および図9(b)は、図8のマグネトロンユニットにおけるマグネット及びベースプレートと、スパッタターゲットとの位置関係を平面的に示す説明図である。
【図10】図10は、スパッタリング装置に形成される磁場を示す構成図である。
【図11】図11は、スパッタリング装置に形成される磁場を示す構成図である。
【図12】図12は、外周マグネットと内側マグネットとの間の総磁気量比をRsとの関係を示す特性図である。
【図13】図13は、Rmin/Rmaxに対するプラズマ維持圧力の関係を示す特性図である。
【図14】図14は図8に示したマグネトロンユニットを示す分解斜視図である。
【図15】図15は他の実施形態にかかるマグネトロンユニットのマグネット及びベースプレートと、スパッタターゲットとの位置関係を平面的に示す説明図である。
【符号の説明】
10、11…スパッタリング装置、12…真空チャンバ、
13a、13b…絶縁部材、14…ハウジング、15…基板、
16…スパッタターゲット、18…ペディスタル、20…排気ポート、
21…真空ポンプ、22…供給ポート、23…バルブ、24…加速用電源、
25…プロセスガス供給源、26…シールド、29…制御器、
30、31…マグネトロンユニット、32、33…ベースプレート、
34…マグネット、36…駆動モータ、38…回転軸、40…ヨーク部材、
42、43、44…マグネット、47、48、49、50…磁性部材、
52…第1のマグネット部、54…第2のマグネット部
Claims (10)
- 真空チャンバと、
前記真空チャンバを減圧するための減圧手段と、
前記真空チャンバ内にプロセスガスを供給するためのガス供給手段と、
前記真空チャンバ内において基板を支持するための基板支持部と、
前記基板支持部にエロージョン面が対面するように設けられたスパッタターゲットと、
所定の閉曲線上に設けられた第1のマグネット部と、前記第1のマグネット部の内側に設けられた第2のマグネット部とを有し、前記ターゲットに関して前記基板支持部と反対側に設けられたマグネトロンユニットと、を備え、
前記第1のマグネット部は第1の磁極を前記スパッタターゲットに向けて配置され、前記第2のマグネット部は第2の磁極を前記スパッタターゲットに向けて配置され、
前記閉曲線の最小曲率半径は最大曲率半径の0.8倍以上であり、
前記第1のマグネット部は、第1の磁極を前記ターゲットに向けて配置された複数の第1のマグネットを有し、前記第2のマグネット部は第2の磁極を前記ターゲットに向けて配置された複数の第2のマグネットを有し、
前記複数の第1のマグネット及び前記複数の第2のマグネットは、所定の磁気量を有する単位マグネットであり、
前記複数の第1のマグネットが挿入される複数の開口が形成された第1のベルト、及び、前記複数の第2のマグネットが挿入される複数の開口が形成された第2のベルトを更に備えている、
スパッタリング装置。 - 前記閉曲線は凸図形の外周によって規定されている外周線である、請求項1に記載のスパッタリング装置。
- 前記エロージョン面上の所定の点を通過する軸を回転中心として前記マグネトロンユニットおよび前記スパッタターゲットを相対的に回転するための駆動手段を更に備え、
前記マグネトロンユニットは、前記軸を含む平面によって分離される第1および第2の領域を有し、前記第2のマグネット部は前記第1の領域に設けられると共に、前記第1のマグネット部は前記第1および第2の領域の境界上および前記第1の領域の少なくともいずれかに設けられている、請求項1または請求項2に記載のスパッタリング装置。 - 前記第1のマグネット部の総磁気量は前記第2のマグネット部の総磁気量より大きい、請求項1または請求項2にスパッタリング装置。
- 前記マグネットトロンユニットは複数の第1の磁性部材を有し、前記複数の第1の磁性部材の各々は、前記複数の第1のマグネットのうちの1つの第2の磁極の部分と前記複数の第2のマグネットのうちの1つの第1の磁極の部分とを磁気的に結合する、請求項1に記載のスパッタリング装置。
- 前記マグネットトロンユニットは第2の磁性部材を有し、前記第2の磁性部材は、前記複数の第1のマグネットの第2の磁極の部分と前記複数の第2のマグネットの第1の磁極の部分とを磁気的に結合する、請求項1に記載のスパッタリング装置。
- 前記第2の磁性部材は前記マグネトロンユニットのベースプレートである、請求項6に記載のスパッタリング装置。
- 前記マグネトロンユニットは、前記複数の第1のマグネットと前記ターゲットとの間に設けられ前記複数の第1のマグネットの第1の磁極を磁気的に結合する第3の磁性部材と、前記複数の第2のマグネットと前記ターゲットとの間に設けられ前記複数の第2のマグネットの第2の磁極を磁気的に結合する第4の磁性部材と、を含む、請求項1及び請求項5〜7のいずれかに記載のスパッタリング装置。
- 前記スパッタターゲットは、Ti、Al、およびCuの少なくとも何れかを含む、請求項1〜請求項8のいずれかに記載のスパッタリング装置。
- スパッタターゲットに磁場を提供するように設けられた第1および第2のマグネット部を有し、前記第2のマグネット部は前記第1のマグネット部の内側に設けられ、前記第1のマグネット部は所定の閉曲線の外周上に設けられると共に、前記閉曲線の最小曲率半径は最大曲率半径の0.8倍以上であるマグネトロンユニットを有するスパッタリング装置を準備する工程と、
前記スパッタターゲットに対面するように基板を配置する工程と、
前記スパッタターゲットのエロージョン面の近傍にプラズマを生成する工程と、
スパッタリング粒子を生成し前記基板上に膜を形成する工程と、を備え、
前記第1のマグネット部は、第1の磁極を前記ターゲットに向けて配置された複数の第1のマグネットを有し、前記第2のマグネット部は第2の磁極を前記ターゲットに向けて配置された複数の第2のマグネットを有し、
前記複数の第1のマグネット及び前記複数の第2のマグネットは、所定の磁気量を有する単位マグネットであり、
前記スパッタリング装置を準備する工程では、複数の開口が形成された第1のベルトに前記複数の第1のマグネットを挿入し、及び、複数の開口が形成された第2のベルトに前記複数の第2のマグネットを挿入することを含む、
成膜方法。
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